お父さんといっしょ:サンデーS 2025/03月号 ― 2025/01/25
ドラマはいよいよ終盤です。アニメを再構成してシンプルな漫画のフォーマットにまとめる作業は、残り話数の計算も加わっていっそう厳しくなります。
そんな中、私の個人的な主題「残された人たちの想い」を完結させることができて、仕上がりにはかなり満足してます。コミカライズ版では草太くんが裏の主役で、私の分身です。もろはとせつなと共にとわを救いに行く道を、『犬夜叉』でかごめを救いに行った団地脇にするというのを思いついた時にはガッツポーズでした。戦国御伽草子の世界に行くことは叶わなかったけれど、彼自身があこがれの人のロールを演じることで、満たされなかったものに決着を得たという。物語によくある「彼は君の中に生きている」というやつを、草太は身をもって実感してくれたのではないでしょうか。いやまあ犬夜叉先輩は戦国時代で元気に生きてますけど。
アニメ版の希林先生の狂気というか不完全さは、戦国御伽草子における妖怪の精神構造の不気味さのバリエーションでした。そこをオミットしたのはちょっと惜しいものの、理玖と同一人物としたアレンジは、理玖の主題を短いページでうまくまとめるアイデアだったと思います。現代と戦国時代がシンクロする構成にしたまではよかったけど、麒麟丸と殺生丸は何ヶ月もお見合い状態になっちゃったので(笑)、早いとこ決着に持って行きたい。
とわが希林先生の誘惑を退けるくだり、直前までは「日暮家と過ごした時間も大切だから捨てるわけにはいかない」で済まそうと思っていました。ところが執筆中にとわと丸さまから「このシーンについてちょっと提案があるのだが」という電波を受信。協議の結果「貴様が気に入らないからだ!」とさせていただきました(笑)。たしかにその方が彼ららしい。こういうアドリブの例はこれまでも何度かご紹介したとおりで、 キャラクターからの提案を受信するのは漫画執筆の醍醐味です。頭でシナリオを作ると論理的な整合性で組み立てるばかりになりがちなんですが、キャラクターを実在する仕事仲間・創作のパートナーとして扱っていると、こういう理屈を超えた飛躍を持ち込んでくれるのです。美神やチルドレンにはずいぶん世話になったけど、まさか高橋留美子先生んちの殺生丸さまともそんな関係になれるとは想像もしてなかったわ。あと「邪見様を抱き上げる琥珀」というのも実は琥珀のアドリブで、描きながらこっそりニヤニヤしてました。『犬夜叉』後の琥珀の成長を感じて「大人になったなあ」って。
楽しい仕事で、三年はあっという間でした。あと数回でキャラクターや作品世界とお別れするというのはひじょうに名残惜しいです。きれいに完結させなきゃっていうプレッシャーもありますけど。これ終わって次の自分の企画どうしようという不安もありますけど。
完結までもうしばらく、妖霊星との戦いに決着がついて、麒麟丸と殺生丸の戦いにも決着がついて、とわたちが戦国時代に戻るまでおつきあいください・・・・まだけっこうやることあるな。