JP6489686B2 - 潤滑油添加剤及び潤滑油組成物 - Google Patents
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また、従来、内燃機関用潤滑油、特にディーゼルエンジン用潤滑油には、清浄分散剤として金属系と上述の無灰系の分散剤が併用されている。ディーゼルエンジンの場合、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)及び粒子状排出物(PM)などによる環境汚染への対策が重要な課題となっている。NOxの削減に対しては、例えば、燃料噴射時期遅延などによって燃焼ピーク温度を低下させることなどによって対応しているが、燃焼ピーク温度を低下させると黒煙やPMの増加に繋がるため、PMトラップあるいは酸化触媒などの排出ガス後処理装置の装着が必要となっている。
こはく酸イミドを用いた潤滑油添加剤として、特許文献1には、コハク酸イミド、コハク酸アミド、またはそれらの混合物を無水フタル酸、またはエチレンカーボネートで後処理したコハク酸イミドまたはコハク酸アミドがスス分散性に優れていることが記載されている。また、特許文献2には、ポリスクシンイミド組成物の製造法に関する記載があり、更にこの混合物を環状カーボネート処理したポリスクシンイミド組成物の記載がある。また、特許文献3には、コハク酸イミドと、ジカルボン酸またはその無水物との反応生成物である潤滑油添加剤が記載され、高い静摩擦係数を付与でき自動変速機や無段変速機に使用されることが記載されている。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[3]上記[1]記載の潤滑油添加剤の製造方法であって、
(1)アルケニル又はアルキルこはく酸無水物及びポリアミンを反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミドを得る工程と、(2)該アルケニル又はアルキルこはく酸イミド及びエポキシド化合物を反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を得る工程とを有する潤滑油添加剤の製造方法。
[潤滑油添加剤]
本発明の潤滑油添加剤は、下記一般式(1)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド、及び下記一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドから選ばれる1種以上と、下記一般式(3)で表されるエポキシド化合物との反応により得られるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を含有する。
上記一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R3及びR4は、各々アルケニル基またはアルキル基であり、重量平均分子量は、それぞれ、800以上5,000以下、好ましくは850以上4000以下、より好ましくは900以上3000以下である。上記したR1、R3及びR4の各々の重量平均分子量が800未満であると、基油への溶解性と高温清浄性が低下し、5,000を超えると、塩基価が低下するおそれがある。R3及びR4は同一でも異なっていてもよい。なお、R1、R3及びR4の各々の重量平均分子量は、アルケニル又はアルキルこはく酸イミドの合成に用いるアルケニル基又はアルキル基を有する化合物について、東ソー製高速GPC装置(HLC−8220型)に、東ソー製カラム(TSKgel GMH−XL 2本及びG2000H−XL 1本)を取り付け、検出器:屈折率検出器、測定温度:40℃、移動相:テトラヒドロフラン、流速:1.0ml/分、濃度0.5mg/mlの条件で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量として評価することができる。
この点から、R2、R5及びR6は、それぞれ好ましくは炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、更に好ましくはエチレン基である。また、mは好ましくは3以上8以下の整数、より好ましくは3以上6以下の整数であり、nは好ましくは2以上8以下の整数、より好ましくは2以上6以下の整数である。
H2N−(R2NH)m−H (4)
(一般式(4)において、R2は前記と同じであり、mは3以上10以下の整数を示す)
H2N−(R5NH)n−R6−NH2 (5)
(一般式(5)において、R5、R6は前記と同じであり、nは2以上10以下の整数を示す。)
上記ポリアルキレンポリアミンのうち、本実施態様においては、好ましくは炭素数2以上5以下であって、一般式(4)におけるmが好ましくは3以上8以下、より好ましくは3以上6以下の非環構造のポリアルキレンポリアミン、あるいは一般式(5)におけるnが好ましくは2以上8以下、より好ましくは2以上6以下の非環構造のポリアルキレンポリアミンが用いられる。
本発明の潤滑油添加剤は、上述の一般式(1)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド、及び下記一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドから選ばれる1種以上と、下記一般式(3)で表されるエポキシド化合物との反応により得られるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を含有する。
なお、エポキシド化合物としては、こはく酸イミドとの反応性の観点から、R7及びR8がともに水素であるもの、あるいはR9及びR10がともに水素であるものが好ましく、R7、R8及びR9がすべて水素であるものがより好ましい。
また、R7、R8、R9及びR10の各々で表される含酸素炭化水素基とは、酸素原子を含有している炭化水素基であり、上記炭化水素基の主鎖に酸素原子を有するものが好ましい。
一般式(3)で示されるエポキシド化合物の具体例としては、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシドデセン、1,2−エポキシテトラデセン、1,2−エポキシヘキサデセン、1,2−エポキシオクタデセン、および1,2−エポキシ−2−オクチルドデカン等が挙げられる。これらのうち、上記観点から、上記1,2−エポキシアルカンが好ましい。
本発明においては、一般式(3)で表されるエポキシド化合物が、前記低粘度化及び高温清浄性の観点から、エポキシ基以外に酸素原子を有する炭素数が3以上40以下の化合物であることが好ましく、グリシジルエーテル化合物であることがより好ましい。
