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JP5667422B2 - 透磁率可変素子および磁力制御装置 - Google Patents

透磁率可変素子および磁力制御装置 Download PDF

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JP5667422B2 JP2010266194A JP2010266194A JP5667422B2 JP 5667422 B2 JP5667422 B2 JP 5667422B2 JP 2010266194 A JP2010266194 A JP 2010266194A JP 2010266194 A JP2010266194 A JP 2010266194A JP 5667422 B2 JP5667422 B2 JP 5667422B2
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Description

本発明は、透磁率可変素子および磁力制御装置に関するものである。
一般的に磁力の制御は、図10に示すように、軟磁性体から構成された磁気回路の一部に電磁石(コイル)を配置し、コイルに流す電流を制御することによって行われている。図10において、100はヨーク(継鉄)、101はコイル、102は磁力を印加する対象となる磁性体からなるワーク、103は磁束の流れ、104はワーク102に働く吸引力である。実際の使用では、例えば、ワーク102には図示しないバネなどが取付けられており、磁力とバネの力とのバランスでワーク102の位置が決まるようになっている。磁力制御の具体的な用途としては、ソレノイド、リレー、モータ、アクチュエータ、電磁バルブ、磁気ヘッドなどがある。コイルは安価で便利であるが、消費電力やサイズが大きく、また無駄な熱を大量に発生させるために効率が悪く、熱による周辺部品や磁力制御装置自体への影響も大きい。
永久磁石を用いて、永久磁石と動作点(例えば、ワークの位置)との距離や磁気回路中に設けられたギャップ(空隙)の間隔を機械的に変化させることにより磁力を変化させる例もあるが、磁力に対抗する大きな力が必要である。また、軟磁性体の磁化がキュリー温度以上で消失することを利用して磁力をON/OFFさせて接点の開閉を行うサーモスタットも使用されているが、温度変化が必要であり、使用範囲も限定される。
また、特許文献1には、永久磁石を磁力発生源とし、この永久磁石を含む磁気回路に配置した、キュリー温度の低い軟磁性体の温度を微小なヒータで加熱制御することによって透磁率を変化させる磁気ヘッドが開示されている。
特許文献2には、永久磁石を磁力発生源とし、この永久磁石を含む磁気回路に配置した磁歪素子に応力印加素子等によって応力をかけて磁歪素子を歪ませ、磁気特性(透磁率、磁気抵抗)を変化させることにより磁束を制御する磁気ドライブ機構が開示されている。
特開昭63−37810号公報 特開2006−304584号公報
以上のようにコイルを用いた一般的な磁力制御装置では、消費電力やサイズが大きく、また効率が悪く、周辺機器や磁力制御装置自体への熱影響も大きいという問題点があった。また、コイルが電磁ノイズの発生源になるという問題点があった。
また、永久磁石を用いて、永久磁石と動作点(例えば、ワークの位置)との距離や磁気回路中に設けられたギャップ(空隙)の間隔を機械的に変化させることにより磁力を変化させる磁力制御装置では、磁力に対抗する大きな力が必要になるという問題点があり、軟磁性体の磁化がキュリー温度以上で消失することを利用して磁力をON/OFFさせる磁力制御装置では、使用範囲が限定されるという問題点があった。
また、特許文献1に開示された磁気ヘッドは、キュリー温度付近以上では使用できず、加熱に電力が必要であり、形状が大きくなる場合は消費電力が大きく、応答も遅くなるという問題点があった。
また、特許文献2に開示された磁気ドライブ機構では、磁歪素子を歪ませるために大きな力が必要であり、磁歪素子を歪ませることによって得られる透磁率変化量(磁気抵抗変化量)もわずかであり、効率が悪いという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、低消費電力で発熱が少なく、使用範囲が広い小型の磁力制御装置を実現することができる透磁率可変素子、およびこの透磁率可変素子を用いた磁力制御装置を提供することを目的とする。
本発明の透磁率可変素子は、多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された圧電体からなるマトリックスと、このマトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子は、多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された導電体からなるマトリックスと、このマトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子は、多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された樹脂製の誘電体からなるマトリックスと、前記マトリックスの少なくとも対向する2つの面に配置された電極からなり、前記マトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、前記電極への電圧印加に応じて、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子は、多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された樹脂製の誘電体からなるマトリックスと、前記マトリックスの1つまたは2つ以上の面に配置された圧電体膜またはバルクの圧電体からなり、前記マトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、前記圧電体膜または圧電体への電圧印加に応じて、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの少なくとも対向する2つの面に配置された電極からなり、前記電極を介して前記マトリックスに電圧を印加することにより、前記マトリックスを変形させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの1つまたは2つ以上の面に配置された圧電体膜またはバルクの圧電体からなり、前記圧電体膜または圧電体への電圧印加に応じて、前記マトリックスを変形させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例は、前記マトリックスおよびマトリックス変形手段を、交互に複数積層したことを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスへ空圧、油圧、機械的な圧力のいずれかを印加することが出来る構造であることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の距離とそれぞれの前記磁性ナノ粒子の相対位置のうち少なくとも一方を変化させることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記磁性ナノ粒子は、主な部分が強磁性体またはフェリ磁性体からなり、単磁区であり室温付近で超常磁性を示すことを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記磁性ナノ粒子は、Fe、Co、Niのうち少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記磁性ナノ粒子は、粒径が2〜20nmであることを特徴とするものである。
また、本発明の透磁率可変素子の1構成例において、前記磁性ナノ粒子は、その外周部に保護層が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の磁力制御装置は、永久磁石と、この永久磁石と共に磁気回路を構成するヨークと、前記磁気回路中に配置された単数または複数の透磁率可変素子とを備え、前記透磁率可変素子は、前記磁気回路に対して並列配置、直列配置、あるいはブリッジ型配置のうち少なくとも1つの形態で配置されることを特徴とするものである。
本発明によれば、低消費電力で発熱が少ない小型の透磁率可変素子を実現することができ、周辺機器への熱影響を大幅に低減することができる。本発明では、コイルを用いないため電磁ノイズの発生がない。そのため、本発明の透磁率可変素子を利用すれば、医療分野などでも利用しやすい磁力制御装置を実現することができる。また、本発明では、外部からの電磁ノイズの影響も受け難くなる。さらに、本発明では、従来の磁力制御装置のように大きな力を必要とせず、加熱も必要としないので、磁力制御装置の使用範囲を広げることができる。
また、本発明では、磁性ナノ粒子の外周部に保護層を形成することにより、磁性ナノ粒子の酸化防止を実現することができる。
また、本発明では、マトリックス変形手段を、マトリックスへ空圧、油圧、機械的な圧力のいずれかを印加することが出来る構造とすることにより、防爆エリアでの使用が可能となり、磁力制御装置の使用範囲を広げることができる。
双極子間相互作用について、外部磁界方向と磁性粒子の配置による磁気特性の変化を説明する図である。 本発明の第1の実施の形態に係る透磁率可変素子の構成を示す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る透磁率可変素子の構成を示す断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。 本発明の第4の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。 本発明の第5の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。 本発明の第6の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。 本発明の第7の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。 本発明の第8の実施の形態に係る透磁率可変素子の構成を示す断面図である。 従来の磁力制御装置の構成を示す図である。
[発明の原理]
本発明の透磁率可変素子は、電圧により透磁率(磁気抵抗、磁化率、磁化の強さ)を制御することができる。透磁率可変素子は、単磁区であり、室温付近で超常磁性を示す粒径1〜40nm(より好ましくは2〜20nm)程度のナノ粒子を誘電性樹脂または圧電性樹脂からなるマトリックス(母体)中に0.1〜30nm(より好ましくは0.5〜5nm)程度の間隔でほぼ均一に分散させて配置し、誘電性樹脂または圧電性樹脂の両面に柔軟性のある電極膜を形成したものである。なお、粒径2nm以下では常磁性体になってしまうことが多く、一方、粒径を大きくしていくと磁化は強くなるが、20nm以上だと室温では超常磁性にならないことが多く、また、粒子表面間距離を小さくするためにはマトリックス中の粒子濃度(体積濃度、質量濃度)をかなり高くする必要があるため粒子表面間を数nm程度の距離に設定することが困難になる。
通常のバルクの強磁性体は静磁エネルギーを下げるため磁壁を作り磁区と呼ばれる多数の領域に分かれている多磁区構造となっているが、磁性体のサイズが数10〜数100nm程度以下になると、磁壁を作るエネルギーの方が大きくなるため磁区に分かれず単磁区構造をとるようになる。単磁区構造では、保磁力の最大値が現れる。超常磁性とは、さらに強磁性体粒子の径を数10nm程度以下にすると、各粒子の磁化方向を一定方向にして磁化の回転の障壁となる磁気異方性エネルギー(KuV)が熱振動エネルギー(KBT)より小さくなる(KuV<KBT)ため、粒子内では磁化方向は揃っているが粒子間では磁化方向がばらばらになっている性質のことを言う。ここで、Kuは結晶磁気異方性定数、Vは体積、KBはボルツマン定数、Tは温度である。超常磁性では、基本的に保磁力や磁化曲線のヒステリシスが無くなり、磁化の大きさは常磁性体よりも4〜5桁も大きく、飽和に要する磁界が小さい。
