JP6380826B2 - 光源装置 - Google Patents
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Description
また、単純にRaやRiを使用して高演色な状態を評価しようとしても、色がより鮮やかに好ましく効果演色された場合も、色がくすんで見えていた場合と同じくRaの数値が低下する事態が生じる。現在のRaによる演色性評価手法自体が現実の演色性の主観評価との差異を生じさせることや、RaやRiの数値が高いことが、すなわち演色性が高いことに必ずしも結びつかないこと、RaやRiが同じでも実際の見えが異なることなどがCIE(国際照明委員会: Commission internationale de l'eclairage)などで国際的に課題とされ議論されている。このような中、演色性を改善すると言っても具体的に演色性の何を改善するのかという基本的観点が、RaやRiの数値の大小関係に基づいて演色性を改善するという先行技術の議論の中で欠落しているという課題がある。
また、前記第1の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が、前記第2の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長よりも短いこととしてもよい。さらに、前記第1および第2の緑発光蛍光体の内、前記第1の緑発光蛍光体が無い場合に同一の色度点で混光された分光分布に比べ、U*V*平面上にプロットされたR1からR8の特殊演色評価数の試験色の色度座標で構成された色域が、U*軸方向に拡大していることとしてもよい。
また、基準の光が完全放射体の光となる相関色温度以下、かつ、相関色温度2700K以上において平均演色評価数Raが90以上、特殊演色評価数R9が90以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が80以上、特殊演色評価数R13とR15が90以上、色域面積比Gaが100以上であることとしてもよい。相関色温度2700K未満で2200K以上において平均演色評価数Raが90以上、特殊演色評価数R9が80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が75以上、特殊演色評価数R13とR15が90以上、色域面積比Gaが95以上であることとしてもよい。相関色温度2200K未満において平均演色評価数Raが80以上であることとしてもよい。
また、前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間に存在する分光パワーの最低値は、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間に存在する分光パワーの最低値より低いこととしてもよい。さらに、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間に存在する分光パワーの最低値は、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの90%以下であることとしてもよい。
また、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布において、前記緑発光の分光分布のピークよりも短波長側の分光パワーの総量が、前記緑発光の分光分布のピークよりも長波長側の分光パワーの総量よりも小さいこととしてもよい。
これにより、主観的な明るさに対する発光効率を確保しながら、忠実演色および赤−緑の反対色系に色鮮やかさを増す効果演色の傾向を有する好ましい色再現を実現することができる。
以上より、上記構成の光源装置によれば、目的の色度で忠実演色および効果演色の傾向を有する好ましい色再現を、各種主観的明るさ感を確保しながら実現することができる。
また、相関色温度が変化した場合も、赤−緑の色再現の色域の調整が可能な、統一的な好ましい演色傾向を内包した高演色光源を実現することができる。
一般に、演色性の評価には平均演色評価数Raが利用されている。また、先行技術などでは単純にRaやRiの数字上の高低をもって高演色とされることが多い。しかしながら、Raは、単に、中彩度色の演色評価用色票群の色再現の忠実性を、対応する相関色温度の基準光源を基準と置き、その色差の程度を平均的に評価する指標するに過ぎない。また、RaやRiと主観的な演色性の印象の高低の評価とに差異があることなどの事情は経験上知られているものの、実際に如何なる色再現が好ましい高演色と感じられるのか、また、如何なる指標を用いれば好ましい色再現を評価できるのか充分な検討がなされていない。
発明者は、まず、このような根本的な問題から検討を開始した。具体的には、最も一般的に使用され、平均演色評価数Raが高いという意味で忠実演色性が高く、色を鮮やか演色するという好ましい効果演色傾向を内包する既存のランプ、特に三波長域発光型の分光特性に近いランプを中心に分析することで、既存評価指標を拡張した如何なる指標が如何なる数値であれば、既存光源技術との演色傾向の互換性が高く、好ましい傾向を有す高演色な色再現と認識されるのかを検討した。
一つ目は、可視発光帯域の分光分布の山谷を埋める方向性であり、演色性の評価基準となる基準の光(完全放射体やCIE昼光)の分光分布を模擬して広帯域な分光分布を作り出し、平均演色評価数Raを高める忠実演色の方向性である。
二つ目は、可視発光帯域の分光分布の山谷を積極的に構成する方向性であり、青色波長域、緑色波長域および赤色波長域の各波長域に分光パワーを集中させ、高彩度傾向の鮮やかな色再現の効果演色を確保する方向性、また、これと同時に平均演色評価数Raを高める忠実演色を勘案する方向性である。
三波長域発光形蛍光ランプは、平均演色評価数Raを80以上で被照明物を鮮やかに演色するものとして知られている(例えば、JIS Z9112:蛍光ランプの光源色及び演色性による区分:Classification of fluorescent lamps and light emitting diodes by chromaticity and colour rendeRing property)。
LED分野に限らず既存光源分野との複合的検討により、忠実演色の傾向を有しながら高彩度型の効果演色の傾向を併せ持つ好ましい色再現を評価するための各指標とその推奨値を得ることができた。また、全く新たな演色評価の計算手法ではなく、広く普及し既存の評価に用いられる演色評価数の計算手法と互換性を持った補助指標を構築した。 それを組み合わせることで、色再現の色域やそのひずみ、などのより複合的で詳細な検証を既存数値指標の互換性をもって可能とし、発明の演色性を実現する要件を求めた。
三波長域発光形蛍光ランプにおいては青波長域(445nm〜475nm)と緑波長域(525nm〜555nm)と赤波長域(595nm〜625nm)の各波長域がJISにより定義され前記波長範囲に分光パワーを集中させた分光分布を有している。 いわゆる、赤緑青(RGB)の三波長帯域に分光パワーを集中することで、鮮やかな色再現を実現するランプとして知られている。また、被照明物が鮮やかに演色されることなどにより、標準比視感度Vλに基づく照度や光束が同じでも実際の照明環境においては明るく感じられることなども知られている。
そのため、LED光源の分光分布がどのように変化すれば各評価指標がどのように変化するのかに関して体系的な分析と、どのような内容の高演色特性を指向するのかの理論的バックボーンが無ければ、所望の色再現性を実現することについて技術的な解決とはならない。また、青発光LEDと2種類の蛍光体の組み合わせのように、3色を混色する場合は目的の色度が決まれば、各色の混合比が一義的に決定する。しかしながら、青発光LEDと3種類以上の蛍光体の組み合わせの場合、目的の色度が決まっても、それを実現する混色比は無限に存在する。そのため、単一の色度条件においても体系的な解が無ければ、好ましい混色比を求めるには、つど試行錯誤を重ねる必要がある。例えば、ある色度で偶発的に高いRaが求められたとしても、多様な演色状態を含み、さらに、これが別の色度でも安定的な傾向を生じるものかも判らず、つど別途の試行錯誤が必要となる。
まとめると、従来、Raや特定のRiの高低のみの議論で、高演色が得られたなどとされることが多いが、青発光LEDと3種類の蛍光体を組み合わせる場合などの複合的な条件下において、例えRaの値が同一でも多様に存在する演色特性と分光分布の有り様の下、Raの値が高くとも実際の色再現の評価が低い状態も含まれる。つまり、そもそもの高演色特性の質とそれを実現する分光分布の具体的な傾向については未分離であり、論じられてはいなかった。
<評価指標>
以下、本明細書で使用される評価指標を説明する。
R1〜R15、Raの算出方法は、JIS Z 8726 -1990(光源の演色性評価方法:Method of Specifying Colour RendeRing Properties of Light Source)やCIE 13.3-1995(Method of Measuring and Specifying Colour Rendering Properties of Light Sources)に示されている。R1〜R8は、色相が異なる8つの中彩度色の色再現の忠実性を指標する。R9〜R12は、それぞれ赤色、黄色、緑色および青色の高彩度色の色再現の忠実性を指標する。R13は、典型的な西洋人の肌の色の色再現の忠実性を指標する。R14は、木の葉の色の色再現性の忠実性を指標する。R15は、典型的な日本人の肌の色の色再現の忠実性を指標する。Raは、R1〜R8の平均値である。
また、R14の木の葉も実際の木の葉の分光反射特性との乖離が指摘されていることから、これも実際の木の葉の分光反射率や、種々の植物の色票に即しての特殊演色評価数Riの検証を行ない、本発明が同様のRiの傾向を得ることを確認した。(例えば、各種の木の葉の反射率として、各種実測値以外にも、次の様な事例を参酌できる、ISO/TR 16066 Graphic technology SOCS 、色彩科学講座2 Color in Life 日本色彩学会 編、Macbeth Color Checker:新編 色彩科学ハンドブック 日本色彩学会 編 付属 )
前記事例のごとく自然対象物のRiに対する各種分光反射率の追加的検証により、既存指標のR13からR15を高めながら現実の各種肌の色を有する実際の人間や、実際の植物の見えをより考慮した。
Gaの算出方法は、JIS Z 8726-1990の参考欄に示されている。Gaは多くの場合100より小さいが、この値が小さいほど試験色1〜8の色ずれが平均的にみて彩度を減じる方向にあり、色がくすんで見えると推定できる。逆に、Gaが100より大きい場合は、平均的に彩度が増加する方向にあり、色がより鮮やかに見えることが期待される。一般の物体色は、概して彩度が増して見えるほど好ましく感じられる傾向があるので、この評価値が通常は色の鮮やかさの参考となる。
Ra4は、特殊演色評価数R9〜R12の平均値である。特殊演色評価数R9は高彩度な赤色、特殊演色評価数R10は高彩度な黄色、特殊演色評価数R11は高彩度な緑色、特殊演色評価数R12は高彩度な青色の色再現性をそれぞれ指標する。これらの平均値である指標Ra4は、中彩度色の指標Raとの対比指標であり高彩度色の色再現の忠実性を平均的に指標する。
Ga4は、試験色R9〜R12を用いて、色域面積比Gaと同じ計算方法で算出される。Gaと同様に、Ga4が100より大きいほど彩度が増加することを示す。これにより、意図的に目立たせたい物体に多い高彩度色の鮮やかさを色域面積比の考えで評価することができる。また、特殊演色評価数R9〜R12は、基準の光(完全放射体またはCIE昼光)と同じ再現性の場合に最大の100となり、それから彩度が低下する演色結果でも高まる演色結果でも100未満に低下する。そのため、特殊演色評価数R9〜R12の数値だけでは、彩度が低くて100未満になっているのか、彩度が高くて100未満になっているのかの傾向を判断することができない。この場合、Ga4と照らし合わせることで、この傾向を知るることができる。即ち、特殊演色評価数R9〜R12が100未満の場合に、Ga4が100より大きければ、高彩度の演色傾向の発現により評価数が100未満に低下する事象と相関していると判断することができる。また、Ga4は、中彩度色に対しての色域の大きさGaに対し、高彩度色に対しての色域の大きさの対比指標となる。
R1−R15レンジは、特殊演色評価数R1からR15の最大値と最小値との差分である。平均演色評価数Raは、特殊演色評価数R1〜R8の平均値である。そのため、ある特定の特殊演色評価数だけが際立てて低い場合と、全ての特殊演色評価数が平均的に低い場合とでは、両者の間で色再現性は大きく異なるのにもかかわらず、同じ数値となることがある。Ra4についても同様である。R1−R15レンジは、各指標(例えばRa)が同じ数値の場合でも、ある特定の特殊演色評価数が際立てて低いのか、全ての特殊演色評価数が平均的に低いのかを知る指標として有用である。即ち、R1−R15レンジを用いて、特定の色再現に局所的な弱点が生じているか、任意のRi群の色再現バランスが崩れているかを知ることができる。本発明においてはR1−R8レンジ、R9−R12レンジ、R13−R14レンジなどの追加Riレンジの検証なども同時に行なわれた。前述の追加検討された肌色票のレンジ、植物の色票のレンジなども既存の肌色票のレンジ、植物の色票のレンジに照らし十分小さいことも確認した。
(6)複合分析
前記のRa4、R1−R15レンジやその複合は評価法自体が新規なものである。前記評価法は、一般的に普及している評価指標との互換性を確保しつつ、Ra、Ri(i=1〜15)、Gaで評価しきれなかった、より詳細な演色指標を複合的に構築するものである。
また、本発明では各種演色評価数の計算過程で用いられるU*V*色度座標での各色票の色域の分布も直接的に検討する手法も用い、各RiまたGaやGa4の分布や色域の様相が基準の光に対しどの様な関係にあるため各Riの値などが変化しているのかを検討した。GaやGa4の数値向上の中でもU*V*平面上にプロットされたR1からR8や、R9からR12の特殊演色評価数の試験色の色度座標で構成された色域がU*軸方向に拡大する傾向を内包することが、色域の傾向としてより好ましいというさらなる詳細検討も、各Riの値の傾向との互換性を保ちながら検証することが可能となる。例えば赤や緑に対応するRiの値が低下する場合でもGaやGa4の値が高く色域の様相がU*軸方向に拡大する傾向を有した上での結果であれば、好ましい方向であることがさらに詳細に分かる。
<三波長域発光形蛍光ランプと既存のLED光源との対比>
まず、3つの波長帯域に分光パワーを集中し高演色で色を鮮やかなに演色する傾向を有する三波長域発光形蛍光ランプを従来のLED光源との比較ととも述べる。従来のLED光源は、青発光LEDと黄発光蛍光体(Y3Al5O12:Ce)と赤発光蛍光体((Sr, Ca)AlSiN3:Eu)を含む。
図2は、三波長域発光形蛍光ランプの特性を示す図である。同図上欄は、各相関色温度での分光分布である。同図中央欄は、演色評価用の色票のR1〜R8の色度がプロットされた、各種演色評価数の計算過程で用いられるU*V*色度座標のU*V*平面である。同図下欄は、演色評価用の色票のR9〜R12の色度がプロットされたU*V*平面である。なお、同図左欄は、相関色温度が6700Kでの結果を示し、同図中央欄は、相関色温度が5000Kでの結果を示し、同図右欄は、相関色温度が2700Kでの結果を示す。
図3は、従来のLED光源の各指標の評価値を示す図である。
三波長域発光形蛍光ランプの場合、一般的な蛍光体を使用し、その混合比を変化させながら相関色温度を変化させると、各指標の評価値は各相関色温度で同様の演色傾向を持ちながら比較的フラットな変化で推移する。 相関色温度に対する各種評価指標のフラットな推移が従来のLEDとは異なる点であり、相関色温度の異なる同一商品で演色特性が広く類似の傾向を保持している。
また、基準の光D50での色彩評価に対してはISO 3664: Viewing conditions ? Graphic technology and photographyでRaが90以上、R1からR8が個々値で80以上とされておりRi個々値の観点からは色彩評価に用いる高いレベルの基準の光に対する忠実演色の観点から考慮する場合の参考になる。上記、正確な色比較用の観点からRiの個々値を勘案するとR1からR8は80以上、R9からR15で85以上が妥当なレベルと考えられる。また、色比較用の厳密レベルまで求めないとし、RiからR15全体を80以上と拡張して捉えることも可能と考えられ、R9を80以上をとする目標への妥当性も考えうる。これら値は既存指標と互換性を保ちつつ検討された本発明で、既存光源に照らし総合的に判断し目標値を調整可能である。
また、図1より、三波長域発光形蛍光ランプでは、Gaは95〜105程度である。これは、図2に示すように、U*V*平面上で色域のV*軸方向への拡大とU*軸方向の縮小とが相殺しているからである。同様に、図1より、三波長域発光形蛍光ランプでは、Ga4は基準の光がCIE昼光の場合は90程度であるが、基準の光が完全放射体の光の場合は75〜90程度である。以上より、LED光源においても、GaおよびGa4は、90以上であることが望ましい。また、さらには、GaおよびGa4は、95以上、100以上であることがより望ましい。
他の評価数の傾向としては、自然対象物R13−R15レンジは約25、高彩度色R9−R12レンジは相関色温度が高い場合(CIE昼光が基準の光の場合)は約20から約50、相関色温度が低い場合(基準の光が完全放射体の光の場合)は約40から約100である。
<既存の高彩度型の演色傾向を有する高演色性ランプの検討>
既存の高彩度型の傾向を有する高演色性ランプの特性について検討する。これにより、LED光源を既存の高彩度型の傾向を有する高演色性ランプに代替する場合の要件と傾向が明らかとなる。Raの値が80台で三波長帯域に分光パワーを集中した既存光源や分光分布の山谷を積極的に作り出し、RaやRiを高めた忠実演色特性を指向したものや、照明対象物を高彩度に演色する効果演色特性を指向した、高演色・高彩度形の好ましい色再現を示す既存光源の特性の例を示す。
(1)ネオジウム電球
図5は、ネオジウム電球の特性を示す図である。ネオジウム電球の分光分布は、黄色波長域580nm近傍に谷を有し、その結果、緑色波長域560nm近傍にピークが生じている。ネオジウム電球の色域は、基準光源の色域に比べて、U*軸方向の正負両方に拡大している。通常の電球は、基準光源と略一致する。そのため、通常の電球の各指標の数値は、何れも略100である。これに対し、ネオジウム電球では、Raが80、Ra4が65、R9が24、Gaが112、Ga4が110である。このRa、Ra4、R9の低下は、色域がU*軸方向に拡大したことによるものと分かる。従来からこのような傾向を有する演色特性は一般に好ましいとされ広く使用されてきた。例えば、食物の野菜類などの緑や、肉類・血などの赤みなど生物として生存に重要な視対象物の色が赤−緑の反対色系に分布していることなどから、これらをより鮮やかに見せることができる傾向での高彩度形の効果演色傾向が受け入れられてきたと言える。
