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JP6809149B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、透明性、及び、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物に関する。
ポリエステルは、耐熱性、機械的強度、透明性、耐薬品性、ガスバリアー性などの性質に優れており、かつ価格的にも入手し易い事から、汎用性が高く、現在飲料・食品用容器や包装材、成形品、フィルムなどに広く利用されている樹脂である。しかし、例えば最も広く使われているポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)は、そのガラス転移温度がおよそ80℃程度と低く、用途によってはその耐熱性が十分でなく、高温条件下で寸法変化や変形が起こり、使用するのが困難であった。
ポリエステル樹脂の耐熱性を向上させる方法としては、例えば加熱して結晶化させる方法があるが、加熱の行程が加わり生産性が低下する。またこの方法は、耐熱温度の向上の限度があり、特に非晶性のポリエステル樹脂には適用ができない。
ポリエステル樹脂に二軸延伸を施すことでフィルムやシートの耐熱性は向上されるが、いくら延伸条件によって耐熱性を向上させたとしても、その効果には限界がある。
ポリエステル樹脂の耐熱性を向上させる他の方法としては、ポリエステル樹脂によりも高いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を混合する方法が挙げられる。ブレンドする樹脂として、例えばポリカーボネート、ポリスルホン、非晶性ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、非晶性ポリイミド、及び、ポリアミドイミド等を挙げる事ができる。これらの樹脂の中でも、特にポリエーテルイミド(PEI)は、耐熱性、熱安定性及び透明性に優れるだけでなく、ポリエステル樹脂、特にPETと混合しても機械特性を損ねる事がないという点で特に好ましいものである。
ポリエステル樹脂とポリエーテルイミド樹脂を混合して、ポリエステルのガラス転移温度を向上させる技術は古くから知られており、各種検討が為されてきた。しかしながら、ポリエステル樹脂とポリエーテルイミド樹脂は混合時の条件を適切に選択しなければ、相溶しない事が分かっている。具体的には、溶融成形法を用いた場合、溶融混練時の温度、せん断、スクリューのL/D等の条件によって、ポリエステル樹脂に対するポリエーテルイミド樹脂の分散性が大きく異なる。ポリエーテルイミド樹脂の分散が十分でないと、得られる樹脂組成物、成形体、及び、フィルムの透明性、及び/又は、機械特性が低下するという問題が生じる。
特許文献1には、ポリエステル樹脂に対してポリエーテルイミド樹脂が微分散することで剛性と熱寸法安定性に優れたフィルムが得られることが開示されている。しかしながら、ポリエーテルイミド樹脂の分散径を小さくする為に、一度共溶媒に溶解させてから乾燥することで得られたチップを用いて溶融成形を行っており、透明性や機械特性の低下を防ぐ事ができるものの、生産性が悪く実用的・工業的観点からは好ましくない。
特許文献2には、ポリエステル樹脂とポリエーテルイミド樹脂からなる樹脂組成物について、使用するポリエステル樹脂を結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルの組み合わせとする事で、耐熱性及び透明性に優れた樹脂組成物、及び、その樹脂組成物から製造される成形体について開示されている。しかしながら発明者の検討によれば、特許文献2の実施例に開示されているシートはいずれも、その樹脂組成より結晶性が低く、フィルムとした場合に加熱時の収縮率が大きいため実用上問題があることが判明した。
特開2002−012680号公報 特開2005−263957号公報
本発明で解決しようとする課題は、透明性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。また透明性、機械特性、さらには加熱時の耐収縮性にも優れたポリエステル系二軸延伸フィルムを提供することにある。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物。
[2] 単一のガラス転移温度を有する[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が酸成分(a−2)としてテレフタル酸を50モル%以上含む[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記ポリエーテルイミド樹脂(B)が、nを整数として下記式(5)で表されるポリエーテルイミドである[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。


[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム。
[6] 加熱収縮率が縦方向、横方向、共に1%以下である[5]に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム。
[7] ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部未満、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物の製造方法。
本発明が提案するポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の透明性を損なわずに耐熱性が改善されており、この樹脂組成物から得られるポリエステル系二軸延伸フィルムは透明性、機械特性、さらには加熱時の耐収縮性にも優れるので、耐熱性や光学特性が必要な用途にも好適に使用できる。
結晶性樹脂材料における動的粘弾性の温度分散測定の結果概略を示したものである(村上謙吉(昭和61年)「やさしいレオロジー−基礎から最先端まで−」産業図書.より引用)。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<ポリエステル樹脂組成物>
本発明の実施形態の一例に係るポリエステル樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と称することがある)は、ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物である。
従来より、ポリエステル樹脂の耐熱性を改善するために、結晶性ポリエステル樹脂(A)に対してポリエーテルイミド樹脂(B)を混練することは提案されていたが、得られる樹脂組成物の相溶性は悪く、透明性に問題があった。
本発明が提案するポリエステル樹脂組成物は、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)をさらに含み、ポリエステル樹脂組成物の組成比を、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、ポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、ポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下とすることで、耐熱性及び透明性の問題を解決したものである。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の透明性を損なわずに耐熱性が改善されているため、この樹脂組成物から得られるポリエステル系二軸延伸フィルムは透明性、機械特性、さらには加熱時の耐収縮性にも優れ、耐熱性や光学特性が必要な用途にも好適に使用できる。
