本明細書に記載される実施形態は、いくつかの特徴を有するが、そのいずれもが、単独でその望ましい特性の原因となるものではない。請求の範囲により表される本発明の範囲を制限することなく、有利な特徴のいくつかを簡単に記載する。
開示される特定の実施形態は、車両の内部雰囲気(climate)または別の所望の領域の雰囲気を制御するためのシステムおよび方法を含んでいる。いくつかの実施形態は、熱電システムが補助的な加熱および/または冷却をもたらす車両用の温度制御システムを提供する。熱電システムは、選択された極性の電流の印加時に、液体冷媒などの作動流体と快適空気(comfort air)との間で、熱エネルギーを伝達し得る。特定の実施形態において、熱電システムは、内燃エンジンまたはその他の主要な熱源からもたらされる熱を補足するか、またはそれに代わる。また、熱電システムは、圧縮機ベースの冷却システムまたはその他の主要な冷却エネルギー源からもたらされる冷却エネルギーを補足するか、またはそれに代わることもできる。
開示される特定の実施形態は、停止したエンジンまたはエンジンがオフ状態の冷房のためのシステムおよび方法を含んでいる。エンジンがオフ状態の冷却モードは、アイドリングするエンジンのシャットダウン時に、限られた時間の間、快適なキャビンを維持するために用いられ得る。このモードにおいて、エバポレータは、エンジンがシャットダウンされているので動作不能である。冷媒の熱慣性および熱電モジュールによりもたらされる冷却により、依然として乗員キャビンの冷却を可能にしたまま、エンジンをシャットダウンし、燃料を節約することが可能となる。
開示される特定の実施形態は、停止したエンジンまたはエンジンがオフ状態の暖房のためのシステムおよび方法を含んでいる。エンジンがオフ状態の加熱モードは、アイドリングするエンジンのシャットダウン時に、限られた時間の間、快適なキャビン温度を維持するために用いられ得る。熱電モジュール、冷媒の熱慣性、およびエンジンブロックの熱慣性によりもたらされる熱は、システムが車両のキャビンを暖房することを可能にする一方で、エンジンがシャットダウンし、燃料を節約することを可能にする。
開示される実施形態は、車両の内部雰囲気を暖房および冷房するためのシステムを含んでいる。いくつかの実施形態において、車両の乗員区画内の温度を制御するためのシステムは、主要な流体チャネルと、主要な流体チャネルに動作可能に接続される1つまたは2つ以上の熱電装置とを含んでいる。熱電装置は、第1の極性の電気エネルギー印加時に、主要な流体チャネルを流れる流体を加熱し、第2の極性の電気エネルギー印加時に、流体を冷却するように構成される、少なくとも1つの熱電素子を含み得る。熱電装置は、複数の熱領域に細分化され得る。複数の熱領域は、第1の極性と第2の極性との間で切り替え可能な第1電気回路に接続される、第1熱領域と、第1電気回路の極性から独立して第1の極性と第2の極性との間で切り替え可能な第2電気回路に接続される、第2熱領域とを含み得る。
システムは、主要な流体チャネルに配置され1つまたは2つ以上の熱電装置に熱的に接続される、第1熱交換器を含み得る。一例として、主要な流体チャネルは、第1主面が熱電装置の第1熱領域にある単一の熱電装置に接続されてもよく、第2熱交換器は、主要な流体チャネルに配置され熱電装置の第2熱領域の第2主面に熱的に接続される。システムは、作動流体チャネルと、作動流体チャネルに配置され、熱電装置の第1熱領域の第1廃棄面に熱的に接続される第3熱交換器と、作動流体チャネルに配置され熱電装置の第2熱領域の第2廃棄面に熱的に接続される第4熱交換器とを含んでいてもよい。熱電装置は、第1熱領域の第1主面と第1廃棄面との間で熱エネルギーを伝達し、第2熱領域の第2主面と第2廃棄面との間で熱エネルギーを伝達するように構成され得る。
システムは、第1電気回路の極性および第2電気回路の極性を制御することによって、利用可能な複数のモードの1つでシステムを動作させるように構成される制御装置を含み得る。利用可能な複数のモードには、デミストモード、加熱モード、および冷却モードが含まれ得る。制御装置は、少なくとも1つの熱電装置がデミストモードで動作しているときに、1つまたは2つ以上の熱電装置の、第2の極性の第1電気回路および第1の極性の第2電気回路を独立して動作させるように構成され得る。
システムは、1つまたは2つ以上の熱電装置の第1熱領域の第1廃棄面に熱的に接続される第1作動流体回路と、第1作動流体回路から独立した第2作動流体回路とを含んでいてもよく、第2作動流体回路は、1つまたは2つ以上の熱電装置の第2熱領域の第2廃棄面に熱的に接続されている。第1作動流体回路および第2作動流体回路はそれぞれ、1つまたは2つ以上の熱電装置とヒートシンクとの間、または1つまたは2つ以上の熱電装置と熱源との間で、選択的に接続され得る。第1作動流体回路は、第1電気回路が第1の極性に切り替えられると熱源に接続され、第1電気回路が第2の極性に切り替えられるとヒートシンクに接続され得る。第2作動流体回路は、第2電気回路が第1の極性に切り替えられると熱源に接続され、第2電気回路が第2の極性に切り替えられるとヒートシンクに接続され得る。システムは、第1電気回路を第2の極性に切り替え、第2電気回路を第1の極性に切り替えることによって、デミストモードでシステムを動作させるように構成される制御装置を含み得る。
特定の実施形態において、HVACを用いて車両の乗員区画に温度制御された空気を運ぶ方法は、乗員区画に空気流を提供するために、利用可能な複数のモードの1つでシステムを動作させることを含んでいる。利用可能な複数のモードには、車両内の1つまたは2つ以上の領域において別々に動作可能な、デミストモード、加熱モードおよび冷却モードが含まれ得る。この方法は、デミストモードの動作中、空気流を主要な流体チャネル内へと導くことによって、乗員区画の少なくとも一部に空気を運ぶこと、熱電装置の第1熱領域において空気流から熱エネルギーを取り除くことによって、主要流体チャネル中の空気流を冷却すること、および、熱電装置の第2熱領域において空気流に熱エネルギーを加えることによって、続いて空気流を加熱することを含み得る。この方法は、加熱モードの動作中、空気流を主要な流体チャネル内へと導くことによって、乗員区画の少なくとも一部に加熱された空気流を運ぶこと、および、熱電装置の第1熱領域および第2熱領域において空気流に熱エネルギーを加えることによって、主要な流体チャネル中の空気流を加熱することを含み得る。この方法は、冷却モードの動作中、空気流を主要な流体チャネルへと導くことによって、乗員区画の少なくとも一部に冷却された空気流を運ぶこと、および、熱電装置の第1熱領域および第2熱領域において空気流から熱エネルギーを取り除くことによって、主要な流体チャネル中の空気流を冷却することを含み得る。
空気の運搬は、第1熱領域とヒートシンクとの間で第1作動流体を循環させることによって、少なくとも1つの熱電装置の第1熱領域から熱エネルギーを取り除くこと、および、第2熱領域と熱源との間で第2作動流体を循環させることによって、熱電装置の第2熱領域に熱エネルギーを加えることを含み得る。第1作動流体および第2作動流体はそれぞれ、液状の熱伝達流体を含み得る。例えば、第1作動流体は、水溶液を含み、第2作動流体は、温度が異なる同一の水溶液を含み得る。
加熱された空気流の運搬はさらに、第1の極性を有する電気エネルギーを熱電装置の第1熱領域に提供すること、および、同一の極性を有する電気エネルギーを熱電装置の第2熱領域に提供することを含み得る。熱電装置に提供された電気エネルギーにより、熱エネルギーは、少なくとも1つの作動流体から熱電装置を介して空気流へと伝達され得る。
いくつかの実施形態において、車両の乗客用空気を調整するためのシステムの製造方法は、空気流チャネルを提供すること、1つまたは2つ以上の熱電装置を空気流チャネルへ動作可能に接続すること、1つまたは2つ以上の熱電装置の少なくとも1つの廃棄面と熱連通する少なくとも1つの作動流体チャネルを提供すること、および、熱電装置の第1熱領域に第1電気回路を接続することを含んでいる。第1電気回路は、第1の極性または第2の極性で、第1熱領域に電力を選択的に供給するように構成され得る。この方法は、熱電装置の第2熱領域に第2電気回路を接続することを含み得る。第2電気回路は、第1の極性または第2の極性で、第2熱領域に電力を選択的に供給するように構成され得る。
この方法は、1つまたは2つ以上の熱電装置において、第1電気回路の極性および第2電気回路の極性を選択することにより、システムを少なくとも部分的に制御するように構成される制御装置を設けることを含み得る。
この方法は、少なくとも1つの熱電装置と熱源またはヒートシンクとの間で、熱エネルギーを選択的に移動させるために、少なくとも1つの作動流体チャネルを構成することを含み得る。
熱電装置を空気流チャネルへ動作可能に接続することは、第1熱交換器を空気流チャネルに配置すること、第2熱交換器を空気流チャネルに配置すること、熱電装置の第1熱領域を第1熱交換器に接続すること、および熱電装置の第2熱領域を第2熱交換器に接続することを含み得る。熱電装置の第1熱領域を第1熱交換器に接続することは、第1熱領域の主面を第1熱交換器に接続することを含むことができ、主面は、第1熱領域の廃棄面の反対側にある。
特定の実施形態において、車両の乗員区画の少なくとも一部において温度を制御するためのシステムは、第1流体チャネル、仕切りによって少なくとも部分的に第1流体チャネルから分離される第2流体チャネル、第1流体チャネルの冷却空気に動作可能に接続されるか、または第1流体チャネルおよび第2流体チャネルの両方に動作可能に延びる冷却装置、第2流体チャネルの加熱空気に動作可能に接続されるヒータコア、ヒータコアの下流で第2流体チャネルに動作可能に接続されるか、または冷却装置の下流で第1流体チャネルに動作可能に接続される熱電装置、および、第1流体チャネルと第2流体チャネルとの間に配置されるフロー転換チャネルまたは第1流体チャネルおよび第2流体チャネルに配置されるフロー制御バルブを含んでいる。フロー転換チャネルは、冷却装置が第1流体チャネルにおいて冷却した空気を、第2流体チャネルへと選択的に転換するように構成可能であり、空気は、フロー転換チャネルを通過した後、ヒータコアおよび熱電装置の少なくとも1つを通過して流れる。制御装置は、少なくとも冷却モード、加熱モード、およびデミストモードで、少なくとも1つのこのようなシステムを操作するように構成され得る。制御装置は、デミストモードの間、フロー転換チャネルを第1流体チャネルから第2流体チャネルへと転換させ得る。
フロー転換チャネルは、少なくとも開放位置と閉鎖位置との間で回転するように構成される、転換ブレンドドア、フロー転換素子、および/または、フロー制御バルブを含み得る。転換ブレンドドアまたはフロー転換素子が開放位置にある場合、空気は第1流体チャネルから第2流体チャネルへと転換され得る。転換ブレンドドアまたはフロー転換素子が閉鎖位置にある場合、空気は、転換せずに第1流体チャネルを通って流れることを許可され得る。同様の空気の転換は、第1流体チャネルおよび第2流体チャネルに配置されるフロー制御バルブを選択的に開放することにより達成され得る。
システムは、システムに入る空気の少なくとも一部を、第1流体チャネルおよび第2流体チャネルの少なくとも1つへ導くように構成される、入口チャネル選択装置を含み得る。入口路選択装置は、空気流を第2流体チャネル内へ導くように構成可能であり、熱電装置は、加熱モードの動作中、空気流に熱エネルギーを伝達するように構成され得る。入口チャネル選択装置は、入口ブレンドドアを含み得る。入口ブレンドドアは、第1位置、第2位置、および第1位置と第2位置との間の全ての位置の間で移動するように動作可能であり得る。入口ブレンドドアの位置は、転換ブレンドドアの位置から独立し得る。
少なくとも1つの冷却装置は、空気流から熱エネルギーを吸収可能であり、熱電装置は、デミストモードの動作中、空気流に熱エネルギーを伝達し得る。少なくとも1つの冷却装置は、空気流から熱エネルギーを吸収するように構成可能であり、熱電装置は、冷却モードの動作中、空気流から熱エネルギーを吸収するように構成され得る。
フロー転換チャネルは、フロー転換素子の仕切りに形成される開口を含み得る。開口またはフロー転換素子は、選択的に遮断されるように構成され得る。
1つまたは2つ以上の熱電装置は、複数の熱領域に細分化可能であり、複数の熱領域には、第1の極性での電気エネルギー印加時に、第2流体チャネルを流れる流体を加熱し、第2の極性での電気エネルギー印加時に、この流体を冷却するように構成される、第1熱領域と、第1熱領域に印加される電気エネルギーの極性から独立して、第1の極性と第2の極性との間で切り替え可能な第2熱領域とが含まれ得る。
1つまたは2つ以上のヒータコアは、少なくとも加熱モードの間、パワートレイン冷媒と熱連通していてもよい。いくつかの実施形態において、ヒータコアは、少なくとも冷却モードの間、パワートレイン冷媒と熱連通していない。
1つまたは2つ以上の熱電装置の少なくとも1つの表面は、空気流と熱連通して、熱交換器に接続され得る。また冷却装置も、空気流と熱連通して、1つまたは2つ以上の熱交換器に接続され得る。
特定の実施形態において、HVACシステムを用いて車両の乗員区画に温度制御された空気を運搬する方法は、乗員区画の少なくとも一部に空気流を提供するために、利用可能な複数のモードのいずれかで、システムの少なくとも一部を動作させることを含んでいる。利用可能な複数のモードには、デミストモード、加熱モード、および冷却モードが含まれ得る。この方法は、デミストモードの動作中に、空気流を少なくとも第1流体流チャネル内に導くことによって、乗員区画に空気を運搬すること、冷却装置を用いて第1流体流チャネルの空気流を冷却すること、その後第1流体流チャネルからの空気流を第2流体流チャネルへと転換すること、および、その後ヒータコア、熱電装置、またはヒータコアおよび熱電装置の両方を用いて、第2流体流チャネルの空気流を加熱することを含んでいる。この方法は、加熱モードの動作中に、少なくとも第2流体流チャネル内に空気流を導くことによって、乗員区画の少なくとも一部に加熱された空気流を運搬すること、および、ヒータコア、熱電装置、またはヒータコアおよび熱電装置の両方を用いて、第2流体流チャネルの空気流を加熱することを含んでいる。この方法は、冷却モードの動作中に、第1流体流チャネルおよび第2流体流チャネルの少なくとも1つの中に空気流を導くことによって、乗員区画の少なくとも一部に冷却された空気流を運搬し、冷却装置を用いて第1流体流チャネルの空気流を冷却することによって空気流を冷却すること、および、熱電装置を用いて第2流体流チャネルの空気流を冷却すること、または、熱電装置を用いて第2流体流チャネルの空気流を冷却する間、冷却装置を用いて第1流体流チャネルの空気流を冷却することを含んでいる。
冷却モード中の空気の運搬は、熱電装置を用いて空気流を所望の温度まで冷却するために、熱電装置に提供されるべき第1エネルギー量が、冷却装置を用いて空気流を所望の温度まで冷却するために、冷却装置に提供されるべき第2エネルギー量よりも少ないかどうかを判定すること、および、第1エネルギー量が第2エネルギー量よりも少ないと判定された場合に、第2流体流チャネルの空気流を、熱電装置を用いて冷却することを含んでいる。
加熱された空気流の運搬は、ヒータコアが空気流を所望の温度まで加熱することが可能かどうかを判定すること、ヒータコアが空気流を所望の温度まで加熱することが可能であると判定された場合に、第2流体流チャネルの空気流を、ヒータコアを用いて加熱すること、および、ヒータコアが空気流を所望の温度まで加熱することが不可能であると判定された場合に、第2流体流チャネルの空気流を、熱電装置を用いて加熱することを含んでいる。
いくつかの実施形態において、車両の少なくとも一部において乗客用空気を調整するための装置の製造方法は、少なくとも部分的に第1空気導管および第2空気導管に分割される空気流チャネルを設けること、冷却装置を第1空気導管に動作可能に接続するか、冷却装置を第1空気導管および第2空気導管の両方に動作可能に接続すること、ヒータコアを第2空気導管に動作可能に接続すること、空気がチャネルを通って流れるときに熱電装置がヒータコアの下流にあるように、少なくとも1つの熱電装置を第2空気導管に動作可能に接続するか、または空気がチャネルを通って流れるときに熱電装置が冷却装置の下流にあるように、少なくとも1つの熱電装置を第1空気導管に動作可能に接続すること、および、空気がチャネルを通って流れるときに流体転換チャネルが冷却装置の下流およびヒータコアの上流に配置されるように、または、空気がチャネルを通って流れるときに流体転換チャネルが冷却装置、ヒータコア、および熱電装置の下流に配置されるように、流体転換チャネルを第1空気導管と第2空気導管との間に設けること、または、空気がチャネルを通って流れるときに、冷却装置の下流の第1空気導管および第2空気導管にフロー制御バルブを設けることを含んでいる。流体転換チャネルは、第1空気導管からの空気を第2空気導管へと選択的に転換するように構成され得る。同様の空気の転換は、第1空気導管および第2空気導管に配置されるフロー制御バルブを選択的に開放することによって達成され得る。
冷却装置の動作可能な接続は、第1流体チャネルに熱交換器を配置すること、および熱交換器を冷却装置に接続することを含み得る。ヒータコアの動作可能な接続は、第2流体チャネルに熱交換器を配置すること、および熱交換器をヒータコアに接続することを含み得る。熱電装置の動作可能な接続は、第2流体チャネルに熱交換器を配置すること、および熱交換器を熱電装置に接続することを含み得る。
この方法は、チャネル選択装置を設けることを含んでいてもよく、チャネル選択装置は、第1空気導管および第2空気導管の入口の近くに配置される。
開示されるいくつかの実施形態は、車両の乗員区画の温度を制御することに関連する。例えば、温度制御システム(TCS)は、車両の乗員区画に空気流を運搬するように構成される空気チャネルを含み得る。TCSは、1つの熱エネルギー源、伝熱装置、および空気チャネルに接続される熱電装置TEDを含み得る。流体回路は、熱エネルギー源、伝熱装置、および/またはTEDに、冷媒を循環させ得る。バイパス回路は、TEDをバイパスして、熱エネルギー源を伝熱装置に接続し得る。アクチュエータは、バイパス回路またはTEDを備える流体回路のいずれかに、選択的に冷媒を循環させ得る。制御機器は、熱エネルギー源が空気流に熱を与える準備ができていると判定された場合に、アクチュエータを動作させ得る。
いくつかの実施形態は、車両の乗員区画の温度を制御するためのシステムを提供し、このシステムは、車両の乗員区画に乗客用空気流を運搬するように構成される少なくとも1つの乗客用空気チャネル、少なくとも1つの熱エネルギー源、乗客用空気チャネルに接続される少なくとも1つの伝熱装置、少なくとも1つの熱電装置(TED)、熱エネルギー源、伝熱装置、および/またはTEDに、冷媒を循環させるように構成される流体回路、熱エネルギー源を伝熱装置に接続するように構成される少なくとも1つのバイパス回路、流体回路の代わりに、バイパス回路に冷媒を循環させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータ、および少なくとも1つの制御システムを含んでいる。制御システムは、熱エネルギー源をTEDに接続するように構成される第2バイパス回路、流体回路の代わりに、第2バイパス回路に冷媒を循環させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータ、および少なくとも1つの制御システムを含んでいてもよい。制御システムは、熱エネルギー源が乗客用空気流に熱を与える準備ができていると判定された場合に、少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように構成され得るので、流体回路の代わりに、少なくとも1つのバイパス回路に冷媒を循環させる。
付加的な実施形態は、流体回路に冷媒を循環させるように構成されるポンプを含み得る。またシステムは、乗客用空気チャネルに動作可能に接続されるエバポレータも含み得る。熱エネルギー源は、車両エンジン、車両エンジンから熱エネルギーを供給されるヒータコア、排気システム、別の適切な熱源、または熱源の組み合わせであってもよい。別の実施形態は、乗客用空気チャネルに動作可能に接続され、伝熱装置を横切って乗客用空気流を送るように構成される、ブレンドドアを含み得る。いくつかの実施形態において、アクチュエータは、流体制御機器、バルブ、調整器、または構造の組み合わせであってもよい。
さらなる実施形態は、TEDを低温コアに接続するように構成される冷却流体回路を含み得る。低温コアは、流体からの熱を周囲空気へ放散するように構成されるラジエーターであってもよい。また冷却流体回路は、流体の適切な移動を提供するために、ポンプを含み得る。制御システムはさらに、システムが加熱モードまたは冷却モードのどちらで動作しているかを判定し、システムが冷却モードで動作していると判定された場合には、少なくとも1つのアクチュエータに、冷却流体回路に冷媒を循環させるように構成され得る。
いくつかの実施形態において、熱エネルギー源は、熱エネルギー源が閾値温度に到達すると、乗客用空気流に熱を与える準備ができた状態となる。また制御装置は、熱エネルギー源を通って循環する冷媒が閾値温度に到達すると、熱エネルギー源が乗客用空気流に熱を与える準備ができた状態であると判定し得る。
いくつかの実施形態は、車両の乗員区画において、温度を制御する方法を提供し、この方法は、車両の乗客用空気チャネル内に動作可能に接続される伝熱装置を横切って、乗客用空気流を移動させること、車両の温度制御システムを、熱電装置(TED)は流体回路間で熱エネルギーを伝達し、これは熱エネルギー源および伝熱装置を含み得る、第1動作モードで動作させること、および、温度制御システムが第1動作モードで動作した後に、温度制御システムを第2動作モードに切り替えることを含み、第2動作モードにおいて、温度制御システムは、伝熱装置および熱エネルギー源と熱連通するバイパス回路を開放する。バイパス回路は、TEDの使用なしに、伝熱装置と熱エネルギー源との間で熱エネルギーを伝達するように構成される。
別の実施形態において、温度制御システムは、熱エネルギー源が閾値温度に到達すると、第2モードに切り替わる。熱エネルギー源は、自動車エンジンであってもよい。温度制御システムは、流体回路内の流体温度が閾値温度に到達したとき、特定の時間量が経過したとき、乗客用空気流の温度が閾値温度に到達したとき、または他の任意の特定される条件または条件の組み合わせなど、他の基準に基づいて第2モードに切り替わってもよい。
特定の実施形態は、車両の乗員区画の温度を制御するための装置を製造する方法を提供し、この方法は、車両の乗員区画に乗客用空気流を運搬するように構成される少なくとも1つの乗客用空気チャネルを設けること、少なくとも1つの伝熱装置を乗客用空気チャネルに動作可能に接続すること、少なくとも1つの熱エネルギー源を設けること、少なくとも1つの熱電装置(TED)を設けること、熱エネルギー源、伝熱装置、および/またはTEDに、冷媒を循環させるように構成される流体回路を動作可能に接続すること、TEDおよび/または伝熱装置を流体回路に動作可能に接続すること、冷媒を循環させるように構成される少なくとも1つのバイパス回路を、伝熱装置への熱エネルギー源に動作可能に接続すること、流体回路の代わりに、バイパス回路に冷媒を循環させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータを設けること、冷媒を循環させるように構成される第2バイパス回路を、TEDへの熱エネルギー源に動作可能に接続すること、流体回路の代わりに、第2バイパス回路に冷媒を循環させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータを設けること、および、熱エネルギー源が乗客用空気流に熱を与える準備ができていると判定されると、少なくとも1つのアクチュエータを動作させるように構成される少なくとも1つの制御機器を設けることを含んでいる。
いくつかの実施形態において、乗客用空気チャネルは、第1空気チャネルおよび第2空気チャネルを含み得る。第2空気チャネルは、第1空気チャネルに対して、少なくとも部分的に並列配置であり得る。また、乗客用空気チャネルは、第1空気チャネルおよび第2空気チャネルを通る空気流を、選択的に転換するように構成されるブレンドドアも含み得る。熱電装置は、第2空気チャネルにのみ配置され得る。
別の実施形態において、エバポレータは、乗客用空気チャネルに動作可能に接続され得る。いくつかの実施形態は、低温コアも含み得る。冷却流体回路は、低温コアおよびTEDに動作可能に接続され得る。冷却流体回路は、冷媒を循環させるように構成され得る。
本明細書に開示される実施形態によれば、車両の内燃エンジンの起動中に、車両の乗員区画を暖房、冷房、および/または、デミストするための、温度制御システムが提供される。このシステムは、内部の冷媒を運ぶように構成されるエンジンブロック冷媒導管を備える、エンジン冷媒回路を備える。エンジンブロック導管は、車両の内燃エンジンと熱連通する。システムはさらに、車両の快適空気チャネルに配置され、エンジンブロック冷媒導管と流体連通する、ヒータコアを備える。システムはさらに、廃棄面および主面を有する熱電装置を備える。廃棄面は、熱源またはヒートシンクと熱連通する。システムはさらに、快適空気チャネルに配置され、熱電装置の主面と熱連通する、補助的熱交換器を備える。補助的熱交換器は、温度制御システムが動作中である場合、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒータコアの下流にある。システムはさらに、複数の動作モードで温度制御システムを動作させるように構成される制御装置を備える。複数の動作モードは、起動加熱モードを含み、熱電装置は、第1の極性で供給される電流を受ける間、および内燃エンジンが動いている間、廃棄面からの熱エネルギーを主面に伝達することによって快適空気流を加熱するように構成される。複数の動作モードはさらに、加熱モードを含み、内燃エンジンは、電流が熱電装置に供給されない間、および内燃エンジンが動いている間、快適空気流を加熱するように構成される。起動加熱モードにおいて、熱電装置は、内燃エンジンが、熱電装置から提供される熱なしでは、快適空気流を特定の快適温度まで加熱することが不可能である間、快適空気流に熱を与える。熱電装置の性能係数は、起動加熱モードの間、冷媒の温度が上昇するにつれて増加する。
