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JP6806965B2 - 精子機能改善剤とこれを含む医薬品組成物、飼料、食品組成物及び家畜または家禽の精子機能改善方法 - Google Patents

精子機能改善剤とこれを含む医薬品組成物、飼料、食品組成物及び家畜または家禽の精子機能改善方法 Download PDF

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Description

本発明は、精子機能改善剤とこれを含む医薬品組成物、飼料、食品組成物及び家畜または家禽の精子機能改善方法に関する。より詳しくは、アシタバの抽出物を有効成分として含有する精子機能改善剤等に関する。
現在、我が国において、妊娠を望む人の約15%が不妊症との診断を受けている。WHOの定義によれば、不妊症は「避妊なしで2年以内に妊娠にいたることができない状態」とされている。不妊症に対する治療の選択肢には、排卵誘発剤や体外受精、人工授精等がある。
前記体外受精には、採取した卵子と精子をシャーレ内で受精させて受精卵を子宮に戻す胚移植(In Vitro Fertilization Embryo Transfer: IVF-ET)と、顕微鏡下で精子を直接卵子に注入し授精を行う顕微授精(Intracytoplasmic Sperm Injection: ICSI)と呼ばれる方法がある。このような体外受精による不妊症の治療は、卵子を採取する工程や受精卵を子宮に戻す工程が必須であり、女性に対する身体的・精神的な負担が大きいとされている。
近年体外受精の技術が発展しているものの、当該体外受精の成功率は一般に20%程度とされ、十分に高い確率とはなっていない。近年の晩産化を背景に、妊娠を望む段階にて女性の加齢に伴う卵子の質の低下が見受けられる。これを原因として、体外受精の成功率向上が見受けられないとの見解も存在する。
不妊の要因は、男性側および女性側のそれぞれに多数の要因が存在している。男性側の主な要因としては、(1)無精子症などの精子形成機能障害(造精機能障害)、(2)精巣上体の先天的な異常などの精路通過障害、(3)抗精子抗体の免疫異常などの精子機能障害がある。 WHOの調査によれば、不妊の要因のうち、男性側の要因は全体の約24%に上り、男女両方の要因も全体の約24%に上る。すなわち、不妊の要因のうち、男性が関与しているのは実に約48%に達している。
これらの事実を踏まえると、精巣における正常な精子の形成機能及び/又は成熟した精子の機能改善を促し、且つ、副作用のリスクを回避することができる精子機能改善剤が開発されれば、女性に対する身体的・精神的負担の大きい不妊治療に替わる有用な治療法に結びつくものと期待される。
一方、不妊症は、ヒトのみならず、ブタやウシ、ニワトリ等の産業動物においても問題となっている。ブタやウシにおける不妊症(繁殖障害)は、産仔数の低下による食肉生産量の減少や、搾乳不能による牛乳生産量の減少といった生産効率上の問題を引き起こす。
産業動物において、上記(1)無精子症などの精子形成機能障害は、不妊症(繁殖障害)の主な要因の一つとなっている。この精子形成機能障害に起因した不妊症としては、いわゆる「夏季不妊症」が知られている。夏季不妊症は、狭義には、高温多湿の夏季に一時的にオス個体の精子形成機能が減退し、精液性状の不良化や受胎率の低下が現れる現象をいうが、特に乳用牛のホスルタイン種のように暑さに弱い動物では、メス個体においても暑熱ストレスにより排卵障害が生じることが知られている。牛の繁殖では人工授精を行うのが一般的であり、更にはその人工授精には凍結精液が使用され、その割合は99%に及ぶ。このため、特に牛の繁殖において、夏季不妊症の要因は雌側の要因がほとんどと言える。
一方で、ブタの繁殖において、凍結精液の融解後における精子の運動率が著しく低下するため、凍結精液を用いた人工授精は行われず、生精液を用いた人工授精が行われるのが一般的である。しかし、夏季に造られるブタの精液では、精子の生存率が低く、また精子の生存率が高くとも、受精能や運動率が低い精子の割合が高いといった事象が知られている。加えて、精液中の奇形精子の割合が高いことも知られている。また、ブタのメス個体の場合も乳用牛のホスルタイン種のメス個体と同様、暑熱ストレスにより排卵障害が生じることが知られ、更には暑熱ストレスにより母体内での胚の死亡率が上昇することも知られている。このため、ブタに関しては、夏季不妊症の要因は雌雄両方にあると言われている。
このように、夏季不妊症の要因が解明されているものの、夏季不妊症を予防する対策としては、家畜舎又は家禽舎に大型扇風機やミストシャワーを設置し、家畜舎又は家禽舎内の温度を下げるといったもののみであり、生体機能に着目した根本的な解決策が案出されているわけではない。それ故、家畜や家禽、特にブタに関しては雄個体に対する正常な精子の形成機能及び/又は成熟した精子の機能改善を促し、且つ、副作用のリスクを回避することができる精子機能改善剤が開発されれば、夏季不妊症に対する有用な解決策が期待される。
このような産業動物における正常な精子の形成機能及び/又は成熟した精子の機能改善を促すことは、畜産業の生産効率を高めるため極めて重要である。
ここで、哺乳類における精子の形成過程について説明する。精子は雄性生殖管である精巣及び精巣上体にて行われる。前記精巣の表面は白膜によって覆われる一方、前記精巣の内部は複数の精巣小葉によって分画されている。各精巣小葉の中には精細管が存在し、この精細管にて精子が成形されるようになっている。前記精細管内の細胞として存在する精原細胞は、支持細胞であるセルトリ細胞の働きにより減数分裂を行い、一次精母細胞、二次精母細胞、精子細胞を経て精子へと成熟される。精巣内に設けられた複数の精細管はその両端が精巣網に繋がっており、この精巣網は複数の精巣輸出管を形成している。複数の精巣輸出管は一本の精巣上体管を形成しており、前記精巣内の各精細管は精巣上体と繋がっている。ここで、精細管から排出された精子は受精能及び運動能を具備していない。このような精子は前記精巣輸出管を通って、前記精巣上体へと移行され、この精巣上体内の精巣上体管を通過するにつれて受精能及び運動能を獲得することが知られている。そして、精巣上体にて成熟した精子は前立腺液及び精嚢液と共に体外へと射出される。
しかし、非特許文献1や非特許文献2に示されるように、酸化ストレスの増加により、前記精子形成細胞又は精子の遺伝子が活性酸素種により損傷を受けることが知られている。その結果、正常な精子の形成が阻害されることとなり、男性不妊症を発症することが知られている。また、活性酸素種が精子の受精機能の低下を招くことも知られている。ここで、「酸化ストレスが増加する」とは、生体内における活性酸素種の酸化作用と、抗酸化酵素等の抗酸化作用の均衡が崩れ、生体内の酸化反応が亢進している状態をいう。
次に、本発明に関連する「アシタバ」および「源生林あしたば」について説明する。
アシタバ(明日葉)は、日本の八丈島原産のセリ科シシウド属の多年草であり、伊豆地域で多く栽培されている。アシタバの葉と茎は、従来天ぷらなどとして食用に供されている。アシタバは、緑黄色野菜としてミネラルおよびビタミンが豊富であり、便秘防止作用、利尿作用および強壮作用などの効果があるとされることから、近年では健康食品として注目されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、アシタバにはカルコン類およびクマリン類に属する複数の化合物が含まれていることが知られており、これらの化合物が制がん作用、抗潰瘍作用、抗血栓作用、抗菌作用および抗エイズ作用などの効果を有することが報告されている。