(2)高圧ナトリウムランプ
高圧ナトリウムランプは、580nm近傍にナトリウムの自己吸収による分光分布の谷を有することが知られている。
(3)メタルハライドランプ
図8は、三成分型メタルハライドランプの特性を示す図である。メタルハライドランプ類においてRaが80台の、In―Ta―Naのプラズマの輝線を活用した三成分型とも呼ばれるランプが存在する。三成分型メタルハライドランプは、In―Ta―Naのプラズマの輝線を活用したランプであり、Raが88、Ra4が66、R9が12、Gaが103、Ga4が89である。図9は、高彩度型メタルハライドランプの特性を示す図である。高彩度型メタルハライドランプは、三成分型メタルハライドランプに対して赤の発光物質をさらに封入して高彩度形としたものであり、店舗照明など鮮やかな色の見えを求められる場合、赤の発光物質をさらに封入し高いRaとR9の数値を有する高彩度型を形成することもある事例である。ここでは、Raが93、Ra4が93、R9が91、Gaが108、Ga4が101である。ここでも、U*V*平面上にプロットされた色域のU*軸方向の正負両側への拡大、特に正側への拡大が指向されている。
また別の観点から、三波長域発光形蛍光ランプが普及する以前に広く使用されていた、ハロリン酸塩蛍光体を使用した白色蛍光ランプの特性を示す。図10は、ハロリン酸塩蛍光体蛍光ランプの特性を示す図である。広帯域発光形のハロリン酸塩蛍光ランプでは、RaやRiは低く、また、U*V*平面上にプロットされた色域のU*軸方向の正負両側への広がりが少ない。広帯域発光形のハロリン酸塩蛍光体蛍光ランプから三波長域発光形蛍光ランプへ開発と普及が歴史的に進んだ方向性も、色域の観点から見るとU*V*平面上にプロットされた色域のU*軸方向の正負両側への拡大にあることが分かる。
(5)既存の照明光源の総合的な傾向分析
以上の既存の照明光源の総合的な傾向分析によると、三波長発光形の既存光源や分光分布の谷を強調して高演色・高彩度を指向する既存光源では、好ましい色域の拡大の方向性として、U*V*平面上にプロットされた色域のU*軸方向の正負両側を拡大する鮮やかさの強調が好ましいとされ指向されてきたことが分かる。 多くの事例は、前記の方向性を強化し内包させる傾向が、期待される演色性の改善の方向性、好ましい方向性として市場に受け入れられてきたことを示している。
<色度範囲>
次に、相関色温度およびDuvで規定される色度範囲について説明する。
いずれも、相関色温度5000Kで演色評価の基準の光が切り替わり、特別の目的がある場合を除き5000K以上でCIE昼光(合成昼光)、5000K未満で完全放射体の光(黒体放射)が用いられる。
なお、既存のランプの光色とその区分としては特殊な例も幾つか存在する。既出のJIS Z8716(表面色の比較に用いる常用光源蛍光ランプD65−形式及び性能:Fluorescent lamp as a simulator of CIE standard illuminant D65 foRa visual compaRison of surface colours − Type and chaRacteRistics)ではランプの区分は、約6000K〜7000Kであり、計算上はDuvの上限が0.01である。JIS C7623(メタルハライドランプ−性能仕様: Metal halide lamps − Performance specification)では、相関色温度のみ、LW:2400K〜3200K、WW:3200K〜3900K、W:3900K〜4600K、N:4600K〜5400K、D:5400K〜6500Kという区分も存在する。
また、上記の既存のランプの色度範囲の検討から、実際のランプのDuvは、狭く捉えるとDuvが0近傍、あるいは、Duv±0.005近傍の範囲、広く捉えるとDuv±0.01近傍の範囲が実用的に多く使用されている範囲であることが見出された。なお、高彩度型のランプは、高彩度の特性が得られやすいDuvがマイナス側、−0.005近傍までに分布することも多く、より特殊光色として−0.01程度、さらにはそれを下回るものも存在し、照明用途に利用することや本発明を適用することも可能である。ただし、Duvが−0.005近傍を下回ると、特に相関色温度が高い場合はDuvが0近傍の一般照明用のランプと共用した場合や、屋外光と共用した場合に、共用される比較対象に対し色づいた光色の印象を与えることもある。
<視覚特性>
本発明において視覚特性から生じる要件について述べる。
人間の視覚系において、この標準比視感度Vλの元となる赤と緑と青に視感ピークを持つ網膜視細胞の基礎刺激(LMS fundamentals:LMSファンダメンタル)は、短波長(B:青)に最大感度を持つS錐体の反応と、中波長(G:緑)に最大感度を持つM錐体の反応と、長波長(R:赤)に最大感度を持つL錐体の反応からなる。 基本的には人間の目の各種錐体細胞への光刺激によって明るさ知覚と色知覚が生じている。
S錐体では、ピーク波長は440nm〜445nm近傍にあり、ピーク半減波長(ピーク感度の50%の感度を示す波長)は短波長側で415nm〜425nm近傍かつ長波長側で470nm〜480nm近傍にある。
M錐体では、ピーク波長は540nm〜545nm近傍にあり、ピーク半減波長は短波長側で495nm〜505nm近傍かつ長波長側で585nm〜590nm近傍にある。
この反応が神経細胞で高次処理され、ピーク波長が555nmである標準比視感度Vλのごときの明るさの視感度が形成される。
これら、LMSの各錐体の応答特性に対し基本的な明るさの視感度を維持しながら、青と緑と赤に対応する3刺激の刺激純度を高めることで、カラーセパレーションを明瞭にする高彩度型の演色特性の傾向を生じるLED光源の分光分布の基礎的な要件が設定できる。
人間の視覚特性まで立ち返り分光分布を再構築するのは、高彩度型の演色特性を有する高演色ランプである三波長域発光形蛍光ランプに利用される蛍光体とLED光源に利用される蛍光体の分光分布の相違に基づく。即ち、三波長域発光形蛍光ランプのように、半値幅が中程度から比較的広い分光分布を有する青発光蛍光体と半値幅が狭くスパイク状の分光分布を有する緑発光蛍光体および赤発光蛍光体の組み合わせに対し、半値幅が比較的狭い分光分布を有する青発光LEDと、半値幅が中程度から比較的広い分光分布を有する複数の蛍光体を組み合わせた場合の差異である。
可視スペクトルの短波長側(青領域)においてはS錐体のピーク感度近傍で、かつ、明るさの視感度が高い比較的長波長側に光源のスペクトルエネルギーを集中することが好ましく、S錐体とM錐体の感度が交錯する480nm〜490nm近傍や、S錐体とL錐体の感度が最大交錯する490nm〜495nm近傍のスペクトルを抑制することが、基礎刺激の純度を効率よく高める観点からは望ましく、最大交差波長の480nmから短波長側に交差感度が半減する460nm近傍から490nm近傍のスペクトル抑制が望ましい。
M錐体とL錐体の刺激純度を確保しようとすると、この重なりが大きい範囲を回避して光源の分光分布のエネルギーを、スペクトル帯域制限された形で配することが望ましい。
先の、SML錐体の分光感度と合わせて考察すると、狭帯域な青発光LEDによるS錐体の刺激の観点では、S錐体の刺激効率が高く標準比視感度Vλの効率が高い、発光ピークが440nm〜460nm近傍の青発光LEDを選定するのが望ましい。S錐体とM L錐体の重なりの少ない比較的狭い帯域である480nm〜490nmないしは495nmの分光パワーを抑制することが望ましい。緑発光蛍光体によるM錐体刺激の観点からは、M錐体の刺激純度を高めつつM錐体の刺激とL錐体の刺激のセパレーションを保つため、これらの重なりが大きい555nm近傍より長波長側の分光パワーを抑制しつつ、M錐体の感度ピーク540nm〜545nmから短波長側の495nm〜505nm近傍までの分光パワーを強調するのが望ましい。赤発光蛍光体によるL錐体の刺激の観点からは、L錐体の刺激純度を高めつつM錐体の刺激とL錐体の刺激のセパレーションの確保を行なうため、これらの重なりが大きい555nm近傍より短波長側の分光パワーを抑制しつつ、L錐体の感度ピーク570nm〜625nmから長波長側の620nm〜625nm近傍までの分光パワーを強調するのが望ましい。ただし、交差帯域の大きいM錐体との関連において、M錐体の長波長側のピーク半減波長585nm〜590nm近傍までは抑制し、620nm〜625nm以上はL錐体の刺激純度の向上に有効なため視感効率の確保できる範囲において、より長波長側への延長が考えられる。
図12は、反対色応答モデルにおける輝度チャンネルL、r−g反対色応答、y−b反対色応答を示す図である。
反対色応答モデルの導出手法の差によりばらつきはあるが、例えばさらに、Boyntonの色覚モデル(R.M.Boynton,Human Color Vision, New York, Holt, Rinehart and Winston(1979) 、内川 恵二, 色覚のメカニズム, 朝倉書店,69-72)なども勘案すると、反対色応答が反転する領域の交差点(Null point: ゼロ点)は該して、r−g反対色応答系で約575nm(570nm〜575nm近傍)、y−b反対色応答系で約500nm(500nm〜505nm近傍)に有る。
相関色温度が低い場合に比較的増加する580nm近傍の黄色波長域の分光パワーの広い範囲での抑制と、相関色温度が高い場合に比較的増加する青緑波長域の分光パワーの狭い範囲での抑制の両方をバランスさせれば、相関色温度が高い場合から低い場合まで、視覚系に対し刺激純度の高いLED光源の分光分布が与えられる。
図13は各種視感度を示す図である。
一般に標準比視感度Vλ以外に提唱されている各種明るさ感度の傾向を勘案し、明所視において、同照度でも実際に感じる明るさ感を高めるという観点に立つと、600nm〜650nm近傍(555nmで正規化した場合より差が大きいのは610nm〜630nm)や、455nm〜550nm近傍の分光パワーを高めるほうが好ましい。
10°視野の視感度V10λ:(JIS Z8701、Publication CIE No.41(1978)参照)では短波長側が500nm〜505nmで長波長側が610nm〜615nmである。
2°視野の直接比較法による視感度Vb2λ:(CIE Publication No.75(1988)参照)では短波長側が505〜510nmで長波長側が615から620nmである。
10°視野の直接比較法による視感度Vb10λ:(CIE Publication No.75(1988)参照)では短波長側が480nm〜485nmで長波長側が620nmである。
また、別の観点からは、年代別分光視感効率Vλ(10)、Vλ(20)、Vλ(30)、Vλ(40)、Vλ(50)、Vλ(60)、Vλ(70):(JIS S 0031:参照)などの観点も存在し、標準比視感度Vλとの差が参考となる。
Vλ(10)〜(70)のカッコ内は年代であり、10歳代から70歳代までの年代別の相対等価輝度の求め方および光の評価に使用される。視覚の眼光学系の加齢黄変が少ない10歳代はピーク波長が535nmであり加齢に伴い555nmに接近するが、視作業が重要な就学・就業年代では555nmより短波長側に分光視感効率のピークが生じる傾向にある。さらに、視感効率のピーク半減波長を考察すると、標準比視感度Vλでは、短波長側が510nmで長波長側が610nmであるのに対し、10歳代Vλ(10)では短波長側が500nm〜505nmで長波長側が630nm〜635nmと広い。加齢に伴いこの範囲が狭くなり、70歳代Vλ(70)では短波長側が510nmで長波長側が610nmとなる。加齢影響の少なく、一般に健常な被験者とされることが多い10歳代から30歳代の視感効率には570nm〜580nmに感度低下がみられること、600nmを超えるあたりの視感効率が高いことも、標準比視感度Vλと異なる、実際の明るさの視感度の特徴に類する。
この点に関しても従来は標準比視感度Vλに対し効率が高かったか否かの検討しかなされていないことが殆どである。さらに、実際の明るさ感を高めながら単純なRaにお評価を超えて演色性を確保するという様な複合検討はなされてはいない。
また、各種明るさの視感度のピーク半減波長の短波長側は500nm近傍にあることが多く、暗所視感度ピークも505nmに存在することから、明るさ感確保に対する分光パワーの短波長側の振り分けは500nm近傍まで許容することが、標準比視感度Vλを維持しながら各種明るさ感を確保する上での要件となる。
明るさ感を確保するため500nm近傍以上の分光パワーを維持し、色覚系の基礎刺激を形成するS錐体とML錐体の交差波長域を抑制する500nm近傍以下の分光パワーを抑制することにより、青発光LEDと緑発光蛍光体の間の分光分布の谷を形成する傾向を生じさせる。そして、分光分布の谷が、S錐体とML錐体の重なりの大きい480nm〜495nm(青緑のパワー抑制帯域)近傍を含むごとく設定する。
ここにおいて、r−g反対色応答の反転する交差点(Null point: ゼロ点)の575nm近傍、r−g反対色応答のyのピーク565nm近傍を勘案し、標準比視感度Vλのピーク555nm より各種視感効率の影響の少ない長波長側の555nm〜600nmの黄色波長域のパワーを広い範囲で抑制することで分光分布の谷を形成する傾向を生じさせる。
<視覚特性から生じる要件とLEDや蛍光体の分光分布の関係>
先ず、青発光LEDのピーク位置に関し、最も短い波長帯域にb−y反対色応答のbのピーク445nm近傍と明るさ感視感度の高い長波長側への感度ピークの半減波長475nm近傍、および、S錐体のピーク波長440nm〜445nm近傍と明るさ感視感度の高い長波長側への感度ピークの半減波長470nm〜480nm近傍を勘案し半値幅が比較的狭い35nm以下で発光する青発光LEDを配する。また、大視野の明るさ感度の短波長側ピーク半減値の観点からは、極端には455nm〜460nm近傍の青発光LEDのピーク波長にかかる範囲まで各種明るさ感を高める効果に寄与する場合も存在する。
次に、緑発光蛍光体による青緑波長域から緑色波長域に関し、色刺激純度の観点からはr−g反対色応答の短波長の色刺激純度を高めるピーク、例えばgのピーク530nm近傍以下(ピークからの半減範囲は495〜560nm近傍)と、長波長の視感効率を高めるピーク例えばM錐体のピーク波長540nm〜545nm近傍以下(ピーク半減波長は短波長側で495nm〜505nm近傍)を勘案する。また、緑発光蛍光体の長波長側のピークや分光パワーの情況に大きく関連する、各種視感効率の観点からは、標準比視感度Vλのピーク波長555nm以下の短波長側にピークを形成するに当り、各種明るさの視感効率のピークは535nm〜550nm近傍に分布していることを勘案し選定する。このとき、各種視感効率の視感効率ピークが半減する波長の短波長側の波長は500nm〜510nm近傍に分布している。さらには、暗所視標準比視感度V 'λのピーク505nm近傍と、それより長波長側の明所視標準比視感度のV λの感度に重なりが多い範囲の分光パワーを維持することを勘案する。ここで、標準比視感度Vλを維持しながら各種明るさ感度を確保する要件として、500nm〜555nmに広く分光パワーを確保することが導出される。また、同時に、y反対色応答やL錐体の基礎刺激を抑制し、緑の色刺激純度を確保するg反対色応答やM錐体の基礎刺激の要件として、530nm〜545nm近傍以下から495nm近傍以上の短波長側に狭帯域に分光パワーを確保することも導出される。これらの2つの要件を充足させるべく、本発明において緑発光蛍光体を2種類用いる。
本発明において、視覚の明るさ(輝度)チャンネルと色覚チャンネルの役割を2種の緑発光蛍光体に機能分解したことにより、両者をバランスさせる新たな効果が発揮される。第1と第2緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布(以下、単に「緑発光の分光分布」と言う)のピーク波長は、555nm〜600nmの黄色波長域の分光パワーを抑制し、効率よく緑の刺激純度を高めるため、500nm近傍から555nm近傍の緑色波長域の中でも短波長側にあることが望ましい。
また、標準比視感度Vλの感度ピーク555nm〜600nmの長波長側の分光パワーを制限し、ここにピークを有する蛍光体を用いないことで、分光分布の谷の形成を形成する傾向を助長できる。
青発光LEDのピーク波長は、440nm〜465nmの範囲内で一般的に量産されることが多い445nm以上で選択してもよく、また、460nm以下で選択してもよい。また、実用のLEDの製造ばらつきも考慮すると、複数のLEDを利用して本発明を実施する場合、取りうる範囲の中で複数の位置に発光ピークを持つ青発光LEDが複数混ぜ合わされ使用される場合もある。
また、青発光LEDと第1および第2の緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布(以下、「全体の分光分布」と称する。)における青発光LEDの発光ピークと緑発光の分光分布のピークとの間に分光パワーの最低値(以下、「青緑間の分光パワーの最低値)という)を有することが望ましい。この青緑間の分光パワーの最低値は、470nm〜500nmの範囲(第1のスペクトル抑制帯域)にあることが望ましい。さらに、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークと赤発光蛍光体の発光ピークとの間に分光パワーの最低値(以下、「緑赤間の分光パワーの最低値」という)を有することが望ましい。この緑赤間の分光パワーの最低値は、555nm〜600nmの範囲(第2のスペクトル抑制帯域)にあることが望ましい。
また、赤発光蛍光体のピーク波長は、600nm以上、605nm以上、610nm以上、615nm以上、620nm以上などとしてもよい。さらに、赤発光蛍光体のピーク波長は、630nm以下、635nm以下、640nm以下または645nm以下などとしてもよい。
また、第1緑発光蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、15nm〜80nmとすることが望ましい。第2緑発光蛍光体の発光スペクトルの半値幅は、45nm〜125nmとすることが望ましい。これらにより、現在の技術で実用的な蛍光体や将来的に改良の可能性の有る蛍光体を利用することができる。例えば、第1緑発光蛍光体として、EuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む、窒化物系、シリケート系、アルミネート系または酸化物系の蛍光体を利用することができる。第2緑発光蛍光体として、CeとEuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、ガーネット系または酸化物系の蛍光体を利用することができる。
