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みずほのシステムについて質問です。

ツイッターや私の周り、レオスのファンドマネージャーの方などでも「みずほがエンジニアのコストカットをした」「三行併合をしてシステムがおかしくなった」、「組織風土が腐っている」、「顧客軽視」、「システムを一から作り直せ。」と非難轟々だと思いますが、これらの批判は本当に妥当でしょうか。
みずほの前年度の純利益は5000億円で、そのうち銀行リテール部門の利益は250億にすぎません。(さらにその一年前はリテール部門赤字ですし、もちろんシステムはなおして欲しいですが、稼げないリテール部門にさらに莫大な設備投資をするという経営判断が株主にとって投資に見合う価値があるのでしょうか?)

また約20年間、日本でも有数の大手ベンダーに数千億円もの大金を投資してきたみずほに対して、コストカットや要件定義が曖昧だからダメだという論調も少し違和感があります。
もちろん最終的な責任や批判を背負うのはみずほですが、これを作っているIBM、日立、富士通やNRIなどさまざまなベンダー・コンサルはシステム設計のプロフェッショナルとしての責任は無いのでしょうか。
私はエンジニアやコンサルがみずほプロジェクトの悪口を言っているのも実際に聞いたことがあります。それを聞いて、個人的には日本を代表するベンダーが少なくないお金をもらって仕事をしているのに、自らは中抜きして多重下請け構造を黙認し、客の悪口に終始するベンダー側の態度こそ日本企業IT化を阻害しているのではないのかと思ってしまいます。
メディアも問題を起こしたみずほを終始粗探しをして報道していますが、別にコードを自ら書いているわけでもないみずほ社員や経営陣の責任を追求してクビにして外部から人をすげ換えたり、日本政府(金融庁)がいくら報告書を書かせたりしたところで、みずほのシステムは治るわけがない(そんなので治ってたらこんなに高頻度で起こらない)と思います。

金融機関で実際に働かれている中田さんの意見をお伺いしたいです!
よろしくお願いします。

みずほ関係者の方でしょうか。連日のように繰り返されるシステム障害とその批判を目の当たりにして疲弊しているのだろうとお察しします。ただ、仰っている内容はどれも妥当性に乏しいので、公言されるとますます批判の声が強まってしまうことが危惧されます。ご自身の反論が有効かどうかを検証する有力な方法は「他の2メガバンクではこのロジックは通用するか?」という考え方です。以下、すべてこのアプローチでご説明します。 まず「銀行リテールの利益は250億円しかなく赤字のこともあるのだから莫大な設備投資をすることは株主にとって妥当ではない」というのは論理が全く逆で、莫大な設備投資をしたのですからもっと稼がなければならないのに稼げていないことが問題なのです。MUFGやSMFGをご覧頂ければ銀行リテールだけでも1,000億円単位で儲けていることがわかるでしょう。しかもシステム統合に要した費用はMUFGで3,300億円、SMFGではわずか1,000億円です。みずほの場合は累計8,500億円(第一次の興銀・富士・第一勧銀の統合で4,000億円、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行とみずほ信託の統合で4,500億円)もつぎ込んだのですから、他の2メガに比すれば銀行リテールだけで数千億円は稼げてもおかしくないはずです。にもかかわらず赤字だったり250億円しか稼げなかったりしたら当然株主は納得しないでしょう。最初からそんな投資はやめてそのままリテール部門は廃業すべきだったという判断もあり得たはずです。そもそもなぜ8,500億円もかけてシステム刷新が必要になったのかと言えば、2度にわたる大規模なシステム障害が起こり、老朽化したシステムでは業務継続が不可能だったからです。旧システムでは振込処理の結果はプリンターで紙出力されるという、デジタルとは程遠い世界でした。そんなシステムで現代の金融に対応し続けられるはずがなく(だからこそ障害が起きたわけですが)、営業を続けたいなら大規模な刷新は不可避でした。そして、営業を続けたいならば設備投資のぶん稼げて当然のはずなのです。少なくとも他の2メガと同等には。 次に「システムベンダーが悪い」論ですが、これも残念ながら他の2メガも同様にシステムベンダーを使って統合しており、かつシステム障害がほとんど起こっていないのですからベンダーのせいにするのは分が悪いでしょう。特にMUFGに至っては、統合前の4行が使っていたベンダーはIBM、日立、富士通の3社であり、これは奇しくもみずほと全く同じでした(興銀が日立、富士がIBM、第一勧銀が富士通)。全く同じベンダーによる統合を経たのに結果が異なるのはなぜでしょうか。経営が異なるからです。『みずほ銀行システム統合 苦闘の19年史』を是非ともお読み頂きたいのですが、統合にあたってみずほの経営陣は「統合は技術の問題であって経営の問題ではない」という大いなる勘違いをしていたことが明らかになっています。おそらく質問者さんも同じ勘違いをされているのではないでしょうか。技術の前に方針が統合されなければ現場の技術に落とし込むことができません。競合するシステムがあった時にどちらに寄せるのかは技術ではなくトップダウンで決めざるを得ない問題なのに現場に任せたが故に不毛な論争と歪なシステムが出来上がったことがよくわかります。例えるなら、3つのレストランが合併した時に、使用する調理用具はどのレストランのものを使うのかという議論の末に、「全ての調理用具を同時に3種類使おう、フライパンを3種類溶接して同時に使えば対等だ」というような意思決定がなされたようなものです。MUFGでは全て三菱側(IBM)に統合させることによってこういった「全部残そう」論を排除していました。私もシステムベンダーの話を聞くこともありますが、「みずほだけは嫌だ」というコメントは珍しくありません。同じ勘定系なのに、なぜ他の2メガとは異なる判断をされるのでしょうか。その忌避感を「悪口」と捉えている限り改善は望めません。 最後の「自らコードを書いているわけではないみずほ社員や経営陣の責任を追及してもみずほのシステムは治るわけがない」というのも、上記のように「責任はコードを書いている人にある」と思っているからこそ出てしまう言葉でしょう。3つのフライパンが結合した調理器具で料理が失敗したとして、その責任は誰にあるでしょうか。コック(みずほ社員)としては、使い勝手が悪すぎる結合フライパンを作った溶接職人に文句を言いたくなるかもしれませんが、本質的には筋違いです。「経営陣がフライパンを溶接できるわけではない」とはいえ、そんなフライパンを作らせたのは経営陣だから当然責任は経営陣にあります。「今の」役員個々人に責任があったかというとこれは気の毒な面はありますが、しかし組織として先代からの権利と責任を受け継ぐ前提で就任しているのですから、責任がないとも言えません。 「ではどうすればいいのか」というのは現時点で誰もわかっていないと思いますが(当のみずほ自身がわかっていないのですから)少なくともベンダーのせいにしているうちは解決は望めないでしょう。質問者さんが仮にみずほ内部の方であるならば、そのような他責思考に陥ってしまう社内文化が醸成されている可能性が高く、それは即ち金融庁やメディアの指摘が正しい傍証になってしまっています。みずほへの批判に対して憤懣やるかたない思いを覚えてしまうのは愛社精神があるからだと思いますが、是非ともその愛社精神は責任転嫁や正当化ではなく、自行の改善という方向に使って頂きたいと思います。

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