本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有するポリエステル層(P層)を有するポリエステルフィルムであることが必要である。
また、本発明では、該ポリエステル層(P層)において、ポリエステル樹脂(B)がポリエステル樹脂(A)中に分散体として分散していることが必要である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、1)ジカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分の重縮合、2)一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体骨格と水酸基を有する化合物の重縮合、および1)2)の組み合わせにより得ることができる。
1)において、かかるポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体などが代表例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、上述のジカルボン酸成分のカルボキシ末端に、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたジカルボキシ化合物も好ましく用いられる。
また、1)においてかかるポリエステル樹脂を構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオールなどが代表例としてあげられるがこれらに限定されない。また、これらは単独で用いても、必要に応じて、複数種類用いても構わない。
また、上述のジオール成分のヒドロキシ末端にジオール類を付加させたジヒドロキシ化合物も好ましく用いられる。用いられるジオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香族ジオール類などがあげられる。これらのジオール成分は、ジオールの二つのヒドロキシ末端にそれぞれ異なるジオールが付加されていてもよく、さらには、ジオール類が複数個連なっていてもよい。複数個連なっている場合、異なるジオールが混在していてもよい。
また、2)において、一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体骨格と水酸基を有する化合物の例としては、l-ラクチド、d−ラクチド、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸類、およびその誘導体、そのオキシ酸類が複数個連なったもの等を付加させたジカルボキシ化合物等があげられる。
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂(A),ポリエステル樹脂(B)は、上述の化合物を適宜組み合わせて重縮合させることで得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル層(P層)中において、ポリエステル樹脂(B)がポリエステル樹脂(A)中に扁平度3以上の分散体として分散していることが必要であり、かつ次の条件(I)または(II)の少なくとも一方を満たすポリエステルフィルムであることが必要である。
(I)ポリエステル樹脂(B)が、ジオール成分として、脂環式ジオール成分および/または芳香族ジオール成分を有し、かつ該ポリエステル層(P層)における脂環式ジオール成分および芳香族ジオール成分の含有量の合計が、該ポリエステル層(P層)中のジオール成分の量に対して0.2モル%以上10モル%以下であること。
(II)ポリエステル樹脂(B)が、ジカルボン酸成分として、脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分、およびナフタレンジカルボン酸成分からなる群から選ばれる1以上のジカルボン成分を有し、かつ該ポリエステル層(P層)における脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分およびナフタレンジカルボン酸成分の含有量の合計が該ポリエステル層(P層)中のジカルボン酸成分の量に対して0.2モル%以上10モル%以下であること。
このような構成とすることによって、加熱処理によるヘイズ上昇が小さく、かつ寸法安定性に優れたポリエステルフィルムを得ることができるが、そのメカニズムについて説明する。
ポリエステルフィルムにおいては、加熱によるヘイズ上昇の主要因は主にフィルム中に含まれるオリゴマー(例えばPETフィルムの場合は、特に環状三量体オリゴマー)に起因し、加熱によってオリゴマーが表面に析出し白色状欠点となることによって起こる。一般的なポリエステルフィルムは結晶性ポリエステル樹脂から構成されることが多く、かかる結晶性ポリエステル樹脂を二軸延伸して得られるポリエステルフィルム中には、配向によりポリエステル樹脂が結晶化した部分(以下、配向結晶化部とする)と非晶部が存在する。ここで、環状三量体を中心としたオリゴマー成分は非晶部と親和性が高く、非晶部に多く存在する。この非晶部は配向結晶化部と比べて、熱的に不安定な状態にあり、熱を受けると、分子運動性が高まり、エネルギー的に安定となる方向に系が転移する。すなわち、熱により、非晶部が結晶化部へと転移するのである。このような系の転移が生じると、それまで非晶部の内部に存在していた環状三量体を中心とするオリゴマー成分が外部に排除される。その結果、オリゴマー成分はフィルム表面に析出し、ヘイズを上昇させる白色欠点となる。
そこで、本発明は、フィルム内部に、加熱により結晶化しない非晶部を設けることによって、加熱時のヘイズ上昇を抑制したものである。
具体的には、結晶性のポリエステル樹脂(A)中に、上記(I)または(II)の少なくとも一方を満たす非晶性のポリエステル樹脂(B)を分散させることによって、フィルム中にポリエステル樹脂(B)からなる非晶領域を明確に形成するものである。この非晶領域は、非晶性のポリエステル樹脂からなるため、熱処理を受けてもほとんど結晶化しない。そのため、環状三量体を中心としたオリゴマー成分を、該非晶領域にて十分にトラップすることが可能になり、オリゴマーの析出を防ぐことができる。さらに、該非晶領域以外の領域は結晶性ポリエステル樹脂(A)からなる領域である。そして、結晶性ポリエステル樹脂(A)からなる領域は延伸により配向結晶化させることが可能である。そのため、フィルムを延伸等により充分に配向結晶化させることにより、フィルムに高い熱寸法安定性を付与することができる。
なお、従来は、耐オリゴマー性を向上させるために、低結晶性のポリエステル樹脂を用いる方法が用いられてきた。この方法は、フィルムを構成するポリエステル樹脂に低結晶性のポリエステル樹脂を用いることによって、非晶部の熱結晶化を抑制する方法である。しかし、一方で、延伸等による配向結晶化も阻害されため、耐オリゴマー性を向上させようとすればするほど、熱寸法安定性に劣ることは避けられなかった。
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A)は、前述したように結晶性を有することが好ましい。ポリエステル樹脂(A)として結晶性を有する樹脂を用いることで、延伸、熱処理による配向結晶化をより高める可能となり、その結果、より機械的強度、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。ここで、結晶性を有するとは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、結晶化に伴う発熱ピークが観察される樹脂のことである。より詳しくは、発熱ピークの面積から求められる結晶化エンタルピーΔHccが1J/g以上となる樹脂のことをいう。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル樹脂(A)は、好ましくは結晶化エンタルピーΔHccが5J/g以上、より好ましくは10J/g以上、更に好ましくは15J/g以上の樹脂を用いるのがよい。本発明のポリエステルフィルムにおいてポリエステル樹脂(A)の結晶化エンタルピーを上述の範囲とすることによって、延伸、熱処理による配向結晶化をより高める可能となり、その結果、より機械的強度、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。
ここで、本発明において好適に用いることのできるポリエステル樹脂(A)の具体例について述べる。
まず、ポリエステル樹脂(A)が、前記1)の方法にて得られるポリエステル樹脂である場合について述べる。この場合、結晶性、耐熱性、機械的強度の観点から、ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル形成性誘導体を用いることが好ましい。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェン酸、およびそのエステル誘導体や、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体などの多官能酸を用いることが好ましい。特に好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸である。そのため、本発明では、かかるジカルボン酸成分を用いて得られるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称することがある)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどをポリエステル樹脂(A)として用いることが好ましい。
次に、ポリエステル樹脂(A)が、前記2)の方法にて得られるポリエステル樹脂である場合について述べる。この場合、一分子内にカルボン酸もしくはカルボン酸誘導体骨格と水酸基を有する化合物としてd−ラクチドを用いることが好ましい。そのため、本発明では、d−ラクチドを重縮合して得られるD―ポリ乳酸をポリエステル樹脂(A)として用いることが好ましい。
以上で挙げたポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(A)とすることで、高い透明性を維持しつつ、フィルムとしたときに高い結晶性や機械強度を付与することができる。中でも特にポリエチレンテレフタレート(PET)は、安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができるため好ましい。また、使用されるポリエステル樹脂の融点は、250℃以上のものが耐熱性の上で好ましく、300℃以下のものが生産性上好ましい。