磁性ナノ粒子の材質は、Fe、Co、Niおよびそれらを含む化合物(例えば、Fe34)や合金(例えば、FeCo、NiFe)などからなる。磁性ナノ粒子としては、バルク状態で軟磁性の特性を示すものの方が好ましいが、バルク状態で硬磁性の特性を示すものでも上述のように粒子サイズが小さくなると超常磁性の特性を示すようになるのでかまわない。軟磁性とは、磁化曲線においてヒステリシスが小さく、つまり保磁力が小さく、かつ透磁率や飽和磁化が大きい性質であり、簡単に言うと磁化し易く消磁し易い性質であり、磁気回路やトランスのコアなどに使用される。軟磁性材料は、結晶磁気異方性や磁歪が小さい。一方、硬磁性とは、ヒステリシスが大さく、つまり保磁力が大きく(結晶磁気異方性が大)、エネルギー(BH)積が大きい性質のことであり、永久磁石に使用される。
なお、磁性ナノ粒子の粒子径は出来るだけ均一でばらつきが小さい方が磁気特性的には好ましいが、透磁率を大きくすることを優先する場合は大小の粒径を混合することも考えられる。大きい粒子は磁化が大きく、大きい粒子間の隙間を小さい粒子が埋めて磁束の漏れや反磁界を小さく出来るため、透磁率可変素子の透磁率を高く出来る。また、大きい粒子も小さい粒子の超常磁性に引きずられて超常磁性になりやすくなる。
ここで、参考のために磁束密度B、透磁率μ、磁化M、磁化率χなどの基本的な関係についてまとめておく。磁束密度Bは、B=μ0(H+M)=μ0(1+χ)H=μHで表される。磁化Mは、M=χHで表される。1+χ=μ/μ0は比透磁率、μ0は真空の透磁率、Hは磁界である。つまり、磁界H中に置かれた磁化Mの磁性体の磁束密度は、真空中の磁束密度に磁化による磁束密度を加えたものであり、磁性体の磁化率が大きいと透磁率も高くなる。
柔軟電極に電圧を印加すると、マトリックスが変形し、粒子間隔が変化するので、それぞれの粒子間に働き各粒子の磁性モーメントの方向を束縛する相互作用(双極子相互作用、交換相互作用)の影響を変化させることができ、透磁率を制御することができる。
磁性ナノ粒子間の距離は、厚さ方向で短くなり、面方向で長くなるが、トータルとしては短くなる。また、透磁率や磁化率などの磁気特性は、磁性ナノ粒子表面間距離のn乗に反比例(−n乗に比例)するため、粒子間距離が近づく効果の影響の方が大きい。
ここで磁性粒子間に働く相互作用について詳細に説明する。まず、相互作用は大きく2つに分けられる。その1つは、ナノ構造に限らず磁気モーメントを持つすべての磁性体間で長距離にわたり作用する静磁気学的な「双極子間相互作用」である。
例えば、ナノ粒子間では、図1(A)〜図1(D)のように、ナノ粒子の磁化(磁気モーメント)の方向と粒子間の位置関係により、透磁率を大きくしたり小さくしたりするように作用し、その効果の影響は粒子間距離の2乗に反比例する。図1(A)、図1(B)の例は、ナノ粒子200が外部磁界201の方向と平行に並んでいる場合を示している。202はナノ粒子200の磁化の方向、203は磁束線である。この場合、図1(A)の例のように粒子間距離が長いときに比べて、図1(B)の例のように粒子間距離が短いとき、磁束線203が磁界方向につながり、透磁率が良くなる。図1(C)、図1(D)の例は、ナノ粒子200が外部磁界201の方向と垂直の方向に並んでいる場合を示している。この場合、図1(C)の例のように粒子間距離が長いときに比べて、図1(D)の例のように粒子間距離が短いとき、隣の粒子に逆向きの磁界が作用するため、透磁率が低くなる。
本発明の透磁率可変素子のようにマトリックス中にナノ粒子が分散した構造では、図1(A)〜図1(D)で説明した効果がバルクの場合よりも非常に大きくなることが知られている。もう1つは、ナノ構造特有の量子力学的な相互作用である「直接交換相互作用」、「超交換相互作用」、「間接交換相互作用(RKKY相互作用)」、「2重交換相互作用」などである。「直接交換相互作用」は、隣接原子間の電子の重なりにより原子間のスピンの向きをそろえ強磁性や反強磁性を生み出す作用であり、その強さは「双極子間相互作用」よりも3桁程度大きいことが知られている。本発明の場合は、磁性ナノ粒子表面間の距離が原子間距離の数倍程以下(1nm程度以下)であり、粒子間が磁性かつ導電性のマトリックス材料(磁性ナノ粒子の成分がわずかに混ざっていることが好ましい)で分離されているようなときに作用する。
「超交換相互作用」は、酸化物磁性体などにおける、酸素やハロゲンなどの陰イオンを媒介としたスピン相互作用であり、主として反強磁性的に働く。「超交換相互作用」によると、イオン間の角度が180度のときは反強磁性、90度のときは強磁性になることが報告されている。「間接換相互作用(RKKY相互作用)」は、伝導電子を媒介としたスピン間の相互作用であり、5〜10nm程度の中距離まで作用し、粒子間距離の3乗に反比例する。また、その効果は粒子間距離に対して余弦関数的に振動し、その周期は伝導電子のフェルミ波数で決められる。本発明の場合は、磁性ナノ粒子間が非磁性・導電性のマトリックス材料で分離されているときに作用する。
「2重交換相互作用」は、電子の移動と磁性が強く結びついて作用する。本発明の構造では、主として「双極子間相互作用」、「間接交換相互作用(RKKY相互作用)」、「直接交換相互作用」が該当する場合が多い。マトリックスが通常の樹脂やセラミックスのような非磁性・絶縁体の場合は、「双極子間相互作用」が支配的になると考えられる。また、長距離に作用する静磁気学的な相互作用(双極子間相互作用)の場合は粒子の中心間距離が対象になり、短・中距離に作用する量子力学的な相互作用の場合は粒子の表面間距離が対象になる。
なお、基本的に磁性ナノ粒子の磁化率は体積に比例(半径の3乗に比例)するが、ナノ粒子では体積に比べて表面積が非常に大きくなるためナノ粒子特有の表面効果の影響が強くなり、例えば、磁性ナノ粒子表面ではスピンの乱れ(スピンキャンティング)があるため磁化の強さは弱くなる。よって、あまり粒径が小さくなりすぎると磁気特性は悪くなるため、適度な粒径サイズ(例えば、5〜10nm程度)がある。
