ニコニコ動画がリニューアルし、プレミアム会員向けに提供が始まったZEROプレイヤーの評判が散々な中で、新しいサービス「Nsen」はまだまだ地味ながらも好評のようだ。
Nsenは、ユーザーからのリクエストを受けてニコニコ動画内のコンテンツをストリーミングするサービスで、いわゆるインタラクティブ型のネットラジオのようなもの。自分の選んだ曲を皆に聴かせ、その選曲がリスナーから評価されるという意味では、turntable.fmに端を発するWeb DJシステムにも近い。
動画の量が爆発的に増えて、好みの曲を探し当てるのが難しくなるばかりだったが、それを解決する手法としてNsenはいいアイデアだ。正直言って、私はここ2、3年ほどニコニコ動画から遠ざかっていたが、今はそのコンテンツのバリエーションと質に改めて圧倒されている。今回のニコニコ動画のリニューアルテーマは「原点回帰」ということだったが、それが端的な形となったサービスがNsenではないか。
そこでNsenの狙いをドワンゴの阿部大護さんこと、あべちゃん(と名刺にルビが振ってあった)に聞いてきた。
スキップボタンはほとんど使われていない
―― まずNsenはニコニコの中でどういう位置付けになるんですか?
あべちゃん 去年の夏にLAであった初音ミクのライブに行ったんですが、海外でボカロを聴いている人はYouTubeで動画を探しているらしいんですね。そういう海外の人達もそうですが、国内で音源を発掘している人たちにも、もっと分かりやすい発掘場所が欲しい。それで「垂れ流しで聴けるラジオみたいなのを作ればいいんじゃないの?」という軽いノリで始まったんです。ダラダラできるサービスをお試し的にという。
―― 能動的に探しに行くのは、かなりエネルギーを使いますからね。
あべちゃん そうなんですよ。膨大な動画の中から、検索やランキングで自分の好きな曲を探したりというのはけっこう労力を使うじゃないですか。実はNsenが満たす三大欲求というのがありまして。1つはクリエイターの「見つけてほしい」、作品が埋もれがちな現状でもより多くの人に見てほしいと。次がコアなユーザーの、埋もれた名曲に「出会いたい」。最後にライトな音楽ユーザーの「ダラダラしたい」。Nsenはこの3つの欲求を満たします、というのがポリシーなんです。後付けですけどね。
―― ダラダラは重要ですね。海外のturntable.fmなんかだと、もう戦いですから。
あべちゃん Nsenにもスキップというボタンがあって、ある程度の割合の人が押すと次の曲に行くんですけど、これは荒らしだったり関係のない曲や、ある程度満足した曲を、みんなの総意で飛ばすという機能なんですが、ほとんど使われてないんですよね。
―― そこは日本人らしい奥ゆかしさというか何というか、そういうものじゃないですか?
あべちゃん 皆がいい曲をリクエストしてくれるということだと思いますし、使われないに越したことはないですけどね。Nsenでは日々、埋もれている名曲や、クリエイターの発掘をしている人たちがリクエストをくれるわけです。スキップとは別に、「Good!」というボタンがあって、たくさん押されると色が変化して最終的に赤色になるんですが、するとこの曲は皆から支持されているという目安になります。リクエストした人たちが、リスナーから評価を得られるようにしたかったんですね。
―― まず各カテゴリーに詳しいユーザーがいて、彼らがNsenをドライブしているということですね。
あべちゃん はい。その人たちがいないと成り立たないサービスです。それに反応してコメントを付ける人たちとか、単純に作業用のBGMとして聴いている人たちとか、そういう三者三様で成り立っているんだろうなと思っています。
―― あくまでサービス名の語感から受けた印象ですけど、Nsenって街のお店でかかっているといい感じなのかな? とか、もっとチャンネルが増えたりするのかな? と思うんですが。
あべちゃん 札幌のすすきのにニコニコユーザーが集う「ニコニコBAR」というものがあるんですよ。そういう人たちだったり、使いたいお店は気軽に使ってもらえば、と思ってはいますが、あくまでユーザーさんのための機能ですね。ニコニコのジャンルはすごく多いので、ユーザーの居心地のいいスペースを作るという意味で、チャンネルは増やしていくべきかなと思っています。
―― 人気カテゴリーはチャンネルとしてそろっている感じですが、あれを細分化する方向ですか?
あべちゃん まだテスト的な段階なので、これから他のジャンルなどもカバーしていくかもしれないです。
―― なるほど。あの、実はさっきから気になっているんですが、僕は「エヌ↑セン」って言ってるんですけど、どこか違う所にありましたよね、アクセントが。
▲あべちゃんに聞いた正しいNsenの発音。―― エ↑ヌ↓セン?
あべちゃん そう、エ↑ヌ↓センなんですよ。
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