図1は、本実施例の電池システムの構成を示す図である。図1に示す電池システムは、車両に搭載されている。車両としては、例えば、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)やEV(Electric Vehicle)がある。
PHVは、車両を走行させるための動力源として、後述する組電池に加えて、エンジン又は燃料電池といった他の動力源を備えている。EVは、車両を走行させるための動力源として、後述する組電池だけを備えている。PHVおよびEVでは、後述するように、外部電源からの電力を用いて組電池を充電することができる。
なお、本実施例では、組電池を車両に搭載しているが、これに限るものではない。すなわち、組電池を充電することができるシステムであれば、本発明を適用することができる。
組電池10は、直列に接続された複数の単電池11を有する。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。単電池11の数は、組電池10の要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。本実施例の組電池10では、すべての単電池11が直列に接続されているが、組電池10には、並列に接続された複数の単電池11が含まれていてもよい。
監視ユニット(本発明の電圧センサに相当する)20は、組電池10の端子間電圧を検出したり、各単電池11の端子間電圧を検出したりし、検出結果をECU(Electric Control Unit)30に出力する。組電池10を構成する複数の単電池11が複数の電池ブロックに分けられているとき、監視ユニット20は、電池ブロックの端子間電圧を検出することもできる。ここで、各電池ブロックは、直列に接続された複数の単電池11を有しており、複数の電池ブロックが直列に接続されることにより、組電池10が構成される。なお、電池ブロックには、並列に接続された複数の単電池11が含まれていてもよい。
電流センサ21は、組電池10に流れる電流値を検出し、検出結果をECU30に出力する。本実施例では、組電池10を放電しているときに電流センサ21によって検出された電流値を正の値としている。また、組電池10を充電しているときに電流センサ21によって検出された電流値を負の値としている。
本実施例では、組電池10の正極端子と接続された正極ラインPLに電流センサ21を設けている。ここで、電流センサ21は、組電池10に流れる電流を検出できればよく、電流センサ21を設ける位置は適宜設定することができる。例えば、組電池10の負極端子と接続された負極ラインNLに電流センサ21を設けることができる。また、複数の電流センサ21を用いることもできる。
ECU(本発明のコントローラに相当する)30は、メモリ31を有しており、メモリ31は、ECU30が所定の処理(特に、本実施例で説明する処理)を行うための各種の情報を記憶している。本実施例では、メモリ31が、ECU30に内蔵されているが、メモリ31を、ECU30の外部に設けることもできる。
正極ラインPLには、システムメインリレーSMR−Bが設けられている。システムメインリレーSMR−Bは、ECU30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。負極ラインNLには、システムメインリレーSMR−Gが設けられている。システムメインリレーSMR−Gは、ECU30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
システムメインリレーSMR−Gには、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rが並列に接続されている。ここで、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rは、直列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、ECU30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
電流制限抵抗Rは、組電池10を負荷(後述するインバータ23)と接続するときに、コンデンサ22に突入電流が流れることを抑制するために用いられる。コンデンサ22は、正極ラインPLおよび負極ラインNLに接続されており、正極ラインPLおよび負極ラインNLの間における電圧変動を平滑化するために用いられる。
組電池10をインバータ23と接続するとき、ECU30は、まず、システムメインリレーSMR−B,SMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、電流制限抵抗Rに電流を流すことができ、コンデンサ22に突入電流が流れることを抑制できる。次に、ECU30は、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。
