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突然ですが、本連載今回が最終回だそうです。私としてはまことに残念ですが。 初回が、2022年1月「浦沢直樹の漫勉」と諸星大二郎の「謎」なので、何だかんだで3年余続いたことになる。「与太話」と名付け、そのつど気の向くままに気軽に書こうと、はじめは思っていた。が、ここ数年気になっているマンガ研究の主題にひきづられ、あまり一般には興味を引きにくい連載内容になってしまったかもしれない。13年の大学教師生活で、必然的に研究よりのテーマに引き寄せられていったのだろう。 現在の連載マンガへの言及は少なく、戦前を含めたマンガ史の再考や、ジャンル論、個人的批評史などがむしろ中心にくる連載となった。大学退官後、これからどんな問題を考えて行こうかと思案しながら書いてきた結果で、それはそれで私にとっては重要な連載であった。しかし、マンガ研究という領域自体が一時期の盛り上がりを終えて落ち着いてきたこともあり、一般読
世の中には漫画家の自伝的漫画というものが結構あります。以前にこの連載で紹介した矢口高雄『9で割れ!!』などもその一つですね。本年、その系譜の中に新たな一作が生まれました。それが今回紹介する伊賀和洋『劇画の神様~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』です。 『劇画の神様~さいとう・たかをと小池一夫の時代~』 伊賀和洋(旧ペンネームは一洋)……といっても、知らないという方も少なからずいるのではないかと思います。デビューしてから72歳の現在まで約50年ずっと現役であるにもかかわらず、Wikipediaにも項目立ってないですし、あまり語られない方です。 なんで語られないかといいますと、代表作は『男弐』『涙弾』(ともに原作:小池一夫)など……というので分かる人には分かると思いますが、小池一夫の会社であるスタジオ・シップに所属していた漫画家で、基本的に原作ありの作画専門の人なんですね。漫画家の作家性みた
鳥山明は、縦の間白(コマとコマの間)より横の間白を広くとり読みやすくする工夫など、先鋭的な作品ではむしろダサく見えてしまう表現上の更新もしている。が、それが典型的に示すように、新しい革新的な表現に注目しがちな批評言説からは注目されにくい作風である。けれど、彼は間違いなくジャンプ最盛期の牽引役で、その後のジャンプ路線のシンボルだった。のちにジャンプを支える『NARUTO』の岸本斉史、『ワンピース』の尾田栄一郎ら、多くのジャンプ作家に影響を与えた。いわば読者を育て、そこから作家を生み出したのである。いいかえると、彼はジャンプの基準、範例のようにも見なされ、結果「明朝体」のように感じられるようになったのかもしれない。 鳥山明はとてつもない作業量をこなし、しかも締め切りを守った。その理由が、会社員を経験したので、〈原稿が遅れるといろんな人に迷惑がかかる〉*1と思ったからだという。ただ、絵を描くのが
前回、唐突に話を打ち切ってしまって申し訳ない。さて、鳥山明さんについての続きである。何をいいたかったかといえば、紙出版の日本マンガが未曾有の巨大市場を獲得した最盛期(80年代後半~90年代前半期)を牽引したのは、間違いなく「週刊少年ジャンプ」の躍進であり、その中心にあったコンテンツが 『Dr.スランプ』(1980~84年)と『ドラゴンボール』(84~95年)だったということだ。 『Dr.スランプ』には、下品なギャグのわりにうんこを可愛く感じさせてしまう品の良さがあった(キャラクターの汎用性?)。アニメ化前提で連載開始した*1 『ドラゴンボール』では、バトル化でキャラクターを大量生産し、同時にそれは、アニメ、キャラクター商品、ゲームなどの「メディア・ミックス」=多メディア展開商品へと拡張する。それ以前からあった、この構造の完成が、マンガ出版市場の急速な拡大を支えたのだろう。いわば日本のマンガ