いくつかの実施形態において、温度制御システムは、起動加熱モードにおいて、内燃エンジンが周囲気温の動作温度で起動される場合、加熱モードにおいて乗員キャビンを特定のキャビン温度まで加熱するよりも早く、車両の乗員区画を特定のキャビン温度まで加熱するように構成される。起動加熱モードは、熱電装置が第1の極性で供給される電流を受ける間、快適空気流を加熱するように構成される内燃エンジンを含んでいる。複数の動作モードはさらに、補助的冷却モードを備え、熱電装置は、第2の極性で供給される電流を受ける間、主面からの熱エネルギーを廃棄面に伝達することによって、快適空気流を冷却するように構成される。複数の動作モードはさらに、起動デミストモードを備え、エバポレータコアは、快適空気流を冷却するように構成され、熱電装置は、第1の極性で供給される電流を受ける間、廃棄面からの熱エネルギーを主面へ伝達することによって、快適空気流を加熱するように構成される。起動デミストモードは、熱電装置が第1の極性で供給される電流を受ける間、快適空気流を加熱するように構成される、内燃エンジンを含んでいる。複数の動作モードはさらに、デミストモードを備え、エバポレータコアは、電流が熱電装置に供給されない間、快適空気流を冷却するように構成され、補助的熱交換器は、快適空気チャネルのエバポレータコアの下流にある。システムはさらに、快適空気チャネルに配置される蓄熱装置を備え、蓄熱装置は、熱エネルギーを蓄積し、空気流への熱エネルギーの伝達または空気流からの熱エネルギーの吸収の少なくとも1つを行うように構成される。システムはさらに、快適空気チャネルに配置されるベルト駆動の冷却システムのエバポレータコアを備え、蓄熱装置はエバポレータコアに接続される。蓄熱装置は、冷却モードまたはデミストモードの少なくとも1つの間、冷却容量を蓄積するように構成され、熱電装置は、快適空気チャネルに配置され、熱電装置の廃棄面は、エンジンブロック冷媒導管と熱連通する。熱源は、バッテリー、電子装置、バーナー、または車両の排気の少なくとも1つである。システムはさらに、熱電装置の廃棄面に接続される廃熱交換器を備える。廃熱交換器は、液相の作動流体を含む流体回路に接続され、液相の作動流体は、熱源またはヒートシンクと流体連通し、流体回路は内部の冷媒を運搬するように構成される第1導管および第1バイパス導管を含み、第1導管はヒータコアと流体連通し、第1バイパス導管は、第1導管の周りで冷媒の流れをバイパスするように構成される。起動加熱モードは、第1導管を通る冷媒の流れを制限すること、および第1バイパス導管を通る冷媒の流れを導くことを含む。流体回路は、内部の冷媒を運搬するように構成される第2導管および第2バイパス導管を含み、第2導管は補助的熱交換器と流体連通し、第2バイパス導管は、第2導管の周りで冷媒の流れをバイパスするように構成され、および/または、加熱モードは、第2導管を通る冷媒の流れを制限すること、および第2バイパス導管を通る冷媒の流れを導くことを含んでいる。
本明細書に開示される実施形態によれば、車両の内燃エンジンの起動中に、車両の乗員区画の温度を制御するための方法が提供される。この方法は、快適空気チャネルを通して空気流を導くことを含んでいる。方法はさらに、エンジン冷媒回路を通して冷媒を導くことを含み、エンジン冷媒回路は、車両の内燃エンジンと熱連通するエンジンブロック冷媒導管を含んでいる。方法はさらに、快適空気チャネルに配置され、エンジンブロック冷媒導管と熱連通する、ヒータコアを通して空気流を導くことを含んでいる。方法はさらに、熱電装置と熱連通する補助的熱交換器を通して空気流を導くことを含んでいる。補助的熱交換器は、空気流が流れる間の、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒータコアの下流にある。熱電装置は、廃棄面および主面を有し、廃棄面は、エンジンブロック冷媒導管またはヒートシンクと熱連通し、主面は、補助的熱交換器と熱連通する。方法はさらに、熱電装置が廃棄面からの熱エネルギーを主面に伝達することによって快適空気を加熱するために、起動加熱モードにおいて、熱電装置に第1の極性の電流を供給することを含んでいる。起動加熱モードでは、内燃エンジンが、熱電装置によりもたらされる熱なしでは快適空気流を特定の快適な温度まで加熱することが不可能である間、熱電装置が快適空気流に熱を与える。
いくつかの実施形態において、方法はさらに、加熱モードにおいて、熱電装置への電流を制限することを含み、内燃エンジンは、快適空気流を加熱するように構成され、温度制御システムは、起動加熱モードにおいて、内燃エンジンが周囲気温の動作温度で起動される場合、加熱モードにおいて乗員キャビンを特定のキャビン温度まで暖房するよりも早く、車両の乗員区画を特定のキャビン温度まで暖房するように構成される。方法はさらに、快適空気チャネルに配置されるベルト駆動の冷却システムのエバポレータコアを通して、空気流を導くことを含んでいる。方法はさらに、主面からの熱エネルギーを廃棄面に伝達することによって熱電装置が快適空気流を冷却するために、補助的冷却モードにおいて、熱電装置に第2の極性で電流を供給することを含んでいる。方法はさらに、熱電装置の廃熱伝達面と内燃エンジンとの間の熱連通を防ぐために、エンジンブロック冷媒導管を通る冷媒の流れを制限することを含んでいる。方法はさらに、エバポレータが快適空気を冷却する間、廃棄面からの熱エネルギーを主面へ伝達することによって、熱電装置が快適空気を加熱するために、起動デミストモードにおいて、熱電装置に第1の極性で電流を供給することを含んでおり、補助的熱交換器は、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、エバポレータコアの下流にあり、廃熱交換器は、熱電装置の廃棄面に接続され、廃熱交換器は、液相の作動流体を含む流体回路に接続され、および/または、液相の作動流体はエンジンブロック冷媒導管またはヒートシンクと流体連通する。
本明細書に開示される実施形態によれば、車両の内燃エンジンの停止中に、車両の乗員区画を暖房、冷房、および/または、デミストするための温度制御システムが提供される。システムは、内部の冷媒を運搬するように構成されるエンジンブロック冷媒導管を備える、エンジン冷媒回路を備える。エンジンブロック導管は、車両の内燃エンジンと熱連通する。システムはさらに、車両の快適空気チャネルに配置され、エンジンブロック冷媒導管と流体連通する、ヒータコアを備える。システムはさらに、廃棄面および主面を有する熱電装置を備える。システムはさらに、快適空気チャネルに配置され、熱電装置の主面と熱連通する、補助的熱交換器を備える。システムはさらに、熱電装置の廃棄面に接続される廃熱交換器を備える。廃熱交換器は、液相の作動流体を含む流体回路に接続される。液相の作動流体は、熱源またはヒートシンクと流体連通する。システムはさらに、温度制御システムを複数の動作モードで動作させるように構成される制御装置を備える。複数の動作モードは、停止加熱モードを含み、内燃エンジンの残留熱が、熱電装置に電流が供給されない間、および内燃エンジンが停止されている間、快適空気流を加熱するように構成される。複数の動作モードはさらに、停止冷間加熱モードを含み、熱電装置が、第1の極性で供給される電流を受ける間、および内燃エンジンが停止されている間、廃棄面からの熱エネルギーを主面へ伝達することによって、快適空気流を加熱するように構成される。停止冷間加熱モードでは、内燃エンジンが、熱電装置によりもたらされる熱なしでは快適空気流を特定の快適温度まで加熱することが不可能である間、熱電装置が快適空気流に熱を与える。
いくつかの実施形態において、温度制御システムは、乗員区画を一定のキャビン温度まで加熱する間の、停止加熱モードにおける内燃エンジンの停止よりも、停止冷間加熱モードにおいてより長い、内燃エンジンの停止時間を可能にするように構成される。停止冷間加熱モードは、熱電装置が第1の極性で供給される電流を受ける間、快適空気流を加熱するように構成される内燃エンジンを含んでいる。複数の動作モードはさらに、補助的冷却モードを含み、熱電装置は、第2の極性で供給される電流を受ける間、主面からの熱エネルギーを廃棄面に伝達することによって、快適空気流を冷却するように構成される。システムはさらに、快適空気チャネルに配置される蓄熱装置を備え、蓄熱装置は、熱エネルギーを蓄積し、空気流への熱エネルギーの伝達または空気流からの熱エネルギーの吸収の少なくとも1つを行うように構成される。システムはさらに、快適空気チャネルに配置されるベルト駆動の冷却システムのエバポレータコアを備え、蓄熱装置はエバポレータコアに接続される。蓄熱装置は、冷却モードまたはデミストモードの少なくとも1つの間、および内燃エンジンが動作中の間、冷却容量を蓄積するように構成される。複数の動作モードはさらに、第1停止デミストモードを含み、熱電装置は、保存される冷却容量を用いて空気流から熱エネルギーを吸収することによって、快適空気流を冷却するように構成され、また熱電装置は、第1の極性で供給される電流を受ける間、廃棄面からの熱エネルギーを主面に伝達することによって、快適空気流を加熱するように構成される。補助的熱交換器は、温度制御システムが動作中であるときに、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒートコアの下流にある。熱電装置の廃棄面は、エンジンブロック冷媒導管と熱連通する。熱源は、バッテリー、電子装置、バーナー、または車両の排気の少なくとも1つである。流体回路は、内部の冷媒を運搬するように構成される第1導管および第1バイパス導管を含み、第1導管はヒータコアと流体連通し、第1バイパス導管は、第1導管の周りで冷媒の流れをバイパスするように構成される。停止冷間加熱モードは、第1導管を通る冷媒の流れを制限すること、および第1バイパス導管を通る冷媒の流れを導くことを含む。流体回路は、内部の冷媒を運搬するように構成される第2導管および第2バイパス導管を含み、第2導管は補助的熱交換器と流体連通し、第2バイパス導管は、第2導管の周りで冷媒の流れをバイパスするように構成される。停止加熱モードは、第2導管を通る冷媒の流れを制限すること、および第2バイパス導管を通る冷媒の流れを導くことを含んでいる。複数の動作モードはさらに、第2停止デミストモードを含み、熱電装置は、第2の極性で供給される電流を受ける間、熱エネルギーを主面から廃棄面へ伝達することによって、快適空気流を冷却するように構成され、内燃エンジンは、内燃エンジンが快適空気流を特定の快適温度まで加熱することが可能である間、快適空気流を加熱するように構成されるか、および/または、補助的熱交換器は、温度制御システムが動作中のときに、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒータコアの上流にある。
本明細書に開示される実施形態によれば、車両の内燃エンジンの停止中に、車両の乗員区画の温度を制御するための方法が提供される。この方法は、快適空気チャネルを通して空気流を導くことを含んでいる。方法はさらに、エンジン冷媒回路を通して冷媒を導くことを含み、エンジン冷媒回路は、車両の内燃エンジンと熱連通するエンジンブロック冷媒導管を含んでいる。方法はさらに、快適空気チャネルに配置され、エンジンブロック冷媒導管と熱連通する、ヒータコアを通して空気流を導くことを含んでいる。方法はさらに、熱電装置と熱連通する補助的熱交換器を通して空気流を導くことを含んでいる。熱電装置は、主面および廃棄面を有し、主面は、補助的な熱交換器と熱連通し、廃棄面は、廃熱交換器に接続される。廃熱交換器は、液相の作動流体を含む流体回路に接続される。液相の作動流体は、エンジンブロック冷媒導管またはヒートシンクと流体連通する。方法はさらに、内燃エンジンが停止されている間、熱電装置が熱エネルギーを廃棄面から主面へ伝達することによって、快適空気を加熱するために、停止冷間加熱モードにおいて、第1の極性の電流を熱電装置に供給することを含んでいる。停止冷間加熱モードにおいて、熱電装置は、内燃エンジンが、熱電装置によりもたらされる熱なしでは快適空気流を特定の快適温度まで加熱することが不可能である間、快適空気流に熱を与える。
いくつかの実施形態において、補助的熱交換器は、空気流が流れている間の、快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒータコアの下流にある。方法はさらに、停止加熱モードにおいて、熱電装置への電流を制限することを含んでいる。内燃エンジンは、快適空気流を加熱するように構成される。温度制御システムは、車両の乗員区画を一定のキャビン温度まで加熱する間の、停止加熱モードにおける内燃エンジンの停止よりも、停止冷間加熱モードにおいてより長い、内燃エンジンの停止時間を可能にするように構成される。方法はさらに、補助的冷却モードにおいて、熱電装置が熱エネルギーを主面から廃棄面へ伝達することによって、快適空気流を冷却するために、熱電装置に第2の極性の電流を供給することを含んでいる。方法はさらに、熱電装置の廃熱伝達面と、内燃エンジンとの間の熱連通を防ぐために、エンジンブロック冷媒導管を通る冷媒の流れを制限することを含んでいる。方法はさらに、停止デミストモードにおいて、熱電装置が熱エネルギーを主面から廃棄面へ伝達することによって、快適空気を冷却するために、熱電装置に第2の極性の電流を供給することを含み、内燃エンジンは、内燃エンジンが快適空気流を特定の快適温度まで加熱することが可能な間、快適空気流を加熱するように構成され、および/または、補助的熱交換器は、空気流が流れている間の快適空気チャネルの快適空気流の方向に対して、ヒータコアの上流にある。
本明細書には特定の好ましい実施形態および実施例が開示されているが、発明の主題は、詳細に開示された実施形態の域を越えて、発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびに、その変更例および等価物にまで及ぶ。ゆえに本明細書に開示される発明の範囲は、以下に記載する特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書に開示する方法または工程のいずれにおいても、方法または工程の作動または操作は、任意の適切な順序で行うことが可能であり、いずれかの特定の開示される順序に限定される必要はない。
様々な実施形態を先行技術と対比する目的で、これら実施形態の特定の態様および利点を記載する。このような態様または利点の全てが、任意の特定の実施形態によって達成される必要はない。ゆえに、例えば、様々な実施形態は、本明細書で教示される1つの利点または利点の群を、同じく本明細書で教示される別の態様または利点を達成する必要なしに、達成または最適化するような方法で実行されてもよい。実施形態のいくつかは、特定の流体回路およびバルブの構成、特定の温度制御および/または流体回路の構成に関連して説明されるが、本発明は他のシステム構成を用いて利用されてもよいことが理解される。さらに、本発明は、車両による利用に限定されているが、温度制御が望まれる他の環境においても有利に用いられ得る。
本明細書で用いる場合、「冷媒(coolant)」という用語はその広く一般的な意味で用いられ、例えば、加熱または冷却システム内の熱エネルギーを伝達する流体を含んでいる。本明細書で用いる場合、「伝熱装置」という用語はその広く一般的な意味で用いられ、例えば、熱交換器、伝熱面、伝熱構造、媒体間で熱エネルギーを伝達するための他の適切な装置、またはそのような装置の任意の組み合わせを含んでいる。本明細書で用いる場合、「熱エネルギー源」および「熱源」という用語はその広く一般的な意味で用いられ、例えば、車両エンジン、バーナー、電子部品、加熱素子、バッテリーまたはバッテリーパック、排気システムの構成要素、エネルギーを熱エネルギーに変換する装置、またはこのような装置の任意の組み合わせを含んでいる。いくつかの状況において、「熱エネルギー源」および「熱源」という用語は、例えば、チラー、エバポレータ、別の冷却構成要素、構成要素の組み合わせなどの、負の熱エネルギー源のことを指してもよい。
本明細書で用いる場合、「充分な」および「充分に」という用語は、その一般的な意味にしたがって広く用いられている。例えば、快適空気を含む充分な加熱または充分な熱伝達に関連して、これらの用語は、乗客用空気流(または気流)が乗客にとって快適温度まで加熱される状況(例えば、空気流が1つまたは2つ以上のベントを介して、乗員区画内に押し込まれる場合)や、乗客用空気流が閾値温度まで加熱される状況を、制限なく広く包括する。
本明細書で用いる場合、「準備ができている(ready)」という用語は、その一般的な意味にしたがって広く用いられている。例えば、熱を与える準備ができている熱源に関連して、この用語は、熱源が乗客用空気流を充分に加熱したときを判定するための、1つまたは2つ以上の基準が満たされている状況を、制限なく広く包括する。例えば、熱源は、ヒータコアが、空気流に対して、車両の乗員へと導かれるか、またはその近位に導かれる場合に快適となるように、充分な熱エネルギーを伝達し得るときに、乗客用空気流を充分に加熱し得る。空気流は、室温と同程度、室温と等しいか室温よりもいくらか高い温度、室温よりも高い温度、適切な閾値温度よりも高いか、適切な閾値温度と等しい温度である場合に、快適となり得る。適切な閾値温度は、華氏約70度、華氏約72度、華氏約75度、室温、周囲温度に依存する温度、または他の温度であってもよい。適切な閾値温度(または特定の快適温度)は、華氏約60度、華氏約65度、華氏約70度、または室温よりも高いか、それらと等しくてもよい。適切な閾値温度(または特定の快適温度)は、華氏約10度、華氏約25度、華氏約30度、または周囲温度を上回る華氏約40度であってもよい。いくつかの実施形態では、熱源が、乗客キャビンが空気の冷風を受けることがないように空気流を加熱可能である場合、熱源は乗客キャビンを加熱する準備ができている。いくつかの実施形態では、熱源が、本明細書に記載されるように空気流を快適温度、および/または室温まで加熱するために、冷媒温度を上昇させるのに充分な温かさ(または熱さ)である場合に、熱源は乗客キャビンを加熱する準備ができている。
本明細書で用いる場合、「乗客用空気チャネル」という用語は、その一般的な意味で広く用いられている。例えば、乗客用空気チャネルは、ダクト、パイプ、ベント、ポート、コネクタ、HVACシステム、他の適切な構造または構造の組み合わせを含む、快適空気が流れる構成要素を包括する。
本明細書で用いる場合、「熱電装置」という用語は、その一般的な意味にしたがって広く用いられている。例えば、この用語は、熱電材料を組み込み、電気エネルギーの印加時に温度勾配に抗って熱エネルギーを伝達するため、または熱電材料にわたる温度差に基づき電気出力を生成するために用いられる、あらゆる装置を広く包括する。熱電装置は、ヒータコア、エバポレータ、電気加熱素子、蓄熱装置、熱交換器、別の構造、または構造の組み合わせなどの、他の温度制御素子に組み込まれるか、それらと共に用いられ得る。
本明細書で用いる場合、「アクチュエータ」という用語は、その一般的な意味にしたがって広く用いられている。例えば、この用語は、バルブ、レギュレータ、および流体の流れを制御するために用いられる他の適切な構造または構造の組み合わせなどの、流体制御機器を広く包括する。
本明細書で用いる場合、「制御機器」という用語は、その一般的な意味にしたがって広く用いられている。例えば、この用語は、流体の移動、電気エネルギーの伝達、熱エネルギーの伝達、および/または、その1つまたは2つ以上の間のデータ通信を制御するように構成される、装置またはシステムを広く包括する。制御機器は、システムの1つまたは2つ以上の構成要素を制御する単一の制御装置を含んでいてもよいし、システムの様々な構成要素を制御する2つ以上の制御装置を含んでいてもよい。
車両の乗員区画の温度は、通常、暖房、換気、および空調(HVAC)システムによって制御され、これは、快適空気システムまたは温度制御システムとも呼ばれ得る。システムが加熱のために用いられる場合、車両エンジンまたは別の適切な装置が熱源となり得る。熱エネルギーは、冷媒回路または他の流体回路を介して、熱源から熱交換器(例えば、ヒータコアなど)へと伝達され得る。熱交換器は、車両の乗員区画に入る前に熱交換器を横断する空気流へ、熱エネルギーを伝達し得る。いくつかの構成において、車両のエンジンまたはヒータコアは、ヒータコアが車両の乗員区画内に導かれる空気を充分に加熱可能となる温度に到達するまでに、数分といった、実質的な時間量を取り得る。例えば、プラグインハイブリッドなどの、特定の種類の車両では、エンジンは、車両が50マイルといった実質的な距離だけ駆動されるまで、作動さえされない場合もある。ヒータコアが、乗員区画の空気流が快適となるように充分な熱エネルギーを伝達可能な温度に到達すると、ヒータコアおよび/またはエンジンは、空気流を加熱する「準備ができている」といえる。
乗員区画に入る空気流を冷却するために、圧縮機ベースの冷却システム(エバポレータなどの、様々な構成要素を含む)を用いて冷却が達成され得る。車両エンジンは、冷却システムの構成要素に動力を供給するために、エネルギーを供給する(例えば、機械的または電気的な連結部を介して)。冷却システムの多くの構成要素は、しばしば加熱システムの構成要素とは分離される。例えば、冷却システムは、通常、ヒータコアから分離した熱交換器を用いて、乗員区画の空気流に接続される。
いくつかのHVACシステムはデミスト機能を備え、曇りを取り除くため、および/または、フロントガラス上の復水の形成を防ぐために、加熱モード中に湿気が空気から取り除かれる。いくつかのシステムでは、最初に空気をエバポレータに通して、空気温度を、露点を下回るように低下させ、それにより水分を凝縮および除去することによって、デミスト機能が達成される。エバポレータは、例えば、2段階の蒸気圧縮サイクルによって冷却され得る。エバポレータを通過した後、空気は加熱器を通されることができ、乗客の快適さのための適切な温度が達成される。
図1Aは、車両用の始動−停止システム(またはストップアンドゴーシステム)を含む、マイクロハイブリッド/マイルドハイブリッドシステムの一実施形態を示す。マイクロハイブリッドシステムは、車両の燃料効率を向上させ、汚染を減少させることが可能である。「純粋な」ハイブリッドモータの車両とは異なり、マイクロハイブリッドモータの車両は、内燃エンジンを有するが、車両を駆動するために、必ずしも電気モータを有する必要はない。内燃エンジンは、例えば、車両が信号で停止する間などの、選択された車両の動作状態(一時停止)で停止され得る。いくつかの実施形態において、車両は、可逆な電気機械、または、「スタータ」モードのAC/DCコンバータにより供給される内燃エンジンに連結される、スタータオルタネータを用いて、ストップアンドゴーモードで機能し得る。
いくつかの実施において、ストップアンドゴーモードでのスタータオルタネータの使用は、車両自体が停止したときに内燃エンジンを完全に停止させること、および、その後例えば、再始動命令と理解される運転者の動作に続いて、内燃エンジンを再始動させることから構成され得る。典型的なストップアンドゴーの状況は、赤信号での停止である。車両が信号で停止すると、エンジンは自動的に停止され、その後信号が緑になると、運転者がクラッチペダルを押したことをシステムが検知するか、または運転者が車両を再始動することを意図しているという意味に理解される他の動作に続いて、スタータオルタネータを用いて再始動される。特定の所定条件の下で、エンジンは車両が停止される前に切られてもよい。例えば、所定の状況が、車両が完全に停止しそうなこと、車両が特定の速度の下で惰行運転していること、および/または、車両が丘を下って惰行運転していることを示す場合、変速機はニュートラルに切り替えられ、エンジンは車両がその軌道をたどり続ける間停止され得る。
内燃エンジンを備える自動車は、内燃エンジン用の電気スタータおよび自動車の他の電気装置に動力を供給するために、搭載電気システムを有し得る。内燃エンジンの始動中、スタータバッテリー10aは、スタータ11aへ動力を供給でき、これは内燃エンジンを始動する(例えば、制御装置からの対応するスタータ信号により、スイッチ12aが閉鎖される場合)。スタータバッテリー10aは、従来の、12V(または14V)電気システムに接続される12V(14V)車両バッテリーであってもよい。いくつかの実施形態において、バッテリーおよび対応する電気システムの電圧は、例えば、18V、24V、36V、48V、および50Vまで高くされてもよい。いくつかの実施形態において、バッテリー10aは、高容量バッテリーであってもよい。内燃エンジンが始動されると、内燃エンジンは発電機13a(「オルタネータ」)を駆動し、これはその後、およそ14Vの電圧を生じ、この電圧を、搭載電気システムを通して、自動車の様々な電力消費部14aが利用できるようにする。処理において、発電機13aはスタータバッテリー10aの再充電もできる。
いくつかの実施形態において、マイクロハイブリッド車両は、複数の電圧の電気システムを有し得る。例えば、車両は、車両の電力消費部14a(例えば、従来の電子機器)に動力を与えるために、低電圧システムを有し得る。引き続きこの例に関して、車両は、スタータ11aに動力を与えるために、高電圧システムも有し得る。いくつかの実施形態において、車両の低電圧システムは、スタータ11aにも動力を与え得る。
いくつかの実施形態において、スタータ11aは、内燃エンジンの始動中に、車両を停止状態から初期加速させるために、適正な動力を有し得る。例えば、内燃エンジンが停止された後に、運転者が加速のために車両のアクセルを踏むと、スタータは、内燃エンジンが始動し、加速および前方への車両の推進を引き継ぐまで、停止状態から車両を加速するために適正なトルクを与え得る。
図1Bは、キャパシタ(capacitor)を備えた車両用の始動‐停止システム(またはストップアンドゴーシステム)を含む、マイクロハイブリッド/マイルドハイブリッドシステムの一実施形態を示す。マイクロハイブリッド車両2bは、変速機を介してマイクロハイブリッド車両2bのためのけん引力を与えるために、内燃エンジン5bを有し得る。一体型スタータ発電機6bは、駆動ベルト4bを用いて、エンジン5bのクランクシャフトの一端に、駆動可能に接続される。一体型スタータ発電機6bをエンジン5bに駆動可能に接続する他の手段も用いられ得ることが理解されるだろう。いくつかの実施形態において、スタータのモータおよび発電機は、分離していてもよい。