本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)は、上述の樹脂に、結晶性が消失しない範囲で、ポリエステル基本構成に対して、共重合成分を導入してもよい。共重合成分の量は、特に限定されないが、透明性、延伸性、製膜性、成形性等の観点より、前記1)の方法を用いる場合は、ジカルボン酸成分、ジオール成分とも、それぞれの成分に対して好ましくは1モル%以上40モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上20モル%以下である。
また、本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)の固有粘度は0.60以上1.0以下であるのが好ましい。より好ましくは0.62以上0.9以下、更に好ましくは0.68以上0.85以下、特に好ましくは0.70以上0.80である。固有粘度を0.60以下となると、ポリエステル樹脂(A)中に元々含まれるオリゴマー成分が多くなり、形成したフィルムの耐オリゴマー性が低下する場合があるため好ましくない。また、1.0を越えると、樹脂を安定して押出して製膜することが難しくなったり、出来たとしても溶融製膜時の熱劣化によりオリゴマーが多数生成し、形成したフィルムの耐オリゴマー性が低下することがあるため好ましくない。本発明に用いられるポリエステル樹脂(A)の固有粘度を0.60以上1.0以下とすることにより、安定製膜性を有しながら耐オリゴマー性を付与することが可能となる。
また、ポリエステル樹脂(B)は前述したように非晶性であるのが好ましい。ポリエステル樹脂(B)として非晶性の樹脂を用いることで、後述するように、より耐オリゴマー性に優れたフィルム(加熱処理によるヘイズの上昇が小さいフィルム)とすることができる。ここで、非晶性とは、JIS K7122(1999)に準じて、昇温速度20℃/minで樹脂を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/minの昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、結晶化に伴う発熱ピークが観察されない、もしくは観察されたとしても結晶化エンタルピーが1J/g未満の樹脂のことである。
次いで、本発明において好適に用いることのできるポリエステル樹脂(B)の具体例について述べる。
まず、ポリエステル樹脂(B)が、前記1)の方法にて得られるポリエステル樹脂である場合について述べる。この場合、PET、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を基本構成とし、かかる基本構成に、次に述べるジオール成分および/またはジカルボン酸成分を共重合せしめたポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(B)として用いることが好ましい。共重合可能なジオール成分としては、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロプロパンジオール、シクロブタンジオール、シクロペンタジオール、シクロへキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロプロパンジメタノール、シクロブタンジメタノール、シクロペンタジメタノール、シクロヘプタンジメタノール、シクロオクタンジオール、トリシクロ(5.2.1.02.6)デカンジメタノール、β,β,β',β'−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエタノール、2,6−デカリンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−フェノキシエタノール)フルオレンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。前記(I)または(II)の条件を満たす限り、共重合量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂(B)のジオール成分の量に対して10モル%以上100モル%未満であり、より好ましくは20モル%以上100モル%未満である。共重合量をかかる範囲とすることにより、より耐オリゴマー性に優れたフィルム(加熱処理によるヘイズの上昇が小さいフィルム)とすることができる。
また、共重合可能なジカルボン酸成分としては、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロへキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、トリシクロ(5.2.1.02.6)デカンジカルボン酸、β,β,β',β'−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類、イソフタル酸成分およびナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。前記(I)または(II)の条件を満たす限り、共重合量は特に限定されないが、ポリエステル樹脂(B)のジカルボン酸成分の量に対して10モル%以上100モル%未満であり、より好ましくは20モル%以上100モル%未満である。共重合量をかかる範囲とすることにより、より耐オリゴマー性に優れたフィルム(加熱処理によるヘイズの上昇が小さいフィルム)とすることができる。
次に、ポリエステル樹脂(B)が、前記2)の方法にて得られるポリエステル樹脂である場合について述べる。この場合、D―ポリ乳酸を基本構成とし、かかる基本構成にl―ラクチドや共重合可能なジオール成分・ジカルボン酸成分などを共重合せしめた樹脂をポリエステル樹脂(B)として用いることが好ましい。前記(I)または(II)の条件を満たす限り、共重合量は特に制限されるものではないが、例えば、d−ラクチドを重縮合したD―ポリ乳酸を基本構成とし、これにl―ラクチドを共重合させる場合のl―ラクチドの共重合量は、1モル%以上99モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以上95モル%以下である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、該ポリエステル層(P層)におけるポリエステル樹脂(B)は、上記の条件(I)または(II)の少なくとも一方を満たすことが必要であるが、P層における脂環式ジオール成分および芳香族ジオール成分の含有量の合計は、該ポリエステル層(P層)中のジオール成分の量に対して0.5モル%以上9モル以下であることが好ましく、より好ましくは1モル%以上9モル%以下、更に好ましくは1.5モル%以上8モル%以下、特に好ましくは2モル%以上8モル以下である。0.2モル%に満たないと、耐オリゴマー性が低下することがあるため好ましくなく、また、10モル%を超えるとフィルムの耐熱性が低下し、高温下に曝された時に寸法変化が大きくなることがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、共重合成分を0.2モル%以上10モル%以下とすることによって、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ優れた寸法安定性を有するフィルムとすることができる。
また、該ポリエステル層(P層)における脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分およびナフタレンジカルボン酸成分の含有量の合計は、該ポリエステル層(P層)中のジカルボン酸成分の量に対して0.5モル%以上9モル以下であることが好ましく、より好ましくは1モル%以上9モル%以下、更に好ましくは1.5モル%以上8モル%以下、特に好ましくは2モル%以上8モル%以下である。0.2モル%に満たないと、耐オリゴマー性が低下することがあるため好ましくなく、また、10モル%を超えるとフィルムの耐熱性が低下し、高温下に曝された時に寸法変化が大きくなることがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、共重合成分を0.2モル%以上10モル%以下とすることによって、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ優れた寸法安定性有するフィルムとすることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)中に分散させるためには、エステル交換反応が可能な限り起こらないような状態下で、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)に混合することにより行うことができる。その具体的方法として(1)エステル交換反応を阻害する機能を有する化合物(以下、エステル交換抑制剤とする)を添加する方法、(2)ポリエステル樹脂(A)と相溶性が低いポリエステル樹脂をポリエステル樹脂(B)として用いる方法、(3)上記(1)の方法と(2)の方法を併用する方法、など挙げることができる。ここで、(1)の方法におけるエステル交換反応を阻害する機能を有する化合物の例としては、モノステアリルリン酸、ジステアリルリン酸、モノステアリルリン酸とジステアリルリン酸の混合物などに代表されるアルキルリン酸、およびそれらのエステル化合物等が上げられる。アルキルリン酸、およびこれらのエステル誘導性化合物はフィルム中に含まれる重合触媒の触媒失活効果があり、重合触媒を失活することでポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)のエステル交換反応を抑制することができ、その結果、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)中に分散体としてより容易に分散させることが可能となる。フィルム中に添加されるエステル交換反応抑制剤の添加量はP層全体に対して0.01重量%以上2重量%以下が好ましく、より好ましくは0.02重量%以上1重量%以下、更に好ましくは0.03重量%以上1重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以上0.5重量%以下である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、エステル交換抑制剤が0.01重量%に満たないと、エステル交換抑制効果が不十分であり、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)に分散させるのが困難となる。その結果、オリゴマートラップ能が低下し、加熱処理によるヘイズの上昇が大きくなったり、寸法安定性が低下したりすることがあるため好ましくない。また、2重量%を超えると、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の熱劣化が促進され、溶融製膜できないことがある。また、溶融製膜できたとしても、得られるフィルムの耐オリゴマー性や、機械的強度が著しく低下したり、エステル交換抑制剤がブリードアウトしてフィルムの透明性が損なわれることがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、エステル交換抑制剤の添加量を0.01重量%以上2重量%以下とすることで、機械的強度、透明性を維持したまま、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)中に分散させることが可能となり、その結果、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ寸法安定性に優れるポリエステルフィルムとすることができる。