本樹脂組成物は、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、ポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部未満、及び、前記ポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含むことが重要である。
ポリエーテルイミド樹脂(B)の含有割合は、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上50質量部未満である事が重要であり、3質量部以上或いは45質量部以下である事が好ましく、5質量部以上或いは40質量部以下である事がより好ましく、10質量部以上或いは35質量部以下である事が更に好ましい。ポリエーテルイミド樹脂(B)の割合が1質量部以上であれば、本発明の樹脂組成物の耐熱性が十分なものとなる。一方、ポリエーテルイミド樹脂(B)の割合が50質量部未満であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶性が維持され、ひいては本発明の樹脂組成物の耐熱性が十分なものとなる。すなわち、ポリエーテルイミド樹脂(B)をかかる割合で含む事により、結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶性を維持したままガラス転移温度を向上させることができ、極めて耐熱性に優れる樹脂組成物が得られる。
ポリエステル樹脂(C)の含有割合は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である事が重要であり、2質量部以上或いは18質量部以下である事が好ましく、3質量部以上或いは15質量部以下である事がより好ましく、5質量部以上或いは10質量部以下である事が更に好ましい。ポリエステル樹脂(C)の割合が1質量部以上であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)の相容性を十分に向上する事が出来る。一方、ポリエステル樹脂(C)の割合が20質量部以下であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶性や耐熱性、機械特性等の各種物性を損ねる事が無い。すなわち、ポリエステル樹脂(C)をかかる割合で含む事により、結晶性ポリエステル樹脂(A)の持つ各種特性を維持したまま結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)の相容性を十分に向上する事が出来る。
(1)ガラス転移温度
本樹脂組成物は、単一のガラス転移温度を有する事が好ましい。単一のガラス転移温度を有するとは、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分の条件にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った際、本樹脂組成物は損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つだけ存在することを意味する。樹脂組成物のガラス転移温度が単一であれば、樹脂組成物に含まれる樹脂は相溶しており、透明性を有したポリエステル樹脂組成物となる。
ここで、主分散についてさらに説明する。図1で示すように、一般に、結晶性樹脂の温度を低温から徐々に上げていくと、側鎖全体の熱運動(γ分散)、主鎖の局所的運動(β分散)、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)、結晶内分子鎖の運動(αc分散)、融解、流動といった緩和機構にそれぞれ対応したピークが観察される。これらの中でも、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動(αa分散)は、他の緩和機構に比べて活性化エネルギーが高く、それに対応するピークも大きくなる事から、主分散と呼ばれる(それより低温の緩和機構は副分散と呼ばれる)。ガラス転移温度は、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動が生じる際の温度であるので、動的粘弾性の温度分散測定における主分散のピークは、ガラス転移温度を示しているということができる。
続いて、ポリマーブレンド系の動的粘弾性挙動について説明する。ポリマーブレンド系は、相溶系の組み合わせと非相溶系の組み合わせとに分けられる。
相溶系とは、混合する2種類以上の樹脂が分子レベルで完全に混ざり合う系を意味する。この際、分子レベルで混ざり合っている非晶領域は単一の相と見なす事ができ、ミクロブラウン運動も単一の温度で生じる。従って、相溶系の場合、ガラス転移温度が単一であり、主分散のピークも単一となる。また、その温度は、ブレンド比率に応じて、ブレンドするそれぞれの樹脂の間の範囲に値をとる。
一方、非相溶系の場合、混合する2種類以上の樹脂が混ざり合っておらず、二相系(あるいはそれ以上)として存在する。従って、ガラス転移温度を示す主分散のピークは、ブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。非相溶の場合、それぞれの樹脂の屈折率が極めて近い値になければマトリックスとドメインの界面で光が散乱し、樹脂組成物の透明性が損なわれる。また、引張や曲げ等の外力を加えた際に界面で剥離が生じ、機械物性の低下や白化を招く。さらに、延伸フィルムの製造の際、延伸時に界面剥離が生じ、破断や白化の原因となる。
本発明においては、本樹脂組成物を構成する樹脂が相溶しているため、本樹脂組成物及び該組成物を用いて得られる成形品は優れた透明性を有する。
本樹脂組成物のガラス転移温度が単一である場合、その温度は40℃以上300℃以下である事が好ましく、50℃以上或いは290℃以下である事がより好ましく、60℃以上或いは280℃以下である事が更に好ましく、70℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、80℃以上或いは260℃以下である事がとりわけ好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度Tg(A)がかかる範囲にあれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここで、ガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価される。
(2)結晶融解温度
本樹脂組成物の結晶融解温度は、加熱速度10℃/分で測定する事ができ、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下である事が好ましく、220℃以上或いは330℃以下である事がより好ましく、230℃以上或いは320℃以下である事が更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下である事が特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下である事がとりわけ好ましい。樹脂組成物の結晶融解温度がかかる範囲であれば、組成物は耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここで、結晶融解温度は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される。