これにより、組電池10およびインバータ23の接続が完了し、図1に示す電池システムは、起動状態(Ready−On)となる。ECU30には、車両のイグニッションスイッチのオン/オフに関する情報が入力され、ECU30は、イグニッションスイッチがオフからオンに切り替わることに応じて、図1に示す電池システムを起動する。
一方、イグニッションスイッチがオンからオフに切り替わったとき、ECU30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替える。これにより、組電池10およびインバータ23の接続が遮断され、図1に示す電池システムは、停止状態(Ready−Off)となる。
インバータ23は、組電池10から出力された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ(MG)24に出力する。モータ・ジェネレータ24としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータ24は、インバータ23から出力された交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ24によって生成された運動エネルギを、車輪に伝達することにより、車両を走行させることができる。
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ24は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ23は、モータ・ジェネレータ24が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を組電池10に出力する。これにより、組電池10は、回生電力を蓄えることができる。
本実施例では、組電池10をインバータ23に接続しているが、これに限るものではない。具体的には、組電池10およびインバータ23の間の電流経路において、昇圧回路を設けることができる。昇圧回路は、組電池10の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電力をインバータ23に出力することができる。また、昇圧回路は、インバータ23の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力することができる。
充電器25は、充電ラインPCL,NCLを介して、正極ラインPLおよび負極ラインNLに接続されている。具体的には、充電ラインPCLは、組電池10の正極端子およびシステムメインリレーSMR−Bを接続する正極ラインPLに接続されている。また、充電ラインNCLは、組電池10の負極端子およびシステムメインリレーSMR−Gを接続する負極ラインNLに接続されている。
充電ラインPCL,NCLには、充電リレーRch1,Rch2が設けられている。充電リレーRch1,Rch2は、ECU30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。充電器25には、インレット(いわゆるコネクタ)26が接続されている。
インレット26には、外部電源(図示せず)と接続されたプラグ(いわゆるコネクタ)が接続される。プラグをインレット26に接続することにより、外部電源からの電力を、充電器25を介して組電池10に供給することができる。これにより、外部電源を用いて、組電池10を充電することができる。外部電源としては、例えば、商用電源を用いることができる。外部電源が交流電力を供給するとき、充電器25は、外部電源からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力を組電池10に出力する。ECU30は、充電器25の動作を制御することができる。
外部電源の電力を組電池10に供給して、組電池10を充電することを外部充電という。本実施例の電池システムでは、充電リレーRch1,Rch2がオンであるときに、外部充電を行うことができる。外部充電を行うとき、組電池10には一定の充電電流を供給することができ、定電流の下で、組電池10を充電することができる。ここで、外部充電を行うときの電流値(固定値)は、適宜設定することができる。
外部電源の電力を組電池10に供給するシステムは、図1に示すシステムに限るものではない。本実施例では、充電器25が車両に搭載されているが、車両の外部に充電器(外部充電器という)を設置することもできる。この場合には、図1に示す充電器25が省略される。外部充電器と接続されたプラグをインレット26に接続することにより、外部電源の電力を組電池10に供給することができる。ECU30は、有線又は無線を介して外部充電器と通信することができ、外部充電器の動作を制御することができる。
また、本実施例では、プラグをインレット26に接続することにより、外部充電を行うようにしているが、これに限るものではない。具体的には、いわゆる非接触方式の充電システムを用いることにより、外部電源の電力を組電池10に供給することができる。非接触方式の充電システムでは、電磁誘導や共振現象を利用することにより、ケーブルを介さずに電力を供給することができる。非接触方式の充電システムとしては、公知の構成を適宜採用することができる。