また、(2)の方法は、相溶性の低いポリエステル樹脂同士の組み合わせを用い、それらをたとえば高剪断をかけて強制的に混練することによって、ポリエステル樹脂(A)中にポリエステル樹脂(B)を分散させる方法である。
例えばポリエステル樹脂(A)として、ポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、ポリエステル樹脂(B)として、下記の(I’)または(II’)の少なくとも一方を満たすポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
(I’)ポリエステル樹脂(B)が、脂環式ジオール成分および/または芳香族ジオール成分を有し、かつポリエステル樹脂(B)における該脂環式ジオール成分および該芳香族ジオール成分の含有量の合計が、該ポリエステル樹脂(B)中のジオール成分の量に対して35モル%以上である樹脂。含有量の合計は40モル%以上であることが好ましい。上限は、特に定められるものではないが、ポリエステル樹脂(A)への分散性の点から95モル%以下であることが好ましい。
(II’)ポリエステル樹脂(B)が、脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分、およびナフタレンジカルボン酸成分からなる群から選ばれる1以上のジカルボン成分を有し、かつ該ポリエステル樹脂(B)における該脂環式ジカルボン酸成分、該イソフタル酸成分および該ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の合計が該ポリエステル樹脂(B)中のジカルボン酸成分の量に対して40モル%以上である樹脂。含有量の合計は45モル%以上であることが好ましい。上限は、特に定められるものではないが、ポリエステル樹脂(A)への分散性の点から95モル%以下であることが好ましい。
なお、前記(3)の方法((1)の方法と(2)の方法を組み合わせた方法)を採用する場合は、ポリエステル樹脂(B)として、上述のものだけでなく、次の(I’’)または(II’’)の少なくとも一方を満たすポリエステル樹脂も好ましく用いることができる。
(I’’)ポリエステル樹脂(B)が、脂環式ジオール成分および/または芳香族ジオール成分を有し、かつポリエステル樹脂(B)における該脂環式ジオール成分および該芳香族ジオール成分の含有量の合計が、ポリエステル樹脂(B)中のジオール成分の量に対して10モル%以上である樹脂。含有量の合計は40モル%以下であることが好ましい。
(II’)ポリエステル樹脂(B)が、脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分、およびナフタレンジカルボン酸成分からなる群から選ばれる1以上のジカルボン成分を有し、かつポリエステル樹脂(B)における該脂環式ジカルボン酸成分、該イソフタル酸成分および該ナフタレンジカルボン酸成分の含有量の合計が該ポリエステル樹脂(B)中のジカルボン酸成分の量に対して15モル%以上40モル%以下である樹脂。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル樹脂(A)として、PETを用いた場合は、ポリエステル樹脂(B)としてより好ましい共重合成分としては、形成したポリエステルフィルムのオリゴマー析出防止効果の観点から、ジオール成分としては、脂環式ジオールが好ましく、ジカルボン酸成分としては脂環式ジカルボン酸が好ましい。より好ましくはモノマーの価格や形成したフィルムの透明性などの観点からジオール成分としては、シクロヘキサンジメタノールが、ジカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸が特に好適に使用できる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)におけるポリエステル樹脂(B)の含有量は、P層全体に対して0.5重量%以上15重量%以下が好ましい。より好ましくは0.8重量%以上12重量%以下、更に好ましくは1重量%以上10重量%以下である。ポリエステル樹脂(B)の含有量が0.5重量%に満たないと、オリゴマートラップ能が不足し、加熱処理後に白化するため好ましくなく、また15重量%を超えると、フィルムの耐熱性が低下し、高温下に曝されたときに寸法変化が大きくなることがあるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル樹脂(B)の含有量を0.5重量%以上15重量%以下とすることで、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ寸法安定性を兼ね備えたフィルムとすることができる。
本発明では、ポリエステル層(P層)中において、ポリエステル樹脂(B)が扁平度3以上の分散体として分散していることが必要である。
ここでいう分散体の扁平度とは、分散体のフィルム厚み方向の平均厚みdと、主面の長軸長さaの比a/dを指し、以下の(1)〜(7)の手順で求められるものである。
(1)ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製する。なお、サンプルはフィルムの長手方向(MD)方向と平行な方向に切断したMD断面薄膜切片、幅方向(TD)方向と平行な方向に切断したTD断面薄膜切片の2種類を用意する。
(2)得られたMD断面薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡”H−7100FA”)を用いて100000倍に拡大観察した画像を得る。観察場所はポリエステル層(P層)内において無作為に定めるものとする。また、該画像において分散体が判別し難い場合は、適宜オスミニウム酸、酸化ルテニウムなどを用いて事前にフィルムを染色して行う。なお、フィルムの厚み方向と画像の上下方向は一致させるものとする。また、100000倍にて分散体が入りきらない場合は、観察位置をずらした画像を得て、それを隙間無くつなぎ合わせて、観察画像とする。
(3)画像中に確認されるポリエステル層(P層)内のポリエステル樹脂(B)の分散体についてフィルム厚み方向の平均厚みと長軸長さを求める。ここで長軸長さとはフィルム面方向に平行な方向において、分散体の一端(左端)からもう一方の一端(右端)までを線分Aで結んだときの線分の長さである。また、フィルム厚み方向の平均厚みとは線分Aの中点Bを通り、かつ線分Aと垂直な線上にある分散体の一端(上端)からもう一方の一端(下端)までを線分Cで結んだときの線分長さである。画像内に観察される少なくとも20個以上の分散体において、同様の作業を行い、その平均値でもって、それぞれMD断面およびTD断面におけるフィルム厚み方向の平均厚みと長軸長さを求める。
(4)フィルム切断場所を無作為に変更して(1)から(3)と同様の作業を計10回行い、各々で求められた長軸長さの平均値をもって最終的なMD断面における長軸長さを得る。同様に、フィルム厚み方向の平均厚みの平均値をもって最終的なMD断面におけるフィルム厚み方向の平均厚みdMDとする。
(5)TD断面薄膜切片についてもMD断面薄膜切片の場合と同様に測定を行い、最終的なTD断面における長軸長さと、最終的なTD断面におけるフィルム厚み方向の平均厚みを得る。
(6)最終的なMD断面における長軸長さと、最終的なTD断面におけるフィルム厚み方向の平均厚みのうち長い方の値を最終的な主面の長軸長さa、またそのときのフィルム厚み方向の平均厚みを最終的な平均厚みdとする。
(7)上記(6)で得られた長軸長さaをフィルム厚み方向の平均厚みdで除した値(a/d)を当該分散体における扁平度とする。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述の方法により得られた扁平度はより好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)中にポリエステル樹脂(B)を扁平度3以上の分散体として分散させることにより、より少量の含有量でも高いオリゴマートラップ能を発現させ、加熱処理によるヘイズの上昇をより小さくすることが可能となる。
ここで、扁平度を3以上とするためには、ポリエステル樹脂(A)中にポリエステル樹脂(B)を分散させてシート化したものを、1’)面積延伸倍率が1.5倍以上となるよう一軸または二軸延伸する、2’)圧延率が90%以上となるよう厚み方向に圧延する、3’)上記1’)と2’)を併用する、などの方法が挙げられる。なお、1’)の方法の詳細は後述する。また、面積倍率とは一軸目の延伸倍率に二軸目の延伸倍率を乗じたものである。また、2’)の方法において圧延率(%)とは、圧延後の厚みを、圧延前の厚みで除し、100を乗じたものである。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、扁平度を高めるためには、1”)面積延伸倍率、もしくは圧延率を大きくする、他に、2”)ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)中に微分散させる、3”)ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度差を小さくする、4”)上記1“)〜3’)の少なくとも2つの方法を併用する、などの方法が好ましく用いられる。
なお、扁平度の上限については制限はないが、ポリエステル樹脂(A)の限界延伸倍率の点から実質的には100以下である。
すなわち、本発明では、ポリエステル層(P層)内に分散したポリエステル樹脂(B)の分散形態を円盤状(楕円状円盤を含む)とし、かつ該円盤状分散体の主面がフィルム面と略平行とすることが好ましい。円盤状分散体をフィルム面と略平行に形成させることによって、フィルム内部から発生し、表面側に移動するオリゴマーを効率よくトラップすることが可能となり、ポリエステル樹脂(B)の含有量が少量であっても、加熱処理によるヘイズの上昇を小さくすることが可能となる。