また、金属ナノ粒子は酸化しやすく、表面付近の酸化された部分(FeO,CoO,NiOなど)は反強磁性になることが多いため磁化の強さはさらに弱くなり、内部(コア)と表面(シェル)の間で磁気的な相互作用も生じて特性に影響を及ぼす。例えば、強磁性体のコアと反強磁性体のシェルの間に発生する交換異方性による一方向異方性などが知られており、コアの強磁性体の磁化の回転がシェルの反強磁性体によって制約を受ける。よって、磁性ナノ粒子の外周部に酸化防止のための保護層が形成されていることが好ましい。保護層の材質としては、炭素(C)、窒化ホウ素(BN)、ポリマー、酸化物などがあり、アーク放電法、プラズマ蒸発法、液相合成法、固相還元法などで製作することができる。なお、Fe、Co、Niなどと白金の合金(例えば、FePt)や、窒化物(例えば、FeN)を形成することにより、粒子自体の耐酸化性、耐食性、耐久性を高めることも可能である。
なお、透磁率可変素子として、上記と同様に単磁区であり(室温付近で)超常磁性を示す粒径1〜40nm(より好ましくは2〜20nm)程度のナノ粒子をマトリックス中に0.1〜30nm(より好ましくは0.5〜5nm)程度の間隔でほぼ均一に分散させて配置し、マトリックスの片面または両面に圧電膜を形成したものを用いてもよい。
また、透磁率可変素子として、上記と同様にナノ粒子を均一に分散させて配置したマトリックスを、空圧、油圧、機械的な力のいずれかにより変形させるものを用いてもよい。この場合には、電気を使用しないため、防爆エリアでの使用が可能になる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る透磁率可変素子の構成を示す断面図である。透磁率可変素子3は、上記のとおり単磁区であり室温付近で超常磁性を示す粒径1〜40nm(より好ましくは2〜20nm)程度の磁性ナノ粒子30を、誘電性樹脂または圧電性樹脂からなるマトリックス31中に0.1〜30nm(より好ましくは0.5〜5nm)程度の間隔でほぼ均一に分散させて配置したものである。マトリックス31の両面には電極膜32が形成されている。この電極膜32は、マトリックス変形手段を構成している。基本的に図2における水平または垂直方向が磁束の流れる方向となるが、他の方向でもかまわない。以下、例えば、透磁率可変素子3の電極膜形成面(図2の上面と下面)と垂直な端面のうち、磁束が流れ込む端面(N極側の端面)を入力端、磁束が流れ出る端面(S極側の端面)を出力端と呼ぶことにする。図2の例では、33が入力端、34が出力端となる。なお、図2における6は磁束の流れである。この磁束の流れ6については、後述する磁力制御装置のところで説明する。
図示しない電圧印加手段によって2つの電極膜32間に電圧を印加すると、マトリックス31が変形するので、粒子間隔を変化させることができ、透磁率(磁気抵抗、磁化の強さ)などを制御することができる。このとき、印加電圧の変動周波数が低く定常に近い状態においては透磁率可変素子3に流れる電流はほぼ0である。例えば、2つの電極膜32間に電圧を印加して、マトリックス31を上下方向に圧縮すると、磁性ナノ粒子間の距離は、厚さ方向で短くなり、面方向で長くなるが、トータルとしては短くなる。すなわち、マトリックス31の変形により、磁性ナノ粒子全体の位置関係や磁性ナノ粒子間の距離が変化する。そして、磁性ナノ粒子全体の位置関係や磁性ナノ粒子間の距離の変化に応じて、上記のように、磁性ナノ粒子間の1種類の相互作用、または複数の相互作用が複合した相互作用により、基本的には磁性ナノ粒子間の距離のn乗に反比例(距離の−n乗に比例)して透磁率が変化する。
磁性ナノ粒子30としては、球状や棒状、紐状など様々な形状の粒子が使用できる。棒状や紐状の磁性ナノ粒子30では、粒子の長手方向における反磁界の影響が小さいため、磁束を流す方向と平行に粒子を形成すれば高透磁率を得ることができる。
マトリックス31の種類は、樹脂を用いる場合、例えば、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、フッ素系などのポリマー、ゴム、ゲルや、熱可塑性エラストマーなどが使用できる。なお、本発明における「樹脂」の意味は、ポリマー、ゴム、ゲル、熱可塑性エラストマーなど含む広い範囲を指している。
圧電性のマトリックス31としては、樹脂ではポリフッ化ビニリデン(PVDF)など、セラミックスではチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)などがある。
導電性のマトリックスとしては導電性ポリマーなどがあり、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレンなどの数多くのπ共役系ポリマー、およびこれらの誘導体、複合体などがある。なお、樹脂などのマトリックス自体に導電性がない場合でも、カーボンナノチューブなどのカーボン系ファイバーや、金属あるいは導電性ポリマーなどの導電性ナノ粒子を、樹脂に高濃度(磁性ナノ粒子とわずかに接触する程度)で混ぜることによりそれに近い効果が得られる。
電極膜32は、柔軟性のある導電体で形成され、マトリックス31へ塗布、印刷される。具体的な材質としては、例えば、カーボンブラックの一種である「ケッチェンブラック」、「アセチレンブラック」、または、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーなどの炭素系の導電性粒子を柔軟性のある樹脂に混合・分散させたペーストなどが用いられる。また、炭素系の導電性粒子の代わりに、樹脂自体が導電性を持つ、ポリアセチレン、ポリピロールなどの導電性ポリマー粒子を用いることも可能である。電極膜32が引き伸ばされた状態でも導電率の低下が少ない材料を使用することが好ましい。
電歪ポリマー(誘電ポリマー)の特性について説明する。柔軟な電極膜32で挟まれた、弾性のある厚さ100μm程度の誘電体ポリマーフィルム(樹脂)に電圧が印加されると、電極膜32間の静電引力により膜厚方向に圧縮され、平面方向に伸長する。誘電体ポリマーフィルムの材質は、例えば、シリコーン、アクリル、ウレタンなどの弾性のあるものが使用される。誘電体ポリマーを挟んだ電極膜32間において、膜厚方向に発生する応力Ptは、Pt=ε0εr2で表され、面方向に発生する応力Pfは、Pf=σε0εr2で表され、材料の比誘電率に比例し、電界の2乗に比例する。ここで、ε0は真空中の誘電率、εrは材料の比誘電率、Eは電界強度、σはポアソン比である。ポアソン比σは、膜厚方向の歪みに対する面方向の歪みの割合を示す。また、応力と歪み(変形)は、ほぼ比例する。膜厚1μmあたり数10Vの高電圧が必要であるが、数10%(シリコーンゴム)〜100%(アクリル樹脂)の歪みが得られることが報告されている。