単電池11の電圧値OCV(Open Circuit Voltage)は、図2に示すように、正極の開回路電位U1および負極の開回路電位U2の電位差として表される。本実施例において、図2に示すOCVの変化をOCV特性という。OCV特性は、充電容量およびOCVの対応関係を示す。
正極の開回路電位U1は、正極活物質の表面(界面)におけるSOC(State of Charge)に応じて変化する特性を有する。ここで、正極活物質の表面におけるSOCを局所的SOCθ1という。また、負極の開回路電位U2は、負極活物質の表面(界面)におけるSOCに応じて変化する特性を有する。ここで、負極活物質の表面におけるSOCを局所的SOCθ2という。
単電池11が初期状態にあるときに、局所的SOCθ1および開回路電位U1の関係を測定しておけば、局所的SOCθ1および開回路電位U1の関係を示す特性(図2に示すU1の曲線)を得ることができる。初期状態とは、単電池11の劣化が発生していない状態をいい、例えば、単電池11を製造した直後の状態をいう。
単電池11が初期状態にあるときに、局所的SOCθ2および開回路電位U2の関係を測定しておけば、局所的SOCθ2および開回路電位U2の関係を示す特性(図2に示すU2の曲線)を得ることができる。これらの特性(U1,U2)を示すデータは、マップとしてメモリ31に予め格納しておくことができる。
単電池11のOCVは、放電が進むにつれて低下する特性を有する。また、劣化後の単電池11においては、初期状態の単電池11に比べて、同じ放電時間に対する電圧低下量が大きくなる。このことは、単電池11の劣化によって、満充電容量の低下と、開回路電圧特性の変化とが生じていることを示している。本実施例では、劣化状態の単電池11の内部で起きると考えられる2つの現象に基づいて、単電池11の劣化に伴う開回路電圧特性の変化を規定している。
本実施例において、単電池11の劣化とは、通電や放置等によって正極および負極の性能(イオンの受け入れ能力)が低下することである。ここで、単電池11の劣化としては、例えば、正極や負極の活物質が摩耗することが挙げられる。一方、上述した2つの現象は、正極および負極における単極容量の減少と、正極および負極の間における組成の対応ずれである。
単極容量の減少とは、正極および負極のそれぞれにおけるイオンの受け入れ能力の減少を示している。イオンの受け入れ能力が減少していることは、充放電に有効に機能する活物質等が減少していることを意味している。
図3には、単極容量の減少による開回路電位の変化を模式的に示している。図3において、正極容量の軸におけるQ_L1は、単電池11の初期状態において、図2に示す局所的SOCθL1に対応する容量である。Q_H11は、単電池11の初期状態において、図2に示す局所的SOCθH1に対応する容量である。また、負極容量の軸におけるQ_L2は、単電池11の初期状態において、図2に示す局所的SOCθL2に対応する容量であり、Q_H21は、単電池11の初期状態において、図2に示す局所的SOCθH2に対応する容量である。
正極において、イオンの受け入れ能力が低下すると、局所的SOCθ1に対応する容量は、Q_H11からQ_H12に変化する。また、負極において、イオンの受け入れ能力が低下すると、局所的SOCθ2に対応する容量は、Q_H21からQ_H22に変化する。
ここで、単電池11が劣化しても、局所的SOCθ1および開回路電位U1の関係(図2に示す関係)は変化しない。同様に、単電池11が劣化しても、局所的SOCθ2および開回路電位U2の関係(図2に示す関係)は変化しない。
このため、局所的SOCθ1および開回路電位U1の関係を、正極容量および開回路電位の関係に変換すると、図3に示すように、正極容量および開回路電位の関係を示す曲線は、単電池11が劣化した分だけ、初期状態の曲線に対して縮んだ状態となる。図3において、U11は、単電池11が初期状態にあるときの正極の開回路電位を示し、U12は、単電池11が劣化したときの正極の開回路電位を示す。
また、局所的SOCθ2および開回路電位U2の関係を、負極容量および負極の開回路電位の関係に変換すると、図3に示すように、負極容量および負極の開回路電位の関係を示す曲線は、単電池11が劣化した分だけ、初期状態の曲線に対して縮んだ状態となる。図3において、U21は、単電池11が初期状態にあるときの負極の開回路電位を示し、U22は、単電池11が劣化したときの負極の開回路電位を示す。
正極容量の減少は、正極容量維持率として規定される。正極容量維持率とは、初期状態の正極容量に対する劣化状態の正極容量の割合をいう。具体的には、正極容量維持率k1は、下記式(1)によって表される。
上記式(1)において、Q1_iniは、単電池11が初期状態にあるときの正極容量(図3に示す容量Q_H11)を示し、ΔQ1は、単電池11が劣化したときの正極容量の減少量を示している。図3において、減少量ΔQ1は、正極容量Q_H11,Q_H12の差分となる。正極容量Q1_iniは、活物質の理論容量や仕込み量などから予め求めておくことができる。
