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JP6380249B2 - ハニカム構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セリア−ジルコニア複合酸化物を主成分として構成され、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体の製造方法に関する。
自動車の排ガスを浄化するために、ハニカム構造体を基材として触媒を担持し、ケースに収容した触媒コンバータが用いられている。ハニカム構造体は、一般に、コージェライト又はSiC等の材料を用いて構成され、排ガスが流通する多数のセルの内表面を覆って、助触媒成分と貴金属触媒を含む多孔質のコート層が形成される。また、ハニカム構造体は、通常、外周面の全体に、キャニング用の保持マットを巻き付けた状態で、ケース内に固定される。
一方、ハニカム構造体からなる基材自体を、助触媒成分を主体とする材料で構成することが検討されている。例えば、酸素吸蔵能を有するセリア−ジルコニア複合酸化物からなる助触媒粒子を使用し、助触媒粒子同士を無機バインダで結合させて、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体とする技術が知られている。ただし、助触媒成分を主体とする材料は、従来の材料に比べて、機械的強度が弱い問題がある。このため、キャニングによる面圧や熱衝撃等への対策が必要となる。
特許文献1には、セリア粒子と、セリア粒子よりも自己焼結性が低いセラミック材料の粒子と、無機バインダとを含むハニカムユニットからなるハニカム構造体が提案されている。自己焼結性が低いセラミック材料は、2次粒子同士の結合反応性が相対的に高い材料、例えば、アルミナ、シリカ、ゼオライトであり、その平均粒径を、セリア粒子の平均粒径以下として、原料ペーストに配合し、ハニカムユニットの強度を高めている。また、複数のハニカムユニットの側面同士を、接着層で接合したセグメント構造として、大口径のハニカム構造体を得ている。
特許第5185837号
ところが、酸素吸蔵能を有する助触媒成分を主体として、押出成形を行うために有機成分よりなる坏土調整材を加えた原料坏土を成形、焼成して、ハニカム構造体を製造する過程で、急激な自己発熱を生じ、熱衝撃でクラック等の破損が発生する問題が生じた。これは、助触媒成分の触媒機能により、酸素が存在する雰囲気下で、原料坏土に含まれる有機成分が自己分解し、反応部位での急激な発熱により温度分布が生じるためと考えられる。また、焼成を低酸素雰囲気下で行うようにしても、焼成温度から冷却したハニカム構造体を取り出す際に、焼成炉を大気開放することにより、急激な酸素吸蔵が発生し、発熱する。この場合、助触媒成分の配合割合が高いほど、また、ハニカム構造体が大口径となるほど、発熱昇温量が大きくなり、熱衝撃による破損や、さらには、破損片の飛散が起こるおそれが高い。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、熱衝撃による破損の発生や、破損片の飛散を防止しながら、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体を製造しようとするものである。
本発明の一態様は、ハニカム構造体の製造方法であって、
セリア−ジルコニア複合酸化物を主成分とする原料粒子と、該原料粒子同士を接合する無機バインダとを混合し、有機成分よりなる坏土調整材を添加、混錬して得た坏土を、押出成形して、ハニカム成形体とする成形工程と、
得られたハニカム成形体を、乾燥させた後、焼結させて、上記ハニカム構造体を得る焼成工程と、を備えており、
上記焼成工程は、
上記ハニカム成形体を、大気雰囲気よりも酸素濃度の低い第1低酸素雰囲気下で、上記坏土調整材中の上記有機成分が熱分解可能な第1温度域に昇温する第1工程と、
上記第1低酸素雰囲気下で、上記第1温度域から、上記ハニカム成形体が焼結可能な第2温度域まで昇温する第2工程と、
上記第1低酸素雰囲気下で、上記第2温度域から、上記有機成分に起因する残留炭素成分が酸化燃焼可能な第3温度域まで降温する第3工程と、
上記第3温度域に保持しながら、上記第1低酸素雰囲気よりも酸素濃度が高く、かつ大気雰囲気よりも酸素濃度の低い第2低酸素雰囲気を超えない範囲で、徐々に酸素濃度を上昇させる第4工程と、