(3)結晶融解熱量
本樹脂組成物の結晶融解熱量は、25J/g以上55J/g以下であるのが好ましく、26J/g以上或いは50J/g以下であるのがより好ましく、27J/g以上或いは45J/g以下であるのが更に好ましい。本樹脂組成物の結晶融解熱量が25J/g以上であれば、樹脂組成物は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れる樹脂組成物となる。一方、55J/g以下であれば、樹脂組成物は高すぎない結晶性有する為、成形性にも優れる樹脂組成物となる。
ここで、結晶融解熱量は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定される。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、本樹脂組成物は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)及びジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)以外の他の樹脂を含むことを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、本樹脂組成物は一般的に配合される添加剤を適宜含むことができる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、及び、着色剤などの添加剤が挙げられる。
以下、本樹脂組成物を構成する結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリイミド樹脂(B)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)についてそれぞれ説明する。
<結晶性ポリエステル樹脂(A)>
本発明に用いる結晶性ポリエステル樹脂(A)は、ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む樹脂であり、具体例としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート等が挙げられる。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成するジオール成分(a−1)は、エチレングリコール単位を80モル%以上とすることが、結晶性ポリエステル樹脂(A)の成形性が優れるため重要である。ジオール成分(a−1)のうち、エチレングリコール単位が85モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上である事がより好ましく、95モル%以上であるのが更に好ましく、ジオール成分(a−1)の全て(100モル%)がエチレングリコールであるのがとりわけ好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、ジオール成分(a−1)のうちエチレングリコール以外のジオール成分を20モル%以下共重合したものでも良い。具体的には、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、及び、イソソルバイド等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からジエチレングリコール、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分(a−2)は、テレフタル酸単位を50モル%以上とする事が好ましい。酸成分(a−2)のうち、テレフタル酸単位が70モル%以上である事がより好ましく、80モル%以上である事がさらに好ましく、90モル%以上である事が特に好ましく、酸成分(a−2)の全て(100モル%)がテレフタル酸である事がとりわけ好ましい。酸成分(a−2)として、テレフタル酸を50モル%以上とすることにより、ポリイミド樹脂(B)やポリエステル樹脂(C)との相溶性が向上するだけでなく、結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度や結晶性が向上し、ひいては本樹脂組成物、及び、本樹脂組成物組成物から得られる二軸延伸フィルムの耐熱性が向上する。
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、酸成分(a−2)のうちテレフタル酸以外の酸成分を50モル%以下共重合しても良い。具体的には、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、2,4−フランジカルボン酸、3,4−フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、及び、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及び、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からイソフタル酸、2,5−フランジカルボン酸が好ましい。
(1)ガラス転移温度
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、40℃以上300℃以下である事が好ましく、50℃以上或いは290℃以下である事がより好ましく、60℃以上或いは280℃以下である事が更に好ましく、70℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、80℃以上或いは260℃以下である事がとりわけ好ましい。前記結晶性ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここでガラス転移温度は、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価するものである。
(2)結晶融解温度
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶融解温度は、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下である事が好ましく、220℃以上或いは330℃以下である事がより好ましく、230℃以上或いは320℃以下である事が更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下である事が特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下である事がとりわけ好ましい。結晶性ポリエステル樹脂Aの結晶融解温度がかかる範囲であれば、結晶性ポリエステル樹脂Aは耐熱性と成形性のバランスに優れる。
ここで、結晶融解温度は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
(3)結晶融解熱量