さらに第2緑発光蛍光体として、演色効果の変化の範囲を大きくするため比較的狭い半値幅を有する蛍光体の発光スペクトルの半値幅は取りうる範囲の中で調整可能で有り厳密に調整すべく45nm〜75nmや50nm〜80nmなどとしても良い。前記に条件誤差まで勘案すると半値幅が85nm以下ないしは90nm以下程度まで、より発光効率の高い実用蛍光体の選定に合わせた範囲に上限値と下限値を個別に調整可能である。
赤発光蛍光体は、より好適には発光中心をEuとして含むこと、窒化物系の蛍光体であることが発光効率と温度特性の観点からは好ましい。
なお、前述の通り、LED光源では、複数の蛍光体を組み合わせて使用するため、蛍光体の分光分布同士が重なることがある。また、可視光で励起される蛍光体同士の相互吸収や、使用時の熱による分光分布変化などにより、複数の蛍光体の光が混光された分光分布における特定の蛍光体に由来するピーク波長は、その特定の蛍光体の単体のピーク波長からシフトすることがある。また、LEDも使用する電流や温度で厳密にはピーク波長や半値幅が変化する。「全体の分光分布における発光ピーク」は、青発光LED単体や蛍光体単体の発光ピーク波長ではなく、これらが使用に供し混光された状態の全体の分光分布における発光ピークであり、LEDや蛍光体の単体の発光ピークや半値幅などと異なる場合がある。例えば、第1緑発光蛍光体の発光ピークが実用上492.5nm近傍に分布する場合、全体の分光分布は5nmごとの計算の四捨五入の誤差だけを勘案しても、全体の分光分布における発光ピークは誤差として490nmや495nmとなる場合がある。同様に例えば第1緑発光蛍光体の発光ピークが490nmにある場合などは485nmから495nmとなる場合がある。また、全体の分光分布は実施する光源装置の定格使用で照明に供する出力光の状態を基本とする。また、選定する蛍光体単体やLED単体の分光分布の特徴は一般に常温状態で示されるが、光源装置としたときの動作温度や動作時のパワーの状態で予め選定するとより実使用下の状態を反映可能である。
また、全体の分光分布において、青緑間の分光パワーの最低値は、緑赤間の分光パワーの最低値よりも低いことが望ましい。
また、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、緑赤間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が完全放射体の光の場合に99%以下、演色評価の基準の光がCIE昼光の場合に95%以下としてもよい。これは、基準の光が完全放射体の光の場合、相関色温度が低く555nm以上の波長域において、基準の光の分光パワーが大きいためであるる。
また、Raの向上や色域の拡大の効果がバランスしやすい傾向を生じさせるためには、前記、青緑間の分光パワーの最低値と緑赤間の分光パワーの最低値は各々小さい傾向が望ましい。前記、両方の最低値は前記95%以下、90%以下など、個別に青緑間の分光パワーの最低値は90%以下で緑赤間の分光パワーの最低値は95%以下などと調整することなどにより好適な範囲を設定し調整のコントロールを行うことも可能である。また、相関色温度に合わせ、より厳密に好適な最低値を設定し調整のコントロールを行うことも可能である。
また、緑発光の分光分布において短波長側の分光分布の裾野が比較的広く存在すると、S錐体とML錐体の重なりの大きい480nm〜495nm(青緑のパワー抑制帯域)に分光パワーが分配されやすくなる。そこで、第1と第2の緑発光蛍光体の分光分布が合成された緑発光の分光分布において、緑発光の分光分布のピークよりも短波長側の分光パワーの総量が、緑発光の分光分布のピークよりも長波長側の分光パワーの総量よりも小さいことが望ましい。これにより、緑発光の分光分布において短波長側の裾野の広がりを抑制することができる。その結果、青発光LEDの発光ピークと第1と第2の緑発光蛍光体が混光された緑発光の間のパワー抑制帯域に分光パワーが分配されにくくすることができる。
これは、従来の三波長域発光形蛍光ランプのスペクトルの要件とは大きく異なる。つまり、青発光LEDにより励起される実用的な希土類蛍光体の多くは、半値幅が蛍光ランプ用蛍光体に比べて比較的広い。そのため、LED光源の分光分布は分光パワーを特定帯域に集中させても可視光波長域に広く発光が存在する傾向を生じる。
<実施の形態>
(1)構造
以下、実施の形態を説明する。図16は、光源装置の一例であるLED光源の構造を例示する断面図である。LED光源11は、パッケージ12、引き出し電極13、青発光LED14、透明部材15、第1緑発光蛍光体16、第2緑発光蛍光体17および赤発光蛍光体18を備える。引き出し電極13は1つの上下電極LEDの例を示しているが、2本の片面電極でっても良い。また、フリップチップ構造や蛍光体層の別部材化なども含め、青発光LEDと蛍光体の配置関係やパッケージや実装の変形が許容されることは言うまでも無い。
第1緑発光蛍光体16の発光スペクトルは、490nm以上535nm以下のピーク波長と、15nm以上80nm以下の半値幅を有する。このように、第1緑発光蛍光体16には、半値幅が15nm以上80nm以下という狭帯域(15nm以上約45nm未満)から中帯域(約45nm以上80nm以下)の蛍光体から選定される。なお、ピーク波長が495nm以上、500nm以上または505nm以上としてもよい。また、より短波長側に発光スペクトルを集中すべくピーク波長が525nm以下または515nm以下としてもよい。さらに、色純度に対する刺激を高めると言う観点から半値幅は75nmや70nm以下あるいは60nm以下、さらには、45nm以下、40nm以下などとより半値幅を狭く設定してもよい。
以上の数値は本発明の範囲の中で調整可能である。また、Euを発光中心として含む窒化物蛍光体であることが発光効率と温度特性の面からもより好適である。
第2緑発光蛍光体17の発光スペクトルは、495nm以上555nm以下のピーク波長と、45nm以上125nm以下の半値幅を有する。さらに、第2緑発光蛍光体17は、以下のように分類することも可能である。つまり、半値幅が比較的狭いものを中心に中程度のものまで含む45nm以上80nm以下、または、半値幅が比較的広いものを中心に中程度のものまで含む75nm以上125nm以下の蛍光体から選定される2つの分類である。 第2緑発光蛍光体17の半値幅が比較的狭い場合は混光比の変化による演色効果の調整幅が比較的大きく、半値幅が比較的広い場合は現状の実用蛍光体の中で発光高効率が高めであり一般に普及しているYAG系、LuAG系などのCeを発光中心として含む蛍光体が使用しやすくなる。 第2緑発光蛍光体の半値幅は逐次狭く設定した場合は第2緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の間にスペクトル抑制を行いやすくなる。
第1緑発光蛍光体16、第2緑発光蛍光体17および赤発光蛍光体18は、透明部材15内に分散されている。第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体は異なる母体組成による蛍光体であれば、分光分布の形状の差を生じさせやすい。
(2)蛍光体
本発明に使用する蛍光体の事例を説明する。
緑発光蛍光体において、比較的短波長側に発光ピークが存在するもの、また、半値幅が小さく狭帯域発光を示すものは青緑発光を呈する。
緑発光蛍光体において、比較的長波長側に発光ピークが存在するもの、また、半値幅が大きく広帯域発光を示すものは黄緑発光、緑みを帯びた黄発光を呈する。
発光の分光分布の形状が本発明の範囲に類似であれば、現在、実用的に使用可能な蛍光体材料にかぎらず、将来的に実用になる蛍光体材料であっても良く、蛍光体材料に対する実施の自由度が存在する。LED用蛍光体は開発進展が著しく、現在も各所で開発が続いているが、技術進展を考慮すれば本発明に使用可能な他の組成や、一般式で表される組成に添加物を導入し分光分布を調整し本発明に使用可能な組成も存在するため、ここでは事例を示す。
希土類元素RE: Sc Y La Ce Pr Nd Sm Eu Gd Tb Dy Ho Er Tm Yb Lu
ハロゲン元素X: F Cl Br I
アルカリ金属(1属): Li Na K
アルカリ土類金属(2属)AE: Ca Sr Ba
遷移金属元素: Mn Zr Cu Hf
金属元素: Mg Zn Al Ga
半金属元素: B Si Ge
非金属元素: C N O F P S
一般式の例示の中でAEはアルカリ土類金属(Alkaline earth metal)である。
(2.1)緑発光蛍光体
第1と第2の緑発光蛍光体の組成の事例として次のものがある。
緑発光蛍光体は主にEu、Ce、Mnを発光中心に用いた窒化物系、珪素系、アルミネート系、酸化物系蛍光体である。
窒化物系蛍光体は、酸窒化物蛍光体、珪窒化物蛍光体、珪酸窒化物蛍光体、炭窒化物蛍光体、炭酸窒化物蛍光体などがあり、代表的にはBaSiON蛍光体、SiON蛍光体、SiAlON蛍光体、γ―SiAlON蛍光体、β−SiAlON蛍光体、LSN蛍光体、YSN蛍光体である
珪素系蛍光体は、珪酸蛍光体、珪酸塩蛍光体、などがあり、代表的にはシリケート蛍光体のBOSE蛍光体、CSS蛍光体などがある。
酸化物系蛍光体は、代表的にはCSO蛍光体などあがる。
ガーネット系蛍光体とは、ガーネット構造を持つ蛍光体であり、蛍光体の母材が「A3B5O12」という一般式で表される結晶構造を持った蛍光体を指す。 A元素の位置は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素などが占め、B元素の位置は、Al、Ga等の元素などが占める。 代表的にはYAG蛍光体、LuAG蛍光体、GaYAG蛍光体、TAG蛍光体などがある。
(2.1.1)緑発光蛍光体の詳細な事例
アルミネート系蛍光体 SrxAlyOz:Eu 系の例
Sr4Al14O25:Eu 略称「SAE」
(Sr,Mg,Ca, Ba)4Al14O25:Eu,Dy
SrAl12O19:Eu
SrAl2O4:Eu
(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu
窒素化物系蛍光体 SixOyNz:Eu 、AE−SixOyNz:Eu 系の例として
BaSiON系 Ba−SixOyNz:Eu
SrSiON系 Sr−SixOyNz:Eu
Ba3Si6O12N2:Eu 略称「BSON」
(Ba,Sr)3Si6O12N2:Eu
Ba0.9Si2O2-xN2+2/3x:Eu
(Ba,Sr)Si3 O3N3:Eu
(Ba,Sr)Si2O2N21:Eu
(Ba,Sr)2Si2O2N2:Eu
前記AE−Si2O2N2:Eu 系の例として
(Ba,Sr,Ca,Mg)Si2(O,Cl,Br,F,I,C)2N2:Eu
(Ba,Sr)Si2O2N2:Eu
(Ba,Ca)Si2O2N2:Eu
(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Eu
(Ba,Sr)Si2(O,Cl)2N2:Eu
前記Ba―Si2O2N2:Euの系の例として
BaSi2O2N2:Eu 略称「BaSiON」
BaSi2(O,X)2N2:Eu (X=F,Cl,Br,I)
前記Sr―Si2O2N2:Euの系の例として
SrSi2O2N2:Eu
SrSi2(O,X)2N2:Eu (X=F,Cl,Br,I)
窒化物系蛍光体 SiwAlxOyNz:Eu 、AE−SiwAlxOyNz:Eu 系の例として
SiAlON系 SiAlON:Eu
AE−SiAlON:Eu
M−SiAlON:Eu (M=Li,Ca,Sr,Ba,La)
Sr−SiAlON:Eu
(Sr,Ca,Ba)SixAlyOz:Eu
β-SiAlON:Eu 略称「β-SiAlON」β-Si3N4窒化珪素(Si3N4)にAl,Oが固溶した固溶体にEu発光中心を導入した系で、混晶状態を含む、さらに詳細には、Si6-sAlsOsN8-s:Eu (0<s<4.2)であり、さらには(0.005<s<0.25)
他の例としては
AEv SiwAlxOyNz:Eu (AE=Sr,BaCa)
SrSiwAlxOyNz:Eu
Si5.5Al0.5N7.5:Eu
(Sr Si2(O,N))x(Si2(O,N)4)y:Eu
((Sr,Mg,Ca,Ba)(Si,Al)2(O,N))x((Si,Al)2(O,N)4)y:Eu
(Ca,Sr,Ba)Al2-xSixO4-xNx:Eu
BaSixAl2-xO4-xNx:Eu2+
BaSi0.1Al1.9O3.9N0.1:Eu
Ba(Si,Al)2(O,N)4:Eu
BaSi0.3Al1.7O3.7N0.3:Eu
BaSisAl2-sO4-sNs:Eu (s=0から0.3)
Sr14Si61Al23O7N99:Eu
Sr14Si68-sAl6+sOsN106-s:Eu (s=7近傍)
SrSisAl2-sO4-sNs:Eu
SrSiAl2O3N2:Eu
SrSiAl2O3N:Eu
SrSi5AlO2N7:Eu
Sr5Si21 Al5 O2N35:Eu
Sr14Si61Al13O7N99:Eu
Sr3Si13Al3O2N21:Eu
窒化物蛍光体の系の内、炭窒化物蛍光体の系
窒化物蛍光体のSi−N、Al−N、Si−O、Al−Oの一部をSi−C、Al−Cに置き換えたものに代表される炭窒化物蛍光体の例として
AE−AlwSixOy(N、C)z:Eu の系
AE−SiyOy(N、C)z:Eu の系
事例としては
(Ca,Sr)wAlxSiy(N,C)z:Eu
(Ca,Sr)xAlSi2(N,C)8:Eu
(Ca,Sr)2AlSi2(N,C)8:Eu
(Ca,Sr,Na,B)2AlSi2(N,C)8:Eu
SrvAlwSixOy(N,C)z:Eu
SrwSixOy(N,C)z:Eu
Sr7Al12-x-ySix+yC25-xNx-yCy:Eu (x+y=12)
Sr7Si12O25-xNx-yCy:Eu (x+y=12)
(Sr,Mg)7Al12-x-ySix+yC25-xNx-yCy:Eu (x+y=12)
(Sr,Mg)7Si12O25-xNx-yCy:Eu (x+y=12)
(Sr,Ba,Ca)7Al12-x-ySi12O25-xNxC:Eu (x=10〜12 y=0〜2)
(Sr,Ba,Ca)7 Si12O25-xNxCy:Eu (x=10〜12 y=0〜2)
Sr7AlSi12O13(N,C)12:Eu
Sr7Si12O13(N,C)12:Eu
(Sr,Ba,Ca)7Si12O14N11C:Eu
SrAl2Si2O2(N,C)2:Eu
BaSi2O2(N,C)2:Eu
ASi2(O,X)2(N,C)2:Eu A=Ba,Sr,Ca,Mgの少なくとも1つ以上 X=Cl,Br,F,I,Cの少なくいとも一つ以上
炭窒化物蛍光体の他の系の例として
Y2Si4N6C:Ce
Y2(CN2)3:Ce
(Y,Gd)2(CN2)3:Ce
窒化物蛍光体系の他の例として
α−SiAlON の系 Sr1.5Al3Si9N16:Eu
Ca−α−SiAlON:Ce の系 CaSi9Al3ON15:Ce
γ―AlON:Mn の系 AlNとα―Al2O3と共存下でMnを発光中心としたもの
Al2.61Mn0.18Mg0.18O3.45N0.55:Mn
Mg0.3 Al5O7N:Mn
窒化物蛍光体のさらに他の例としては
(Ba,Sr,Ca)2Si4AlON7:Ce
BaYSi4N7:Eu
La3Si6N11:Ce 略称「LSN」
Sr2Si5N8:Ce,Li
SrSiN2:Eu
アルミネート系 ガーネット系蛍光体 YAGの例として
555nm以下に発光ピークを有するY3Al5O12:Ce に1種類以上の元素をドープしたもの組成を他の元素で一部または全部置き換えたYAG、LuAG、TAG蛍光体。
その他、ベースとなるYAG蛍光体のバリエーションにPr、Smを付活したもの、Sm、Tbを付活したしたものも有る。さらに、例えばY4Al2O9「略称YAM」およびYAlO3「略称YAP」で示すような他の結晶状態が混在するものや、Y3(Al,Si)5(O,N)12:Ce ((Y0.97Ce0.03)3Al4.9Si0.1O11.9N0.1 )「略称YAG−SiN 」や、 Lu3(Al,Si)5(O,N)12:Ce ((Lu0. 97Ce0.03)3Al4.8Si0.2O11.8N0.2)「略称LuAG−SiN」.で示すような複合的な結晶のものもある。
YAG蛍光体の例として
Y3Al5O12:Ce
Y3(Al,Ga)5O12:Ce
Y3(Al,Dy)5O12:Ce
(Y,Gd)3Al5O12:Ce
(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Y,Gd,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce
Y3Al5O12:Ce,Pr
(Y ,Pr)3Al5O12:Ce
Y3Al5O12:Ce,Sm
(Y ,Sm)3Al5O12:Ce
Y3Al5O12:Ce,Sm,Tb
LuAG(LAG)蛍光体の例として
Lu3Al5O12:Ce
Lu3(Al,Ga)5O12:Ce
(Lu,Y)3Al5O12:Ce
(Lu,Y)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Lu,Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Lu,Mg)3Al5O12:Ce
(Y,Gd,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce
Lu3Al5O12:Ce,Pr
Lu3Al5O12:Ce,Sm
(Lu,Y,Tb)3Al5O12:Ce,Sm
TAG蛍光体の例として
Tb3Al5O12:Ce
(Y,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Y,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Y,Gd,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce
(Y,Tb)3Al5O12:Ce,Sm
アルミネート系蛍光体の他の例として
(Sr,Ca)3(Al,Si)O4(F,O):Ce
(Sr,Ba)AlO4F:Ce
Sr2Ba(AlO4F)1?x(SiO5)x:Ce
LaSr2AlO5:Ce
LaSr2AlO5―Sr3SiO5:Ce
酸化物蛍光体の例として
Ca3Sc2Si3O12:Ce の系
BaY2SiAl4O12:Ce の系
Ca3Sc2Si3O12:Ce 略称「CSS」
Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce
Ca3Si2O7:Eu
(Ca,Mg)3(Sc,Y)2Si3O12:Ce
Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si3O12:Ce
Ca3Sc2(Si,Ge)3O12:Ce.
