白状する。ネットサーフィンというよりネットリとしたサーフィンと言うか、たしかに私は「いかがわしいページ」をiPhoneで見ていた。詳細は言えないが、私にとって「いかがわしいページのパトロール」は長年続けている日課であり、Webの勉強も兼ねている。だが、こうも突然、
「ご使用のiPhoneはハッキングされている可能性があります!」
なんてポップアップが出てきたのは初体験だった。こ、こんな時に……フザケやがって! ウブな中学生とかだったらビビるだろうし、信じちゃうだろ!! ゆるすまじ!
断言しても良い。ハッキングなんてウソだ。もしもコレが出てきたら、焦らずそのページを消せばいいだけ。対策は以上。でも、このまま進んだらどうなるのか気になる人も多いだろうから、いっちょ進んでみることにすっぞ!
・スタート!
▲まずは突然、本当に突然、こんなポップアップが表示された。しょっぱなから「訪問した疑わしいでの〜」と実に疑わしい日本語を使ってしまっているのが残念でもあり、この注意勧告者が疑わしい存在であることの証でもある。
そしてポップアップを閉じると……
▲ハッキングされてる可能性キタ〜! ちなみに焦らせるためのカウントダウンタイマー的な赤文字も見えるが、壊れているのか動かなかった。とにかく2択を迫られる。とりあえず「インストール」を押してみると……
▲やたらと高評価なiOSアプリ「パーソナルセーフティ」のページに飛ぶ。これをインストールせよ、ということなのだろう。でも、どうも怪しいので一度このページを閉じてから……
▲ふたたび戻って、「キャンセル」のボタンを押してみると……
▲「続行できません」と表示され、選べるのは「インストール」のボタンのみ。最初の2択は何だったんだ……。もうこの時点で怪しさMAX。この “2択のフリをした1択” は詐欺師が使う定番テクだ。とにかく、インストールボタンを押すしか道はない。
▲あらためてアプリのページを見てみると、やたらと高評価なのが目に入る。910件も評価が付いてて、星は5段階評価の4.4とはスゴい。食べログだったら文句なしの百名店だ。
しかし、食べログもそうだが、数字だけで判断してしまうのは非常に危険。こういう場合は、レビュー内容をしっかり見ておくのが鉄則である。ということで、一番上のレビューを見てみると……
▲ほらね。日本語がおかしい。ていうか「ティマティ」って誰だよ! いちおうググってみたところ、通称 “ブッコミ帝王” ことロシアのラッパー「ティマティ(Timati)」がヒットしたが、おそらく違う人と思われる。
ティマティの謎はさておき、真に注目すべきは「★(星1つ)」をブッコんだ辛口レビュアーの書き込みだろう。
▲なんだか恐ろしいことが書いてあるが、デベロッパの無慈悲なコピペ回答が恐ろしさに拍車をかけている。いずれにしても、もしもこのレビュワーたちが言っていることが本当であれば……
▲このアプリこそが「悪質な脅威」ということになるのだが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。毒を以て毒を制する意気込みで、いざインストール……
▲うわわわわ! しれっと恐ろしいことが書いてある。先出のレビュアーが言ってた通り、このアプリ、週に960円も自動的に引き落とされてしまうサブスク系の有料アプリだ!
でもまあ、3日間は無料と書いてあるのでインストール(←みんなはマネしちゃダメだよ)。そしてアプリを立ち上げると……
▲私にはわかる。絶対にお前、安全じゃない、と。んで、そのままローディングを待っていると……
▲あらためて課金の案内が表示される。1週間で960円。もしくは、87%割引の8000円を支払えば1年間使えるっぽい。この乱暴な値段の付け方も、いかにもボッタクリな雰囲気がしてゾクゾクする。
んで、どうしようかな……と迷っていたら、
▲いきなり100円にディスカウントされた。だが、いずれにしても最初の週(100円)が過ぎたら自動的に週960円のサブスクコースに突入するので要注意だ。
んで、そのまま進めていくと……
▲通知の許可が求められる。ていうか、さっきから出てくる “安全” って何だ……? と思ってホーム画面を確認してみると、
▲ん?
▲ぜんぜん安心できない「安全」が、そこにいた。とかなんだとかやってるうちに……
▲突然、なぞの「スキャン」が始まった! わ〜っ、やめてくれ〜っ! こわいこわい!!
すると!
▲セキュリティリスクがあると! それはオマエ自身なんじゃないのか……と思いつつ、「続行」を押してみると……
▲6つのメニューが表示される。一番上のやつから、簡単に見ていこう。
▲まずは、おそらく「コンテンツブロッカー」と書きたかったと思しき「コンテンツブローカー」。コンテンツをブローカーしてどうするんだ。
ていうか、ポップアップもフィッシングフォームも悪意のあるスクリプトも、ぜんぶお前がやってることなんじゃないのか疑惑が生じまくりなのだが、とにかくコンテンツをブロックしてくれるらしい。
▲続いての「ウェブ保護」を押してみると、ハウツー的な手順が表示された。え? 拡張機能なんてあったっけ……と、手順通りに調べてみると……
▲なんか選べるところが増えている〜〜〜っ!! こえええ〜〜〜〜っ! とにかく、謎の「Personal Safety」を押してみると……
▲ロケットニュースのページが「チェック」され……
▲「安全」との評価が得られた。よかった。なんだかどこのサイトをチェックしても「安全」って出るような気がしてならないが、とにかく「ウェブ保護」はこんな感じ。
んで、続いては「連絡先のバックアップ」なのだが……
▲なんかモーレツに連絡先を抜かれる予感がしてならなかったので、やめておいた。
▲続いての「着信ブロッカー」も、ボタンを押したら手順が表示されたのだが……
▲電話の設定項目が謎に増えているのが非常に気持ち悪い。
んで、お次は、“他のサービスからのデータ漏洩の可能性を確認します” の「IDスキャン」を押してみたのだが……
▲私のメールアドレスが思い切り漏洩しそうなので入力するのはやめといた。なんでメアドを聞く必要があるのか。本気で怪しすぎるぞコレ。
そして最後の項目、“秘密のメディアファイルをパスワードでロックします” の「プライベートコンテナー」はというと……
▲何も検出(?)されなかったと。なんだかよくわからないが、「追加」ボタンを押してみると……
▲またサブスクへの案内が……! てな感じで、今回の「ご使用のiPhoneはハッキングされている可能性があります!」のポップアップならびに、謎のセキュリティアプリの狙いは……
▲とにかく「週960円」のサブスクリプションへ登録させるのが目的であろう。また、アプリの内容的に、「連絡先」や「メールアドレス」など個人情報を集める狙いも兼ねている可能性も捨てきれない。
よって、もしも「ご使用のiPhoneがハッキングされている可能性があります!」と脅されても、決して慌てて怪しいアプリをインストールしないように。とにかく落ち着こう。賢者のように。だってだって、「そのアプリはハッキングみたいなことをする可能性があります!」なのだから。
<完>
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
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