「男社会のシンボル」に挑む少女像
毎年6月に南仏で開催される国際広告フェス「カンヌ・ライオンズ(以下、カンヌ)」を今年も取材した。
世界の企業や団体が、いまどんな発想でいかなる手法を用いて、ブランディングやプロモーションを行っているのか? そのトレンドや全体像を短期間で把握するのに、このフェスティバルはうってつけである。
昨年はAI(人工知能)を活用したキャンペーンなど先端技術モノが脚光を浴びたが、今年はどうだったのか? 主だった事例を解説したのち、日本の現状も考えてみたい。
まず、今年もっとも大きくフィーチャーされたテーマは「ジェンダー・イコーリティ」。
性に対する偏見の解消や女性活躍は、近年我が国のみならずグローバル社会全体のビッグイシューとなっており、どうすれば広告やメディア産業がそこに寄与できるのか? ということを議論するセミナーなどが大変目立った。
女性の活躍を応援するキャンペーンを高く評価する傾向も明らかに見て取れた。今年もっとも注目を集めたのが以下である。
「国際女性デー」に突如ウォールストリートに出現した1体の少女像。像はウォール街の名物とされる「雄牛の像」に立ち向かうかのような姿で設置されている。腰に手を当てピンと背中を伸ばした姿勢が印象的。
「Fearless Girl(恐れを知らない女の子)」とネーミングされた"彼女"からのメッセージは、金融ビジネスに「もっと女性のリーダーシップを」というもの。
対する雄牛のほうはチャージング・ブルとして知られる有名な銅像。これは「上昇相場」を表すものとされ、見た目からして猛り狂っている。
「富と力がモノを言う男性社会のシンボル」に挑むこの少女像は、多くのメディアに取り上げられることとなり話題沸騰。像と同じポーズで写メを撮ろうと見物人も殺到した。
このキャンペーンを仕掛けたのは、米国を中心に世界展開する「ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ」である。
投資信託などを行う金融系企業と言えば、それこそ"銅像"のようにお堅いイメージがつきまとうものだが、当時トランプが大統領に就任するようなタイミングで、「物議を醸すこと間違いなし!」のイベントをあえてぶっこんでくるところが、「アメリカだなあ」と感じてしまう。