CaSc2O4:Eu
CaSc2O4:Ce 略称「CSO」
(Ca,Sr)8Mg(SiO4)Cl2:Eu 略称「CSMS」
珪素系、シリケート系蛍光体の例として
珪素と酸素を主骨格に含むSi-Oxシリコン含有酸化物結晶蛍光体である。
Ba2SiO4:Eu
(Ba,Sr)2SiO4:Eu 略称「BOSE」
(Ba,Sr,Mg,Ca)2SiO4:Eu
(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu
(Sr,Ba,F)2SiO4:Eu
(Sr,Ba,Mg)2Si(O,X)4:Eu (X=F,Cl,N)
(Sr,Ba,Ca)2(Si,X)O4:Eu (X=Al,B,P,Ge)
(Sr,Ba,Mg,F)2SiO4:Eu
珪素系、シリケート系蛍光体のその他の例として
Lu1.91-xCa1+xMg2-xScxSi3O12:Ce (0<x<0.5)
Lu2CaMg2SiO12:Ce
CaSc2O4:Ce
Ca3SiO4Cl2:Eu
Ba9Sc2Si6O24:Eu
(2.1.2)緑発光蛍光体の好ましい事例
(2.1.2.1)第1の緑発光蛍光体の組成の好ましい事例
より好ましい蛍光体の分光分布の基礎的な要件としては、発光ピークが535nm以下の短波長側に有り分光分布が比較的狭帯域から中帯域な半値幅を示すものである。
半値幅が15nm以上80nm以下であり、中でも、70nm以下、60nm以下、さらには、45nm以下と半値幅が狭いものが望ましい。
アルミネート系蛍光体
SrxAlyOz:Eu の系
BawMgxAlyOz:Eu,Mn の系
好ましくはAE4―Al14O25:Eu の系
Sr4Al14O25:Euのバリエーションが望ましい。
窒素化物系蛍光体 SiON の系
AE−SixOyNz:Eu の系
BaSixAl2-xO4-xNx:Eu (例えばx=0.1〜0.3近傍)
Sr14Si61Al23O7N99:Eu
Sr14Si68-sAl6+sOsN106-s:Eu (例えばS=7近傍)
のバリエーションも望ましい例である。
AE3−Si6O12N2:Eu の系
Ba3Si6O12N2:Eu のバリエーションが望ましい。
AE−Si2O2N2:Eu の系
BaSi2O2N2:Eu のバリエーションが望ましい。
窒化物系蛍光体 SiAlON の系
AE−SiwAlxOyNz:Eu の系
Sr14Si61Al23O7N99:Eu
Sr3Si13Al3O2N21:Eu
のバリエーションも望ましい例である。
β−SiAlON:Eu の系
β-Si3N4窒化珪素(Si3N4)にAl,Oが固溶した固溶体にEu発光中心を導入したβ-SiAlON:Eu。 また、Si6-zAlzOzN8-z:Eu (0<z<4.2)さらには(0.025<z<0.25)のバリエーションが望ましい。
Ba(Si,Al)2(O,N)4:Eu のバリエーションが望ましい。
珪素系、シリケート系蛍光体 BOSEの系
AE−SixOy:Eu の系
好ましくは
Ba2SiO4:Eu の系
Ba2SiO4:Eu のバリエーションが望ましい
(Ba,Sr)2SiO4:Eu の系
(Ba,Sr)2SiO4:Eu のバリエーションが望ましい。
(2.1.2.2)第2の緑発光蛍光体の組成の好ましい事例
蛍光体の分光分布の基礎的な要件としては、発光ピークが555nm以下の短波長側に有り、分光分布が比較的、狭から広帯域の半値幅を示すものである。
分光分布のピーク波長は中でも545nm、540nm、535nm以下と発光ピークが短波長側に有るものが望ましく、さらに、青発光LEDの発光ピークとの間のスペクトル抑制帯域を確保するためには495nm、500nm、505nm、510nm、515nm、520nm、525nm以上と長波長側にあれば望ましい。
前記の中でも半値幅が80nm近傍以上125nm近傍以下の比較的中から広帯域の半値幅を示すものの場合、80nm近傍以上、110nm近傍以下と半値幅がより狭く、分光分布のピーク波長は545nm、540nm、535nm以下と発光ピークが短波長側に有るものがより望ましい。これを実現する蛍光体材料としては、EuおよびCeから選択される一つ以上を発光中心に用いた窒化物系、ケイ素系、ガーネット系、アルミネート系、酸化物系蛍光体が好ましい。また、一部を炭窒化物で置換したものも有る。さらにはCeを発光中心に用いたアルミネート系、酸化物系、または、ガーネット系蛍光体がより好ましい。
YAG系蛍光体の中でも、
さらには、Gaを添加したYAGの系
Y3(Al,Ga)5O12:Ce のバリエーションが好ましい。
Lu3Al5O12:Ce のバリエーションがより好ましい。
加えて、
Ca3Sc2Si3O12:Ce
CaSc2O4:Ce
Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce
La3Si6N11:Ce
のバリエーションも好ましい例である。
前記の中でも半値幅が15nm以上80nm近傍以下の比較的狭から中帯域の半値幅を示すものの場合、70nm以下、60nm以下と半値幅が狭帯域発光を示し、分光分布のピーク波長は545nm、540nm、535nm以下と発光ピークが短波長側に有るものが望ましい。これを実現する蛍光体材料としては、Euを発光中心に用いた窒化物系、珪素素系蛍光体が好ましい。また、本例に類する分光分布を有する蛍光体が製造容易性の観点で使用される場合もある。
窒化物系の中でもSiON の系
AE−SixOyNz:Eu の系
BaSiONの系 Ba−SixOyNz:Eu
SrSiONの系 Sr−SixOyNz:Eu
AE−Si2O2N2:Eu の系
BaSi2O2N2:Eu のバリエーション
(Ba,Sr)Si2O2N2:Eu のバリエーション
AE−Si3O6N12:Eu の系
Ba3Si6O12N2:Eu のバリエーション
(Ba,Sr)3Si6O12N2:Eu のバリエーション
などが好ましい。
窒化物系の中でもSiAlON、β−SiAlON:Eu の系
β-Si3N4窒化珪素(Si3N4)にAl,Oが固溶した固溶体にEu発光中心を導入した系
β-SiAlON:Eu また、Si6-zAlzOzN8-z:Eu (0<z<4.2)さらには(0.025<z<0.25)のバリエーション
SiwAlxOyNz:Eu 、AE−SiwAlxOyNz:Eu Sr−SiwAlxOyNz:Eu の系
Sr3Si13Al3O2N21:Euのバリエーション
AE−(Si,Al)2(O,N)2:Eu の系
Ba(Si,Al)2(O,N)4:Eu のバリエーション
などが望ましい。
珪素系、シリケート系においてはBOSE 、AE−SixOy:Eu の系
Ba2SiO4:Eu (Ba,Sr)2SiO4:Eu のバリエーション
などが望ましい。
(2.2.1)赤発光蛍光体の詳細な事例
赤色発光蛍光体は、主にEuを発光中心に用いた窒化物系蛍光体である。
赤色発光蛍光体には、現状は窒化物系が望ましいが、珪素系やアルミネート系などの事例も存在する。本例に類する分光分布を有する赤色発光蛍光体が製造容易性の観点で使用される場合、将来的な発光効率改善が進んだ場合に使用される場合もある。
アルミネート系蛍光体の事例では Ca2Al12O19:Mn なども存在する。
窒化物系蛍光体の中でも AlxSiyNz:Eu 、AE−AlxSiyNz:Eu 系の好ましい例を以下に示す。
AlSiN3:Eu 、AE−AlSiN3:Eu の系
CaAlSiN3:Eu の系 略称「CASN」
CaAlSiN3:Eu
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu の系 略称「SCASN」
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu
などが好ましい。
(Ca,X)AlSiN3:Eu X=(Mg,Sr,Ba,Zn,Li)
Ca(Al,X)SiN3:Eu X=(B,Ga)
CaAl(Si,X)N3:Eu X=Ga
(Ca,Cu)AlSiN3:Eu
(Ca,Sr,Mg,Li)AlSiN3:Eu
Ca(Al,X)SiN3:Eu X=(B,O,F,Cl)
CaAlSiN3:Eu,La
CaAlSiN3:Eu,La,Ce
(Sr,Ca,X)AlSiN3:Eu X=(Mg,Ba,Zn,Li)
(Sr,Ca,Cu)AlSiN3:Eu
(Sr, Ca,Mg,Li)AlSiN3:Eu
(Sr,Ca)(Al,X)SiN3:Eu X=(B,O,F,Cl)
(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu,La
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu,La,Ce
などが存在する。
AE−AlSi4N7:Eu の系
SrAlSi4N7:Eu の系
SrAlSi4N7:Eu
なども好ましい。
AlSi(O,N)3:Eu 、AE−AlSi(O,N)3:Eu の系
CaAlSi(O,N)3:Eu の系 略称「CASON」
CaAlSi(O,N)3:Eu
(Ca,Sr,Ba)AlSi(O,N)3:Eu
(Ca,Sr)AlSi(O,N)3:Eu
AE−AlwSixOyNz:Eu の系の他の事例として
Sr2AlSi9O2N14:Eu
Sr2AlxSi5-xOxN8-x:Eu (0<x≦1)
(Ca,Sr,Ba)Si(O,N)2:Eu
(Ca,Sr,Ba)2Si5(O,N)8:Eu
窒化物系蛍光体の中でも SixNy:Eu 、AE−SixNy:Eu 系の例を以下に示す。
AE2―Si5N8:Eu 、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu の系
(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu
Ca2Si5N8:Eu
Sr2Si5N8:Eu
Ba2Si5N8:Eu
(Sr,Ba)2Si5N8:Eu
(Ca,Sr)2Si5N8:Eu
(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu
(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu
SixNy:Eu 、AE―SixNy:Eu の系における他の例
CaSiN2:Eu
SrSiN2:Eu
(Ca,Sr)SiN2:Eu
Ba2Si5N8:Eu
Sr2Si5N8:Eu
BaSi7N10:Eu
窒化物蛍光体の系の内、炭窒化物蛍光体の系
窒化物蛍光体のSi−N、Al−N、Si−O、Al−Oの一部をSi−C、Al−Cに置き換えた、炭窒化物蛍光体の事例として
AlxSiyNz:Eu 、AE−AlxSiyNz:Eu の系
CaAlSi(N,C)3:Eu
(Sr,Ca)AlSi(N,C)3:Eu
Ca(AlSiN3,C):Eu (SiN、AlN、SiCの混晶)
CaAlSi(N,C)3:Eu
(Sr, Ca)AlSi(N,C)3:Eu
(2.2.2)赤発光蛍光体の好ましい事例
赤色発光蛍光体から選択される組成の好ましい事例として
赤発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が610nm以上650nm以下であり、その半値幅が70nm以上120nm以下である中から広帯域のEuを発光中心とする窒化物系蛍光体である。
加えて、Euを発光中心に用いたスムーズな山形の分光分布が望ましく、本発明の効果を得ながら調整用に2種類以上の赤色発光蛍光体を組み合わせる場合も、擬似的に上記の特徴を有す単ピークの分光分布とすることも可能である。
窒化物系蛍光体の好ましい事例を示す。
AE−AlxSiyNz:Eu の系
CaAlSiN3:Eu 、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu の系
CaAlSiN3:Eu 、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu のバリエーションが好ましい。
SrAlSi4N7:Eu のバリエーションが好ましい。
AE−AlwSizOyNz:Eu の系
CaAlSi(ON)3:Eu の系
CaAlSi(O,N)3:Eu のバリエーションが好ましい。
AE−SixNy:Eu の系
AE−Si5N8:Eu の系
Ca2Si5N8:Eu 、Sr2Si5N8:Eu のバリエーションが好ましい。
AE−SiN2:Eu の系
CaSiN2:Eu 、SrSiN2:Eu のバリエーションが好ましい。
(2.3)使用する蛍光体の代表的な分光分布の特徴
近年、蛍光体の材料組成や添加物などのバリエーションは非常に多い。蛍光体の材料組成は将来的にも進展が見込まれるため、材料系とは別の観点で、本発明の蛍光体の分光分布から見た好適な傾向を示す。蛍光体材料の変更が合った場合、また、将来に蛍光体材料の選択範囲が増加した場合の、好適な傾向を示す発光ピークや分光分布の形状に対しての特徴となる。
(2.3.1)第1緑発光蛍光体の分光分布
図17は第1緑発光蛍光体の具体的な発光スペクトルを示す図である。
アルミネート系蛍光体 SAEの系のSr4Al14O25:Eu(SampleA)のバリエーションの例。
窒素化物系蛍光体 SiONの系のBaSi2O2N2:Eu(SampleB)や、Ba3Si6O12N2:Euや、他のBaSiON系 のバリエーションの例。
分光分布の形状を比較すると、例えば、第1緑発光蛍光体の珪素系蛍光体・シリケート蛍光体AE−SixOy:Euの系のBa2SiO4:Eu、(Ba,Sr)2SiO4:Euのバリエーションは、窒化物蛍光体AE−SixOyNz:Eu 系の(Ba,Sr)3Si6O12N2:Euのバリエーションなどの分光分布の形状に類している。
(2.3.2)第2緑発光蛍光体の分光分布
図18は第2緑発光蛍光体の具体的な発光スペクトルを示す図である。
YAGの系Y3Al5O12:Ce (SampleD)のバリエーションの中でさらに、Gaを添加したYAG系Y3(Al,Ga)5O12:Ce(SampleE)のバリエーションや、Luを添加したLuAG系Lu3Al5O12:Ce(SampleD)のバリエーションなどがある。
図19は他の、第2緑発光蛍光体の具体的な発光スペクトルを示す図である。また、前記図18に類する分光分布を有する他の例としてLa3Si6N11:Ce系 Ca3Sc2Si3O12:Ce系 Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce系 CaSc2O4:Ce系のバリエーションなどがある。
前記のごとく発光ピークがなだらかに短波長側に高まる、非対称性の高い分光分布の形状、つまり、第1と第2の緑発光蛍光体が混光された分光分布を第2緑発光蛍光体単独で有する蛍光体の場合、一般的なYAG系の蛍光体の分光分布のように短波長側の発光が少ない状態の演色効果を作り出すことは困難であり、第1緑発光蛍光体との同時使用による、演色調整の幅は狭くなる。
図20は第2緑発光蛍光体の具体的な発光スペクトルを示す図である。
窒化物系蛍光体 SiON、SiAlON、β―SiAlONや他の窒化物蛍光体の系である、Ba3Si6O12N2:Euや、β-SiAlON:Eu系のバリエーションの例。
シリケート系蛍光体 BOSEの系である (Ba,Sr)2SiO4:Eu(SampleH)のバリエーションの例。
(2.3.3)赤発光蛍光体の分光分布
図21は赤発光蛍光体の具体的な発光スペクトルを示す図である。
窒化物蛍光体 AE−AlxSiyNz:Eu、や、AE−AlwSizOyNz:Eu などの窒化物蛍光体の系である、CaAlSiN3:Eu、や、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、や、CaAlSi(ON)3:Euのバリエーションの例である。
(2.3.4)第1と第2緑発光蛍光体の分光分布が合成された緑発光
蛍光体の分光分布を検討した結果、以下の傾向があった。
第2緑発光蛍光体の中でも発光ピークが比較的短波長側に存在するもので、さらには510nmから540nm近傍に有るもが好ましく、また、半値幅が比較的広いもの、中でも100nmから125nm近傍にあるものが比較的良好な結果が得られる傾向にあった。
第2緑発光蛍光体は比較的半値幅が中程度から広いものが選定されることで、555nm近傍の標準比視感度Vλに対する効率が、標準比視感度Vλより短波長側に重きを置いて維持可能である。
また、比較的、短波長側に分光パワー集中する第2緑発光蛍光体を使用することで、第1緑発光蛍光体との混光比率変化による演色特性の調整幅は減じるが、第1緑発光蛍光体の添加量を減らしても比較的、短波長側に分光パワー集中させることができる。
この場合、組み合わせる第1緑発光蛍光体を半値幅が比較的狭く温度による分光特性の変化の少ない窒化物蛍光体、例えばBaSi2O2N2:Euのバリエーションや、Ba3Si6O12N2:Euのバリエーションなどにすることが考えられる。
さらに、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体を組み合わせた緑発光の短波長側の分光パワーをより確保するため、前記第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体のいずれか一つ、もしくは、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布において、分光分布のピークよりも短波長側の分光パワーの総量が、前記緑発光の分光分布のピークよりも長波長側の分光パワーの総量よりも小さいことが望ましい。
ここで第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の分光分布が合成された緑発光の分光分布の代表を示し説明する。
その混光比率変化に伴い、第1緑発光蛍光体の混光比(光束比)が高まるほど500nm近傍の比較的短波長で半値幅の狭い第1緑発光蛍光体により緑短波長帯域の発光が強調されている。例えば、光束比1:9とは第1緑発光蛍光体の光束1に対し第2緑発光蛍光体の光束9となるごとく第1と第2の蛍光体を混光したものを示す。
本発明においては第1と第2緑発光蛍光体に機能分離したため、緑発光の短波長側の強化された類似傾向の分光分布を緑発光として得られやすくなったため、蛍光体の選定と調整の自由度が高まった。また、第1緑発光蛍光体が追加されていることにより、第2緑発光蛍光体だけの場合より、緑の刺激純度を高めつつ明るさ感度を確保することができる。
次に、第1緑発光蛍光体に窒素化物系蛍光体 BaSi2O2N2:Eu 系の比較的狭帯域な蛍光体「Sample B」と、第2緑発光蛍光体に珪素系蛍光体(シリケート系蛍光体)や窒化物系蛍光体の分光分布を BOSE (Ba,Sr)2SiO4:Euのバリエーションで比較的狭から中帯域な蛍光体「Sample H」を組み合わせ、その混光比率を変化させた場合の第1と第2の緑発光蛍光体による緑発光の分光分布の変化の様子を図23に示す。
比較的短波長で半値幅の狭い第1緑発光蛍光体の混光比率の変化で500nm近傍の緑短波長帯域の発光が強調される傾向は同様である。
以上、本発明の分光分布の特徴を持つ第1緑発光蛍光体の混光比率が増加するとともに、緑発光において緑帯域短波長側(青緑)の500nm近傍の発光が増える。 結果、最終的に得られる演色特性として、これと補色関係にある赤発光の増強につながり、色域が赤−緑方向に拡大し、赤−緑の系統の色彩の色鮮やかさが増強される傾向を、広い色度範囲で安定的な傾向として調整可能となる。
上記調整は、従来、2種の蛍光体では同一色度で行なうことは困難であった。また、3つ以上の蛍光体を有する蛍光体の調整について、従来は、その機能を合目的に分離し体系的に論じられることは無く、系統だった演色性の調整に対する着眼も見られないものである。
具体的には、前記の調整により、さらに演色効果を広い色度範囲で系統的な傾向を維持したまま調整できることであり、実施の形態により分光分布が変化しても、その変化の傾向を系統性を有して回復方向に調整できることなどである。
(2.3.5)緑発光の分光分布と全体の分光分布の関係
図24は、光束比を変化させたときの分光分布の変化を示す図である。
上記、関係は例示以外にも共通であり、本発明では、第1と第2緑発光蛍光体の混光比を変化させることにより、緑発光の調整で赤発光蛍光体の発光強度を好適に調整可能とする傾向を内包したたため、広い色度範囲で系統だった全体の分光分布と演色傾向の調整が可能になる。
(2.3.6)実施上での適応性
また、前記第1と第2の緑発光蛍光体の混光比調整により多様な実用形態においてのメリットが生じる。これは、LEDと蛍光体の実装形態や使用形態の変化に適用性を高めることにも連動する。
例えば、蛍光体同士の相互吸収による分光分布のズレなどの現象である。
これを、青発光LEDと緑発光蛍光体と赤発光蛍光体に単純化した一般的な場合で述べる。
図25(a)においてシミュレーション(理想的な混光)の場合、BG間最低値は約0.06、GR間最低値は約0.8であり、現実(試作事例)の場合、BG間最低値は約0.3、GR間最低値は約1である。蛍光体の相互吸収などによりBG間最低値は約0.25上昇、GR間最低値は約0.2上昇している。
図25(c)においてシミュレーション(理想的な混光)の場合、BG間最低値は約0.15、GR間最低値は約0.98であり、現実(試作事例)の場合、BG間最低値は約0.37、GR間最低値は約1である。蛍光体の相互吸収などによりBG間最低値は約0.22上昇、GR間最低値は約0.02上昇している。
以上からは低色温度領域においてBG間最低値は理想的な状態より約0.2から0.3上昇が想定され、GR間最低値は理想的な状態より約0.02から0.2上昇が想定される。また、高色温度領域においてBG間最低値は理想的な状態より約0.15から0.4上昇が想定され、GR間最低値は理想的な状態より少なくとも約0.01から0.2上昇が想定される。
図26(a)において蛍光体の配置構造を多層化して蛍光体相互吸収の割合を減じた場合、BG間最低値は約0.41、GR間最低値は約0.99であり、現実(試作事例)の場合、BG間最低値は約0.48、GR間最低値は約1である。蛍光体の相互吸収などによりBG間最低値は約0.07上昇、GR間最低値は約0.01上昇している。
前記を全体的に見た場合、実施形態により0.01から0.1程度の最低値の上昇が想定できる。
しかし、この傾向は一般には基準の光の分光分布に近づき分光分布の山谷を減じる方向であり、色再現の傾向は低彩度化する傾向であるがRaの数値が高まる傾向にあることが多い。
さらには、蛍光体の濃度が高い場合と低い場合の差、蛍光体の粒径が大きい場合と小さい場合の差、励起源のLEDのパワーが大きいときの蛍光体の励起密度飽和や温度消光などによる差異、また、励起源の青色発光LEDに蛍光体を近接配置する場合と、リモートフォスファーと呼ばれるようなLEDと蛍光体を離間配置する場合との違いなど、その実装状態によって同じ蛍光体材料を使用しても分光分布に差が生じることになる。
