JP5790513B2 - 加飾成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、フィルムがコア型によってキャビティ型側へ強く押されると、加飾模様層に傷が付くおそれがある。
この点、フィルムは保護層においてコア型によってキャビティ型側へ押されて成形面に近付けられる。そのため、コア型が加飾模様層に触れることがなく、保護層の設けられていない場合に比べ、加飾模様層に傷が付きにくい。
なお、保護層は、フィルムの少なくとも加飾模様層を成形品本体の意匠面に付着させる際に残っていると、その付着に影響を及ぼすおそれがある。しかし、この保護層は、射出される溶融樹脂の熱によって溶融させられる。そのため、保護層が、成形品本体への加飾模様層の付着に及ぼす影響は小さい。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、前記コア型により前記フィルムが前記キャビティ型側へ押される前に同フィルムを加熱して軟化させることを要旨とする。
ここで、請求項4に記載の発明では、コア型によるフィルムのキャビティ型側への押し付けに先立ち同フィルムが加熱される。この加熱により、フィルムは軟化して伸びやすくなる。従って、フィルムはコア型の押し付け及び真空吸引によりそれぞれ伸びて、成形面に密着させられる。
そして、この場合には、フィルムの伸び量が多いため、上述したフィルムをキャビティ型側へ押したうえで真空吸引することは、加飾模様層の形成位置精度の高い加飾成形品を製造することができるという効果を得るうえで特に有効である。
この点、請求項5に記載の発明では、金型の型締めに際し、スライドコアが、コア型本体からキャビティ型側へ突出した突出位置までスライドさせられる。フィルムのうち加飾模様層の形成されていない箇所が、スライドコアによってキャビティ型側へ押される。このときには、加飾模様層は、スライドコアによってもコア型本体によっても押されないため、押し付けに起因する傷付きが起こらない。
この点、請求項6に記載の発明では、キャビティ型に保持されたフィルムの加飾模様層が、コア型の軟質の部材によって押される。そのため、こうした軟質の部材が設けられず、硬質のコア型によって押される場合よりも、加飾模様層に傷が付きにくい。
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
最初に、本実施形態の製造方法によって得られる加飾成形品の概略構成について説明する。図1に示すように、この加飾成形品11は、例えば、自動車用の内装品として具体化されるものであり、成形品本体12及び加飾模様層14を備えて構成されている。成形品本体12は、樹脂材料を用い射出成形を行なうことによって形成されている。加飾模様層14は、成形品本体12の意匠面13に形成され、その意匠面を加飾(装飾)している。本実施形態では、加飾模様層14は、成形品本体12の意匠面13の略全面にわたって形成されている。
図2(A)に示すように、フィルム20の主要部は、樹脂材料によって長尺状に形成された基材フィルム21によって構成されている。この基材フィルム21は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。基材フィルム21の樹脂材料としては、熱可塑性の樹脂材料であれば任意のものを使用することができる。本実施形態では、こうした樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられている。なお、基材フィルム21は、単層からなるものであってもよいし、積層構造を有するものであってもよい。
上記フィルム20は、基材フィルム21が内側となり、加飾模様層14が外側となるように巻回されてロール22にされている。
金型25は、コア型26及びキャビティ型36を備えて構成されている。本実施形態では、キャビティ型36は固定型によって構成されている。コア型26は水平方向へ移動してキャビティ型36に接近及び離間する可動型によって構成されている。
上記ロール22は、キャビティ型36の上方近傍に配置されている(図2(A)参照)。また、キャビティ型36の下方近傍には、上記フィルム20を巻き取るための巻取り装置(図示略)が配置されている。
まず、図2(A)に示すように、コア型26がキャビティ型36から離間する側(同図2(A)の右側)へ移動させられて、金型25が型開きされる。このときには、クランプ39はクランプ解除位置に保持されている。
図4(A)に示すように、スプルーゲート32を通じて溶融樹脂45がキャビティ41に射出される。その後、溶融樹脂45が冷却されることで、図4(B)に示す成形品本体12が成形される。この成形の過程で、溶融樹脂45の熱、射出の圧力等により、フィルム20の基材フィルム21から加飾模様層14が剥離し、成形品本体12の意匠面13に対し高い位置精度で、転写(付着)される。この転写(付着)により、成形品本体12の意匠面13に対し、加飾模様層14が高い形成位置精度で形成された加飾成形品11が得られる。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(3)キャビティ型36の成形面38が深く(間隔Dが大きく)、フィルム20を成形面38に密着させるために大きく伸ばす(深絞りする)必要のあることから、コア型26によってフィルム20がキャビティ型36側へ押される前に、同フィルム20をヒータ42によって加熱している(図3(A))。
そのため、成形品本体12が成形された後に、同成形品本体12の意匠面13に塗装等の加飾処理を施す必要がなく、その分、製造コストを低減することができる。
そのため、フィルムを成形してなる成形体を予め製作しておき、この成形体を金型25内に設置するとともに、その成形体の裏面側に溶融樹脂を射出等することによって、加飾成形品を製造する場合に比べ、工程数を減らして効率化を図ることができる。
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。なお、図5及び図6において、第1実施形態で説明したものと同様の要素には、同一の符号が付されている。
型開き状態の金型25において、キャビティ型36の上方に配置されたロール(図示略)から、フィルム60がキャビティ型36とクランプ39との間へ送り出される。加飾模様層54のキャビティ型36に対する位置決めが行なわれた後に、送り出しが停止される。フィルム60は、図6(A)に示すように、クランプ39によってキャビティ型36に押え付けられることで、キャビティ型36のコア型26側の端面36Aにおいて成形面38の周りで密閉状態(シール状態)に保持される。その後に、フィルム60は切断されて、ロールから切り離される。