一方、負極容量の減少は、負極容量維持率として規定される。負極容量維持率とは、初期状態の負極容量に対する劣化状態の負極容量の割合をいう。具体的には、負極容量維持率k2は、下記式(2)によって表される。
上記式(2)において、Q2_iniは、単電池11が初期状態にあるときの負極容量(図3に示す容量Q_H21)を示し、ΔQ2は、単電池11が劣化したときの負極容量の減少量を示している。図3において、減少量ΔQ2は、負極容量Q_H21,Q_H22の差分となる。負極容量Q2_iniは、活物質の理論容量や仕込み量によって予め求めておくことができる。
図4には、正極および負極の間における組成対応のずれを模式的に示している。組成対応のずれとは、正極および負極の組を用いて充放電を行うときに、正極の組成(θ1)および負極の組成(θ2)の組み合わせが、単電池11の初期状態に対して、相対的にずれていることを示すものである。図4では、正極組成の軸に対して、負極組成の軸がずれた状態を模式的に示している。
単極の組成θ1,θ2および開回路電位U1,U2の関係を示す曲線は、図2に示した曲線と同様である。ここで、単電池11が劣化すると、負極組成θ2の軸は、正極組成θ1が小さくなる方向にΔθ2だけシフトする。これにより、負極組成θ2および開回路電位U2の関係を示す曲線は、初期状態の曲線に対して、Δθ2の分だけ、正極組成θ1が小さくなる方向にシフトする。
正極の組成θ1fixに対応する負極の組成は、単電池11が初期状態にあるときには「θ2fix_ini」となるが、単電池11が劣化した後には「θ2fix」となる。なお、図4では、図2に示す負極組成θL2を0としているが、これは、負極のイオンがすべて抜けた状態を示している。また、図4では、正極組成θ1の軸を固定し、負極組成θ2の軸をシフトさせているが、これに限るものではない。具体的には、負極組成θ2の軸を固定し、正極組成θ1の軸をシフトさせることもできる。
単電池11が劣化したとき、負極組成θ2が1であるときの容量は、上記式(2)を用いて説明したように、(Q2_ini−ΔQ2)となる。また、正極および負極の間における組成対応ずれ容量ΔQsは、正極組成軸に対する負極組成軸のずれ量Δθ2に対応する容量である。これにより、下記式(3)の関係が成り立つ。
上記式(2)及び上記式(3)から下記式(4)が求められる。
図5において、単電池11が初期状態にあるとき、正極組成θ1fix_iniは、負極組成θ2fix_iniに対応している。一方、単電池11が劣化状態にあるとき、正極組成θ1fixは、負極組成θ2fixに対応している。また、組成対応のずれは、初期状態における正極組成θ1fixを基準とする。すなわち、正極組成θ1fixおよび正極組成θ1fix_iniは、同じ値とする。
単電池11の劣化により、正極および負極の間における組成対応のずれが生じた場合において、単電池11の劣化後における正極組成θ1fixおよび負極組成θ2fixは、下記式(5),(6)の関係を有する。
上記式(6)の意味について説明する。単電池11の劣化によって、正極組成θ1が1からθ1fixまで変化(減少)したときに、正極から放出されるイオンの量Aは、下記式(7)によって表される。
上記式(7)において、(1−θ1fix)の値は、単電池11の劣化による正極組成の変化分を示し、(k1×Q1_ini)の値は、単電池11の劣化後における正極容量を示している。
正極から放出されたイオンが負極にすべて取り込まれるとすると、負極組成θ2fixは、下記式(8)となる。
上記式(8)において、(k2×Q2_ini)の値は、単電池11の劣化後における負極容量を示している。
一方、正極および負極の間における組成対応のずれ(Δθ2)が存在するときには、負極組成θ2fixは、下記式(9)で表される。
組成対応のずれ量Δθ2は、上記式(4)により、組成対応のずれ容量ΔQsを用いて表すことができる。これにより、負極組成θ2fixは、上記式(6)で表される。上記式(5),(6)は、正極組成軸に対して負極組成軸がずれたときの式であるが、負極組成軸に対して正極組成軸がずれるときには、上記式(5),(6)と同様の考え方に基づいて、下記式(10),(11)が成り立つ。
劣化状態にある単電池11のOCVは、劣化状態における正極の開回路電位U11(図5参照)および負極の開回路電位U22(図5参照)の電位差として表される。ここで、上述した3つのパラメータk1,k2,ΔQsを特定すれば、単電池11が劣化状態にあるときの負極の開回路電位U22を特定できる。そして、負極の開回路電位U22および正極の開回路電位U11の電位差が、劣化状態にある単電池11のOCVとなる。
単電池11(組電池10)の外部充電を開始すると、図6に示すように、単電池11の電圧値CCV(Closed Circuit Voltage)は、単電池11のOCVに対して上昇する。図6において、縦軸は電池電圧(CCV又はOCV)を示し、横軸は充電容量(SOCに相当する)を示す。また、図6に示す一点鎖線は、単電池11のOCV特性を示す。