従来技術において、体系的な検討がなされていない中で、定点で特定の蛍光体を組み合わせれば高演色が得られたと言うような一般的な実施検証では、蛍光体の組み合わせが同じでも、その特定の実施と実装状態に連動し、たまたま発生した結果であったか否かさえ不明である。
つまり、従来は、実施や実装の形態により、光源の分光分布が、目的の分光分布とズレても、どのような分光分布の形状を内包していれば、系統的に目的の分光分布を回復調整できるかという知見も無いという状況であった。
本発明のごとく、最終的にLEDと各種蛍光体の分光分布が混光された状態で、第1と第2の緑発光蛍光体が混光された緑発光の発光ピークに対し、青発光LEDの発光ピークとの間の分光パワーの最低値と、赤発光蛍光体の発光ピークとの最低値を本発明のごとく低く誘導することが望ましい。しかし、従来、前記分光分布の谷が埋まる傾向を実施の状態で回復するためには、従来では、LEDのピーク波長を短波長側に選定する、または、赤発光蛍光体のピーク波長がより長波長のものを選定する、緑発光蛍光体や赤発光蛍光体をより半値幅の狭いものに変更するなどの材料変更や抜本的な実装形態の変更にまで立ち返る必要があった。
つまり、行なおうとする実施形態が分光分布の山谷の減少方向を生じさせるものであっても、第1緑発光蛍光体の混光比率を高めれば、系統的な傾向を保持したまま、当初の目的とする分光分布の状態へ回復傾向に調整が可能となるごとく予め要件が内包されているということである。
本発明のごとく第1と第2の緑発光蛍光体に機能分離しその実施を行えば、LEDと蛍光体からの発光が混光された分光分布において、青発光LEDと緑発光蛍光体の間の分光分布の谷(スペクトル抑制帯域)、緑色発光蛍光体の発光ピークの山、緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の間の分光分布の谷(スペクトル抑制帯域)、赤発光蛍光体の発光ピークの山は、理想的な混光で得られた状態に近づくごとく保持回復させる傾向に調整が可能であり、広い条件での適用と調整が実現できる。
このような、実施実装上の課題にまで着目し、予め、その調整対応要件まで内包する技術は、非常に新規性や進歩性が高いものである。
以上の傾向が予め内包され好適に要件設定されたことにより、広範囲な色度や実施の形態において、U*V*平面上での色域のU*軸方向の拡大を増強し、赤色と緑色の高彩度な色再現を実現することができる。
逆に、第1緑発光蛍光体の分光パワーを低くした場合、同一色度を実現するためには、赤発光蛍光体の分光パワーも低くする傾向を誘導する結果となる。これにより、U*V*平面上での色域のU*軸方向の拡大を抑制し、赤色と緑色の忠実な色再現を実現することができる。
このように、緑発光の分光分布を機能分解しコントロールすることで逆説的に赤発光の分光分布をコントロールを可能とせしめる組み合わせの結果、同一色度で忠実な色再現性と高彩度な色再現性のバランスを調整することができる。
また、本発明では設定のスペクトル抑制帯域を回避するごとく、緑発光と赤発光の蛍光体の分光分布が設定されるため、逆説的に目的の比較的短波長側の緑発光と赤発光の増強が達成される。前記、増強される帯域は、従来、標準比視感度Vλでは少なく見積もられている、各種明るさ感の分光感度に共通する傾向を有すスペクトル強度と関連づけられており、本発明では緑や赤の色刺激純度を高める分光感度の傾向と、各種明るさ感度を高める傾向が複合的に内包されるとになる。
他方、蛍光体単体での状態と、実施において蛍光体が混合使用された状態において、蛍光体の相互吸収などの条件変化が多様に存在し、分光分布には実施上の誤差が生じる。現実には蛍光体の相互吸収が多く非常に悪い条件(例えば、蛍光体の励起密度飽和が大きく起こるような出力の大きいLEDとの組み合わせで、高濃度で小粒径の蛍光体を拡散材と共に塗布する場合など)での実施する場合なども有りうる。よって、分光分布の例示において、非現実的な相互吸収要件の組み込みや、蛍光体の塗布や形成条件自体の意図しない誤差、実装形態や使用パワー密度などの変化に伴う誤差などを判別排除するため、実施状態に伴う誤差用件の少ない、分光分布の特長が良く現れた状態での分光分布の検討を例示の基本とおくことで、実施の状態での過剰な誤差繰り込みを除く方向で基本的な特性と傾向を示した。その上で、前記誤差を統一的な系統性もって回復する手段を本発明に内包させ現実の適用度を高めたものである。
単純に蛍光体を組み合わせ、Raが高まったなどの従来技術の報告には、上記のような誤差要因も未分化であることが多く、その結果が本質的な蛍光体の分光分布の特徴を捉えたものであるのか、実施の誤差が組み込まれたために特定の実施や特定の色度で得られたのかさえ充分検討されていないことが多い。また、実施に当り、分光分布が変化する傾向を回復実行する手段の示唆や着眼も従来は検討されていないという状況にある。
本発明では、実施形態により生じる分光分布の変化に対する、適用性(アダプタビリテイ)の高さも特徴でもある。また、これらが体系的に調整可能で、発明の範囲の中での数値パラメータの変化の自由度が高いことは、逆説的に本発明が良好に検討され、安定的な結果が生じる範囲を導出した結果でもある。よって、本発明で本質的に分光分布に組み込まれた演色特性や明るさ感の確保などの各種の傾向を、広い実施形態、広い色度範囲で効率よく実施可能とするものである。
<実施例1>
第2緑発光蛍光体としては比較的広帯域な蛍光体を使用した事例である。
青発光LEDは窒化ガリウム系のLEDであり典型的なピーク波長として445nmを使用している。
典型的な第1緑発光蛍光体としては、窒化物蛍光体であるAE-Si2O2N2:Euの系、さらに具体的には、BaSi2O2N2:Euの系を使用している。BaSi2O2N2:Eu 「Sample B」のピーク波長は約495nmであり、半値幅は約30nmである。Sample Bの発光スペクトルは図17に示されている。第1緑発光蛍光体の実施の中でも半値幅が狭い(15nm以上45nm以下)一例である。
典型的な第2緑発光蛍光体としては、アルミネート系蛍光体であり、ガーネット系蛍光体であるYAG蛍光体の中でもLuAGの系、具体的には、Lu3Al5O12:Ceの系を使用している。Lu3Al5O12:Ce「Sample D」のピーク波長は約515nmであり、半値幅は約105nmである。Sample Dの発光スペクトルは図18に示されている。Sample Dは、第2緑発光蛍光体の中でも半値幅が広い(75nm以上125nm以下)一例である。
典型的な赤発光蛍光体としては、窒化物蛍光体であるAE−AlSiN3:Eu の系、さらに具体的には、(Sr,Ca)AlSiN3:Euの系を使用した一例である。(Sr,Ca)AlSiN3:Eu「Sample L」のピーク波長は約625nmであり、半値幅は約80nmである。Sample Lの発光スペクトルは図21に示されている。
前記組み合わせを実施例1の典型的な組み合わせとする。
図27、28は、実施例1の典型的な組み合わせで光束比1:9の場合の各指標の評価値を示す図である。光束比が1:9とは、第1緑発光蛍光体の光束比が1に対し第2緑発光蛍光体の光束比が9の混光比率となるごとく使用し、構成された実施であることを示す。図27には、指標としてR1からR15までの各特殊演色評価数を示す。図28には、指標として、Ra、Ra4、Ga、Ga4、R9、R10、R11、R12、R1−R15レンジ、R13およびR15を代表的に示す。図29は、実施例1で1:9の場合の特性を示す図である。
図3、図4は本実施例と同じピーク波長445nmのLEDと、標準的なYAG蛍光体、および、本実施例と同じ窒化物蛍光体(Sr,Ca)AlSiN3:Eu「Sample L」を使用したものであり、一般的な従来例としてその差は充分比較できる。
従来のLED光源の比較例図3と図28を比べて、Raは相関色温度が高い範囲まで高い。
ここで、詳細検討するため図29に例示するごとく既存のRaやRiを計算する過程で算出される色度座標をU*V*平面上マッピングした色域を見ると、基準の光の色域の多角形に近い形状にプロットされたことで、色の見えのバランス面も改善がなされ、特定色だけが色ずれが大きい情況は発生していないことが判る。つまり、GaやGa4を形成する多角形の色域の面積の増加は、色域の多角形の意図しない歪によるものではないこと、これに伴い各Riのレンジも小さくなっていることが裏づけられる。
また、赤と補色対比関係にある緑に対し、図4、図29の下段のU*V*平面上の4角形の色域のU*軸のマイナス側(左側)にある高彩度な緑の色の見えを指標する色票R11の色度が、鮮やかに感じられる方向へ改善されていることが判る。また同様、図4、図29の下段のU*V*平面上の8角形の色域のU*軸のマイナス側(左側)にある中彩度な色票R4やR5の色度が、鮮やかに感じられる方向へ改善されていることも判る。
なお、前述の通り、既存のランプとの比較の観点で、Ra、Ra4、Ga、Ga4、各Ri特にR9、R13、R15の値を検討した。これと照らし合わせると、実施例1の色再現性は、実用的な相関色温度の範囲(約2500K〜約7100K)を含み、その上下の相関色温度の範囲も含めて、既存のランプの色再現性と遜色が無い程度に改善されていると言える。具体的には、実施例1で光束比1:9の場合、実用的な相間色温度の範囲においてRaは80以上、Ra4が50以上(R9からR12も個々値においても50以上)、R13が85以上、R15が85以上である。
また、実施例1の色域の多角形は、第1緑発光蛍光体が無く第2緑発光蛍光体(Sample D)のみの場合に比べてもU*軸方向に拡大されている。
青発光LEDと赤発光蛍光体は変更せず、第1緑発光蛍光体が無く第2緑発光蛍光体(Sample D)のみの場合の色域の多角形は、図90中欄および下欄に示されている。前記構成の演色結果で構成された色域の多角形は、基準の光による演色結果で構成された色域の多角形よりU*軸方向に小さい傾向にある。
図31の実施例1で光束比0:10の場合の各指標の評価値を示す図が、図90の結果に対応した第1緑発光蛍光体が無い場合の結果である。
ここで、第1緑発光蛍光体がある場合の図27と図28を使用し、第1緑発光蛍光体の有無での結果を対比すると、先の色域形状の変化を受け、R9の値は広い相関色温度で大きく改善されていることがわかる。また、広い相関色温度で各Riの評価値の高低のバラツキが抑えられ、例えばR1―R15レンジが小さくなっていることも判る。これは、第1緑発光蛍光体が追加され色域の多角形がU*軸方向に拡大されたが、色域の多角形の形状も改善され、基準の光に対し特定の色みのみが悪いと言う演色の色バランスの崩れが低下したことを示している。
単独のRiの値の改善や、Riが平均化されたRaの値のみでは評価困難な各色再現バランスが本発明では複合考慮されていることが判る。
また、各評価は緑発光蛍光体が1種の事例に比べ、広い相関色温度帯域で向上する傾向も得られ、さらに別途示す第1と第2の緑発光蛍光体の混光比を変化させる例も勘案すると、非常に広範囲な色度で安定的な演色特性の向上が得られていることが判る。
さて次に、標準比視感度Vλと実際の視環境で感じる明るさ感の改善を、暗所視感度V‘λと大視野での明るさ感度Vb10λを代表にして示す。図30は、実施例1の視感度向上割合を示す図である。
具体的には青発光LEDと黄色発光蛍光体である標準的なYAG蛍光体と赤発光蛍光体の結果を基準値の1とし、青発光LEDと第1緑発光蛍光体「Sample B」と第2緑発光蛍光体「Sample D」と赤発光蛍光体、および、第1緑発光蛍光体の追加が無い(第2緑発光蛍光体のみ)場合を比較し、基準値1に対する向上割合を示している。
比較対象となる第2緑発光蛍光体のみの実施は図31、図90に対応している。
比較対象となる第1と第2の緑発光蛍光体がある実施は、第1緑発光蛍光体が光束比1、第2緑発光蛍光体が光束比9となるごとく構成された図27、図28、図29に対応している。
これによると、第1緑発光蛍光体の追加が無い場合でも、第2緑発光蛍光体は、黄色発光蛍光体である標準的なYAGよりも短波長側に分光パワーが大きい蛍光体が選定されているため、比較例(図3、図4)に比べてV'λおよびVb10λの両方が向上している。さらに、第2緑発光蛍光体を加えた第1と第2の緑発光蛍光体を有する実施例では、V'λおよびVb10λの両方が向上する。これは本発明の第1と第2の緑発光蛍光体により、緑発光の短波長側の分光パワーが増強されたことと、それに連動して赤発光の分光パワーが増加したことによる。
これより、標準比視感度Vλに基づく同じ照度で照明されている場合、実施例では暗所視や薄明視の明るさ感が高く感じ、かつ、実際の環境での明るさ感も高く感じる傾向を有していると言うことである。これらの向上は、原理的に、本発明の分光分布の分光パワーの配分を、標準比視感度Vλのみでなく、各種の明るさ感度を高める傾向に予め分光分布の用件を設定したことによる。
さらに、通常行なわれるような、より長波長な発光を有する深い赤みの追加や、460nm近傍以上500nm近傍以下の蛍光体の追加で、青発光LEDと蛍光体の発光の間の分光分布の谷を埋めて、基準の光の分光分布に近似させることによりRaの数値を上げるような改善では、各種視感効率が低い領域に蛍光体の分光パワーが配分されてしまう。本発明ではこの傾向が抑制されていること、かつ、各種視感や、そもそもの錐体・桿体などの基礎刺激を効率よく刺激する傾向を内包しているため効率的・効果的に各種視感度の改善が可能である。
本発明は、RaやRiの数字が高い低いという事象を一面的に捉えたものとは異なる。技術的互換性を持った説明の観点からそれら数字を使用するが、その内容に関しては、前記のように、視覚、色覚の観点を複合する新たなコンセプトを加え、予め分光分布にその傾向を内包させた上で、広義の演色性や明るさ感を改善するものである。
事象の数値としての表出に、広く普及しているRaやRiの指標の数値をあえて使用したとしても、その内容はRaやRiでは従来捉え切れていなかった事象を複合的に捉えている。
これら多重の複合検討により、本発明は基準の光がCIE昼光と完全放射体とで入れ替わるような広い相関色温度相範囲での演色特性の傾向の安定性、実施上の調整の容易性、既存他光源との演色特性の傾向の類似という新たな観点まで考慮した複合的な好ましい分光分布の用件を内包している。
よって、本発明の分光分布の特徴には複合された効果が原理的に内包されている。ゆえに、演色特性の傾向の安定性は非常に高く、実施上の適用性は非常に広い。これら、本発明の安定性の高さと適用性の広さはさらに別途示される。
(1)第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比変化
次に、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比を変化させた場合について説明する。
使用するLEDに相当する励起源を使用し、同一パワーで蛍光体を励起し、蛍光体の分光分布を測定する。蛍光体の温度特性を考慮するため前記測定を、実際の使用に供する定格温度相当や励起パワーで測定すると、なお好ましい。
また、直接、シミュレーションで、青発光LEDの分光分布と、目標の光束の比率になるごとく合成した第1と第2の緑発光蛍光体の分光分布、および、赤発光蛍光体分光分布を合成し、これと、略一致するように全体の分光分布を調整することも可能である。
本発明の第1と第2の緑発光蛍光体の光束比は、実施形態による誤差の繰り込みを最小化すべく、基本的に予め同条件で求めた各蛍光体の分光分布を合成するシミュレーション計算で求めた光束比である。
さて、実施例1の典型的な組み合わせで第1と第2の緑発光蛍光体の光束比を変化させて得られた事例を代表として示す。青発光LEDの分光分布のピーク波長は445nm 、第1緑発光蛍光体はBaSi2O2N2:Euの系「Sample B」、第2緑発光蛍光体はLu3Al5O12:Ceの系「Sample D」、赤発光蛍光体は窒化物蛍光体の、(Sr,Ca)AlSiN3:Euの系「Sample L」の事例である。
図31は、実施例1で光束比0:10の場合、図32は、実施例1で光束比0.2:9.8の場合、図33は実施例1で光束比1.5:8.5の場合、図34は実施例1で光束比2:8の場合の各指標の評価値を示す図である。
例えば第1緑発光蛍光体の光束が2で、第2緑発光蛍光体の光束が8の場合を光束比2:8のごとく記載されている。光束比0:10の場合は、光束比ほぼ0:10の場合の結果と略一致している。指標として、Ra、Ra4、Ga、Ga4、R9、R1−R15レンジを代表的に示し、他の評価指標の数値の図示は省略している。
次に第1緑発光蛍光体の光束比を、さらに大きく高めた場合の色域の変化の傾向を図35に示す。図35は、実施例1で光束比3:7の場合の特性を示す図である。
図29の光束比1:9、図90の光束比0:10の場合の特性を示す図と対比すると、前記図の色域が第1緑発光蛍光体の混光比の増加と共に拡大する傾向が判る。
以上より、同じ色度(同じ相関色温度)でも、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比を調整することで、基準の光に対し、忠実な色再現性と高彩度な色再現性のバランスを、系統性を有しつつ調整が可能なことが判る。
本発明のような広い色度領域での安定的な演色傾向の維持・調整は本発明が原理的な検討に基づいてなされているためであり、局所的な色度の偶発的な組み合わせ結果でRaやRiが高いと言う事例との大きな差異である。
また、分光分布の特長において、緑発光蛍光体の分光ピークと青発光LEDの分光ピークの間にあるスペクトル抑制帯域の最も分光パワーが少ない青と緑の間の最低値と、緑発光蛍光体の分光ピークと赤発光蛍光体の分光ピークの間にあるスペクトル抑制帯域の最も分光パワーが少ない緑と赤の間(黄)の最低値との関係性は、第1と第2緑発光蛍光体で形成される緑発光蛍光体の分光ピークを基準と置いた関係で比較的安定に論じることができる。ここで、第1と第2緑発光蛍光体は各々が分光分布のピークを有するがそれが、混光されたものが緑発光蛍光体の分光ピークである。
青と緑の間のスペクトル抑制の傾向は、青発光LEDと緑発光蛍光体の発光ピークの間に比較的狭い領域にスペクトル抑制帯域と分光パワーの最低値が形成されることから、分光分布の形状には、分光パワーが狭く深い形で抑制された傾向が生じる。また、青と緑の間のスペクトル抑制の傾向は、緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の発光ピークの間に比較的広い領域にスペクトル抑制帯域と分光パワーの最低値が形成されることから、分光分布の形状には、分光パワーが広く浅い形で抑制された傾向が生じる。
以上から、LEDと各種蛍光体の分光分布が最終的に混光された分光分布の形状は、三波長域発光形蛍光ランプとは異なる、固有の特徴を有し、青発光LED用の蛍光体に即したスペクトル抑制帯域と発光の集中部が形成される。
また、各種検討結果の中から良好な結果を示した分光スペクトルの関係からは、緑発光蛍光体の分光ピークに対し青と緑の間の最低値の分光パワーは9/10以下から5/10以下まで任意に分光パワーは低い方が望ましく、緑発光蛍光体の分光ピークに対し緑と赤の間(黄)の最低値の分光パワーは99/100以下や95/100以下のような非常に分光分布の谷形状の浅い状態から、より好適には9/10以下から5/10以下まで任意に分光パワーは低い状態が望ましい。
実施において、蛍光体の濃度が高い場合などは、分光分布の山谷形状が埋まる傾向がある。 また、ハイパワーLEDでの実施において蛍光体の温度が非常に高い場合などは、蛍光体の温度特性による消光や、発光ピークのシフトにより同じく山谷の特徴を減じる傾向が生じることもあるが、本発明においては別記する第1と第2の蛍光体の調整でその傾向を回復させることが可能である。
(2)相関色温度に対応し、混光比率を調整した事例
実施例1の典型的な組み合わせ、青発光LEDピーク波長445nm、第1緑発光蛍光体BaSi2O2N2:Eu 「Sample B」、第2緑発光蛍光体Lu3Al5O12:Ce「Sample D」、赤発光蛍光体(Sr,Ca)AlSiN3:Eu「Sample L」を使用した構成である。
具体的には、相関色温度が高くなるほど第1緑発光蛍光体の光束比を高める傾向で調整している。このように、相関色温度に合わせて第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比を調整することで、忠実な色再現性と高彩度な色再現性のバランスの調整をより広い相関色温度の範囲で連続的に実現することができる。
図31から図34、図27、図28などは演色の傾向を例示するため、第1と第2緑発光蛍光体の混光比率を固定して表現していた。しかし、本発明は、本来、同一色度で第1と第2緑発光蛍光体の混光比率を変化させることが可能な特徴を有しているため、実施においてこの比率を変化させた事例を示す。
つまり、混光比率を相関色温度に従い変化させれば、混光比率を固定して各種相関色温度を実現する場合より、さらに広い色度範囲にわたって、より好適な演色結果をスムーズに?いだ結果が得られ、その改善効果は広い色度範囲に得られるものとなる。
また、本事例ではDuvが0で相関色温度方向に比率を変化させたものを代表に例示しているが、原理上、Duvがプラス側、マイナス側でも同様な調整が可能なことは自明である。
これら検討から、既存のRaやRi、またはGaだけでなくRiのバラつき範囲RiレンジやRa4、Ga4、などの新たな指標も、より、好ましい方向に改善が出来ることが見出された。
基準の光が完全放射体(黒体放射)の場合や合成昼光の場合などに渡る、広い相関色温度や色度範囲で、平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9〜R12が50以上、かつ、その平均値Ra4が50以上、R13とR15が85以上、色域面積比Gaが90以上などのごとく、演色性の改善が実現可能である。
(3)Duvの変化
実施例1の典型的な組み合わせ、青発光LEDピーク波長445nm、第1緑発光蛍光体BaSi2O2N2:Eu 「Sample B」、第2緑発光蛍光体Lu3Al5O12:Ce「Sample D」、赤発光蛍光体(Sr,Ca)AlSiN3:Eu「Sample L」を使用した構成である。図27、図28、図29に対応した第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比1:9に固定の状態を基本にDuvを変化させた場合の実施を示す。