源生林あしたばは、野生種のアシタバが低温で枯れてしまうのに対して、氷点下の温度でも枯れない変異体として見出された種であり、農林水産省品種登録第14641号として登録されている。源生林あしたばは、食味および栄養価に優れ、上述した各種の作用についても野生種と同等以上の効果が期待されている。さらに、源生林あしたばは、耐寒性および越冬性に優れるため、野性種のように伊豆地域のような温暖な地域に限定されることなく、寒冷地も含めた広い地域において大規模な栽培が可能であるものと期待されている。
特開2005−237292号公報
Ashok Agarwal著「Effect of Oxidative Stress on Male Reproduction」World J Mens Health 2014 April 32(1): p1-17 株式会社渡辺オイスター研究所 渡辺 貢 著「健康成人男子におけるワタナベ活性型オイスターの精子運動機能に与える影響」2010年11月
上述のように、精巣における正常な精子の形成機能及び/又は成熟した精子自体の機能改善を促すことは、ヒトおよび産業動物の不妊治療のため、さらには畜産業の生産効率向上のため、非常に重要な課題となっている。そこで、本発明は、安全性に優れる新規な精子機能改善剤を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題解決のために鋭意検討した結果、アシタバの抽出物が精巣における正常な精子の形成機能の改善作用及び成熟された精子の機能改善作用を有することを新規に見出し、本願発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、アシタバの抽出物を有効成分として含有する精子機能改善剤を提供するものである。
この精子機能改善剤において、前記アシタバは、農林水産省品種登録第14641号のアシタバとすることができる。
また、この精子機能改善剤において、前記アシタバ抽出物をキサントアンゲロール又は4−ヒドロキシデリシンとすることができる。
更に、本発明は、この精子機能改善剤を含有する不妊治療または予防のための医薬品組成物と、アシタバあるいはその抽出物を含有し、精子機能の改善のために用いられる家畜用または家禽用の飼料および食品組成物も提供する。
さらに、本発明は、アシタバあるいはその抽出物を家畜または家禽に給餌する手順を含む、家畜または家禽の精子機能改善方法をも提供する。
本発明において、「アシタバ抽出物」には、アシタバの全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子などから選択される一以上の部位を圧搾または粉砕等することにより得られる液体成分が含まれるものとする。また、「アシタバ抽出物」には、アシタバの全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子などから選択される一以上の部位から適当な溶媒を用いて抽出される溶出成分も含まれる。更に、「アシタバ抽出物」には、アシタバの全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子などから選択される一以上の部位を凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させることにより得られる固形成分が含まれる。
本発明により、安全性に優れる新規な精子機能改善剤等が提供される。この精子機能改善剤の有効成分は、アシタバ抽出物由来であるため、副作用が少なく安全性に優れたものである可能性が高い。
暑熱ストレスと精巣における酸化ストレスの関連性(試験例1)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物の精子形成能力改善作用の評価結果(試験例2)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物の精子形成能力改善作用の評価結果(試験例2)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物による処置を行った精巣におけるCatalaseのタンパク質発現レベルを評価した結果(試験例3)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物による処置を行った精巣におけるHO-1のタンパク質発現レベルを評価した結果(試験例3)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物による処置を行った精巣におけるCatalaseのタンパク質発現レベルの時間依存性を評価した結果(試験例4)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物による処置を行った精巣におけるHO-1のタンパク質発現レベルの時間依存性を評価した結果(試験例4)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物の精子機能改善作用の評価結果(試験例5)を示す図面代用グラフである。 アシタバ抽出物の精子機能改善作用の評価結果(試験例5)を示す図面代用グラフである。 カルコン化合物の精子形成能力改善作用の評価結果(試験例6)を示す図面代用グラフである。 カルコン化合物の精子形成能力改善作用の評価結果(試験例6)を示す図面代用グラフである。 暑熱ストレスによる精細管の形態学的変化とアシタバ粉末の経口投与による保護効果の結果を示す染色組織切片の図面代用写真である。 暑熱ストレスによる精細管の形態学的変化とカルコン化合物の経口投与による保護効果の結果を示す染色組織切片の図面代用写真である。
本発明者らは、実施例において詳しく後述するように、マウスを用いた検討により、アシタバ抽出物が精巣における精子形成機能及び成熟した精子の機能を改善する作用を有することを初めて見出した。このアシタバ抽出物による作用は、経口投与されたアシタバ抽出物の抗酸化酵素のタンパク質発現量の増加特性を介して発現されるものと考えられた。
前述の如く、これまでに、ヒトのみならず、産業動物における雄側に要因のある不妊症の原因としては、酸化ストレスが高い環境下における精子形成細胞又は精子の遺伝子損傷が知られている。この点、本発明は、経口投与されたアシタバ抽出物により抗酸化酵素のタンパク質発現量が増加することで、生体内にて発生した活性酸素種を低下させ、もって精巣における精子形成機能及び/又は成熟した精子自体の機能を改善するものと考えられる。
従って、本発明は、精子形成機能障害及び/又は精子機能障害による不妊患者に対し適用して、精子形成機能及び/又は精子機能の改善を図るために好適に用いられ得る。また、産業動物に適用して、精子形成機能及び/又は精子機能低下による産仔数および産卵数の低下を改善し、生産効率の向上を図るためにも用いられ得る。さらに、健常者および健常動物に適用して、不妊を予防するためにも用いられる。
本発明において、アシタバは、生のままでも乾燥したものでも使用することができる。アシタバとしては、特に農林水産省品種登録第14641号の源生林あしたばを用いることができる。使用するアシタバの部位は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されず、全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子などから選択される一以上の部位とでき、これらを適宜組み合わせて用いることができる。使用する部位は、葉、茎、根茎が好ましい。
アシタバ抽出物は、アシタバを圧搾または粉砕等することにより固形成分として得ることができ、あるいはアシタバを圧搾または粉砕等することにより液体成分として、更にはアシタバを適当な溶媒を用いて抽出することにより溶出成分として得ることもできる。
溶媒抽出は、従来公知の手法によって行うことができる。溶媒抽出は、例えば、アシタバの全草あるいは一以上の部位を低温ないし加温下で溶媒中において所定時間浸漬したり加熱還流したりすることによって行い得る。得られた溶媒抽出物は、必要に応じてろ過や濃縮、イオン交換樹脂や液体クロマトグラフィーなどを用いた精製・分離、凍結乾燥等を行ってもよい。