前記結晶性ポリエステル樹脂(A)の結晶融解熱量は25J/g以上55J/g以下である事が好ましく、26J/g以上或いは50J/g以下である事がより好ましく、27J/g以上或いは45J/g以下である事が更に好ましい。ポリエステル樹脂(A)の結晶融解熱量がかかる範囲であれば、結晶性ポリエステル樹脂(A)は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れ、かつ結晶性が高過ぎない為、成形性にも優れる。
ここで、結晶融解熱量は、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
<ポリエーテルイミド樹脂(B)>
本発明に用いるポリエーテルイミド樹脂(B)は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高い事が重要である。
ポリエーテルイミド樹脂(B)のガラス転移温度は、160℃以上300℃以下であるのが好ましく、170℃以上或いは290℃以下であるのがより好ましく、180℃以上或いは280℃以下であるのが更に好ましく、190℃以上或いは270℃以下である事が特に好ましく、200℃以上260℃以下である事がとりわけ好ましい。ポリエーテルイミド樹脂(B)のガラス転移温度が160℃以上であることにより、本ポリエステル樹脂組成物のガラス転移温度を向上する事ができる。一方、ポリイミド樹脂(B)のガラス転移温度が300℃以上であることにより、成形性に優れたポリエーテルイミド樹脂(B)となる。
ポリエーテルイミド樹脂(B)と前記結晶性ポリエステル樹脂(A)とのガラス転移温度の差は、60℃以上であるのが好ましく、70℃以上であるのがより好ましく、80℃以上であるのが更に好ましく、90℃以上であるのが特に好ましく、100℃以上であるのがとりわけ好ましい。
ガラス転移温度の差が60℃以上であることにより、本ポリエステル樹脂組成物の耐熱性を十分に向上させることができる。
本発明に用いるポリエーテルイミド樹脂(B)は、下記式(1)の構造単位を複数、通常10〜1,000含み、好ましくは10〜500含むものである。
下記式(1)の構造単位の数がかかる範囲であれば、ポリエーテルイミド樹脂Bは成形性、機械特性、耐熱性のバランスに優れる。
上記式中、Tは−O−又は−O−Z−O−の基であり、当該−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3’位、3,4’位、4,3’位又は4,4’位にあり、Zは下記式(2)の二価基があるが、これらに限定されない。
上記式中、X は下記式(3)の二価基であるが、これらに限定されない。
上記式中、yは1〜約5の整数であり、qは0又は1である。Rは、次の二価有機基:(a)炭素原子数6〜約20の芳香族炭化水素基及びそのハロゲン化誘導体、(b)炭素原子数2〜約20のアルキレン基、(c)炭素原子数3〜約20のシクロアルキレン基であるが、これらに限定されない。
好ましい実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂(B)は、式(1)において各々のRが独立にP−フェニレン又はm−フェニレンであってTが下記の式(4)の二価基である構造単位を含んでなる。
本発明において用いる好適なポリエーテルイミドとしては、耐熱性と成形性のバランスに優れる点より、具体的にはnを整数として下記式(5)で表されるポリエーテルイミドを例示することができる。
式(5)で表されるポリエーテルイミドとして、一般的に入手可能な化合物としては、nを整数として下記の式(6)または式(7)で表される化合物が挙げられる。
式(5)の構造をもつポリエーテルイミド樹脂(B)の具体例としては、例えばサビックイノベーティブプラスチックス社から商品名「Ultem」シリーズが市販されている。
一般に、有用なポリエーテルイミド樹脂(B)は、米国試験材料協会(「ASTM」)D1238に準拠して6.6kgの荷重を用いて337℃で測定して、0.1〜20g/minのメルトインデックス(MFR)を有するものである。中でも、メルトインデックスがなるべく高めのものを使用した方が、ポリエステル樹脂Aとの粘度が近くなり、相溶性が向上するという観点から好ましい。
好ましい実施形態では、本発明において用いるポリエーテルイミド樹脂(B)は、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、10,000〜150,000g/モルの重量平均分子量を有する。かかるポリイミド樹脂Bは、通常、25℃のm−クレゾール中で測定して約0.2デシリットル/グラムを超える固有粘度、好ましくは約0.35〜約0.7デシリットル/グラムの固有粘度[η]を有する。
ポリエーテルイミド樹脂(B)の製造方法は、米国特許第3,847,867号、同第3,814,869号、同第3,850,885号、同第3,852,242号、同第3,855,178号及び同第3,983,093号に開示されている通り数多くありかつ良く知られている。
<ポリエステル樹脂(C)>
本樹脂組成物は、前記結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)との相溶性を高め、優れた透明性を得るために、さらにジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を含むことが重要である。
本発明に用いるポリエステル樹脂(C)は、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下の割合で含み、45モル%以上或いは85モル%以下の割合で含む事が好ましく、55モル%以上或いは80モル%以下の割合で含む事が更に好ましく、60モル%以上或いは75モル%以下の割合で含む事が特に好ましい。ポリエステル樹脂(C)がジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位をかかる割合で含む事で、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリイミド樹脂(B)の混合物に対して相容化剤としてブレンドした場合に、これらの相溶性を大幅に向上する事ができる。
ポリエステル樹脂(C)が1,4−シクロヘキサンジメタノール以外に含むジオール成分としては、結晶性ポリエステル樹脂(A)で例示したジオール成分と同様のものを挙げる事ができる。すなわち、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ビスフェノール、スピログリコール、2,2,4,4,−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、及び、イソソルバイド等が挙げられる。
前記ポリエステル樹脂(C)を構成する酸成分(c−2)は、テレフタル単位を50モル%以上の割合で含むことが好ましい。すなわち、酸成分(c−2)のうち、テレフタル酸単位が50モル%以上である事が好ましく、70モル%以上である事がより好ましく、80モル%以上である事が更に好ましく、90モル%以上である事が特に好ましく、酸成分(c−2)の全て(100モル%)がテレフタル酸単位である事がとりわけ好ましい。酸成分(c−2)のうち、テレフタル酸単位が50モル%以上であることにより、結晶性ポリエステル樹脂(A)やポリイミド樹脂(B)との相溶性が向上するだけでなく、ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度や結晶性が向上し、ひいては本発明のポリエステル系二軸延伸フィルムの耐熱性が向上する。