図37は、典型的な実施例の構成でDuvを変化させたときの分光分布の変化を示す図である。 図は光束比1:9に固定の状態で、同図上欄は6700K、中欄は5000K、下欄は2700Kで、Duvの変化により分光分布の形状が変化する様相を示している。
一般には、Duvがプラスの場合、同等の相関色温度のDuvが0近傍の状態と比較すれば、光色が緑みを増し、赤発光蛍光体の分光パワーが低下するので、Raが減少する傾向を生じやすい。
また、赤の色再現を高彩度に保つべく設計された既存の高彩度型光源はDuvがマイナス側の色度領域にあることが多い。
本発明では第1と第2緑発光蛍光体の光束比を固定した図37に対し、Duvによらず同一色度でも第1と第2緑発光蛍光体の光束比を変化させることで、図24で例示するごとく、赤の発光ピークを含め、系統的な分光分布の形状の調整が可能である。Duvがプラスの場合でも、第1緑発光蛍光体の光束比を高め赤発光蛍光体の発光ピークを高めてRaやR9を維持することができる。また逆に、Duvがマイナスの場合でも第1緑発光蛍光体の光束比を低めることで、過剰に高彩度となることを抑制することでRaを向上させて忠実演色性を優先させることができる。
次にこれを詳細に説明する。
図38と図39の比較から光色が緑みを帯びるDuvがプラス側においても第1緑発光蛍光体の光束比を高めることにより演色特性の向上が見て取れ、R1-R15のレンジや特に赤の演色評価と連動するR9にも見て取れる。
図40と図41からは光色が紫みを帯びるDuvがマイナス側においては、元々、赤みの分光パワーが大きいため第1緑発光蛍光体の光束比がほぼ無い状態でも評価値は高い傾向が生じていることが判る。ここで、図42のDuvが−0.01、光束比0.2:9.8の場合の各指標の評価値を示す図と比較する。図42は図40の光束比0:10や図41の光束比1:9より各種評価値が向上していることが判る。つまり、Duvがプラス側では第1緑発光蛍光体の光束比を高めDuvがマイナス側では第1緑発光蛍光体の光束比が低めの方向の調整が好適な結果を生じせしめていることが判る。
また、図43は、実施例1でDuvが0.01、光束比1:9の場合、図44は、実施例1でDuvが−0.01、光束比が1:9の場合の特性を示す図である。
さらに、図45は、実施例1でDuvが0.01、光束比0:10の場合、図46は、実施例1でDuvが−0.01、光束比が0:10の場合の特性を示す図である。図45と図46は、いずれも第1緑発光蛍光体が無い、または、ほぼ0の場合の比較事例である。
ここで、Duvが大きくマイナス−0.01の時の各種評価値の事例である図40と図41を勘案すると、光束比0:10の場合に対し光束比1:9の場合の各種評価の変化において、R9の値は相関色温度が高い領域で低下しているのは、基準光の演色より赤の見えが高彩度側に変化したためであるということが判る。また、このような高彩度な好ましい効果演色の変化は単純にR9の数値向上だけを検討していては捕らえられない変化である。
(3.1)Duvプラス側
Duvが大きくプラス側の0.01において、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比が異なる図38の0:10と、図39の1:9を対比させる。第1緑発光蛍光体が無い場合である光束比0:10の場合は、一般的な傾向に同じく赤の見えの彩度が低下しR9の低下が大きい。また、R1-R15のレンジが大ききく各種Riの評価数のバラツキが大きい傾向に有る。 これに対し、光束比1:9の場合は、赤の見えR9が大きく改善されている。また、R1-R15のレンジが小さくなる傾向に有る。加えて、R13やR15などに代表される肌の見えの評価数が大きく改善していた。また、特に相関色温度が高い領域でGaやGa4が高まり、Raの数値が向上している。
ここで、また、他の例のごとく第1と第2の緑発光蛍光体の光束比を固定せず、相関色温度やDuvによって調整すれば、より良好な結果が得られることは自明である。
例えば、光束比0:10(光束比ほぼ0:10)の場合、やはり相関色温度が低い側でRaなどの評価数が向上する傾向は保持されているので、相関色温度が低い場合は第1の緑発光蛍光体の光束比を低め、相関色温度が高い場合は第1の緑発光蛍光体の光束比を高める調整を行えば良い。
(3.2)Duvマイナス側
Duvが大きくマイナス側の−0.01において、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比が異なる状態を、図40の光束比0:10と、図41の光束比1:9で対比させる。
そもそも、高彩度型の光源に多い傾向にあるDuvが大きくマイナス側に光色が有るため、赤の分光パワーが増加し、第1緑発光蛍光体が無い0(ないしはほぼ0)の場合でも各指標の評価は高まっている。これに対し、光束比1:9の場合は、R9の数値が相関色温度の高い領域で低下している。図41ではR9の評価数が最大になるのは相関色温度3000K近傍の領域であるが、このときGa4が100近傍である。また、R9の数値が低下する相関色温度が高い側へ向かってGaやGa4が、第1緑発光蛍光体が無い場合よりも高くなっている。つまり、赤の見えを指標するR9の数値上の低下は、基準の光を超えて鮮やかに演色されたためであり、R9は数値が低下してもR9の演色評価が高い傾向にある。
これに対し、図46のDuv−0.01で光束比0:10に示す第1緑発光蛍光体が無い場合は、U*V*平面上の色域がU*軸方向の正負に縮小した様相を示している。
また、前記色域の状態は、RaやR9が低下しても高彩度の効果演色を目的とする高彩度型光源としては望ましい状況である。 しかし、あえてDuvがマイナスの状況では通常は得にくい忠実演色の傾向を、RaやR9の数値向上として行なう場合、例えば第1緑発光蛍光体の混光比率を低下させる調整を行えば良い。事例として図42の光束比が0.2:9.8の場合では、RaやRa4などのRiの数値向上を示す指標の数値が向上していることが判る。Duvがマイナス側は元々、赤発光の分光パワーが大きく高彩度な演色を得られやすい領域であるため、第1緑発光蛍光体の混光比を低めに設定すれば、Raを高める傾向を強め忠実演色性が優先された調整ができることが判る。さらに本事例では元々Raを高める傾向の第2緑発光蛍光体が選択されているため、この傾向は強く現れている。
このように、本発明の効果はDuvの変化に関わらず体系的に保持されている。
さて、Duvがマイナス領域は元々、分光分布に赤発光が多く含まれる紫みの光色なので、第1緑発光蛍光体が無くとも、Duvがマイナスへ向かうほど徐々に色域は広がりを持つ傾向となる。
本発明で選定されている、第2緑発光蛍光体は、それだけでも従来の黄発光蛍光体(標準的なYAG)より短波長成分が多い設定がなされている。このため、同一色度で、本発明の第2緑発光蛍光体の代わりに黄発光蛍光体(標準的なYAG)を使用するよりも赤発光のスペクトルが多く配分されている。ちなみに、図90は本事例の第1緑発光蛍光体が無い場合のDuv0に相当し、対応する黄発光蛍光体(標準的なYAG)の結果は図4である。
また、第1と第2緑発光蛍光体の光束比1:9に固定しDuvを変えた場合を、図43のDuv0.01と図44のDuv−0.01の特性比較の図などで比較しても、Duv変化に伴う色域の形状変化の傾向は広い範囲で系統性を持って保持されていることが判る。
ここで、さらに注目すべきは、本発明の第1と第2緑発光蛍光体の光束比を同一とし、同一の相関色温度でDuvがプラス側からマイナス側に変化する場合の色域の形状変化である。つまり、基本的にDuvの変化方向に対しても本発明の系統的な色域形状の変化の傾向が保持されていることである。これにともない、Duvが異なっても第1と第2の緑発光蛍光体の混光比率を変化させれば、類似傾向の色域の形状変化を系統だって調整可能という基本特性が備わっている。よって、例えば各種光色ランクの上限や下限の近傍の色度でも本発明が実施可能となる。
これにより本発明は、相関色温度が変わりDuvが変わっても系統的な傾向が保持できており、その中で、第1と第2の緑発光蛍光体の混光比を変化させれば系統的な傾向を有した演色調整が行えるものであることが判る。また、本発明で示された、各数値パラメータは連続的であり任意数値に調整してもその傾向は維持されることが判る。
さらに例えば、相関色温度を同じくしてDuvを変化させた場合も、第1と第2の緑発光蛍光体の混光比を変化させればより好適な解が連続的に得られることも同様である。
(4)LEDピーク波長の変化
実施例1の典型的な組み合わせで、青発光LEDの分光分布のピーク波長が変化した場合を示す。第1緑発光蛍光体はBaSi2O2N2:Euの系「Sample B」、第2緑発光蛍光体はLu3Al5O12:Ceの系「Sample D」、赤発光蛍光体は窒化物蛍光体の、(Sr,Ca)AlSiN3:Euの系「Sample L」の事例である。
また、この場合は第1緑発光蛍光体の光束比は低いほうが好ましく、R9〜R12の特殊演色評価数のばらつきのレンジは小さくなる傾向が生じる。特に、青発光LEDのピーク波長が長波長側に変化した場合に高彩度な青色の色再現性を指標するR12の数値が低下する傾向にある。しかし、GaとGa4の関係を見ると、青発光LEDのピーク波長が460nmの場合は、青発光LEDのピーク波長が短波長側にある場合と異なり、色域の大きさの関係が反転し、GaよりGa4の方が大きい状態で鮮やかに演色された状態となる。これは、R12の色票の反射率のピークが460nm〜470nm近傍に存在しているためである。この場合、R12の数値は低下しているが、その理由は、高彩度色の色域が大きくなり鮮やかな青みの演色がなされたことによる。ここで、Ga4が大きくなる傾向を抑制し忠実な色再現を優先するには、第1緑発光蛍光体の光束比を低めに調整すればよいこと、または、選定する青発光LEDのピーク波長を455nm以下のように短波長化すればよいことが分かる。
以上の通り、実施例1では、青発光LEDのピーク波長が変化しても演色性を評価する各指標が従来のLED光源の比較例(図3、図4)に比べて改善された傾向を保っていることが分かる。また、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の機能が分離されているため、その光束比を調整することで、色再現バランスを調整することができる。何をどのように調整すれば、どの評価指標がどのように変化するかという体系的な理解が同様に得られる。従って、青発光LEDのピーク波長の変化に対しても目的の色度の目的の演色性の光源装置を容易に設計することができる。
(5)第2緑発光蛍光体の変化
実施例1の典型的な組み合わせで、第2緑発光蛍光体の変化に伴う実施を述べる。
青発光LEDの分光分布のピーク波長は445nm 、第1緑発光蛍光体はBaSi2O2N2:Euの系「Sample B」、赤発光蛍光体は窒化物蛍光体の(Sr,Ca)AlSiN3:Euの系「Sample L」において第2緑発光蛍光体を変化させた事例である。
第2緑発光蛍光体が変化しても本発明の傾向は共通であり、以下のような状況であった。
さらに、特殊演色評価色票で構成されU*V*平面上にプロットされた色域の多角形がU*軸方向に色域が小さい状況にある。
さらに第1と第2緑発光蛍光体の混光比率を、相関色温度が高いほど第一の蛍光体の混光比率が高まるように混光すると、広い相関色温度帯域で演色特性が高まる。色域の多角形の形状を見てみると分光ピークの山谷が存在している場合に良好な結果を生じる傾向を生じ、全体の演色特性の傾向が広く好適に保たれている。事例としては本発明の範囲で蛍光体の選択範囲の柔軟性を示すべく、比較の為に第1と第2緑発光蛍光体の混光比率を固定した代表例を中心に示している。
(5.1)Lu3Al5O12:Ce 系の事例
第2緑発光蛍光体としては、ガーネット系蛍光体、具体的には、Lu3Al5O12:Ceを使用した例を示す(以下、「Sample G」と表記する場合がある)。Sample Gは、Sample Dと一般式は同じであるが基本組成の一部が置き換えられたもので、発光スペクトルが異なる事例である。Sample Gのピーク波長は約540nmであり、半値幅は約105nmである。
図52でも従来のLED光源の比較例(図3、図4)に比べて色再現性が改善されていることが分かる。また、図51と図52を比較しても、第1緑発光蛍光体が、ほぼ0から増加することで各種指標の評価値が向上していることが判る。
(5.2)Y3(Al,Ga)5O12:Ce系の事例
第2緑発光蛍光体としては、ガーネット系蛍光体、具体的には、Y3(Al,Ga)5O12:Ceを使用した例を示す(以下、「Sample E」と表記する場合がある)。Sample Eのピーク波長は約545nmであり、半値幅は約115nmである。
図55、図56から、従来のLED光源の比較例(図3、図4)に比べて色再現性が改善されていることが分かる。また、図54と図55、図56を比較しても、第1緑発光蛍光体が加わることで各種指標の評価値が向上していることが判る。
また、前記の場合も、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、青緑間の分光パワーの最低値は、90%以下である。具体的には、光束比が1:9の場合、6700Kで30%、5000Kで26%、2700Kで15%である。光束比が2:8の場合、6700Kで27%、5000Kで24%、2700Kで12%である。また、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、緑赤間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が完全放射体の光の場合に99%以下であり、演色評価の基準の光がCIE昼光の場合に95%以下である。具体的には、光束比が1:9の場合、6700Kで77%、5000Kで95%、2700Kで97%である。光束比が2:8の場合、6700Kで61%、5000Kで62%、2700Kで65%である。色域の多角形について、第1緑発光蛍光体の光束比が高まるほど、比較例に比べてU*軸方向に拡大され、その結果、基準の光の色域の多角形の形状に近づいている(図57中欄および下欄)。
(5.3)Y3Al5O12:Ce系の事例
第2緑発光蛍光体としては、ガーネット系蛍光体、具体的には、Y3Al5O12:Ceを使用した例を示す(以下、「Sample F」と表記する場合がある)。Sample F は従来のLED光源の比較例(図3、図4)で示された標準的なYAG蛍光体と一般式は同じであるが基本組成の一部が置き換えられたもので、発光スペクトルが異なり、短波長側に発光ピークのある本発明のYAG蛍光体の事例である。
図58は、光束比0:10の場合の各指標の評価値を示す図である。図59は、光束比1:9の場合の各指標の評価値を示す図である。図60は、光束比2:8の場合の各指標の評価値を示す図である。図61は、光束比2:8の場合の特性を示す図である。
図59、図60から、従来のLED光源の比較例(図3、図4)に比べて色再現性が改善されていることが判る。また、図58と図59、図60を比較しても、第1緑発光蛍光体が加わることで各種指標の評価値が向上していることが判る。
また、図61においても、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、青緑間の分光パワーの最低値は、90%以下である。具体的には、光束比が1:9の場合、6700Kで30%、5000Kで26%、2700Kで15%である。光束比が2:8の場合、6700Kで27%、5000Kで24%、2700Kで13%である。また、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、緑赤間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が完全放射体の光の場合に99%以下であり、演色評価の基準の光がCIE昼光の場合に95%以下である。具体的には、光束比が1:9の場合、6700Kで77%、5000Kで89%、2700Kで93%である。光束比が2:8の場合、6700Kで57%、5000Kで59%、2700Kで62%である。色域の多角形について、比較例に比べてU*軸方向に拡大され、その結果、基準の光の色域の多角形の形状に近づいている(図61中欄および下欄)。また、色域の多角形は、第1緑発光蛍光体が無く第2緑発光蛍光体「Sample F」のみの場合に比べてもU*軸方向に拡大されている。第1緑発光蛍光体が無く第2緑発光蛍光体「Sample F」のみの場合の色域の多角形は、図91中欄および下欄に示されている。
(5.4.1)YAG系以外の事例 CaSc2O4:Ce の系
第2緑発光蛍光体としては、酸化物蛍光体、具体的には、CaSc2O4:Ceを使用した例を示す(以下、「Sample J」と表記する場合がある)。Sample Jのピーク波長は約520nmであり、半値幅は約100nmである。Sample Jの発光スペクトルは図19に示されている。Sample Jは、半値幅が広帯域(75nm以上125nm以下)の蛍光体の一例である。
図62、図63から、第1緑発光蛍光体の光束比が増えるにつれ色再現性が改善されていることが分かる。
(5.4.2)YAG系以外の事例 La3Si6N11:Ceの系
第2緑発光蛍光体としては、窒化物蛍光体の系、具体的には、La3Si6N11:Ceを使用した例を示す(以下、「Sample K」と表記する場合がある)。Sample Kのピーク波長は約540nmであり、半値幅は約125nmである。Sample Kの発光スペクトルは図19に示されている。Sample Kは、半値幅が広帯域(75nm以上125nm以下)の蛍光体の一例である。
図65と図66を比較しても、第1緑発光蛍光体の光束比の増加で色再現性が改善されていることが分かる。
(6)第1緑発光蛍光体の変化
実施例1の典型的な組み合わせで、第1緑発光蛍光体の変化に伴う実施を述べる。
第1緑発光蛍光体として比較的半値幅が広い場合の事例をアルミネート系蛍光体AE4―Al14O25:Euの系Sr4Al14O25:Euのバリエーションを使用した場合の分光分布検討の結果を示す。使用したSr4Al14O25:Eu(以下、「Sample A」と表記する場合がある)のピーク波長は約490nmであり、半値幅は約70nmである。Sample Aの発光スペクトルは図17に示されている。
図68は、光束比0:10の場合の各指標の評価値を示す図である。図69は、光束比1:9の場合の各指標の評価値を示す図である。図70は、光束比1:9の場合の特性を示す図である。
また、図70においても、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、青緑間の分光パワーの最低値は、緑赤間の分光パワーの最低値よりも低い。全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、青緑間の分光パワーの最低値は、90%以下である。具体的には、6700Kで49%、5000Kで45%、2700Kで29%である。また、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、緑赤間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が完全放射体の光の場合に99%以下であり、演色評価の基準の光がCIE昼光の場合に95%以下である。具体的には、6700Kで76%、5000Kで80%、2700Kで87%である。色域の多角形についてもやはり、比較例に比べてU*軸方向に拡大され、その結果、基準の光の色域の多角形の形状に近づいている。
(6.2)第1緑発光蛍光体として発光ピーク波長が長波長に変移した場合
第1緑発光蛍光体として、珪素系蛍光体、具体的には、(Ba,Sr)2SiO4:Euを使用した結果を示す(以下、「Sample C」と表記する場合がある)。第1緑発光蛍光体としては長波長側に発光ピークがあるSample Cのピーク波長は530nmであり、半値幅は70nmであり、発光スペクトルは図17に示されている。
図71は、光束比5:5の場合の各指標の評価値を示す図である。図72は、光束比5:5の場合の特性を示す図である。
さらに第1緑発光蛍光体が無い場合は図68と同等であるが、これに対しても色再現性が改善されていることがわかる。 第1緑発光蛍光体のピーク波長が比較的長波長側にあるものにおいては、色再現性を高めるために、混光される光束比を高める傾向があることが判る。これは、第1緑発光蛍光体の発光ピークが比較的長波長側に有り500nm近傍の分光パワーが少ない分光分布の形状の場合、その分光パワーを確保することが難しくなるためである。
ここで、さらに、第1緑発光蛍光体として、(Ba,Sr)2SiO4:Eu「Sample C」を使用し、第2緑発光蛍光体も変更し、ガーネット系蛍光体、具体的にはYAG蛍光体のY3Al5O12:Ce「Sample F」を使用した実施例を示す。
図73は、光束比7:3の場合の各指標の評価値を示す図である。
これにおいても、第1緑発光蛍光体が無い場合の図58に比較して、各指標の値が改善方向に変化することが判る。また、第2緑発光蛍光体としてYAG蛍光体のY3Al5O12:Ce「Sample F」は、LuAG蛍光体のLu3Al5O12:Ce「Sample D」より500nm近傍の短波長成分が少ない。このため、第1と第2緑発光蛍光体とも比較的短波長成分の少ない蛍光体同士の組み合わせとなり、より、第1緑発光蛍光体の混光の光束比が増える傾向にある。
第1緑発光蛍光体のピーク波長が長波長に寄っている場合、その光束比を高めに設定する方がR9の向上が大きくなる傾向を生じる。また、第2緑発光蛍光体が、長波長領域に分光パワーが多い傾向にある場合も同様である。第2緑発光蛍光体の中でも長波長側に分光パワーが大きいものを使用するほうが、演色特性の調整の幅が大きくなる傾向を生じる。
(7)赤発光蛍光体の変化
実施例1の典型的な組み合わせで、赤発光蛍光体の変化に伴う実施を述べる。
(7.1)赤発光蛍光体のピーク波長の変化
赤発光蛍光体として、比較的長波長側に発光ピークを有する事例として、窒化物蛍光体であるCaAlSi(ON)3:Euの系「SampleN」を使用した事例である。
先ず、比較のため第1緑発光蛍光体BaSi2O2N2:Euの系「Sample B」と第2緑発光蛍光体Lu3Al5O12:Ceの系「Sample D」の光束比を相関色温度によって変化させながら実施した場合の結果を示す。
具体的には、相関色温度が高くなるほど第1緑発光蛍光体の光束比を高めている。このように、相関色温度に合わせて第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比を調整することで、忠実な色再現性と高彩度な色再現性のバランスの調整を広い相関色温度の範囲で実現することができる。
(7.2)赤発光蛍光体を2種使用する変形例