次に、マトリックス31中に磁性ナノ粒子30を均一に分散配置する製造方法について説明する。まず、マトリックス31が樹脂の場合について説明する。マトリックス31として、主剤と硬化剤からなる2液性樹脂を用いる場合は、まず、樹脂を溶解または膨潤することができるトルエンやクロロホルムなどの溶媒中に磁性ナノ粒子30が分散された磁性ナノ粒子分散液と、主剤と硬化剤からなる2液性樹脂からなるマトリックス材料を用意する。
そして、磁性ナノ粒子分散液と樹脂の主剤を混合・攪拌し、脱泡器(減圧容器)内で加温して溶媒を蒸発させると、溶媒と樹脂(主剤)が置換され、樹脂(主剤)の中に磁性ナノ粒子30が分散された液が出来る。次に、硬化剤を加えて攪拌し、適当な形状のゴム型などに流し込みそのまま(室温または加温して)硬化させることにより、磁性ナノ粒子30を均一に分散配置した任意の形状のマトリックス31が製作できる。
なお、磁性ナノ粒子30が金属の場合は非常に酸化しやすいため、磁性金属ナノ粒子が出来るだけ大気や水分に触れないようにする必要があり、製作は基本的に酸化防止のため窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気のチャンバーやグローブボックス内で行うことが好ましい。
マトリックス31として熱硬化性樹脂を用いる場合は、上記と同様に樹脂の中に磁性ナノ粒子30が分散された液を作り、硬化を加熱により行う。熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂中に、スクリューや混練機などで磁性ナノ粒子30を混練し、射出成形により、磁性ナノ粒子30を均一に分散配置した任意の形状のマトリックス31を製作することができる。
なお、マトリックス31として2液性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる場合でも、磁性ナノ粒子分散液を使用せずに、樹脂の原液中に磁性ナノ粒子30を種々のミキサーなどで直接混練することにより製作してもよい。
磁性ナノ粒子30の製法としては、従来の粉体で使われている粉砕法ではなく、原子・分子レベルから粒子を作り上げていく合成法が使用され、その中でも蒸発凝縮法や気相反応法などの気相法と、化学沈殿法や溶媒蒸発法などの液相法が主に用いられている。化学沈殿法には、コロイド法、均一沈殿法、アルコキシド法、水熱合成法、マイクロエマルション法などがある。
磁性ナノ粒子分散液は、上記の方法で製作した磁性ナノ粒子30の表面に粒子間の凝集を防ぐための分散剤や界面活性剤を付加したものを溶媒に分散させて製作される。特に、活性液面連続真空蒸着法で作られた磁性金属ナノ粒子分散液は、非常に良い分散性能を示すので好ましい。
樹脂は、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、フッ素系などで柔軟性がある(弾性率が低い)ものが好ましく、酸素透過性や吸水性も出来るだけ低いものが好ましい。
それぞれの粒子表面間の概略距離は、以下の要領で設定することができる。平均粒子表面間距離hsuspは、幾何学的に考えると粒子径dpと粒子濃度F(体積濃度,vol.%)の関数で与えられ、粒子の中心の位置が六方最密充填の位置に配置したとした式や、ウッドコック(Woodcock)が文献「L.V. Woodcock,Proceeding of a workshop held at Zentrum fur interdisziplinare Forschung University Bielefield,Nov.11-13,1985 Edited by Th. Dorfmuller and G.Williams」で提案した式(1)が知られている。よって、このような式を使用して粒子径dpと粒子濃度Fの調整により、概略の平均粒子表面間距離hsuspを設定することが出来る。例えば、粒子濃度が4.5vol.%のとき、粒径3,5,10nmの粒子における平均粒子表面間距離はそれぞれ約2.4,3.9,7.8nmになる。
Figure 0005667422
樹脂を固化させる前に、展延(圧延)と折り返し(または積層)の操作を繰り返すことにより、面方向に比べて厚さ方向のナノ粒子間距離が近くなるため、厚さ方向のナノ粒子間距離の制御や、面方向と厚さ方向の磁気特性に異方性を持たせることも可能である。
次に、マトリックス31がセラミックスの場合について説明する。磁性ナノ粒子30を均一に分散配置した任意の形状のマトリックス31は、磁性ナノ粒子30とセラミックスナノ粒子をミキサーなどで均一に混合し、焼成することにより製作することが出来る。ナノ粒子の特徴として、バルクの場合に比べて低温で焼成が可能である。
また、ガスフロースパッタ法を使ったクラスター堆積装置を用いても製作可能であり、ガスフロースパッタ源を2機備えた装置により、クラスター(磁性金属ナノ粒子)を異なる物質(マトリックス)中に埋め込みながら堆積することにより種々のグラニュラー磁性体が製作できる。
さらに、磁性ナノ粒子30の膜は、プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置により製作することも出来る。プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置は、原材料をグロー放電プラズマによりスパッタリングして気化蒸発させる部屋、希ガスと衝突してエネルギーを失い互いに衝突してクラスターが成長する部屋、スキマーやノズルを介して高真空に保たれる堆積室で構成されている。
その他、通常のスパッタ法や酸素反応スパッタ法などで成膜したナノ結晶磁性膜やナノグラニュラー磁性膜などを使用してもよい。
電極膜32の材料および形成方法は、上記のとおりである。