前記ポリエステル樹脂(C)は、成形性や耐熱性の向上を目的として、テレフタル酸以外の酸成分を50モル%以下共重合しても良く、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂(A)で例示した酸成分と同様のものを挙げる事ができる。すなわち、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及び、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられるが、この中でも成形性の観点からイソフタル酸が好ましい。
(1)ガラス転移温度
前記ポリエステル樹脂(C)のガラス転移温度は、40℃以上350℃以下である事が好ましく、50℃以上或いは340℃以下であるのがより好ましく、60℃以上或いは330℃以下であるのが更に好ましく、70℃以上或いは320℃以下であるのが特に好ましく、80℃以上或いは310℃以下であるのがとりわけ好ましい。前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度がかかる範囲にあれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる本樹脂組成物が得られる。
ここで、ガラス転移温度とは、JIS K7198Aに準じて、動的粘弾性の温度分散測定を用いて歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークで評価するものである。
(2)結晶融解温度
前記ポリエステル樹脂(C)は、結晶性であっても非晶性であってもどちらでもよい。結晶性の場合、前記ポリエステル樹脂(C)の結晶融解温度は、200℃以上350℃以下であり、210℃以上或いは340℃以下であるのが好ましく、220℃以上或いは330℃以下であるのがより好ましく、230℃以上或いは320℃以下であるのが更に好ましく、240℃以上或いは310℃以下であるのが特に好ましく、250℃以上或いは300℃以下であるのがとりわけ好ましい。ポリエステル樹脂(C)の結晶融解温度がかかる範囲であれば、耐熱性と成形性のバランスに優れる本樹脂組成物が得られる。
ここで結晶融解温度とは、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
(3)結晶融解熱量
前記ポリエステル樹脂(C)が結晶性の場合、前記ポリエステル樹脂(C)の結晶融解熱量は、15J/g以上55J/g以下であるのが好ましく、20J/g以上或いは50J/g以下であるのがより好ましく、25J/g以上或いは45J/g以下であるのが更に好ましい。結晶融解熱量がかかる範囲であれば、ポリエステル樹脂(C)は十分な結晶性を有している為、耐熱性に優れ、かつ結晶性が高過ぎない為、成形性にも優れる。
ここで結晶融解熱量とは、JIS K7121(2012年)に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて加熱速度10℃/分で測定するものである。
<ポリエステル系樹脂組成物の製造方法>
以下、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法(以下、「本樹脂組成物の製造方法」と称する)について説明するが、以下の説明は、本樹脂組成物を製造する方法の一例であり、本樹脂組成物はかかる製造方法により製造される本樹脂組成物に限定されるものではない。
本発明の実施形態の一例に係る本樹脂組成物の製造方法は、ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部以下、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物の製造方法である。
本樹脂組成物の製造方法においては、前記ポリエステル樹脂(C)が、結晶性ポリエステル樹脂(A)及びポリエーテルイミド樹脂(B)と、エステル交換反応及びエステル−イミド交換反応を生じさせ、結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)間の界面張力が大幅に低下し、ひいては製造条件に依らず結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)が相溶化して、透明性、耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物が得られるものと考えられる。
なお、本樹脂組成物を構成する結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)及びポリエステル樹脂(C)は、それぞれがエステル交換反応またはエステル−イミド交換反応を生じているが、その全てが反応するわけではなく、一部のみが交換反応を生じている。交換反応によって生成した僅かな共重合体が相容化剤として機能し、相溶化していると考えられる。従って、交換反応を生じたとしても、それぞれの樹脂の結晶性や各種機械特性は維持され、本発明の効果を損ねることはない。
結晶性ポリエステル樹脂(A)とポリエーテルイミド樹脂(B)のみであってもエステル−イミド交換反応によってある程度の相溶系を示すものの、その程度は十分でなく、結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)両方共と相溶性の高いポリエステル樹脂(C)を追加で含む事により、更なる相溶性の向上が見られる。
上記樹脂を混練する方法は特に限定されないが、なるべく簡便に本樹脂組成物を得る為に、押出機を用いて溶融混練する事によって製造するのが好ましい。
更に、結晶性ポリエステル樹脂(A)、ポリエーテルイミド樹脂(B)、及び、ポリエステル樹脂(C)を均一に混合する為に、同方向二軸押出機を用いて溶融混練するのが好ましい。
混練温度は、用いる全ての樹脂のガラス転移温度以上であり、かつ結晶性樹脂に対しては、その樹脂の結晶融解温度以上である事が必要である。使用する樹脂のガラス転移温度や結晶融解温度に対して、なるべく混練温度が高い方が、樹脂の一部のエステル交換反応が生じやすく、相溶性が向上しやすいものの、必要以上に混練温度が高くなると樹脂の分解が起こる為好ましくない。この事から、混練温度は260℃以上350℃以下であり、270℃以上340℃以下が好ましく、280℃以上330℃以下がより好ましく、290℃以上320℃以下が特に好ましい。混練温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解を生じる事なく、相溶性や成形性を向上させる事ができる。
<ポリエステル系二軸延伸フィルムとその製造方法>
以下に、本樹脂組成物からなるポリエステル系二軸延伸フィルム(以下「本フィルム」と称することがある)について記載する。上記の本樹脂組成物を、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって成形して二軸延伸フィルムを作製する事ができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
本フィルムは例えば、以下の方法により製造する事が好ましい。
上記で説明した本樹脂組成物より実質的に無定型で配向していないフィルム(以下「未延伸フィルム」と称することがある)を押出法で製造する。この未延伸フィルムの製造は、例えば、上記原料を押出機により溶融し、フラットダイ、または環状ダイから押出した後、急冷する事によりフラット状、または環状の未延伸フィルムとする押出法を採用する事ができる。この際、場合によって、複数の押出機を使用した積層構成としてもよい。