前編はこちら なお、あまりに長期連載である『天牌』については展開のネタバレが幾つかありますので、その点のみご注意ください。 狩撫麻礼氏と『オールド・ボーイ』 ——『麻雀時代』とかは雑誌が潰れて、『てっぺん』『幻に賭けろ』と90年代前半まではずっと麻雀が多かったですよね。同時に、日本文芸社の方でも『はぐれT.C.』とか『さわがせ屋』とか色々やられてますね。 嶺岸 『さわがせ屋』とか久々に名前聞きましたね。やってましたね。 ——ちょっと今のイメージとは違うコメディっぽい感じだったりして。 嶺岸 あれは『別冊ゴラク』ですね。そもそも青柳先生のところにいた時に編集者の方がよく来てたんです。日本文芸社でも小学館の『ビッグゴールド』みたいなやつ……。 ——『カスタムコミック』(注23:79〜82年。『ビッグゴールド』(78〜85、92〜99年)とともに、大御所作家を揃えた豪華執筆陣の雑誌)ですかね。
デビューしてから約40年。麻雀漫画史上空前の大河連載作品『天牌』を筆頭とした、麻雀漫画単行本冊数日本一(当然世界一でもあります)の漫画家であり、麻雀以外でも、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞映画の原作にしてアイズナー賞も受賞した『オールド・ボーイ ルーズ戦記』(原作:土屋ガロン(狩撫麻礼))など数多くの作品を発表してきた嶺岸信明氏。青柳裕介氏のアシスタント時代から 『週刊漫画ゴラク』で現在連載中の『オーラス-裏道の柳-』まで、ゴラクの担当編集A氏を交え、じっくりとお話を伺いました。 漫画家デビューのころ ——まずは漫画家を目指されるまでのことからお伺いしたく思います。宮城県のご出身と以前仰っていましたが。 嶺岸 そうです。加美町っていうところです。『ぼのぼの』のいがらしみきおさんが同じ加美町出身ですね。 ——昔の、「日本漫画学院」のリレーインタビューに「矢口高雄さんや石井いさみさんの作品を模
『DRAGON BALL』 2024年3月8日、NHKBSからの取材依頼メールで、初めて鳥山明さんの訃報を知った。3月1日、68歳での逝去。ショックでしばらく頭が真っ白になった。昨年来戦後漫画の巨星が立て続けに鬼籍に入ったが、彼らについては私も割と冷静だった(みなもと太郎さんを除けば、だが)。私の中で鳥山さんは、いわば巨星たちが築き上げた戦後マンガ出版(紙)の最盛期を象徴する作家であり、しかしそれに相応しい評価がいまだなされていない人だった。お会いしたことはないが、大好きな作家でもあった。言葉もない、というのが正直なところだ。が、そうもいっておれないのが「マンガ批評家」の哀しいところで、何とか自分を奮い立たせて書かせていただく。鳥山明が巨大な存在なのは、日本人なら何となく感じ取っていると思うが、誰も具体的にどう巨大なのかを語ってくれないので、聞かれても好きか嫌いかとか、子供の頃読んだとか答
『木曜日のリカ』 以前に『スーパーくいしん坊』の記事でも書きましたが、ウェブ上には1コマだけ、1ページだけがミーム的に広まっている漫画というものがあります。今回紹介する小池一夫+松森正『木曜日のリカ』もそンな漫画の一つ。連載は71〜72年の『週刊少年キング』で、単行本は全5巻です。本作のタイトル聞いてピンとこないという方でも、次の1コマはTwitterあたり(あと、90年代の漫画関連本読んでた人だと、宝島社の『コミックVOW』で知ってるかも)で見たことがあるのではないでしょうか。というか、筆者はつい最近流れてきたのを見ました。 『木曜日のリカ』2巻222ページより インパクトありますね、「ノーベル殺人賞」。しかし本作をちゃンと通して読んだ人はそンなに多くなく、この賞やセリフについて意味を誤解している人が多いのではないかと当方は思っているのです。というわけで紹介。 本作の主人公・美木本リカは