上記第3温度域よりも温度が低い第4温度域に降温させ、上記第2低酸素雰囲気に到達させた後、大気雰囲気まで酸素濃度を上昇させる第5工程と、を有する、ハニカム構造体の製造方法にある。
上記製造方法によれば、第1工程〜第3工程を、第1低酸素雰囲気下で行っている。そのため、第1温度域から第2温度域に昇温する際に、セリア−ジルコニア複合酸化物の触媒活性を抑制することができ、坏土中の有機成分の自己分解による発熱を抑制しながら、焼成を行うことができる。また、残留炭素成分が酸化燃焼可能な第3温度域に降温後、第4工程においては、第2低酸素雰囲気を超えない範囲で徐々に酸素導入を行っている。そのため、緩やかに残留炭素成分を酸化燃焼させるとともに、酸素吸蔵を徐々に進行させることができる。したがって、第5工程において、第4温度域に降温させた後、大気雰囲気まで酸素濃度を上昇させる際に、急激な発熱が抑制されて、熱衝撃によるクラック等の破損の発生を防止できる。
これにより、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体を、熱衝撃による破損の発生や、破損片の飛散を防止しながら、製造することができる。そして、上記製造方法によれば、破損のない品質の安定したハニカム構造体が得られるので、助触媒成分の配合割合を比較的大きくして、助触媒機能を高めることができる。また、口径を比較的大きくしても、要求される機械的強度を保つことができるので、一体型の非セグメント構造のハニカム構造体として、自動車用触媒コンバータに搭載することができる。
実施形態1における、ハニカム構造体の焼成工程を説明するための焼成プロファイル図。 実施形態1における、ハニカム構造体の全体斜視図。 実施形態1のハニカム構造体を備える触媒コンバータの全体概略断面図。 実施形態1における、ハニカム構造体の焼成前後の組織を比較して示す模式的な図。 実施形態1における、ハニカム構造体の焼結過程を説明するための模式的な図。 従来のハニカム構造体の焼結前後の焼成前後の組織を比較して示す模式的な図。 実施例1における、ハニカム構造体の焼成プロファイル図。 実施例1における、ハニカム構造体の発熱温度と、必要反応時間の関係を示す図。
(実施形態1)
次に、ハニカム構造体の製造方法について、好ましい実施形態を、図面に基づいて説明する。図2に示すように、ハニカム構造体1は、円筒状の外皮内に、セル壁11で区画された多数のセル12を有する。多数のセル12は、ハニカム構造体1の軸方向に平行な方向を、図中にXで示すセル伸長方向として、互いに平行に形成され、セル12の両端部は、ハニカム構造体1の両端面に開口する。ハニカム構造体1は、酸素吸蔵能を有するセリア−ジルコニア複合酸化物を含む材料で構成され、貴金属触媒に対する助触媒としての作用を有する。セル壁11は多孔質であり、貴金属触媒の担持に適している。ハニカム構造体1は、図3に示す自動車用の触媒コンバータ10に適用される。
このようなハニカム構造体1は、母材原料を含む坏土をハニカム状に押出成形する成形工程と、ハニカム成形体を焼成する焼成工程とを経て製造される。成形工程は、セリア−ジルコニア複合酸化物を主成分とする原料粒子(以下、CZ粒子という)に、該CZ粒子同士を接合する無機バインダを混合し、有機成分からなる坏土調整材を添加、混錬して得た坏土を、押出成形して、ハニカム成形体とする工程である。また、焼成工程は、得られたハニカム成形体を、乾燥させた後、低酸素雰囲気下で焼結させて、ハニカム構造体1とする工程である。
CZ粒子は、ハニカム構造体1の母材を構成するとともに、主成分であるセリア−ジルコニア複合酸化物が、酸素吸蔵能を有して、触媒性能を高める。CZ粒子は、セリア−ジルコニア固溶体粒子、または、La、Y等の希土類元素がさらに固溶した固溶体粒子を含む。母材原料には、CZ粒子に加えて、ハニカム構造体1のセル壁11を補強するための粒子、例えば、アルミナ粒子を添加することができる。好適には、比表面積が大きいθ−アルミナ粒子を用いることが望ましい。
母材原料であるCZ粒子とアルミナ粒子の配合比率は、求められる酸素吸蔵能に対し、任意の値となるように調整することができる。触媒性能の観点からは、酸素吸蔵能を最大化するために、アルミナ粒子に対するCZ粒子の添加質量比率が高い方が好ましく、強度保障の観点からは、アルミナ粒子に対するCZ粒子の添加質量比率が低い方が好ましい。