次に、上記の未延伸フィルムを、フィルムの流れ方向(縦方向)、及びこれと直角な方向(横方向)で、延伸効果、フィルム強度等の点から、少なくとも一方向に通常1.1〜5.0倍、好ましくは縦横二軸方向に各々1.1〜5.0倍の範囲で延伸する。
二軸延伸の方法としては、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等、従来公知の延伸方法がいずれも採用できる。例えば、テンター式逐次二軸延伸方法の場合には、未延伸フィルムを、本樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、Tg〜Tg+50℃の温度範囲に加熱し、ロール式縦延伸機によって縦方向に1.1〜5.0倍に延伸し、続いてテンター式横延伸機によってTg〜Tg+50℃の温度範囲内で横方向に1.1〜5.0倍に延伸する事により製造する事ができる。また、テンター式同時二軸延伸やチューブラー式同時二軸延伸方法の場合は、例えば、Tg〜Tg+50℃の温度範囲において、縦横同時に各軸方向に1.1〜5.0倍に延伸する事により製造する事ができる。
上記方法により延伸された二軸延伸フィルムは、引き続き熱固定される。熱固定をする事により常温における寸法安定性を付与する事ができる。この場合の処理温度は、好ましくは本樹脂組成物の結晶融解温度Tm−1〜50℃の範囲を選択する。熱固定温度が上記範囲内にあれば、熱固定が十分に行われ、延伸時の応力が緩和され、十分な耐熱性や機械特性が得られ、破断やフィルム表面の白化などのトラブルがない優れたフィルムが得られる。
本発明においては、熱固定による結晶化収縮の応力を緩和させる為に、熱固定中に幅方向に0〜15%、好ましくは3〜10%の範囲で弛緩を行う事で、弛緩が十分に行われ、フィルムの幅方向に均一に弛緩する為、幅方向の収縮率が均一になり常温寸法安定性に優れたフィルムが得られる。また、フィルムの収縮に追従した弛緩が行われる為、フィルムのタルミ、テンター内でのバタツキがなく、フィルムの破断もない。
(1)引張弾性率
本フィルムの引張弾性率の値は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に1.0GPa以上、8.0GPa以下である事が好ましく、1.5GPa以上、7.5GPa以下である事がより好ましく、2.0GPa以上、7.0GPa以下である事が更に好ましく、2.5GPa以上、6.5GPa以下である事が特に好ましく、3.0GPa以上、6.0GPa以下である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの引張弾性率の値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分なコシと柔軟性を有する。
(2)引張破断伸度
本フィルムの引張破断伸度の値は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に50%以上である事が好ましく、70%以上ある事がより好ましく、80%以上である事が更に好ましく、90%以上である事が特に好ましく、100%以上である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの引張破断伸度の値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な靱性を有する。
(3)加熱収縮率
本フィルムについて150℃で30分間熱処理した際の加熱収縮率は、縦方向(MD)、横方向(TD)、共に1%以下である事が好ましい。本発明の二軸延伸フィルムの加熱収縮率がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な耐熱性を有する。
(4)ヘーズ
本フィルムのヘーズの値は、厚み50μmにおいて5%以下である事が好ましく、4%以下ある事がより好ましく、3%以下である事が更に好ましく、2%以下である事が特に好ましく、1%以下である事がとりわけ好ましい。本発明の二軸延伸フィルムのヘーズの値がかかる範囲にあれば、フィルムとして使用するのに十分な透明性を有する。なお、本発明におけるヘーズの値は、以下の式で計算する事ができる。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
(1)結晶融解温度(Tm)
Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)測定を用い、昇温過程における結晶融解温度Tmを測定した。
キャストフィルムについて測定した際、Tmの値が200℃以上のものを合格(○)、200℃未満のものを不合格(×)とした。
(2)結晶融解熱量(ΔHm)
Diamond DSC(パーキンエルマージャパン社製)を用いて、JIS K7121(2012年)に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)測定を用い、昇温過程における結晶融解熱量ΔHmを測定した。
キャストフィルムについて測定した際、ΔHmの値が25J/g以上、55J/g以下のものを合格(○)、25J/g未満、または、55J/gを超えるものを不合格(×)とした。
(3)ガラス転移温度(Tg)
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、JIS K7244(1999年)に準じて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を用い、損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度を測定した。
キャストフィルムについて測定した際、主分散のピークが単一であり、かつその温度が40℃以上であるものを合格、ピークが2つ以上あるか、単一であってもその温度が40℃未満のものを不合格とした。
(4)引張弾性率
JIS K7127(1999年)に準じて、長さ400mm、幅10mm、厚み0.05mmの試験片を作製し、卓上型精密万能試験機「オートグラフ AGS−Xシリーズ」(島津製作所社製)を用いて測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、試験片の縦方向(MD)及び横方向(TD)について、温度23℃、試験速度5mm/minの条件で測定した。引張弾性率が1.0〜8.0GPaの範囲内にあるものを合格とした。
(5)引張破断伸度
JIS K7127(1999年)に準じて、長さ120mm、幅10mm、厚み0.05mmの試験片を作製し、卓上型精密万能試験機「オートグラフ AGS−Xシリーズ」(島津製作所社製)を用いて測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、試験片の縦方向(MD)及び横方向(TD)について、温度23℃ 、試験速度200mm/分の条件で測定した。引張破断強度が5〜50MPaの範囲内、引張破断伸度が50%以上であるものを合格とした。
(6)加熱収縮率
熱処理オーブンベーキング試験装置(株式会社大栄科学製作所製)を用いて二軸延伸フィルムを150℃で30分間加熱し、加熱後の収縮率を縦方向(MD)と横方向(TD)について測定した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、MDとTDの収縮率がそれぞれ1%以下のものを合格(○)、1%を超えるものを不合格(×)とした。
(7)ヘーズ
