『名人伝』(めいじんでん)は、中島敦の短編小説。『列子』を主な素材として、弓の名人になることを志した紀昌の生涯を描く。1942年(昭和17年)、三笠書房の月刊誌『』12月号に掲載された。同月4日に中島は死去したため、生前最後の発表作となった。同時期の『李陵』『弟子』とは趣の異なる寓話風の掌編で、解釈が研究者の間でも分かれている。 完成稿とは異なる鉛筆書きの草稿が残っている。9月末に『文庫』編集部から依頼を受けた中島は、書き置いていた草稿をもとに1か月弱で完成稿を書き上げた。一般に遺作とされる『李陵』と執筆時期が重なっているため、『名人伝』の方が、完成が後であり最期に書いた作品だとする推測もある。戦後、1948年に筑摩書房第一次全集の第一巻に収録され刊行された。