一実施形態において、一体型スタータ発電機6bは、多相交流装置であり、多相ケーブル7bを介して、インバータ10bに接続されている。制御リード線8bは、一体型スタータ発電機6bとインバータ10bとの間で双方向にデータを転送するために用いられ、またこの場合、エンジン5bの回転速度を計算するために用いられ得る、一体型スタータ発電機6bの回転速度を示す信号を供給する。代替的には、エンジン速度は、クランクシャフトセンサーまたは別の感知装置を用いて直接測定され得る。
キャパシタパック12bは、インバータ10bの直流側に接続され得る。一実施形態において、キャパシタパック12bは、10個の2.7ボルトのキャパシタ(セルともいわれる、電気2重層キャパシタ)を含んでいるので、名目上は27ボルトの端子電圧を有する。キャパシタパックでは、より多いかまたはより少ない数のキャパシタが用いられてもよく、パックを形成するキャパシタそれぞれの電圧は、2.7ボルトよりも大きくても小さくてもよいことが理解される。いくつかの実施形態において、高容量バッテリー、高電圧バッテリー、および/または、従来のバッテリーが、キャパシタパック12bに代わってもよいし、キャパシタパック12bと同時に機能してもよい。
キャパシタパック12bは、DC/DC電圧コンバータ15bに接続され得る。DC/DCコンバータは、供給リード線16を介して12ボルト電圧源に接続され得る。12ボルト電圧源は、従来の電気化学的バッテリーであり、マイクロハイブリッド車両2bに取り付けられる電気的装置に動力を与えるために用いられる。キャパシタを再充電するために、一体型スタータ発電機6bが電気的に接続され得る。また、キャパシタを再充電するために、回生ブレーキシステムが電気的に接続され得る。いくつかの実施形態において、車両は、キャパシタ(および/または、バッテリー)を再充電するために、他の動的または熱的なエネルギー回収システムを有し得る。DC/DCコンバータも、例えば、マイクロハイブリッド車両2bが数週間の間操作されておらず、キャパシタパック12bの充電が、良好な始動に必要な所定のレベルを下回って不足している場合、12ボルト電圧源からキャパシタパック12bを再充電するために用いられ得る。DC/DCコンバータは、この再充電機能を達成するために、12ボルトよりも大きな電圧を供給する。代替的には、12V電圧源に接続される、従来のスタータが用いられてもよい。
キャパシタ制御装置20bは、インバータ10bとキャパシタパック12bとの間の電気の流れを制御するために、制御ライン21bによってインバータ10bに動作可能に接続され得る。キャパシタ制御装置20bは、電圧センサライン22bを通じて、キャパシタパック12bから、キャパシタパック12bの端子電圧を示す信号を受信し続け、また制御ライン21bを介して、エンジン速度を示す信号を受信し続ける。キャパシタ制御装置20bは、インバータ10bやパワートレイン制御装置などの別の電気的制御装置の一部として形成されてもよいことが理解される。
いくつかの実施形態において、同様の始動−停止の概念が、ハイブリッド車両、および/または、プラグインハイブリッド車両に適用され得る。本開示を通して、「ハイブリッド」とは、特に記さない限りは、ハイブリッド車両およびプラグインハイブリッド車両の両方に適用される。ハイブリッド車両は、内燃エンジンおよび電気モータの両方によって駆動され得る。本明細書に記載する温度制御システムは、ハイブリッド車両が、従来の車両と同様の特性および快適さを提供するために、熱電装置を用いる一方で、燃料効率を向上させるために、より長いエンジン停止時間を達成する。最大の効率を達成するために、ハイブリッド車両は、始動/停止ストラテジーを用い、これは、通常のアイドリング状態の間、車両の内燃エンジンがエネルギーを節約するためにシャットダウンすることを意味する。この期間の間も、車両の乗員区画内部の熱的快適性を維持することが重要である。寒い天候の気候の間、キャビンの快適性を維持するために、冷媒は、本明細書に記載するようにヒータコアおよび/または熱電装置を通って循環させられ、キャビンに熱を与える。熱い天候の気候では、内燃エンジンを作動させることなく、キャビンを涼しく維持するために、電動コンプレッサを用いて、空調システムの従来のベルト駆動圧縮機を駆動する車両もある。しかしながら、電動コンプレッサは、特定の状況においては不充分で望ましくない場合もある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する温度制御システムは、涼しさを提供しながら、電動コンプレッサを補助するか、または電動コンプレッサに取って代わってもよい。
自動のHVAC機構(従来の車両、マイクロハイブリッド車両、および/または、ハイブリッド車両)は、乗員区画用の暖房および冷房システムの、1つまたは2つ以上の部分を補助するか、またはそれに代わるために、1つまたは2つ以上の熱電装置(TED)を含み得る。いくつかの実施形態において、マイクロハイブリッド、および/または、ハイブリッドの車両は、作動流体の循環をもたらすために電気ポンプ(例えば、送水ポンプ)を備えていてもよく、これは従来のベルト駆動ポンプに代わるか、またはエンジンがオフの間、従来のベルト駆動ポンプの代わりとなる。熱電装置に電気エネルギーを供給することにより、熱エネルギーは、1つまたは2つ以上の流体回路および/または熱交換器を介して、乗客用空気流へ、または乗客用空気流から伝達され得る。独立型の加熱器として、熱電装置は、区画およびエンジンが所望の温度に到達した後もエネルギーが供給されたままであり得る。このような構成を用いるシステムにおいて、熱電装置に印加されるエネルギーは、一度車両エンジンが乗員区画を暖房するのに充分な温度に到達すると、無駄になるおそれがある。というのも、エンジンからの廃熱は、乗員区画を暖房するのに充分である場合があるからである。しかしながら、熱電装置を暖房および冷房システムに追加することは、通常、HVACシステムのデザインに大きな影響を及ぼし、デザインは2つまたは3つ以上の熱交換器を含むことになる。それゆえ、追加の熱交換器や、通常のHVACシステムのデザインでは用いられていない多くの他の構成要素を要することなく、乗員区画を迅速かつ効率的に暖房および/または冷房可能な、改良した温度制御システムに対する需要がある。システムは、TEDが他のサブシステムによりもたらされる加熱力または冷却力を選択的に促進し、HVACシステムが、デミストが望まれる場合に空気を除湿する目的でエバポレータコアに依存することを可能にする場合に有利となる。
いくつかの実施形態は、1つまたは2つ以上の熱電装置が、単一の装置においてデュアルモードの機能性またはマルチモードの機能性を提供することを可能にする、最適なサブシステムの配置をもたらすシステム構造を含んでいる。特定の実施形態によって実施されるモードには、加熱モード、冷却モード、デミストモード、起動加熱モード、定常加熱モード、起動デミストモード、定常デミストモード、停止冷間加熱モード、停止冷却加熱モード、停止温間加熱モード、他の有用なモード、またはモードの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態は、エバポレータコアおよびヒータコアと直列のTEDの配置に関連した問題を克服するために、最適化されたTE HVACシステムを提供するシステム構造を有する。いくつかの実施形態において、快適空気流中のサブシステムの位置を最適にするために、第1および第2流体導管は、1つまたは2つ以上のブレンドドアと共に利用される。
いくつかの実施形態において、TEDは、乗員区画の暖房および冷房を補うように構成され得る。例示的な構成において、エンジンおよび熱電装置は、乗客用空気中に接続する1つまたは2つ以上の熱交換器に熱を伝達し得る。しかしながら、暖房および冷房システムに熱電装置を加えることは、通常、HVACシステムのデザインに大きな影響を及ぼし、デザインは、2つまたは3つ以上の熱交換器を含むことになる。それゆえ、付加的な熱交換器や、通常のHVACシステムのデザインでは用いられていない多くの他の構成要素を要することなく、乗員区画を迅速かつ効率的に暖房および/または冷房可能な、改良した温度制御システムに対する需要がある。システムは、乗客用空気流に接続される共通の熱交換器を通して、エンジンおよび/または熱電装置から選択的に熱を供給可能な一方で、熱電装置から冷却をもたらすことも可能である場合に有利である。
TEDを備えるHVACシステムは、デミスト機能を提供でき、曇りを取り除くため、および/または、フロントガラス上の復水の形成を防ぐために、加熱モード中に湿気が空気から取り除かれる。いくつかのシステムでは、最初に空気をエバポレータを通して、空気温度を露点を下回るように低下させ、それにより水分を凝縮および除去することによって、デミスト機能が達成される。エバポレータは、例えば、2段階の蒸気圧縮サイクルによって冷却され得る。エバポレータを通過した後、空気は加熱器(すなわち、TED)に通され、乗客の快適さのための適切な温度を達成する。
次に図2を参照すると、ヒータコア130、エバポレータ120、および熱電装置(TED)140を含むHVACシステム100の例示的な実施形態が図示されている。HVACシステム100の構成要素の少なくともいくつかは、例えば、流体を導く管などの熱エネルギー搬送手段を介して流体連通し得る。バルブ150、160および170などの制御機器は、配管を通る熱エネルギーの伝達を制御するために用いられ得る。制御装置は、システム100の様々な構成要素およびそれらの相対的な流体連通を制御するように構成され得る。図示される実施形態において、バルブ160が開放されると、ヒータコア130およびTED140を接続する熱回路ができる。空気操作ユニット(例えば、ファン)は、空気流110を運ぶように構成され、空気流は、エバポレータ120、ヒータコア130、およびTED140と熱連通する。TED140は、1つまたは2つ以上のTE素子に電気エネルギーが印加されると、特定の方向に熱エネルギーを伝達する、1つまたは2つ以上の熱電素子を含み得る。電気エネルギーが第1の極性を用いて印加される場合、TED140は、第1の方向に熱エネルギーを伝達する。また、第1の極性とは反対の第2の極性の電気エネルギーが印加される場合、TED140は、第1の方向とは反対の第2の方向に熱エネルギーを伝達する。
いくつかの実施形態においては、蓄熱装置123がHVACシステムに連結される。図2に示すように、蓄熱装置123は、エバポレータ120に連結されてもよいし、エバポレータ120の一部であってもよい。蓄熱装置123を備えるエバポレータ120は、「重量(heavy-weight)」エバポレータと考えられ得る。蓄熱装置123を備えないエバポレータ120は、「軽量(light-weight)」エバポレータと考えられ得る。軽量エバポレータを用いる場合、蓄熱装置123は、エバポレータ120、ヒータコア130、および/または、TED140の、上流または下流など、HVACシステム100に沿うあらゆる場所に配置され得る。HVACシステム100は、HVACシステム100に向けられる電気エネルギーを熱出力へと変換し、この熱出力を蓄熱装置123で保存し得る。1つまたは2つ以上の熱電装置が、電気出力を熱出力へと変換するために利用され得るが、任意の適切な、電気出力から熱出力への変換装置が用いられ得る。熱出力を保存するために、蓄熱装置123は、ワックス(高温の相変化物質)と水(低温の相変化物質)などの、高温および低温両方の相変化物質を含み得る。HVACシステム100は、オルタネータ、回生ブレーキシステム発電機、および/または、廃熱回収システムなどの、システムからの利用可能な電気エネルギーを用いるために、蓄熱装置123を利用でき、これは、2005年7月19日に出願された米国特許出願第11/184,742号明細書にさらに記載されており、その内容全体は、参照によりこれより本明細書に組み込まれ、本明細書の一部と考慮されるべきである。いくつかの実施形態において、圧縮機ベースの冷却システムは、エンジン13が作動し、圧縮機ベースの冷却システムに電力を供給している間、蓄熱装置123に熱エネルギーを保存するために用いられ得る。エンジン13が、本明細書に記載するように停止されると、蓄熱装置123の熱エネルギーは、エンジンの始動、および/または、TED140の動作を要することなく、より長い期間の間冷却をもたらすために利用され得る。蓄熱装置123は、本明細書に記載するように、冷却をもたらす間エンジンの始動を要することなくより長い期間提供するために、TED140と用いられ得る。例えば、エンジンが停止されると、蓄熱装置123は最初に空気流を冷却し得る。蓄熱装置123に保存される熱エネルギーが空気流によって吸収されると、空気流の冷却を継続するために、TED140が関与し得る。いくつかの実施形態において、同様の概念は、加熱モードの間蓄熱装置123を利用して、より長いエンジン停止時間をもたらすために適用され得る。例えば、エンジンが停止されると、蓄熱装置123は最初に空気流を冷却し得る。蓄熱装置123に保存される熱エネルギーが空気流に伝達されると、空気流の加熱を継続するために、TED140が関与し得る。
加熱モードと呼ばれ得る、第1モードにおいて、バルブ150は、ヒータコア130を、車両エンジン、分離した燃料燃焼エンジン、電気発熱体、または他のあらゆる熱源などの熱エネルギー源(図示せず)と熱連通させるために開放している。エバポレータ120は、空気流とエバポレータ120との間で移動される熱エネルギーを最小限にするために、熱エネルギーシンクと流体連通しない。ヒータコア130からの熱エネルギーは、空気流110に伝達される。空気流に補助的な加熱を与えるために、バルブ160は開放していてもよく、これはTED140とヒータコア130との間の熱回路を開放し、この場合TED140は、熱エネルギー源と熱連通している。電気エネルギーは、熱エネルギーを空気流110へ伝達させる極性で、TED140に印加される。
冷却モードと呼ばれ得る、第2モードにおいて、バルブ150およびバルブ160は閉鎖され、バルブ170が開放している。したがって、ヒータコア130と熱エネルギー源との間の流体の流れは、ヒータコア130から空気流110へ伝達される熱エネルギーを最小限にするために、停止される。エバポレータ120は、冷媒などの流体を、エバポレータ120を通して流す、圧縮機ベースの冷却システムなどの、熱エネルギーシンク(図示せず)と流体連通している。エバポレータ120は、空気流110から離れるように熱エネルギーを移動させる。TED140はここで、バルブ170を介して、補助的なラジエーターや冷却システムなどの熱エネルギーシンクと流体連通し、空気流110から離れるように付加的な熱エネルギーを移動させるために用いられ得る。TEDの極性は、第1モードで用いられた極性と反対である。
デミストモードと呼ばれ得る、第3モードにおいて、バルブ150は開放し、バルブ170は閉鎖される。ヒータコア130は、熱エネルギー源と熱連通する。エバポレータ120は、熱ヒートシンクと熱連通する。空気流110に補助的な加熱を与えるために、バルブ160が開放されてもよいので、TED140は熱エネルギー源と熱連通し、この場合、TED140は、熱エネルギー源から空気流110へと熱エネルギーを伝達する。第3モードは、最初に、エバポレータ120によって、空気が凝縮され水分が除去されて、空気流110は露点を下回って冷却される、曇り取り(demister)として機能する。次に、空気流110は、乗客の快適性のための適切な温度を達成するために、ヒータコア130により加熱され、必要であればTED140により加熱される。
図3は、空気流18が乗員区画(図示せず)に入る前に通る、HVACシステム2の例示的な実施形態を示す。HVACシステム2は、冷却装置12、ヒータコア14、および熱電装置(TED)16を含んでいる。HVACシステム2の構成要素の少なくともいくつかは、例えば流体導管などの熱エネルギー搬送手段を介して、互いに流体連通し得る。制御装置は、HVACシステム2の様々な構成要素、およびそれらの相対的な流体連通を制御するように構成され得る。ヒータコア14は、一般に、車両エンジン、分離した燃料燃焼エンジン、電気発熱体、または他のあらゆる熱源などの熱エネルギー源と熱連通するように構成される。熱源からの熱エネルギーは、管を通る冷媒を介して、ヒータコア14へと伝達され得る。
エバポレータや熱電装置などの冷却装置12は、圧縮機ベースの冷却システム、コンデンサ、または他のあらゆる冷却システムなどの熱ヒートシンクと熱連通する。TED16は、電気エネルギーが印加されると熱エネルギーを特定の方向へ伝達する、1つまたは2つ以上の熱電素子を含み得る。電気エネルギーが第1の極性を用いて印加される場合、TED16は、第1の方向に熱エネルギーを伝達する。また、第1の極性と反対の第2の極性の電気エネルギーが印加される場合、TED16は、第1の方向と反対の第2の方向に熱エネルギーを伝達する。TED16は、車両エンジン、分離した燃料燃焼エンジン、電気発熱体、または他のあらゆる熱源などの熱エネルギー源と熱連通および流体連通が可能ように構成される。また、TED16は、低温コアまたはラジエーター、圧縮機ベースの冷却システム、または他のあらゆる冷却システムなどの熱エネルギーシンクと熱連通および流体連通が可能なように構成される。TED16は、加熱、冷却、またはデミストなどの、HVACシステム2のモードによって、空気流18の加熱または冷却のいずれかを行うように構成される。
HVACシステム2の空気流18は、1つまたは2つ以上のチャネルまたは導管を通って流れ得る。いくつかの実施形態において、第1チャネル4および第2チャネル6は、仕切り20によって分離されている。特定の実施形態において、第1および第2チャネル4、6は、図3に示すように、およそ同じ大きさ(例えば、およそ同じ高さ、長さ、幅、および/または、断面積)のものである。しかしながら、別の態様において、第1および第2チャネル4、6は、大きさが異なっていてもよい。例えば、第1および第2チャネル4、6の幅、高さ、長さ、および/または断面積は、異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、第1チャネル4は第2チャネル6よりも大きい。別の実施形態において、第1チャネルは第2チャネルよりも小さい。さらなる実施形態においては、任意の数のチャネルまたは導管を作り出すために、付加的な仕切りが用いられ得る。仕切りは、任意の適切な材料、形状、または構成のものであってもよい。仕切りは、導管またはチャネルを部分的または完全に分離するために機能でき、開口部、隙間、バルブ、ブレンドドア、他の適切な構成、またはチャネル間の流体連通を可能にする構成の組み合わせを有し得る。仕切りの少なくとも一部は、第1チャネル4を第2チャネル6から熱的に絶縁し得る。
特定の実施形態において、HVACシステム2は、第1および第2チャネル4、6を通過する空気流を制御するために動作可能となるように構成される第1可動素子を備える。例えば、入口ブレンドドアとも呼ばれ得る、第1ブレンドドア8は、第1および第2チャネル4、6の上流(例えば、第1および第2チャネル4、6の入口の近く)に位置付け可能であって、第1および第2チャネル4、6を通過する空気流を制御するために動作可能である。第1ブレンドドア8は、第1および第2チャネル4、6の一方または両方を通る空気流を、選択的に、変更、許可、妨害、または阻止し得る。特定の構成において、第1ブレンドドア8は、チャネルの一方を通る空気流を阻止する一方で、他方のチャネルを通る空気流の全てを導き得る。また、第1ブレンドドア8は、両方のチャネルを通る空気流を、変動する量および比率とすることができる。いくつかの実施形態において、第1ブレンドドア8は仕切り20に連結され、仕切り20に対して回転する。別の第1可動素子も、本明細書に開示する特定の実施形態と適合する。
第2可動素子(例えば、第2ブレンドドア10)は、冷却装置12の下流、およびヒータコア14およびTED16の上流に配置され得る。第2可動素子は、第1チャネル4の空気を、第2チャネル6へと選択的に転換することによって、第1および第2チャネル4、6を通過する空気流を制御するように動作可能である。いくつかの実施形態において、第2ブレンドドア10は仕切り20に連結され、流体(例えば、空気)が第1および第2チャネル4、6の間を流れることが可能な開放位置と、第1および第2チャネル4、6の間の流れが実質的に妨害または阻止される閉鎖位置との間で、仕切り20に対して回転する。第1および第2ブレンドドア8、10は、制御装置または分離した制御システムによって制御され得る。いくつかの実施形態において、第1および第2ブレンドドア8、10は、互いから独立して動作し得る。他の第2可動素子も、本明細書に開示する特定の実施形態と適合する。
図示される実施形態において、冷却装置12は、ヒータコア14および熱電装置16の上流に位置付けられ、これらとは異なる導管またはチャネルに位置付けられている。第1および第2チャネル4、6は、HVACシステム2が選択的に加熱、冷却、および/またはデミストのために用いられる場合に、第1および第2ブレンドドア8、10が第1および第2チャネル4、6の間で選択的に空気流を導くように構成される。
いくつかの実施形態において、冷却装置12、ヒータコア14、および熱電装置16の1つまたは2つ以上は、空気流と熱連通するように構成される熱交換器と熱連通し得る。
図4は、加熱モードとも呼ばれ得る第1モードで構成されるHVACシステム2の例示的な実施形態を示す。このモードにおいて、第1ブレンドドア8は、空気流18が第1チャネル4に入ることを実質的に阻止または遮断し、それにより実質的に全ての空気流18を第2チャネル6内へ押し込むような位置で構成される。いくつかの実施形態において、空気流18の一部は、第1チャネル4を通過し得る。第2ブレンドドア10は、空気流18の相当な部分を、第1および第2チャネル4、6の間を通過させないように構成される。好ましくは、このモードにおいて、空気流18の相当な部分は、冷却装置12を通過しない。このモードにおいて、冷却装置12は、冷媒システムなどの熱エネルギーシンクと熱連通しないように構成されてもよく、これにより、冷媒などのリソースは、他の場所でより効率的に用いられ得る。また、第2チャネル6を通して空気流を導き、冷却装置12をバイパスすることにより、空気流18から冷却装置12内への望ましくない熱エネルギーの伝達を減少する。冷却装置12が熱ヒートシンクとアクティブに熱連通していない場合であっても、冷却装置12は一般に空気流18よりも低い温度を有するので、空気流18の相当な部分が冷却装置12と熱連通すると、冷却装置12は、空気流18の温度を、加熱前に不必要に低下させる。
第1モードにおいて、第2チャネル6と流体連通するヒータコア14は、車両エンジンなどの熱的な熱源と熱連通する。熱源からヒータコア14へ伝達される熱エネルギーは、空気流18へ伝達される。暖まったヒータコア14が、乗員区画を加熱するのに充分な熱エネルギーを空気流18へ供給する場合もあるが、補助的または代替的な熱エネルギー源として、熱電装置(TED)16が用いられ得る。ゆえに、TED16は、ヒータコア14が空気流18へ熱エネルギーを移動させる間、補助的な熱エネルギーを加え得る。TED16は、ヒータコア14と同じ熱エネルギー源と熱連通するか、または別の熱エネルギー源と熱連通するように構成され得る。空気流18に熱エネルギーを伝達する極性を用いて、電気エネルギーがTED16に供給される。補助的な加熱を最適化するために、TED16がヒータコア14の下流に位置付けられることが好ましく、これはTED16の第1熱伝達面(または主面、図示せず)と、TED16の第2熱伝達面(または廃棄面、図示せず)との間の温度差を減少し得るので、性能係数(coefficient of performance)が向上する。エンジンおよび冷媒ループが第1モードにおいて相対的に低温である場合、TED16をヒータコア14の下流に配置することによっても、TED16から空気流18に伝達される熱エネルギーが、相対的に低温のヒータコア14によって吸収されることを阻止または抑制し得るので、第1モード(または他の加熱モード)において空気流18から冷媒ループ内への熱エネルギーの伝達を抑制する。TED16は、一般には補助的な加熱に用いられるが、例えば、エンジンが暖機運転中である場合など、熱的な熱源がヒータコア14に充分な熱を供給していない場合には、主要な熱源として用いられてもよい。また、ヒータコア14が空気流18に充分な熱エネルギーを供給している場合には、TED16は関与していなくてもよい。結果として生じる空気流18は、したがって、所望の温度まで加熱され、乗員区画へと導かれる。
いくつかの実施形態において、入口ブレンドドアとも呼ばれ得る第1ブレンドドア8は、空気流18の少なくとも一部を、第2チャネル6を通して導くように構成され得るので、空気流18の一部は、乗員区画に入る前に加熱される。乗員区画をより遅い速度で加熱するために、入口ブレンドドア8は、より少ない空気流を、第2チャネルを通過させるように、および/または、より多い空気流を、空気流が加熱されない第1チャネル4を通過させるように、選択的に調整され得る。加熱速度を上げるためには、ブレンドドアは、より多くの空気流を、第2チャネル6を通して導き、より少ない空気流を第1チャネル4内へ入れるように、選択的に調整され得る。
図5は、冷却モードとも呼ばれ得る、第2モードで構成されたHVACシステム2の例示的な実施形態を示す。このモードにおいて、第1ブレンドドア8は、空気流18の少なくとも一部(例えば、空気流18の全て、実質的に全て、または相当な部分)を、冷却装置12が動作可能に接続される第1チャネル4を通して導くように構成されるので、空気流18の一部は、乗員区画に入る前に冷却される。第2ブレンドドア10は、空気流18の相当な部分を、第1および第2チャネル4、6の間で通さないように構成される。第1および第2チャネルを通る空気流18の量は、第1ブレンドドア8の位置を選択的に変更することによって調整され得る。
第2モードにおいて、エバポレータなどの冷却装置12は、例えば補助的なラジエーターなどの熱ヒートシンク(図示せず)に熱的に接続される。このモードにおいて、HVACシステム2は、空気流18から冷却装置12へ熱を伝達することによって、空気流18を冷却する。いくつかの実施形態において、熱電装置(TED)16は、第2チャネル6の空気流18に補助的な冷却を与えるために用いられ得る。TED16は、低温コアや補助的なラジエーターなどの、熱エネルギーシンク(図示せず)と熱連通するように構成され得る。電気エネルギーは、TED16に、空気流から熱エネルギーを吸収させ、次に熱エネルギーを熱ヒートシンクへと伝達する極性を用いて、TED16に供給される。ゆえに、TED16は、冷却装置12が空気流18を冷却する間、空気流18から熱ヒートシンクへの熱エネルギーの補助的な移動をもたらし得る。第2モードにおいて、ヒータコア14は作動しておらず、例えば、ヒータコア14は、熱ヒートシンク(例えば、パワートレイン冷媒)と、アクティブには実質的に熱連通していない。特定の実施形態において、ヒータコア14の作動は、バルブまたは他の制御システム(図示せず)を用いて制御でき、ヒータコア14は、熱的な熱源から動作可能に連結を解かれ得る。
