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JP6684088B2 - 既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法 - Google Patents

既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法 Download PDF

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JP6684088B2 JP2015247029A JP2015247029A JP6684088B2 JP 6684088 B2 JP6684088 B2 JP 6684088B2 JP 2015247029 A JP2015247029 A JP 2015247029A JP 2015247029 A JP2015247029 A JP 2015247029A JP 6684088 B2 JP6684088 B2 JP 6684088B2
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Description

本発明は、従来と遜色のない短工期で、負担し得るせん断力を大きくすることが可能で、建物の良好な耐震性能を確保できる既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法に関する。
左右一対の柱と上下一対の梁が接合されて構成される建物の架構内部に、少なくともいずれかの梁に接合されて一対の柱間に設けられた腰壁や垂れ壁などの非耐力壁を有し、この非耐力壁と架構とで区画して長方形状の開口部が形成された既存建物の耐震補強構造や耐震補強方法として、例えば特許文献1が知られている。
特許文献1の「鉄筋コンクリート建物の耐震補強構造」は、施工性に優れ、工費の節減、工期の短縮が図られ、意匠上の制約の少ない鉄筋コンクリート建物の耐震補強構造を提供することを課題とし、鉄筋コンクリート建物における柱、梁で囲まれたフレーム内の腰壁、垂れ壁間に、フランジ、リブプレート、ベースプレートが普通鋼により構成され、ウエブが極低降伏点鋼により構成された制震部材を組み込んで構成されている。腰壁及び垂れ壁と柱との間には、スリットを設けている。
特開平10−252309号公報
特許文献1では、腰壁と垂れ壁を補強せずに使用するため、フレーム内で負担し得るせん断力が小さいという課題があった。また、スリットを設けるため、施工に手間がかかると共に、当該スリットによっても、負担し得るせん断力がさらに小さくなってしまうという課題があった。
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、従来と遜色のない短工期で、負担し得るせん断力を大きくすることが可能で、建物の良好な耐震性能を確保できる既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる既存建物の耐震補強構造は、左右一対の柱と上下一対の梁が接合されて構成される建物の架構内部に、少なくともいずれかの梁に接合されて一対の柱間に設けられた、または少なくともいずれかの柱に接合されて一対の梁間に設けられた非耐力壁を有し、非耐力壁と架構とで区画して長方形状の開口部が形成された既存建物の耐震補強構造であって、上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合されて、該開口部内に増設された新設強度部材と、該新設強度部材及び上記架構に接合されて、上記開口部内に増設された鉄筋コンクリート製の新設耐力壁とを備え、前記非耐力壁は、前記梁に接合して設けられた腰壁及び/または垂れ壁であり、前記新設強度部材は、その両端が左右の前記柱に接合された新設梁であり、上記開口部が、上記新設梁の増設によってせん断力が増強された上記腰壁及び/または上記垂れ壁と上記新設耐力壁とで構築された連層耐震壁で封鎖されていることを特徴とする。