溶媒には、通常、植物抽出に用いられる溶媒を1種または2種以上選択して用いることができる。溶媒としては、例えば、水、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノールおよびプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。
アシタバ抽出物は、液状(ジュース)、ペースト状、ゲル状等いずれの形態で用いることもできる。アシタバ抽出物は、乾固させて固体状としてもよく、あるいは凍結乾燥やスプレードライ等により乾燥させて粉末状としてもよい。
アシタバは古くから食用されており、このことはアシタバ抽出物の高い安全性を示すものである。従って、アシタバ抽出物を有効成分とする本発明に係る精子機能改善剤、およびこれを含有する医薬品組成物、飼料、食品組成物および化粧料組成物は、次のような優位性を有する。
すなわち、本発明に係る精子機能改善剤等は天然物由来成分であるため、その医薬品組成物は長期にわたって連続的に適用できる可能性が高く、副作用も少ない可能性が高い。また、例えば、健康補助食品(機能性食品)などとして長期間、連続的に適用することにより、精子形成機能及び/又は精子機能低下を予防できる可能性がある。また、産業動物の飼料に適用すれば、飼育環境の管理不良によるストレスを原因とする精子形成機能及び/又は精子機能低下の発生を予防できる可能性がある。
本発明に係る医薬品組成物は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。医薬品組成物は、上記精子機能改善剤を、生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造される。錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。
医薬品組成物の投与量は、剤型の種類、投与方法、投与対象(動物を含む)の年齢や体重、症状等を考慮して決定されるものである。
また、本発明に係る食品組成物は、アシタバあるいはその抽出物に、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の通常食品原料として使用されているものを適宜配合することにより製造できる。また、一般に食品材料として使用される米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、スイートポテト、大豆、昆布、ワカメ、テングサなどと混合してもよい。
食品組成物としては、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、経腸栄養食品等を挙げることができる。さらに、これらの食品組成物は、動物に給餌することも可能である。
本発明に係る飼料は、アシタバあるいはその抽出物と、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、わら類、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、わら類等と混合することにより得ることができる。
一般に、家畜の飼料は、粗飼料、濃厚飼料、および特殊飼料の3種類に大別される。このうち、粗飼料は相対的に粗繊維含量が多く、容積が多い割には可消化栄養分が少ない飼料を指す。粗飼料には、生草や乾草、青刈飼料作物(青刈トウモロコシ等)、根菜類、わら類などが用いられている。また、濃厚飼料は比較的養分含量が高く、水分や粗繊維含量の低い飼料を指す。濃厚飼料には、トウモロコシ、マイロ、大麦、エンバク、米、アワ、ヒエ、キビ、コーリャンなどの穀類や、米糠、ふすま類などの穀物副産物(糠類)、落花生粕、綿実粕、ヒマワリ粕、菜種粕、胡麻粕、亜麻仁粕などの油粕類などが用いられている。
本発明に係る飼料は、これらの飼料に、アシタバの全草、あるいは葉、茎、根茎、花序、果実、種子を、生の状態であるいは乾燥物として添加することにより製造できる。この場合、アシタバは、切断あるいは粉砕して添加すればよい。また、本発明に係る飼料は、上記した飼料に、アシタバ抽出物を添加することによっても製造できる。
以上に説明した本発明に係る食品組成物および飼料には、必要に応じて、精子形成機能及び/又は精子機能の改善に用いられるものである旨が表示される。
<試験例1>
1.暑熱ストレスと精巣における酸化ストレスの関連性の検討
前述の如く、酸化ストレスが高い環境下では、活性酸素種が精子形成細胞あるいは精子の遺伝子へ影響を与え、これが男性不妊症の原因となり得ることが知られている。酸化ストレスが高まる要因は多種多様に存在し、例えば紫外線や放射線、タバコ・薬剤・金属・酸化された食べものなどの摂取が考えられている。そして、産業動物、特にブタにおける前記夏季不妊症の原因の一つとして、外部温度の上昇による精子性状の不良化が挙げられる。これらの点から、暑熱ストレスが精巣における酸化ストレスの増加を誘発する可能性について検討を行った。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。暑熱ストレスは、マウスの精巣部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「暑熱ストレス群」という)。対
照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照群
」という)。
そして、暑熱ストレス群のマウスについては、暑熱ストレスを負荷した24時間後に精巣を摘出した。これに対し、対照群のマウスについては、暑熱ストレス群のマウスと同時刻に精巣を摘出した。
各群につき、精巣を摘出した後、精巣の酸化還元状態を還元型/酸化型グルタチオンの比率(GSH/GSSG)を用いて評価した。この試験例1は、株式会社同仁化学研究所製のGSSG/GSH Quantification Kitを用いて行った。
[還元型/酸化型グルタチオンの比率の評価]
[1] 測定試料前処理
(1)各群のマウスから摘出した精巣(サンプル)を100mgあたり1mlの5% SSA(5-Sulfosalicylic acid dihydrate(和光純薬工業株式会社製)水溶液でホモジェナイズする。
(2)8000 x gで10分間遠心後上清を新しいチューブに移し、純水にて10分の1に希釈し
たものを測定試料とする。
[2] 還元型/酸化型グルタチオンの濃度測定
(1)還元型/酸化型グルタチオンの濃度測定は、前記GSSG/GSH Quantification Kitに付属したプロトコールに従って行った。
結果を図1に示す。図1中、(A)は対照群のマウスの精巣における還元型/酸化型グルタチオンの比率を示し、(B)は暑熱ストレス群のマウスの精巣における還元型/酸化型グルタチオンの比率を示す。図1に示すように、暑熱ストレス群のマウス(B)では、対照群のマウス(A)に比べ、精巣の酸化型グルタチオンに対する還元型グルタチオンの比率が著しく低下した。
試験例1の結果から、暑熱ストレスにより、生体内においてそのほとんどが還元型として存在し、且つ、抗酸化物質であるグルタチオンが酸化型へと変換される傾向が見られた。すなわち、暑熱ストレスはマウスの生体内におけて酸化ストレスに変換される傾向が見られた。
<試験例2>
2.アシタバ抽出物の精巣における精子形成機能に対する改善作用の検討
試験例1により、暑熱ストレスがマウスの生体内におけて酸化ストレスに変換される傾向が見られたことから、動物モデルを用い、暑熱ストレス環境下におけるアシタバ抽出物の精巣における精子形成機能改善作用について検討を行った。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。このマウスは、オリエンタル酵母工業株式会社から購入した。暑熱ストレスは、マウスの精巣部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「暑熱ストレス区」という)。対照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照区」という)。