より遅い速度で乗員区画を冷却するために、第1ブレンドドア8は、より少ない空気流18を、第1チャネル4を通過させるように、および/または、より多い空気流18を、第2チャネル6を通過させるように、選択的に調整され得る。冷却速度を上げるためには、第1ブレンドドア8は、より多くの空気流18が第1チャネル4を通して導かれ、より少ない空気流が第2チャネル6内へ入れられるように、選択的に調整され得る。いくつかの実施形態において、第1ブレンドドア8は、空気流18が第2チャネル6に入ることを実質的に阻止または遮断するように配置され得るので、空気流18の少なくとも実質的な部分または実質的に全てを、第1チャネル4内に押し込む。このような実施形態の特定のものにおいて、TED16は空気流18から動作可能に連結を解かれ、そうでない場合にTED16が用いる電気エネルギーは、別の場所に導かれ得る。
図6は、デミストモードとも呼ばれ得る、第3モードで構成されたHVACシステム2の例示的な実施形態を示す。このモードにおいて、第1ブレンドドア8は、空気流18の少なくとも一部(例えば、全て、実質的に全て、または相当な部分)を、冷却装置12を備える第1チャネル4を通して導き得るように構成されるので、空気流18は、空気流18から湿度を取り除くために冷却される。このモードにおいて、第2ブレンドドア10は、空気流18が第1チャネル4を通り続けることを実質的に阻止または遮断し、それにより、空気流18が冷却装置12を通過すると、空気流18の少なくとも一部を第1チャネル4から第2チャネル6内へと転換するような位置で構成される。
第3モードにおいて、エバポレータなどの冷却装置12は、第1チャネル4と流体連通可能であり、例えば補助的なラジエーター(図示せず)などの、熱ヒートシンクと熱連通可能である。このモードにおいて、HVACシステム2は、空気流18から冷却装置12へ熱を伝達することによって空気流18を冷却する。いくつかの実施形態において、冷却装置12は熱電装置であってもよい。冷却装置12が熱電装置である場合、電気エネルギーは、TEDが、空気流18から熱エネルギーを吸収し、熱エネルギーをヒートシンクに加えるように選択された極性を用いて、熱電装置に供給される。いくつかの実施形態においては、複数の熱電装置がHVACシステム2に動作可能に接続される。少なくともいくつかの実施形態において、各TEDおよび各TEDの各熱領域に導かれる熱エネルギーの極性は、独立して制御され得る。
図7に示す実施形態において、冷却装置12およびTED16は、TED16が第1チャネル4に配置される、分離したユニットであってもよい。ここでも第3モードまたはデミストモードにおいて、冷却装置12およびTED16は、第1チャネル4により流体連通し得る。電気エネルギーは、TED16が、空気流18から熱エネルギーを吸収し、熱エネルギーをヒートシンクに加えるように選択された極性を用いて、TED16に供給され得る。デミストモードにおいて、第1ブレンドドア8は、空気流18の少なくとも一部(例えば、全て、実質的に全て、または相当な部分)を、冷却装置12およびTED16を備える第1チャネル4を通して導き得るように構成されるので、空気流18は、空気流18から湿度を取り除くために冷却される。このモードにおいて、第2ブレンドドア10は、空気流18が第1チャネル4を通り続けることを実質的に阻止または遮断し、それにより、空気流18が冷却装置12を通過すると、空気流18の少なくとも一部を第1チャネル4から第2チャネル6内へと転換するような位置で構成され得る。他の実施形態に関して本明細書に記載されるように、第1、第2、および/または第3の動作モードは、図7の実施形態に関しては、空気流18から熱エネルギーを吸収するか、または空気流18へ熱エネルギーを伝達するために、必要に応じてTEDの極性を逆転することによって達成され得る。さらに、TEDは、他の実施形態に関して本明細書に記載される第1、第2、および/または第3の動作モードを達成するために、ヒータコア14の下流に加えられてもよい。
図6に戻ると、第3モードにおいて、ヒータコア14は、車両エンジン(図示せず)などの熱的な熱源と熱連通する。熱源からヒータコアへ伝達される熱エネルギーは、空気流18へ伝達される。ヒータコア14は、通常、乗員区画を加熱するのに充分な熱エネルギーを供給し得るが、熱電装置(TED)16は、補助的な熱源として用いられ得る。ゆえに、ヒータコア14が空気流18へ熱エネルギーを伝達する間、TED16は補助的な熱エネルギーを付加し得る。TED16は、エンジン(図示せず)などの熱エネルギー源と熱連通するように構成され得る。電気エネルギーは、TEDに空気流18へ熱エネルギーを伝達させる極性を用いて、TED16に供給される。いくつかの実施形態において、補助的な加熱の効率は、TED16がヒータコアの下流に配置されると向上する。これは、TED16の主面と廃棄面との間の温度差を減少させ、それにより性能係数を向上させる。また、TED16をヒータコア14の下流に配置することは、TED16から空気流18へ伝達された熱エネルギーが、エンジンおよび冷媒ループが第3モードにおいて相対的に低温である場合に、相対的に低温のヒータコア14によって吸収されることを妨害または阻止し得るので、第3モード(または他の加熱モード)において、空気流18から冷媒ループ内への熱エネルギーの伝達を阻止する。空気流18が、TED16に到達する前に、すでに乗員区画用の所望の温度になる場合、TED16は関与せず、そのリソースは別の場所へ転換され得る。
図8に示すような実施形態において、HVACシステム2は、冷却装置12が、第1チャネル4および第2チャネル6の両方の高さに及ぶように構成され得る。この実施形態においては、第1ブレンドドアは取り除かれ、ブレンドドア10のみが、本明細書に記載する動作モードを達成するために、空気流18を第1チャネル4および/または第2チャネル6へ転換し得る。第1モードまたは加熱モードにおいて、ブレンドドア10は、第1チャネル4内への空気流18を実質的に妨害または遮断するような位置(図8において振り上がった)で構成され得るので、実質的に全ての空気流18を第2チャネル6内へ押し込む。いくつかの実施形態において、空気流18の一部は、第1チャネル4を通過してもよい。第1モードでは、冷却装置12は空気流18と流体接触し得るが、冷却装置12は、冷媒システムなどの熱エネルギーシンクと熱連通しないように構成されてもよく、これにより、冷媒などのリソースは、他の場所でより効率的に用いられ得る。ヒータコア14およびTED16は、熱エネルギーを空気流18に移動させるために、加熱モードに関して本明細書に記載したように動作し得る。
いくつかの実施形態において、ブレンドドア10は、空気流18の少なくとも一部を、第2チャネル6を通して導き得るように構成されてもよいので、空気流18の一部は、乗員区画に入る前に加熱される。乗員区画をより遅い速度で加熱するために、ブレンドドア10は、より少ない空気流を、第2チャネル6を通過させるように、および/または、より多い空気流を、空気流が加熱されない第1チャネル4を通過させるように、選択的に調整され得る。加熱速度を上げるためには、ブレンドドアは、より多くの空気流が第2チャネル6を通して導かれ、より少ない空気流が第1チャネル4を通して導かれるように、選択的に調整され得る。
図8に示すような実施形態において、HVACシステム2は、第2モードまたは冷却モードで動作するようにも構成され得る。このモードにおいて、ブレンドドア10は、空気流18の少なくとも一部(例えば、図8において振り下ろすことにより、空気流18の全て、実質的に全て、または相当な部分)を、冷却装置12によって冷却された後に、第1チャネル4を通して導き得るように構成され得る。第1および第2チャネル4、6を通過する空気流18の量は、ブレンドドア10の位置を選択的に変更することによって調整でき、例えば、第2チャネル6を通る空気流18の一部を転換させ、TED16が、空気流から熱エネルギーを吸収し、熱エネルギーをヒートシンクに加えるように選択された極性を用いて、TED16に電気エネルギーを供給することによって、補助的な冷却を加えることを目的とする。ゆえに、TED16は、冷却装置12が空気流18を冷却する間、空気流18から熱ヒートシンクへの、補助的な熱エネルギーの伝達をもたらし得る。第2モードにおいて、ヒータコア14は作動していない。
図8に示すような実施形態において、HVACシステム2は、第3モードまたはデミストモードで動作するようにも構成され得る。このモードにおいて、ブレンドドア10は、第1チャネル4内への空気流18を実質的に妨害または遮断するような位置(図8において振り上がった)で構成され得るので、実質的に全ての空気流18を第2チャネル6内へ押し込む。いくつかの実施形態において、空気流18の一部は、第1チャネル4を通過してもよい。冷却装置12は作動しているので、空気流18は、空気流18から湿度を取り除くために冷却される。第3モードにおいて、エバポレータなどの冷却装置12は、HVACシステム2と流体連通可能であり、例えば、補助的なラジエーター(図示せず)などの熱ヒートシンクと熱連通可能である。このモードにおいて、HVACシステム2は、空気流18から冷却装置12へ熱を伝達することによって、空気流18を冷却し得る。いくつかの実施形態において、冷却装置12は、熱電装置であってもよい。冷却装置12が熱電装置である場合、電気エネルギーは、TEDが、空気流18から熱エネルギーを吸収し、熱エネルギーをヒートシンクに加えるように選択された極性を用いて、熱電装置に供給される。いくつかの実施形態においては、複数の熱電装置がHVACシステム2に動作可能に接続される。少なくともいくつかの実施形態において、各TEDおよび各TEDの各熱領域に導かれる熱エネルギーの極性は、独立して制御され得る。
第3モードにおいて、ヒータコア14は、車両エンジン(図示せず)などの熱的な熱源と熱連通する。熱源からヒータコアへと伝達された熱エネルギーは、空気流18に伝達され得る。ヒータコア14は、通常、乗員区画を加熱するのに充分な熱エネルギーを供給し得るが、TED16は、補助的な熱源として用いられ得る。TED16は、エンジン(図示せず)などの熱的な熱源と熱連通するように構成され得る。電気エネルギーは、TEDに、熱エネルギーを空気流18へ伝達させるような極性を用いて、TED16に供給され得る。いくつかの実施形態において、補助的な加熱の効率は、TED16がヒータコアの下流に配置される場合に向上され得る。これは、TED16の主面と廃棄面との間の温度差を減少させ得るので、性能係数を向上させる。また、TED16をヒータコア14の下流に配置することは、TED16から空気流18へ伝達された熱エネルギーが、エンジンおよび冷媒ループが第3モードにおいて相対的に低温である場合に、相対的に低温のヒータコア14によって吸収されることを妨害または阻止し得るので、第3モード(または他の加熱モード)において、空気流18から冷媒ループ内への熱エネルギーの伝達を阻止する。空気流18が、TED16に到達する前に、すでに乗員区画用の所望の温度になる場合、TED16は関与せず、そのリソースは別の場所へ転換され得る。
図9〜11は、第1、第2、および/または第3モードで動作するために、図8の実施形態に関して記載されるような空気流18を転換するように構成される他の例示的な実施形態を示す。図9の実施形態において、ブレンドドア11は、冷却装置12、ヒータコア14、およびTED16の下流に配置される。第1および第3モードにおいて、ブレンドドア11は、第1チャネル4内への空気流18を実質的に妨害または遮断するような位置(図9において振り上がった)で構成され得るので、実質的に全ての空気流18を第2チャネル6内へ押し込む。第2モードにおいて、ブレンドドア11は、空気流18の少なくとも一部(例えば、図9において振り下ろすことにより、空気流18の全て、実質的に全て、または相当な部分)を、冷却装置12によって冷却された後に、第1チャネル4を通して導き得るように構成され得る。いくつかの実施形態において、ブレンドドア11は、空気流18の他の部分を、第2チャネル6を通して導く間、空気流18の少なくとも一部を、第1チャネル4を通して導き得るように構成され得る。冷却装置12、ヒータコア14、およびTED16は、第1、第2、および/または第3動作モードを達成するために、図3〜6に関して本明細書に記載されるように動作するよう構成され得る。
図10の実施形態において、フロー転換素子22は、第1、第2、および/または第3モードの操作レジームを達成するために、本明細書に記載する図9のブレンドドア11と実質的に同じように動作するよう構成される。フロー転換素子22は、第1チャネル4または第2チャネル6の一方を通る空気流18の全てまたは実質的に全てを遮断するか、または空気流の他の部分を、第2チャネル6を通して導く間、空気流18の少なくとも一部を、第1チャネル4を通して導くように構成され得る(図10の実施形態において、振り上げられるか振り下げられる)。図10に示すように、フロー転換素子22は、ヒータコア14およびTED16の下流にあってもよい。いくつかの実施形態において、フロー転換素子22は、ヒータコア14およびTED16の上流にあってもよい。冷却装置12、ヒータコア14、およびTED16は、第1、第2、および/または第3動作モードを達成するために、図3〜6に関して本明細書に記載されるように動作するよう構成され得る。
図11の実施形態において、それぞれ、冷却装置12の下流の、第1チャネルおよび第2チャネルに配置される第1バルブ23および第2バルブ24は、第1、第2、および/または第3モードの操作レジームを達成するために、本明細書に記載する図9のブレンドドア11と実質的に同じように機能的に動作するよう構成される。図11に示すように、第1バルブ23および第2バルブ24は、ヒータコア14およびTED16の下流にあってもよい。いくつかの実施形態において、第1バルブ23および/または第2バルブ24は、ヒータコア14およびTED16の上流にあってもよい。第1チャネル4を通る空気流18の全てまたは実質的に全てを遮断するためには、第1バルブ23は、第1チャネル4を通る空気流18を制限するように構成され得る(閉鎖される)一方で、第2バルブ24は、第2チャネル6を通して空気流18を導くように構成され得る(開放される)。第2チャネル6を通る空気流18の全てまたは実質的に全てを遮断するためには、第1バルブ23は、第1チャネル4を通して空気流18を導くように構成され得る(開放される)一方で、第2バルブ24は、第2チャネル6を通る空気流18を制限するように構成され得る(閉鎖される)。空気流18の少なくとも一部を、第1チャネル4を通して導き、空気流18の他の部分を、第2チャネル6を通して導くために、第1バルブ23および第2バルブ24は、両方とも開放するように構成されてもよいし、バルブの一方が開放し、他方のバルブが部分的にのみ開放するように構成されてもよい。冷却装置12、ヒータコア14、およびTED16は、第1、第2、および/または第3動作モードを達成するために、図3〜6に関して本明細書に記載されるように動作するよう構成され得る。
本明細書に記載される特定の実施形態において、HVACシステムの加熱機能および冷却機能は、HVACシステム内の実質的に異なる部分に位置付けられ得る、2つまたは3つ以上の異なるサブシステムによって実施される。いくつかの代替的な実施形態においては、熱的な調整、ヒトの快適性およびシステム効率の向上を達成するために、単一のTEDが同時に加熱および冷却を行う。これは、例えば、快適空気を同時に冷却および加熱するために、ユーザが選択した電圧極性を用いて励起され得る分離した電気領域を備える、単一のTEDを構成することによって達成され得る。本明細書で用いる場合、「バイサーマル(bithermal)熱電装置」および「バイサーマルTED」という語は、2つまたは3つ以上の電気領域を備える熱電装置を広く言及し、電気領域は、所望の空調を達成するために、任意の適切な電気的、幾何学的または空間的な構成を有し得る。
バイサーマルTEDは、それが空気から空気へのものであっても、液体から空気へのものであっても、液体から液体へのものであっても、熱電回路が複数の熱領域へと細分化されるように設計および構成され得る。熱電装置は、Bellらにより教示される高密度の利点を用いて構成されてもよいし、従来の技術を用いて構成されてもよい(例えば、米国特許第6,959,555号明細書および米国特許第7,231,772号明細書を参照)。Bellらにより教示されるような新しい熱電サイクルの利点は、用いられても用いられなくてもよい(例えば、参照によりその全体が本明細書に含まれる、L. E. Bell、「Alternate Thermoelectric Thermodynamic Cycles with Improved Power Generation Efficiencies」、22nd Int'l Conf. on Thermoelectrics、エロー、フランス(2003)、米国特許第6,812,395号明細書、米国特許出願公開第2004/0261829号明細書を参照)。
いくつかの実施形態において、制御装置またはエネルギー管理システムは、周囲条件、標的区画の気候条件、および標的区画の所望の環境状態にしたがって、動力使用を最適化するために、バイサーマルTEDを動作させる。デミスト用途において、例えば、バイサーマルTEDへの動力は、温度および湿度レベルを報告するセンサによって得られるデータにしたがって管理され得るので、TEDは、快適空気を調整および除湿するために、電気エネルギーを適切に用いる。
いくつかの実施形態は、例えば、冷却、除湿、および/または加熱などの、2つまたは3つ以上の機能を、単一の装置へと結合することによって、寒い気候の間の快適空気のデミストに用いられる装置の数を減らす。特定の実施形態は、快適空気をデミストするために、気候条件に応じた需要に基づく冷却力を提供することによって、システム効率を向上させる。いくつかの実施形態において、冷却システムは、要求に比例して冷却力を提供する。
特定の実施形態は、エネルギー効率のよい方法で快適空気の温度を微調整する能力を提供することによって、より広範囲の熱的な管理および制御を可能にする。いくつかの実施形態は、シンクおよびソースの利用に応じて熱交換器の作動流体ループをさらに分離することによって、単一の装置において熱シンクおよび熱源を有利に利用する能力を提供する。
図12〜13に示す例示的なHVACシステム300において、加熱および冷却の機能性は、第1熱領域308および第2熱領域310を有する、単一または実質的に隣接する加熱冷却器サブシステム306において実施される。いくつかの実施形態において、加熱冷却器サブシステム306は、バイサーマル熱電装置(またはバイサーマルTED)である。第1熱領域308および第2熱領域310はそれぞれ、快適空気流F5を独立して、選択的に加熱または冷却するように構成され得る。さらに、熱領域308、310はそれぞれ、独立して構成可能な電気ネットワークおよび作動流体ネットワークによって支持され得る。制御装置(図示せず)は、加熱冷却器サブシステム306を、利用可能な複数のモードのいずれかで動作させるために、電気ネットワークおよび作動流体ネットワークを制御するように構成され得る。例えば、制御装置は、デミスト、加熱または冷却モードが選択されると、図12の表に示す構成にしたがって、HVACシステム300の電気および作動流体のネットワークを調整し得る。
HVACシステム300に関する動作モードを選択するために、任意の適切な技術が用いられ得る。例えば、動作モードは、少なくとも部分的に、温度、ファン速度、ベント位置などの1つまたは2つ以上の設定を選択するためにオペレータに提示される、ユーザー・インターフェースを介して選択され得る。いくつかの実施形態において、動作モードは、少なくとも部分的に、乗員区画の温度および湿度を測定するための1つまたは2つ以上のセンサを監視する制御装置によって選択される。制御装置は、周囲環境の条件を検出するセンサも監視し得る。制御装置は、デミストモード、加熱モードおよび冷却モードの中から選択するために、センサ、ユーザーコントロール、他のソースまたはソースの組み合わせから受信した情報を用い得る。選択された動作モードに基づき、制御装置は、所望の特徴を有する快適空気を乗員区画に提供するために、1つまたは2つ以上のポンプ、ファン、動力供給装置、バルブ、圧縮機、他のHVACシステム構成要素、またはHVACシステム構成要素の組み合わせを動作させ得る。
図13に示す例示的な実施形態において、HVACシステム300は、空気チャネル302、空気チャネル302を通して空気流F5を導くように構成されるファン304、空気チャネル302を通って流れる空気流F5を加熱、冷却、および/またはデミストするように構成されるバイサーマルTED306、空気流F5を冷却するように構成される任意の冷却装置312、空気流F5を加熱するように構成される任意の加熱装置314、動力供給装置(図示せず)、動力供給装置とバイサーマルTED306との間で接続される電気接続E1〜E4、熱源(図示せず)、ヒートシンク(図示せず)、バイサーマルTED306と1つまたは2つ以上の熱源またはシンクとの間で作動流体を運搬するように構成される作動流体導管F1〜F4、他のHVACシステム構成要素、または任意の適切な構成要素の組み合わせを含んでいる。熱源は、例えば、パワートレイン冷媒、モータブロック、メインラジエーター、排気システムの構成要素、バッテリーパック、別の適切な材料、または材料の組み合わせなど、自動車によって生じられる廃熱の収納場所を1つまたは2つ以上含み得る。ヒートシンクは、補助的なラジエーター(例えば、パワートレインの冷媒回路に接続されていないラジエーター)、蓄熱装置、別の適切な材料、または材料の組み合わせを含み得る。
デミストモードの動作において、バイサーマルTED306の第1熱領域308は、快適空気F5を冷却および除湿する。制御装置は、動力供給装置に、第1熱領域308に接続される第1電気回路E1〜E2を介して、第1の極性(または冷却極性)の電力を供給させる。制御装置は、TED306の第1熱領域308の高温側に接続される第1作動流体回路F1〜F2を、例えば補助的なラジエーターなどの、ヒートシンクと熱連通させる。TED306の第1熱領域308に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、快適空気F5から第1作動流体回路F1〜F2へと導かれる。
デミストモードにおいて、バイサーマルTED306の第2熱領域310は、空気が第1熱領域308を通過した後に、除湿された快適空気F5を加熱する。制御装置は、動力供給装置に、第2熱領域310に接続される第2電気回路E3〜E4を介して、第2の極性(または加熱極性)の電力を供給させる。制御装置は、TED306の第2熱領域310の低温側に接続される第2作動流体回路F3〜F4を、例えばパワートレイン冷媒などの、熱源と熱連通させる。TED306の第2熱領域310に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、第2作動流体回路F3〜F4から快適空気F5へと導かれる。制御装置は、快適空気F5が所望の温度および/または湿度に達するように、各熱領域において、快適空気F5へ、または快適空気F5から移動される熱エネルギーを調節し得る。快適空気F5はその後、乗員区画へと導かれ得る。
加熱モードの動作が選択される場合、TED306の第1および第2熱領域308、310の両方が、快適空気F5を加熱する。制御装置は、動力供給装置に、熱領域308、310に接続される第1および第2電気回路E1〜E4を介して、加熱極性の電力を供給させる。制御装置は、TED306の低温側に接続される作動流体回路F1〜F4を、例えばパワートレイン冷媒などの、熱源と熱連通させる。TED306の第1および第2熱領域308、310の両方に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、作動流体回路F1〜F4から快適空気F5へと導かれる。
冷却モードの動作が選択される場合、バイサーマルTED306の第1および第2熱領域308、310の両方が、快適空気F5を冷却する。制御装置は、動力供給装置に、熱領域308、310に接続される第1および第2電気回路E1〜E4を介して、冷却極性の電力を供給させる。制御装置は、TED306の高温側に接続される作動流体回路F1〜F4を、例えば補助的なラジエーターなどの、ヒートシンクと熱連通させる。TED306の第1および第2熱領域308、310の両方に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、快適空気F5から作動流体回路F1〜F4へと導かれる。
図12〜13に示すHVACシステム300は、例えばエバポレータなどの、冷却装置312、および、例えばヒータコアなどの、加熱装置314を任意に含み得る。冷却装置312および加熱装置314は、HVACシステム300が特定のモードで作動される間、バイサーマルTED306の冷却、デミストおよび加熱機能の1つまたは2つ以上を補足するか、またはそれに代わるように構成され得る。例えば、パワートレイン冷媒が、ヒータコア314を通るときに、すでに快適空気F5を所望の温度にするのに充分に高い温度に到達している場合、ヒータコア314は、TED306に代わって、快適空気F5を加熱するために用いられ得る。図13に示す例示的な実施形態は、冷却装置312および/または加熱装置314がバイサーマルTED306の上流に配置され得ることを示しているが、冷却装置312および加熱装置314の少なくとも1つは、バイサーマルTED306の下流に配置されてもよいことが理解される。例えば、いくつかの実施形態において、HVACシステム300がデミストモードで作動される場合、バイサーマルTED306の熱領域308、310の少なくとも1つは、TED306の下流に配置される加熱装置が除湿された空気を加熱する間、快適空気F5を冷却または除湿するために用いられ得る。