また、本発明にかかる既存建物の耐震補強構造は、左右一対の柱と上下一対の梁が接合されて構成される建物の架構内部に、少なくともいずれかの梁に接合されて一対の柱間に設けられた、または少なくともいずれかの柱に接合されて一対の梁間に設けられた非耐力壁を有し、非耐力壁と架構とで区画して長方形状の開口部が形成された既存建物の耐震補強構造であって、上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合されて、該開口部内に増設された新設強度部材と、該新設強度部材及び上記架構に接合されて、上記開口部内に増設された鉄筋コンクリート製の新設耐力壁とを備え、前記非耐力壁は、前記柱に接合して設けられた袖壁であり、前記新設強度部材は、その両端が上下の前記梁に接合された新設間柱であり、上記開口部が、上記柱間隔を狭める形態でせん断力を増強する上記新設間柱が増設された上記袖壁と上記新設耐力壁とで封鎖されていることを特徴とする。
前記新設耐力壁は、プレキャスト製であることを特徴とする。
本発明にかかる既存建物の耐震補強方法は、上記既存建物の耐震補強構造を構築するための既存建物の耐震補強方法であって、前記非耐力壁及び前記建物の架構にこれらから突出させてアンカーを配設すると共に、前記新設強度部材に埋設する配筋及び前記新設耐力壁に埋設する配筋を配設する配筋工程と、上記新設強度部材及び上記新設耐力壁を増設しつつ該新設強度部材及び該新設耐力壁を上記アンカーを介して上記非耐力壁及び上記建物の架構に接合すると同時に、該新設強度部材及び該新設耐力壁で前記開口部を封鎖するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とする。
本発明にかかる既存建物の耐震補強方法は、上記既存建物の耐震補強構造を構築するための既存建物の耐震補強方法であって、新設耐力壁がプレキャスト製である場合に、上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合して、該開口部内に新設強度部材を増設する第1工程と、上記新設強度部材及び上記架構に接合して、上記開口部内に新設耐力壁を増設し、これら新設耐力壁及び新設強度部材で該開口部を封鎖する第2工程とを備えたことを特徴とする。
本発明にかかる既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法にあっては、従来と遜色のない短工期で、負担し得るせん断力を大きくすることができ、建物の良好な耐震性能を確保できる。詳細には、開口部に面して腰壁、垂れ壁または袖壁、並びに建物の架構を構成する左右一対の柱または上下一対の梁に接合されて、開口部内に増設された新設強度部材である新設梁または新設間柱と、新設梁または新設間柱、並びに左右一対の柱または上下一対の梁に接合されて、開口部内に増設された鉄筋コンクリート製の新設耐力壁とを備え、これら新設耐力壁と、新設梁または新設間柱とで開口部が封鎖されていて、具体的には、腰壁及び/または垂れ壁の場合には、新設強度部材は、その両端が左右の柱に接合された新設梁であって、開口部が、新設梁の増設によってせん断力が増強された腰壁及び/または垂れ壁と新設耐力壁とで構築された連層耐震壁で封鎖されるので、また、袖壁の場合には、新設強度部材は、その両端が上下の前記梁に接合された新設間柱であって、開口部が、柱間隔を狭める形態でせん断力を増強する新設間柱が増設された袖壁と新設耐力壁とで封鎖されるので、開口部を封鎖するこれら新設梁または新設間柱と新設耐力壁の増設によって、腰壁等や袖壁の強度を新設梁や新設間柱によって増強することができ、既存建物の架構が負担し得るせん断力を大きくすることができて、既存建物の良好な耐震性能を確保することができる。
本発明に係る既存建物の耐震補強構造の好適な一実施形態であって、非耐力壁が腰壁である場合の正面図である。 図1中、A−A線矢視断面図である。 図1中、B−B線矢視断面図である。 本発明に係る既存建物の耐震補強構造を、他の非耐力壁に適用した場合であって、図4(A)は、非耐力壁が垂れ壁である場合の概略正面図、図4(B)は、非耐力壁が袖壁である場合の概略正面図である。 図1に示した既存建物の耐震補強構造の他の例を示す正面図である。