ここで、略平行とは、フィルムの面方向と長さ方向円盤状分散体の主面とのなす角θが、0±15°以内であることを意味する。より好ましくはθが0±10°以内、更に好ましくはθが0±5°以内である。この範囲とすることで、高い耐オリゴマー性を発現させることが可能となる。
また、本発明においてポリエステル樹脂(B)の分散体のフィルム厚み方向の平均厚みdは1nm以上200nm以下であることが好ましい。より好ましくは2nm以上100nm以下であり、更に好ましくは3nm以上50nm以下、特に好ましくは3nm以上25nm以下である。ポリエステル樹脂(B)の添加量が分散体のフィルム厚み方向の平均厚みが1nmに満たないと、オリゴマートラップ能が不足し、加熱処理後に白化するため好ましくなく、また200nmを超えると、フィルムの透明性が大幅に低下することがあったり、耐オリゴマー性の面内のムラが大きくなることがあるため好ましくない。
ここで、厚みdを上述の範囲とするためには、ポリエステル樹脂(A)中にポリエステル樹脂(B)を分散径3μm以下の大きさ、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは500nm以下となるように分散させてシート化したものを、延伸、圧縮する事により得ることができる。このときの面積延伸倍率や、圧延率はポリエステル樹脂(B)の分散径により適宜調整すればよい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、分散体の平均フィルム厚み方向の平均厚みdをかかる範囲とすることにより、ポリエステル樹脂(B)の含有量が同量であっても、より微分散した状態で含有するため、フィルムの透明性を損なうことなく、フィルム面内に均一にオリゴマートラップ能を付与することが可能となる。
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、離型剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤および塩などが挙げられる。
また、本発明のポリエステルフィルムや、ポリエステル層(P層)は、一軸、または二軸方向に配向(延伸)されていても構わない。延伸等により配向結晶化させることにより、高い機械強度、高い寸法安定性を有するフィルムとすることができるだけでなく、延伸時にポリエステル樹脂(A)中に分散したポリエステル樹脂(B)が共延伸され、ポリエステル樹脂(B)を、主面がフィルム面方向と略平行な円盤状分散体とすることができ、その結果、少量添加でも高いオリゴマートラップ能を付与することが可能となる。
また、本発明のポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されず、用途により適当なフィルム厚みを選択することができるものであるが、一般的には1μm以上500μm以下であることが好ましい。フィルム厚みが1μm未満であると、製膜時に破れが生じやすいことがある。また、フィルム厚みが500μmを超えると、フィルムをロール状に巻き取ることが困難となることがある。
また、本発明のポリエステルフィルムは上述の要件を満たすポリエステル層(P層)のみで形成されてもよく、その他の別の層との積層構造であっても構わない。すなわち、上記、ポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)に分散したポリエステル層(P層)の片側もしくは両側に他の層(例えばポリエステル層(P2層))が積層されていてもよい。さらには、ポリエステル層(P2層)が積層される場合は、ポリエステル層(P層)が最表層に位置する構成、特に上述の要件を満たすポリエステル層(P層)が両側表層に位置し、内層にポリエステル層(P2)層を有する積層構成が、ポリエステル層(P層)によるオリゴマートラップ効果を効率よく発現させるという点で、耐オリゴマー特性により優れるという点で、より好ましい。その場合、上記ポリエステル層(P層)の厚みがフィルム全体の厚みに対して2%以上であるのが好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは8%以上である。2%に満たないと、耐オリゴマー特性が劣ることがある。
また、積層構成とする場合、ポリエステル層(P2層)を構成するポリエステル樹脂(A2)としては、ポリエチレンテレフタレートを主たる構成成分とする樹脂を用いることが好ましい。このような構成とすることによって、耐オリゴマー性を維持しつつ、透明性や熱寸法安定性をより高めることが出来る。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)の固有粘度[IVp] は、耐オリゴマー性と熱寸法安定性の観点から、0.55以上0.85以下が好ましい。より好ましくは0.58以上0.80以下、更に好ましくは0.60以上0.75以下である。また、積層構成の場合は耐オリゴマー性をより高めることが出来るという点から、[IVp]はより好ましくは0.65以上、更に好ましくは0.68以上である。
また、本発明のポリエステルフィルムが積層構成の場合、ポリエステル層(P層)の固有粘度[IVp]とポリエステル層(P2層)の固有粘度〔IVp2〕との差〔IVp〕−〔IVp2〕が0以上0.15以下となるのが好ましい。〔IVp〕−〔IVp2〕が0.15より大きいと、積層共押出したときに積層界面が乱れ、その乱れを起点に延伸工程で破れやすくなり、安定製膜が難しくなり好ましくない。また、〔IVp〕−〔IVp2〕が0以下となった場合、ポリエステル層(P層)の固有粘度[IVp]が低くなりすぎて耐オリゴマー性が低下したり、ポリエステル層(P2層)のポリエステル樹脂(A2)の分子量が高くなりすぎて延伸による配向結晶化が困難となる結果、フィルム全体の熱寸法安定性が悪くなることがある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、〔IVp〕−〔IVp2〕を製膜性と耐オリゴマー性、熱寸法安定性を両立することが出来る。
本発明のポリエステルフィルムは、上記構成からなり、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。ここでいう全光線透過率とは、JIS−K7361(1997年版)に基づいて測定された値であり、フィルム厚み50μmにおける全光線透過率のことである。より好ましくは全光線透過率が85%以上、更に好ましくは全光線透過率が88%以上であるのがより好ましい。
また本発明のポリエステルフィルムにおいて、初期ヘイズH0は特に制限はないが、特に光学用途などのフィルムの透明性が求められる用途においては3%以下が好ましい。ここでいうヘイズとは、JIS−K7136(2000年版)に基づいて測定された値であり、フィルム厚み50μmにおけるヘイズのことである。また、初期ヘイズとは、後述する製膜後に160℃で1時間熱処理を行った後のフィルムのヘイズH1と区別されるための用語であり、製膜後に50℃を超える熱処理を受けていないフィルムのヘイズを指す。
初期ヘイズH0は、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下である。ヘイズを3%以下に範囲に制御することで従来の加工工程が適用でき、光学用途に適用可能なポリエステルフィルムとすることができる。
ここで、初期ヘイズH0を上述の範囲とする方法としては、ポリエステル樹脂(A)中にポリエステル樹脂(B)を微分散させる方法、ポリエステル樹脂(B)の分散体のフィルム厚み方向の平均厚みdを200nm以下、より好ましくは100nm以下にする方法、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の屈折率差を小さくする方法などが挙げられる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、初期ヘイズH0と、160℃で1時間熱処理した後のヘイズH1との差(H1−H0)が3%以下であることが好ましい。より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下である。H1−H0を3%以下とすることで、透明性が損なわれたりすることなく、また発生したオリゴマーが工程汚染を起こしたりすることもない。また、発生したオリゴマーにより機能層の形成時に欠点が発生することもなく、機能層の機能を十分に発揮でさせることができる。
ここで、H1−H0を上記範囲内とするためには、上記ポリエステル樹脂(B)に脂環式ジオールおよび/または脂環式ジカルボン酸成分を共重合せしめることなどによって達成することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定(以下、DSC)により得られる融点Tmが245℃以上265℃以下であることが好ましい。ここでいう融点TmとはDSCにより得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/min)における融点Tmであり、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもってポリエステルフィルムの融点Tmとする。より好ましくは融点Tmが247℃以上262℃以下、更に好ましくは250℃以上260℃以下である。融点Tmが245℃に満たないと、フィルムの耐熱性に劣ったりすることがあり好ましくなく、また、融点Tmが265℃を越えると、押出加工が困難となる場合があるため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて融点Tmを245℃以上265℃以下とすることにより、耐熱性と加工性を両立したポリエステルフィルムとすることができる。
ここで、融点Tmを上記範囲内とするためには、ポリエステル樹脂(B)として、上述した共重合可能なジオール成分やジカルボン酸成分を共重合したものを用いることによって達成することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、150℃で30分熱処理したときの熱収縮率が1%以下であることが好ましい。熱収縮率を上記範囲とすることによって、高温条件下に曝された状態で使用された場合に加工性、平面性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。より好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.5%以下である。
ここで、熱収縮率を上記範囲内とするためには、ポリエステルフィルムの融点Tmを上記範囲に制御した上で、上記方法により延伸、熱処理することにより得ることができる。また、ポリエステル層(P層)の固有粘度[IVp]とポリエステル層(P2層)の固有粘度[IVp2]を上述の関係とした積層構成とすることにより、高い耐オリゴマー性を発現させつつ、熱収縮率をより低減することが可能となる。