図14〜16に示す加熱冷却器400の例示的な実施形態において、第1流体流F1は、2つの熱電回路領域402、408を有するバイサーマルTED306の第1の側に位置付けられる2つの熱交換領域404、410を通過する。第2流体流F2は、バイサーマルTEDの第2の側に位置付けられる2つの熱交換領域406、412を通過する。第1熱電回路領域402および第2熱電回路領域408はそれぞれ、互いから独立して、所望の方向へ選択的に熱エネルギーを移動させるように構成され得る。さらに、熱電回路領域402、408はそれぞれ、独立して構成可能な電気回路経路E1〜E2、E3〜E4に接続され得る。制御装置は、複数の利用可能なモードの1つで加熱冷却器400を動作させるために、電気ネットワークE1〜E4および流体流F1〜F2を制御するように構成され得る。例えば、デミスト、加熱、または冷却モードが選択されると、制御装置は、図14の表に示す構成にしたがって、加熱冷却器400の電気ネットワークを調整し得る。
加熱冷却器400に関する動作モードの選択には、図12〜13に示すHVACシステム300に関して前述した技術も含む、任意の適切な技術が用いられ得る。
図15〜16に示す例示的な実施形態において、加熱冷却器400は、第1熱電回路領域402の両側と熱連通する、第1の熱交換領域の組404、406を含む。第2の熱交換領域の組410、412は、第2熱電回路領域408の両側と熱連通している。第1および第2熱電回路領域402、408は、熱交換領域を通って流れる流体を加熱、冷却、および/またはデミストするように構成される。電力供給装置(図示せず)は、独立した電気回路経路E1〜E2、E3〜E4を用いて、熱電回路領域402、408のそれぞれに動力を提供し得る。加熱冷却器は、TEDと熱連通する熱交換領域404および410、406および412を通して、流体流F1〜F2を運搬するように構成される流体導管を含み得る。
デミストモードの動作において、加熱冷却器400の第1熱電回路領域402は、主要な流体導管の第1熱交換領域404を通って流れる主要な流体流F1を冷却する。制御装置は、動力供給装置に、第1熱電回路領域402に接続される第1電気回路E1〜E2を介して、第1の極性(または冷却極性)の電力を供給させる。作動流体導管の第1熱交換領域406を通って流れる作動流体流F2は、第1熱電回路領域402の高温側から熱を取り除く。作動流体流F2は、流体流F1〜F2が加熱冷却器400を横断するときに、主要な流体流F1の流れの方向と逆に流れ得る。加熱冷却器400の第1熱電回路領域402に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、主要な流体流F1から作動流体流F2へと導かれる。いくつかの実施形態において、作動流体流F2は、例えば補助的なラジエーターなどの、ヒートシンクと熱連通する。代替的な実施形態において、制御装置は、デミストモードが選択される場合、作動流体流F2を、主要な流体流F1に沿って標的区画へと導き得る。
デミストモードにおいて、加熱冷却器400の第2熱電回路領域408は、流体が第1熱交換領域404を通過し、主要な流体導管の第2熱交換領域410を通って流れる間、主要な流体流F1を加熱する。制御装置は、動力供給装置に、第2熱電回路領域408に接続される第2電気回路E3〜E4を介して、第2の極性(または加熱極性)の電力を供給させる。作動流体導管の第2熱交換領域412を通って流れる作動流体流F2は、第2熱電回路領域408の低温側と熱連通する。作動流体流F2の流れの方向が、主要な流体流F1の流れの方向と逆である場合、作動流体流F2は、作動流体導管の第1熱交換領域406へ流れる前に、第2熱交換領域412を通過する。加熱冷却器400の第2熱電回路領域408に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、作動流体流F2から主要な流体流F1へと導かれる。
加熱モードの動作が選択されると、加熱冷却器400の第1および第2熱電回路領域402、408の一方または両方が、主要な流体導管の第1および第2熱交換領域404、410を通って流れる主要な流体流F1を加熱する。制御装置は、動力供給装置に、熱電回路領域402、408に接続される第1および第2電気回路E1〜E4を介して、加熱極性の電力を供給させる。第1および第2熱交換領域406、412を通って流れる作動流体流F2は、熱電回路領域402、408の低温側に熱を伝達する。いくつかの実施形態において、制御装置は、加熱モードが選択されると、作動流体流F2を、例えばパワートレイン冷媒などの熱源と熱連通させる。加熱冷却器400の第1および第2熱電回路領域402、408に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、作動流体流F2から主要な流体流F1へと導かれる。いくつかの実施形態では、主要な流体流F1が、熱電回路領域402、408の両方が活動していなくても所望の温度に達することが可能であると判断されると、電力は、熱電回路領域402、408の一方のみに提供される。
冷却モードの動作が選択されると、加熱冷却器400の第1および第2熱電回路領域402、408の両方が、主要な流体導管の第1および第2熱交換領域404、410を通って流れる主要な流体流F1を冷却する。制御装置は、動力供給装置に、熱電回路領域402、408に接続される第1および第2電気回路E1〜E4を介して、冷却極性の電力を供給させる。第1および第2熱交換領域406、412を通って流れる作動流体流F2は、熱電回路領域402、408の高温側から熱を取り除く。いくつかの実施形態において、制御装置は、冷却モードが選択されると、作動流体流F2を、例えば補助的なラジエーターなどのヒートシンクと熱連通させる。加熱冷却器400の第1および第2熱電回路領域402、408に提供される電力の極性により、熱エネルギーは、主要な流体流F1から作動流体流F2へと導かれる。いくつかの実施形態では、主要な流体流F1が、熱電回路領域402、408の両方が作動していなくても所望の温度に達することが可能であると判断されると、電力は、熱電回路領域402、408の一方のみに提供される。
次に図17を参照すると、エンジン103(および/または、例えば、バッテリー、電子装置、内燃エンジン、電気モータ、車両の排気、ヒートシンクなどの、他の発熱システム、相変化物質、正温度係数装置などの、蓄熱システム、および/または、公知または近年開発されている発熱システム)、熱電装置(TED)112、伝熱装置151、および乗客用空気チャネル19を含む温度制御システムの一実施形態が示されている。伝熱装置151は、乗客用空気チャネル19に配置される。図示される実施形態において、TED112は、液体から気体への伝熱装置である。ゆえに、TED112の少なくとも一部も、乗客用空気チャネル19内に配置され得る。乗客用空気チャネル19は、快適空気がチャネル19を通過し、伝熱装置151およびTED112と熱連通するように構成され得る。いくつかの実施形態において、空気操作ユニット(例えば、ファン)は、空気流を運搬するように構成される。システムの構成要素の少なくともいくつかは、例えば、流体伝動管などの熱エネルギー搬送手段を介して流体連通し得る。バルブ125、135、145および165などのアクチュエータは、管を通した熱エネルギーの伝達を制御するために用いられ得る。コントローラなどの制御機器は、システムの様々な構成要素およびそれらの相対的な流体連通を制御するように構成され得る。
図示される実施形態において、第1モードでは、バルブ135および145が開放し、バルブ125および165が閉鎖している場合、TED112とエンジン103との間で熱連通がある。第1回路、または回路線111、131、および141を含む熱的な供給源回路では、冷媒などの流体が循環され、熱エネルギーがエンジン103とTED112との間で伝達される。TED112は、第1回路と乗客用空気チャネル19との間の熱エネルギーの伝達を可能にする特定の極性の電気エネルギーを供給される。第1モードにおいて、TED112は、第1回路から乗客用空気チャネル19の空気流へ、熱エネルギーを送り込む。
第2モードでは、バルブ135、145が閉鎖し、バルブ125、165が開放している。循環している流体は、エンジン103と伝熱装置151との間の熱連通を可能にする。第2回路、または回路線111、121、および161を含むバイパス回路では、冷媒などの流体が循環され、熱エネルギーがエンジン103と伝熱装置151との間で伝達される。TED112はバイパスされ、もはやエンジン103と熱連通していない。この動作モードにおいて、流体の流れは熱回路141で停止され、電気エネルギーはTED112に供給されない。いくつかの実施形態において、システムは、第1モードと第2モードの動作の間で切り替わり得る。いくつかの実施形態において、低温コア(図示せず)が、熱回路111に動作可能に接続されるか、または選択的に動作可能に接続され、伝熱装置151、TED112、および/または温度制御システムの他の素子から、周囲空気へと熱エネルギーを伝達するために用いられ得る。例えば、低温コアは、少なくともいくつかの動作モードにおいて、エンジン103と平行に接続されてもよいし、エンジン103の代わりに接続されてもよい。
TED112は、電気エネルギーが印加されると特定の方向に熱エネルギーを伝達する、1つまたは2つ以上の熱電素子を含み得る。電気エネルギーが第1の極性を用いて印加される場合、TED112は、第1方向に熱エネルギーを伝達する。また、電気エネルギーが第1の極性とは反対の第2の極性を用いて印加される場合、TED112は、第1方向と反対の第2方向に熱エネルギーを伝達する。TED112の加熱端部が乗客用空気チャネル19と熱連通するようにシステムを構成することによって、第1の極性の電気エネルギーが印加されると、TED112は、乗客用空気チャネル19の空気流へ熱エネルギーを伝達するように構成され得る。さらに、TED112の冷却端部はエンジン103と熱連通し得るので、TED112は、エンジンが接続される回路から熱エネルギーを引き出す。特定の実施形態において、制御システム(図示せず)は、加熱モードと冷却モードとの間で選択するために、TED112に印加される電気エネルギーの極性を調節する。いくつかの実施形態において、制御システムは、加熱または冷却容量を選択するために、TED112に印加される電気エネルギーの大きさを調節する。
図18は、車両の乗員区画において温度を制御する方法を示す。この方法は、熱交換器を横切って空気流を移動させることを含んでいる。空気流は、乗員区画に入る前に、ダクトなどの、1つまたは2つ以上の乗客用空気チャネルを通って移動し得る。最初に、制御システムは、TEDが熱源から乗客用空気チャネルへ熱エネルギーを送り込む、第1モードで動作する。制御システムは、1つまたは2つ以上の切り替え基準が満たされるまで、第1モードで動作し続ける。1つまたは2つ以上の基準が満たされると、制御システムは第2の動作モードへと切り替わる。一実施形態において、制御システムは、エンジンまたは別の熱源を通って循環する冷媒が空気流を加熱する準備ができた状態になった場合に、第2モードへと切り替わる。第2モードにおいて熱エネルギーは、エンジンまたは別の熱源から熱交換器へと伝達される。TEDはバイパスされ、熱源または熱交換器と実質的な熱連通にない。この構成において、冷媒などの流体は、バイパス回路を通って流れるので、熱エネルギーはバイパス回路で生じる。システムは、流体の流れにTEDをバイパスさせるために、バルブなどの、1つまたは2つ以上のアクチュエータも動作させ得る。一実施形態において、制御装置は、動作モードを切り替えるために、バルブを制御する。第2動作モードにおいて、熱交換器は、従来の車両HVACシステムにおけるヒータコアとほぼ同様に作用し得る。
動作モードを切り替えるための1つまたは2つ以上の基準は、任意の適切な基準であればよく、車両の特性や温度パラメータに限定されない。いくつかの実施形態において、流体の流れを切り替えるための基準には、アルゴリズム、ユーザの操作または非操作、熱的なエネルギー源の温度、流体温度、経過時間、および気体温度の1つまたは2つ以上が含まれる。特定の実施形態において、基準は、好みに応じて、ユーザが特定したものまたはユーザが調整したものであってもよい。一実施形態において、第1モードから第2モードへの切り替えは、エンジンが閾値温度に達すると生じる。別の実施形態において、切り替えは、流体回路が閾値温度に達すると生じる。さらに別の実施形態において、切り替えは、気体温度が閾値温度に達すると生じる。
図19を参照すると、乗客用空気チャネル19の空気流を加熱および冷却するように構成され得る、温度制御システムの一実施形態が示される。システムは、TED112、伝熱装置151、低温コアまたはヒートシンク171、熱的なエネルギー源181、および複数のアクチュエータ125、135、145、165、175、185を備える。複数のアクチュエータは、本明細書に記載するように、回路を通る流体または冷媒の流れを制限し得る。伝熱装置151は、乗客用空気チャネル19に配置される。液体から空気への実施形態で示されているTED112も、乗客用空気チャネル19に配置され得る。乗客用空気チャネル19は、空気流がチャネル19を通過し、伝熱装置151およびTED112と熱連通し得るように構成される。いくつかの実施形態において、空気操作ユニット(例えば、ファン)は、空気流を運搬するように構成される。システムはさらに、低温コア171および少なくとも1つのバルブ175を含むヒートシンク回路170を備える。TED112は、作動流体回路142を介してヒートシンク回路170と熱連通する。またシステムは、熱的なエネルギー源181および少なくとも1つのバルブ185を含む熱源回路180を備える。TED112は、作動流体回路142を介して熱源回路180と熱連通する。いくつかの実施形態は、伝熱装置151および少なくとも1つのバルブ125を含む熱伝達回路121も備える。熱は、空気流と、伝熱装置151およびTED112との間で伝達される。一実施形態において、熱的なエネルギー源181は自動車エンジンであり、低温コア171はラジエーターである。いくつかの実施形態において、熱エネルギー源は、バッテリー、電子装置、内燃エンジン、車両の排気、ヒートシンク、相変化物質などの蓄熱システム、正温度係数装置、および/または、公知または近年開発された任意の発熱システムを含み得る。また、流体の流れを生じるために、ポンプがシステムと機能するように構成され得ることも検討される。いくつかの実施形態において、マイクロハイブリッドおよび/またはハイブリッドの車両は、従来のベルト駆動ポンプに取って代わるか、エンジンが停止されている間、従来のベルト駆動ポンプの代わりとなる、作動流体の循環を提供するために、電気ポンプ(例えば、送水ポンプ)を実装し得る。
以下の記載は、TED112のみが加熱および冷却の両方に用いられ得る、統合されたシステムの多様性を示す。システムは、加熱モードまたは冷却モードが選択されているかに応じて、熱源回路180またはヒートシンク回路170を通して冷媒を流す、バルブ175および185の少なくとも1つを動作させることによって、異なるモードでの操作のために構成され得る。加熱モードにおいて、開放バルブ185および閉鎖バルブ175は、冷媒を、熱源回路180を通して流し、ヒートシンク回路170を通しては流さない。このモードにおいて、TED112は第1の極性で動作し、熱源回路180からの熱エネルギーを乗客用空気チャネル19の空気流へ伝達するように構成される。伝熱装置151は、開放バルブ125および閉鎖バルブ135による熱移動をさらに向上させるために、TED112と動作されることも可能である。いくつかの実施形態において、伝熱装置151は、前述のようにTED112なしで動作され得る。
冷却モードにおいて、閉鎖バルブ185および開放バルブ175は、冷媒を、ヒートシンク回路170を通して流し、熱源回路180を通しては流さない。このモードにおいて、TED112は第1の極性と反対の第2の極性で動作し、乗客用空気チャネル19からヒートシンク回路170へ熱エネルギーを移動させるように構成され、これは空気流からヒートシンク回路170へと熱エネルギーを移動させることにより空気流の温度を低下させる。
図20は、加熱および冷却のためにTEDを利用する、図19に示すシステムの実施形態が辿り得る温度制御システムの操作方法の別の実施形態を示す。この実施形態において、空気流は、伝熱装置およびTEDを横切って、乗員区画内へと移動する。特定の実施形態において、システムは、冷媒などの流体を、伝熱装置および/または熱電装置(TED)と熱連通する、第1回路または伝熱回路に循環させる。システムは、加熱モードまたは冷却モードのどちらが選択されているかに関する表示を受ける。加熱モードが選択される場合、システムは、流体を、熱エネルギー源、伝熱装置、および/またはTEDと熱連通する熱源回路に流す。加熱モードにおいて、TEDは、熱源回路と乗客用空気チャネルとの間で熱エネルギーを伝達する。伝熱装置は、TEDの機能を補足または置換するためにも利用され得る。冷却モードが選択される場合、システムは、流体を、低温コアおよびTEDと熱連通するヒートシンク回路に流す。冷却モードにおいて、TEDは、ヒートシンク回路と乗客用空気チャネルとの間で熱エネルギーを伝達する。システムは、加熱モードまたは冷却モードのどちらが選択されているかに応じて選択された極性を指定し、選択された極性の電気エネルギーは、TEDに供給される。加熱モードでは、TEDに、熱源回路から乗客用空気チャネルへ熱エネルギーを移動させる極性が選択される。冷却モードでは、TEDに、乗客用空気チャネルからヒートシンク回路へ熱エネルギーを移動させる極性が選択される。
図19に示すシステムの実施形態に関して記載したように、ヒートシンク回路および作動流体回路は、システム内の流体または冷媒の流れを制御するために用いられ得るアクチュエータを含み得る。一実施形態において、システムは、熱源回路に関連付けられるアクチュエータを動作させることによって、ヒートシンク回路を通して流体を流す。別の実施形態において、システムは、ヒートシンク回路に関連付けられるアクチュエータを動作させることによって、ヒートシンク回路を通して流体を流す。さらに、いくつかの実施形態においては、流体をヒートシンク回路に流すために、ヒートシンク回路に関連付けられるアクチュエータが開放され、熱源回路に関連付けられるアクチュエータが閉鎖されてもよい。また、流体の流れを容易にするために、複数のポンプが、作動流体回路、熱源回路、およびヒートシンク回路と機能するように構成され得ることも考えられる。
図21は、乗員区画に温度制御された空気を提供するために用いられる、温度制御システム101の一実施形態を示す。この実施形態において、システム101は、熱電装置(TED)112、エンジン13、熱交換器116などの伝熱装置、およびHVACシステム62の部分である、乗客用空気チャネル19を備える。いくつかの実施形態において、システム101は、付加的に、低温コア40を備える。システム101はさらに、冷媒などの流体を、異なる構成要素の間で移送し、異なる構成要素間の流体連通、および/または、熱連通を阻止(または制限)するように構成される、1つまたは2つ以上のポンプ53およびアクチュエータ28、32、34、36、125、135、145および165を備える。エンジン13は、内燃エンジンなど、任意の適切な種類の車両エンジンであってもよく、熱エネルギーの供給源である。いくつかの実施形態において、エンジン13は、バッテリー、電子装置、車両の排気、ヒートシンク、相変化物質などの蓄熱システム、正温度係数装置などの、任意の発熱システム、または公知もしくは近年開発された任意の発熱システムであってもよい。システム101は、ポンプ、バルブ、熱源、TED、およびシステム101の他の構成要素を制御するように機能し得る、制御装置、複数の制御装置または任意の他の装置によって制御され得る。構成要素、バルブおよびポンプを制御することにより、制御装置は、システム101を様々な動作モードで動作させ得る。また制御装置は、入力信号または命令に応じて、システム101の動作モードを変更し得る。
一実施形態において、液体冷媒などの流体は、システム101の構成要素の間で熱エネルギーを移動させ、1つまたは2つ以上のポンプによって制御される。液体冷媒は、様々な構成要素間の流体連通を提供する、管システムを介して熱エネルギーを運搬し得る。アクチュエータは、所定の時間に、どの構成要素が熱交換器116および/またはTED112と熱連通するかを制御するために用いられ得る。代替的に、温度制御システムは、制御装置間の熱連通をもたらすために、他の材料または手段を用いる場合もある。
この実施形態において、システム101は単一の熱交換器116および単一のTED112を用い、これは付加的な熱交換器の必要なしに通常の構成を維持し得るので、HVACのデザインに対する影響を最小限にできる。しかしながら、システム101が、複数の熱交換器、TED、および/または、複数のHVACシステムまたは空気流チャネルを用いて構成され得ることも考えられる。いくつかの実施形態において、システム101は、HVACのデザインに対する影響を最小限にするために、熱交換器および他の構成要素を単一の熱交換器に組み込み得る。例えば、熱交換器116およびTED112が、単一の熱交換器であり得ることが考えられる。いくつかの実施形態においては、参照によってその全ての内容が本明細書に含まれ、本明細書の一部を構成する、2010年5月18日に出願された米国特許出願第12/782,569号明細書にさらに記載されるように、作動流体回路は、単一の熱交換器が、エンジンと、空気チャネル19から取り除かれる熱電装置との両方に熱的に接続されるように配置され得る。システム101のモードに応じて、熱交換器116および/またはTED112は、エンジン13と熱連通し得る。さらに、システム101のモードに応じて、TEDは低温コア40と熱連通し得る。加熱モードでは、熱交換器116および/またはTED112はエンジン13と熱連通し得る。冷却モードでは、伝熱装置116および/またはTED112は低温コアまたはラジエーター40と熱連通し得る。
図21には、空気流が乗員区画に入る前に通るHVACシステム62の一実施形態も示されている。この実施形態において、伝熱装置116およびTED112は、HVACシステム62に機能的に連結されるか、HVACシステム62内に配置されるので、空気流へ、または空気流から熱エネルギーを移動させ得る。HVACシステム62の空気流は、仕切り60によって分離される1つまたは2つ以上のチャネル52、54を通して流れ得る。特定の実施形態において、第1および第2チャネル52、54は、およそ同一の大きさ(例えば、およそ同一の高さ、長さ、幅、および/または断面積)のものである。別の実施形態においては、第1および第2チャネル52、54は、図21に示すように、異なる大きさのものである。例えば、第1および第2チャネル52、54の幅、高さ、長さ、および/または断面積は、異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、第1チャネルは第2チャネルよりも長い。別の実施形態において、第1チャネルは第2チャネルよりも小さい。さらなる実施形態において、任意の数のチャネルまたは導管を作り出すために、付加的な仕切りが用いられ得る。仕切りは、任意の適切な材料、形状または構成のものであってもよい。仕切りは、導管またはチャネルを部分的または完全に分離するために機能でき、開口、隙間、バルブ、ブレンドドア、他の適切な構造、またはチャネル間の流体連通を可能にする構造の組み合わせを有していてもよい。仕切りの少なくとも一部は、第2チャネル54から第1チャネル52を熱的に絶縁し得る。
特定の実施形態において、HVACシステム62は、第1および第2チャネル52、54を通過する空気流を制御するために動作可能なように構成される第1可動素子を備える。例えば、ブレンドドア56は、チャネル52、54を通過する空気流を制御するように構成され得る。ブレンドドアは、チャネル52、54の入口に近接して回転可能に連結され得る。回転により、ブレンドドアはチャネル52、54を通る空気流を制御し得る。ブレンドドア56は、第1および第2チャネル52、54の一方または両方を通る空気流を選択的に変更、許可、妨害、または阻止し得る。好ましくは、ブレンドドア56は、空気流の全てを一方のチャネルを通して導く間、他方のチャネルを通る空気流を阻止し得る。ブレンドドア56は、異なる量および比率で、両方のチャネルを通る空気流を可能にし得る。いくつかの実施形態において、ブレンドドア56は仕切り60に連結され、仕切り60に対して回転する。空気流を導き、空気流の加熱および/または冷却を向上させるために、2つ以上のブレンドドアがHVACシステム62に用いられ得ることも考えられる。
いくつかの実施形態において、エバポレータ58は、空気流が乗員区画に入る前に空気流から湿度を取り除くために、HVACシステム62において空気流の経路に配置され得る。いくつかの実施形態において、エバポレータ58は、空気流全体を調整し得るように、チャネル52、54の前に配置され得る。別の実施形態において、エバポレータは、特定のチャネルの空気流のみを調整し得るように、チャネルの一方の内部に配置され得る。空気流が乗員区画に入る前に、空気流を調製または冷却するために、コンデンサ(condenser)などの他の装置も用いられ得る。
いくつかの実施形態において、システム101は、エンジンが暖機運転している間の期間に対応する、第1モードまたは加熱モード(「起動加熱モード(startup heating mode)」)、エンジンが依然として暖機運転しているが、空気流の加熱を補助するのに充分に暖かい期間に対応する、第2モードまたは加熱モード(「暖機エンジン加熱モード(warm up engine heating mode)」または「暖機加熱モード(warm up heating mode)」または「補助加熱モード(supplemental heating mode)」)、エンジンが充分に暖かい期間に対応する、第3モードまたは加熱モード(「温間エンジン加熱モード(warm engine heating mode)」、「温間加熱モード(warm heating mode)」または「加熱モード(heating mode)」)、および、乗員区画を冷却するための第4モード(「冷却モード(cooling mode)」または「補助冷却モード(supplemental cooling mode)」)を含む、異なるモードで機能する。いくつかの実施形態においては、単一のシステムが様々なモードのそれぞれを行い得るが、本発明の実施形態は、後述するモードの1つのみを行うように構成され得ることも考えられる。例えば、一実施形態は、エンジンが暖かくなる間、熱電装置から熱エネルギーを供給するモードのみを行うように構成されてもよい。別の実施形態は、冷却モードで説明するような冷却のみをもたらすように構成されてもよい。
