西アフリカで流行して1万人以上の死者を出しているエボラウイルスの新しいワクチンを、東京大学医科学研究所の河岡義裕(かわおか よしひろ)教授らが開発し、サルで感染予防効果を確認した。人への臨床試験も進める。致死率が極めて高いエボラウイルスに対する有効なワクチンは現在なく、試験中の3種類のワクチンも効果や安全性に課題がある。新ワクチンがエボラ出血熱の予防や治療に役立つか、注目される。米ウィスコンシン大学、米国立衛生研究所(NIH)との共同研究で、3月26日付の米科学誌サイエンスのオンライン版で発表した。
研究グループは、安全性の高いエボラワクチンを開発するため、エボラウイルスの増殖に必要な転写活性化因子のVP30遺伝子を欠損した変異エボラウイルスを人工的に作製した。この変異ウイルスは、VP30タンパク質を発現する人工細胞で増殖できるが、普通の細胞では増えない。このため、安全性が高く、エボラウイルスのほぼすべてのタンパク質を有するため、効果も期待できる。
開発した新エボラワクチンの安全性をさらに高めるため、この変異エボラウイルスを過酸化水素水で処理して、毒性を取り除いて不活化し、カニクイザルに2回接種して、その効果を調べた。その結果、この新ワクチンを接種されたサルは、4週間後に致死量のエボラウイルスを感染させても、すべて生き残り、感染を予防できた。このワクチンを接種しなかったカニクイザルは、同じ試験ですべて死亡した。
河岡義裕教授らは「現在開発中のエボラワクチンの問題を解決できる可能性が高い。エボラ出血熱の制圧に向けた大きな一歩となると期待される。今後、少ない回数の接種でも効果を発揮できるよう、免疫原性を高める方法を模索したい。また、早期実用化を目指して、人に接種できる安全性基準を満たしたワクチン製造や臨床試験を進めていく」としている。
関連リンク
- 東京大学 プレスリリース