トランプ次期政権が米国経済に与えるリスクが顕在化しつつある。中でも長期金利の上昇により不動産向けローンの債務不履行(デフォルト)が相次ぐとの見方が広がりつつある。リーマン・ショック時と同様にリスクの高い不動産ローン債権を束ねた金融商品に飛び火し、金融危機の引き金となる可能性もある。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
「一人勝ち」と言われる米国経済にとって最大の脅威は政治リスクだ。このことが改めて認識させられる出来事が起きた。
米連邦議会は12月21日未明、期限切れ寸前で政府の予算執行を来年3月まで延長する「つなぎ予算案」を可決した。つなぎ予算が成立しなければ、政府機関の一部が閉鎖に追い込まれるところだった。
綱渡りの成立になってしまったのは、トランプ次期大統領が直前になって連邦債務の上限を停止する措置を盛り込むよう求めたからだ。
米国では連邦債務の上限が1917年以来法律で定められているが、昨年1月に現行の限度額(31.4兆ドル)に達している。これにより、米国債は史上初のデフォルト(債務不履行)に陥りかけたが、昨年6月に「財政責任法」が成立したことで、これまでのところ国債の発行に制約が生じていない。だが、この法律が失効する来年1月2日まで新たな合意が成立しなければ、米国債のデフォルトリスクが再燃することになる。
ジョンソン下院議長(共和党)はトランプ氏の意向を盛り込んだ予算案を19日に提出した。ところが、あろうことか、身内の共和党議員38人が「財政緊縮に反する」として反対に回ったため、不成立となった。ジョンソン氏はその後、トランプ氏の要求を削除した予算案を再提出し、なんとか合意をとりまとめた。
つなぎ予算を巡るゴタゴタ劇からわかるのは、連邦議会は必ずしもトランプ氏の意のままに動くわけではないことだ。自身の「横やり」のせいで腹心のジョンソン氏も窮地に追い込まれており、来年1月3日に招集される新議会の雲行きは怪しくなっている。