いくつかの実施形態において、システム101は、マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムのために、他のモードでも機能し得る。システム101は、エンジン温度が下がり、冷媒温度もそれに応じて第1の所定の閾値を下回って下がる(例えば、エンジンが冷たく、エンジン(および/または冷媒)温度が第1温度閾値を下回る)ときの期間に対応する、第5モードまたは「停止冷間加熱モード(stop cold heating mode)」、エンジン温度が下がり、冷媒温度もそれに応じて第2の所定の閾値を下回って下がるが、空気流の加熱を補助するには充分である(例えば、エンジンが暖機運転し、エンジン(および/または冷媒)温度が、第1温度閾値と第2温度閾値との間にある)ときの期間に対応する、第6モードまたは「停止加熱モード(stop heating mode)」または「停止冷却加熱モード(stop cooled heating mode)」、エンジン温度が上がり、冷媒温度もそれに応じて上がる(例えば、エンジンが暖かく、エンジン(および/または冷媒)温度が第2温度閾値を上回る)ときの期間に対応する、第7モードまたは「停止温間加熱モード(stop warm heating mode)」において機能し得る。第2の所定の閾値は、所望量の加熱を空気流に提供するのに充分な冷媒の温度と一致し得る。いくつかの実施形態においては、単一のシステムが様々なモードのそれぞれを行い得るが、本発明の実施形態は、後述するモードの1つのみを行うように構成され得ることも考えられる。例えば、一実施形態は、冷媒温度が第1の所定の閾値を下回る場合に、熱電装置から熱エネルギーを提供するモードのみを行うように構成されてもよい。
図21は、「起動加熱モード」とも呼ばれ得る、第1モードでの、温度制御システム101の一実施形態を示す。このモードでは、エンジン13が暖機運転し、乗員区画を加熱するのに充分な温度にはまだ達していない(例えば、エンジン温度が第1温度閾値を下回る)ときに、乗員区画に熱が供給される。エンジン13は最初に起動されるときには、乗員区画内の温度を充分に上昇させるのに充分な熱を生じない。車両エンジンは、乗員区画に快適空気を提供するために必要な温度まで暖まるまで、数分またはそれ以上かかり得る。このモードでは、温度勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気チャネル54に熱を伝達するTED112に、制御装置が電気エネルギーを提供する。作動流体回路30および熱回路141内の液体冷媒は、エンジン13内のポンプ(図示せず)によって回路を通して移動させられる。代替的な実施形態において、ポンプはエンジン13の外部に位置付けられ得る。バルブ145は開放し、作動流体回路30は熱回路131および141を介してTED112と流体連通し、これは熱回路21を介してTED112およびエンジン13を熱的に接続する。バルブ125、165、および36は、起動加熱モードの間閉鎖され得る。いくつかの実施形態においては、乗員区画内への空気流が加熱されていることにより、低温コア40は起動加熱モードの間必要とされない。
図21は、例えばマイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両における、「停止冷間加熱モード」とも呼ばれ得る、第5モードでの、温度制御システム101の一実施形態も示す。マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいてエンジン13が停止されると、エンジン13は停止しながら冷える。エンジン13が冷えるので、液体冷媒の温度もそれに応じて下がる。このモードでは、エンジン13の温度が下がり乗員区画を加熱するのに不充分となる(例えば、エンジン温度が第1(または第2)温度閾値を下回る)場合に、乗員区画に熱が提供されている。このモードでは、温度勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気チャネル54に熱を伝達するTED112に、制御装置が電気エネルギーを提供する。作動流体回路30および熱回路141内の液体冷媒は、エンジン13内のポンプ(例えば、電気ポンプ)(図示せず)によって回路を通して移動させられる。代替的な実施形態において、ポンプはエンジン13の外部に位置付けられ得る。バルブ145は開放し、作動流体回路30は熱回路131および141を介してTED112と流体連通し、これは熱回路21を介してTED112およびエンジン13を熱的に接続する。バルブ125、165、および36は、停止冷間加熱モードの間、閉鎖され得る。いくつかの実施形態においては、乗員区画内への空気流が加熱されていることにより、低温コア40は停止冷間加熱モードの間必要とされない。ゆえに、温度制御システム101は、マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいて空気流を加熱するためにエンジン13が始動される必要のない期間を、比較的長く提供することが可能である。本明細書に記載するような、TED112によって提供される加熱機能が無い場合、エンジン13は、エンジン13が例えば車両を駆動する必要がない場合でも、乗員区画の暖房を目的として起動される必要がある場合がある。
TED112は、HVACシステム62に配置される。このようにして、熱電装置112によって、乗員区画に入る空気流へ伝達される熱エネルギーは、エンジン13と熱連通する冷媒へ伝達される。一実施形態において、TED112は、乗員区画に入る空気流にとって唯一の熱エネルギー源であり、液体冷媒が熱回路を通って循環しても、エンジン13から取られる熱エネルギーはないか、ほとんどない。まだ起動加熱モードのときに、エンジンが充分に暖かくなると、エンジン13からの熱エネルギーも、作動流体回路30の冷媒を加熱するために用いられる。ゆえに、乗員区画に入る空気流は、初期起動の後、エンジン13およびTED112の両方から熱エネルギーを受け取ることができる。
この実施形態において、HVACシステム62は、乗員区画につながる異なるチャネル52、54内に空気流を導くように構成される、ブレンドドア56または他の装置を含み得る。この実施形態において、熱交換器116およびTED112は、第2チャネル54に位置付けられている。起動加熱モードにおいて、ブレンドドア56は、空気流の少なくとも一部が第2チャネル54を通って導かれるように配置される。代替的な実施形態において、熱交換器116および/またはTED112は、HVACシステム62の2つ以上のチャネル内に操作可能に連結されるか、または2つ以上のチャネル内に配置され得る。
起動加熱モードの間、システム101は、空気流が乗員区画に入る前に、空気流のデミストを提供するように構成され得る。エバポレータ58は、空気流がエバポレータ58を通過するようにHVACシステム62内に構成され得るので、空気流が熱交換器116および/またはTED112によって加熱される前に、空気流を冷却し、空気流から湿度を取り除く。
図22は、「暖機エンジン加熱モード」または「暖機加熱モード」とも呼ばれ得る、第2モードにおける、温度制御システム101の一実施形態を示す。このモードでは、エンジン13は、空気流にいくらかの熱を供給可能である、暖機運転温度に達しているが、システム101用の唯一の熱エネルギー源となるには不充分な暖かさである(例えば、エンジン温度は、第1温度閾値と第2温度閾値との間である)。このモードにおいて、エンジン13は、熱交換器116およびTED112と熱連通する。エンジン13からの熱エネルギーは、管(熱回路21、30および121)を通る冷媒を介して、熱交換器116に伝達され、エンジン13内またはエンジン13の外部のポンプ(図示せず)によって回路を通して移動させられる。同時に、熱交換器116を介してエンジン13から与えられる熱エネルギーを補うために、熱回路141を介するTED112を用いて、より多くの熱エネルギーが空気流に伝達され得る。制御装置は、熱交換器116、TED112およびエンジン13の間での流体連通を可能にする目的で、アクチュエータ28、32、34、125、および145(閉鎖アクチュエータ135および165)を開放するために動作する。いくつかの実施形態において、アクチュエータ36は、ラジエーター40への冷媒の流れがないように閉鎖される。熱回路21を用いてエンジン13と熱連通するTED112により、熱交換器116のみが作動している場合よりも多くの、エンジン13および冷媒の利用可能な熱エネルギーが、空気流に伝達され得る。エンジン13が暖まると、熱交換器116は、ますます多くの熱エネルギーを空気流に伝達し得る。図23に示す実施形態における、熱交換器116の下流に位置付けられるTED112により、TED112を横切って流れる空気流がますます暖かくなるにつれて、TED112の第1伝熱面(または主面)とTED112の第2伝熱面(または廃棄面)との間の温度差は減少するので、TED112の性能係数が向上する。ヒータコア14の下流にTED16を配置することは、TED16から空気流18へ伝達される熱エネルギーが、エンジンおよび冷媒ループが暖機加熱モードにおいて相対的に低温である場合に、相対的に低温のヒータコア14によって吸収されることを阻止または抑制し得るので、暖機加熱モードにおいて空気流18から冷媒ループ内への熱エネルギーの伝達を抑制する。いくつかの実施形態において、図21および22を参照して記載される処理にしたがう動作は、組み合わされて「起動加熱モード」と考えられてもよい。
図22は、例えばマイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両における、「停止加熱モード」(または「停止冷却加熱モード」)とも呼ばれ得る、第6モードでの、温度制御システム101の一実施形態も示す。マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいてエンジン13が停止すると、エンジン13は停止しながら冷える。エンジン13が冷えるので、液体冷媒の温度もそれに応じて下がる。このモードでは、エンジン13および冷媒は、残留熱エネルギーを利用して空気流にいくらかの熱を供給し得るが、システム101用の唯一の熱エネルギー源となるには不充分な暖かさである(例えば、エンジン温度は、第1温度閾値と第2温度閾値との間である)。このモードにおいて、エンジン13は、熱交換器116およびTED112と熱連通する。エンジン13からの熱エネルギーは、管(熱回路21、30および121)を通る冷媒を介して、熱交換器116に伝達され、エンジン13内またはエンジン13の外部のポンプ(例えば、電気ポンプ)(図示せず)によって回路を通して移動させられる。同時に、熱交換器116を介してエンジン13から与えられる熱エネルギーを補うために、熱回路141を介するTED112を用いて、より多くの熱エネルギーが空気流に伝達され得る。制御装置は、熱交換器116、TED112およびエンジン13の間での流体連通を可能にする目的で、アクチュエータ28、32、34、125、および145(閉鎖アクチュエータ135および165)を開放するために動作する。いくつかの実施形態において、アクチュエータ36は、ラジエーター40への冷媒の流れがないように閉鎖される。熱回路21を介してエンジン13と熱連通するTED112により、熱交換器116のみが作動している場合よりも多くの、エンジン13および冷媒の利用可能な熱エネルギーが、空気流に伝達され得る。ゆえに、温度制御システム101は、マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいて空気流を加熱するためにエンジン13が始動される必要のない期間を、比較的長く提供することが可能である。補助的な加熱がないと(例えば、システム101がTED112を有していない)、エンジン13は、エンジン13が例えば車両を駆動する必要がない場合でも、乗員区画の暖房を目的として起動される必要がある場合がある。
図23は、「温間エンジン加熱モード」、「温間加熱モード」または「加熱モード」とも呼ばれ得る、第3モードにおける温度制御システム101の一実施形態を示す。このモードにおいて、エンジン13は充分な温度に達し、システム101用の唯一の熱エネルギー源である(例えば、エンジン温度は第2温度閾値を上回る)。このモードでは、エンジン13は熱交換器116と熱連通する。エンジン13からの熱エネルギーは、管(熱回路21、30および121)を通る冷媒を介して、熱交換器116に伝達される。エンジン13内またはエンジン13の外部のポンプ(図示せず)は、エンジン13と熱交換器116との間で冷媒を循環させるように構成され得る。制御装置は、熱交換器116とエンジン13との間での流体連通を可能にする目的で、アクチュエータ28、32、34、125、および165(閉鎖アクチュエータ135および145)を開放するために動作する。TED112の動作を停止するために、TED112への電流は停止または制限され得る。いくつかの実施形態において、アクチュエータ36は、ラジエーター40へ流れる冷媒がないように閉鎖される。
図23は、例えばマイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両における、「停止温間加熱モード」とも呼ばれ得る第7モードでの、温度制御システム101の一実施形態も示す。このモードでは、エンジン13は停止されるが、システム101用の唯一の熱エネルギー源となるのに充分な温度である(例えば、エンジン温度が第2(または第1)温度閾値を上回る)。マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいてエンジン13が停止されると、エンジン13および冷媒は、最初は残留熱エネルギーを有する。このモードでは、エンジン13は熱交換器116と熱連通する。エンジン13からの熱エネルギーは、管(熱回路21、30および121)を通る冷媒を介して、熱交換器116に伝達される。エンジン13内またはエンジン13の外部のポンプ(例えば、電気ポンプ)(図示せず)は、エンジン13と熱交換器116との間で冷媒を循環させるように構成され得る。制御装置は、熱交換器116とエンジン13との間での流体連通を可能にする目的で、アクチュエータ28、32、34、125、および165(閉鎖アクチュエータ135および145)を開放するために動作する。TED112の動作を停止するために、TED112への電流は停止または制限され得る。いくつかの実施形態において、アクチュエータ36は、ラジエーター40への冷媒の流れがないように閉鎖される。
温間エンジン加熱モードおよび/または温間加熱モードにおいて、制御装置は、TED112に供給される電気エネルギーを停止し得る。エンジン13が充分な温度である場合、TED112はもはや必要ではなくなり、TED112に印加される電気エネルギーは節約され得る。アクチュエータの動作を制御することにより、システム101は、TED112をバイパスし、熱交換器116をエンジン13へ熱的に接続することが可能である。この実施形態では、乗客用空気チャネル19に、複数の熱交換器116や熱交換器の複数のセットを有する必要はない。そのかわり、システム101は、単一の熱交換器116または単一の熱交換器のセット、および/または、単一のTED112または単一のTED112のセットに接続されながら、様々な冷却および/または加熱モードで動作し得る。
空気流が乗員区画に入る前に加熱されるように、ブレンドドア56は、熱交換器116および/またはTED112が位置付けられるチャネル54を通して、空気流の少なくとも一部を導き得る。より低速で乗員区画を暖房するためには、ブレンドドア56は、より少ない空気流を、熱交換器116および/またはTED112のチャネル54を通過させ、より多い空気流を、加熱されない他方のチャネル52を通過させるように調整され得る。加熱速度を上げるためには、ブレンドドアは、より多くの空気流が、熱交換器116および/またはTED112を備えるチャネル54を通して導かれ、より少ない空気流が、他方のチャネル52内に入れられるように調整され得る。
必要に応じて、TED112を、温間エンジン加熱モードおよび/または停止温間加熱モードの間の熱エネルギー源として用いることも可能である。高温のエンジン13は、通常、乗員区画を加熱するために、熱交換器116に充分な熱エネルギーを供給し得るが、TED112は、図22に関して記載するように、補助的な熱エネルギー源として用いられ得る。システム101のアクチュエータは、エンジン13および作動流体回路30が、熱交換器116およびTED112と熱連通して配置されるように構成され得る。電気エネルギーは、TED112に供給され続け得るので、乗客用空気区画の空気流へ、熱エネルギーを伝達する。エンジン13も、エンジン13内またはエンジン13の外部のポンプによって移動させられる、加熱された冷媒を介して、熱交換器116に熱エネルギーを伝達するので、TED112からの熱エネルギーは補助的なものである。
温度制御システム101が温間エンジン加熱モードにある場合、エバポレータ58は、空気流から湿度を取り除くように構成され得る。それゆえ、加熱工程全体の間、デミストが可能である。起動加熱モードの構成と同様に、エバポレータ58は、空気流が熱交換器116および/またはTED112によって加熱される前にエバポレータ58を通過するように、HVACシステム62に配置され得る。
図24は、第4モードまたは「冷却モード」の温度制御システム101の一実施形態を示す。このモードは、従来のマイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両において利用され得る。本明細書に記載するような、このモードでの冷却により、エンジン13は、乗員区画を冷却する必要がない場合がある。例えば、ベルト駆動圧縮機は、必要な冷却を提供する必要がない場合もある。いくつかの実施形態において、エンジン13は、冷却モードの間、停止したままか、または長い時間停止したままである。開示される実施形態は、例えばハイブリッド車両における、電気圧縮機システムによってもたらされる冷却を置換または補足し得る。冷却モードにおいて、システム101は、空気流からの熱を、TED112を介して低温コア40に伝達することによって、HVACシステム62の空気流を冷却する。一実施形態において、バルブ32、34、36、135および145は開放され、バルブ28および125は閉鎖される。ポンプ53は、作動流体回路30および冷却回路50を通る冷媒の流れを可能にするように関与し、TED112からの熱エネルギーを、熱回路141を介して低温コア40に移動させる。低温コアまたはラジエーター40は、空気流の冷却を補助するように構成される。システム101の一部として、ヒートシンク回路または冷却回路50は、TED112が低温コアまたはラジエーター40と熱連通するように構成される。この構成において、エンジン13は、冷媒システムによってバイパスされ、熱交換器116またはTED112と熱連通していない。ゆえに、冷却回路50および低温コア40は、効率的な方法でTED112から熱を伝達する。
TED112は、加熱モードで用いられる極性とは逆の極性を備える電気エネルギーを受ける。逆の極性の電気エネルギーがTED112に印加されると、熱勾配の方向が反転する。乗客用空気チャネル19に熱または熱エネルギーを提供するのではなく、TED112は、空気流から、熱回路30および50と熱連通し最終的には低温コア40と熱連通する、熱回路141へと熱エネルギーを奪って伝達することによって、空気流を冷却する。より効率的な熱エネルギーの伝達をもたらすために、冷却回路50および/または低温コア40は、熱電装置112に近接して位置付けられ得る。好ましくは、低温コアまたはラジエーター40は、空気流、または熱を分散するための他のソースに晒される。空気流がエバポレータ58を通過し得る間、エバポレータシステム(すなわち、圧縮機ベースの冷却システム)は、エバポレータ58が実質的に空気流の熱エネルギーに影響を及ぼさない(例えば、エバポレータは空気流から熱エネルギーを吸収しない)ように非作動とされ得る。
いくつかの実施形態において、冷却モードの間、エバポレータ58は、「補助的冷却モード」を提供するために、空気流が乗員区画に入る前に空気流を冷却する部分として用いられ得る。例えばハイブリッド車両などにおける、いくつかの実施形態では、エバポレータ58は、ベルト駆動圧縮機を備える圧縮機ベースの冷却システムの一部であってもよい。いくつかの実施形態において、圧縮機は、電気圧縮機であってもよい。エバポレータ58は、空気流が通過し、空気流がTED112に到達する前に湿度が取り除かれるように構成され得る。また、TED112は、複数のチャネル52、54の1つの内部に位置付けられ得る。ブレンドドア56は、TED112が位置付けられるチャネル54内に空気流を導くように構成され得る。加熱モードと同様に、冷却モードにおいても、ブレンドドア56は、どのくらいの量の空気流をチャネル52、54に通すかを調節することによって、冷却速度を調節し得る。代替的に、TED112は、分離したチャネルの使用なしに、空気流全体から熱を伝達するように構成されてもよい。ゆえに、TED112は、空気流から熱エネルギーを吸収するエバポレータ58と一緒に、熱エネルギーを吸収することによって、補助的な冷却をもたらし得る。
いくつかの実施形態においては、蓄熱装置123がHVACシステム101に連結される。図24に示すように、蓄熱装置123は、エバポレータ58に連結されるか、エバポレータ58の一部となり得る。蓄熱装置123を備えるエバポレータ58は、「重量」エバポレータと考えられる一方で、蓄熱装置123を備えないエバポレータ58は、「軽量」エバポレータと考えられる。「重量」エバポレータにおいて、蓄熱装置123は、図24に示すようにエバポレータ58と熱連通し得る。いくつかの実施形態において、蓄熱装置123は、エバポレータ58に接続されてもよいし、エバポレータ58の内部にあってもよいし、エバポレータ58の一部であってもよい。軽量エバポレータでは、蓄熱装置123は、例えば、エバポレータ58、熱交換器116、および/またはTED112の上流または下流など、HVACシステム101の間のあらゆる場所に配置され得る。本明細書に記載するように内燃エンジンが停止されると、熱エネルギー蓄積装置123の熱エネルギーは、エンジンの始動を要することなく、より長い期間冷却をもたらすために利用され得る。例えば、エンジンが停止されると、蓄熱装置123は、最初に空気流を冷却する。蓄熱装置123に蓄積された熱エネルギーが空気流によって吸収されると、TED112は空気流の冷却を継続するために関与し得る。
蓄熱装置123は、第1または第2チャネル52、54に位置付けられてもよく、冷却モードの間、多用途性を提供する。例えば、蓄熱装置123は、第1チャネル52に位置付けられ得る。エンジン13がシャットオフされ、エバポレータ58がもはや動作しなくなると、ブレンドドア56は、蓄熱装置123が、エンジン13がオフにされる最初の期間、冷却を提供するように、空気流の全てまたは相当な部分を、第1チャネル52を通して導くように配向され得る。蓄熱装置123に蓄積される熱エネルギーが大きくなると、ブレンドドア56は、TED112が本明細書に記載するように空気流を冷却するように、空気流の全てまたは相当な部分を、第2チャネル54を通して導くように配向され得る。
HVACシステム101は、HVACシステム101に導かれる電気出力を熱出力に変換し、この熱出力を蓄熱装置123に保管し得る。1つまたは2つ以上の熱電装置は、電気出力を熱出力に変換するために利用され得るが、任意の適切な電気出力から熱出力への変換装置が用いられてもよい。熱出力を保管するために、蓄熱装置123は、ワックス(高温相変化物質)および水(低温相変化物質)など、高温および低温での両方の相変化物質を含み得る。HVACシステム100は、内容全体が、参照によりこれより本明細書に組み込まれ、本明細書の一部と考慮されるべきである、2005年7月19日に出願された米国特許出願第11/184,742号明細書にさらに記載されるように、オルタネータ、回生ブレーキシステム発電機、および/または、廃熱回収システムなどの、システムからの利用可能な電気エネルギーを利用するために、蓄熱装置123を利用し得る。いくつかの実施形態において、圧縮機ベースの冷却システムは、内燃エンジンが作動し、圧縮機ベースの冷却システムに電力を供給している間、蓄熱装置123に熱エネルギーを保管するために用いられ得る。いくつかの実施形態においては、より長いエンジンの停止時間を提供する目的で、加熱モードの間、蓄熱装置123を利用するために、同一の概念が適用され得る。
図25は、車両の乗員区画を冷却するために用いられ得る、温度制御システムの代替的な一実施形態を示す。この実施形態において、空気流は、熱交換器116またはTED112の使用なしに冷却され得る。バルブは全て閉鎖され、ポンプは全てオフになる。この実施形態において、図25は、依然として動作中であり得る1つの熱回路は、HVACシステム62および温度制御システム101から独立していてもよい、分離した温度制御装置93によって制御されるラジエーター回路90に冷却流体を循環させるために、エンジン15内部のポンプを利用するラジエーター回路90であることを示している。アクチュエータ28および29は閉鎖される。一実施形態において、ラジエーター17は、低温コア40から分離した構成要素である。このモードにおいて、TED112に印加される電気エネルギーはなく、エンジン15から熱交換器116への熱エネルギーの伝達もない。熱伝達源として熱交換器を用いる代わりに、空気流はチャネル52内へと導かれ、その後乗員区画内へと導かれる。一実施形態において、ブレンドドア56は、空気流の実質的に全てをチャネル52内へと導くように構成されるので、空気流は、乗員区画に入る前に熱交換器116を通過しない。いくつかの実施形態において、空気流は、チャネル52内に入る前にエバポレータ58を通過し得る。代替的には、エバポレータ58は、空気流が通るチャネル52内に位置付けられ得る。このようにして、空気流は、HVACシステム62にあらゆる熱伝達をもたらすシステム101なしで冷却される。