さらに本発明のポリエステルフィルムは、透過b値が0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以下である。透過b値が0.5以下であることにより、特に光学フィルム用途において、フィルムをディスプレイ装置の表面に貼付した場合など、劣化、変色といった低品位な印象を与えることなく、またフィルムをディスプレイ装置の内部に組み込んだ場合に色調のバランスを損なうことなく、好適に使用できるものとなる。また透過b値は−0.5以上が好ましい。−0.5未満だとフィルムが青黒く見え、かかるフィルムをディスプレイ装置の表面に貼付した場合、暗い印象を与えるばかりか、フィルムをディスプレイ装置の内部に組み込んだ場合、色調・輝度のバランスを損なう可能性があるため好ましくない。
ここで、透過b値を上記範囲とするためには、ポリエステル樹脂(A)として、上記色調範囲に制御した樹脂を用いて、窒素雰囲気下で、融点+20℃以下の温度でシート状に加工する方法、蛍光増白剤などを用い色調を補正する方法、等が好ましく用いられる。
本発明のポリエステルフィルムには、各種加工工程で使用される塗布剤、蒸着物質等との接着性を向上させるための易接着層や、フィルムの易滑性を向上させるための易滑層、耐衝撃性を高めるためにハードコート層、耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層など、更に別の機能を有する層(機能層)を設けても良い。
この機能層を構成する成分としては、ベース層であるポリエステルフィルムに対し接着性を有するものであれば無機系材料、有機系材料、特に限定されないが、たとえば機能層を構成する成分が有機系材料を主たる成分とする場合、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン系樹脂などを好適に用いることができる。また、異なる2種以上の樹脂、例えば、ポリエステル系樹脂とウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂とアクリル系樹脂、あるいはウレタン系樹脂とアクリル系樹脂等を組み合わせて用いてもよい。好ましくはポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂であり、特に好ましくはポリエステル系樹脂である。
かかる機能層が樹脂を主たる成分とする場合は、上記の樹脂に各種の架橋剤を併用することが好ましく行われる。架橋剤を併用することにより、耐熱接着性の向上と同時に、耐湿接着性を飛躍的に向上させることができる。機能層に用いる架橋剤として、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂に架橋性官能基が共重合されている場合、架橋剤を併用することが特に好ましい。機能層を構成する樹脂と架橋剤は任意の比率で混合して用いることができるが、架橋剤は、樹脂100重量部に対し0.2重量部以上20重量部以下が接着性向上の点で好ましく、より好ましくは0.5重量部以上15重量部以下、特に好ましくは1重量部以上10重量部以下である。架橋剤の添加量が、0.2重量部未満の場合、その添加効果が小さく、また、20重量部を越える場合は、機能層としての機能(例えば接着性など)が低下する傾向がある。
また、機能層中には、易滑性や耐ブロッキング性の付与のために、無機および有機微粒子を添加することが好ましく行われる。この場合、添加する無機微粒子としては、かかる無機微粒子としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、レニウム、バナジウム、オスミウム、コバルト、鉄、亜鉛、ルテニウム、プラセオジウム、クロム、ニッケル、アルミニウム、スズ、亜鉛、チタン、タンタル、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、イットリウム、ランタニウム等の金属、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セシウム、酸化アンチモン、酸化スズ 、インジウム・スズ酸化物、酸化イットリウム 、酸化ランタニウム 、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム 、酸化ケイ素等の金属酸化物、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム 、フッ化アルミニウム 、氷晶石等の金属フッ化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを用いることができる。また、有機微粒子としては、シリコーン系化合物、架橋スチレンや架橋アクリル、架橋メラミンなどの架橋微粒子の他、塗布層を構成する熱可塑性樹脂に対して非相溶だが、微分散して海島構造を形成する熱可塑性樹脂も微粒子として用いることもできる。用いられる微粒子の平均粒径は0.001μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.005μm以上3μm以下、特に好ましくは0.01μm以上2μm以下、更に好ましくは0.02μm以上2μm以下である。機能層中の樹脂100重量部に対する微粒子の混合比は特に限定されないが、固形分重量比で0.05μm以上10重量部以下が好ましく、より好ましくは0.1μm以上5重量部以下である。
また、機能層中には本発明の効果が損なわれない範囲内で、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤、核剤などが配合されていてもよい。
次に、本発明のポリエステルフィルム製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
本発明のポリエステルフィルムに用いるポリエステル樹脂は、例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはその誘導体とエチレングリコール等のジオール成分とを周知の方法でエステル交換反応させることによって得ることができる。また、ポリエステル樹脂(B)に脂肪族ジオール成分、芳香族ジオール成分、脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分、およびナフタレンジカルボン酸成分を共重合成分として含有させる方法としては、重合時にジオール成分として脂環式ジオール成分、芳香族ジオール成分を、ジカルボン酸成分として脂環式ジカルボン酸成分、イソフタル酸成分、およびナフタレンジカルボン酸成分(またはこれらのエステル誘導体)を添加し、周知の方法で重合することにより得ることができる。また、ポリエステル樹脂(B)として、イーストマンケミカル社製“PET−G 6763”(ジオール成分の全量に対して1,4シクロへキサンジメタノールが33モル%共重合されたPET)なども好ましく用いることができる。
また、重合に際して従来公知の反応触媒(重合触媒)(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物など)を用いても良い。さらに色調調整剤としてリン化合物などを添加してもよい。より好ましくは、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階に置いて、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。次に、上記ポリエステル樹脂から本発明のシートを得るための方法について述べる。
本発明のポリエステルフィルムがポリエステル樹脂(B)をポリエステル樹脂(A)中に分散したポリエステル層(P層)のみからなる単膜構成の場合、必要に応じて乾燥したポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
また、フィルムが、ポリエステル層(P層)と他の層(例えばポリエステル層(P2層))を含む積層構造をとる場合の製造方法は、積層する各層の材料が熱可塑性樹脂を主たる構成とする場合は、各層の原料をそれぞれ別個の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、ポリエステル層(P層)と積層する材料をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して張り合わせる方法(接着法)、その他、積層する材料の形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたポリエステル層上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。
また、積層する材料が、熱可塑性樹脂でない場合は、ポリエステル層と積層する材料をそれぞれ別々に作製し、接着剤などを介して張り合わせる方法(接着法)や、硬化性材料の場合はポリエステル層上に塗布した後に電磁波照射、加熱処理などで硬化させる方法等が使用することができる。
また、本発明のポリエステルフィルムが一軸もしくは、二軸配向フィルムの場合、その好ましい製造方法として、まず、押出機(積層構造の場合は複数台の押出機)に原料を投入し、溶融して口金から押出し(積層構造の場合は共押出し)し、冷却した表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸(未配向)フィルムを作製する。
この未延伸フィルムを70℃以上140℃以下の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3倍以上4倍以下に延伸し、20℃以上50℃以下の温度のロール群で冷却し、一軸延伸(一軸配向)フィルムを得る。
続いて、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80℃以上150℃以下の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(「幅方向」または、「横方向」ということもある)に3倍以上4倍以下に延伸する。これにより、ポリエステル樹脂(A)中に分散したポリエステル樹脂(B)も共延伸され、円盤状の分散体とすることができる。
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3倍以上5倍以下とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9倍以上15倍以下であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる二軸延伸フィルムの強度が不十分となり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて好ましくは原料となる樹脂のガラス転移温度Tg以上融点未満の温度で1秒以上30秒以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。