また、CZ粒子を、平均粒径の異なるCZ粒子の組み合わせとすることもできる。平均粒径は、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積積算値50%での粒径を意味する。このとき、平均粒径が相対的に小さい粒子が、平均粒径が相対的に大きい粒子間に入り込んで、焼結性が向上する。また、平均粒径が相対的に小さい粒子の配合割合を大きくすると、母材原料の比表面積が大きくなる一方、焼結反応が進んで焼結後の比表面積の低下が大きくなる。このため、焼結後に所望の比表面積となるように、平均粒径や配合割合を調整するとよい。
無機バインダは、焼成時に母材原料の粒子を固定して、セル壁11の三次元構造を保持する。無機バインダとしては、金属酸化物または焼結後に金属酸化物となる無機バインダ粒子を含むゾル、例えば、ゾル状の水酸化アルミニウムを含むアルミナゾルが用いられる。無機バインダの添加量は、例えば、母材原料に対して5〜20体積%とすることが望ましい。この範囲で、ハニカム構造体1の焼結後の強度をより向上させることができるとともに、ハニカム構造体1の酸素吸蔵能を十分大きくすることができる。
成形工程においては、これら母材原料の粒子と無機バインダを混合した材料に、さらに坏土調整材を加えて混練し、坏土を作製する。坏土調整材は、溶媒となる水と、有機バインダと、滑剤等を含み、坏土の成形性を向上させる。有機バインダや滑剤は、焼成時の昇温過程で、熱分解または焼失可能な有機成分からなる。有機成分の添加量は、例えば、母材原料に対して8〜20質量%とすることが望ましい。この範囲で、坏土の保形性、流動性、接着性をより向上させて、押出成形に適した坏土特性を良好に保つことができる。
坏土は、押出成形機を用いてハニカム形状に形成され、所望の形状とサイズを有するハニカム成形体となる。坏土を作製するに際しては、ハニカム構造体1の気孔率を調整するための気孔調整材として、公知の造孔材を添加することもできる。
焼成工程は、図1に示すように、第1工程S1〜第5工程S5からなる。第1工程S1は、ハニカム成形体の脱脂工程であり、大気雰囲気よりも酸素濃度の低い、所定の第1低酸素雰囲気A1に雰囲気を調整しつつ、坏土調整材中の有機成分が熱分解可能な第1温度域T1に昇温する。第1工程では、予め窒素ガス等の不活性ガスを用いて、焼成炉の雰囲気を置換することにより、雰囲気中の酸素濃度を低下させる。第1低酸素雰囲気A1は、例えば、酸素濃度が0.5体積%以下の雰囲気であり、好適には、酸素濃度の検出限界以下、すなわち0.1体積%以下の雰囲気とするのがよい。また、第1温度域T1は、坏土調整材中の有機成分が熱分解を開始する温度以上、例えば、200〜500℃程度の範囲で適宜設定され、ここでは、250℃程度とする。
昇温開始から第1温度域T1への昇温速度R1は、図示するように、2段階で昇温しながら第1温度域T1に到達するようにしても、あるいは、第1温度域T1まで段階的または連続的に昇温後、一定の時間保持するようにしてもよい。前者の場合は、例えば、昇温速度R1を、150℃までは大きくし(例えば、60℃/時間)、それ以降、250℃までは小さくして(例えば、30℃/時間)、緩やかに第1温度域T1に向けて昇温させながら、脱脂するとよい。いずれの場合も、第1温度域T1近傍での保持時間が十分長くなるように調整する。このように、ごく低い酸素濃度に保持して、CZ粒子の触媒活性を抑制し、昇温速度等を調整することで、有機成分の熱分解を良好に制御できる。そのため、第1工程S1において、ハニカム成形体に発熱による温度分布が生じて、熱衝撃によりクラック等の破損が生じるのを防止できる。
第2工程S2は、ハニカム成形体の焼結工程であり、第1低酸素雰囲気A1下で、第1温度域T1から第2温度域T2に昇温する。通常は、第2温度域T2にて所定の時間保持するが、第2温度域T2に到達するまでの時間が十分長い場合は、必ずしもその限りではない。第2温度域T2は、ハニカム成形体が焼結可能な温度、例えば、700〜1200℃の範囲で適宜設定され、ここでは、1050℃程度とする。第1温度域T1から第2温度域T2への昇温速度R2は、第2温度域T2の近傍までは、速やかに昇温させて昇温に要する時間を短縮することができる。例えば、図示するように、昇温速度R2を、800℃までは大きくし(例えば、60℃/時間)、800〜1050℃までは、これより小さくして(例えば、30℃/時間)、2段階で昇温する。第2温度域T2での保持時間H1は、ハニカム成形体がハニカム焼結体となるのに十分な時間、例えば、10時間程度とすることができる。