図26Aは、単純化された制御の概略図により、加熱モードまたは冷却モードという2つの動作モードを備える代替的な実施形態を示す。図26Aは、加熱モード、補助的な加熱モード、および/または、停止加熱モードとも呼ばれ得る、第1モードでの温度制御システム102の一実施形態を示す。いくつかの実施形態において、図26Aに示す実施形態の加熱モードは、起動加熱モード、暖機エンジン加熱モード、および/または温間エンジンモード(図26Aに示す組み合わせられた実施形態は、起動加熱モードと考えられ得る)だけでなく、図21〜23に関して上述した、停止冷間加熱モード、停止加熱モード、および/または停止温間加熱モードも組み合わせる。
上述のように、エンジン15は最初に始動されるときには、乗員区画内の温度を充分に上昇させるための、充分な熱を生じない場合がある。加熱モードにおいては、エンジン15が最初に暖機運転し、乗員区画を加熱するのに充分な温度にはまだ達していない間、乗員区画に熱が供給される。制御装置は、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気チャネル54に熱を伝達するTED112に、電気エネルギーを供給する。ポンプ55は、作動流体回路30およびラジエーター回路90内の液体冷媒を移動させる。ラジエーター回路90および熱制御装置93は、エンジン15を低温に維持し、これらは温度制御システム102から独立し得る。アクチュエータ31は、作動流体回路30およびラジエーター回路90を同時に開放し得る。バルブ93は、ラジエーター回路90を通る流体の流れを制御し得る。作動流体回路30は、熱交換器116およびTED112と流体連通する。アクチュエータ32は、加熱モードの間、エンジン15に戻る熱回路37に作動流体回路30を接続する。いくつかの実施形態では、乗員区画内への空気流が加熱されているので、低温コア40は加熱モードの間必要とされない。ゆえに、アクチュエータ32は、補助的な熱交換器または低温コア40への液体冷媒の流れを閉鎖する。
また本明細書に記載するように、マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいてエンジン13が停止されると、エンジン13は停止しながら冷える。エンジン13が冷えるにつれて、液体冷媒の温度もそれに応じて下がる。停止冷間加熱モードおよび/または停止加熱モードでは、エンジン13の温度が下がり、乗員区画を加熱するには不充分になった場合に、乗員区画に熱が提供されている。制御装置は、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気チャネル54に熱を伝達するTED112に、電気エネルギーを供給する。作動流体回路30および熱回路141内の液体冷媒は、エンジン13内のポンプ(例えば、電気ポンプ)(図示せず)によって回路を通して移動させられる。作動流体回路30および熱回路141内の液体冷媒は、エンジン13内のポンプ(例えば、電気ポンプ)(図示せず)によって回路を通して移動させられる。代替的な実施形態において、ポンプは、エンジン13の外部に位置付けられてもよい。バルブ145は開放し、作動流体回路30は熱回路131および141を介してTED112と熱連通し、これは、熱回路21を介してTED112およびエンジン13を熱的に接続する。バルブ125、165および36は、停止冷間加熱モードの加熱モードの間、閉鎖され得る。いくつかの実施形態では、乗員区画内への空気流が加熱されているので、低温コア40は停止冷間加熱モードの加熱モードの間必要とされない。それゆえ、温度制御システム102は、エンジン13がマイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステムにおいて空気流を加熱するために始動される必要がない期間を、比較的長く提供することが可能である。TED112によりもたらされている加熱がなければ、エンジン13は、エンジン13が例えば車両を駆動する必要がない場合でも、乗員区画の加熱を目的として始動される必要がある場合がある。
図26Bは、単純化された制御の概略図により、エンジン15が停止されている間の、マイクロハイブリッドまたはハイブリッドシステム用の加熱モードの代替的な一実施形態を示す。例えば、停止冷間加熱モード、停止加熱モード、および/または停止温間加熱モードの間など、エンジン15を冷たく維持することが必要でない場合には、ラジエーター回路90を通る流れは制限され得る。バルブ93は、マイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両においてエンジンが停止される場合、熱回路93を通る冷媒の流れを制限するために閉鎖され得る。エンジンが停止されている間、ラジエーター17を通る冷媒の流れを阻止することにより、残留熱の外気への損失が軽減され得る。制御装置は、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気チャネル54に熱を伝達するTED112に、電気エネルギーを供給する。ポンプ55(例えば、電気ポンプ)は、作動流体回路30およびラジエーター回路90内の液体冷媒を移動させる。アクチュエータ31は、作動流体回路30を開放し得る。作動流体回路30は、熱交換器116およびTED112と流体連通する。アクチュエータ32は、エンジン15および冷媒から残留熱を吸収するために、加熱の間、エンジン15に戻る熱回路37に作動流体回路30を接続する。エンジン15が停止される間、エンジン15および冷媒の残留熱が下がると、エンジン15が停止したままか、または長い時間停止したままであることを可能にするために、TED112は、TED112の加熱端部から空気チャネルへと熱を伝達し続け得る。
熱交換器116およびTED112は、HVACシステム62に配置される。このようにして、乗員区画に入る空気流に、熱電装置112によって伝達される熱エネルギーは、エンジン15と熱連通する冷媒へ伝達される。エンジン15が暖機運転している場合、TED112は、乗員区画に入る空気流への、唯一またはほとんど全ての熱エネルギー源となり得る。液体冷媒が、熱交換器116およびエンジン15を含む熱回路を通って循環していても、エンジン15が暖機運転している間は、エンジン15から取り除かれる熱エネルギーはほとんどないか、全くない。
いくつかの実施形態において、TED112の部品は、熱交換器116の一部であってもよく、これはシステム102をさらに単純化する。このような特定の実施形態において、温度制御システム102は、1つまたは2つ以上のアクチュエータ、バイパスバルブ31、および/または、1つまたは2つ以上の切り替えバルブ32を動作させることによって、加熱モードと冷却モードとの間で切り替わり得る。このような特定の実施形態において、温度制御システム102は、2つまたは1つ以下のアクチュエータを用いて、加熱モードと冷却モードとの間で切り替わるように構成される。バイパスバルブ31は、作動流体30がバイパスされるかどうかを制御し得る。切り替えバルブ32(バルブ31と連動する)は、液体冷媒がエンジン15と熱的に接触するか、または、液体冷媒が補助的な熱交換器40と熱的に接触するかどうかを制御し得る。
エンジンが充分に高温になると、エンジン15からの熱エネルギーは、作動流体回路30の冷媒を加熱するために用いられる。エンジン15が冷媒に充分な熱を提供する場合、熱交換器116は、作動流体回路30の加熱された冷媒から空気流へと熱エネルギーを伝達させることによって、チャネル54の空気流も加熱し始める。ゆえに、乗員区画に入る空気流は、エンジン15が高温になると、エンジン13およびTED112の両方から熱エネルギーを受け取っている。一実施形態において、冷媒は、起動からエンジン15が完全に高温になるまで、熱交換器116およびTED112の両方を通って流れ得る。起動の間、エンジン15は相対的に低温であり、結果として熱交換器116を通って流れる冷媒も相対的に低温であるので、熱交換器116は、空気流に熱エネルギーを全く供給していない。エンジン15が高温になると、エンジン15は、作動流体回路30および熱交換器116を介する空気チャネルとの熱連通を通した、唯一の熱源となり得る。また制御装置は、冷媒がTED112を通って流れ続けていても、TED112に供給される電気エネルギーを完全に停止し得る。エンジン15が充分な温度である場合、TED112はシャットオフされてもよく、TED112に印加される電気エネルギーは節約され得る。いくつかの実施形態において、制御装置は、必要に応じて補助的な加熱をもたらすために、TED112に電気エネルギーを供給し続け得る。
図27は、単純化された制御の概略図を用いて、代替的な一実施形態を示す。図27は、「冷却モード」とも呼ばれ得る、第2モードでの温度制御システム102の実施形態である。このモードは、従来のマイクロハイブリッドまたはハイブリッド車両において利用され得る。このモードで本明細書に記載するように冷却することにより、エンジン13は、乗員区画を冷却する必要がない場合もある。いくつかの実施形態において、エンジン13は、冷却モードの間、停止したままか、または長い時間停止したままである。開示される実施形態は、例えばハイブリッド車両における、電気圧縮機システムによってもたらされる補助的な冷却を置換または補足し得る。冷却モードにおいて、システム102は、空気流からの熱を、TED112を介して低温コア40に伝達することによって、HVACシステム62の空気流を冷却する。アクチュエータ31は、作動流体回路30を通って熱交換器116に流れる冷媒を、選択的に閉鎖する。ラジエーター回路90および熱制御装置93は、ポンプ55を介してエンジン13を低温に維持でき、これはシステム102から独立していてもよい。ポンプ53は、TED112からの熱エネルギーを低温コア40に伝達する、冷却回路50を通して、冷媒を流すように関与する。低温コアまたは補助的な熱交換器40は、空気流の冷却を補助するように構成される。システム102の一部として、ヒートシンク回路または冷却回路50は、TED112が低温コア40と熱連通するように構成される。この構成において、エンジン15は、冷媒システムによってバイパスされ、熱交換器116またはTED112と熱連通していない。ゆえに、冷却回路50および補助的な熱交換器40は、効率的な方法でTED112から熱を移動させる。
TED112は、加熱モードで用いられる極性とは逆の極性を備える電気エネルギーを受ける。逆の極性の電気エネルギーがTED112に印加されると、熱勾配の方向が反転する。乗客用空気チャネル19の空気流に熱または熱エネルギーを提供するかわりに、TED112は、空気流から、補助的な熱交換器40と熱連通する、冷却回路50に熱エネルギーを奪って伝達することによって、空気流を冷却する。より効率的な熱エネルギーの伝達をもたらすために、冷却回路50および補助的な熱交換器40は、熱電装置112に近接して位置付けられ得る。好ましくは、低温コアまたは補助的な熱交換器40は、空気流、または熱を分散するための他のソースに晒される。空気流がエバポレータ58を通過し得る間、エバポレータシステム(すなわち、冷却サイクルシステム)は、エバポレータ58が実質的に空気流の熱エネルギーに影響を及ぼさない(例えば、エバポレータは空気流から熱エネルギーを吸収しない)ように非作動とされ得る。
いくつかの実施形態において、エバポレータ58は、冷却モードの間、快適空気が乗員区画に入る前に、快適空気を少なくとも部分的または完全に冷却するために用いられ得る。例えばハイブリッド車両などにおける、いくつかの実施形態では、エバポレータ58は、電気圧縮機を備える圧縮機ベースの冷却システムの一部であってもよい。エバポレータ58は、空気流が通過し、空気流がTED112に到達する前に湿度が取り除かれるように構成され得る。また、TED112は、複数のチャネル52、54の1つの内部に位置付けられ得る。ブレンドドア56は、TED112が位置付けられるチャネル54内に空気流を選択的に導くか、またはTED112をバイパスするチャネル52内に快適空気を導くように構成され得る。加熱モードと同様に、冷却モードにおいても、ブレンドドア56は、どのくらいの量の空気流をチャネル52、54に通すかを調節することによって、冷却速度を調節し得る。代替的に、TED112は、分離したチャネルの使用なしに、空気流全体から熱を伝達するように構成されてもよい。ゆえに、TED112は、空気流から熱エネルギーを吸収するエバポレータ58と一緒に、熱エネルギーを吸収することによって、補助的な冷却をもたらし得る。
いくつかの実施形態においては、蓄熱装置123がHVACシステム102に連結される。図27に示すように、蓄熱装置123は、エバポレータ58に連結されるか、エバポレータ58の一部となり得る。軽量エバポレータでは、蓄熱装置123は、例えば、エバポレータ58、熱交換器116、および/またはTED112の上流または下流など、HVACシステム101の間のあらゆる場所に配置され得る。蓄熱装置123は、第1または第2チャネル52、54に位置付けられてもよく、本明細書に記載するような冷却モード中に異なる配置を提供する。いくつかの実施形態において、圧縮機ベースの冷却システムは、内燃エンジンが動いており、圧縮機ベースの冷却システムに熱を供給している間、蓄熱装置123に熱エネルギーを保存するために用いられ得る。内燃エンジンが、本明細書に記載するように停止されると、熱エネルギー蓄積装置123の熱エネルギーは、エンジンの始動を要することなく、より長い期間冷却をもたらすために利用され得る。いくつかの実施形態において、より長いエンジンの停止時間を提供する目的で、加熱モードの間、蓄熱装置123を利用するために、同一の概念が適用され得る。
図26A〜26Bおよび27の実施形態において、HVACシステム62は、乗員区画につながる異なるチャネル52、54内に空気流を導くように構成される、ブレンドドア56または他の装置を含み得る。これらの実施形態において、ブレンドドア56、ならびに熱交換器116およびTED112の場所は、加熱または冷却の速度を変更するために、図21〜25の実施形態に関して上述したものと同様の設定で構成され得る。さらに、エバポレータ58およびデミストも、加熱または冷却の間、図21〜25の上述の実施形態に関して記載したようにもたらされ得る。
図28Aは、HVACシステム62の例示的な実施形態を示す。HVACシステム62は、乗客用空気チャネル19、空気ファン57、エバポレータ58、熱交換器116、およびTED112を備える。空気ファン57は、空気流の矢印118によって示すように、乗客用空気チャネル19を通して空気流118を引き込む。一実施形態において、空気流118は、エバポレータ58を通過し、その後熱交換器116を通過し、最後にTED112を通過し、フロントガラス、上側ベント、および/または下側ベントを通して、乗員区画に到達する。乗客用空気チャネル19、エバポレータ58、熱交換器116およびTED112は、図2〜31Cに示す実施形態および本明細書に記載する他の実施形態に関して記載するように機能し得る。
図28Bは、液体から気体へのTED112を用いて、上述の実施形態のいずれにおいても用いられ得る、熱電装置112の例示的な実施形態を示す。上述の、図28Aの実施形態は、作動流体122と快適空気118との間で、別々に、または組み合わせて熱エネルギーを伝達し得る、液体から気体への4つのTEDユニット112を有する。図28Bは、例示的なTEDユニット112のいくつかの機能的な素子を示す、一部が切り取られた斜視図である。いくつかの実施形態において、システム制御装置は、電気接続部117を介して、TED112に第1の極性の電力を供給する。液体冷媒122は、冷媒回路のインターフェース141を介して、TED112に入る。TED112は、熱電素子114と実質的に熱連通する液体冷媒122を運搬するために、毛管または管を含み、熱電素子114は、毛管または管119と1つまたは2つ以上の気体側の熱交換器113との間に配置されている。TED112が空気流118を加熱または冷却しているかに応じて、熱電素子114は、冷媒から熱エネルギーを抜き取るか、または冷媒にエネルギーを付与する。
いくつかの加熱モードの構成において、熱電素子114は、冷媒回路のインターフェース141を介して供給される液体冷媒から、快適空気118内へと熱エネルギーを押し込む。TED112は、電気接続117を介して第1の極性の電流を受け、これは、快適空気118の加熱を容易にする、熱電素子114における熱エネルギーの伝達方向を生じる。熱伝導材料115は、毛管または管119を通って流れる液体冷媒と、熱電素子114との間で、熱エネルギーを移動させ得る。熱電素子114は、熱伝導材料115の片面または両面に位置付けられ得る。熱電素子114は、熱伝導材料115と気体側の熱交換器113との間で熱エネルギーを送り込み、これも熱伝導材料115の片面または両面上にあり得る。気体側の熱交換器113は、熱交換器113の周り、および/または、熱交換器113を通って流れる快適空気118へ、熱エネルギーを伝達するための、フィンまたは他の適切な構造物を含み得る。
いくつかの冷却モードの構成において、熱電素子114は、快適空気118から液体冷媒122内へと熱エネルギーを送り込む。TED112は、電気接続117を介して、加熱モードで用いられる第1の極性とは逆の第2の極性を有する電気エネルギーを受け、これは、快適空気118の冷却を容易にする、熱電素子114における熱エネルギーの移動方向を生じる。気体側の熱交換器113は、快適空気118を、熱電素子114の第1面と実質的に熱連通する場所に置く。熱電素子114は、熱エネルギーを熱伝導材料115内へと送り込む。熱伝導材料115は、液体冷媒122を、熱電素子114の第2面と実質的に熱連通する場所に置き、熱エネルギーが容易に液体冷媒122に入ることを可能にする。加熱された液体冷媒は、冷媒回路インターフェース141を介して、TED112から離れるように運搬され得る。
図29は、ディーゼルエンジンを有する車両において用いられ得る特定の温度制御の実施形態に関する、一定の期間にわたる可能性のあるキャビン加熱器の出力温度のグラフである。グラフは、30分の期間にわたる基準値の空気温度プロファイル501、30分の期間にわたる正温度係数(PTC)暖房装置の空気温度プロファイル502、および30分の期間にわたるTEDの空気温度プロファイル503を示す。基準値501は、エンジンが冷媒回路を介する唯一の熱源である場合の、可能性のある空気温度の傾向曲線を示す。基準値プロファイル501に関して、キャビンの空気は、冷媒回路を通って、エンジンに接続される熱交換器を通過する間、加熱される。PTCプロファイル502は、キャビンの空気が、冷媒回路の熱交換器だけでなく、1kWのPTC加熱器によっても加熱される場合の、可能性のある空気温度の傾向曲線を示す。TEDプロファイル503は、キャビンの空気が、冷媒回路の熱交換器だけでなく、650Wの電力供給を有する液体から気体へのTEDによっても加熱される場合の、可能性のある空気温度の傾向曲線を示す。TEDによりもたらされる熱は、部分的に電力の熱エネルギーへの変換に由来してもよく、部分的に冷媒回路に由来してもよい。
図29のグラフに示すように、基準値501の空気キャビン温度は、同一の空気キャビン温度に達することは決してなく、また期間にわたる温度の上昇傾向がより浅い(shallow)。より浅い上昇傾向は、内部のキャビン温度がより遅い速度で上昇することを意味する。電気抵抗加熱器を備えるPTC曲線502は、温度の上昇傾向がより急勾配であるとともに、基準値501と比較して、より高い最終温度に達する。これは、快適な乗客用の車両環境を迅速に達成するために望まれる。またグラフは、TED曲線503が、PTC曲線502と比較して、ほぼ同等の温度の上昇傾向の急勾配、およびほぼ同一の最終温度を有することを示す。しかしながら、TEDの利用は、電気抵抗加熱器に比べて、電力消費が少ない。ゆえに、キャビンの空気温度の増加速度および最終温度を実質的に同じにすることは、車両のHVACシステムの一部として、電気抵抗加熱器に対してTEDを利用することによって達成でき、これは要する電力がより少ない。
図30A〜30Cおよび31A〜31Cは、時間と共に様々な熱状態になるエンジンの、エンジンの起動およびエンジンの始動/停止の間の、加熱、冷却、およびデミストモードにおける、温度制御システムの一実施形態の動作を示す概略図を示す。エンジン、および加熱、冷却またはデミストモードの状態を仮定すると、温度制御システムは、本明細書に記載するような異なるモードで動作すると考えられ得る(例えば、起動加熱モードおよび停止冷間加熱モード)。概略図は、動作中のHVAC構成要素の、正確な関与期間および非関与期間は示さない、おおよその図である。水平方向の動作線は、記載されているHVAC構成要素のオンもしくはオフ状態、または、一般的な構成要素の動作を表す(すなわち、空気流または気流へ熱エネルギーを伝達するか、または空気流または気流から熱エネルギーを吸収する構成要素)。動作線における上昇ステップは、本明細書に記載される構成要素の動作の切り替えを示し得る(例えば、構成要素がオンにされたこと、関与されたこと、および/または、熱エネルギーを蓄積したこと)。動作線における下降ステップも、本明細書に記載される構成要素の動作の切り替えを示し得る(例えば、構成要素がオフにされたこと、関与しなくなったこと、および/または、熱エネルギーを消費したこと)。平らまたは直線の水平方向の動作は、概して一定の構成要素の動作を示し得る。本明細書に記載の動作は、従来の車両、マイクロハイブリッド車両、ハイブリッド車両、および/または、プラグイン車両に適用され得る。例えば、電気圧縮機を有さないハイブリッド車両およびプラグインハイブリッド車両には、ハイブリッド車両およびプラグインハイブリッド車両(ならびに従来の車両およびマイクロハイブリッド車両)に典型的な始動停止動作の間、本明細書に記載の始動停止エンジン動作が適用されるだろう。
図30Aは、エンジンの起動中の加熱モードにおける、温度制御システムの動作を示す(例えば、車両は駆動されておらず、エンジンは冷間状態で始動される)。図30Aの加熱モードの間、エバポレータ58は、エバポレータ58が加熱中関与していないことを示す動作線3018によって示されるように、動作していないか、および/または、バイパスされ得る(例えば、エバポレータは、空気流から熱エネルギーを吸収していない)。図30Aの加熱の、エンジンが暖機運転しているがまだ冷たく、エンジン冷間状態3010の間のモードにおいて、熱交換器116は、例えば、特に図21に関して本明細書に記載され、動作線3020によって示されるように、エンジンから熱的に接続を解かれている。エンジンが最初に始動されるときは、エンジンは乗員区画内の温度を充分に加熱するほどの熱を生じない。車両エンジンは、乗員区画に快適空気を提供するために必要な温度まで暖まるまで、数分またはそれ以上かかり得る。TED112は、温度勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気流へ熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。図30Aにおいて動作線3024aにより示されるように、TED112は、状態3010の間、乗員区画に入る空気流用の唯一の熱エネルギー源であり得る。温度制御システムが、空気流を加熱するために熱エネルギーを蓄積可能な加熱熱電蓄熱装置(TSD)123a(例えば、熱交換器116に熱的に接続されるか、熱交換器116の一部であるTSD)を備えられている場合、TSD123aは、最初は低温で、動作線3022aによって示すように、熱エネルギーを蓄積していないか、または最小限の熱エネルギーを蓄積している(エンジンが低温であるため)。
エンジンが依然として暖機運転しているが低温ではない、暖機エンジン状態3012の間、エンジンからの熱エネルギーは、特に図21を参照して本明細書に記載されるように、作動流体回路内の冷媒を加熱するために用いられ得る。図30Aの加熱モードの状態3012の間、エンジンは、空気流にいくらかの熱を供給可能である、暖機運転温度に達しているが、システム用の唯一の熱エネルギー源となるには不充分な暖かさである。しかしながら、乗員区画に入る空気流は、初期の起動後、エンジンおよびTED112の両方から熱エネルギーを受け得る。作動線3020のステップの変化によって示されるように、エンジンは、特に図22を参照して本明細書に記載されるように空気流を加熱するために、熱交換器116と熱連通の状態におかれる。同時に、熱交換器116を介してエンジンから与えられる熱エネルギーを補助するために、より多くの熱エネルギーがTED112を用いて空気流に伝達され得る。ゆえに、TED112は、状態3012において動作線3024aによって示すように関与したままであり得る。さらに、TSD123aは、状態3012において上向きに傾斜する動作線3022aによって示すように、エンジンが暖機運転するにつれて熱エネルギーを蓄積し始める。
エンジンが暖まった、エンジン温間状態3014の場合、エンジンからの熱エネルギーは、図30Aの加熱モードの間、作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得る。状態3014において、エンジンは充分な温度に達しており、特に図23を参照して本明細書に記載するように、システム用の唯一の熱エネルギー源となってもよい。動作線3020によって示すように、熱交換器116は、空気チャネルの空気流用の、唯一の熱源となり得る。TED112は、動作線3024aの下降ステップによって示されるように、もはや空気流を加熱しないように関与しなくてもよい。いくつかの実施形態において、TED112は、点線の動作線3024bによって示すように、関与したまま補助的な加熱を提供し得る。エンジンが暖まると、TSD123aは、本明細書に記載され、状態3014で平坦になる動作線3022aによって示される他の加熱モードにおいて用いられ得る、その最大容量またはそのほぼ最大容量で熱エネルギーを蓄積し得る。