また、上記熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3%以上12%以下の弛緩処理を施してもよい。
次に本発明のポリエステルフィルムに別の機能を有する層(機能層)を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法などの乾式法、めっき法などの湿式法、複数台の押出機を用いて、ポリエステルフィルム用の原料と機能層層用の原料をそれぞれ別の押出機内で溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したポリエステルフィルムに機能層用原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、ポリエステルフィルムと機能層をそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して張り合わせる方法(接着法)、その他、機能層用原料を溶媒に溶解させ、その溶液をあらかじめ作製していたポリエステルフィルム上に塗布する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等が使用することができる。
ここで、これら上述した方法のうちでは、形成される機能層の形成が容易である、共押出法、コーティング法が、より好ましい形成方法である。
共押出法により機能層をポリエステルフィルム上に形成する方法としては、複数台の押出機を用いて、ポリエステルフィルム用原料、機能層用原料をそれぞれ別の押出機内で溶融して口金から共押出し、表面温度10℃以上60℃以下に冷却されたドラム上に静電気により密着冷却固化することで、本発明のポリエステルフィルム上に機能層を形成したシートを得ることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムが一軸、もしくは二軸に延伸(配向)されたフィルムの場合は、上述の機能層用原料とポリエステルフィルム用原料が積層された未延伸シートを前述の方法と同様の方法にて、延伸することにより、機能層を積層しつつ、かつ全体が二軸配向されたシートを一気に得ることができる。
また、コーティング法により機能層を本発明のポリエステルフィルム上に形成する方法としては、ポリエステルフィルムの製膜中に塗設するインラインコーティング法、製膜後のポリエステルフィルムに塗設するオフラインコーティング法があげられ、どちらでも用いることが出来るが、より好ましくはポリエステルフィルムと同時にできて効率的であり、かつポリエステルフィルムへの接着性が高いという理由からインラインコーティング法が好ましく用いられる。また、塗設する際には、塗布液の支持体上への濡れ性向上、接着力向上の観点からポリエステルフィルム表面へコロナ処理なども好ましく行われる。
上記コーティング法により、機能層をポリエステルフィルム上へ形成する方法としては、上述の機能層を構成する材料を溶媒に溶解/分散させた塗液をポリエステルフィルム上に塗布、乾燥する手段が好ましく用いられる。この際、用いる溶媒は任意であるが、特にインラインコーティング法においては、安全性の点から水を主たる成分として用いることが好ましい。その場合、塗布性や、溶解性などの改良のため、水に溶解する有機溶剤を少量添加させても構わない。かかる有機溶剤の例として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n―ブチルアルコールなどの脂肪族または脂環族アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール類、メチルセロソロブ、エチルセロソロブプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジオール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N−メチルピロリドンなどのアミド類など、および、これらの混合物を使用することができるが、これらに限定されない。
また機能層が主として無機系の材料から構成される場合は、これら上述した方法のうちでは、形成される機能層の制御が容易でかつ基材への密着性、均一性に優れる蒸着法およびスパッタ法などの乾式法が、より好ましい形成方法である。
乾式法により機能層を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、誘導加熱蒸着および、これらにプラズマやイオンビームによるアシスト法などの真空蒸着法、反応性スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタリング法などのスパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。PVD法にて機能層を形成する場合、揮発前に減圧する際、系内の真空度を高くすることが好ましい。系内の真空度を高くすることで、緻密で、欠点の少ないA層を形成することが可能となり、機能層を均一に形成することができる。
機能層を構成する材料が有機系/無機系複合導電性材料の場合、用いる材料の種類、組成、などにより上述の製造方法のうちから適宜選択して形成することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、上述の工程により形成することができ、得られたフィルムは、従来のフィルムと比べて、優れた透明性を有し、加工工程後もオリゴマーの析出が少なく、ヘイズ上昇が小さいという特徴を有する。本発明のポリエステルフィルムはこの特長を生かした各種用途に適用可能であるが、例えば、プリズムレンズシート用、拡散板用、タッチパネル用、AR(アンチリフレクション)用など各種光学用シートのベースフィルム、写真用、太陽電池用、離型用、工程用、電気絶縁性用、電子材料用、ラミネート用などの各種の工業用フィルム、各種包装材料用フィルム、磁気テープ用フィルムなどの各種フィルム材料として好適に使用できる。
[特性の評価方法]
A.ポリエステル樹脂(B)の扁平度、および平均厚みd
前述した方法に則り、ポリエステル樹脂(B)の扁平度、および平均厚みdを求めた。
B.全光線透過率
ヘイズメーターNDH−5000(日本電色(株)製)を用いて、ポリエステルフィルムのフィルム厚み方向の全光線透過率を測定した。なおフィルム面内においては5ヶ所以上場所を変えて測定し、その平均値でもって全光線透過率とした。また、ポリエステルフィルムの両面について求め、より低い数値でもって、ポリエステルフィルムの透過率とした。
C.初期ヘイズH0
ヘイズメーターNDH−5000(日本電色(株)製)を用いて、ポリエステルフィルムのフィルム厚み方向のヘイズを測定した。なおフィルム面内においては5ヶ所以上場所を変えて測定し、その平均値でもって初期ヘイズH0とした。また、ポリエステルフィルムの両面について求め、より低い数値でもって、ポリエステルフィルムの初期ヘイズH0とした。
D.初期ヘイズH0と、160℃で1時間熱処理後のヘイズH1との差(H1−H0)
200mm×150mmサイズのポリエステルフィルムを160±3℃で1時間加熱処理し、処理後のフィルムのヘイズをヘイズメーターNDH−5000(日本電色(株)製)を用いて測定した。なおフィルム面内においては5ヶ所以上場所を変えて測定を行い、平均値でもって処理後のヘイズH1とした。得られた処理後のヘイズH1とC.で得られた初期ヘイズH0の差(H1−H0)を求めた。
E.150℃で30分熱処理したときの熱収縮率
ポリエステルフィルムを幅1cm、長さ15cmの短冊状に切りだし、長さ方向の両端からそれぞれ2.5cm内側に幅方向と平行な線を引き、2本の平行線間の距離L0を正確に測定した。次いでその短冊状サンプルを150℃の熱風オーブン中にて30分間熱処理し、冷却後、2本の平行線間の距離L1を正確に測定した。処理前の寸法と処理後の寸法から下記式にて熱収縮率(%)を求めた。
熱収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100
なお、測定は短冊の長さ方向がフィルムMD方向に平行な場合、フィルムTD方向に平行な場合、それぞれについて各10サンプル測定を実施し、それぞれの平均値でもってMD方向の熱収縮率、TD方向の熱収縮率とした。
得られたMD、TD熱収縮率の平均でもって、本フィルムの熱収縮率とし、以下のように判定した。熱収縮率が
0.5%以下の場合:S
0.5%を越えて0.8%以下の場合:A
0.8%を越えて1%以下の場合:B
1%を越える場合:C
とした。SまたはAまたはBの場合、耐熱性が良好であり、Sが最も優れている。
F.固有粘度IV
用いる樹脂、およびフィルム中のポリエステル層(P2)、ポリエステル層(P2層)の固有粘度は、それぞれオルトクロロフェノール100mlにP層を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(3)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C ・・・(3)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)。
なお、フィルム中のポリエステル層(P層)、ポリエステル層(P2層)の固有粘度はそれぞれ、研磨(一例として、マイクロメーターで厚みを測りながら、片刃を用いて表面から削っていく方法などが挙げられる)などを実施し、それぞれP層のみ、P2層のみとしてから、測定を実施した。
G.ポリエステル樹脂およびP層の組成分析
ポリエステル樹脂、およびP層の組成分析は、ポリエステル樹脂、P層をそれぞれアルカリにより加水分解し、各成分をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーにより分析し、各成分のピーク面積より組成比を求めた。以下に一例を示す。
ジカルボン酸成分や、多官能酸成分は高速液体クロマトグラフィーにて測定を行った。測定条件は既知の方法で分析することができ、以下に測定条件の一例を示す。
装置:島津LC−10A
カラム:YMC−Pack ODS−A 150×4.6mm S−5μm
120A
カラム温度:40℃
流量:1.2ml/min
検出器:UV 240nm
ジオール成分や、水酸基を有する成分の定量はガスクロマトグラフィーを用いて既知の方法で分析することができる。以下に測定条件の一例を示す。
装置 :島津9A(島津製作所製)
カラム:SUPELCOWAX−10 キャピラリーカラム30m
カラム温度:140℃〜250℃(昇温速度5℃/min)
流量 :窒素 25ml/min
検出器:FID