単電池11のCCV,OCVは、下記式(12)に示す関係を有する。
上記式(12)において、Ibは、単電池11に流れる電流値であり、電流センサ21によって検出された値である。Rbは、単電池11の内部抵抗である。単電池11の劣化が進行することに応じて、内部抵抗Rbが上昇する。
上述したように、充電時の電流値Ibは、負の値となるため、充電時のCCVは、OCVに対して「Ib×Rb」の分だけ上昇する。一方、充電を停止させると、単電池11が非通電状態となり、単電池11の電圧値は、CCVに対して「Ib×Rb」の分だけ低下して、OCVとなる。したがって、単電池11の充電を停止する直前のCCVと、単電池11の充電を停止した後のOCVとの差を算出すれば、電圧変化量ΔVを特定することができる。
図6に示すように、単電池11の充電が進むと、単電池11のCCVが上昇する。ここで、外部充電などのように、定電流で単電池11を充電するとき、単電池11の電圧値が電圧変化量ΔVだけ上昇した後は、CCVがOCV特性に沿って変化する。すなわち、CCVは、OCV特性に対して、電圧変化量ΔVだけ高い状態で変化する。
このため、単電池11を定電流で充電している間に、CCVの変化(CCV特性という)を取得し、CCV特性から電圧変化量ΔVを減算すれば、減算後のCCV特性は、単電池11を充電している間のOCV特性と一致する。すなわち、CCV特性から電圧変化量ΔVを減算することにより、単電池11を充電している間のOCV特性を取得することができる。
単電池11のSOCが0[%]から100[%]までの間で、CCV特性を取得すれば、SOCが0〜100[%]の範囲内において、OCV特性を特定することができる。しかし、SOCが0[%]から100[%]になるまで、単電池11の充電が行われないことがある。具体的には、図6に示すように、単電池11のSOCがSOC_sからSOC_eまでしか、単電池11の充電が行われないことがある。
この場合には、SOC_sおよびSOC_eの範囲内において、OCV特性が特定されるだけである。言い換えれば、0[%]からSOC_sの範囲内におけるOCV特性を特定できなかったり、SOC_eから100[%]の範囲内におけるOCV特性を特定できなかったりする。したがって、0[%]からSOC_sの範囲内や、SOC_eから100[%]の範囲内では、単電池11のOCVを測定しても、このOCVに対応するSOCを特定することができない。
そこで、本実施例では、以下に説明する方法によって、単電池11のSOCが0〜100[%]の範囲内におけるOCV特性を特定している。
まず、正極容量維持率k1、負極容量維持率k2およびずれ容量ΔQsを適宜設定することにより、OCV特性を特定する。上述したように、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを設定することにより、負極の開回路電位の変化特性(図5に示すU22)を特定することができる。そして、正極の開回路電位(図5に示すU11)から負極の開回路電位(図5に示すU22)を減算することにより、OCVを算出することができる。これにより、充電容量毎のOCVを示すOCV特性f(n)を特定することができる。
容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを用いることにより、単電池11における様々な劣化状態を特定することができる。例えば、単電池11の温度が上昇するほど、正極容量維持率k1が低下しやすく、単電池11の温度が低下するほど、ずれ容量ΔQsが増加しやすい。このように、単電池11の劣化に影響を与える温度に応じて、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsの値がそれぞれ変化する。したがって、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsをそれぞれ設定することにより、単電池11の劣化状態に応じたOCV特性を特定することができる。
上述したように算出されたOCV特性f(n)が、CCV特性から算出されるOCV特性f(m)と一致すれば、現在の単電池11におけるOCV特性を特定することができる。すなわち、OCV特性f(m)と一致するときのOCV特性f(n)は、現在の単電池11における劣化状態を反映させたOCV特性となる。
ここで、OCV特性f(m)は、上述したように、CCV特性から電圧変化量ΔVを減算することによって得られる。図7に示すように、OCV特性f(m)は、充電している間だけのOCVを示す。具体的には、OCV特性f(m)は、単電池11のSOCがSOC_sからSOC_eまでの範囲内におけるOCVだけを示す。ここで、OCV特性f(m)は、本発明における第1特性に相当する。
一方、OCV特性f(n)は、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsに基づいて算出されるため、すべてのSOCの範囲内におけるOCVを示す。具体的には、OCV特性f(n)は、SOCが0から100[%]までの範囲内におけるOCVを示す。ここで、OCV特性f(n)は、本発明における第2特性に相当する。
