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全体波乱で拾い場到来!「IT人材関連株」大相場のプロローグ <株探トップ特集>

特集
2020年8月1日 19時30分

―ニューノーマルの新勢力が再評価ステージへ突入、DX推進の最強布陣とは―

●2極化勝ち組銘柄は押し目買い好機

新型コロナウイルスの感染第2波に対する懸念が日増しに強まるなか、企業の決算発表シーズンに突入し、総論としてかなり手の出しにくい相場環境となっている。週末31日の日経平均株価は600円を超える急落でフシ目の2万2000円台も一気に割り込み安値引けとなった。6月中旬以来の波乱相場に遭遇し、投資家心理も大きく揺らいでいる。

ただし、ここでの急な株価調整は押し目買い好機となっている可能性がある。これまでの流れを振り返ると、3月以降のコロナショック後の戻り相場で顕在化したのは、ニューノーマル(新常態)で活躍できる銘柄とそうでない銘柄の2極化が進んだことだ。テレワークの導入加速や巣ごもり消費など社会構造の変化を収益チャンスに結実させた企業は、株式市場でも高く評価され、株価の居どころを変えた。

今回の全体急落局面でも、拾い場を提供する銘柄として注目されるのは2極化相場の勝ち組エリアに位置する企業である。テーマとしては官民を挙げて取り組みが加速しているデジタルトランスフォーメーション(DX)が有力視されるが、デジタルシフトを推進するのは決して人工知能(AI)IoTではない。それを駆使する人材である。今後はIT人材の獲得や育成に向けた取り組みが、業態を問わず企業にとって勝ち残りをかけた極めて重要な命題となっていく。

●DX推進に最も重要なのは「人材」

31日に発表された6月の有効求人倍率は1.11倍と、コロナ禍の影響で2014年10月以来5年8ヵ月ぶりの低水準に落ち込んだが、IT人材については次元が異なる。需要に供給が全く追いつかない払底状態といっても過言ではない。そうしたなか、大手IT企業の人材戦略も活発だ。富士通 <6702> は今春、DX事業を手掛ける子会社「リッジラインズ」を新たに立ち上げて対応に当たっているほか、NEC <6701> も今月初旬に、DX強化を目的に23年3月期末までに専門人材(高度IT人材)を現在比70%増となる5000人に増員することを発表している。また、約3万人のIT人材を抱えるといわれる日立製作所 <6501> も22年3月期までに更に7000人を増員する計画を打ち出している。

今後、自動運転分野を深耕するうえでIT化を加速させる必要があるトヨタ自動車 <7203> もAI子会社の組織再編などを通じIT人材の獲得を進める構えだ。更にIT業界から離れた食品や素材メーカーなどでもサントリー食品インターナショナル <2587> やAGC <5201> などの業界を代表する企業が、IT能力の高い人材を確保しつつデジタルシフトに経営資源を投下する姿勢を相次いで明示している。

●IT人材関連で前途有望な5銘柄を抜粋

31日に東証マザーズに新規上場したSun Asterisk <4053> [東証M]はソフト開発のほか、IT人材の育成・派遣ビジネスを手掛けることで注目されたが、全体波乱相場をものともせず物色人気に沸いた。寄り付きから買いが集中し気配値のまま水準を切り上げ、公開価格700円に対し73%高の1209円で初値を形成。その後も一段と上値を買い進まれ、初値から300円高の1509円ストップ高で買い物を残して引けた。公開価格の2倍以上という鮮烈なロケットスタートは否応なく市場の耳目を驚かせた。地合い悪のなか上値にしこりのないIPO銘柄へ消去法的に短期資金が集中した面もあるが、そこにはウィズコロナ、アフターコロナの世界において、高度なIT人材は企業にとって重要な人的資源として脚光を浴びる、というマーケットの読みが働いている。