ここで、本発明に使用する赤発光蛍光体を2種以上使用し、その混光比率も可変させる実施を述べる。
基本的に、青発光LEDと第1と第2の蛍光体の種類を変えない場合、より長波長側に発光ピークが存在する赤発光蛍光体を使用すると、相関色温度の低い領域で各種評価が向上していることが判る。
各種視感度が低い長波長領域で分光分布の形状に類似性の高い赤発光蛍光体の組み合わせは、結果のスムーズな変化を生じさせやすい。
従来、青発光LEDと3種以上の蛍光体を使用する場合、得られる結果の分光分布の山谷が埋まり、基準の光の分光分布に近づくため、広い条件でRaやRiの数値は向上する。それゆえ、3種以上の蛍光体での混光ルールを見出すことは困難であり、RaやRiの数値上の上昇傾向が、そもそも高演色化の傾向と相関していたか、また色度が変化した場合も系統性を有して有効な条件かも不明となる。しかし、本発明のごとく、より詳細な評価法や、基本的な原理に基づく各種蛍光体の機能分担と分光分布の傾向が把握され、最終的に得られる全体の分光分布の傾向が掌握されている場合、単体の第1緑発光蛍光体、第2緑発光蛍光体、赤発光蛍光体の分光分布を模擬するように、それを複数の蛍光体の分光分布の合成で模擬し、擬似的に前記の単体の蛍光体として扱えば、より複数の蛍光体で本発明を実施することが出来る。よって、前記のような変形例は本発明の範疇にある。
(7.3)他のピーク波長を有する赤発光蛍光体の例
赤発光蛍光体として、さらに長波長側に発光ピークを有する他の窒化物蛍光体の事例を示す。具体的には、CaAlSiN3:Euのバリエーションを使用している(以下、「Sample O」と表記する場合がある)。Sample Oのピーク波長は約650nmであり、半値幅は約95nmである。Sample Oの発光スペクトルは図21に示されている。Sample Oのピーク波長は、Sample Nのピーク波長よりも長波長側に有る。
図75でも従来の黄色発光蛍光体である標準的なYAG蛍光体の比較例(図3、図4)に比べて各種演色特性が良化している。また、実施例1の代表的な組み合わせ図27、図28と比較すると、赤発光蛍光体をより長波長化したことに伴い色域の多角形がU*軸方向に拡大され、その結果、R9の低下はあるが、赤の見えが非常に鮮やかな高彩度型光源の演色傾向が保持されていることが判る。
記載は省略したが、第1と第2の緑発光蛍光体の光束比1:9の固定条件において、赤発光蛍光体のピーク波長が約650nmの図76と、赤発光蛍光体のピーク波長が約625nmの図29の色域の関係の中間に、前記赤発光蛍光体のピーク波長が約635nmのCaAlSi(ON)3:Euの系「SampleN」における第1と第2の緑発光蛍光体の光束比1:9の色域の関係色域の結果が相当していることは言うまでも無い。
例えば、青発光LEDが長波長側にあるものとの組み合わせ、第1と第2の緑発光蛍光体の発光ピークが比較的長波長側にあるものとの組み合わせが比較的有利である。
さらに、他の赤発光蛍光体との組み合わせで前記傾向を述べる。
図77は光束比0.5:9.5の場合の特性を示す図であり、使用された赤発光蛍光体は図21に示されるピーク波長が約645nm、半値幅が約105nmの他の窒化物蛍光体「sample P」の事例である。組み合わされる赤発光蛍光体は図21の名称表示で上から3番目の事例、具体的にはCaAlSi(ON)3:Euのバリエーションである。
第1と第2緑発光蛍光体の光束比を固定し、比較的好適な実施で比較すると、赤発光蛍光体の発光ピークが長波長側にある場合は、第1緑発光蛍光体の光束比が低い場合が好ましく、赤発光蛍光体の発光ピークが短波長側にある場合は、第1緑発光蛍光体の光束比が高い場合に好ましい傾向を生じることがわかる。
前記の場合、本発明ではRaやRiの値が低くとも、GaやGa4が従来光源より大きく、色域の多角形がU*軸方向に広がる高彩度傾向を予め内包しているため、高彩度型の光源として良好な傾向を有す。
以上のごとく、本発明では、単に3種以上の蛍光体と青発光LEDとの組み合わせで適宜Raが高まるといったものとは異なり、緑発光蛍光体を第1と第2に効率よく機能分解しその混光比率可変を実現することで、他の要因の変化に対し、非常に適応性の高い実施か、U*V*平面上にプロットされた色域について、U*軸方向に色域が増加する共通の傾向を内包しながら実現可能であることが判る。
本実施例は、これら適応性の高さの特性を示すべく例示したものであり、例にとどまらず、本発明において演色の傾向が広く保持され実施可能である。
なお、非常に蛍光体相互の吸収が大きくなる蛍光体の実装状態において、LEDと各々の蛍光体の発光ピークの間の分光分布の谷が埋まる傾向にあったが、青発光LEDおよび蛍光体が混光された分光分布において、前記青発光LEDの発光ピークと前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間に存在する分光パワーの最低値は、前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体による発光ピークとの間に存在する分光パワーの最低値の分光パワーより低い。
さらには、前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体との間に存在する分光パワーの最低値は、前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークに対し、演色評価の基準の光が合成昼光である場合、前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの95%以下であり、演色評価の基準の光が黒体放射である場合、前記緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの99%以下であり、これらは適宜より低い場合が好ましい結果を生じた。
<実施例2>
第2緑発光蛍光体としては比較的中帯域な蛍光体を使用した事例である。
青発光LEDは窒化ガリウム系のLEDであり典型的なピーク波長445nmを使用した一例である。
前記組み合わせを実施例2の典型的な組み合わせとする。
図79は、光束比0:10の場合の各指標の評価値を示す図である。図80は、光束比1:9の場合の各指標の評価値を示す図である。図81は、光束比1:9の場合の特性を示す図である。
具体的には、実用的な相間色温度の範囲においてRaは80以上、Ra4が50以上、R13が85以上、R15が85以上である。
また、図81から全体の分光分布において、青緑間の分光パワーの最低値と緑赤間の分光パワーの最低値の関係は、青緑間の分光パワーの最低値が、緑赤間の分光パワーの最低値よりも低い。また、全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、青緑間の分光パワーの最低値は、90%以下である。具体的には、6700Kで25%、5000Kで21%、2700Kで14%である。また、好ましくは全体の分光分布における緑発光の分光分布のピークに対し、緑赤間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が完全放射体の光の場合に99%以下であり、演色評価の基準の光がCIE昼光の場合に95%以下である。具体的には、6700Kで57%、5000Kで61%、2700Kで73%である。色域の多角形について、実施例2は、比較例に比べてU*軸方向に拡大され、その結果、基準の光の色域の多角形の形状に近づき僅かにそれを上回っている(図81中欄および下欄)。
これは、第2緑発光蛍光体の半値幅が狭い場合、U*V*平面上の色域は、第2緑発光蛍光体の発光ピークの長波長化に伴いV*軸方向の幅が拡大するように変化するためである。また、このような場合、同一色度において第1と第2の緑発光蛍光体の光束比の変化により、色域の形状の傾向を、V*軸方向の幅が広い形状から、U*軸方向とV*軸方向がバランスする形状、U*軸方向の幅が広い形状に変化させることが可能であり、忠実演色主体の色再現と、高彩度型の効果演色主体の色再現のバランスを広く調整することができる。
次に上記傾向をよく現す第2緑発光蛍光体の変更事例を示す。
第2緑発光蛍光体としては、窒化物蛍光体のSiAlON:Euの系を使用している(以下、「Sample I」と表記する場合がある)。Sample Iのピーク波長は約545nmであり、半値幅は約60nmである。Sample Iの発光スペクトルは図20に示されている。Sample Iは、半値幅が中帯域(45nm以上80nm以下)の蛍光体の一例である。
図83から比較例(図3、図4)や図82に比べて色再現性が改善されていることが分かる。具体的には、実用的な相間色温度の範囲においてRaは80以上、Ra4が50以上、R13が85以上、R15が85以上である。
第2緑発光蛍光体の半値幅が狭く発光ピークが長波長化している場合、第2緑発光蛍光体の光束比が増加するとV*軸方向の幅が大きく拡大するように変化するためである。また、このような場合、同一色度において第1と第2の緑発光蛍光体の光束比の変化により、色域の形状の傾向を、V*軸方向の幅が広い形状から、U*軸方向とV*軸方向がバランスする形状、U*軸方向の幅が広い形状に変化させることが可能であり、忠実演色主体の色再現と、高彩度型の効果演色主体の色再現のバランスを広く調整することができる。
つまり、半値幅の狭い第1緑発光蛍光体のみでの特性を示す図88ではU*V*平面上での色域は極端にU*軸方向の拡大を伴い、半値幅が狭く発光ピークが極端に長波長側に存在する第2緑発光蛍光体のみでの特性を示す図92ではU*V*平面上での色域はV*軸方向の拡大を伴う。また、その混光の間にある図84においては、双方の色域拡大効果がバランスし、U*軸方向に僅かに色域拡大傾向を有しながら基準の光の色域の形状に近づいている。
また、これら第2緑発光蛍光体に対応する半値幅の比較的狭い第2緑発光蛍光体はこの外にもSiONの系やβ-SiAlONの系などの窒化物系蛍光体や、Ba2SiO4:Euの系や(Ba,Sr)2SiO4:Euの系などの珪素系蛍光体に多様に存在する。
次に実施例2に対して、第2緑発光蛍光体と赤発光蛍光体を変更した事例を示す。
また赤発光蛍光体としては (Sr,Ca)AlSiN3:Euの系「Sample M」を使用している。Sample Mのピーク波長は約615nmであり、半値幅は約85nmである。Sample Mの発光スペクトルは図21に示されている。
図86は、比較例(図3、図4)や図85に比べて色再現性が改善されていることが分かる。具体的には、実用的な相間色温度の範囲においてRaは80以上、Ra4が50以上、R13が85以上、R15が85以上である。
<詳細説明>
以下、第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の光束比の調整により忠実な色再現性と高彩度な色再現性のバランスを調整する場合の詳細説明を行なう。実施例では、緑発光蛍光体が第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体を含むが、以下、緑発光蛍光体が第1緑発光蛍光体と第2緑発光蛍光体の一方のみを単独で使用したものである。図88から図92は第1と第2の緑発光蛍光体の混光比が1:0ないしは0:1の状態と等価で有り、緑発光蛍光体の混光比がほぼ0の場合も類似である。以下、各々の単独使用以外のを説明する。
図88は、第1緑発光蛍光体(Sample B)を単独使用した場合の特性を示す図である。Sample Bのピーク波長は約500nmであり、半値幅は約30nmである。
図89は、第1緑発光蛍光体(Sample C)を単独使用した場合の特性を示す図である。SampleCのピーク波長は約530nmであり、半値幅は約70nmである。
図91は、第2緑発光蛍光体(Sample F)を単独使用した場合の特性を示す図である。Sample Fのピーク波長は約545nmであり、半値幅は約110nmである。
図92は、第2緑発光蛍光体(Sample I)を単独使用した場合の特性を示す図である。Sample Iのピーク波長は約545nmであり、半値幅は約50nmである。
図90のごとく第2緑発光蛍光体が比較的半値幅が広く、発光ピークが比較的短波長側にあるものを使用した場合、基準の光による色域に近い色域の形状を有する。また、U*V*色度座標上で色域の形状を見ると僅かに、U*軸方向のプラス側(右側)にあるR1とR8に相当する色再現の色度が、少なくとも1箇所以上基準の光における色度よりU*軸方向のマイナス側(左側)に縮小している。また、U*軸方向のマイナス側(左側)にあるR4とR5とR6に相当する色再現の色度が、少なくとも1箇所以上基準の光における色度よりU*軸方向のプラス側(右側)に縮小している。前記傾向は第2緑発光蛍光体の発光ピークが長波長側によっている場合や、半値幅が狭い場合により顕著となる。
なお、前記の本発明の各蛍光体の単独の分光分布に対し、それに類する分光分布を得るため、2種以上の蛍光体を混ぜ合わせ、擬似的に本発明に使用する1種の蛍光体相当と扱う変則的な実施は可能であり、変則例として本発明の範囲に含まれる。前記変則を赤発光蛍光体で行なった場合の実施例がその1つの事例である。この他にも例えば、半値幅が比較的広い第2緑発光蛍光体を2種類の緑発光蛍光体で構成し非対称で短波長側に発光ピークを有する分光分布を有する単独の第2緑発光蛍光体として扱う変則的な実施も可能である。また、励起源であるLEDが複数の場合もピーク波長が異なるLEDが複数組み合わせ実施することも可能である。
<変形例>
(1)忠実な色再現と高彩度な色再現の演色調光
以下、忠実な色再現と高彩度な色再現の演色調光可能な照明システムについて説明する。
照明システム301は、直流電源302、第1光源装置303、第2光源装置304、トランジスタQ1、Q2および点灯装置305を備える。点灯装置305は、トランジスタQ1、Q2を制御することで、第1光源装置303と第2光源装置304との電流比を調整する。
図94(b)は、第2光源装置の構造を示す断面図である。第2光源装置304は、パッケージ12、引き出し電極13、青発光LED14、透明部材15、第2緑発光蛍光体17および赤発光蛍光体18を備える。
ここで、第1光源装置303の色度と第2光源装置304の色度を同一に構成する。また、第1光源装置303のU*V*平面上の色域のU*軸方向の幅は、第2光源装置304のU*V*平面上の色域のU*軸方向の幅よりも大きい高彩度な演色特性を有す。さらに、好ましくは、第1光源装置303のU*V*平面上の色域のV*軸方向の幅は、第2光源装置304のU*V*平面上の色域のV*軸方向の幅よりも小さい。
この構成により、第1光源装置303と第2光源装置304の光束比を調整することができる。第1光源装置303と第2光源装置304の色度は同一なので、光束比を調整しても第1光源装置303と第2光源装置304の混合光の色度は変化しない。一方、第1光源装置303と第2光源装置304の演色性は異なる。そのため、光束比を調整することで、第1光源装置303と第2光源装置304の混合光の混光比率を変えることで演色性を調整することができる。具体的には、忠実な色再現と高彩度な色再現の調整をすることができる。
さらに、照度と演色の変化を連動させることも可能である。被照明物を低照度から高照度に調光して照明する場合、第1光源装置303と第2光源装置304の混合光の全体の光出力を変化させながら混光比率を変えることで、低照度に照明する場合は暗くなることによる被照物の色みの鮮やかさ低下を是正するように、前記、第1光源装置303の混光比を高めることが可能である。また、逆に、照度が低くなった場合、被照明物の色がより暗く沈んで見えるように、前記、第1光源装置303の混光比を低めることが可能である。
なお、第1光源装置303の相関色温度と第2光源装置304の相関色温度を異ならせてもよい。例えば、第1光源装置303の相関色温度が高く、第2光源装置304の相関色温度が低いこととする。この場合、第1光源装置303と第2光源装置304の混合光の相関色温度が高い場合に、忠実な色再現よりも高彩度の色再現を重視した演色性を実現することができる。逆に、混合光の相関色温度が低い場合に、高彩度な色再現よりも忠実な色再現を重視した演色性を実現することができる。なお、逆に、第1光源装置303の相関色温度が低く、第2光源装置304の相関色温度が高くてもよい。
以上、本発明では照度の調光、色度の調光に加え、統一的な傾向を有す演色の調光とその連動制御が可能となる。
(2) 光源装置の構造
実施の形態では、光源装置の一例として図16のLED光源を挙げているが、本発明はこれに限らない。青発光LED、第1緑発光蛍光体、第2緑発光蛍光体および赤発光蛍光体を具備していれば、どのような構造でも構わない。例えば、図95に示すLED光源21のようなCOB型でもよい。LED光源21は、回路基板22、配線パターン23、青発光LED24、透明部材25、第1緑発光蛍光体26、第2緑発光蛍光体27および赤発光蛍光体28を備える。また、砲弾型のLED光源などの別の形状をとっても良い。さらに、光源装置として青発光LEDと蛍光体が分離配置されていても照明光として出射される光が最終的に本発明の分光分布の特徴を有する形態でも良い。
また、LEDのダイ(ベアチップ)を透明部材で封止し、その外側に蛍光体を配置するなどのリモートフォスファー(蛍光体の離間配置)構成を取ってもよい。さらには蛍光体が一体に形成されておらず別に配置されるリモートフォスファー(蛍光体の離間配置)構成を取ってもよい。
図97(a)は、直管形のLED照明装置101の例を示す。LED照明装置101は、直管状の透明部材102、口金103、基板104およびLED光源11を備える。この例では直管形蛍光ランプ状としているが、当然、円管形蛍光ランプ状などにも適用できる。
また、図97(c)は、箱状の光拡散チャンバーを有するLED照明装置121にLED光源11を適用した例を示す。LED照明装置121は、筐体122、基板123、光拡散部材ないしは透明部材124およびLED光源11を備える。
図98(a)は、直管型のLED照明装置201に青発光LEDを備えたLED光源31を利用する。LED照明装置201は、直管状の透明部材102、口金103、基板104、蛍光体層202およびLED光源31を備える。蛍光体層202は、第1緑発光蛍光体、第2緑発光蛍光体および赤発光蛍光体を含み、透明部材102の内面に形成されている。なお、蛍光体層202は、透明部材102の内面に限らず、外面に形成されていてもよい。さらに、透明部材102自体に第1緑発光蛍光体、第2緑発光蛍光体および赤発光蛍光体が含まれることとしてもよい。
さらには、蛍光体を層状ではなく、少なくとも一部をドットマトリックス状に配置しても良い。蛍光体の励起源であるLEDからの出射光が、蛍光体の配置部を通り、最終的な出射光として照明に供される過程で、各種蛍光体を混合した状態で配置しないことで、一種類の蛍光体から出射した光が、他の蛍光体に再吸収される割合を低下させることが可能となる。
<本発明の他の効果>
(1)Duv がマイナス側で高彩度な演色性の事例
既存の高彩度形ランプはDuvがマイナスの領域に存在することが多い。具体的には、Duvが−0.003〜−0.007の領域が使用されることが多い。あるいは、より特殊光色として―0.007以下のものも存在しDuvが−0.01〜−0.015近傍のものも用いられる。
次に、完全放射体軌跡(黒体放射軌跡)より下側のマイナスのDuvの色度領域で第2緑発光蛍光体が変化した事例を示す。
また、第1緑発光蛍光体は共通でBaSi2O2N2:Eu 「Sample B」のピーク波長は約495nm、半値幅は約30nmである。
また、赤発光蛍光体は共通で(Sr,Ca)AlSiN3:Eu「Sample L」のピーク波長は約625nm、半値幅は約80nmの事例である。
第2緑発光蛍光体を、Lu3Al5O12:Ce「Sample D」とした例を示す。
次に第2緑発光蛍光体を(Ba,Sr)2SiO4:Eu 「Sample H」とした例を示す。
また、図101は、変形例でDuvが−0.005、光束比2:8の場合の特性を示す図である。
これらは、一般的な相関色温度範囲でRaが80以上、Ra4が60以上、Gaが100以上を確保しながら、U*V*平面上でU*軸方向の幅が広い傾向を有している。Duvが−0.005近傍のようなDuvが低い領域でも、第1緑発光蛍光体の光束比を高めると、第1緑発光蛍光体がない場合よりU*V*平面上の色域のU*軸方向の幅が広がっていることが判る。Duvの値がマイナス側に低い場合に、第1緑発光蛍光体の光束比を低めに設定すると、Raの数値が高まるだけでなく、U*V*平面上で基準の光の色域に近い形状の色域を実現することが分かる。つまり、一般に高彩度型の傾向を生じRaやRiの数値が低くなり、Ri数値のバラツキが大きくなるる傾向が生じやすいDuvがマイナスの領域でもRaやRiで示される忠実演色の傾向に演色特性を制御することが可能なことが判る。また、一般的傾向のごとく色度がDuvがマイナス側に変移しただけの効果で高彩度傾向を生じせしめる効果を超えて、同一色度でより高彩度に演色特性を制御することが可能なこともわかる。
特に、Raなどの基準の光との忠実演色にこだわらない高彩度特性を優先した演色をDuvがマイナス側の光色でも強調することが可能である。また、Duvをマイナスに変位させることのみで高彩度特性を優先した光源を得る通常の場合よりも、Duvをマイナスに変移させる必要が無く高彩度特性を優先した光源を得るという実現も可能である。
(2)肌や葉の自然物の演色性
現在、特殊演色評価数で考慮されている肌や葉の自然物の演色性をより反映する検討において次のようなことが言える。
実際の葉、特に緑みの強い健常なものは葉緑素(クロロフィル:Chlorophyll)の分光反射特性を反映し広くは530〜550nm近傍に緑の分光反射ピークを持ち700nm近傍までは分光反射率が低い帯域を有することが多い。
R13においては実際の西洋人の肌の分光反射率のごとく520nm近傍から590nm近傍に分光分布反射率が低下する特性が考慮されておらず実際の西洋人の肌の分光反射率とは乖離が大きい。また、R14においては同等の三刺激値を有する平均的な植物の分光反射率より550nm近傍の分光反射ピークから700nm近傍までの分光反射率が低い帯域の反映と700nm以降の分光反射率の高い帯域の反映に誤差が多い。
そこで、従来に無い分光分布を有する光源を検討する際に、R13やR14の指標の分光反射率と実際の自然物の分光反射率の差を検討しておく必要がある。
これらの演色評価に用いられることの多い自然対象物の分光反射率を、図103、104に示す。図103は、自然対象物としての肌の分光反射とR13の典型的な差を示す。図104は、自然対象物としての葉の分光反射とR14の典型的な差を示す。