第3工程S3は、ハニカム焼結体の放冷工程であり、第1低酸素雰囲気A1下で、第2温度域T2から第3温度域T3まで降温する。第3温度域T3は、ハニカム成形体中の有機成分に起因する残留炭素成分、すなわちハニカム焼結体中に残留する炭素成分が、酸化燃焼可能な温度以上、例えば、500〜800℃の範囲で適宜設定され、ここでは、600℃程度とする。第3工程S3において、第2温度域T2から第3温度域T3への降温速度R3は、例えば、30℃/時間とする。第1工程S1において、ハニカム成形体中の有機成分が分解焼失せずに、タール状または炭化した状態で残留することがあり、これら残留炭素成分を、続く第4工程S4で除去する。
第4工程S4は、ハニカム焼結体の脱炭・酸素吸蔵工程であり、第3温度域T3を保持したまま、第1低酸素雰囲気A1から徐々に酸素濃度を上昇させて、残留炭素成分を酸化燃焼させるとともに、ハニカム焼結体のCZ粒子に酸素を吸蔵させる。この酸素吸蔵反応は、発熱反応であり、過度な発熱を回避するために、所定の第2低酸素雰囲気A2を設定する。そして、この第2低酸素雰囲気A2を超えないように、段階的または連続的に酸素濃度を上昇させる。第2低酸素雰囲気A2は、第1低酸素雰囲気A1よりも酸素濃度が高く、かつ大気雰囲気よりも酸素濃度の低い雰囲気である。好適には、低酸素雰囲気A2は、ハニカム焼結体への酸素吸蔵が可能な範囲で、比較的酸素濃度の低い雰囲気、例えば、酸素濃度が5体積%以下の雰囲気であり、ここでは、酸素濃度が2体積%の雰囲気とする。
第1低酸素雰囲気A1から第2低酸素雰囲気A2への、酸素濃度の上昇タイミングや上昇率は、ハニカム焼結体に過度な発熱が生じないように、適宜調整される。例えば、単位時間ごとのハニカム焼結体の発熱量、すなわち、ハニカム焼結体の酸素吸蔵反応による発熱量と、ハニカム焼結体中の残留炭素成分の酸化反応による発熱量との和が、ハニカム焼結体から放熱可能な熱量と同等程度またはそれ以下となるように調整されるのがよい。
第4工程S4においては、酸素濃度を徐々に上昇させつつ、第3温度域T3にて所定の時間保持することで、急激な発熱を抑制しながら、ハニカム焼結体の脱炭処理と酸素吸蔵処理を実施できる。このとき、導入する雰囲気ガス中の酸素濃度は、ハニカム焼結体の熱容量やCZ粒子の配合量等に基づいて、予め設定しておくとよい。第3温度域T3での保持時間H2は、導入雰囲気において酸素吸蔵反応が終了可能な時間以上、好適には、酸素吸蔵反応が終了可能な時間に対して十分な余裕のある長さとし、例えば、20時間程度とする。ハニカム焼結体の酸素吸蔵は、第3温度域T3での保持時間H2にてほぼ完了しており、このとき、設定された保持時間H2中に、第2低酸素雰囲気A2まで酸素濃度を上昇させなくてもよい。その場合は、例えば、続く第5工程S5にかけて、第2低酸素雰囲気A2まで酸素濃度を上昇させることで、ハニカム焼結体の酸素吸蔵がほぼ完了し、放熱量が発熱量を上回る条件下で、より安全に酸素導入することができる。
具体的には、図中に示すように、時点aにおいて、酸素濃度0.5体積%の雰囲気ガスを導入した後、一定時間ごとに、段階的に酸素濃度を上昇させ、時点bにおいて、酸素濃度0.7体積%、時点cにおいて、酸素濃度1.0体積%の雰囲気ガスを導入する。さらに、第5工程S5における、時点dにおいて、酸素濃度2.0体積%の雰囲気ガスを導入して、第2低酸素雰囲気A2とする。このように、第4工程における酸素濃度が、1体積%前後の時間を長くし、2体積%を超えないように保つことで、ハニカム構造体1の品質を向上する効果が高い。
第5工程S5は、ハニカム焼結体の大気開放工程であり、第3温度域T3から、これより温度が低い所定の第4温度域T4となるまで、さらに降温させる。その間に、第2低酸素雰囲気A2から大気雰囲気となるまで、酸素濃度を上昇させる。第4温度域T4は、ハニカム構造体の取出しにより、室温との温度差で急激な冷却による破損が生じない温度域であればよく、例えば、常温〜100℃程度とする。第5工程S5において、第3温度域T3から第3温度域T4への降温速度R4は、例えば、60℃/時間とする。その後、第4温度域T4に達した時点において、ハニカム構造体の取出し作業を行う。