DX推進には人材の確保こそが重要であるということが、今後の株式市場で証明される可能性は高い。それに先駆けて、今回はIT人材に絡む有望株として絶好の拾い場を提供していると思われる5銘柄を抜粋した。

◎ALBERT <3906> [東証M]

独自開発のアルゴリズムを武器にビッグデータ解析やAIの開発案件で優位性を発揮するだけではなく、AI全盛時代に対応してデータサイエンティスト育成支援事業などで先駆している。とりわけ、トヨタ自動車、東京海上ホールディングス <8766> 、KDDI <9433> 、三井住友フィナンシャルグループ <8316> など各業界を代表する大資本企業と提携関係にある点は特筆される。ビジネス・アナリティクスの市場規模は年平均14%弱のペースで成長しており、同社によると2030年には14万5000人まで拡大する見通し。足もとの業績も好調、20年12月期業績は売上高、営業利益ともに大幅な伸びを見込んでおり、営業利益は前期比53%増の2億9000万円と高変化が予想されている。

◎ラクス <3923> [東証M]

中小企業などを主要顧客に、クラウドサービスとIT人材で企業の業務効率化及び付加価値化に向けたソリューションを提供する。クラウドサービスではメール管理システム「メールディーラー」で国内首位に位置するほか、経費精算システム「楽楽精算」への引き合いも旺盛、今後もテレワーク導入が加速するなか潜在需要の掘り起こしが進む状況にある。また、IT人材ビジネスはアサイン(指名・配属)活動を6月から再開し、収益への反映が期待できる局面となっている。6月の全社売上高は前年同月実績を34%も上回る高い伸びを確保した。21年3月期業績はトップライン、利益ともに急拡大見通しにあり、営業利益は前期比2.8倍の32億9000万円を計画。

◎クシム <2345> [東証2]

システムエンジニア向けを中心に学習管理ソフトやeラーニングソフトの製造販売を手掛ける。直近では、クラウドにアップロードするだけで簡単にデジタルリマスターを実現する「AIリマスター」サービスなどをスタートさせ顧客基盤開拓に努める。高度IT人材の育成に経営の重心を置き、AIやブロックチェーンに特化した人材育成で企業のニーズを取り込む構えだ。高度IT領域ではeラーニングのほか専属講師をつけて技術を習得させ、様々なプロジェクトで活躍できるエンジニアを輩出している。20年10月期は営業黒字転換見込み。政府は学校教育法における遠隔教育に関する規則を改正しオンライン学習を後押しする検討を進めており、中期的にも追い風が強い。

◎ビーネックスグループ <2154>

自動車やエレクトロニクス業界向け技能・技術者派遣のほか、開発系人材の派遣も手掛ける。国内にとどまらずグローバル市場も視界に置き、英国における同業態の買収など海外でのM&A戦略も積極推進して業容拡大に余念がない。同社が掲げる新中期経営計画では最終年度の22年6月期にEBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えた利益)100億円を目指す野心的なプランを公表している。ちなみに19年6月期実績ベースのEBITDAは68億4000万円だった。20年6月期営業利益は前の期比2割程度の減益を見込むが、足もとITエンジニアに対する需要が旺盛で21年6月期はV字回復が有望。株主還元に前向きで配当利回りの高さも特長となっている。

◎ギグワークス <2375> [東証2]

法人及び個人向けIT関連機器サポート事業や、コールセンターコンサルティングなどIT系人材派遣を幅広く手掛ける。AI・IoT分野に照準を合わせた経営戦略を売り物とする。また、同社は2019年8月に「スリープログループ」から現社名に変更したが、その名が示す通りギグエコノミー関連のプラットフォーマーとして市場の注目を集めている。既に10万人を超える登録エージェントを確保しており、空いた時間やスキルに合わせて多様な業務をマッチングできる圧倒的な強みを持つ。GIGAスクール構想でもICTの環境構築などで重要な役割を担っている。業績は16年10月期から前期まで増収増益基調を継続、20年10月期も8%増収、営業15%増益を計画している。

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