そして、アシタバ抽出物を投与していないマウスをコントロール群として用いた(以下、「対照区コントロール群」という)。また、暑熱ストレスによる精子形成機能への影響を観察するため、暑熱ストレス区であって、アシタバ抽出物を投与していないマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区コントロール群」という)。更に、暑熱ストレス区であって、アシタバ抽出物を投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区アシタバ投与群」という)。
この暑熱ストレス区アシタバ投与群に関しては、アシタバ抽出物の初回の経口投与24時間後に前記暑熱ストレスの負荷を行った。また、アシタバ抽出物としては、株式会社日本生物.科学研究所製の「アシタバ粉末」を用いた。このアシタバ粉末100mg中、前記カル
コン類が20mg、前記クマリン類が28mg含有されている。そして、このアシタバ粉末をマウスが通常摂取する粉末飼料に混ぜ、28日間毎日自由摂取で経口投与した。このマウス用粉末飼料は、オリエンタル酵母工業株式会社から購入した。このアシタバ粉末の投与量は、75mg/kg/day体重とした。なお、恒温槽内の温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法
等)は、全ての群において同条件とした。
(1)暑熱ストレス区アシタバ投与群の個体については、第28日目に解剖し、先ず精巣上体尾部を摘出し、その後精巣上体頭部、体部及び精巣を摘出した。
(2)暑熱ストレス区コントロール群及び対照区コントロール群の個体についても、第28日目に解剖し、先ず精巣上体尾部を摘出し、その後精巣上体頭部、体部及び精巣を摘出した。
その後、各群の個体において、以下の手順により精巣上体尾部に貯蔵された精巣上体精子の精子濃度を検出した。
[精子濃度の検出方法]
(1) 摘出した精巣上体尾部にハサミで3か所切り込みを入れる。
(2) この精巣上体尾部を37℃の加温盤上に設置した精子用Buffer(2.2 mM HEPES pH7.35、1.2 mM MgCl2、100 mM NaCl、4.7 mM KCl、1 mM Pyruvic acid、4.8 mM Lactic acid hemi calcium salt、5.5 mM D-Glucose、20 mM Sodium bicarbonate)に浸し、15分後
に泳ぎ出てきた精子を回収した。
(3) 精液を純水で10倍希釈し、顕微鏡下で血球計算盤を用いて精子数を測定した。
(4) 精子数の測定は1サンプルにつき3度行い、平均値を結果とした。
更に、以下の手順により精巣上体精子の先体反応率を測定し、これに基づいて各群のマウスにおける精巣上体精子の受精能を検出した。
[先体反応率の検出方法]
(1) 精子濃度の検出方法の(1)にて精巣上体尾部から回収された精液の不純物を取り除くため、100 x gで1分間遠心後上清を新しいチューブに移す。
(2) 濃度調整のため400 x gで8分間遠心し、血球計算盤を用いて2.0×106精子/ 300 μlに調整する。
(3) 2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin(終濃度3 mM)を加え、37℃の恒温槽に40分間静置し受精能を獲得させる。
(4) Progesterone(終濃度20 μM)を添加した後、再び37℃の恒温槽で20分間静置する。
(5) 精液に8% Paraformaldehydeを300 μl添加して室温に15分間放置し、精液組織を固定させる。
(6) その後、200 x gで3分間遠心し上清を取り除き酢酸アンモニウム(100 mM)を800 μl加える。
(7) スライドガラスにバップペン(松波硝子工業株式会社製)で囲いを作り、その中に固定した精液を200 μl入れ、加温盤の上で乾燥させる。
(8) Coomassie brilliant blue(CBB)染色液(Coomassie brilliant blue 0.22%、Methanol 50%、純水40%、Acetic acid 10%)を100 μl添加し、染色させる。
(9) CBB染色の5分後にPhosphate-buffered saline(PBS)で染色液を洗い流す。尚、このPBCによる洗浄は5回行う。
(10) Mounting solution(Genemed Biotechnologies社製)をカバーガラスにすりつけてスライドガラスにのせ、顕微鏡下で100匹以上の精子を観察し、その受精能獲得精子比率、即ち先体反応率を測定する。
精子濃度の結果を図2に、上記先体反応の結果を図3に示す。前述の通り、本試験例2は前記暑熱ストレス負荷の28日後における精子濃度及び先体反応率を定量したものであることから、精子濃度及び先体反応率の低下が見られれば、精子形成機能の阻害に暑熱ストレスが寄与していることが考えられる。そして、図2中、(A)は対照区コントロール群のマウスの精子濃度を示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精子濃度を示す。また、(C)は暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの精子濃度を示す。図2に示すように、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)では、対照区コントロール群のマウス(A)に比べ、精子濃度が低く、暑熱ストレスを負荷することにより精子の形成機能が低下することが示された。これに対して、暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べ、精子濃度の増加が有意に示され、暑熱ストレスを負荷した状態であっても、精子形成機能が改善された。そして、この精子濃度の増加は、アシタバ抽出物の投与に依存していることが明らかとなった。
図3中、(A)は対照区コントロール群のマウスの先体反応率を示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの先体反応率を示す。また、(C)は暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの先体反応率を示す。図3に示すように、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)では、対照区コントロール群のマウス(A)に比べ、先体反応率が低く、暑熱ストレスを負荷することにより精子の先体反応率、すなわち受精能が低下することが示された。これに対し、暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べ、先体反応率の改善が有意に示され、精子の受精能が改善された。また、先体反応率は、対照区コントロール群のマウスと同程度に回復した。
試験例2の結果から、アシタバ抽出物が、暑熱ストレス負荷による精子形成機能の低下を顕著に抑制する効果を示し、精子形成機能改善作用を有することが明らかになった。
<試験例3>
3.アシタバ抽出物の抗酸化酵素の発現量増加機能の検討
前述の如く、生体内において、酸化ストレスが増加している環境下では、活性酸素種により精子形成細胞又は精子の遺伝子が損傷を受けることが知られている。そして、酸化ストレスが高いとは、生体内における活性酸素種の酸化作用と、抗酸化酵素等の抗酸化作用の均衡が崩れ、生体内の酸化反応が亢進している状態である。そこで、試験例2において観察されたアシタバ抽出物による精子形成機能改善作用が、活性酸素種の働きを抑制する抗酸化酵素の発現レベル増加に起因して発現されている可能性について検討を行った。