以下に、本発明にかかる既存建物の耐震補強構造及び耐震補強方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る既存建物の耐震補強構造であって、非耐力壁が腰壁である場合の正面図、図2は、図1中、A−A線矢視断面図、図3は、図1中、B−B線矢視断面図、図4は、本実施形態に係る既存建物の耐震補強構造を、他の非耐力壁に適用した場合であって、図4(A)は、非耐力壁が垂れ壁である場合の概略正面図、図4(B)は、非耐力壁が袖壁である場合の概略正面図である。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物ではよく知られているように、左右一対の既存柱1,1と上下一対の既存梁2,2とが接合されて、建物強度を保持する建物の架構Tが構成される。既存柱1,1及び既存梁2,2は、鉄筋コンクリート製もしくは鉄骨鉄筋コンクリート製で構築される。
このような建物の架構T内部に、腰壁3や垂れ壁4、袖壁5などの、鉄筋コンクリート製の非耐力壁を設けることもよく知られている。非耐力壁3〜5は、建物の強度を保持する建物の架構Tを構成する既存柱1,1や既存梁2,2に比して、低強度で形成される。図1〜3には、非耐力壁が腰壁3の場合が示されている。
腰壁3は、下方の既存梁2の直上に、当該下方の既存梁2及び左右一対の既存柱1,1の下部に接合されて、左右一対の既存柱1,1間に設けられる。そして、建物の架構Tの内部には、腰壁3の上面S1と、建物の架構Tを構成する上方の既存梁2の下面D及び左右一対の既存柱1,1それぞれにおける、腰壁3と上方の既存梁2との間に位置する側面L,Rとで区画されて、長方形状の開口部Xが形成される。図示例では、腰壁3に床スラブ6が付設されている(図2参照)が、付設されていない場合もある。
図4(A)に示すように、非耐力壁が垂れ壁4の場合には、垂れ壁4は、上方の既存梁2の直下に、当該上方の既存梁2及び左右一対の既存柱1,1の上部に接合されて、左右一対の既存柱1,1間に設けられる。そして、建物の架構Tの内部には、垂れ壁4の下面S2と、下方の既存梁2の上面Uと、左右一対の既存柱1,1それぞれにおける、垂れ壁4と下方の既存梁2との間に位置する側面L,Rとで区画されて、長方形状の開口部Xが形成される。
腰壁3と垂れ壁4の両方が設けられる場合もある。この場合には、長方形状の開口部Xは、垂れ壁4の下面S2と、腰壁3の上面S1と、左右一対の既存柱1,1それぞれにおける、垂れ壁4と腰壁3との間に位置する側面L,Rとで区画されて形成される。
図4(B)に示すように、非耐力壁が袖壁5の場合には、袖壁5は、例えば左方の既存柱1の側面Lに接して、当該左方の既存柱1及び上下一対の既存梁2,2の左部に接合されて、上下一対の既存梁2,2間に設けられる。そして、建物の架構Tの内部には、袖壁5の側面S3と、当該袖壁5に向かい合う右方の既存柱1の側面Rと、上下一対の既存梁2,2それぞれにおける、袖壁5と右方の既存柱1との間に位置する上下面D,Uとで区画されて、長方形状の開口部Xが形成される。
袖壁5は、反対に、右方の既存柱1の側面Rに接して、当該右方の既存柱1及び上下一対の既存梁2,2の右部に接合されて、上下一対の既存梁2,2間に設けられる場合もあり、この場合も、長方形状の開口部Xは、上記左方の既存柱1側に袖壁5が設けられている場合と同様にして、区画形成される。さらに、左右の既存柱1,1双方に接合されて、左右一対で袖壁5,5が設けられる場合もある。
本実施形態に係る既存建物の耐震補強構造では、開口部X内に増設して、新設強度部材と新設耐力壁とが備えられ、これら新設耐力壁及び新設強度部材で開口部Xが封鎖されて構成される。
非耐力壁が腰壁3や垂れ壁4の場合には、新設強度部材は新設梁7であって、この新設梁7は、開口部Xに面して、腰壁3の直上や垂れ壁4の直下に接合されると共に、長さ方向両端が建物の架構Tである左右一対の既存柱1,1に接合されて、開口部X内に増設される。非耐力壁が袖壁5の場合には、新設強度部材は新設間柱8であって、この新設間柱8は、開口部Xに面して、既存柱1(,1)の側面L(,R)に接して接合されると共に、高さ方向両端が建物の架構Tである上下一対の既存梁2,2に接合されて、開口部X内に増設される。