ヘーズメーターNDH−5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7136(2000年)に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。
二軸延伸フィルムについて測定した際、厚み50μmでのヘーズが5%以下であるものを合格(○)、5%を超えるものを不合格(×)とした。
[ヘーズ]=([拡散透過率]/[全光線透過率])×100
[結晶性ポリエステル樹脂(A)]
(A)−1:ノバペックス GG900D
(三菱化学社製、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール=97.5/2.5モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、Tm=252℃、ΔHm=36J/g、Tg=90℃)
(A)−2:ノバペックス BK2180
(三菱化学社製、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール=97.9/2.1モル%、酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=98.5/1.5モル%、Tm=248℃、ΔHm=35J/g、Tg=90℃)
[ポリイミド樹脂(B)]
(B)−1:Ultem 1010
(サビックイノベーティブプラスチックス社製、ポリエーテルイミド:式(14)の構造を有するポリエーテルイミド、MFR(337℃、6.6kg)=17.8g/10min、Tg=232℃)
(B)−2:Ultem 1000
(サビックイノベーティブプラスチックス社製、式(14)の構造のポリエーテルイミド:、MFR(337℃、6.6kg)=9g/10min、Tg=232℃)
(式中、nは整数)
[ポリエステル樹脂(C)]
(C)−1:SKYGREEN J2003
(SKケミカル社製、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=36.4/1.9/61.7モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、非晶性、Tg=94℃)
(C)−2:ECOZEN BS100D
(SKケミカル社製、ジオール成分:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=37.2/50.3/12.5モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、非晶性、Tg=108℃)
(C)−3:ECOZEN BS400D
(SKケミカル社製、ジオール成分:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=21.5/46.0/32.5モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、非晶性、Tg=130℃)
(C)−4:Eastar EN059
(イーストマンケミカル社製、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール=94.0/2.5/3.5モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、Tm=243℃、ΔHm=29J/g、Tg=86℃)
(C)−5:Eastar AN004
(イーストマンケミカル社製、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール=100モル%、酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=63.8/36.2モル%、非晶性、Tg=96℃)
(C)−6:SKYPURA 0502
(SKケミカル社製、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール=100モル%、酸成分:テレフタル酸=100モル%、Tm=286℃、ΔHm=38J/g、Tg=104℃)
(C)−7:ベルペット IP252B
(ベルポリエステルプロダクツ社製、ジオール成分:エチレングリコール/ジエチレングリコール=97.0/3.0モル%、酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=76.7/23.3モル%、非晶性、Tg=80℃)
(実施例1)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:5となるように300℃に設定したΦ25mm二軸押出機にて溶融混練し、Tダイ内からフィルムとして押出し、20℃のキャストロールに密着急冷し、厚み450μmのキャストフィルムを得た。このキャストフィルムについて、結晶融解温度(Tm)、結晶融解熱量(ΔHm)、ガラス転移温度(Tg)の評価を行った。続いて、得られたキャストフィルムを縦延伸機に通し、110℃で縦方向(MD)に3倍延伸を行った。続いて、得られた縦延伸フィルムを横延伸機(テンター)に通し、予熱温度100℃、延伸温度120℃、熱固定温度230℃で横方向(TD)に3倍延伸を行った。得られた二軸延伸フィルムについて、引張弾性率、引張破断伸度、加熱収縮率、ヘーズの測定を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
(C)−1の代わりに(C)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
(C)−1の代わりに(C)−3を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
(A)−1の代わりに(A)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:10:5となるように使用し、縦延伸の温度を98℃、横延伸の予熱温度を90℃、延伸温度を108℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:40:5となるように使用し、縦延伸の温度を122℃、横延伸の予熱温度を110℃、延伸温度を132℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
(B)−1の代わりに(B)−2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:1となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例9)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:10となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
(A)−1を単体で使用した以外は実施例1と同様にサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
(A)−1と(B)−1を混合質量比100:25となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:70:5となるように使用し、縦延伸の温度を134℃、横延伸の予熱温度を120℃、延伸温度を144℃とした以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
