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アホウドリ繁殖を小笠原の媒島で確認

2015.03.26

 小笠原諸島の無人島の媒島(なこうどじま)でアホウドリの繁殖が確認された。小笠原諸島でのアホウドリの繁殖は戦後初めて。アホウドリ類のひな移送による繁殖地形成の試みとしても世界初の成功例となった。2008年から取り組まれているアホウドリの新しい繁殖地形成事業が実を結びつつあることを示した。東京都と環境省、山階鳥類研究所が3月26日に発表した。

 東京都小笠原支庁の職員や小笠原自然文化研究所の所員が2月8日、媒島にアホウドリのつがいが飛来したのを見つけた。足につけた標識から、このつがいはいずれも、アホウドリの主要な生息地の鳥島で生まれた個体とわかった。雌は09年に、新繁殖地の形成を目指して、ひなで媒島の北西約5キロにある同じ無人島の聟島(むこじま)に移送され、人工飼育の後に巣立った個体だった。

 今回はひなを確認できなかったが、DNA分析の結果から、昨年5月に媒島で発見されたひながこのアホウドリのつがいから生まれたことがわかった。つがいの雌の血液サンプルは鳥島から聟島への移送時に保管されており、そのDNAと、昨年の媒島のヒナ、雄成鳥の羽のDNAを比較検討した。DNA分析は東京都小笠原支庁、小笠原自然文化研究所、北海道大学総合博物館、山階鳥類研究所の共同研究で行い、つがいとひなの親子関係を突き止めた。

 媒島でのつがいはこの1組しか確認されておらず、ひなが昨年発見された場所の近くで過ごしていた。アホウドリは毎年同じつがい、同じ場所で繁殖することが通例とされる。昨年の媒島でのひな発見で繁殖成功の可能性が高まっていたが、ひなとの親子関係も実証されて、媒島での新しい繁殖が確定した。このつがいは今年、卵のふ化に失敗した。昨年生まれたひなはまだ戻っておらず、北太平洋にいるとみられている。このほか、ひなを鳥島から移送した聟島で、1組見つかっているつがいはまだ繁殖に成功していない。

 小笠原諸島では、かつてアホウドリが繁殖していたが、1930年代に羽毛採取目的の乱獲で絶滅した。アホウドリの最大の繁殖地の鳥島が、噴火で破壊される恐れがあるため、火山がない小笠原諸島への再導入が国の保護計画として進んでいた。08年から12年までに鳥島で誕生したひな計70羽を聟島に移送し、4カ月の人工飼育のあと、69羽が聟島から巣立ち、媒島でひとつのつがいが繁殖した。繁殖数を増やすのが課題だが、東京都は「外来のノヤギを排除して草むらを繁茂させたことが、アホウドリの繁殖環境の回復につながった」とみている。

媒島で見つかったアホウドリのつがい、手前が雌、奥が雄=2015年2月
写真1. 媒島で見つかったアホウドリのつがい、手前が雌、奥が雄=2015年2月
媒島のアホウドリのつがい、手前の雌の左足に赤いリング(赤丸内)が見える=2015年2月
写真2. 媒島のアホウドリのつがい、手前の雌の左足に赤いリング(赤丸内)が見える=2015年2月
媒島で昨年5月に確認されたアホウドリのひな
写真3. 媒島で昨年5月に確認されたアホウドリのひな
(いずれも提供:東京都)

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