DX推進に立ちふさがった、
経営課題
福田さんに任されているミッションと、富士通の経営課題について教えてください。
CDXOとCIOを兼務している私には、「DX」「社内IT」「デザイン」という3つのミッションがあります。
DXはD(Digital)よりX(Transformation)、すなわち経営変革の面が非常に重要になります。今日のデジタル時代に合わせ、富士通をグローバルに定義しなおす仕事です。この「経営の変革」をデザインするために、2020年7月に子会社だった富士通デザインを富士通に統合し、約200人のデザイナーを中心にデザインセンターを設立しました。
経営変革の話に、なぜデザインが出てくるのか。不思議に感じる方もいるかもしれませんが、世界の最先端を走るIT企業を見ればわかるように、今日のビジネス価値はデザインがリードしています。言葉で伝えきれない抽象的な概念を分かりやすく可視化・具現化するのが、デザインの力です。企業が自らをトランスフォーメーションしていく過程において、組織や個人が1つの理想を共有するために、デザインは重要な役割を果たします。デザインセンターは富士通グループの変革を支える核心的な存在として、様々な部門や組織の変革をデザインしています。また、一部のデザイナーはグループ会社の「Ridgelinez」に合流し、お客様のDXを支援しています。
富士通は経営主導で事業と組織を大きく変革している最中ですが、大きな課題を抱えていました。戦略的な経営施策の推進を、残念ながらITが阻んでいるという事実です。
その課題は御社に限らず、多くの日本企業に共通する課題ではないでしょうか。
そうかもしれません。ITシステムは「企業のありようを映す鏡」です。よく「ITやデータがバラバラだ」と言われますが、それは組織がバラバラなのです。バラバラな組織がバラバラなシステムを作っているだけのことです。組織が大きくなる過程で縦割りの構造となり、様々な要因が絡み合って部門間に壁ができ、結果として個別最適が進んで分断化されたITが会社中に存在する、そうした日本の縮図と言うべき、あらゆる課題を抱えています。
現場ごとに独自に積み上げてきた業務の改善が、システムにそのまま反映されているという意味でしょうか。
そうです。現場起点のカイゼンは、アナログ時代には最強の仕組みでした。全社をデータで一望することが難しかった時代は、製造業を中心に、優秀な現場が日本を世界のトップレベルに押し上げました。しかし、経営にデジタルが導入されていく中で、日本は過去のやり方から脱却できず、変革が進まなかったのではないでしょうか。それは、富士通にも当てはまる部分があります。