上記のような焼成プロファイルとすることにより、第1工程S1での脱脂を制御性よく行い、また、第4工程S4において、残留炭素成分を確実に除去するとともに、酸素吸蔵処理を完了させることができる。つまり、第4工程S4では、酸素濃度を徐々に上昇させて、ハニカム焼結体の自己発熱を抑制しながら、酸素を急増させ、次いで、上記第5工程S5において、第2低酸素雰囲気A2を保ったまま、第4温度域T4まで放冷しているので、この時点で一気に大気が導入されても、酸素の急激な取り込みやそれに伴う発熱は生じない。したがって、ハニカム焼結体の冷却後に、酸素吸蔵や残留炭素成分の燃焼によって、急激な昇温が起こり、破損を生じるおそれは小さい。
このようにして得られたハニカム焼結体、すなわちハニカム構造体1は、次いで、図3に示す触媒コンバータ10に搭載される。触媒コンバータ10は、円筒管状の排ガス管路に接続されてその一部となる筒状ケース21を有し、その内部にハニカム構造体1を収容している。筒状ケース21とハニカム構造体1の間には、キャニング用の保護マット22が介設される。自動車の排ガス管路は、ここでは、図の左端側を排ガス流れの上流側、右端側を下流側とし、保持マット22は、例えばアルミナ繊維などの無機繊維からなるシート状のマットである。
触媒コンバータ10に搭載されるハニカム構造体1は、予め貴金属触媒を担持させて、ハニカム触媒体とする。貴金属触媒は、例えばPt、Rh、Pdから選ばれる少なくとも1種の貴金属である。ハニカム構造体1は、セル壁11を構成する材料自体が、助触媒機能を有するため、貴金属の触媒性能を効果的に発揮させることができる。このとき、部分的に担持する貴金属の種類を変えたり、あるいは、貴金属の量を変更したりすることもできる。一例として、PdとRhを担持させる場合には、まず、ハニカム構造体1に、Pdを含む水溶液を含浸させた後、ウォッシュコートによりRhを含むコート層を形成する。さらに必要により、Pdを含む水溶液を再含浸させ、乾燥させた後、焼付を行ってハニカム触媒体とする。その後、キャニングを行って、得られたハニカム触媒体の外周に保持マット22を巻き付けた状態で、筒状ケース21内に圧入することにより、図3に示す触媒コンバータ10とすることができる。
図4、図5により、無機バインダとしてのアルミナゾルを用いた粒子接合反応と、ハニカム構造体1の焼結組織について説明する。ここで、図4左図の焼成前の坏土は、坏土調整材に加えて、気孔調整材として造孔材を含んだ例としている。図4左図に示すように、混錬後の坏土(すなわち、焼成前)は、母材原料であるCZ粒子とアルミナ粒子3、さらに造孔材5が、無機バインダ4中に分散した状態となっている。一方、図5に示すように、アルミナゾルに含まれる水酸化アルミニウムは、焼結時に脱水縮合によりアルミナ化し、その際に隣接する粒子同士を接合する。つまり、焼結組織への移行過程において、液相を形成しない。このとき、図4左図の坏土を焼成すると、造孔材5の揮発前に、粒界成分であるアルミナゾルがゲル化し、坏土内の立体配置が固定化する。次いで、焼結過程において、脱水縮合によるアルミナ化が進む。その結果、図4右図に焼成後組織を示すように、粒子形状が保持され、固定された粒配置のまま圧縮された状態で焼結する。
このように、ハニカム構造体1の焼結組織は、母材原料の粒界に気孔が形成されやすく、また、一次粒子間に粒子内細孔が形成されて、造孔材5を用いなくても比較的気孔率を高くすることが可能となる。これに対し、図6に示すように、例えばコージェライト等の従来の基材焼成は、通常、液相焼結となる。つまり、図6左図のように、焼成前の坏土は、原料粒子71、72と、造孔材5と、液相形成成分6を含み、図6右図のように、造孔材5の揮発後、高温状態で液相が発生する。このとき、液相形成成分6が、原料粒子71、72の表面に広がり、造孔材の欠損で生じる空間を利用して、粒子の流動と再配列を伴いながら焼結が進行する。このため、粒子間の気孔が小さくなり、また、液相形成成分6の濡れにより、粒子内細孔も減少しやすい。
