製品が故障した時に、安全側の状態となるようにする設計の考え方がフェールセーフです。多くの製品で「安全側の状態≒機能停止」を意味します。
下記の記事でも解説した通り、製品設計では、「ものは壊れる」「人は間違える」ことを前提とすることが求められます。また、リスク低減の方法は危害の程度を小さくするか、発生頻度を下げるかの2つの方法があります。
フェールセーフは「ものは壊れる」「発生頻度を下げる」に対応した設計手法です。(誤った使い方が原因で発生した故障への対応という意味では、フールプルーフと一部重複します。)
3ステップメソッドに従えば、まず優先すべきは危害の程度を低減することです。フェールセーフでは、危害の程度を低減することはできません。他の方法により、危害の程度を十分に低減できない時に採用します。
フェールセーフは製品の機能維持よりも、安全性(機能停止)を優先する設計思想です。数多くの安全設計手法の中でも、最も重要な手法だと言えます。
一方で、機能停止は使用者の使い勝手を低下させます。したがって、やみくもにフェールセーフを導入することはできません。売れない製品になってしまい、どれだけ安全設計に配慮しても意味がなくなってしまうからです。そこが設計者にとっては難しい所です。
例えば、近年、電気製品や石油・ガス機器の長期使用による劣化が原因の不具合が大きな問題になっています。行政は対策として長期使用製品安全点検・表示制度を創設しました。使用者に長期使用のリスクを「知らせる」ことにより、事故を減らそうとしているのです。
フェールセーフの思想に従えば、長期使用に至った時点で機能を停止させれば、事故が発生する可能性は極端に低くなるはずです。技術的にはなんら難しくありません。
しかし、それでは社会の合意が得られません。「毎日使っている製品が突然使えなくなるのは勘弁してほしい」「どこも壊れていないのに点検費用がかかるのは納得いかない」。多くの使用者はそのように考えるでしょう。フェールセーフの適用は、事故の重大性や機能を停止することによる影響を考慮しながら行う必要があるのです。
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フェールセーフを理解するには、身の回りにある製品のフェールセーフ事例を見ることが一番の近い道です。ここからは、いくつかの事例を紹介していきます。
【フェールセーフ事例】温度ヒューズ/電流ヒューズ
温度ヒューズ(左)、電流ヒューズ(右)
(出所:モノタロウHP)
内容 | |
製品の故障や不具合 | 組み込んだ電気製品の過熱、過電流(短絡) |
避けるべき事象 | 製品焼損、火災、火傷 |
フェールセーフ | 過熱、過電流を検知した時に、通電をストップすること により、製品を安全側で停止する |
電気製品へのヒューズの組み込みは、最も一般的なフェールセーフの事例の一つです。多くの電気製品に組み込まれています。フェールセーフが作動するかどうかは、ヒューズという部品の信頼性に大きく影響を受けます。
また、下記記事で紹介したTDKの加湿器の例のように、ヒューズを組み込んでいても、フェールセーフが作動しない可能性があることは十分に頭に入れておくべきでしょう。
【フェールセーフ事例】エレベーターの非常止め装置
エレベーターの非常止め装置
(出所:経済産業省HP 「建築基準法上の制御器と安全装置について」)
内容 | |
製品の故障や不具合 | ロープの切断などに伴う、エレベーターの急降下 |
避けるべき事象 | エレベーターの落下 |
フェールセーフ | 一定の降下速度に達すると、調速機(※1)が引き 上げロッドを引き上げることにより、非常止め装置が 機械的にエレベーターを停止させる |
※1 調速機:エレベーターの速度が規定値を超えたことを検出し、停止させる装置
エレベーターには様々な安全対策が義務付けられていますが、非常止め装置は落下を防ぐ対策の一つです。
【フェールセーフ事例】漏電遮断器
漏電遮断器
(出所:モノタロウHP)
内容 | |
製品の故障や不具合 | 住宅内などで使用している製品や配線などからの漏電 |
避けるべき事象 | 火災、感電 |
フェールセーフ | 漏電を検知すると、通電を停止させる |
電力会社との契約電気量を超えると作動する、アンペアブレーカーという製品もあります。私の自宅でも月に1度ぐらいはお世話(?)になっています。フェールセーフの事例の一つですが、使用者の誤使用(容量以上に電気を使う)への対策という視点で見ると、フールプルーフともいえます。
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最終更新 2016年8月8日
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