「プリント基板業界のラクスル」ピーバンドットコム 田坂正樹社長 市場変更を語る(後編)
従業員数31人で、2万社の企業と取引を行う少数精鋭のピーバンドットコム<3559>は、プリント基板業界の“ラクスル”とも言われています。財務面では、無借金経営の自己資本比率79.1%の経営を行っている同社の強みはどこにあるのか?田坂社長に伺いました。
ピーバンドットコムは業界に仕組みを変えることに成功したことが似ていることから、プリント基板業界の“ラクスル”と呼ばれています。プリント基板に絞って、全国の工場と提携することで、プリント基板の複雑な受発注の仕組みをシステム化し、Web上で基板の設計から製造、実装までをワンストップで簡単に注文できる仕組みを構築しています。少量生産・最短1日の短納期にも対応できる手軽さと、利便性を重視したサービスはまさに、「プリント基板業界のラクスル」と言われる所以です。
??ラクスル<4384>は、デジタル化が進んでいない巨大で非効率な印刷業界にECを持ち込みました。自社で印刷設備を持たずに、全国の提携先を「仮想的な自社設備」として捉えている点が際立ったビジネスモデルです。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」をヴィジョンに掲げて、産業構造の変革をなし得た企業です。
◆AIで部品を探せるように業務効率化、Swissmic 社に出資
2018年12月26日にスイス法人のシステム開発企業であるSwissmic 社に出資し、システム開発への投資を行いました。これによる新たなサービスの第1弾として、プリント基板の設計データをアップロードするだけで、瞬時に必要な電子部品の見積確認が可能となるサービスを2019年10月ごろに開始予定です。これも、業務効率化にこだわったサービスで、従来、2~3営業日を要していた調達部品の調査が不要になり、瞬時に見積回答できるようになります。これによって、ワンストップ利用率を現在の22.5%から50%に向上させる見込みです。
◆ソースネクスト製品を手掛ける中国の深センジェネシスホールディングスと業務提携
元々、たとえば補聴器のような、100-1000台の中小ロット量産における電子機器の製造受注に対応できる体制は整えておりました。今回のジェネシスホールディングスとの提携によって、電子機器の企画から製品化まで一気通貫で受注する事ができるようになります。中国の深センにある、ジェネシスホールディングスはソースネクストのポケトークやジャパンタクシーのデジタルサイネージのEMS(電子機器製造受託サービス)事業を行っており、スマートデバイスを小ロットで企画、開発、製造するノウハウを持っており、今回の業務によって生産体制の効率化を図り、新規顧客のアプローチやニーズを取り込み事ができそうです。
◆業績について教えてください
2020年3月期第1四半期は先行投資により減益となっていますが、通期は予定通りの推移見込みです。2020年通期の見通しは売上高22億円、営業利益2億7000万円を見通しています。当社は株主に対する利益還元を行っており、2019年3月期は配当金10円/株、今期も2019年3月期と同水準で検討しております。
◆市場変更について
マザーズ上場前から1万7000社を超える企業との取引がありましたが、上場後さらに3000社の取引先企業が増えました。それだけでなく、今まで単価が20万円前後の受注が主な層でしたが、マザーズ上場後は200万円を超える注文をいただくようになりました。マザーズ上場によって知名度が上がったことで、信用を得たように感じます。流動性を向上するために株式分割を行い、さらに、今後大手企業との取引を深めるために東証本則市場変更への準備を着実に行っています。
◆2018年のプリント基板の国内生産額は6,249億円
国内の市場規模ですが、2018年のプリント基板の国内生産額は6,249億円規模になります。2020年3月期の当社の売上高予想は22億円ですが、市場シェアでは0.3%程度ということになり、当社の市場獲得余地はまだまだあると認識しております。また、IoTの需要増により、センサー市場が10年間で2018年実績比4.2倍に 拡大するという見通しが出ております。IoT、ウェアラブル等に使用されるデバイスに関しては、すべてその先にはプリント基板がつながるかたちになりますので、プリント基板の需要も拡大していくという認識でおります。
??インタビューを終えて、ピーバンドットコムは圧倒的にユーザーファーストを大切にし、ユーザーの業務効率化を追及した企業であることが伺えました。その姿勢は、実は社内に向けても徹底されていることを、インタビューを通して知ることができました。同社ではシステムエンジニアの活躍が事業運営の重要なファクターの1つだそうです。システム全体の工程の開発に携わることができる同社での開発は非常にやりがいがあるようです。さらに、システム開発のうち半数は「社内の業務効率化のための開発」にも繋がっているとのことです。社員の働きやすい環境と業務効率化を整えることに徹底していることが、同社の成長のスピードを加速させ、少数精鋭を可能にし、利益率の高さを保つことにつながっていることが印象的でした。
(フィスコ アナリスト馬渕磨理子)
《SF》
提供:フィスコ