したがって、上記方法によって得られるハニカム構造体1は、酸素吸蔵能を有する助触媒成分を主体とする多孔質体となり、触媒担持性、ガス拡散性に優れる。そして、ハニカム成形体の焼成雰囲気中の酸素濃度と雰囲気温度を、第1工程S1〜第5工程S5に従い、高度に制御することにより、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体1を、自己発熱を制御しながら製造することができる。したがって、セリア−ジルコニア複合酸化物の配合割合が比較的大きく、また、比較的大口径のハニカム構造体1であっても、急激な発熱を生じることなく焼成可能であり、クラック等の破損を防止して所望の機械的強度を保持することができる。そのため、一体型の非セグメント構造のハニカム構造体1として、自動車用触媒コンバータに搭載することができ、触媒性能を高めることができる。
具体的には、第1工程S1を、酸素濃度0.5体積%以下の第1低酸素雰囲気A1で、200〜500℃の第1温度域T1で行うことで、有機成分の熱分解を良好に行う。また、第2工程S2において、700〜1200℃の第2温度域T2で、ハニカム焼結体を得た後、第3工程S3において、500〜800℃の第3温度域T3に降温するので、第4工程S4において、酸素濃度0.5〜2.0体積%以下の第2低酸素雰囲気A2に制限して、徐々に酸素導入し、十分な保持時間H2とすることで、酸素吸蔵反応を終了させ、残留炭素成分を除去できる。そして、常温〜100℃の第4温度域T4に降温させた後、第5工程S5において、安全に大気雰囲気とすることができる。
また、ハニカム構造体1は、母材原料となるCZ粒子が、ナノサイズの一次粒子が凝集した二次粒子であり、一次粒子間に形成される気孔が、粒界に形成される気孔と互いに連通して、排ガスの拡散に寄与する。このとき、平均粒径の異なる2種類のCZ粒子を用いると、比表面積および焼結性の向上に有利である。
(実施例1)
次に、上記した方法により、坏土を形成するための材料を準備し、ハニカム構造体1を製造した。ここで、ハニカム構造体1は円柱体形状で、大きさはφ103mm×L105mmであり、内部に断面四角形状のセル12が多数形成されている。
まず、原料粒子となる2種類のCZ粒子と、平均粒子径20μmのアルミナ粒子を母材原料とし、無機バインダとして、一次粒子の平均粒子径が20nmのアルミナゾルを添加した混合材料を準備した。2種類のCZ粒子は、平均粒子径14μmのCZ粒子(以下、CZ1という)と平均粒子径2μmのCZ粒子(以下、CZ2という)とし、これらの配合割合は、CZ1:CZ2=80:20(単位:質量%)とした。
成形工程において、この材料に、溶媒となる水と、有機バインダと、滑剤とを混合し、混練機(例えば、(株)モリヤマ製の「MS加圧ニーダ DS3−10」)により、混合物を90分間混練することにより坏土を形成した。次いで、公知の押出成形機により、坏土をハニカム形状に成形した。成形圧力は10MPaとした。その後、所定長に切断して、ハニカム成形体を得た。
ここで、母材原料100体積部に対して、無機バインダであるアルミナゾル(例えば、日産化学工業(株)製の「AS−520」)の配合割合は、固形分量で12体積部とした。また、母材原料100質量部に対して、水の配合割合は37質量部であり、有機バインダの配合割合は13.5質量部であり、滑剤の配合割合は1質量部とした。有機バインダとしては、メチルセルロース(例えば、松本油脂製薬(株)製の「65MP4000」)を用い、滑剤としては、日油(株)製の「ユニルーブ 50MB26」を用いた。なお、本例における原料粒子は、セリアにジルコニウムが固溶されたCZ粒子であるが、ジルコニウムの他にさらに希土類元素であるLaやYが固溶している。
焼成工程において、上記のようにして得たハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機により、十分に乾燥させた後、上記第1工程S1〜第5工程S5に従い、焼成を行った。図7に示すように、まず、第1工程S1として、図7の時間0において、焼成炉内に窒素導入を開始することにより、酸素濃度が検出限界以下(すなわち、0.1体積%以下)の不活性雰囲気(すなわち、第1低酸素雰囲気A1)とした後、昇温を開始した。昇温速度R1は、例えば、室温〜150℃までは、60℃/時間、その後は昇温速度をやや低くして、250℃(すなわち、第1温度域T1)に到達させ、一定時間(例えば、10時間)保持することにより、ハニカム成形体の脱脂を行った。