試験例2において、精巣上体尾部を摘出した後、精巣上体の頭部及び体部並びに精巣を摘出し、これらを−80℃にて保存させた。そして、精巣における抗酸化酵素のタンパク質発現レベルをウェスタンブロット解析を用いて評価した。抗酸化酵素としては、Catalase及びヘムオキシゲナーゼ(以下、「HO-1」という)を評価対象とした。このウェスタンブロット解析は以下の手順により行った。
[Catalase及びヘムオキシゲナーゼウェスタンブロット解析]
[1] タンパク質の調整
(1) -80 oCにて保存していた精巣を氷上で融解する。
(2) 組織用溶解バッファー(50 mM HEPES pH7.5、50 mM NaCl、1 mM EDTA、5% Glycerol、50 mM NaF、10 mM Sodium pyrophosphate、0.02% TritonX-100、1 mM Na3VO4、1 mM
PMSF、10 μg/ml Antipain、10μg/ml Leupeptin、10μg/ml Aprotinin、200μM Dithiothreitol、25 mM β-Glycerophosphate)を精巣重量100 mgに対しBuffer 500 μlの比
率で加えホモジネートする。
(3) その後、14000 rpmで30分間遠心を行う。
(4) 上清を回収し、さらに14000 rpmで30分間遠心し上清を回収し、タンパク質を調整する。
[2] 電気泳動及び抗原抗体反応
(1) 回収した細胞抽出液中のタンパク質濃度をBCA TM Protein Assay Kit(タカラバイオ株式会社製)を用いて、いわゆるBCA法により測定する。
(2) その後、30 μg相当のタンパク質を10% Acrylamide gel SDS-PAGEに供し、電気
泳動を行う。
(3) 電気泳動後、PVDFメンブレン(メルク株式会社製)に転写する。
(4) その後、5% BSA / TBS-T(10 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、0.1% Tween20)でブロッキングを行い、一次抗体を反応させる。
(5) TBS-Tで15分間メンブレンを洗浄した後、それぞれの一次抗体を認識する二次抗体を用い抗原抗体反応をさせる。
CatalaseとHO-1の抗体は、それぞれ以下のペプチドを合成しウサギを用いて作製した。尚、ペプチド合成と抗体作製はシグマ アルドリッチ ジャパン合同会社に発注した。
Catalase: ADNRDPASDQMKHWKEQRAC
HO-1: QPNSMPQDLSEALKEATKEC
(6) 再びTBS-Tで15分間メンブレンを洗浄し、バンドの検出にChemi-Lumi One(ナカライテスク株式会社製)を用いてHorse radish peroxidase(HRP)による化学発光をLAS 4000(Fuji Film)により検出する。
(7) 前記抗体の希釈には5% BSA/TBS-Tを用いた。また、内部標準タンパク質としてα-tubulinを用いた。
尚、本試験例3において、実験は3回以上行い、結果は平均値 ± 標準誤差(SE)で示した。各データの比較はT検定を行い、p<0.05の時、有意に差があると判断した。
結果を図4および図5に示す。図4はCatalaseのタンパク質発現レベルの結果を示し、図5はHO-1のタンパク質発現レベルの結果を示す。図5中、(A)は対照区コントロール群のマウスの精巣におけるCatalaseのタンパク質発現レベルを示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精巣におけるCatalaseのタンパク質発現レベルを示す。また、(C)は暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの精巣におけるCatalaseのタンパク質発現レベルを示す。
図4に示すように、暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、対照区コントロール群のマウス(A)に比べ、抗酸化酵素であるCatalaseのタンパク質発現レベルが有意に増加した。また、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べてもCatalaseのタンパク質発現レベルが明らかな増加傾向を示した。
図5中、(A)は対照区コントロール群のマウスの精巣におけるHO-1のタンパク質発現レベルを示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精巣におけるHO-1のタンパク質発現レベルを示す。また、(C)は暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの精巣におけるHO-1のタンパク質発現レベルを示す。
図5に示すように、暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、対照区コントロール群のマウス(A)に比べ、抗酸化酵素であるHO-1のタンパク質発現レベルが有意に増加した。また、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べてもHO-1のタンパク質発現レベルが明らかな増加傾向を示した。
試験例3の結果から、アシタバ抽出物が、暑熱ストレスの負荷環境下であっても、抗酸化酵素のタンパク質発現レベルの増加させる効果を有することが明らかになった。そして、アシタバ抽出物が、暑熱ストレスの負荷環境下であっても、精子形成機能の改善作用を有することが明らかになった。
<試験例4>
4.アシタバ抽出物による抗酸化酵素の発現レベル増加機能の時間依存性の検討
試験例3により、アシタバ抽出物による抗酸化酵素の発現レベル増加機能が観察された。このアシタバ抽出物による作用が経時的に発現される可能性についてウェスタンブロット解析による検討を行った。
この試験例4では、動物として、ICRマウス(オス、8週齢)を用い、そして以下の手順にて行った。この試験例4において使用したアシタバ抽出物、このアシタバ抽出物の投与量及びアシタバ抽出物の投与方法は試験例2と同一である。更に、ウェスタンブロット解析の手順及び評価対象の抗酸化酵素は試験例3と同一である。
(1)対象区としてアシタバ抽出物を投与していない(0日後)マウスを用いた。更に、アシタバ抽出物投与開始から1日後、アシタバ抽出物投与開始から3日後、アシタバ抽出物投与開始から7日後にそれぞれマウスを解剖し、各個体の精巣を摘出する。
(2) 精巣摘出後、−80℃にて保存する。
(3) 摘出した精巣における抗酸化酵素のタンパク質発現レベルをウェスタンブロット解析を用いて評価する。
結果を図6及び図7に示す。図6はCatalaseのタンパク質発現レベルの結果を示し、図7はHO-1のタンパク質発現レベルの結果を示す。図6及び図7に示すように、アシタバ抽出物を投与することにより、その投与期間に従ってCatalase及びHO-1のタンパク質発現レベルが増加することが明らかとなった。
試験例4の結果から、アシタバ抽出物が有する抗酸化酵素の発現レベル増加機能が、経時的に強く作用することが明らかとなり、やはりアシタバ抽出物が精子形成機能の改善作用を有することが明らかになった。
<試験例5>
5.アシタバ抽出物の精子機能改善作用の検討
