JP6127528B2 - 電極、全固体電池、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の第1の態様は、LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、標準電極電位が1.0V以上である、電極である。
本発明の電極は、LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含み、標準電極電位が1.0V以上である。本発明の電極に含まれるこれらの要素について以下に説明する。
第1の固体電解質は、LiGePS型の結晶構造を有する固体電解質である。「LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質」とは、M1元素、M2元素およびS元素を含有し、M1は、Li、Na、K、Mg、Ca、Znからなる群から選択される少なくとも一種であり、M2は、P、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V、Nbからなる群から選択される少なくとも一種であり、CuKα線を用いたX線回折測定における2θ=29.58°±0.50°の位置にピークを有し、2θ=29.58°±0.50°のピークの回折強度をIAとし、2θ=27.33°±0.50°のピークの回折強度をIBとした場合に、IB/IAの値が0.50未満であることを特徴とする硫化物固体電解質である。このような結晶構造を有する固体電解質は、Liイオン伝導度が高いことが知られている。第1の固体電解質の具体例としては、Li4−xGe1−xPxS4(0.5≦x≦0.7)、Li4−xSn1−xPxS4(0.65≦x≦0.75)、Li4−xSi1−xPxS4(0.6≦x≦0.75)、Li4−xSi1−xPxO1−ySy(0.65≦x≦0.75,0.1≦y≦0.35)などを挙げることができる。これらの中で、特にLiイオン伝導度が高いという観点から、Li4−xGe1−xPxS4(0.5≦x≦0.7)が好ましい。
第2の固体電解質は、少なくとも一部がガラスである固体電解質である。第2の固体電解質は、本発明の電極を製造する前にはガラスであって、本発明の電極の製造過程において少なくとも一部が結晶化したものであってもよい。また、第2の固体電解質としては、加圧したときに第1の固体電解質より変形しやすく、第1の固体電解質より軟化点が低いものを用いる。第2の固体電解質としては、安価で成形性が良好な硫化物系非晶質固体電解質を用いることが好ましい。
このような第2の固体電解質の具体例としては、70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI、75Li2S−25P2S5、60Li2S−40SiS2、67Li2S−33GeS2、75Li2S−25Al2S3、75Li2S−25B2S3、95(0.6Li2S−0.4SiS2)−5Li3PO4、70Li2S−30P2S5、70(0.6Li2S−0.4SiS2)−30LiIなどを挙げることができる。これらの中で、イオン伝導度が高いという観点から、70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI、75Li2S−25P2S5、95(0.6Li2S−0.4SiS2)−5Li3PO4、70(0.6Li2S−0.4SiS2)−30LiIが好ましい。特に、70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiIは高いイオン伝導性と安全性の面から望ましい材料である。
本発明の電極には、本発明の電極の標準電極電位が1.0V以上となる活物質を用いる。本発明の電極の標準電極電位が1.0V未満であると、上述した第1の固体電解質が分解する虞があるからである。
本発明の電極は、上述した第1の固体電解質、第2の固体電解質および活物質の外に、導電性を向上させる導電助剤や活物質と固体電解質とを結着させるバインダー等を含んでいてもよい。
上記導電助剤としては、従来の全固体電池の電極に用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、気相成長炭素繊維、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料のほか、固体電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を用いることができる。
上記バインダーについても、従来の全固体電池の電極に用いられるものを特に限定されることなく用いることができる。例えば、ブチレンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム性状樹脂やポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂等を用いることができる。
また、本発明の電極の厚みや形状等は特に限定されるものではない。例えば、5μm以上500μm以下程度の厚みの薄膜とすることができる。
上述したように、第1の固体電解質はイオン伝導度が高い。しかしながら、第1の固体電解質は高価である。本発明の電極は、第1の固体電解質と第1の固体電解質より安価な第2の固体電解質とを併用することによって、イオン伝導度が高く、安価に生産できる電極とすることができる。
また、第1の固体電解質は硬くて変形しにくいため、第1の固体電解質および活物質のみを混合して電極を作製すると、第1の固体電解質と活物質とが接触する界面を増大させ難かった。電極反応は固体電解質と活物質との界面で起こるので、固体電解質と活物質との接触面積が大きい方が電極反応を生じさせやすくなり、全固体電池に適用したときに出力特性を向上させやすくなると考えられる。本発明の電極は、第1の固体電解質と第1の固体電解質より変形しやすい第2の固体電解質とを上述した所定の割合で混合して用いることによって、固体電解質として第1の固体電解質のみを用いた場合に比べて、活物質と固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)とが接触する界面を増大させることができる。その結果、全固体電池に適用したときに該全固体電池の出力特性を向上させやすくなると考えられる。なお、固体電解質と活物質とが接触する界面の大きさは、後に説明する電極充填率を用いて間接的に評価することができる。すなわち、電極充填率が高いほど固体電解質と活物質とが接触する界面が大きいと考えられる。