本発明の潤滑油添加剤に含有されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体は、前記一般式(1)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド、及び前記一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドから選ばれる1種以上と、前記一般式(3)で表されるエポキシド化合物との反応により得られる。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドと一般式(3)で表されるエポキシド化合物との反応は、好ましくは反応温度50℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上200℃以下、更に好ましくは130℃以上180℃以下の温度で行う。
このことは、アルケニル又はアルキルこはく酸イミドとエポキシド化合物(E)との反応において、前述した、反応工程(1−a)及び反応工程(1−b)を経由する実施態様の場合、前記反応工程(1−b)で使用したポリアミン(D)に対するエポキシド化合物(E)の割合を、(D)成分1モルに対し(E)成分を0.05モル以上5モル以下として反応させる反応工程(2)を有することにより達成できる。
一般式(1)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド及び一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドから選ばれる1種以上と、一般式(3)で表されるエポキシド化合物との反応により得られるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体は、潤滑油に添加する潤滑油添加剤として使用できる。
上記アルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体の塩基価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上15mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお当該塩基価は、JIS K 2501に基づく塩酸法により測定されるものである。
また、本発明の潤滑油添加剤は、燃料油である炭化水素油に配合することもできる。炭化水素系の燃料油に配合したものは、内燃機関の気化器への夾雑物の付着防止及び付着物を除去する清浄剤として使用することができる。その際の好ましい含有量は、好ましくは燃料油基準で0.001質量%以上1質量%以下程度である。
本発明の潤滑油添加剤の製造方法は、(1)アルケニル又はアルキルこはく酸無水物及びポリアミンを反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミドを得る工程と、(2)該アルケニル又はアルキルこはく酸イミド及びエポキシド化合物を反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を得る工程とを有する。
本発明の潤滑油組成物は前述の本発明の潤滑油添加剤を含有する。本発明の潤滑油組成物中における本発明の潤滑油添加剤の含有量は、本発明の潤滑油添加剤の効果を有効に奏するべく、潤滑油組成物全量基準、アルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体換算で、0.01質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上30質量%以下である。
ここで、鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、ナフテン系原油、芳香族系原油などからの潤滑油留分またはガソリン、灯油、軽油などの燃料油の留分のいずれでもよく、溶剤精製、水素化精製または水素化分解などのいかなる精製方法を経たものでも使用することができる。合成油としては、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル油、グリコール系またはポリオレフィン系合成油などを使用することができる。
[評価項目・評価方法]
潤滑油組成物の各性状及び性能は以下の方法で測定した。
(1)粘度特性
動粘度は、Anton Paar社製、SVM3000/G2の比重計も兼ね備えたスタビンガー粘度計を用い、40℃、100℃における動粘度(mm2/s)を測定した。
また、粘度比は、[原料コハク酸イミドとエポキシド化合物との反応で得られるコハク酸イミド誘導体の100℃における動粘度(mm2/s)]/[原料コハク酸イミドの100℃における動粘度(mm2/s)]を示す。
500ニュートラル留分の鉱油に下記実施例及び比較例で得られたポリブテニルコハク酸イミド又はポリブテニルコハク酸イミド誘導体10質量%を配合し、潤滑油組成物を調製した。この潤滑油組成物の性能を、以下のホットチューブ試験により評価した。
230℃に保たれた内径2mmのガラス管中に潤滑油組成物を0.3ミリリットル/時、空気を10ミリリットル/分で16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として11段階の評点を付けた。評点が高いほど高性能であることを示す。本試験はJPI−5S−55−99に基づいて行なった。
前述のホットチューブ試験後の試験油を回収し、JIS K 2501に基づく塩酸法により塩基価を測定した。試験後の塩基価(残存塩基価)と試験前の塩基価(初期塩基価)を比較し、塩基価残存率(%)として示し、塩基価維持性能を評価した[塩基価残存率(%)=(残存塩基価/初期塩基価)×100]。塩基価残存率が高いほど、塩基価維持性能が高性能であることを示す。