図7に示すように、OCV特性f(m)およびOCV特性f(n)の差εcが広がるほど、OCV特性f(n)は、OCV特性f(m)と一致しにくくなる。言い換えれば、差εcが小さくなるほど、OCV特性f(n)は、OCV特性f(m)に近づくことになる。なお、図7に示す例において、SOCが同一であるときのOCVは、OCV特性f(m)よりもOCV特性f(n)のほうが高くなっている。
OCV特性f(n)がOCV特性f(m)と一致しなければ、一致するまで、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを変更すればよい。このように、現在の単電池11におけるOCV特性f(n)を特定すれば、このOCV特性f(n)を用いて、単電池11のSOCを特定することができる。すなわち、現在の単電池11におけるOCVを測定すれば、OCV特性f(n)を用いることにより、測定されたOCVに対応するSOCを特定することができる。
本実施例によれば、0[%]からSOC_sの範囲内やSOC_eから100[%]の範囲内であっても、OCV特性f(n)を用いることにより、単電池11のSOCを精度良く推定することができる。OCV特性f(n)は、OCV特性f(m)と一致しているため、0[%]からSOC_sの範囲内やSOC_eから100[%]の範囲内であっても、現在の単電池11におけるOCVおよびSOCの対応関係を表す。そこで、0〜100[%]の範囲内において、現在の単電池11におけるSOCを精度良く推定することができる。
次に、OCV特性f(n)を特定する処理について、図8Aおよび図8Bに示すフローチャートを用いて説明する。ここで、図8Aおよび図8Bに示す処理は、外部充電を行うときに開始され、ECU30によって実行される。
図8Aおよび図8Bに示す処理では、単電池11のOCV特性f(n)を特定しているが、これに限るものではない。すなわち、組電池10の電圧値を検出すれば、組電池10のOCV特性f(n)を特定することができる。また、電池ブロックの電圧値を検出すれば、電池ブロックのOCV特性f(n)を特定することができる。
ステップS101において、ECU30は、監視ユニット20の出力に基づいて、単電池11の電圧値OCV_sを検出する。ステップS101の処理では、外部充電を開始する前であるため、監視ユニット20の出力に基づいて、単電池11のOCVを検出することができる。
また、ステップS101において、ECU30は、電圧値OCV_sに対応するSOC_sを推定する。このSOC_sは、公知の手法を用いて推定することができる。例えば、単電池11を充放電したときの電流値を積算することにより、電圧値OCV_sに対応するSOC_sを推定することができる。また、予め設定されたOCV特性を用いて、電圧値OCV_sに対応するSOC_sを推定することができる。電圧値OCV_sに対応するSOC_sを特定しておくことにより、電圧値OCV_sおよびSOC_sの対応関係を基準として、後述するOCV特性f(m)を特定することができる。
ステップS102において、ECU30は、組電池10(単電池11)の外部充電を開始させる。外部充電によって単電池11への通電が開始されると、図9に示すように、単電池11の電圧値は、単電池11の内部抵抗および通電時の電流値に応じた電圧変化量だけ、電圧値OCV_sよりも上昇する。
外部充電を行うとき、プラグがインレット26に接続されており、ECU30は、充電器25の動作を制御する。外部充電では、定電流で組電池10の充電が行われる。外部充電を行うときの電流値は、適宜設定することができる。外部充電時の電流値を大きくするほど、外部充電を行う時間を短縮することができる。
ステップS103において、ECU30は、充電容量が所定量だけ変化するたびに、監視ユニット20の出力に基づいて、単電池11の電圧値CCV_mを検出する。ステップS103の処理では、単電池11が充電されているため、監視ユニット20によって検出される単電池11の電圧値はCCVとなる。ここで、ECU30は、電流センサ21によって検出される電流値を積算することにより、充電容量を把握することができる。
電流積算値が所定量に到達するたびに、ECU30は、電圧値CCV_mを検出する。電圧値CCV_mを検出した後、ECU30は、電流積算値を0にリセットし、電流値の積算を再開する。そして、電流積算値が所定量に到達すれば、ECU30は、電圧値CCV_mを再び検出する。
ここで、所定量(電流積算値)は、適宜設定することができ、所定量に関する情報は、メモリ31に記憶しておくことができる。所定量を少なくするほど、電圧値CCV_mを検出する周期を短くすることができる。本実施例では、図9に示すように、外部充電を行っている間、複数の電圧値CCV_m(1)〜CCV_m(n)が検出される。ここで、nは、電圧値CCV_mを検出する回数である。