そして、新設耐力壁9は、非耐力壁が腰壁3の場合には、新設梁7の上面7a、上方の既存梁2の下面D、左右一対の既存柱1,1の側面L,Rで取り囲まれる部位に設けられて、開口部X内に増設される。新設耐力壁9は、非耐力壁が垂れ壁4の場合には、新設梁7の下面7b、下方の既存梁2の上面U、左右一対の既存柱1,1の側面L,Rで取り囲まれる部位に設けられて、開口部X内に増設される。
新設耐力壁9は、非耐力壁が袖壁5の場合には、新設間柱8の側面8a、新設間柱8と向かい合う既存柱1(,1)の側面L(,R)(左右に一対で袖壁5が設けられている場合には、新設間柱8の側面8a)、上下一対の既存梁2,2の上・下面D,Uで取り囲まれる部位に設けられて、開口部X内に増設される。
新設梁7は、梁主筋17及びスターラップ筋10が埋設された鉄筋コンクリート製で構築される。新設耐力壁9は、壁筋11が埋設された鉄筋コンクリート製で構築される。新設梁7及び新設耐力壁9はいずれも、建物強度を増強する強度で形成される。新設耐力壁9の周縁部には、新設梁7に沿う部分を除き、割裂防止筋12も埋設される。
非耐力壁が腰壁3の場合、図1〜3に示されているように、新設梁7及び新設耐力壁9は、現場打ちで構築しても良いし、図示しないけれども、新設梁7及び新設耐力壁9のいずれか一方または両方をプレキャスト製としてもよい。
現場打ちの場合には、新設耐力壁9の壁筋11の端部が新設梁7内部に埋設されてコンクリートが打設されることにより、新設梁7と新設耐力壁9とが一体的に接合される。新設梁7及び新設耐力壁9のいずれか一方または両方がプレキャスト製の場合には、両者間に跨がるようにアンカーが配設され、当該アンカーによって新設梁7と新設耐力壁9とが一体的に接合される。垂れ壁4の場合も同様である。
垂れ壁4と腰壁3の両方が設けられている場合には、新設耐力壁9は、上下一対の新設梁7で挟まれて、上記と同様にして、各新設梁7と一体的に接合される。
袖壁5の場合には、新設間柱8は、柱主筋及びフープ筋が埋設された鉄筋コンクリート製で構築される。新設間柱8は、建物強度を増強する強度で形成される。新設耐力壁9の構成は、腰壁3等を備える場合と同様である。新設間柱8と新設耐力壁9とは、現場打ちであれ、プレキャスト製であれ、腰壁の場合と同様に両者は一体的に接合される。
袖壁5が左右一対設けられる場合には、新設耐力壁9は、左右一対の新設間柱8で挟まれて、上記と同様にして、各新設間柱8と一体的に接合される。
非耐力壁が腰壁3の場合、新設梁7と建物の架構Tとは、腰壁3及び左右一対の既存柱1,1それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー13が新設梁7内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。同様に、新設耐力壁9と建物の架構Tとは、上方の既存梁2及び左右一対の既存柱1,1それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー14が新設耐力壁9内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。
非耐力壁が垂れ壁4の場合には、新設梁7と建物の架構Tとは、垂れ壁4及び左右一対の既存柱1,1それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー13が新設梁7内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。同様に、新設耐力壁9と建物の架構Tとは、下方の既存梁2及び左右一対の既存柱1,1それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー14が新設耐力壁9内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。