1Lオートクレーブ中に、ポリブテン(Mw:960)(出光興産製;出光ポリブテン100R)480g、臭化セチル0.76(0.025mol)、無水マレイン酸51.5g(0.53mol)を入れ、窒素置換し、240℃で5時間反応させた。215℃に降温し、未反応の無水マレイン酸と臭化セチルを減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸無水物の収量は499gであった。1Lセパラブルフラスコ中に、得られたポリブテニルコハク酸無水物612g、トリエチレンテトラミン(TETA)45g(0.24mol)、鉱油(150ニュートラル留分の鉱油、100℃動粘度:5.3mm2/s)262gを入れ、窒素気流下150℃で2時間反応させた。200℃に昇温し未反応のTETAと生成水を減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸イミドの収量は879gであった。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブに、窒素雰囲気下、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド95gと1,2−エポキシドデカン14.8g(0.08mol)とを仕込み、160乃至170℃で8時間加熱撹拌し、ポリブテニルコハク酸イミド誘導体を得た。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブに、窒素雰囲気下、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド95gと1,2−エポキシオクタデカン21.5g(0.08mol)を仕込み、160乃至170℃で8時間加熱撹拌し、ポリブテニルコハク酸イミド誘導体を得た。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブに、窒素雰囲気下、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド95gと2−エチルヘキシルグリシジルエーテル7.7g(0.041mol)とを仕込み、160乃至170℃で8時間加熱撹拌し、ポリブテニルコハク酸イミド誘導体を得た。生成物の性状は表1に示す。
300mLのオートクレーブに、窒素雰囲気下、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド180gと2−セチルグリシジルエーテル23.9g(0.080mol)とを仕込み、160乃至170℃で8時間加熱撹拌し、ポリブテニルコハク酸イミド誘導体を得た。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブに、窒素雰囲気下、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド131gと2−デシルテトラデシルグリシジルエーテル23.8g(0.080mol)とを仕込み、160乃至170℃で8時間加熱撹拌し、ポリブテニルコハク酸イミド誘導体を得た。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブ中で、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド93gを窒素雰囲気下160℃に加熱し、次に、エチレンカーボネート7.3g(0.083mol)を添加し、混合物を160乃至170℃で4時間加熱撹拌し、エチレンカーボネート後処理ポリブテニルコハク酸イミドを得た。生成物の性状を表1に示す。
300mLのオートクレーブ中で、比較例1で製造したポリブテニルコハク酸イミド93gを窒素雰囲気下160℃に加熱し、次に、エチレンカーボネート3.6g(0.041mol)を添加し、混合物を160乃至170℃で4時間加熱撹拌し、エチレンカーボネート後処理ポリブテニルコハク酸イミドを得た。生成物の性状を表1に示す。
また、本実施例の潤滑油添加剤は、比較例で製造された化合物よりも動粘度が低く、これを潤滑油添加剤として含む潤滑油組成物の流動性を向上でき、潤滑油組成物の低粘度化を図ることができる。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド、及び下記一般式(2)で表されるアルケニル又はアルキルこはく酸イミドから選ばれる1種以上と、下記一般式(3)で表されるエポキシド化合物、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル(セチルグリシジルエーテル)、オクタデシルグリシジルエーテル、及び2−デシルテトラデシルグリシジルエーテルから選ばれる1種以上のエポキシド化合物との反応により得られるアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を含有する潤滑油添加剤。
(上記一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R3及びR4は、それぞれ独立にアルケニル基またはアルキル基であり、重量平均分子量は、それぞれ800以上5,000以下である。また、R2、R5及びR6は、それぞれ炭素数2以上5以下のアルキレン基であり、R5およびR6は同一でも異なっていてもよい。また、mは3以上10以下の整数、nは2以上10以下の整数を示す。
(上記一般式(3)において、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に水素又は炭素数2〜40の炭化水素基のいずれかである。) - 一般式(3)で表されるエポキシド化合物の炭素数が、2以上40以下である、請求項1に記載の潤滑油添加剤。
- 一般式(3)で表されるエポキシド化合物が、1,2−エポキシアルカンである、請求項1又は2に記載の潤滑油添加剤。
- 前記アルケニル又はアルキルこはく酸イミドにおける総アミン基モル数(m+n)に対する前記エポキシド化合物のモル数(p)の比(p/(m+n))が、0.05以上5以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤。
- 清浄分散剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤を含有する潤滑油組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑油添加剤の製造方法であって、
(1)アルケニル又はアルキルこはく酸無水物及びポリアミンを反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミドを得る工程と、(2)該アルケニル又はアルキルこはく酸イミド及びエポキシド化合物を反応させてアルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を得る工程とを有する潤滑油添加剤の製造方法。 - 前記アルケニル又はアルキルこはく酸イミド誘導体を得る工程(2)において、前記エポキシド化合物を、工程(1)における前記ポリアミンの配合モル数1モル当たりのエポキシド化合物の配合モル数が0.05モル以上5モル以下となるように配合する、請求項7に記載の潤滑油添加剤の製造方法。
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