ステップS104において、ECU30は、監視ユニット20によって検出される単電池11の電圧値CCVが電圧値CCV_eに到達したか否かを判別する。電圧値CCV_eは、外部充電を終了させるときのCCVであり、適宜設定される。例えば、外部充電を終了させるときのSOCが設定されれば、このSOCに対応したCCVが電圧値CCV_eとなる。
ステップS104の処理において、電圧値CCVが電圧値CCV_e以上であるとき、ECU30は、ステップS105の処理を行う。一方、電圧値CCVが電圧値CCV_eよりも低いとき、ECU30は、ステップS103の処理に戻る。
ステップS105において、ECU30は、外部充電を終了させる。具体的には、ECU30は、充電器25の動作を制御することにより、組電池10への電力供給を停止させる。ステップS106において、ECU30は、監視ユニット20の出力に基づいて、単電池11の電圧値OCV_eを検出する。図9に示すように、外部充電を終了すると、単電池11への通電が停止し、単電池11の内部抵抗に応じた電圧降下が発生する。これにより、単電池11の電圧値は、図9に示すように、電圧値CCV_eから電圧値OCV_eに変化する。
ここで、単電池11の電圧値CCVには、分極に伴う電圧変化量も含まれる。このため、分極が解消された後に、電圧値OCV_eを検出することが好ましい。分極が解消するまでの時間(分極解消時間)を予め求めておけば、単電池11の充電を終了してからの時間を計測し、計測時間が分極解消時間に到達することに応じて、電圧値OCV_eを検出することができる。ここで、時間の計測は、タイマを用いることができる。
ステップS107において、ECU30は、単電池11の電圧降下量ΔVを算出する。具体的には、ECU30は、電圧値CCV_eから、ステップS106の処理で検出された電圧値OCV_eを減算することにより、電圧降下量ΔVを算出することができる。
ステップS108において、ECU30は、OCV特性f(m)を算出する。具体的には、ECU30は、ステップS103の処理で検出された電圧値OCV_mから、ステップS107の処理で算出された電圧降下量ΔVを減算することにより、電圧値OCVを算出することができる。
ここで、ステップS103の処理では、外部充電が進行するにつれて、複数の電圧値OCV_mが検出される。このため、ステップS108の処理では、複数の電圧値OCV_mに対応する複数の電圧値OCVが算出される。ECU30は、複数の電圧値OCVに基づいて、OCV特性f(m)を特定することができる。
ステップS109において、ECU30は、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsのそれぞれを任意の値に設定する。例えば、図10に示す表に基づいて、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを設定することができる。図10に示す表によれば、nの値を設定することにより、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを特定することができる。図10に示す表に関する情報は、メモリ31に記憶しておくことができる。
図10に示す表では、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsに関して、すべての組み合わせを示しており、この組み合わせは、値nによって特定される。すなわち、値nを特定することにより、この値nに対応した、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsの組み合わせを特定することができる。
図10に示す表では、正極容量維持率k1を100[%]に設定しておき、負極容量維持率k2を変更している。なお、負極容量維持率k2だけでなく、正極容量維持率k1も変更することもできる。また、負極容量維持率k2を100[%]に設定しておき、正極容量維持率k1だけを変更することもできる。
ステップS110において、ECU30は、ステップS109の処理で設定された容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsに基づいて、OCV特性f(n)を算出する。上述したように、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを設定することにより、負極の開回路電位を特定することができる。このため、正極および負極における開回路電位の電位差を算出すれば、OCV特性f(n)を算出することができる。
なお、OCV特性f(n)を算出する方法は、上述した方法に限るものではない。すなわち、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを用いて、正極の開回路電位および負極の開回路電位を特定し、これらの開回路電位を用いてOCV特性f(n)を算出すればよい。
ステップS111において、ECU30は、ステップS108の処理で算出されたOCV特性f(m)と、ステップS109の処理で算出されたOCV特性f(n)との誤差εcを算出する。具体的には、SOCが所定値であるときにおいて、OCV特性f(m)から特定されるOCVと、OCV特性f(n)から特定されるOCVとの差(絶対値)を、誤差εcとすることができる。