ここで、R13とR14の色票の分光反射率と、それに対応する実際の自然物の分光反射率の差異に共通する傾向は、550nm近傍から600nm近傍までの黄みのスペクトル帯域の反射率の差であり、その帯域の反射率は、実際は低いことである ここで、既存光源において580nm近傍の黄みのスペクトルを吸収するネオジウムガラスと各種光源を組み合わせたランプ(ネオジウム電球が最も一般的であるが、HIDや蛍光ランプでの事例も見られる)が実用化され、被照明物の黄ばみ少なく好ましく見えるということ効果は一般に知られている。
本発明において、550nm近傍から600nm近傍はスペクトル抑制帯域に相当するため、この波長帯域を抑制することで、実際の「肌」や「葉」の分光反射特性の特徴を強調する傾向が得られる。また、色票と実際の自然対象物との間に存在する誤差が繰り込まれる割合を減じることができる。これらにより、「黄ばんだ印象」、「くすんだ印象」の形成が抑制され、好ましい方向への演色効果が得られる。
本発明では多様な肌や葉の分光反射率をRiに当てはめ各種検討したが、一般的な指標を例にその傾向を示す。
肌のRiにおいて例示のR13、R15は現行の分光反射率を使用したもの。
Rs(Dark Skin)はMacbeth Color Checkerの(Dark Skin)の色票の反射率であり実際の暗い肌の人種の分光反射率に近いもの。
Rs(Light Skin)はMacbeth Color Checkerの(Light Skin)の色票の反射率であり実際の明るい肌の人種の分光反射率に対し現行のR13よりも近いもの。
葉のRiにおいて例示のR14は現行の分光反射率を使用したもの。
Rf(Foliage)はMacbeth Color Checkerの(Foliage)の色票の反射率でありR14とは別に葉の分光反射率を参照されながら作られたもの。
図2に示す三波長域発光型蛍光ランプの分光分布で各Riを計算した事例
6700Kにおいて
R13=95、R15=98、R13'=89、Rs(Dark Skin)=85、Rs(Light Skin)=98
R14=71、R14'=68、Rf(Foliage)=80
5000Kにおいて
R13=97、R15=97、R13'=89、Rs(Dark Skin)=84、Rs(Light Skin)=96
R14=71、R14'=70、Rf(Foliage)=79
2700Kにおいて
R13=93、R15=92、R13'=92、Rs(Dark Skin)=80、Rs(Light Skin)=92
R14=71、R14'=77、Rf(Foliage)=73
図4に示す従来のLED光源の分光分布で各Riを計算した事例
6700Kにおいて
R13=58、R15=53、R13'=50、Rs(Dark Skin)=59、Rs(Light Skin)=57
R14=81、R14'=79、Rf(Foliage)=84
5000Kにおいて
R13=62、R15=59、R13'=56、Rs(Dark Skin)=62、Rs(Light Skin)=61
R14=84、R14'=83、Rf(Foliage)=86
2700Kにおいて
R13=78、R15=73、R13'=72、Rs(Dark Skin)=72、Rs(Light Skin)=74
R14=90、R14'=91、Rf(Foliage)=89
図29に示す本発明のLED光源の分光分布で各Riを計算した事例
6700Kにおいて
R13=97、R15=97、R13'=93、Rs(Dark Skin)=99、Rs(Light Skin)=95
R14=98、R14'=98、Rf(Foliage)=97
5000Kにおいて
R13=94、R15=96、R13'=93、Rs(Dark Skin)=99、Rs(Light Skin)=95
R14=98、R14'=95、Rf(Foliage)=98
2700Kにおいて
R13=89、R15=98、R13'=93、Rs(Dark Skin)=99、Rs(Light Skin)=98
R14=92、R14'=85、Rf(Foliage)=97
以上の例からも、本発明においては、従来のR13やR15を向上させると共ともに、より現実に即した分光反射率で計算されたRiの値も高めることが判る。
図4に示す従来のLED光源の分光分布においては、R13とR13'を比較すると現実の白人の肌の分光反射率においてはRiの値が低下する傾向が見受けられる。
ちなみに、図29に示す本発明の本発明のLED光源の分光分布において2700KのR14'の数値は比較的低いが、これは色域GaやGa4が高く、鮮やかな色再現を示すためであり、より詳細な分析のため直接的にU*V*平面上にR14'の演色結果の色度をプロットすると、基準の光の演色結果よりも色度は緑みの高彩度側に変移しており、より鮮やかに演色されたためのR14'の数値の低下であった。
さらに、本発明に従い、第1緑発光蛍光体の光束比と第2緑発光蛍光体の光束比を変化させる。
2700Kにおいて
R13=95、R15=95、R13'=90、Rs(Dark Skin)=95、Rs(Light Skin)=94
R14=97、R14'=91、Rf(Foliage)=97
この場合は、図29に示す本発明の本発明のLED光源の分光分布より第1緑発光蛍光体の光束比が相対的に低下し、高彩度型の演色傾向を内包しつつも、忠実演色の傾向が強くなる。よって、好適な実施において他の肌や葉のRiの数値も90以上と高く維持されつつ、R14'も90以上となっている。
12 パッケージ
13 引き出し電極
14、24 青発光LED
15、25 透明部材
16、26 第1緑発光蛍光体
17、27 第2緑発光蛍光体
18、28 赤発光蛍光体
22 回路基板
23 配線パターン
101、111、121、201、211、221 LED照明装置
102 透明部材
103 口金
104 基板
112 ボディ
113 口金
114 基板
115 グローブ
122 筐体
123 基板
124 透明部材
202、212、222 蛍光体層
301 照明システム
302 直流電源
303 第1LED光源
304 第2LED光源
305 点灯装置
Claims (18)
- 青色光を出射する青発光LEDと、前記青発光LEDにより励起される緑発光蛍光体および赤発光蛍光体とを備え、
前記青発光LEDは、440nm以上465nm以下のピーク波長を有する発光スペクトルを有し、
前記緑発光蛍光体は、材料組成が異なる、第1の緑発光蛍光体と、第2の緑発光蛍光体とを含み、
前記第1の緑発光蛍光体は、490nm以上535nm以下のピーク波長を有し、かつ、15nm以上80nm以下の半値幅を有する発光スペクトルを有する、EuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む蛍光体であり、
前記第2の緑発光蛍光体は、495nm以上555nm以下のピーク波長を有し、かつ、45nm以上125nm以下の半値幅を有する発光スペクトルを有する、CeとEuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む蛍光体であり、
前記赤発光蛍光体は、600nm以上645nm以下のピーク波長を有する発光スペクトルを有する、EuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む蛍光体であり、
前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の発光を少なくとも含む各々の光が混光された分光分布において、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間の分光パワーの最低値、および、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間の分光パワーの最低値を有し、
前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、青発光LEDの発光ピークが440nm以上465nm以下に存在し、前記第1および第2の緑発光蛍光体の光の混光による発光ピークが490nm以上555nm以下に存在し、赤発光蛍光体の発光ピークが600nm以上645nm以下に存在し、かつ、演色評価の基準の光が合成昼光と完全放射体の光とで切り替わる光色ランクでは、両方の基準の光に対して、また、それ以外の相関色温度帯域である、演色評価の基準の光が合成昼光の5500Kを越え、演色評価の基準の光が完全放射体の光である4600Kを下回るいずれの光源装置を実現した場合においても、平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9が50以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が50以上、特殊演色評価数R13とR15が85以上である
ことを特徴とする照明用光源装置。 - 前記第1の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が、前記第2の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長よりも短く、
前記第1および第2の緑発光蛍光体の内、前記第1の緑発光蛍光体が無い場合に同一の色度点で混光された分光分布に比べ、U*V*平面上にプロットされたR1からR8の特殊演色評価数の試験色の色度座標で構成された色域が、U*軸方向に拡大していることを特徴とする、請求項1に記載の照明用光源装置。 - 前記第1の緑発光蛍光体は、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、酸化物系の群から選択される蛍光体であり、
前記第2の緑発光蛍光体は、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、ガーネット系、酸化物系の群から選択される蛍光体であり、
前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピーク波長は、490nm以上555nm以下にあり、
前記赤発光蛍光体は、その発光スペクトルが75nm以上120nm以下の半値幅を有する、窒化物系、シリケート系の群から選択される蛍光体である
請求項1に記載の照明用光源装置。 - 平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が50以上、特殊演色評価数R13とR15が85以上であり、
前記第1の緑発光蛍光体または前記第2の緑発光蛍光体のいずれか単独で、前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体と組み合わせて使用した場合より、平均演色評価数Raと特殊演色評価数R9と色域面積比Gaの値が高い、
請求項1に記載の照明用光源装置。 - 前記第1の緑発光蛍光体は、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、酸化物系の群から選択される蛍光体であり、
前記第2の緑発光蛍光体は、その発光スペクトルが500nm以上555nm以下のピーク波長、かつ、75nm以上125nm以下の半値幅を有し、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、ガーネット系、酸化物系の群から選択される蛍光体であり、
前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピーク波長は、490nm以上550nm以下にあり、
前記赤発光蛍光体は、その発光スペクトルが75nm以上120nm以下の半値幅を有し、少なくともEuを発光中心として含む窒化物系蛍光体であり、
前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、前記第1および第2の緑発光蛍光体の光の混光による発光ピークが490nm以上550nm以下に存在する、
請求項1に記載の照明用光源装置。 - 前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記第1および第2の緑発光蛍光体と同一の第1および第2の緑発光蛍光体と、前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体とを使用して演色評価の基準の光が合成昼光となる相関色温度の光源装置を実現した場合、および、演色評価の基準の光が完全放射体の光となる相関色温度の光源装置を実現した場合のいずれも、平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が80以上、特殊演色評価数R13とR15が85以上であり、前記第1の緑発光蛍光体または前記第2の緑発光蛍光体のいずれか単独で、前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体と組み合わせて使用した場合より、広い相関色温度の範囲で、平均演色評価数Raと特殊演色評価数R9と色域面積比Gaの値が高くなる、青発光LEDと第1および第2の緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の組み合わせを有することを特徴とする請求項5に記載の照明用光源装置。
- 青色光を出射する青発光LEDと、前記青発光LEDにより励起される緑発光蛍光体および赤発光蛍光体とを備え、
前記青発光LEDは、440nm以上465nm以下のピーク波長を有する発光スペクトルを有し、
前記緑発光蛍光体は、材料組成が異なる、第1の緑発光蛍光体と、第2の緑発光蛍光体とを含み、
前記第1の緑発光蛍光体は、その発光スペクトルが490nm以上535nm以下のピーク波長を有し、かつ、15nm以上80nm以下の半値幅を有し、EuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む、窒化物系、シリケート系、アルミネート系、酸化物系の群から選択される蛍光体であり、
前記第2の緑発光蛍光体は、その発光スペクトルが505nm以上550nm以下のピーク波長、かつ、45nm以上80nm以下の半値幅を有し、EuとMnの少なくとも1つ以上を発光中心として含む、窒化物系、シリケート系の群から選択される蛍光体であり、
前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピーク波長は、490nm以上550nm以下にあり、
前記赤発光蛍光体は、600nm以上645nm以下のピーク波長を有する発光スペクトルを有し、その発光スペクトルが75nm以上120nm以下の半値幅を有し、少なくともEuを発光中心として含む、窒化物系蛍光体であり、
前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、青発光LEDの発光ピークが440nm以上465nm以下に存在し、前記第1および第2の緑発光蛍光体の光の混光による発光ピークが490nm以上550nm以下に存在し、赤発光蛍光体の発光ピークが600nm以上645nm以下に存在し、かつ、演色評価の基準の光が合成昼光と完全放射体の光とで切り替わる光色ランクでは、両方の基準の光に対して、また、それ以外の相関色温度帯域である、演色評価の基準の光が合成昼光の5500Kを越え、演色評価の基準の光が完全放射体の光である4600Kを下回るいずれの光源装置を実現した場合においても、平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が50以上である
ことを特徴とする照明用光源装置。 - 前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記第1および第2の緑発光蛍光体と同一の第1および第2の緑発光蛍光体と、前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体とを使用して演色評価の基準の光が合成昼光となる相関色温度の光源装置を実現した場合、および、演色評価の基準の光が完全放射体の光となる相関色温度の光源装置を実現した場合のいずれも、平均演色評価数Raが80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が50以上、特殊演色評価数R13とR15が85以上であり、前記第1の緑発光蛍光体または前記第2の緑発光蛍光体のいずれか単独で、前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体と組み合わせて使用した場合より、広い相関色温度の範囲で、平均演色評価数Raと特殊演色評価数R9と色域面積比Gaの値が高くなる、青発光LEDと第1および第2の緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の組み合わせを有することを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 平均演色評価数Raが90以上、特殊演色評価数R9が90以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が80以上、特殊演色評価数R13とR15が90以上、色域面積比Gaが100以上であることを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 基準の光が完全放射体の光となる相関色温度以下、かつ、相関色温度2700K以上において平均演色評価数Raが90以上、特殊演色評価数R9が90以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が80以上、特殊演色評価数R13とR15が90以上、色域面積比Gaが100以上であり、
相関色温度2700K未満で2200K以上において平均演色評価数Raが90以上、特殊演色評価数R9が80以上、特殊演色評価数R9とR10とR11とR12の平均値Ra4が75以上、特殊演色評価数R13とR15が90以上、色域面積比Gaが95以上であり、
相関色温度2200K未満において平均演色評価数Raが80以上であること
を特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。 - 請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置が備える前記青発光LEDと同一の青発光LEDと、前記光源装置が備える前記第1および第2の緑発光蛍光体と同一の第1および第2の緑発光蛍光体と、前記光源装置が備える前記赤発光蛍光体と同一の赤発光蛍光体とを使用し、演色評価の基準の光が合成昼光と完全放射体の光とで切り替わる光色ランクを除く相関色温度帯域である、演色評価の基準の光が合成昼光の5500Kを越え、演色評価の基準の光が完全放射体の光である4600Kを下回るいずれの光源装置を実現した場合においても、前記光源装置が備える演色特性を有する、青発光LEDと第1および第2の緑発光蛍光体と赤発光蛍光体の組み合わせを有する照明用光源装置。
- Duvが−0.003以下であることを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間の分光パワーの最低値は、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間の分光パワーの最低値より低く、かつ、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間の分光パワーの最低値は、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの90%以下であることを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 前記青発光LEDと前記第1および第2の緑発光蛍光体と前記赤発光蛍光体の各々の光が混光された分光分布において、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間の分光パワーの最低値は、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間の分光パワーの最低値より低く、かつ、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間の分光パワーの最低値は、演色評価の基準の光が合成昼光である場合、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの95%以下であり、演色評価の基準の光が完全放射体の光である場合、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークの99%以下であることを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 演色評価の基準の光が合成昼光である場合および完全放射体である場合の少なくとも一方において、各々の基準の光と同一光束に正規化して分光分布を比較した場合、前記青発光LEDの発光ピークと前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークとの間の波長域の分光パワーの一部と、前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布のピークと前記赤発光蛍光体の発光ピークとの間に存在する波長域の分光パワーの一部が、基準の光を下回る、請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布において、
前記第1の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長が、前記第2の緑発光蛍光体の発光スペクトルのピーク波長よりも短いことを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。 - 前記第1および第2の緑発光蛍光体の発光が混光された緑発光の分光分布において、前記緑発光の分光分布のピークよりも短波長側の分光パワーの総量が、前記緑発光の分光分布のピークよりも長波長側の分光パワーの総量よりも小さいことを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
- 前記赤発光蛍光体は、600nm以上635nm以下に発光ピークを有する第1の赤発光蛍光体と、前記第1の赤発光蛍光体より長波長側に発光ピークを有する第2の赤発光蛍光体からなることを特徴とする請求項1、4、7のいずれか1項に記載の照明用光源装置。
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