動物モデルを用い、暑熱ストレス環境下、特に暑熱ストレス負荷後短期期間において、アシタバ抽出物が、精子機能改善作用を発現する可能性について検討を行った。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。暑熱ストレスの一つとしては、マウスの精巣部を含む後部1/2を39℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「第一暑熱ストレス区」という)。また、他の暑熱ストレスとしては、マウスの精巣部を含む後部1/2を40℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「第二暑熱ストレス区」という)。対照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照区」という)。
そして、アシタバ抽出物を投与していないマウスをコントロール群として用いた(以下、「対照区コントロール群」という)。また、暑熱ストレスによる精子機能への影響を観察するため、暑熱ストレス区であって、アシタバ抽出物を投与していないマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区コントロール群」という)。この暑熱ストレス区コントロール群としては、第一暑熱ストレス区及び第二暑熱ストレス区それぞれに対して設けた(以下、それぞれを「第一暑熱ストレス区コントロール群」,「第二暑熱ストレス区コントロール
群」という)。更に、暑熱ストレス区であって、アシタバ抽出物を投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区アシタバ投与群」という)。この暑熱ストレス区アシタバ投与群に関しても、第一暑熱ストレス区及び第二暑熱ストレス区それぞれに対して設けた(以下、それぞれを「第一暑熱ストレス区アシタバ投与群」,「第二暑熱ストレス区アシタバ投与群」という)。
前記第一暑熱ストレス区アシタバ投与群及び第二暑熱ストレス区アシタバ投与群に関しては、アシタバ抽出物の初回の経口投与7日後に暑熱ストレスの負荷を行った。また、アシタバ抽出物としては、株式会社日本生物.科学研究所製の「アシタバ粉末」を用い、マウスが通常摂取する粉末飼料に混ぜ、7日間毎日自由摂取で経口投与した。この試験例5において、用いたアシタバ抽出物及びこのアシタバ抽出物の投与量は、試験例2と同一である。なお、恒温槽内の温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、全ての群において同条件とした。
(1)第一暑熱ストレス区アシタバ投与群及び第二暑熱ストレス区アシタバ投与群の個体については、暑熱ストレス負荷の24時間後に解剖し、各個体の精巣上体尾部を摘出する。
(2)第一暑熱ストレス区コントロール群及び第二暑熱ストレス区コントロール群の個体についても、暑熱ストレス負荷の24時間後に解剖し、各個体の精巣上体尾部を摘出する。また、対照区コントロール群の個体については、暑熱ストレスを負荷した各群の個体と同様、同時刻に解剖し、各個体の精巣上体尾部を摘出する。
その後、各群の個体の精巣上体尾部の解剖を行い、試験例2と同様の方法により、精巣上体に貯蔵された精巣上体精子の精子濃度及び先体反応率を測定した。
精巣濃度の結果を図8に、上記先体反応の結果を図9に示す。図8中、(A)は対照区コントロール群のマウスの精子濃度を示し、(B)は第一暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精子濃度を示す。また、(C)は第一暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの精子濃度を示す。更に、(D)は第二暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精子濃度を示し、(E)は第二暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの精子濃度を示す。
図8に示すように、暑熱ストレスを負荷した群(B)〜(E)に関しては、対照区コントロール群(A)に比べ、精子濃度が低下する傾向が見られた。そして、第一暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、第一暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べ、精子濃度の上昇傾向が示され、これがアシタバ抽出物の投与に依存したと考えられる。
更に図8に示すように、第二暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(E)では、第二暑熱ストレス区コントロール群のマウス(D)に比べ、精子濃度の上昇傾向が示され、これがアシタバ抽出物の投与に依存したと考えられる。
図9中、(A)は対照区コントロール群のマウスの先体反応率を示し、(B)は第一暑熱ストレス区コントロール群のマウスの先体反応率を示す。また、(C)は第一暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの先体反応率を示す。更に、(D)は第二暑熱ストレス区コントロール群のマウスの先体反応率を示し、(E)は第二暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの先体反応率を示す。
図9に示すように、暑熱ストレスを負荷した群(B)〜(E)に関しては、対照区コントロール群(A)に比べ、先体反応率が低下する傾向が見られた。更に、第一暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウス(C)では、第一暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べ、先体反応率が高く、暑熱ストレスを負荷した状態であっても、先体反応率の上昇傾向が見られ、これがアシタバ抽出物の投与に依存したと考えられる。この傾向は、第二暑熱ストレスを負荷した群においても同様に見られた。
本試験例5は、暑熱ストレス負荷の24時間後における精子濃度及び先体反応率を定量したものであり、試験例2のように暑熱ストレス負荷の28日後における精子濃度及び先体反応率を定量したものではない。この点から、暑熱ストレスが精巣における精子の形成段階に影響を与えるだけでなく、精巣上体に貯蔵された成熟した精子そのものにも影響を与えることが明らかとなった。この点、図9に示す先体反応率の測定は前述の如く、精子用Buffer中に泳ぎ出てきた精子に基づいて行った。このため、図9に示すアシタバ投与群のマウス(C),(E)における先体反応率の低下傾向から、やはり暑熱ストレスが精巣上体に貯蔵された成熟した精子そのものにも影響を与えることが明らかとなった。
更に、異なる温度条件下であるにも関わらず、アシタバ投与群(C),(D)がコントロール群(B),(D)に対して、精子濃度の上昇傾向及び先体反応の上昇傾向を示したことから、アシタバ抽出物が、暑熱ストレスの強弱に関わらず、暑熱ストレス負荷による精子機能の低下を抑制する効果を示し、精子機能改善作用を有することが明らかになった。
<試験例6>
6.カルコン類のキサントアンゲロール及び4−ヒドロキシデリシンの精巣における精子形成機能に対する改善作用の検討
試験例2等により、アシタバ抽出物による精子形成機能改善作用が観察された。
一方前述の如く、アシタバにはカルコン類およびクマリン類に属する複数の化合物が含まれていることが知られている。
このため、本発明者らは、アシタバに含まれるカルコン類に属する化合物(以下、「カルコン化合物」という)のうち、特に、キサントアンゲロール(以下、「XA」と略記する)及び4−ヒドロキシデリシン(以下、「4HD」と略記する)に関し、精子形成機能に対する改善作用の検討を行った。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。このマウスは、オリエンタル酵母工業株式会社から購入した。暑熱ストレスは、マウスの精巣部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「暑熱ストレス区」という)。対照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照区」という)。