【図版1】『仙人の桃』 表紙、「二本の箒」P.108、「柳の人」P.141 南伸坊『仙人の桃』(中央公論社)が出た。マンガ史に残すべき名作なのに、あまり評価されていないのが私としては大変に不服だ。今回、過去に何冊か出ていた本を一冊にまとめてくれて凄く嬉しい。私自身も大好きな中国志怪伝奇物の、落ちも何もない、読者を放り出してしまうようなふわっとした話ばかりが、上品で余白の使い方の絶妙な漫画で楽しめる。またそれを解説する南さんの文章の軽やかな距離感が素敵だ。最初は「月刊コミックトム」(潮出版)で80年代に掲載されていた作品群で、じつは私も「読書学」(1986~91年)という連載を同誌でやっており、そこで最初の単行本化『チャイナ・ファンタジー』(90年)を取り上げた。南さんは、ご本人も素晴らしい人格者なのだが、私にとっては80年代面白主義の先人として尊敬し憧れた人だった。とくに彼の知的好奇心と俗
美術の世界を描いたマンガといえば、細野不二彦『ギャラリーフェイク』(1992年~2005年、12年~不定期連載)、羽海野チカ『ハチミツとクローバー』(2000年~06年)、山口つばさ『ブルーピリオド』(2017年~連載中)が三大ヒット作と言えるだろう。 今さら説明するまでもないが、『ギャラリーフェイク』は贋作専門の画廊を経営する藤田玲司が、さまざまな美術品にまつわる謎や事件に挑むミステリー風味の娯楽作。『ハチミツとクローバー』は、美大生たちの痛切な青春群像劇。『ブルーピリオド』は、藝大受験をテーマに創作の喜びと苦しみを描く。 しかし、それらのほかにも芸術を志す若者たちの苦悩や美術界の光と影を描いた作品はたくさんある。京都精華大学に日本初のマンガ学科が創設されて約四半世紀。美大出身の漫画家も増えてきて、自身の体験をもとに描くケースも少なくない。今回はそんな美術系マンガから選りすぐりの8作をご
『天牌』(原作:来賀友志、作画:嶺岸信明)という麻雀漫画があります。 『週刊漫画ゴラク』に99年から連載され、22年に原作者の来賀が急逝するまで四半世紀近く連載が続き、話数にして1141話、単行本は116巻を数えるという麻雀漫画史上空前の大河作品です。今回紹介するのは、その来賀・嶺岸コンビの初期作である『あぶれもん』です。連載は『別冊近代麻雀』(現『近代麻雀』。当時は『近代麻雀』という活字雑誌が別に存在しておりました。この活字近麻は87年に休刊しています)の85年12月号〜89年2月号。来賀・嶺岸の両者ともにデビューしたてという時期です。 『あぶれもん 麻雀流浪記』 本作の舞台となるのは、横浜市の弘明寺という街。京浜急行と横浜市営地下鉄の駅があるので鉄道マニアなら知っていましょうが、横浜市の中でもそこまで有名な街というわけではありません。しかし本作では、第1話の冒頭で「一度でも牌の魔力に魅
僕がマンガによるマンガのパロディを描き始めたのは、少年画報社「ヤングコミック」1977年6月22日号の『その後の…YESTERDAY’S HERO』6頁が最初だったと思う。今も溶けかけたまま太陽の周りを回るアトムや選挙に出馬する『忍者武芸帖』の影丸、燃え尽きて一つまみの灰になった矢吹丈などを描いている。26歳の頃だ。 『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊) ちなみに図の右側は単行本『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊)収録の際たまたま右頁に来てしまった『スーパーヒーロー大集合篇 あの人の秘密』(「ヤングコミック」79年12月12日号)の最終頁である。どうせこれ以後参照されることもなかろうと思い、ついでに掲載させてもらった。著作権者、俺だし。 『ザッツ パロディ』(サン出版 81年刊) 同じ77年、「週刊少年ジャンプ」に江口寿史『すすめ!!パイレーツ』、「週刊少年チャンピオン」に鴨