腰壁3及び垂れ壁4双方が設けられている場合には、新設耐力壁9には、左右の既存柱1,1それぞれから開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー14が埋設されて、当該新設耐力壁9が建物の架構Tに一体的に接合される。
非耐力壁が袖壁5の場合には、新設間柱8と建物の架構Tとは、袖壁5及び上下一対の既存梁2,2それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー13が新設間柱8内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。同様に、新設耐力壁9と建物の架構Tとは、新設間柱8と向かい合う既存柱1及び上下一対の既存梁2,2それぞれに開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー14が新設耐力壁9内部に埋設されることにより、両者が一体的に接合される。
袖壁5が左右一対で設けられている場合には、新設耐力壁9には、上下の既存梁2,2それぞれから開口部X内方へ向かって突出させて配設されたアンカー14が埋設されて、当該新設耐力壁9が建物の架構Tに一体的に接合される。
本実施形態の既存建物の耐震補強構造にあっては、新設梁7等を組み込むことでせん断力が増強された腰壁3等と、新設耐力壁9とが開口部X内に構築されていて、当該耐震補強構造によって得られるせん断力は、腰壁3等と新設耐力壁9それぞれが負担し得るせん断力のうち、小さい方のせん断力によって決定される。
次に、本実施形態に係る既存建物の耐震補強方法について説明する。図1〜図3には、腰壁3を備える場合であって、新設梁7及び新設耐力壁9を現場打ちコンクリートで構築する場合が示されている。最初に、現場打ちコンクリートや隙間に充填するモルタルの良好な付着性を確保するために、開口部Xの下面(腰壁3の上面S1)、開口部Xの左右面(左右一対の既存柱1,1の側面L,R)、並びに開口部Xの上面(上方の既存梁2の下面D)を目荒らしする。
次いで、配筋工程を実施する。配筋工程では、アンカー13,14の設置、新設梁7の配筋17,10、新設耐力壁9の配筋11,12が行われる。
アンカー13,14は、開口部Xの上下面(腰壁3の上面S1及び上方の既存梁2の下面D)に、柱間方向に沿って適宜間隔を隔てて、また、開口部Xの左右面(既存柱1,1の側面L,R)に柱高さ方向に適宜間隔を隔てて、配設される。各アンカー13,14は、それらの先端が目荒らしした開口部Xの上下左右各面から、開口部X内方へ向けて突出するように、腰壁3や既存柱1,1、上方の既存梁2にそれらの基端が埋設される。
新設梁7の配筋は、開口部Xの下面(腰壁3の上面S1)直上に、腰壁3及び既存柱1,1下部のアンカー13と交差するように、柱間方向に沿って梁主筋17及びスターラップ筋10を配筋することでなされる。
新設耐力壁9の配筋は、腰壁3、既存柱1,1及び上方の既存梁2のアンカー13,14と交差するように壁筋11を配筋すると共に、梁主筋17の配筋位置を避けて、既存柱1,1の側面L,R及び上方の既存梁2の下面Dに沿わせて割裂防止筋12を配筋することでなされる。
以上により、開口部X内方には、アンカー13,14と錯綜するようにして、新設耐力壁9の配筋11,12及び新設梁7の配筋17,10が設けられる。垂れ壁4を備える場合の施工は、腰壁3の上面S1が垂れ壁4の下面S2とされ、上方の既存梁2の下面Dが下方の既存梁2の上面Uとされて、同様に配筋工程が実施される。
袖壁7を備える場合の施工は、腰壁3の上面S1が袖壁5の側面S3とされ、上方の既存梁2の下面Dが袖壁5に向かい合う既存柱1(,1)の側面L(,R)とされ、左右一対の既存柱1,1が上下一対の既存梁2,2とされて、同様に配筋工程が実施される。
次いで、コンクリート打設工程を実施する。最初に、新設梁7を構築するために、開口部X下面(腰壁3の上面S1)上に梁型枠を設置し、梁型枠内部に梁コンクリートを打設する。これにより、左右一対の既存柱1,1の下部間に腰壁3直上に位置させて、これら既存柱1,1及び腰壁3と一体的に新設梁7が構築される。