ただし、上述したように本発明の電極は電位をある程度高くする必要がある。負極層の電位を高くすると全固体電池のエネルギーを高くすることが難しくなるため、本発明の電極は全固体電池の正極層に適用することが好ましい。
本発明の電極は、上述した固体電解質や活物質等を含む電極合剤をプレス成形することにより、製造することができる。電極合剤をプレスすることによって、第2の固体電解質が変形し、固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)と活物質とが接触する界面を増大させることができる。
また、上記のようにプレスするとき、所定の温度まで加熱してプレス(ホットプレス)することが好ましい。このようにホットプレスすることによって、第2の固体電解質が軟化してより変形しやすくなり、電極を高密度化させ、固体電解質(第1の固体電解質または第2の固体電解質)と活物質とが接触する界面をより増大させるやすくなる。
なお、ホットプレス時の温度は、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転移温度以上であり、該ガラス部分の結晶化温度を大きく超えない範囲であることが望ましい。一般にガラスはガラス転移温度以上で大きく軟化するためである。また、結晶化すると自由体積の観点からガラスより硬くなるため、結晶化温度を大きく超えないことが望ましいと考えられる。したがって、ホットプレス時の最適温度は、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転移温度や結晶化温度によって異なる。ホットプレス時の温度は、例えば第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転移温度以上で該ガラス部分の結晶化温度より50℃高い温度以下であることが好ましく、30℃高い温度以下であることがより好ましく、20℃高い温度以下であることがさらに好ましい。すなわち、ホットプレス時の温度をT、第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転移温度をTg、該ガラス部分の結晶化温度をTcとしたとき、Tg≦T≦(Tc+50℃)であることが好ましく、Tg≦T≦(Tc+30℃)であることがより好ましく、Tg≦T≦(Tc+20℃)であることがさらに好ましい。
図1(B)は第1の固体電解質(Li10GeP2S12)および第2の固体電解質(70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI)の合計量に対する第2の固体電解質(70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。
図2(A)は第1の固体電解質(Li10GeP2S12)および第2の固体電解質(75Li2S−25P2S5)の合計量に対する第2の固体電解質(75Li2S−25P2S5)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度とイオン伝導抵抗との関係を示す図である。
図2(B)は第1の固体電解質(Li10GeP2S12)および第2の固体電解質(75Li2S−25P2S5)の合計量に対する第2の固体電解質(75Li2S−25P2S5)の混合割合(体積%)およびプレス時の温度と電極充填率との関係を示す図である。
なお、図1および図2において、第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合が0%とは、第1の固体電解質のみを用いた場合を意味し、第1の固体電解質および第2の固体電解質の合計量に対する第2の固体電解質の混合割合が100%とは、第2の固体電解質のみを用いた場合を意味する。
まず、電極合剤に用いる各材料の真密度と混合割合とから電極合剤の真密度を求める。例えば、Li4Ti5O12、Li10GeP2S12、および70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiIの真密度は、3.49[g/cm3]、2.0[g/cm3]、2.41[g/cm3]なので、体積比で「Li4Ti5O12:Li10GeP2S12:70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI=60:32:8」としたときの電極合剤の真密度は、3.49[g/cm3]×0.6+2.0[g/cm3]×0.32+2.41[g/cm3]×0.08=2.9268[g/cm3]となる。
次に、上記のようにして求めた電極合剤の真密度から求めた膜厚および実際に作製した電極の膜厚から、電極充填率を算出できる。例えば、上記例の電極合剤50[mg]を内径断面積1[cm2]のプレスセルに入れてプレスし、全く隙間がない電極(電極充填率100%)を作製したとすると、その膜厚は、50[mg]/2.9268[g/cm3]/1[cm2]=170[μm]となる。このとき、実際に作製した電極の膜厚が200μmだとすると、電極充填率は170/200×100=85%となる。
次に、本発明の全固体電池について説明する。以下本発明の全固体電池を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明の全固体電池は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図は構成を概略的に示したものであり、各構成要素の大きさや形状を正確に示すものではない。
負極層1および正極層2には、それぞれ活物質と固体電解質とを含む層である。上述した本発明の電極は、負極層1および/または正極層2に適用される。上述したように、本発明の電極は負極層1にも正極層2にも適用可能である。本発明の電極を全固体電池10の正極層2とするか負極層1とするかは、本発明の電極と対になる電極に含まれる活物質によって決まる。すなわち、本発明の電極に含まれる活物質と対極に含まれる活物質との充放電電位を比較して貴な電位を示す活物質を含む方の電極を正極層2に、卑な電位を示す活物質を含む方の電極を負極層1に用いて、任意の電圧の全固体電池10を構成することができる。