本実施の形態では、低消費電力で発熱が少ない小型の透磁率可変素子を実現することができ、周辺機器への熱影響を大幅に低減することができる。本実施の形態では、コイルを用いないため電磁ノイズの発生がない。そのため、本実施の形態の透磁率可変素子を利用すれば、医療分野などでも利用しやすい磁力制御装置を実現することができる。また、本実施の形態では、外部からの電磁ノイズの影響も受け難くなる。また、本実施の形態では、従来の磁力制御装置のように大きな力を必要とせず、加熱も必要としないので、磁力制御装置の使用範囲を広げることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態に係る透磁率可変素子の構成を示す断面図である。上述のように、電歪ポリマー(誘電ポリマー)の歪みや変形量は厚さあたりの電界で決まる。そこで、本実施の形態では、柔軟性のある内部電極37a,37bと、磁性ナノ粒子(不図示)を均一に分散配置した薄いシート状のマトリックス31とを交互に積層して透磁率可変素子3を実現する。図3の例では、内部電極37aと37bを交互に配置しており、内部電極37a,37bはそれぞれ外部電極38a,38bと接続される。内部電極37aと37bと外部電極38a,38bとは、マトリックス変形手段を構成している。
図示しない電圧印加手段によって2つの外部電極38間に電圧を印加すると、第1の実施の形態と同様にマトリックス31が上下方向に圧縮されるように変形するので、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施の形態では、電界を与えるマトリックス31の厚さを薄くして、透磁率可変素子3の動作電圧を低くすることが出来る。
本実施の形態の透磁率可変素子3の製法としては、磁性ナノ粒子を均一に分散配置した薄いシート状のマトリックス31と、内部電極37a,37bとを交互に複数回重ねて積層するという方法がある。そして、複数の内部電極37aを外部電極38aと接続して共通化し、同様に複数の内部電極37bを外部電極38bと接続して共通化すればよい。この製法は、積層セラミックコンデンサと同様な製法である。
なお、磁性ナノ粒子が金属などの導電体の場合、粒子表面間の距離が2〜3nm程度以下になると、電圧印加によりトンネル電流が流れてマトリックス31の抵抗値が低くなり、電歪ポリマーとして機能しなくなることがあるので、トンネル電流が流れない条件で使用する必要がある。本実施の形態の構造は、圧電ポリマー(圧電樹脂)や圧電セラミックスなどの圧電性のマトリックス31を用いる場合にも適用することができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図4は本発明の第3の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図である。磁力制御装置は、永久磁石(硬磁性体)1と、パーマロイや電磁鋼板などの軟磁性体からなるヨーク(継鉄)2−1,2−2,2−5と、透磁率可変素子3とから構成される。図4において、4はヨーク2−1と2−2間に設けられた空気ギャップ、5は磁性体からなるワーク、6は磁束の流れ、7はワーク5に働く吸引力である。また図4における「N」は永久磁石1のN極を示し、「S」はS極を示す。本実施の形態は、永久磁石1とヨーク2−1,2−2,2−5とからなる磁気回路に対して、透磁率可変素子3を直列に配置したものである。
なお、ヨーク2−5は、透磁率可変素子3の透磁率が低くなった場合に磁束を流すバイパスの役割を果たす。ヨーク2−5は必須の構成ではないが、ヨーク2−5がない場合、磁束の空中への漏れが大きくなる。
また、空気ギャップ4が大きいと磁力が激減するので、実際の空気ギャップ4は出来るだけ小さい方がよい。
ヨーク2−1と透磁率可変素子3とは、比較的柔軟性が高く応力を吸収できる接着剤、例えばエポキシ系の接着剤などで接合する。磁気特性的には出来るだけ透磁率可変素子3とヨーク2−1との間隔が開かないように接合することが好ましい。ただし、透磁率可変素子3の形状変化分を考慮して、その形状変化分の隙間を透磁率可変素子3とヨーク2−1との間に設けても構わない。また、その隙間に磁性流体などを充填すると、隙間による磁気回路の透磁率の低下を抑制することができる。なお、透磁率可変素子3を電圧で動作させる場合は、透磁率可変素子3とヨーク2−1との間を電気的に絶縁する必要がある。
図示しない電圧印加手段によって2つの電極膜32間に電圧Vを印加すると、上記のとおり透磁率可変素子3のマトリックス31が変形するので、粒子間隔を変化させることができ、透磁率(磁気抵抗、磁化の強さ)などを制御することができる。このとき、印加電圧の変動周波数が低く定常に近い状態においては透磁率可変素子3に流れる電流はほぼ0である。
本実施の形態では、低消費電力で発熱が少ない小型の磁力制御装置を実現することができ、周辺機器への熱影響を大幅に低減することができる。本実施の形態では、コイルを用いないため電磁ノイズの発生がなく、医療分野などでも利用しやすい磁力制御装置を実現することができる。また、本実施の形態では、外部からの電磁ノイズの影響も受け難くなる。また、本実施の形態では、従来の磁力制御装置のように大きな力を必要とせず、加熱も必要としないので、磁力制御装置の使用範囲を広げることができる。
なお、図4の例では、透磁率可変素子3のマトリックス31の膜厚方向(図2、図3上下方向)と磁束の流れ6の方向とが直交するように透磁率可変素子3を配置しているが、マトリックス31の膜厚方向と磁束の流れ6の方向とが平行になるように透磁率可変素子3を配置してもよい。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図5は本発明の第4の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図であり、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、永久磁石1とヨーク2−1,2−2とからなる磁気回路に対して、透磁率可変素子3を並列に配置したものである。すなわち、永久磁石1のN極に接続されているヨーク2−1に対して透磁率可変素子3の入力端を接続し、永久磁石1のS極に接続されているヨーク2−2に対して透磁率可変素子3の出力端を接続している。