図30Bは、エンジンの起動中の冷却モードにおける、温度制御システムの動作を示す。冷却モードの間、エバポレータ58は、動作線3018によって示すように、動作中であり関与している(例えば、エバポレータ58は、空気流から熱エネルギーを吸収している)。図30Bの冷却モードにおいて、熱交換器116は、例えば、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3020によって示されるように、エンジンから熱的に接続を解かれ得る(例えば、熱交換器116は、冷却モードにおいてバイパスされる)。例えば、エンジンが状態3010において始動されたばかりのときに、乗客用キャビンが暑い(例えば、暑い日)最初のしばらくは、補助的な冷却が必要とされる場合がある。TED112は、動作線3024aによって示すように、熱勾配を生じ、TED112の空気流からTED112の冷却端部へ熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。温度制御システムが、空気流を冷却するために熱エネルギーを蓄積可能な冷却熱電蓄熱装置(TSD)123b(例えば、エバポレータ58に熱的に接続されるか、エバポレータ58の一部であるTSD)を備えられている場合、TSD123bは、最初は周囲大気であるが、エバポレータ58が動作し、起動時とほぼ同時に冷却能を提供している状態で、エンジンの起動時に熱エネルギーを蓄積し始める。エンジン冷間状態3010で、TSD123bは、上向きに傾斜する動作線3022bによって示されるように、冷却容量を蓄積し始め得る。
エンジンが依然として暖機運転しているが低温ではない、暖機エンジン状態3012の間、熱交換器116は、動作線3020によって示されるような図30Bの冷却モードの間、空気流を加熱しないように、関与しないままである。暖機エンジン状態3012において、乗員区画に入る空気流は、初期の起動後、エバポレータ58のみによって冷却され得る。動作線3018は、エバポレータ58が状態3012において関与したままであることを示している。動作線3024aの下降ステップによって示されるように、TED112への動力は関与せず、TED112は空気流の冷却を停止する。しかしながら、補助的な冷却が必要とされる場合もあり、TED112は、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3024bによって示されるように空気流に冷却をもたらすために、電気エネルギー(電流)を受け続け得る。さらに、TSD123bは、本明細書に記載され、状態3012で平坦になる動作線3022bによって示されるように、他の冷却モードにおいて用いるために、その最大容量またはそのほぼ最大容量で熱エネルギーを蓄積し得る。
エンジンが暖まった、エンジン温間状態3014の場合、熱交換器116は、動作線3020によって示されるように、図30Bの冷却モードの間空気流を加熱しないように関与しないままである。状態3014において、乗員区画に入る空気流は、エバポレータ58によってのみ冷却され得る。動作線3018は、エバポレータ58が状態3014において関与したままであることを示している。動作線3024aによって示されるように、TED112への動力は関与しないままであり、TED112は空気流を冷却しない。しかしながら、補助的な冷却が必要とされる場合もあり、TED112は、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3024bによって示されるように、空気流に冷却をもたらすために、電気エネルギー(電流)を受け続け得る。さらに、TSD123bは、本明細書に記載され、状態3012で平坦になる動作線3022bによって示されるように、他の冷却モードにおいて用いるために、その最大容量またはそのほぼ最大容量で熱エネルギーを蓄積し得る。
図30Cは、エンジンの起動中のデミストモードにおける、温度制御システムの動作を示す。図30Cのデミストモードの間、エバポレータ58は、動作線3018によって示すように、動作中であり関与している(例えば、エバポレータ58は、空気流から熱エネルギーを吸収している)。エンジンが暖機運転中でまだ低温である、エンジン冷間状態3010の間、熱交換器116は、例えば、特に図21に関して本明細書に記載され、動作線3020によって示されるように、エンジンから熱的に接続を解かれている。エンジンは最初に始動されるときには、空気流の温度を上昇させるのに充分な熱を生じていない。TED112は、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気流へと熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。デミストモードに関して、動作線3024aによって図30Cに示されるように、TED112は、状態3010において乗員区画に入る空気流用の唯一の熱源であってもよい。温度制御システムが、空気流を加熱するために熱エネルギーを蓄積可能な加熱熱電蓄熱装置(TSD)123a(例えば、熱交換器116に熱的に接続されるか、熱交換器116の一部であるTSD)を備えられている場合、TSD123aは、最初は低温であり、動作線3022aによって示すように、熱エネルギーを蓄積していないか、または最小限の熱エネルギーを蓄積している(エンジンが低温であるため)。温度制御システムが、空気流を冷却するために熱エネルギーを蓄積可能な冷却熱電蓄熱装置(TSD)123b(例えば、エバポレータ58に熱的に接続されるか、エバポレータ58の一部であるTSD)を備えられている場合、TSD123bは、最初は周囲大気であるが、エバポレータ58が動作し、起動時とほぼ同時に冷却能を提供している状態で、エンジンの起動時に熱エネルギーを蓄積し始める。エンジン冷間状態3010で、TSD123bは、上向きに傾斜する動作線3022bによって示されるように、冷却容量を蓄積し始め得る。
エンジンが依然として暖機運転しているが低温ではない、暖機エンジン状態3012の間、エンジンからの熱エネルギーは、作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得る。状態3012において、エンジンは、空気流にいくらかの熱を供給可能である、暖機運転温度に達しているが、システム用の唯一の熱エネルギー源となるには不充分な暖かさである。しかしながら、乗員区画に入る空気流は、初期の起動後、エンジンおよびTED112の両方から熱エネルギーを受け得る。作動線3020のステップの変化によって示されるように、エンジンは、特に図22に関して本明細書に記載されるように空気流を加熱するために、熱交換器116と熱連通の状態におかれる。同時に、空気が図30Cのデミストモードにおいて、エバポレータ58によって冷却された後に加熱されるときに、熱交換器116を介してエンジンから与えられる熱エネルギーを補助するために、より多くの熱エネルギーがTED112を用いて空気流に伝達され得る。ゆえに、TED112は、動作線3024aによって示すように関与したままであり得る。加熱TSD123aは、状態3012において上向きに傾斜する動作線3022aによって示すように、エンジンが暖機運転するにつれて熱エネルギーを蓄積し始める。冷却TSD123bは、本明細書に記載され、状態3012で平坦になる動作線3022bによって示されるように、他の冷却モードにおいて用いるために、その最大容量またはそのほぼ最大容量で熱エネルギーを蓄積し得る。
エンジンが暖まった、エンジン温間状態3014の場合、エンジンからの熱エネルギーは、図30Cのデミストモードにおいて作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得る。状態3014において、エンジンは、特に図23に関して本明細書に記載するようなシステム用の、唯一の熱エネルギー源となるのに充分な温度に達している。動作線3020によって示されるように、熱交換器116は、空気チャネルの空気流用の唯一の熱源となってもよい。TED112は、動作線3024aの下降ステップによって示されるように、もはや空気流を加熱しないように関与しなくてもよい。いくつかの実施形態において、TED112は、点線の動作線3034bによって示すように、関与したまま補助的な加熱を提供し得る。エンジンが暖まった状態で、加熱TSD123aは、本明細書に記載され、状態3014で平坦になる動作線3022aによって示される他の加熱モードにおいて用いられるように、その最大容量またはそのほぼ最大容量で熱エネルギーを蓄積し得る。冷却TSD123bは、本明細書に記載され、状態3012で平坦になる動作線3022bによって示される他の冷却モードにおいて用いられるように、その最大容量またはそのほぼ最大容量で冷却容量を蓄積し得る。いくつかの実施形態において、図30Cに関して記載されるデミスト工程(状態3010、3012、3014を含む)は、「起動デミストモード」とも呼ばれ得る。
図31Aは、開始/停止システム用の、エンジン停止中の加熱モードにおける温度制御システムの動作を示す(例えば、エンジンは動作しており暖まっているが、本明細書に記載されるように、例えばマイクロハイブリッドシステムにおいて停止されている)。図31Aの加熱モードの間、エバポレータ58は、エバポレータ58が加熱中関与していないことを示す動作線3118によって示されるように、動作していないか、および/または、バイパスされ得る(例えば、エバポレータは、空気流から熱エネルギーを吸収していない)。エンジンが暖まった、エンジン温間(または停止温間)モード3110の場合、エンジンからの熱エネルギーは、作動流体の冷媒を加熱するために用いられ得る。状態3110において、エンジンが停止されていても、エンジンおよび冷媒は、特に図23に関して本明細書に記載されるように、システム用に唯一の熱エネルギー源であり続けるのに充分な残留熱を有する。動作線3120によって示されるように、熱交換器116は、空気チャネルの空気流用の唯一の熱源であってもよい。TED112は、電気エネルギー(電流)を受けておらず、動作線3124aによって示されるように空気流を加熱していない。補助的な加熱が必要とされる場合、TED112は、熱勾配を生じ、動作線3124bによって示されるように、TED112の加熱端部から空気中へ熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。加熱TSD123aが設けられる場合、熱交換器116が依然としてエンジンおよび冷媒から空気流へ残留熱エネルギーを伝達している状態で、TSD123aは、動作線3122aによって示すように、エンジンが動作し、暖かかった期間から、蓄積された熱エネルギーを実質的に保持する。
エンジンが冷却されるが、暖かい(暖機運転)、冷却されたエンジン(または停止冷却)状態3112の場合、エンジンからの熱エネルギーは、特に図21に関して本明細書に記載されるように、依然として作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得るが、エンジンは、システム用の唯一の熱エネルギー源となるには不充分な暖かさであるおそれがある。図31Aの加熱モードにおいて、状態3112の加熱TSD123aは、蓄積された熱エネルギーを空気流へ伝達するために用いられ得る。蓄積された熱エネルギーを伝達するTSD123aは、下り勾配の中間状態3112を有する動作線3112aによって示されるように、状態3112の期間にわたって次第に生じるか、または状態3112中の特定の点で生じ得る。冷却されたエンジン(および冷媒)がいくらかの残留熱を伝達し、TSD123aが蓄積された熱エネルギーを伝達することにより、空気流は、TED112の使用なしでも充分に加熱され得る。ゆえに、TSD123aにより、TED112への電気エネルギー(電流)の供給は、遅延されてもよく、電気エネルギー(電流)はエンジンが停止される間保存される。しかしながら、補助的な加熱が必要とされる場合には、TED112は、動作線3124bによって示されるように、空気流へ熱エネルギーを伝達するために電気エネルギー(電流)を受け得る。
エンジンが冷却され低温になった、エンジン冷間(または停止冷間)状態3114の場合、エンジンに熱的に接続される熱交換器116は、例えば、特に図21に関して本明細書に記載され、動作線3120によって示されるように、バイパスされている。乗員区画に入る空気流は、依然としてTSD123aからいくらかの熱エネルギーを受け得る。しかしながら、TSD123aは、状態3114において下降した後平坦になる動作線3122aによって示されるように、空気流用の唯一の熱源となるのに充分なエネルギーは有していない。TED112は、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気流へ熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。動作線3124aによって図31Aに示すように、TED112は、状態3114の間の期間にわたって、乗員区画に入る空気流用の唯一の熱エネルギー源となり得る(例えば、エンジン(および冷媒)からの残留熱およびTSD123aからの蓄熱が消散している)。モード3114の後、エンジンは、システムのエンジン冷間状態3116への移行と共に低温になる。モード3116では、低温エンジンが再び始動する。温度制御システムは、特に図30Aに関して、低温エンジンが始動され加熱が望まれる場合について本明細書に記載したものと同様に動作し得る。
図31Bは、開始/停止システム用の、エンジン停止中の冷却モードにおける温度制御システムの動作を示す(例えば、エンジンは動作しており暖かいが、本明細書に記載されるように、例えばマイクロハイブリッドシステムにおいて停止されている)。状態3110での、図31Bの冷却モードの間、エバポレータ58は、動作線3118によって示されるように、動作し関与している(例えば、エバポレータ58は、空気流から熱エネルギーを吸収している)。エンジン温間(または停止温間)モード3110においてエンジンがオフであっても、エバポレータ58および冷媒は、エンジンが、動作し例えば圧縮機ベースの冷却システムを実行していたときからの、いくらかの残留冷却容量を有し得る。熱交換器116は、例えば、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3120によって示されるように、エンジンから熱的に接続を解かれ得る(例えば、熱交換器116は、冷却モードにおいてバイパスされる)。動作線3124aによって示されるように、TED112への動力は、関与していなくてもよく、TED112は、エバポレータ58が充分な冷却を提供している場合には空気流を冷却しない。しかしながら、補助的な冷却が必要となる場合もあり、TED112は、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3124bによって示されるように、空気流に冷却をもたらすために、電気エネルギー(電流)を受け得る。冷却TSD123bが設けられる場合、エバポレータ58が残留冷却容量を用いて依然として空気流を冷却している状態で、TSD123bは、エバポレータ58が動作線3122bによって示されるように動作中であったときから、蓄積された熱エネルギーを実質的に保持する。
エンジンが冷却されるが、依然として暖かい(暖機運転)、冷却エンジン(または停止冷却)状態3112の場合、熱交換器116は、動作線3120によって示されるような図31Bの冷却モードの間、空気流を加熱しないように関与しないままである。エバポレータ58および冷媒は、その冷却容量を使い果たし、本明細書に記載するように、動作線3118の下降ステップによって示されるように関与しないか、またはバイパスされる。状態3112の冷却TSD123bは、蓄積された冷却容量を空気流に伝達するために用いられ得る。蓄積された熱エネルギーを伝達するTSD123bは、下り勾配の傾斜の中間状態3112を有する動作線3112bによって示されるように、状態3112の期間にわたって次第に生じるか、または状態3112中の特定の点で生じ得る。最初は、TSD123bは、TED112を用いることなく空気流を冷却するのに充分な、蓄積された冷却容量を有し得る。ゆえに、TSD123aにより、TED112への電気エネルギー(電流)の供給は、遅延されてもよく、電気エネルギー(電流)はエンジンが停止される間保存される。TSD123bの蓄積された冷却容量が消費されると、必要とされるレベルの冷却をもたらすためにTED112が関与し得る。TED112は、動作線3124aによって示されるように、空気流へ熱エネルギーを伝達するために電気エネルギー(電流)を受け得る。TED112への動力供給は、ステップが変更する中間モード3112を有する動作線3124aによって示されるように、モード3112の任意の時点で生じ得る。
エンジンが冷却され低温になった、エンジン冷間(または停止冷間)状態3114の場合、熱交換器116は、動作線3120によって示されるように、図31Bの冷却モードの間、関与しないままであり得る。エバポレータ58およびTSD123bが、(蓄積された冷却容量または他のものからの)冷却をもはや提供していない状態で、TED112は、特に図24に関して本明細書に記載され、動作線3124aによって示されるように、空気流に冷却をもたらすために電気エネルギー(電流)を受け得る。いくつかの実施形態において、TED112は、モード3114において空気流用の唯一の冷却源となってもよい。モード3116において、低温エンジンが再び始動される。温度制御システムは、特に図30Bに関して、低温エンジンが始動され冷却が望まれる場合について本明細書に記載したものと同様に動作し得る。
図31Cは、開始/停止システム用の、エンジン停止中のデミストモードにおける温度制御システムの動作を示す(例えば、エンジンは動作しており暖かいが、本明細書に記載されるように、例えばマイクロハイブリッドシステムにおいて停止されている)。状態3110での、図31Cのデミストモードの間、エバポレータ58は、動作線3118によって示されるように、動作し関与している(例えば、エバポレータ58は、空気流から熱エネルギーを吸収している)。エンジン温間(または停止温間)モード3110においてエンジンがオフであっても、エバポレータ58および冷媒は、エンジンが、例えば圧縮機ベースの冷却システムを動作させ実行していたときからの、いくらかの残留冷却容量を有し得る。モード3110においてエンジンが温間状態で、エンジンからの熱エネルギーは、作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得る。状態3110において、エンジンが停止されていても、エンジンおよび冷媒は、特に図23に関して本明細書に記載されるように、システム用に唯一の熱エネルギー源であり続けるのに充分な残留熱を有する。動作線3120によって示されるように、熱交換器116は、空気チャネルの空気流用の唯一の熱源であってもよい。必要なレベルのデミストをもたらすために、補助的な加熱が必要とされる場合、TED112は、動作線3124bによって示されるように、熱勾配を生じ、TED112の加熱端部から空気流へ熱を伝達するために、電気エネルギー(電流)を受け得る。加熱TSD123aが設けられる場合、熱交換器116が依然としてエンジンおよび冷媒から残留熱エネルギーを伝達している状態で、TSD123aは、動作線3122aによって示すように、エンジンが動作し、暖かかったときから、蓄積された熱エネルギーを実質的に保持する。冷却TSD123bが設けられる場合、エバポレータ58および冷媒が依然として残留冷却容量を用いて空気流を冷却している状態で、TSD123bは、エバポレータ58が動作線3122bによって示されるように動作中であったときから、蓄積された熱エネルギーを実質的に保持する。
エンジンが冷却されているが、依然として暖かい(暖機運転)、冷却エンジン(または停止冷却)状態3112の場合、エバポレータ58および冷媒は、その残留冷却容量を使い果たし、本明細書に記載するように、動作線3118の下降ステップによって示されるように関与しないか、またはバイパスされる。状態3112の冷却TSD123bは、蓄積された冷却容量を空気流に伝達するために用いられ得る。蓄積された熱エネルギーを伝達するTSD123bは、下り勾配の傾斜の中間状態3112を有する動作線3122bによって示されるように、状態3112の期間にわたって次第に生じるか、または状態3112中の特定の点で生じ得る。最初は、TSD123bは、デミストをもたらすために、TED112を用いることなく空気流を冷却するのに充分な、蓄積された冷却容量を有し得る。エンジンからの熱エネルギーは、依然として、特に図21に関して本明細書に記載されるように、作動流体回路の冷媒を加熱するために用いられ得るが、エンジンは、モード3112のデミスト中にシステム用の唯一の熱エネルギー源となるには、不充分な暖かさである。状態3112の加熱TSD123aは、蓄積された熱エネルギーを空気流へ伝達するために用いられ得る。蓄積された熱エネルギーを伝達するTSD123aは、下り勾配の傾斜の中間状態3112を有する動作線3112aによって示されるように、状態3112の期間にわたって次第に生じるか、または状態3112中の特定の点で生じ得る。冷却されたエンジン(および冷媒)がいくらかの残留熱を伝達し、TSD123aが蓄積された熱エネルギーを伝達することにより、空気流は、TED112の使用なしでも充分に加熱され得る。ゆえに、TSD123aにより、TED112への電気エネルギー(電流)の供給は、遅延されてもよく、電気エネルギー(電流)はエンジンが停止される間保存される。しかしながら、補助的な加熱が必要とされる場合には、TED112は、動作線3124bによって示されるように、空気流へ熱エネルギーを伝達するために電気エネルギー(電流)を受け得る。TSD123bの蓄積された冷却容量およびTSD123aの蓄積された加熱容量が消費されると、TED112は、必要とされるレベルの冷却または加熱のいずれかを提供するために関与し得る。いくつかの実施形態において、TED112は、特に図21に関して本明細書に記載されるように、空気流へ熱エネルギーを伝達するために電気エネルギー(電流)を受け得る。いくつかの実施形態において、TED112は、特に図24に関して本明細書に記載されるように、空気流から熱エネルギーを吸収するために逆の極性の電気エネルギー(電流)を受け得る。TED112が空気流を冷却しているか加熱しているかは、デミストを達成するために特定の動作点でシステムが何を必要としているか、ならびに、図30Cのデミストモードの間の、空気チャネルにおけるTED112の位置に応じて、温度制御システムの制御装置によって判定され得る。例えば、冷却TSD123bまたは加熱TSD123aのいずれかは、状態3112の間より多くの蓄熱容量を有する場合があり、TED112は、蓄熱容量の任意の欠乏またはより完全に使い果たされたものを補うために動力を与えられ得る。TED112への動力供給は、中間状態3112での動作線3124aにおけるステップの上昇によって示されるように、状態3112の任意の時点で生じ得る。
エンジンが冷却され低温になった、エンジン冷間(または停止冷間)状態3114の場合、温度制御システムは、TSD123a、bがその残っている熱容量を使い果たしている状態で、本明細書に記載するような状態3112の間の動作を、しばらくの間継続し得る。いくつかの実施形態では、TSDsがその蓄積された熱容量を使い果たした場合にデミストを提供するために、2つのTEDが本明細書に記載するような空気チャネル内の異なる位置に設けられてもよい。例えば、第1TEDは、空気流が空気チャネルに入ると、空気流を冷却(乾燥)し得る。第2TEDは、空気流が空気チャネルを通過すると空気流を加熱し、デミストを達成し得る。モード3116において、低温エンジンは再び始動される。温度制御システムは、特に図30Cに関して、低温エンジンが始動されデミストが望まれる場合について本明細書に記載したものと同様に動作し得る。
本明細書全体を通して、「いくつかの実施形態」、「特定の実施形態」または「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、少なくともいくつかの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、本明細書にわたって様々な場所で用いられる「いくつかの実施形態において」または「一実施形態において」という文言は、その全てが必ずしも同一の実施形態を言及する必要はなく、同一または異なる実施形態の1つまたは2つ以上を言及していてもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、本開示の属する技術の当業者にとっては明らかなように、1つまたは2つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合され得る。
説明を目的として、いくつかの実施形態は、車両、航空機、電車、バス、トラック、ハイブリッド車両、電機車両、船舶、または他のあらゆるヒトまたはモノのキャリアにおける、乗員区画に、快適空気を提供することに関連して記載されている。本明細書に開示される実施形態は、記載される状況または設定に制限されることはなく、少なくともいくつかの実施形態は、家庭、オフィス、産業空間、および他の建物や空間に快適空気を提供するために用いられ得ることが理解される。また、少なくともいくつかの実施形態は、装置の温度管理など、温度制御された流体が有利に用いられ得る他の状況において用いられ得ることも理解される。
本出願で用いられる限りは、「備える」、「含む」、「有する」などの語は同義語であり、制限なく包括的に用いられ、付加的な要素、特徴、作動、操作などを除外しない。また、「または」という語は、その包括的な意味で(排外的な意味ではなく)用いられるので、例えば、要素のリストを接続するために用いられる場合、「または」という語は、リスト中の1つ、いくつか、または全ての要素を意味する。
同様に、上述の実施形態の記載において、様々な特徴は、時として、開示の効率化および様々な発明の態様の1つまたは2つ以上の理解の補助を目的として、単一の実施形態、図、またはその記載に集められることが理解されるべきである。この開示方法は、しかしながら、請求項のいずれかが、特許請求の範囲に明確に列挙される特徴よりも多くの特徴を要求するという意図を表すものとは理解されない。むしろ、発明の態様は、上記に開示する実施形態のいずれかの、全ての特徴よりも少ない特徴の組み合わせである。
本明細書に示される発明は、特定の好ましい実施形態および実施例に関連して開示されているが、当業者は、本発明が詳細に開示される実施形態を越えて本発明の他の代替的な実施形態および/または使用、ならびにその明らかな修正および等価物にまで及ぶことを理解するだろう。ゆえに、本明細書に開示される発明の範囲は、上述の特定の実施形態によって制限されるべきではないことが意図される。