ただし、上述したように本発明の電極は電位をある程度高くする必要がある。負極層1の電位を高くすると全固体電池10のエネルギーを高くすることが難しくなるので、本発明の電極は全固体電池10の正極層2に適用することが好ましい。
また、全固体電池10の性能を高めやすくするために、正極層2はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。
また、全固体電池10の性能を高めやすくするために、負極層1はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。
固体電解質層3は固体電解質を含む層である。
負極集電体4及び正極集電体5は、それぞれ全固体電池10に適用できる集電体であれば、その材質等は特に限定されない。例えば、金属箔や金属メッシュ、金属蒸着フィルム等を用いることができる。具体的には、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Zn、Ge、In、ステンレス鋼等の金属箔やメッシュ、或いは、ポリアミド、ポリイミド、PET、PPS、ポリプロピレンなどのフィルムやガラス、シリコン板等の上に上記金属を蒸着したもの等を用いることができる。負極集電体4及び正極集電体5の厚みや大きさは特に限定されるものではない。例えば、5μm以上500μm以下程度の厚みとすることができる。
図示していないが、全固体電池10はラミネートフィルム等の外装体に密封された状態で使用することができる。そのようなラミネートフィルムとしては、樹脂製のラミネートフィルムや、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルム等を例示することができる。
次に、本発明の全固体電池の製造方法について説明する。
以下のようにして各例にかかる全固体電池を作製した。
第1の固体電解質(Li10GeP2S12)および第2の固体電解質(70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI)(ガラス転移温度:約150℃、結晶化温度:約160℃)を、体積比で「第1の固体電解質:第2の固体電解質=80:20」となるように混合し、固体電解質を得た。
次に、上記のようにして混合した固体電解質と、正極活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)と、導電助剤(気相法炭素繊維(VGCF(登録商標)))と、バインダー(ブチルゴム)とを、体積比で「固体電解質:正極活物質:導電助剤:バインダー=40:60:5:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の正極層用組成物を得た。なお、バインダーは、ヘプタンに溶解させて5質量%ヘプタン溶液として用いた(以下のバインダーも同様にヘプタン溶液として用いた。)。
次に、上記正極層用組成物を正極集電体上に塗布して100℃にて乾燥して正極層(本
発明の電極)を得た。
一方、固体電解質(70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI)と、負極活物質(カーボン)と、バインダー(ブチルゴム)とが、体積比で「固体電解質:負極活物質:バインダー=40:60:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の負極層用組成物を得た。
次に、上記負極層用組成物を負極集電体上に塗布して100℃にて乾燥して負極層を得た。
また、固体電解質(70(0.75Li2S−0.25P2S5)−30LiI)と、バインダー(ブチルゴム)とが、体積比で「固体電解質:バインダー=100:2」となるようにヘプタン中で混合してペースト状の固体電解質層用組成物を得た。
次に、上記電解質層用組成物を金属箔上に塗布して乾燥して固体電解質層を得た。その後、固体電解質層を負極層に重ねてプレスし、金属箔から負極層に固体電解質層を転写し、負極層の固体電解質層が転写された側とは反対側の面に負極集電体を接続した。
上記のようにして正極層、固体電解質層、負極層を形成した後、正極層と負極層との間に固体電解質層が配置されるように積層し、積層方向に4ton/cm2のプレス圧で加圧した。その後、正極集電体および負極集電体に端子を付けて実施例1にかかる全固体電池を作製した。
積層方向にプレスする際に180℃に加熱した以外は実施例1と同様にして実施例2にかかる全固体電池を作製した。
正極層に第1の固体電解質を用いなかった以外は実施例1と同様にして比較例1にかかる全固体電池を作製した。
上記のようにして作製した実施例1、実施例2、比較例1にかかる全固体電池について、出力特性を測定した。なお、出力特性は、作製した全固体電池を定電流・定電圧(CC/CV)充電で3.6Vに調整した後、定電力(CP)放電を行って測定した。CP放電は放電して10秒後に2.5Vになるように電力(W)を調整して25℃で行った。調整された電力を全固体電池の出力特性として、作製した全固体電池の比較を行った。比較例1の出力特性を100%として、実施例1、2の出力特性を表わした結果を図4に示した。
2 正極層
3 固体電解質層
4 負極集電体
5 正極集電体
Claims (3)
- LiGePS型の結晶構造を有する第1の固体電解質と、少なくとも一部がガラスである第2の固体電解質と、活物質と、を含む組成物をプレスして成形する工程を含み、前記プレスをするときの温度が前記第2の固体電解質に含まれるガラス部分のガラス転移温度以上で該ガラス部分の結晶化温度より50℃高い温度以下である、電極の製造方法。
- 前記第1の固体電解質がLi10GeP2S12を含む、請求項1に記載の電極の製造方法。
- 正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に配置された固体電解質層を備えた全固体電池の製造方法であって、請求項1又は2に記載の電極の製造方法によって前記正極層または前記負極層を製造する、全固体電池の製造方法。
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