その他の構成は第3の実施の形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図6は本発明の第5の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図であり、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第3の実施の形態と同様に透磁率可変素子3−1を磁気回路に対して直列に配置すると共に、第4の実施の形態と同様に透磁率可変素子3−2を磁気回路に対して並列に配置したものである。その他の構成は第3、第4の実施の形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果に加えて、磁気回路に直列および並列にほぼ同じ特性を持つ透磁率可変素子3−1,3−2を配置することにより、温度特性などの誤差要因の補正が可能になり、また、制御範囲をより大きくできるという効果も得ることができる。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図7は本発明の第6の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図であり、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態では、4個の透磁率可変素子3−1,3−2,3−3,3−4をブリッジ型に配置している。すなわち、透磁率可変素子3−1の入力端と透磁率可変素子3−2の入力端とをヨーク2−1に接続すると共に、透磁率可変素子3−3の出力端と透磁率可変素子3−4の出力端とをヨーク2−2に接続し、透磁率可変素子3−1の出力端と透磁率可変素子3−3の入力端の間のヨーク2−3と、透磁率可変素子3−2の出力端と透磁率可変素子3−4の入力端の間のヨーク2−4との間に空気ギャップ4を形成している。
本実施の形態では、透磁率可変素子3−1〜3−4に印加する電圧を調整して、透磁率可変素子3−1,3−4の透磁率を透磁率可変素子3−2,3−3の透磁率よりも大きくすると、磁束はヨーク2−3からヨーク2−4の方向に流れる。一方、透磁率可変素子3−2,3−3の透磁率を透磁率可変素子3−1,3−4の透磁率よりも大きくすると、磁束はヨーク2−4からヨーク2−3の方向に流れる。
こうして、本実施の形態では、空気ギャップ4(動作点)における磁束の方向を自由に反転させることができる。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。図8は本発明の第7の実施の形態に係る磁力制御装置の構成を示す図であり、図4と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態は、第4の実施の形態で説明した図5の磁力制御装置の構成を2組使用し、それぞれの永久磁石1の極性を逆向きにして、空気ギャップ4(動作点)が共通になるように2組の磁力制御装置を組み合わせたものである。すなわち、永久磁石1−1のN極と永久磁石1−2のS極とに接続されているヨーク2−1に対して透磁率可変素子3−1の入力端と透磁率可変素子3−2の出力端を接続すると共に、永久磁石1−1のS極と永久磁石1−2のN極とに接続されているヨーク2−2に対して透磁率可変素子3−1の出力端と透磁率可変素子3−2の入力端を接続し、透磁率可変素子3−1の入力端と透磁率可変素子3−2の出力端の間のヨーク2−1と、透磁率可変素子3−1の出力端と透磁率可変素子3−2の入力端の間のヨーク2−2との間に空気ギャップ4を形成している。
本実施の形態では、透磁率可変素子3−1,3−2に印加する電圧を調整して、透磁率可変素子3−1の透磁率を透磁率可変素子3−2の透磁率よりも大きくすると、空気ギャップ4(動作点)における磁束はヨーク2−2からヨーク2−1の方向に流れる。一方、透磁率可変素子3−2の透磁率を透磁率可変素子3−1の透磁率よりも大きくすると、空気ギャップ4(動作点)における磁束はヨーク2−1からヨーク2−2の方向に流れる。
こうして、本実施の形態では、空気ギャップ4(動作点)における磁束の方向を自由に反転させることができる。
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図9は本実施の形態の透磁率可変素子の構成を示す断面図であり、図2、図3と同様の構成には同一の符号を付してある。第3〜第7の実施の形態では、透磁率可変素子として図2、図3に示したものを用いたが、透磁率可変素子として、上記と同様に単磁区であり室温付近で超常磁性を示す粒径1〜40nm(より好ましくは2〜20nm)程度の磁性ナノ粒子30を柔軟性のある樹脂からなるマトリックス35中に0.1〜30nm(より好ましくは0.5〜5nm)程度の間隔でほぼ均一に分散させて配置し、マトリックス35の片面または両面に圧電膜36を形成したものを用いてもよい。
図2、図3に示した構成では、電極膜に電圧を印加することで誘電性樹脂または圧電性樹脂からなるマトリックスを変形させていたが、本実施の形態では、圧電膜36に電圧を印加し、圧電膜36を変形させることによりマトリックス35を変形させる。
こうして、第3〜第7の実施の形態において図2、図3に示した透磁率可変素子の代わりに、本実施の形態の透磁率可変素子を利用することができる。
圧電膜36は、PZTなどのセラミック系のバルク状の圧電材料をマトリックス35に貼り付けるか、あるいはAD(エアロゾルデポジション)法などでセラミック系の圧電材料をマトリックス35に吹き付けることにより、形成することができる。また、上記の方法や周知の蒸着やメッキなどの方法により圧電膜の両面に電圧印加用の電極を形成することができる。
なお、第1〜第8の実施の形態では、電歪効果や逆圧電効果を利用してマトリックスを変形させていたが、透磁率可変素子として、上記と同様に磁性ナノ粒子30を均一に分散させて配置したマトリックス35を、空圧、油圧、機械的な圧力のいずれかにより変形させるものを用いてもよい。この場合には、マトリックス35に空圧、油圧、機械的な圧力のいずれかを印加する圧力印加手段を設けるようにすればよい。印加する圧力を調整し、マトリックス35の変形量を調整することで、透磁率を制御することができる。この場合には、電気を使用しないため、防爆エリアでの使用が可能になる。