次いで、新設耐力壁9を構築するために、新設梁7上に、上方の既存梁2の下面Dに達しかつ左右一対の既存柱1,1間に亘る大きさの壁型枠を設置し、壁型枠内部に壁コンクリートを打設する。これにより、新設梁7直上及び上方の既存梁2直下であって、左右一対の既存柱1,1間に位置させて、これら既存柱1,1及び新設梁7と一体的に新設耐力壁9が構築される。最後に、新設耐力壁9と上方の既存梁2の下面Dとの間の隙間に、無収縮モルタル15を充填する(図2参照)。これにより、新設耐力壁9は、上方の既存梁2と一体的に接合される。
すなわち、コンクリート打設工程により、新設梁7及び新設耐力壁9を増設しつつこれら新設梁7及び新設耐力壁9をアンカー13,14を介して腰壁3及び建物の架構Tに接合すると同時に、新設梁7及び新設耐力壁9で開口部Xが封鎖される。
梁型枠の上に壁型枠を一体に設置して、梁コンクリートと壁コンクリートを一挙に打設するようにしてもよい。垂れ壁3を備える場合には、梁型枠の下に壁型枠を一体に設置して、梁コンクリートと壁コンクリートが一挙に打設される。この場合には、無収縮モルタル15は用いられない。
袖壁5を備える場合には、袖壁5の側面S3に沿って上下の既存梁2,2間に亘り、柱型枠を設置すると共に、柱型枠と袖壁5が向かい合う既存柱1との間に壁型枠が設置される。これら柱型枠と壁型枠は一体に設置してもよい。そして、柱コンクリート及び壁コンクリートを打設する。壁コンクリートを打設する範囲に対しては、上方の既存梁2の下面dと打設した壁コンクリートとの間に、無収縮モルタル15を充填する方法を採ってもよい。
腰壁3及び垂れ壁4双方を備える場合の施工では、上下一対の新設梁7の配筋17,10と、これら新設梁7の配筋17,10間への新設耐力壁9の配筋11,12からなる配筋工程が実施され、またコンクリート打設工程では、上下一対の梁型枠及び壁型枠が用いられる。
袖壁5が一対備えられる場合の施工では、左右一対の新設間柱8の配筋と、これら新設間柱の配筋間への新設耐力壁9の配筋からなる配筋工程が実施され、またコンクリート打設工程では、左右一対の柱型枠及び壁型枠が用いられる。
プレキャスト製の新設耐力壁9を用いるようにしてもよい。例えば、パネルタイプの新設耐力壁9の場合、図示しないけれども、新設梁7や新設間柱8は、現場打ちでも、プレキャスト製であっても良い。新設梁7等を現場打ちする場合には、上述した通りである。新設梁7や新設間柱8がプレキャスト製の場合も、これらは上述したアンカー13を介して、腰壁3や垂れ壁4、袖壁5、さらには、既存の柱・梁1,2に一体的に接合される。これにより、新設梁7や新設間柱8を開口部X内に増設する第1工程が完了する。
新設梁7等とプレキャスト製の新設耐力壁9とは、両者に跨がるように配設される複数のアンカーを介して一体的に接合すればよい。新設耐力壁9と建物の架構Tも、上述したアンカー14を介して一体的に接合される。これにより、新設耐力壁9を開口部X内に増設して、新設梁7等と新設耐力壁9で開口部Xを封鎖する第2工程が完了する。
図5には、ブロックタイプのプレキャスト製新設耐力壁9を用いた場合が示されている。新設耐力壁9を構成する各ブロック16同士は、互いに接着材で接合され、全体として新設耐力壁9を構成する。新設耐力壁9は、新設梁7や新設間柱8、並びに建物の架構Tに対し、アンカーを用いることなく、接着材によって一体的に接合される。
新設耐力壁9がプレキャスト製の場合には、先行して新設梁7や新設間柱8が構築される。すなわち、先ず、開口部Xに面して腰壁3等の非耐力壁及び既存の柱・梁1,2からなる建物の架構Tに接合して、開口部X内に新設梁7等を増設する第1工程が行われ、次いで、新設梁7等及び建物の架構Tに接合して、開口部X内にプレキャスト製の新設耐力壁9を増設し、これら新設耐力壁9及び新設梁7等で開口部Xを封鎖する第2工程が行われる。
