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静かな町で明日を探る、「ローカル5G」関連の可能性 <株探トップ特集>

特集
2020年4月2日 19時30分

―5G活用で関心、政府後押しで普及に期待―

新型コロナウイルスによる感染拡大が止まらないなかにあっても、日本株については底堅さが見え始めた。いまだ予断を許さない状況ではあるものの、日本の感染拡大状況が欧米に比べて緩やかなことや、現時点で医療崩壊が起こっていないことなどがその理由として挙げられよう。また、日銀が企業の資金繰り支援に加えて、株式ETFの買い入れ枠を6兆円から12兆円に増額したことも相場の下支えとなっている。

物色の傾向としては引き続き新型肺炎に関連したものが賑わっているが、その関連銘柄には需給相場的な色合いを見せるものも多くみられるようになった。新型肺炎関連銘柄への注目は続けつつ、関心は徐々に広がりを見せることになりそうだ。

●5G商用サービスを相次ぎスタート

こうしたなか、新型肺炎の感染拡大でも歩みを止めないビジネス分野がある。国内でも3月下旬から各社が相次ぎスタートさせた第5世代移動通信システム(5G)で、NTTドコモ <9437> が3月25日から、KDDI <9433> が26日から、ソフトバンク <9434> が27日からそれぞれ商用サービスを開始した。既に基地局などの設備投資に関連した銘柄は5G需要を取り込み、業績へも反映させつつある。アンリツ <6754> やアルチザネットワークス <6778> [東証2]をはじめ、各銘柄への注目も高まり始めているが、今後はむしろ5Gの活用分野への関心が高まりそうだ。

●広がりを見せるローカル5G

特に注目されるのがローカル5Gだ。ローカル5G とは、前述の通信事業者(キャリア)が全国で提供する5Gではなく、企業や自治体が自営で5Gを導入・構築し、IoTやスマートファクトリーで活用するというもの。限定されたエリアでの利用という制限はあるものの、キャリアを介さずに5Gを利用でき、セキュアな環境で自由度の高い通信環境を構築できる。例えば、従来の工場では多くのケーブルが張り巡らされ、機器・装置のレイアウトが限定されているが、ローカル5Gは工場の無線化を図ることでこれを解消し、更なる自動化を促進する。プライベートネットワークのため、通信障害や災害の影響を受けにくいといった特徴もある。

●政府もローカル5G普及を後押し

政府は今年度から5G投資促進税制を創設。ローカル5Gに必要な送受信設備や光ファイバーなどを導入した場合、取得価額の30%を特別償却または15%を法人税額から控除(当期の法人税額の20%上限)できるようにした。「特定高度情報通信技術活用のシステムの開発供給及び導入の促進に関する法律」のシステム導入計画を策定し、担当大臣の認定を受けることが前提で、同法の施行日から2022年3月31日までに認定を受けた上で取得する必要があるが、これによりローカル5Gの普及を後押ししそうだ。

●昨年12月からは免許申請を受け付け

19年12月にはNEC <6701> や富士通 <6702> などがローカル5Gの免許を総務省に申請し、今年2月18日には初めての予備免許を富士通に与えた。

これを受けて富士通では、ローカル5Gの無線局を新川崎テクノロジースクエア(川崎市幸区)に設置した。同拠点内の多地点カメラと人工知能(AI)による人の動作解析で、不審行動などを早期に検知するセキュリティーシステムを実現し、建物内の防犯対策を強化したという。また、今後はネットワーク機器の製造拠点である小山工場(栃木県小山市)でもローカル5Gの免許を取得し、有用性を検証する予定だ。

一方のNECは、玉川事業場(川崎市中原区)の「ローカル5Gラボ」で検証を進める予定のほか、子会社でICTシステム機器の開発・製造・販売を行うNECプラットフォームズの甲府及びタイ工場からローカル5Gを導入し、多数の搬送ロボットの遠隔制御などに活用する。3月にはANAホールディングス <9202> 傘下のANAから、訓練施設へのローカル5G導入を受注。23年度までには100以上の企業・団体にローカル5Gの提供を図る。

このほか、住友商事 <8053> も傘下のジュピターテレコムが免許を申請した。他のケーブルテレビやインターネットイニシアティブ <3774> と組んでローカル5G導入を支援する新会社を設立して事業を進める方針で、まずは光ファイバーの通信網と各家庭を5Gでつなぎ映像配信などを強化するほか、将来的にはスマート工場や在宅医療など多くの新サービスの情報インフラへ進化させる方針だ。

●システム開発会社の商機拡大にも期待

ローカル5Gの普及が進むことで、システム開発会社のビジネスチャンス拡大も期待されている。日鉄ソリューションズ <2327> は、ノキアと国内販売代理店契約を締結し関連ソリューションを強化。また、数百万円から数千万円かかるとされるローカル5Gの初期投資を月額数十万円の水準から導入可能な基地局のレンタル型メニューを提供する予定だ。

また、前述の住友商が行った国内初の屋内実証実験に参加したネクストジェン <3842> [JQG]も関連銘柄として挙げられる。ネクスジェンは今年1月に協和エクシオ <1951> 及びタカコム(岐阜県土岐市)と資本・業務提携したが、協エクシオとの協業により主にローカル5G分野の強化を掲げている。

更にローカル5G用のSIMカードの提供や、アンテナ機能を持ち透明な表面素材を使ったフィルムを開発した大日本印刷 <7912> 、ローカル5Gを簡単に導入できる小型の通信装置を23年にも発売予定の日清紡ホールディングス <3105> などの動向にも注目したい。

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