また、本発明による透磁率可変素子の応用範囲は、磁力制御に限られるものではなく、例えば、可変インダクタやチューナブルアンテナなどの一部を形成し、透磁率を変化させることによりインダクタンスや受信周波数域を可変にすることも可能である。
本発明は、透磁率を制御する技術、および磁力を制御する技術に適用することができる。
1,1−1,1−2…永久磁石、2−1〜2−5…ヨーク、3,3−1〜3−4…透磁率可変素子、4…空気ギャップ、5…ワーク、6…磁束の流れ、7…吸引力、30…磁性ナノ粒子、31,35…マトリックス、32…電極膜、33…入力端、34…出力端、36…圧電膜、37a,37b…内部電極、38a,38b…外部電極。

Claims (14)

  1. 多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された圧電体からなるマトリックスと、
    このマトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、
    前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とする透磁率可変素子。
  2. 多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された導電体からなるマトリックスと、
    このマトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、
    前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とする透磁率可変素子。
  3. 多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された樹脂製の誘電体からなるマトリックスと、
    前記マトリックスの少なくとも対向する2つの面に配置された電極からなり、前記マトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、
    前記電極への電圧印加に応じて、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とする透磁率可変素子。
  4. 多数の磁性ナノ粒子が分散して配置された樹脂製の誘電体からなるマトリックスと、
    前記マトリックスの1つまたは2つ以上の面に配置された圧電体膜またはバルクの圧電体からなり、前記マトリックスの形状を変化させるマトリックス変形手段とを備え、
    前記圧電体膜または圧電体への電圧印加に応じて、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の磁気的な相互作用を変化させることを特徴とする透磁率可変素子。
  5. 請求項に記載の透磁率可変素子において、
    前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの少なくとも対向する2つの面に配置された電極からなり、
    前記電極を介して前記マトリックスに電圧を印加することにより、前記マトリックスを変形させることを特徴とする透磁率可変素子。
  6. 請求項に記載の透磁率可変素子において、
    前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの1つまたは2つ以上の面に配置された圧電体膜またはバルクの圧電体からなり、
    前記圧電体膜または圧電体への電圧印加に応じて、前記マトリックスを変形させることを特徴とする透磁率可変素子。
  7. 請求項1、2、3、5のいずれか1項に記載の透磁率可変素子において、
    前記マトリックスおよびマトリックス変形手段を、交互に複数積層したことを特徴とする透磁率可変素子。
  8. 請求項に記載の透磁率可変素子において、
    前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスへ空圧、油圧、機械的な圧力のいずれかを印加することが出来る構造であることを特徴とする透磁率可変素子。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の透磁率可変素子において、
    前記マトリックス変形手段は、前記マトリックスの形状を変化させることにより、前記磁性ナノ粒子間の距離とそれぞれの前記磁性ナノ粒子の相対位置のうち少なくとも一方を変化させることを特徴とする透磁率可変素子。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の透磁率可変素子において、
    前記磁性ナノ粒子は、主な部分が強磁性体またはフェリ磁性体からなり、単磁区であり室温付近で超常磁性を示すことを特徴とする透磁率可変素子。
  11. 請求項10項に記載の透磁率可変素子において、
    前記磁性ナノ粒子は、Fe、Co、Niのうち少なくとも1つを含む材料からなることを特徴とする透磁率可変素子。
  12. 請求項10または11に記載の透磁率可変素子において、
    前記磁性ナノ粒子は、粒径が2〜20nmであることを特徴とする透磁率可変素子。
  13. 請求項10乃至12のいずれか1項に記載の透磁率可変素子において、
    前記磁性ナノ粒子は、その外周部に保護層が形成されていることを特徴とする透磁率可変素子。
  14. 永久磁石と、
    この永久磁石と共に磁気回路を構成するヨークと、
    前記磁気回路中に配置された単数または複数の、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の透磁率可変素子とを備え、
    前記透磁率可変素子は、前記磁気回路に対して並列配置、直列配置、あるいはブリッジ型配置のうち少なくとも1つの形態で配置されることを特徴とする磁力制御装置。
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