以上説明した本実施形態に係る既存建物の耐震補強構造にあっては、開口部Xに面して腰壁3、垂れ壁4または袖壁5、並びに建物の架構Tを構成する左右一対の既存柱1,1または上下一対の既存梁2,2に接合されて、開口部X内に増設された新設強度部材である新設梁7または新設間柱8と、新設梁7または新設間柱8、並びに左右一対の既存柱1,1または上下一対の既存梁2,2に接合されて、開口部X内に増設された新設耐力壁9とを備え、これら新設耐力壁9と、新設梁7または新設間柱8とで開口部Xが封鎖されているので、開口部Xを封鎖するこれら新設梁7等と新設耐力壁9の増設によって、腰壁3等や袖壁5の強度を新設梁7や新設間柱8によって増強することができ、既存建物の架構Tが負担し得るせん断力を大きくすることができて、既存建物の良好な耐震性能を確保することができる。
腰壁3や垂れ壁4の場合には、新設梁7の増設によって、いわゆる連層耐震壁を構成することができ、また、袖壁5の場合には、新設間柱8の増設によって、柱間隔を狭める形態でせん断力を増強することができる。
特許文献1との比較では、スリットを設けないので、より高いせん断力を確保することができる。
また、上記既存建物の耐震補強構造を施工するための、本実施形態に係る既存建物の耐震補強方法にあっては、現場打ちで構築するときには、
(1)腰壁3及び垂れ壁4の場合、腰壁3または垂れ壁4、及び建物の架構Tを構成する左右一対の既存柱1,1や上下一対の既存梁2,2のいずれかにこれらから突出させてアンカー13,14を配設すると共に、新設梁7に埋設する配筋及び新設耐力壁9に埋設する配筋を配設する配筋工程と、新設梁7及び新設耐力壁9を増設しつつ新設梁7及び新設耐力壁9を、アンカー13,14を介して、腰壁3または垂れ壁4、及び左右一対の既存柱1,1や上下一対の既存梁2,2のいずれかに接合すると同時に、これら新設梁7及び新設耐力壁9で開口部Xを封鎖するコンクリート打設工程とを備えるようにし、
(2)袖壁5の場合、当該袖壁5及び建物の架構Tを構成する上下一対の既存梁2,2や左右一対の既存柱1,1のいずれかにこれらから突出させてアンカー13,14を配設すると共に、新設間柱8に埋設する配筋及び新設耐力壁9に埋設する配筋を配設する配筋工程と、新設間柱8及び新設耐力壁9を増設しつつ新設間柱8及び新設耐力壁9を、アンカー13,14を介して、袖壁5及び上下一対の既存梁2,2や左右一対の既存柱1,1のいずれかに接合すると同時に、これら新設間柱8及び新設耐力壁9で開口部Xを封鎖するコンクリート打設工程とを備えるようにし、
他方で、新設耐力壁9をプレキャスト製にしたときには、
(1)腰壁3及び垂れ壁4の場合、開口部Xに面して、腰壁3または垂れ壁4、及び左右一対の既存柱1,1に接合して、開口部X内に新設梁7を増設する第1工程と、新設梁7及び左右一対の既存柱1,1や上下一対の既存梁2,2のいずれかに接合して、開口部X内に新設耐力壁9を増設し、これら新設耐力壁9及び新設梁7で開口部Xを封鎖する第2工程とを備えるようにし、
(2)袖壁5の場合、開口部Xに面して、袖壁5及び上下一対の既存梁2,2に接合して、開口部X内に新設間柱8を増設する第1工程と、新設間柱8及び上下一対の既存梁2,2や左右一対の既存柱1,1のいずれかに接合して、開口部X内に新設耐力壁9を増設し、これら新設耐力壁9及び新設間柱8で開口部Xを封鎖する第2工程とを備えるようにしているので、
新設耐力壁9や新設梁7等を組み込む増設によって施工を完了することができ、既存部分の解体や撤去などの作業を伴うことがなく、従って当該既存部分にひび割れなどの損傷が生じることを回避しつつ、従来と遜色のない短工期で施工することができると共に、施工時の騒音・振動や粉塵の発生を低減することができる。
新設耐力壁9をプレキャスト製とした場合には、現場打ちに比して、アンカーの施工本数を大幅に減らすことができて、施工性を向上することができる。
特許文献1との比較では、スリットを設けない分、より簡便に施工することができる。
図1〜図3に示した例では、腰壁3に床スラブ6が接合されている。この場合、腰壁3を解体する工程を仮定すると、腰壁3の解体に伴って床スラブ6を支保工で支持したり、腰壁3周囲の床スラブ6を一部解体したり、さらには、床スラブ6の一部解体部分を再度復旧しなければならないが、本実施形態に係る耐震補強方法では、そのような手間を一切省くことができる。