以下実施例等によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1(参考例1))
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、固有粘度0.65、融点255℃のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を(ポリエステル樹脂(A))を得た。
次に、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール67mol%、シクロヘキサンジメタノール33mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、シクロヘキサンジメタノールを33モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を得た。ポリエステル樹脂(B)の詳細な組成を表に示す。
次いで、180℃で2時間真空乾燥したポリエステル樹脂(A)92.9重量部、70℃で6時間熱風乾燥したポリエステル樹脂(B)7重量部、エステル交換抑制剤としてモノステアリルリン酸/ジステアリルリン酸混合物“アデカスタブ”AX−71((株)ADEKA製)0.1重量部を押出機内で280℃の温度で溶融させ、Tダイ口金に導入した。
次いで、Tダイ口金内より、シート状に押出して溶融単層シートとし、該溶融単層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを80℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、85℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで210℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに210℃の温度で4%幅方向に弛緩処理を行った後、更に140℃の温度で3%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って厚さ50μmの二軸延伸(二軸配向)フィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の長軸長さa、平均厚みd、扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、初期ヘイズH0、熱処理後のヘイズH1、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例2(参考例2))
ポリエステル樹脂(A)97.9重量部、ポリエステル樹脂(B)2重量部とした以外は実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例3(参考例3))
ポリエステル樹脂(A)86.9重量部、ポリエステル樹脂(B)13重量部とした以外は実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例4(参考例4))
ポリエステル樹脂(A)98.9重量部、ポリエステル樹脂(B)1重量部とした以外は実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例5)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール33mol%、シクロヘキサンジメタノール67mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行って得た、シクロヘキサンジメタノール67モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例6)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール33mol%、シクロヘキサンジメタノール67mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行って得た、シクロヘキサンジメタノール67モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は実施例2と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例7)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール33mol%、シクロヘキサンジメタノール67mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行って得た、シクロヘキサンジメタノール67モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は実施例3と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例8)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール33mol%、シクロヘキサンジメタノール67mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行って得た、シクロヘキサンジメタノール67モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は実施例4と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例9〜12)
エステル交換抑制剤を添加しないこと以外は、それぞれ実施例5〜8と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例13、14(参考例5、6))
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を、ジオール成分としてエチレングリコール60mol%、スピログリコール40mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行って得た、スピログリコールを40モル%共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、それぞれ実施例5、実施例9と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1〜12に比べて初期ヘイズは高いものの、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ優れた耐熱性を有することがわかったことがわかった。
(実施例15、16(参考例7、8))
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸20mol%,シクロヘキサンジカルボン酸80mol%を、ジオール成分としてエチレングリコール40mol%、9,9’―ビス(4−フェノキシエタノール)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、BPEF)60mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、それぞれ実施例5、実施例9と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例13.14に比べて初期ヘイズは高いものの、加熱処理によるヘイズの上昇が小さく、かつ優れた耐熱性を有することがわかった。
(実施例17(参考例9))
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸67mol%,シクロヘキサンジカルボン酸33mol%を、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例18(参考例10))
ポリエステル樹脂(A)97.9重量部、ポリエステル樹脂(B)2重量部とした以外は実施例17(参考例9)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例19(参考例11))
ポリエステル樹脂(A)86.9重量部、ポリエステル樹脂(B)13重量部とした以外は実施例17(参考例9)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例20(参考例12))
ポリエステル樹脂(A)98.9重量部、ポリエステル樹脂(B)1重量部とした以外は実施例17(参考例9)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例21〜25)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸67mol%,シクロヘキサンジカルボン酸33molを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、それぞれ実施例5〜9と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例26(参考例13))
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸67mol%,イソフタル酸33molを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1と比べてヘイズ上昇値が大きいものの、各特性に優れることがわかった。
(実施例27,28)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸33mol%,シクロヘキサンジカルボン酸67molを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例5,実施例9と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1と比べてヘイズ上昇値が大きいものの、各特性に優れることがわかった。
(実施例29(参考例14))
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸70mol%,2,6−ナフタレンジカルボン酸30molを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例1(参考例1)と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1と比べてヘイズ上昇値が大きいものの、各特性に優れることがわかった。
(実施例30,31)