そして、カルコン化合物を投与していないマウスをコントロール群として用いた(以下、「対照区コントロール群」という)。また、暑熱ストレスによる精子形成機能への影響を観察するため、暑熱ストレス区であって、カルコン化合物を投与していないマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区コントロール群」という)。更に、暑熱ストレス区であって、XAを投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区XA投与群」という)。また、暑熱ストレス区であって、4HDを投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区4HD投与群」という)。
前記暑熱ストレス区XA投与群及び暑熱ストレス区4HD投与群に関しては、カルコン化合物の初回の経口投与7日後に前記暑熱ストレスの負荷を行った。
また、カルコン化合物としては、株式会社日本生物.科学研究所製の「アシタバカルコン粉末」から80%Methanol(メタノール)を用いて抽出した後、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)を2回繰り返し、純度95%以上に精製したものを用いた。
ここで、HPLCの条件は以下の通りである。
<HPLCによる4HD、XAの精製条件>
カラム:Intersil OSD-4(10.0×250 mm)
移動相:80% Methanol
流速:4.0 ml/min
溶媒:Methanol
検出:280 nm
インジェクション量:0.75 ml
そして、精製したXA及び4HDをマウスが通常摂取するコーンオイルに混ぜ、7日間毎日ゾンデを用いて経口投与した。このカルコン化合物の投与量は、5mg/kg/day体重とした。なお、恒温槽内の温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、全ての群において同条件とした。
(1)暑熱ストレス区XA投与群、暑熱ストレス区4HD投与群及び暑熱ストレス区コントロール群の個体については、暑熱ストレス負荷の24時間後に解剖し、各個体の精巣上体尾部を摘出した。
(2)対照区コントロール群の個体については、暑熱ストレスを負荷した各群の個体と同様、同時刻に解剖し、各個体の精巣上体尾部を摘出した。
その後、各群の個体の精巣上体尾部の解剖を行い、試験例2と同様の方法により、精巣上体に貯蔵された精巣上体精子の精子濃度及び先体反応率を測定した。
尚、本試験例6において、対照区コントロール群及び暑熱ストレス区4HD投与群は4匹、暑熱ストレス区XA投与群及び暑熱ストレス区コントロール群は5匹のマウスを用い、実験は3回以上行い、結果は平均値 ± 標準誤差(SE)で示した。各データの比較はT検定を行い、暑熱ストレス区コントロール群の結果に対してp<0.05の時、有意に差があると判断した。
精巣濃度の結果を図10に、上記先体反応率の結果を図11に示す。図10中、(A)は対照区コントロール群のマウスの精子濃度を示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの精子濃度を示す。また、(C)は暑熱ストレス区XA投与群のマウスの精子濃度を示す。更に、(D)は暑熱ストレス区4HD投与群のマウスの精子濃度を示す。
図10に示すように、暑熱ストレスを負荷した群(B)〜(D)に関しては、対照区コントロール群(A)に比べ、精子濃度が低下する傾向が見られた。その一方で、暑熱ストレス区4HD投与群のマウス(D)では、暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)に比べ、精子濃度の上昇傾向が示され、これは4HDの投与に依存したと考えられる。
図11中、(A)は対照区コントロール群のマウスの先体反応率を示し、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの先体反応率を示す。また、(C)は暑熱ストレス区XA投与群のマウスの先体反応率を示し、(D)は暑熱ストレス区4HD投与群のマウスの先体反応率を示す。
図11に示すように、暑熱ストレス区コントロール群(B)に関しては、対照区コントロール群(A)に比べ、先体反応率が低下する傾向が見られた。
その一方で、暑熱ストレス区XA投与群のマウス(C)では、対照区コントロール群のマウス(A)と同程度の先体反応率を示し、暑熱ストレスを負荷した状態であっても、XAの投与に依存して先体反応率が上昇することが確認された。
更に、暑熱ストレス区4HD投与群(D)に関しては、暑熱ストレスを負荷していない対照区コントロール群(A)に比べて先体反応率が有意に高い値を示した。
すなわち、暑熱ストレスを負荷した状態であっても、4HDの投与により先体反応率が上昇することが確認された。
本試験例6は、暑熱ストレス負荷の24時間後における精子濃度及び先体反応率を定量したものであり、試験例2のように暑熱ストレス負荷の28日後における精子濃度及び先体反応率を定量したものではない。
この点から、暑熱ストレスが精巣における精子の形成段階に影響を与えるだけでなく、精巣上体に貯蔵された成熟した精子そのものにも影響を与えることが明らかとなった。この点、図11に示す先体反応率の測定は前述の如く、精子用Buffer中に泳ぎ出てきた精子に基づいて行った。このため、図11に示す暑熱ストレス区コントロール群のマウス(B)における先体反応率の低下傾向から、やはり暑熱ストレスが精巣上体に貯蔵された成熟した精子そのものにも影響を与えることが明らかとなった。
そして、暑熱ストレス区4HD投与群(D)が暑熱ストレス区コントロール群(B)に対して、精子濃度の上昇傾向及び先体反応の上昇傾向を示したことから、4HDが、暑熱ストレスを負荷した後短期間において精子機能の低下を抑制する効果を示し、精子機能改善作用を有することが明らかになった。また、暑熱ストレス区XA投与群(C)が暑熱ストレス区コントロール群(B)に対して先体反応の上昇傾向を示したことから、XAに関しても、少なくとも先体反応について精子機能改善作用を示すことが明らかとなった。
<試験例7>
7.暑熱ストレスに対するアシタバ粉末の機能の検討
試験例2〜5により、アシタバ粉末には、精巣における精子形成機能に対する改善作用があることが確認された。
そこで、本発明者らは、精子が産生される精細管において、暑熱ストレスに対するアシタバ粉末の機能を検討した。
ここで、一般的に多核巨細胞(Multinucleated giant cell)はストレスを受けた精細管で観察されることから、精巣における障害の指標とされている。このため、本発明者らは、多核巨細胞の出現を基準として、暑熱ストレスに対するアシタバ粉末の機能を検討した。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。このマウスは、オリエンタル酵母工業株式会社から購入した。暑熱ストレスは、マウスの精巣部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「暑熱ストレス区」という)。対照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照区」という)。
そして、アシタバ粉末を投与していないマウスをコントロール群として用いた(以下、「対照区コントロール群」という)。また、暑熱ストレスによる精子形成機能への影響を観察するため、暑熱ストレス区であって、アシタバ粉末を投与していないマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区コントロール群」という)。更に、暑熱ストレス区であって、アシタバ粉末を投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区アシタバ投与群」という)。