(A)−1と(B)−1、(C)−1を混合質量比100:25:25となるように使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
(C)−1の代わりに(C)−5を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
(C)−1の代わりに(C)−6を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
(C)−1の代わりに(C)−7を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
(C)−1の代わりに(C)−8を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプルの作製及び評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1〜3では、結晶性ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレートを、ポリイミド樹脂(B)として式(14)の構造を有するポリエーテルイミドを使用しており、結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールを特定の割合含有するポリエステル樹脂(C)を5質量部添加している。該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例4では、結晶性ポリエステル(A)として、ポリエチレンテレフタレートを構成する酸成分の一部がイソフタル酸に変性されたものを使用している。実施例1と比較すると若干ガラス転移温度や結晶融解熱量の値が低いものの、各種物性に優れる。
実施例5及び6はポリイミド樹脂(B)の配合割合を変えている。実施例1と同様に、結晶性と、ポリイミド樹脂(B)添加に伴うガラス転移温度向上効果のバランスに優れ、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例7では、ポリエーテルイミド樹脂(B)として高粘度のポリエーテルイミドを使用している。実施例1と比較すると結晶性ポリエステル(A)との粘度差が大きい為、ポリイミド樹脂(B)の分散径が大きくなり、透明性が若干低下しているものの、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例8では、ポリエステル樹脂(C)の配合割合を1質量部としている。実施例1と比較して相容化剤としてのポリエステル樹脂(C)が少なくなった事で、ポリイミド樹脂(B)の分散径が大きくなり、透明性が若干低下しているものの、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
実施例9では、ポリエステル樹脂(C)の配合割合を10質量部としている。実施例1と比較して非晶成分の割合が大きくなった事で結晶性が低下し、耐熱性が若干低下しているものの、該フィルムは透明性と機械特性、耐熱性に優れる事が分かる。
一方、比較例1では、結晶性ポリエステル(A)を単体で使用している。ポリイミド樹脂(B)を含まない為、ガラス転移温度が向上しておらず、耐熱性が低い事が分かる。
比較例2では、結晶性ポリエステル(A)とポリイミド樹脂(B)の混合物に対して、ポリエステル樹脂(C)を添加していない。その為、相溶性が悪く、ガラス転移温度のピークが2つ検出されている上、透明性も劣る。
比較例3では、結晶性ポリエステル(A)とポリイミド樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)を、それぞれ100:70:5の質量割合で配合している。非晶成分であるポリイミド樹脂(B)の配合割合が多い為、ガラス転移温度は向上するものの、結晶融解熱量の値が低い事からも分かるように結晶性が低下し、耐熱性に劣る。
比較例4では、結晶性ポリエステル(A)とポリイミド樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)を、それぞれ100:25:25の質量割合で配合している。非晶成分であるポリエステル樹脂(C)の配合割合が多い為、結晶融解熱量の値が低い事からも分かるように結晶性が低下し、耐熱性に劣る。
比較例3、4より、ポリイミド樹脂(B)、ポリエステル樹脂(C)のいずれか一つでも配合割合が多くなると、結晶性が低下するため耐熱性が低くなることがわかる。
比較例5〜8では、ポリエステル樹脂(C)として、ジオール成分に占める1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が35モル%未満、もしくは、90モル%を超えるポリエステル樹脂を使用している。これらは、1,4−シクロヘキサンジメタノールの割合が最適な範囲にない為、結晶性ポリエステル(A)とポリイミド樹脂(B)の混合物に対しての相容化剤としての効果が低く、結果として、得られた樹脂組成物のガラス転移温度のピークが2つになる上、透明性に劣る。

Claims (7)

  1. ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部未満、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下含む、ポリエステル樹脂組成物からなり、厚み50μmにおけるヘーズ値が5%以下であるポリエステル系二軸延伸フィルム
  2. 前記ポリエステル樹脂組成物が単一のガラス転移温度を有する請求項1に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム
  3. 前記結晶性ポリエステル樹脂(A)が酸成分(a−2)としてテレフタル酸を50モル%以上含む請求項1又は2に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム
  4. 前記ポリエーテルイミド樹脂(B)が、nを整数として下記式(5)で表されるポリエーテルイミドである請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム
  5. 150℃で30分間熱処理した際の収縮率が縦方向、横方向、共に1%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム。
  6. 前記ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上75モル%以下含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル系二軸延伸フィルム。
  7. ジオール成分(a−1)としてエチレングリコール単位を80モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して、結晶性ポリエステル樹脂(A)よりもガラス転移温度が高いポリエーテルイミド樹脂(B)を1質量部以上50質量部未満、及び、ジオール成分(c−1)として1,4−シクロヘキサンジメタノール単位を35モル%以上、90モル%以下含むポリエステル樹脂(C)を1質量部以上20質量部以下で、260℃以上350℃以下で溶融混練してなるポリエステル樹脂組成物を溶融押出して未延伸フィルムを得た後、該未延伸フィルムを二軸方向に延伸する、厚み50μmにおけるヘーズ値が5%以下であるポリエステル系二軸延伸フィルムの製造方法。
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