ガートナージャパンは10月5日から3日間、年次ユーザーイベント「Gartner Symposium/ITXPO 2016」を都内のホテルで開催している。初日の基調講演で「デジタル社会のプラットフォームを構築する」をテーマに話した米Gartner Researchのバイスプレジデント、Peter Sondergaard氏は、企業情報システムのクラウド化が進み、重心が従来のERPなどを中心とするバックオフィスから、より顧客に近いフロントエンドにシフトしていると指摘した。
米Gartner Researchのバイスプレジデント、Peter Sondergaard氏
IoTの普及、VRなどを用いたサービス開発、さらにAPIエコノミーを前提にしたアプリケーション構築の重要性、ブロックチェーンによる金融やサービス業の新たなサービス展開など、最近取り上げられることの多いトレンドを、調査会社としても踏まえる格好になった。
また、企業においてデジタルをけん引するCDO(Chief Digital Officer)の確立が求められるなど、「ITイコールビジネス」という状況を迎える中で、ITにまつわる組織にも変化が必要であることにも触れている。
同氏は新たな収益機会を前提にする際のポイントとして、顧客体験の重要性も強調。Virtual Reality(VR)によって、従来とは全く異なるユーザー体験を消費者に提供したという意味で「ポケモンGoは今後日本企業の取り組みにおける指標になりうる」と指摘。消費者の経験が従来のモノやサービスとは全く異なるため、こうした新たな製品サービス開発に取り組む企業の考え方によって、「投資額が全く異なってくるだろう」と話している。
もう1つの要点は、IoTのアナリティクスだ。GEが、航空機エンジンを販売するのではなく、飛行距離に応じてサービスとして対価を得ているといった話が最近よく話題に上る。その文脈に沿う形で、「サービスによって対価を受け取る"ソフトウェア企業”になれるかどうかが、製造業の将来を見る際のポイントになる」と述べた。企業がIoTのサービスを構築する際に基盤を利用することになるが、現在ある複数のサービスが統合することで、「業種ごとにIoT基盤が構築されていくだろう」としている。
「例えばタービン産業ならGEやSiemens、日立製作所などがあり、そうした企業が持つそれぞれの基盤が統廃合していくことになるだろう」(同)
雰囲気としては1992年頃のERP市場に似ているとのこと。数百のプロバイダーがあったが、統合により数が減っていった。アプリケーション領域では、今後大量データの分析に需要が出てくるとしており、「2020年までに投資の30%はリアルタイム分析になる」と述べた。
Sondergaard氏は、幕張で開幕したCEATEC Japan 2016のレセプションパーティで安倍晋三首相の話を聞いたとのこと。安部氏が産業におけるIoTの重要性をよく理解しているとした上で「政治の方が先を走っているという世にも珍しい状況だ」と話し、社長や最高経営責任者(CEO)によるIoTへの理解が進まない民間企業側の取り組みに対して、皮肉混じりにコメントした。
この日、ガートナーは以下についても予測している。
- 2018年までにIoTソリューション実装コストの半分を、統合とセキュリティが占める
- 2018年までに一般向け会話型人工知能(AI)システムが少なくとも25種類は登場する
- 2020年までに企業の20%はニューラルネットワークのトレーニング用専用スタッフを採用する