今回紹介するのは、前回の『新やる気まんまん 警視庁SEX捜査官』の記事でも名前を少し出した、倉科遼+みね武『艶恋師(いろこいし)』です。連載は00年代後半の『漫画サンデー』。原作の倉科は『夜王』などの作品で知られる「ネオン漫画の帝王」、作画のみねは70年代から青年漫画で活躍しており、金と女が大好きで「糞蝿」と自認する(世の中の糞野郎どもにタカって生きているので)私立探偵を主人公としたバイオレンス・アクション『野獣警察』などで知られます(基本的に作画専門の人なのであまり作家性とかが語られませんが)。 【極!合本シリーズ】艶恋師シリーズ 本作の主人公・神楽坂菊之介は、ポニーテールに着流し姿で花街・神楽坂を闊歩する男。芸者の私生児として産み落とされた後に母親が死亡し、この街の芸者たちの手で育てられたという生い立ちを持っています。 『艶恋師』シリーズ合本版1巻16ページより で、この菊之介の表の顔
令和5年版高齢社会白書によれば、我が国の総人口に占める65歳以上人口は29.0%に達しているという。ただし、昭和の65歳は本当に「おじいちゃん」「おばあちゃん」という感じだったが、今の65歳は見た目も中身も結構若い。70代、80代でも元気な人は元気である。そうした社会状況を反映して、マンガでも高齢者を主人公とした作品が増えてきた。 今回は、そんな高齢主人公たちが楽しく日々を過ごしたり、新たな一歩を踏み出したりする作品をセレクト。筆者はもう主人公たちのほうに近い立場だが、若い人でもこれらの作品を読めば、年を取るのも案外悪くないかも?と思えるはずだ。 ■65歳から始める映画作り まずは、たらちねジョン『海が走るエンドロール』(2020年~連載中)。『このマンガがすごい!2022』オンナ編1位に輝いた人気作なので、ご存じの方も多いだろう。 夫を亡くしたばかりの茅野(ちの)うみ子(65)は、久しぶ
となりのマンガ編集部 第13回:マトグロッソ編集部 書店の奥にあるこの本を必要として、救いとする人のために マンガの編集部に赴き、編集者が今おすすめしたいマンガやマンガ制作・業界の裏側などを取材する連載企画「となりのマンガ編集部」。第13回は、マトグロッソを運営しているイースト・プレスを訪ねました。イースト・プレスといえば『COMIC CUE』を始めとして『失踪日記』や『人間仮免中』など昔からコアなファンに訴求力の強い作品を発信してきている会社で、マトグロッソも個性豊かな作品が多く掲載されているサイトというイメージが強いのではないでしょうか。ただ、最近では『プリンタニア・ニッポン』の人気などもあり少しずつ変化し始めているイースト・プレスの内情や作品作りについて、書籍3部の編集者である石井さん・棒田さんに取材しました。 取材:マンガソムリエ・兎来栄寿 すべての辛さはこの1冊のために ――最初
とがしやすたか インタビュー (代表作『青春くん』『竹田副部長』) だって哀しいじゃない、男の人ってさ。<前編> どこにでもいる童貞の高校生が、エッチな妄想に胸焦がれ悶絶する4コマ漫画、その名もズバリ『青春くん』の連載が始まったのは1989年。平成になったばかりの晴天のニッポンに舞い降りた性典であり聖典。「ヤングサンデー」(小学館)で19年間連載した後、休刊後も『新 青春くん』と改題して生き延び、2008年、平成20年からは「ビッグコミックスペリオール」(同)にて『大人の青春くん』に成長、令和の現在もさらに力強く連載が続いているのだ。合計、34年である。34年後の現在の青春くんは社会人になった。それでも、エッチな妄想に胸焦がれ悶絶しているのである! 作者の「とがしやすたか」が『青春くん』とともに乗り越えてきた”時代の荒波”を振り返りながら、…主語が「僕」になったり「オレ」になったりしなが