スプルーゲート32を通じて溶融樹脂がキャビティ41に射出された後に冷却されることで、成形品本体52が成形される。この成形の過程で、フィルム60が溶融状態の溶融樹脂に付着されることにより、成形品本体52にフィルム60が一体となった中間成形体が得られる。この際、加飾模様層54が成形品本体52の意匠面53に対し高い形成位置精度で形成される。
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図7〜図10を参照して説明する。なお、図7〜図10において、第1実施形態で説明したものと同様の要素には、同一の符号が付されている。
金型25が型締めされるまでは、図7(A)に示すように、スライドコア28は収納位置に保持される。
(7)金型25の型締めに際し、スライドコア28を突出位置までスライドさせ、フィルム20のうち加飾模様層14の形成されていない箇所24を、同スライドコア28によりキャビティ型36側へ押している(図7(B))。
なお、コア型26の押し付けにより、たとえ基材フィルム21の箇所24に傷が付いたり、同箇所24がダメージを受けたりしても、その基材フィルム21は加飾模様層14から剥離し、成形品本体12には付着しないため、問題とはならない。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・図11に示すように、コア型26として、成形突部29のうち少なくとも加飾模様層14を押す箇所が同成形突部29の他の箇所よりも軟質の部材33によって形成されたものが用いられてもよい。図11は、成形突部29のうち加飾模様層14を押す箇所のみが軟質の部材33によって形成された例を示している。
・コア型26におけるコア面31が、フィルム20との摩擦を大きくするために粗面に形成されてもよい。このようにすると、コア型26によってフィルム20を押すときにフィルム20がコア面31に対しずれる(滑る)のを抑制することができる。
・キャビティ型36及びコア型26の一方が固定型によって構成され、他方が、上下動することにより上記固定型に対し接近及び離間する可動型によって構成されてもよい。
・図12に示すように、フィルム20として、加飾模様層14において少なくともコア型26(成形突部29)によって押される箇所が、熱で溶融する保護層23によって被覆されたものが用いられてもよい。図12は、加飾模様層14の全体が保護層23によって被覆された例を示している。この保護層23は、印刷によって形成されてもよいし、コーティングによって形成されてもよい。
また、この変更例は、第2実施形態、第3実施形態又は図11の変更例と組合わせて実施されてもよい。
・本発明の製造方法は、キャビティ型36の成形面38が深い場合に特に効果が大きいが、成形面38が浅い場合であっても適用可能である。この場合には、ヒータ42によるフィルム20の加熱処理が割愛されてもよい。
また、本発明の製造方法は、自動車以外の分野、例えば家電部品、雑貨品、日用品等における各種樹脂成形品を製造する場合にも適用可能である。
Claims (6)
- キャビティ型及びコア型を備える金型を用い、基材フィルム上に加飾模様層が形成されてなるフィルムを、型開き状態の前記金型における前記キャビティ型に対し位置決めし、同キャビティ型の前記コア型側の端面において成形面の周りで密閉状態に保持し、前記フィルムを真空吸引により前記成形面に密着させた後、型締め状態の前記金型内において前記フィルムと前記コア型のコア面との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出して成形品本体を成形するとともに、前記フィルムの少なくとも前記加飾模様層を前記成形品本体の意匠面に付着させることにより、前記成形品本体の意匠面が前記加飾模様層により加飾された加飾成形品を製造する方法であって、
前記フィルムとして、前記加飾模様層において前記コア型により少なくとも押される箇所が、熱で溶融する保護層により被覆されたものを用い、
前記金型の型締めに際し、前記保護層を前記コア型により前記キャビティ型側へ押して、前記キャビティ型に保持された前記フィルムを前記成形面に近付けたうえで、前記フィルムを前記真空吸引により前記成形面に密着させ、
前記成形品本体の成形に際し、前記キャビティに射出される前記溶融樹脂の熱により前記保護層を溶融させることを特徴とする加飾成形品の製造方法。 - 前記フィルムとして、前記基材フィルム上に前記加飾模様層が剥離可能に形成されたものを用い、
前記成形品本体の成形の過程で、前記基材フィルムから前記加飾模様層を前記成形品本体の前記意匠面に転写させる請求項1に記載の加飾成形品の製造方法。 - 前記フィルムとして、透明な前記基材フィルム上に前記加飾模様層が接着された状態で形成されたものを用い、
前記成形品本体の成形の過程で、前記フィルムを前記加飾模様層において前記成形品本体の前記意匠面に付着させる請求項1に記載の加飾成形品の製造方法。 - 前記コア型により前記フィルムが前記キャビティ型側へ押される前に同フィルムを加熱して軟化させる請求項1〜3のいずれか1つに記載の加飾成形品の製造方法。
- 前記コア型として、コア型本体を有するとともに、前記コア型本体内に収納されて前記コア面の一部を構成する収納位置と、前記コア型本体から前記キャビティ型側へ突出した突出位置との間でスライドするスライドコアを有するものを用い、
前記金型の型締めに際し、前記スライドコアを前記突出位置までスライドさせ、前記フィルムのうち前記加飾模様層の形成されていない箇所を、同スライドコアにより前記キャビティ型側へ押した後に、前記フィルムを前記真空吸引により前記スライドコアから離れさせ、前記成形品本体の成形に備え、前記スライドコアを前記収納位置までスライドさせる請求項1〜4のいずれか1つに記載の加飾成形品の製造方法。 - 前記コア型として、少なくとも前記加飾模様層を押す箇所が同コア型の他の箇所よりも軟質の部材により形成されたものを用い、
前記金型の型締めに際し、前記コア型の前記軟質の部材により前記加飾模様層を前記キャビティ型側へ押して前記フィルムを前記成形面に近付ける請求項1〜5のいずれか1つに記載の加飾成形品の製造方法。
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