前記暑熱ストレス区アシタバ投与群に関しては、アシタバ粉末の初回の経口投与7日後に暑熱ストレスの負荷を行った。また、アシタバ粉末としては、株式会社日本生物.科学研究所製のものを用い、マウスが通常摂取する粉末飼料に混ぜ、7日間毎日自由摂取で経口投与した。この試験例7において、アシタバ粉末の投与量は、75mg/kg/day体重とした。なお、恒温槽内の温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、全ての群において同条件とした。
(1)暑熱ストレス区アシタバ投与群の個体については、暑熱ストレス負荷の48時間後に解剖し、各個体の精巣を摘出する。
(2)暑熱ストレス区コントロール群の個体についても、暑熱ストレス負荷の48時間後に解剖し、各個体の精巣を摘出する。
(3)対照区コントロール群の個体については、暑熱ストレスを負荷した各群の個体と同様、同時刻に解剖し、各個体の精巣を摘出する。
各群について、摘出した精巣を10%中性緩衝ホルマリン液(和光純薬工業株式会社製)に浸漬し固定した。その後、組織切片を作製し、当該切片をヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin Eosin:HE)染色(以下、「HE染色」という)に供した。
尚、前記組織切片の作製はパラフィン包埋法により行った。また、HE染色の方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
HE染色の結果を図12に示す。図12中、(A)は対照区コントロール群のマウスの染色組織切片を、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの染色組織切片を、(C)は、暑熱ストレス区アシタバ投与群のマウスの染色組織切片を示す。
図12に示すように、暑熱ストレス区コントロール群(B)では、精細管内に多くの多核巨細胞が存在し、細胞の欠如による空洞が見られた(矢線部分)。一方で、暑熱ストレス区アシタバ投与群(C)では、多核巨細胞や空洞の出現が抑制された。
本試験例7の結果から、アシタバ粉末を経口投与することにより、精細管更には精細管の内方に存在し、熱などのストレスに弱いとされる精母細胞を暑熱ストレスから保護する機能を有し、もって暑熱ストレスを受けても正常な精子形成が行われることが確認された。
<試験例8>
8.暑熱ストレスに対するXA及び4HDの機能の検討
試験例6により、精子の成熟が行われる精巣上体において、カルコン類のXA及び4HDの精巣における精子形成機能に対する改善作用が確認された。更に、試験例7により、アシタバ粉末は、精細管更には精細管の内方に存在し、熱などのストレスに弱いとされる精母細胞を暑熱ストレスから保護する機能を有することが確認された。
これらの試験例の結果から、本発明者らは、暑熱ストレスに対するXA及び4HDの機能を検討した。
動物には、ICRマウス(オス、8週齢)を用いた。このマウスは、オリエンタル酵母工業株式会社から購入した。暑熱ストレスは、マウスの精巣部を含む後部1/2を42℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「暑熱ストレス区」という)。対照にはマウスの精巣部を含む後部1/2を33℃の恒温槽に20分間暴露した(以下、「対照区」という)。
そして、カルコン化合物を投与していないマウスをコントロール群として用いた(以下、「対照区コントロール群」という)。また、暑熱ストレスによる精子形成機能への影響を観察するため、暑熱ストレス区であって、カルコン化合物を投与していないマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区コントロール群」という)。更に、暑熱ストレス区であって、XAを投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区XA投与群」という)。また、暑熱ストレス区であって、4HDを投与したマウスを用いた(以下、「暑熱ストレス区4HD投与群」という)。
前記暑熱ストレス区XA投与群及び暑熱ストレス区4HD投与群に関しては、カルコン化合物の初回の経口投与7日後に前記暑熱ストレスの負荷を行った。
また、カルコン化合物としては、株式会社日本生物.科学研究所製の「アシタバカルコン粉末」から80%Methanol(メタノール)を用いて抽出した後、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)を2回繰り返し、純度95%以上に精製したものを用いた。HPLCの条件は試験例6の条件と同一である。
そして、精製したXA及び4HDをマウスが通常摂取するコーンオイルに混ぜ、7日間毎日ゾンデを用いて経口投与した。このカルコン化合物の投与量は、5mg/kg/day体重とした。なお、恒温槽内の温度以外の環境条件(照明、換気、給餌方法等)は、全ての群において同条件とした。
(1)暑熱ストレス区XA投与群、暑熱ストレス区4HD投与群及び暑熱ストレス区コントロール群の個体については、暑熱ストレス負荷の48時間後に解剖し、各個体の精巣を摘出した。
(2)対照区コントロール群の個体については、暑熱ストレスを負荷した各群の個体と同様、同時刻に解剖し、各個体の精巣を摘出した。
各群について、摘出した精巣をブアン固定液(和光純薬工業株式会社製)に浸漬し固定した。その後、組織切片を作製し、当該切片をHE染色に供した。
尚、前記組織切片の作製はパラフィン包埋法により行った。また、HE染色は、方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
HE染色の結果を図13に示す。図13中、(A)は対照区コントロール群のマウスの染色組織切片を、(B)は暑熱ストレス区コントロール群のマウスの染色組織切片を、(C)は、暑熱ストレス区4HD投与群のマウスの染色組織切片を、(D)は、暑熱ストレス区XA投与群のマウスの染色組織切片を示す。
図13に示すように、暑熱ストレス区コントロール群(B)では、精細管内に多くの多核巨細胞が存在し、細胞の欠如による空洞が見られた(矢線部分)。一方で、暑熱ストレス区4HD投与群(C)及び暑熱ストレス区XA投与群(D)では、多核巨細胞や空洞の出現が抑制された。
本試験例8の結果から、カルコン化合物を経口投与することにより、精細管更には精細管の内方に存在し、熱などのストレスに弱いとされる精母細胞を暑熱ストレスから保護する機能を有し、もって暑熱ストレスを受けても正常な精子形成が行われることが確認された。
本発明に係る精子機能改善剤は、ヒトおよび動物の不妊治療のため、あるいは畜産業の生産効率向上のための医薬品組成物、飼料並びに食品組成物として好適に利用できる。

Claims (7)

  1. アシタバあるいはその抽出物を有効成分として含有する精子機能改善用の経口剤。
  2. 前記アシタバの抽出物が、キサントアンゲロール又は4−ヒドロキシデリシンである、請求項1記載の精子機能改善用の経口剤。
  3. キサントアンゲロール又は4−ヒドロキシデリシンを有効成分として含有する精子機能改善用の経口剤。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の精子機能改善用の経口剤を含有する不妊の治療又は予防のための経口用医薬品組成物。
  5. アシタバあるいはその抽出物を含有し、精子機能の改善のために用いられる家畜用又は家禽用の飼料。
  6. アシタバあるいはその抽出物を含有し、精子機能の改善のために用いられる食品組成物。
  7. アシタバあるいはその抽出物を家畜又は家禽に給餌する手順を含む、家畜又は家禽の精子機能改善方法。
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