22歳で独立するも事故で廃業。借金だけが残ることに
元女性のトランスジェンダーYouTuberおよびインフルエンサーとして活動する井上健斗さんは、株式会社G-pitの代表取締役として、タイや日本国内での性別適合手術のアテンドや戸籍変更の支援、さらには性同一性障害や不妊治療の相談窓口などを展開している。
また、2023年12月にはトランスジェンダーやパンセクシャル、ゲイなどさまざまなセクシャリティーのキャストが働くショットバー「G-pit」を新宿2丁目にオープン。今回は彼自身もキャストとして勤務する同店で取材を行なった。
―――性別適合手術のアテンドなどを請け負う会社を立ち上げようと思ったきっかけは何だったのでしょう?
井上健斗さん(以下、同) 僕、もともと風呂なしアパートで育ったんです。電気もガスも水道も止まることがあるような、すごく貧乏な家庭で。母親はギャンブルばかりで、常にお金がない環境でした。だから、子どものころから『将来は絶対社長になって、お金持ちになりたい!』と思っていましたね。学生時代は性自認についてたくさん悩みましたけど、家が貧乏だったことも同じくらい辛かったです。
2010年にタイのバンコクで性別適合手術を受けたんですが、当時はその手術に関する情報がほとんど発信されていなくて。だから、手術について調べるのにすごく苦労しました。
そこで、自分の経験を誰かの役に立てたいと思って、Webサイトを立ち上げたんです。顔もフルネームも公開して、自分が受けた性別適合手術に関する情報を全部無料で載せました。
そのサイトが大きな反響を呼んで、全国から性別適合手術を考えている方たちから問い合わせがたくさん来るようになって。それで、タイで性別適合手術のアテンドをするビジネスを始めようと思い、会社を設立したんです。
―――女性が好きだと自覚したのは、いつごろだったのでしょう?
今思うと、幼稚園くらいからずっと女性が好きだった気がしますが、ちゃんと自覚したのは中学生のときですね。でも「女性が好きだと、周りにバレちゃいけない」と思っていたので、性別適合手術を受けるまでは誰にもカミングアウトできず、ずっと1人で悩んでいました。
―――学生時代はどんなキャラクターでしたか?
男子とも女子とも仲がよくて、スポーツが好きなボーイッシュキャラでした。でも、心の中ではずっと葛藤がありましたね。
初めて彼女ができたのは19歳のときで、相手は専門学校の同級生でした。それまでは「自分は女性に告白する資格なんてない」と思っていたんです。でも、その女性には自然な流れで好きだと伝えられて、お付き合いすることになりました。
ただ、当時はまわりに隠れて付き合っていたので、デートのときも絶対に手をつなぎませんでしたし、2人だけの秘密にして絶対にバレないようにしていました。