毎年この時期になると、打ち合わせや宴席で、「来年の通信業界はどうなりますか?」と尋ねられる。実際に予算計画などの参考にする方もいると聞かされ、最近は夏が終わったころからじっくり考えるようになった。

 国内の携帯電話市場に限っても、すべてを見通せるものではない。ただ、あえて一言で表すなら、残念だが「停滞」という時期を迎える予感がする。

地方でのスマホ普及は足踏み状態か

 まず世の中全体の景気が芳しくない。通信産業は比較的景気変動に耐性があると言われるが、それでも端末販売には一定の影響が及ぶ。

 先日JEITA(電子情報技術産業協会)が2012年9月の国内メーカー製携帯電話の出荷台数を発表したが、前年同月比で93.4%と5カ月連続の前年割れを記録した。出荷に占めるスマートフォン比率も6割を割り込んでいる。

 同発表には韓国サムスン電子や米アップルが発売する端末の台数は含まれていない。またiPhone 5の発売を前に、買い控えの影響があったのかもしれない。これらの諸事情を考慮しても全般に弱含みの状態である。特に日本全体のスマホの普及状況と地理的分布状況を比較してみると、地方でのスマホ普及が想定したほど進んでいないことがうかがえる。

 端末の供給側で「モノが売れない」ではなく、「売るモノがない」という状況が散見されるのも気になる。これは日本だけでなくグローバルな市場について言えることで、主にCPUとベースバンドチップの世界的な供給不足の影響による。主要なCPUサプライヤーであるサムスン電子に対し、優越的な契約があると言われるiPhone 5でさえ、11月になってようやく円滑な供給が進みつつある状況だ。

 そもそもの供給不足の一因と目される、米クアルコム製のチップを採用した上位機種の品薄は言わずもがな。供給不足に陥っているこれらのグローバル展開する端末は、逆に需要一巡で来年は一服感が出てくるかもしれない。