ポリエステル樹脂(B)として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸40mol%,2,6−ナフタレンジカルボン酸60molを、ジオール成分としてエチレングリコールを用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い共重合したポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例5,実施例9と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1(参考例1)と比べてヘイズ上昇値が大きいものの、各特性に優れることがわかった。
(実施例32(参考例15)、33、34)
ポリエステル樹脂(A)として、固有粘度を0.75、融点255℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た以外はそれぞれ実施例1(参考例1)、5、9と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。それぞれ、実施例1(参考例1)、5、9と比べて加熱処理によるヘイズ上昇をより抑えることができ、各特性に優れることがわかった。
(実施例35(参考例16)、36、37)
ポリエステル樹脂(A)として、固有粘度を0.71、融点255℃のポリエチレンテレフタレート樹脂を得た以外はそれぞれ実施例1(参考例1)、5、9と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。それぞれ、実施例1(参考例1)、5、9と比べて加熱処理によるヘイズ上昇をより抑えることができ、各特性に優れることがわかった。
(実施例38(参考例17),39,40)
主押出機と副押出機を有する複合製膜装置において、主層(P2層)用原料として、実施例1と同様の方法で得た固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを180℃の温度で3時間真空乾燥させた後、主押出機側に供給し、280℃の温度で溶融押出後、Tダイ複合口金に導入した。一方、副押出機にはP層用原料として、それぞれ実施例1(参考例1)、5、9と同組成の混合物を副押出機に供給し、280℃の温度で溶融押出後Tダイ複合口金に導入した。次いで、該Tダイ複合口金内で、副押出機より押出される樹脂層が主押出機より押出される樹脂層の両表層に積層(副押出機より押出される樹脂層/主押出機より押出される樹脂層/副押出機より押出される樹脂層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。
得られた未延伸積層フィルムを実施例1と同様の方法にて延伸を行い、厚さ50μmの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルム断面を観察したところ、ポリエステル層(P2層)の両側表層に円盤状に分散したポリエステル樹脂(B)を有するポリエステル層(P層)が形成されたものであることが分かった。P層の厚みはそれぞれ7μmで合計14μmであった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の長軸長さa、平均厚みd、扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1(参考例1)、5、9と比べて初期ヘイズ、熱収縮率に優れるものであり、各特性に優れることがわかった。
(実施例41(参考例18),42,43)
副押出機に投入するP層用原料として、それぞれ実施例32(参考例15),33,34と同組成のものを用いる以外はそれぞれ、実施例38(参考例17),39,40と同じ、厚さ50μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム断面を観察したところ、ポリエステル層(P2層)の両側表層に円盤状に分散したポリエステル樹脂(B)を有するポリエステル層(P層)が形成されたものであることが分かった。P層の厚みはそれぞれ7μmで合計14μmであった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の長軸長さa、平均厚みd、扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1(参考例1)、5、9と比べて初期ヘイズ、加熱処理によるヘイズ上昇、熱収縮率に優れるものであり、各特性に優れることがわかった。
(実施例44(参考例19),45,46)
副押出機に投入するP層用原料として、それぞれ実施例35(参考例16),36,37と同組成のものを用いる以外はそれぞれ、実施例38(参考例17),39,40と同じ、厚さ50μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム断面を観察したところ、ポリエステル層(P2層)の両側表層に円盤状に分散したポリエステル樹脂(B)を有するポリエステル層(P層)が形成されたものであることが分かった。P層の厚みはそれぞれ7μmで合計14μmであった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の長軸長さa、平均厚みd、扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。実施例1(参考例1)、5、9と比べて初期ヘイズ、加熱処理によるヘイズ上昇、熱収縮率に優れるものであり、各特性に優れることがわかった。
(実施例47(参考例20),48,49)
主押出機に投入するP2層用原料として、実施例32(参考例15)、33、34で得た固有粘度0.75のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、それぞれ実施例38(参考例17),39,40と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルム断面を観察したところ、ポリエステル層(P2層)の両側表層に円盤状に分散したポリエステル樹脂(B)を有するポリエステル層(P層)が形成されたものであることが分かった。P層の厚みはそれぞれ7μmで合計14μmであった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の長軸長さa、平均厚みd、扁平度を求めた。結果を表に示す。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。各特性に優れることがわかった。
(実施例50(参考例21)、51、52)
延伸倍率を縦2.5倍、横2.5倍とした以外は、それぞれ実施例1(参考例1)、5、9と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。それぞれ、実施例1(参考例1)、5、9と比べて熱処理後のヘイズ、熱収縮率がやや悪いものの、各種特性に優れることが分かった。
(比較例1、7)
エステル交換抑制剤を添加しないこと以外はそれぞれ、実施例1、17と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)の分散は確認できず、相溶状態となっていることがわかった。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後に大きくヘイズが上昇することがわかった。
(比較例2、8)
エステル交換抑制剤を添加しないこと以外はそれぞれ実施例2、18と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)の分散は確認できず、相溶状態となっていることがわかった。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後に大きくヘイズが上昇することがわかった。
(比較例3、9)
エステル交換抑制剤を添加しないこと以外は実施例3、19と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)の分散は確認できず、相溶状態となっていることがわかった。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱処理によるヘイズ上昇は抑えられているものの、熱収縮率が悪いことがわかった。
(比較例4、10)
エステル交換抑制剤を添加しないこと以外は実施例4、20と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)の分散は確認できず、相溶状態となっていることがわかった。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後のヘイズ上昇が大きいことがわかった。
(比較例5、11)
ポリエステル樹脂(A)99.6重量部、ポリエステル樹脂(B)0.3重量部とした以外は実施例1、17と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後に大きくヘイズが上昇することがわかった。
(比較例6、12)
ポリエステル樹脂(A)64.9重量部、ポリエステル樹脂(B)35重量部とした以外は実施例1、17と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの断面を観察したところ、ポリエステル樹脂(B)が円盤状に分散していることがわかった。また分散しているポリエステル樹脂(B)の平均長軸長さ、平均長軸長さ、平均扁平度を求めた。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱処理によるヘイズ上昇は抑えられているものの、熱収縮率が悪いことがわかった。
(比較例13、14)
それぞれ、実施例1と同じポリエステル樹脂(A)100重量部、実施例32のポリエステル樹脂(A)100重量部とした以外は実施例1と同様に50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、耐熱性の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後に大きくヘイズが上昇することがわかった。
(比較例15)
副押出機に投入するP層用原料として、実施例32,33、34で得た、固有粘度を0.75、融点255℃のポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例35,36,37と同様それぞれ実施例38、39、40と同様の方法で50μm厚の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
次に、得られたフィルムの全光線透過率、ヘイズ、熱処理後のヘイズ、熱収縮率の評価を行った。結果を表に示す。熱収縮率は良好であるものの熱処理後に大きくヘイズが上昇することがわかった。