第2工程S2として、ハニカム成形体を焼結させるため、再び昇温し、1050℃(すなわち、第2温度域T2)で、所定の時間保持した。昇温速度R2は、例えば、250〜800℃までは、30〜100℃/時間、その後は30℃/時間とした。保持時間H1は、例えば、10時間とした。
第3工程S3として、雰囲気温度を、600℃(すなわち、第3温度域T3)まで降温させた。降温速度R3は、30℃/時間とした、次いで、第4工程S4として、雰囲気温度を第3温度域T3に保ったまま、予め設定した所定の時間保持した。保持時間H2は、例えば、20時間とした。また、雰囲気温度を600℃に降温し、第4工程S4を開始する時点で、導入する雰囲気中の酸素濃度を0.5体積%に上昇させた。その後も一定時間ごとに、酸素濃度を0.7体積%、1.0体積%と段階的に上昇させた。さらに、所定の保持時間H2の終了前に、雰囲気中の酸素濃度を2体積%に向けて上昇させた。この2体積%への上昇は、例えば、まず1.8体積%程度まで上昇させ、その後は徐々に酸素導入して緩やかに上昇させた。その途中で、第5工程S5の降温を開始した。
第5工程S5として、200℃(すなわち、第4温度域T4)まで降温させた後、酸素濃度を2体積%から大気雰囲気に上昇させた。降温速度R4は、例えば、60℃/時間とした。ここで、第4工程S4における保持時間H2と、第4、第5工程S4、S5において導入する酸素濃度の設定について、図8により説明する。
図8は、焼成工程の第4工程S4について、本実施例で製造するハニカム構造体1の酸素吸蔵に伴う発熱量と、ハニカム構造体1の熱容量に基づく放熱量の関係から、ハニカム構造体1の発熱温度に対する必要反応時間を調べた結果を示している。図中の発熱温度は、ハニカム構造体1の母材原料に含まれるセリアの割合から、酸素未吸蔵のセリアが酸素吸蔵反応によって単位時間ごとに発熱する温度を算出したものであり、セリアの配合割合が大きいほど、温度は高くなる。また、導入する酸素濃度によって制御することが可能である。そこで、ハニカム構造体1の重量と比熱から算出される熱容量(すなわち、温度が1℃上昇するために必要な熱量)に基づいて、実質的に、発熱温度=放熱可能温度、となる熱量消費速度を算出し、ハニカム構造体1中の発熱総量を消費するのに必要な時間を、必要反応時間とした。
図示されるように、発熱温度が大きいほど、ハニカム構造体1の全体に酸素吸蔵させるための、必要反応時間は短くなり、生産性は高くなる。ただし、発熱温度が大きくなると、ハニカム構造体1の温度上昇が制御できなくなり、熱衝撃によるクラック等の破損のおそれが大きくなる。このため、好適には、ハニカム構造体1の温度が、第4工程S4における第3温度域T3を、大きく外れて上昇しない範囲で、必要反応時間が許容範囲となるように、発熱温度を調整する。例えば、酸素濃度は1.0体積%未満であり、発熱温度が2.0K/分のとき、必要反応時間は、10時間となるので、これを保持時間H2とすればよい。
このようにして得られたハニカム構造体1は、外皮にも内部にもクラック等の破損は生じていなかった。また、内部に変色等は見られなかった。これら結果から、上記焼成プロファイルに基づく焼成工程により、ハニカム成形体中の有機成分の分解除去、さらに、残留炭素成分の酸化除去が良好に行われたことが確認された。
このように、本発明の方法によれば、酸素吸蔵能を有するハニカム構造体1の焼成工程において、脱脂、脱炭を制御性よく実施することができる。したがって、ハニカム構造体1の破損や破損片の飛散等を生じることがなく、品質の高いハニカム構造体1を得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を超えない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態1、実施例1においては、製造するハニカム構造体1の外皮形状を、円筒体状としたが、例えば四角筒等の多角筒状にすることができる。また、ハニカム構造体1のセル形状は、四角形以外に、三角形、六角形、八角形等の多角形とし、または円形にすることもできる。
また、ハニカム構造体1の製造方法は、使用する材料や成形方法その他の条件等、その一部を変更することもできる。例えば、ハニカム構造体1の材料は、少なくともセリア−ジルコニア複合酸化物を主成分とする原料粒子と無機バインダを含んでいればよく、必ずしもアルミナ粒子等の他のセラミック粒子を添加しなくてもよい。