セックスは犯罪の道具じゃねえ!! セックスファイトで勝負だ!! 24年の初笑いは霧隠サブロー『新やる気まんまん 警視庁SEX捜査官』で決まり! かつて『やる気まんまん』(牛次郎+横山まさみち。途中から横山単独クレジットで『それいけ!!大将』にタイトル変更)という漫画がありました。77年から横山が死去する03年まで『日刊ゲンダイ』に長期連載されていた艶笑作品です。 ストーリーは、精力増強剤の老舗・四つ目屋本舗の当主である主人公・泊蛮兵が、次々とセックスファイトで強敵を破り四つ目屋本舗の信用を高めていくというもの。「セックスファイトって何だよ!」とみなさま思うかもしれませんが、本作以外にも、みなさまご存知『男!日本海』でも日本海がアメリカのペニスキラー(ペニスキラー?)、ペニー・シャブリとセックスで戦う回がありますし、 『男!日本海』9巻41ページより その他にも『艶恋師』(倉科遼+みね武)と
麻雀漫画というジャンルの中には、SF要素を含んだものが少なからずあります(それこそ『咲-Saki-』とかだって「麻雀人口が1億人を突破した世界」という並行世界ものと言えんことはない)。その中でも、筆者が勝手に「三大SF麻雀漫画」と呼んでいる作品があります。一つは以前に記事を書いた『ナイトストーン 危険な扇動者』、一つは『トーキョーゲーム』(青山広美特集の記事とインタビューを参照)、そしてもう一つが、今回紹介する志村裕次+みやぞえ郁雄『真・麻雀伝説 風の雀吾』です。連載は徳間書店の『漫画タウン』(徳間書店)82〜83年。単行本はグリーンアローコミックスから全2巻が出ており、今は電書もあります(紙の本だと巻数表記がなくて「雷鳴編」「灼熱編」というどっちが1巻か分からない謎の仕様だったのが、電書版は巻数表記があって親切)。原作の志村は70〜80年代に麻雀漫画原作を書きまくった(読切数だとたぶん日
以前に『翔丸』の記事で、能條純一という漫画家は漫画界でも比類ない超一流のハッタリ力を持っている人だと書きました。そのハッタリ力は、『翔丸』のようなスケールの大きい作品だけでなく、料理漫画でも存分に発揮されています。というわけで今回の紹介は能條純一『ばりごく麺』。連載は08〜09年の『ビジネスジャンプ』。単行本は全4巻です。 『ばりごく麺』 本作の主人公は、うだつの上がらない新人サラリーマン・潮崎朗馬。彼がある雨の日、雨宿りのために今まで入ったことのないラーメン屋に入ったところから物語は始まります。あまり流行っていないその店にいた先客は、ラーメンを食べ終わると「まずかった———っ」と一言。そして「まずいが…最後の一滴まで変わらぬまずさが痛快だ 名付けて痛快ラーメン」と勝手な名付けをして去っていきます。 『ばりごく麺』1巻12〜13ページより これですよ、これこそが能條作品のカリスマキャラです
『1日外出録ハンチョウ』、面白いですよね! 私はスピンオフ元の『賭博破戒録カイジ』もリアルタイムで読んでいた世代なのですが、あんなにも敵として憎たらしく、そしてカイジの美しいまでに計算され尽くした策略で完全敗北した大槻班長達のことを、まさかスピンオフで最新話が待ち遠しいほどの存在になろうとは思いませんでしたね。『中間管理録トネガワ』が始まって、かつめちゃくちゃ面白かった時も驚いたものですが、まさかさらなるスピンオフ第2弾がまた別路線の面白さを発揮して長期連載になろうとは……。私なんてハンチョウが面白過ぎるあまりに、第10話[蛤門]の京都聖地巡礼回や、第19話[混沌]の名古屋、第46-47話の長野旅行で訪れていた善光寺の山門、第92話[主役]の新宿タカノパフェリオ本店など、各所の舞台探訪をしたこともあるくらいです。 【関連記事】 『1日外出録ハンチョウ』京都聖地巡礼回の聖地巡礼 『1日外出録
「老人の生態漫画を描いている!」「生態というか…かなり死んでいく!」「これは新しい!いや、古い!いや、かえって新しい!」…などなど、ともかく令和の時代に話題騒然の77歳漫画家、齋藤なずな先生なんであります。謎が多い。なぜ40歳デビューなのか。なぜ77歳で活筆なのか。なぜこんなに面白い漫画を作れるのか。取材班は、甘いケーキときれいなお花を手に、雨降る中をバスで突っ切って停留所を降り、東京の奥深い土地にある団地=ご自宅を急襲。にゃー、にゃー、にゃー。ニャンコが女主人をガードする中をなんとかかいくぐって、生の声をインタビューしたのであった。「顔編」「猫編」「幼少期編」の3回に分けてお送りします。 取材/文/撮影:すけたけしん 齋藤なずなさんのご自宅にて。 カメラで撮っちゃうと目が休んじゃうというかね 「いらっしゃい」とドアを開けてくれたのは、美しいご婦人。誰か来たの?と足元にはニャンコ1号(4号