ステップS112において、ECU30は、ステップS111の処理で算出された誤差εcが閾値ε_thよりも小さいか否かを判別する。閾値ε_thは、OCV特性f(m),f(n)が一致しているか否かを判別するための値であり、適宜設定することができる。閾値ε_thが小さくなるほど、OCV特性f(n)は、OCV特性f(m)と一致しやすくなる。ここで、閾値ε_thに関する情報は、メモリ31に記憶しておくことができる。
誤差εcが閾値ε_thよりも小さいとき、ECU30は、ステップS113の処理を行う。一方、誤差εcが閾値ε_thよりも大きいとき、ECU30は、ステップS109の処理に戻る。ステップS109の処理に戻ったとき、ECU30は、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsの値を変更して、OCV特性f(m)を算出し直す。本実施例では、誤差εcが閾値ε_thよりも小さくなるまで、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsの設定が繰り返される。
ステップS113において、ECU30は、ステップS110の処理で算出されたOCV特性f(n)を、現在の単電池11におけるOCV特性として特定する。ステップS113の処理によって、OCV特性f(n)を特定すれば、このOCV特性f(n)を用いることにより、単電池11のSOCを特定(推定)することができる。具体的には、単電池11のOCVを測定すれば、OCV特性f(n)を用いることにより、測定したOCVに対応するSOCを特定することができる。すなわち、現在の単電池11におけるSOCを推定することができる。
本実施例では、OCV特性f(n)が実測値であるOCV特性f(m)と一致するように、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを設定しているため、実際の単電池11の劣化状態を容量維持率k1,k2やずれ容量ΔQsに反映させることができる。また、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsから算出されるOCV特性f(n)は、実際の単電池11における、OCVおよびSOCの対応関係を示すことになる。このため、OCV特性f(n)を用いて、OCVからSOCを特定するときに、実際の単電池11におけるSOCを精度良く推定することができる。
本実施例では、定電流で充電を行うときに、OCV特性f(n)を算出しているが、定電流で放電を行うときにも、OCV特性f(n)を算出することができる。定電流で放電を行えば、単電池11のCCVは、OCV特性に沿って変化する。具体的には、OCV特性よりも電圧変化量ΔVだけ低下した特性に沿って、CCVが変化する。
このため、放電時に取得した複数の電圧値CCV_mに対して、電圧変化量ΔVを加算すれば、OCV特性f(m)を算出することができる。そして、容量維持率k1,k2およびずれ容量ΔQsを適宜設定することにより、OCV特性f(m)と一致するOCV特性f(n)を特定することができる。これにより、SOCが0から100[%]の全域において、OCV特性f(n)を取得することができ、このOCV特性f(n)を用いて、SOCを精度良く推定することができる。
本実施例では、図10に示す表をメモリ31に記憶しているが、これに限るものではない。具体的には、図10に示す値nに応じたOCV特性f(n)をメモリ31に記憶しておくこともできる。この場合には、複数のOCV特性f(n)がメモリ31に記憶され、これらのOCV特性f(n)のうち、OCV特性f(m)と一致するOCV特性f(n)が探索される。
本実施例において、OCV特性f(n)は、SOCが0[%]から100[%]までの範囲内において、SOCおよびOCVの対応関係を示しているが、これに限るものではない。OCV特性f(n)を規定するSOCの範囲は、OCV特性f(m)を規定するSOCの範囲よりも広ければよい。言い換えれば、OCV特性f(n)を規定するSOC範囲の下限値は、OCV特性f(m)を取得するときのSOCの下限値よりも低ければよい。また、OCV特性f(n)を規定するSOC範囲の上限値は、OCV特性f(m)を取得するときのSOCの上限値よりも高ければよい。
例えば、図1に示す電池システムにおいて、組電池10(単電池11)の充放電を制御するときのSOCの範囲が予め設定されているときには、このSOCの範囲において、OCV特性f(n)が特定できればよい。
充放電制御で用いられるSOCの下限値よりも高いSOCから、外部充電を開始したとき、本実施例を適用することにより、外部充電を開始したときのSOCよりも低い範囲において、SOCの推定精度を向上させることができる。また、充放電制御で用いられるSOCの上限値よりも低いSOCにおいて、外部充電を終了したとき、本実施例を適用することにより、外部充電を終了したときのSOCよりも高い範囲において、SOCの推定精度を向上させることができる。