アンカー13,14の設置方法については、上記実施形態に限定されない。例えば、帯状のプレートの一方の面にアンカー13,14を複数立設した部材を作成し、この部材のプレートの他方の面を、既存柱1や既存梁2の開口部Xに面する表面に接着材で接合することにより、アンカー13,14を設置するようにしても良い。
また、腰壁3を備える場合の施工では、新設耐力壁9と上方の既存梁2の下面Dとの間に隙間を設けることなく、新設耐力壁9の壁コンクリートそのもので上方の既存梁2と新設耐力壁9とを一体的に接合するようにしても良い。さらに、割裂防止筋12は、接合箇所の割裂を確実に防止できる場合には、省略しても良い。
1 既存柱
2 既存梁
3 腰壁
4 垂れ壁
5 袖壁
7 新設梁
8 新設間柱
9 新設耐力壁
10 スターラップ筋
11 壁筋
12 割裂防止筋
13,14 アンカー
17 梁主筋
T 建物の架構
X 開口部

Claims (5)

  1. 左右一対の柱と上下一対の梁が接合されて構成される建物の架構内部に、少なくともいずれかの梁に接合されて一対の柱間に設けられた、または少なくともいずれかの柱に接合されて一対の梁間に設けられた非耐力壁を有し、非耐力壁と架構とで区画して長方形状の開口部が形成された既存建物の耐震補強構造であって、
    上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合されて、該開口部内に増設された新設強度部材と、該新設強度部材及び上記架構に接合されて、上記開口部内に増設された鉄筋コンクリート製の新設耐力壁とを備え、前記非耐力壁は、前記梁に接合して設けられた腰壁及び/または垂れ壁であり、前記新設強度部材は、その両端が左右の前記柱に接合された新設梁であり、上記開口部が、上記新設梁の増設によってせん断力が増強された上記腰壁及び/または上記垂れ壁と上記新設耐力壁とで構築された連層耐震壁で封鎖されていることを特徴とする既存建物の耐震補強構造。
  2. 左右一対の柱と上下一対の梁が接合されて構成される建物の架構内部に、少なくともいずれかの梁に接合されて一対の柱間に設けられた、または少なくともいずれかの柱に接合されて一対の梁間に設けられた非耐力壁を有し、非耐力壁と架構とで区画して長方形状の開口部が形成された既存建物の耐震補強構造であって、
    上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合されて、該開口部内に増設された新設強度部材と、該新設強度部材及び上記架構に接合されて、上記開口部内に増設された鉄筋コンクリート製の新設耐力壁とを備え、前記非耐力壁は、前記柱に接合して設けられた袖壁であり、前記新設強度部材は、その両端が上下の前記梁に接合された新設間柱であり、上記開口部が、上記柱間隔を狭める形態でせん断力を増強する上記新設間柱が増設された上記袖壁と上記新設耐力壁とで封鎖されていることを特徴とする既存建物の耐震補強構造。
  3. 前記新設耐力壁は、プレキャスト製であることを特徴とする請求項1または2に記載の既存建物の耐震補強構造。
  4. 請求項1または2に記載の既存建物の耐震補強構造を構築するための既存建物の耐震補強方法であって、
    前記非耐力壁及び前記建物の架構にこれらから突出させてアンカーを配設すると共に、前記新設強度部材に埋設する配筋及び前記新設耐力壁に埋設する配筋を配設する配筋工程と、上記新設強度部材及び上記新設耐力壁を増設しつつ該新設強度部材及び該新設耐力壁を上記アンカーを介して上記非耐力壁及び上記建物の架構に接合すると同時に、該新設強度部材及び該新設耐力壁で前記開口部を封鎖するコンクリート打設工程とを備えたことを特徴とする既存建物の耐震補強方法。
  5. 請求項3に記載の既存建物の耐震補強構造を構築するための既存建物の耐震補強方法であって、
    上記開口部に面して上記非耐力壁及び上記架構に接合して、該開口部内に新設強度部材を増設する第1工程と、上記新設強度部材及び上記架構に接合して、上記開口部内に新設耐力壁を増設し、これら新設耐力壁及び新設強度部材で該開口部を封鎖する第2工程とを備えたことを特徴とする既存建物の耐震補強方法。
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