去る10月14日、11月4日で「東京チカラめし」東日本唯一の店舗だった新鎌ヶ谷店が閉店し、残るは大阪日本橋店のみとなるというニュースがありました。チカラめしといえば、11年に登場するや翌年には100店舗を達成するなど牛丼界の風雲児となるも、「あそこマズくない?」「いや、最初はちゃんとしてたが急拡大にオペレーションが追っつかなくなったのだ」などといった議論を起こしつつあっという間に衰退、数年で店舗数は一桁にまで落ちると、22年には「東京」の名に反し都内から店舗がなくなってしまい、そしてついに東京どころか関東からもなくなってしまうという、入れ替わりの激しい外食業界の中でもひときわ栄枯盛衰が目立ったチェーンでした。というわけで今回の紹介は、そんなチカラめし(が明らかにモデルの店)が連載第1話で取り上げられている時代の証人的漫画、土山しげる『怒りのグルメ』(連載時タイトル「噴飯男」)です。 『怒り
前編はこちら 【『バード』創作秘話と『格闘太陽伝ガチ』】 ——『ダイヤモンド』が終わってから、麻雀漫画史に残る大傑作『バード-砂漠の勝負師-』ですが、企画が始まったのはどのようなきっかけだったのでしょうか。 『バード-砂漠の勝負師-』 青山 『ダイヤモンド』の終わりぐらいに「こういうの描きたい」と思って、簡単な企画書みたいなの書いたら、割とすぐに「やりましょう」と。 ——本作最大のネタである「全自動卓天和」をやろうとなったきっかけなどはあるんでしょうか。 青山 これは流れですね。『バード』始まった時は、別に全自動卓天和ってのは考えてなかったんです。 ——ええーーーーっ!! そうなんですか!? 青山 考えてなかったです。描いてるうちに途中のセリフでポロっと「全自動卓で天和どうのこうの」みたいなのが出てきちゃったんで、これはもう天和やらなきゃいけないなと。6話目ぐらいになってから天和のネタ考え
青山広美。麻雀漫画をある程度以上読んでいる人であれば、ほとんどがこの名前を知っていることでしょう。イカサマあり麻雀漫画の最高傑作『バード-砂漠の勝負師-』、SF麻雀漫画『トーキョーゲーム』といった作品は麻雀漫画の歴史に燦然と輝きます。麻雀以外でも、秋田書店系の雑誌を読んできた人なら、『週刊少年チャンピオン』で長期連載された『GAMBLE FISH』、『チャンピオンRED』で現在連載中の『ストラグリング・ガールズ~一発逆転の頭脳決戦~』(ともに原作担当)といった頭脳勝負(広義のギャンブル)もので名前を知っているのではないかと思います。しかしこの方、ギャンブル漫画だけの人ではありません。野球漫画や格闘漫画、ギャグ漫画に料理漫画、はては少女漫画(デビューした後に『プチフラワー』の新人賞に佳作入選し、何本かを同誌に発表しています)まで、実はかなり広いジャンルで作品を発表してきているのです。 このた
青山広美。麻雀漫画をある程度以上読んでいる人であれば、ほとんどがこの名前を知っていることでしょう……という青山氏についての説明は、インタビューに併せて書いた特集記事をお読みください。デビューしてから40年、数多の傑作もものしてきたというのに、インタビューは『ダイヤモンド』連載当初に小学館のウェブサイト上で小さいものがあったのみというわけで行ってきた次第。 現在お住まいである仙台の喫茶店にて、現在連載中の『ストラグリング・ガールズ~一発逆転の頭脳決戦~』担当である秋田書店の小林氏を交え、デビューから最新作までじっくりお話を伺いました。 【デビューと「青山パセリ」時代】 ——まずは漫画家になられたきっかけというところからお聞きしたいんですけれども。お好きな漫画家さんとかいらっしゃったんでしょうか。 青山 子供の頃から漫画は読んでいましたが、小学生の頃はジャンプとかマガジンとか普通の少年誌でした