1 ハニカム構造体
21 筒状ケース
22 保持マット
3 アルミナ粒子
4 無機バインダ
10 自動車用触媒コンバータ
11 セル壁
12 セル
CZ セリア−ジルコニア固溶体粒子(すなわち、原料粒子)

Claims (9)

  1. ハニカム構造体(1)の製造方法であって、
    セリア−ジルコニア複合酸化物を主成分とする原料粒子(CZ)と、該原料粒子(CZ)同士を接合する無機バインダ(4)とを混合し、有機成分よりなる坏土調整材を添加、混錬して得た坏土を、押出成形して、ハニカム成形体とする成形工程と、
    得られたハニカム成形体を、乾燥させた後、焼結させて、上記ハニカム構造体(1)を得る焼成工程と、を備えており、
    上記焼成工程は、
    上記ハニカム成形体を、大気雰囲気よりも酸素濃度の低い第1低酸素雰囲気(A1)下で、上記坏土調整材中の上記有機成分が熱分解可能な第1温度域(T1)に昇温する第1工程(S1)と、
    上記第1低酸素雰囲気(A1)下で、上記第1温度域(T1)から、上記ハニカム成形体が焼結可能な第2温度域(T2)まで昇温する第2工程(S2)と、
    上記第1低酸素雰囲気(A1)下で、上記第2温度域(T2)から、上記有機成分に起因する残留炭素成分が酸化燃焼可能な第3温度域(T3)まで降温する第3工程(S3)と、
    上記第3温度域(T3)に保持しながら、上記第1低酸素雰囲気(A1)よりも酸素濃度が高く、かつ大気雰囲気よりも酸素濃度の低い第2低酸素雰囲気(A2)を超えない範囲で、徐々に酸素濃度を上昇させる第4工程(S4)と、
    上記第3温度域(T3)より温度が低い第4温度域(T4)に降温させ、上記第2低酸素雰囲気(A2)に到達させた後、大気雰囲気まで酸素濃度を上昇させる第5工程(S5)と、を有する、ハニカム構造体(1)の製造方法。
  2. 上記第1工程(S1)において、上記第1低酸素雰囲気(A1)は、雰囲気中の酸素濃度が0.5体積%以下の低酸素雰囲気であり、上記第1温度域(T1)は、200〜500℃の範囲から選択される所定の温度域である、請求項1に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  3. 上記第2工程(S2)において、上記第2温度域(T2)は、700〜1200℃の範囲から選択される所定の温度域である、請求項1または2に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  4. 上記第3工程(S3)において、上記第3温度域(T3)は、500〜800℃の範囲から選択される所定の温度域である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  5. 上記第4工程(S4)において、上記第2低酸素雰囲気(A2)は、雰囲気中の酸素濃度が0.5〜2.0体積%の範囲から選択される所定の低酸素雰囲気である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  6. 上記第4工程(S4)において、上記第3温度域(T3)における保持時間(H2)は、上記ハニカム構造体(1)の酸素吸蔵反応が終了する時間以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  7. 上記第5工程(S5)において、上記第4温度域(T4)は、常温〜100℃の範囲から選択される所定の温度域である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  8. 上記ハニカム構造体の母材原料に含まれる上記原料粒子(CZ)は、一次粒子が凝集した二次粒子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
  9. 上記ハニカム構造体の母材原料に含まれる上記原料粒子(CZ)は、平均粒径の異なる2種類の粒子からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハニカム構造体(1)の製造方法。
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