マンガ界激震の話題作『サンダー3』作者の池田祐輝はいったい何者? ネットのウワサ徹底追及!|川島・山内のマンガ沼web 麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前回放送の「マンガ家ガチアンケート・池田祐輝編」の模様をお送りします(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。 『サンダー3』池田祐輝に関する3つの説 川島 今回のテーマはマンガ家ガチアンケート! 今回は山内さんのリクエストです。 山内 僕が以前お薦めしたマンガ、『サンダー3』の作者・池田祐輝先生です。 撮影/池ノ谷侑花(ゆかい) 川島 山内が紹介したの、めちゃくちゃ早かったよね。 山内 佐藤健さんとマンガの情報交換した時に、教えてもらったんですよ。まだ2話、3話しか出てない時点で、「まだ分かんないけど、これやばいかも」って。それで僕が紹介したんで
今回は『天国 ゴトウユキコ短編集』【図1】を取り上げてみたい。すでに活躍している作家で、ちょっと怖い作品や人の闇を扱うような作品も描いているようだ。が、申し訳ないが、私はこの本で初めて読ませていただく。版元から送ってもらったのだ。 『天国 ゴトウユキコ短編集』 表紙を飾る少女の絵が、この作家の資質を示している。ピュアな少女の表情をサラッと描いているように見える。しかし、どこを見ているのかわからない二つの瞳の微妙な位置関係、小さな鼻に慎重に描かれた鼻の穴、唇の位置や繊細に引かれた線、淡い彩色の気遣いなど、とても注意深く表情を描き込んでいる。この本を手に取る人は、そんなことまで考えないだろうが、無意識にそうした繊細さを受け取っているはずだ。漫画読者であれば、初見でもそうした無意識の印象で、ある種の「期待」をもって手にとるかもしれない。 『天国までひとっとび』『2月14日の思い出』『家庭教師』
『人間兇器』の紹介、後編です(前編はこちら)。 アメリカに続きメキシコにもいられなくなった美影、腐敗した独裁国家ならなんとかなるやろ……と思って今度はバティスタ政権下のキューバに密入国するも、折悪しくカストロ&ゲバラによる革命闘争が始まり、さくっと革命軍に捕まります。共産思想とかにはこれっぽっちも興味がないが我が身は可愛い美影、同じ檻に入れられていた奴らが看守を買収して脱走を図っていることを密告し、速攻で革命軍のイヌに。 『人間兇器』合本版3巻27ページより 密告が原因で処刑された人々を見ながら「これで間接的にもおれは大量の人間を殺した! おれって人間兇器に青春革命が起こるって予感がますますしてくるぜ!」などと謎の寝言(青春革命?)をのたまいつつ、革命軍のカラテ教師の座に収まりますが、女相手にいつもの残虐行為やってたのがゲバラの逆鱗に触れ50ページもしないうちにワアーッ。 『人間兇器』合本
『黄昏流星群』 みなさん、黄昏てますか? あ、慣れない言葉を使ってしまいましたね。今のは「みなさん、いずれ自分も中高年になることに備えて、ちゃんと黄昏流星群を読んでいますか?」という意味の挨拶です。『僕の心のヤバイやつ』とかのラブコメマンガを読んで悶絶しているみなさん、実年齢はおいくつですか? 山田や市川よりも、その親御さんの方が年齢が近かったりしちゃうんじゃないですか?(私は山田ママと同い年になりました……) まぁ人は年齢を重ねていくものです。そして、いくつになっても恋愛というものには心をときめかされてもいいのです。そんなみなさんに今一度オススメしたいのが、40代以上の中高年向け恋愛マンガ『黄昏流星群』です。『黄昏流星群』がどんなマンガなのかというのは、2年ほど前にも書かせてもらった記事に書いてあるので、そちらをご参照いただければ幸いです。 (参考記事:中高年向け恋愛マンガの殿堂『黄昏流
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