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JP5499649B2 - 非水電解液二次電池用負極とそれを用いた非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池用負極とそれを用いた非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、充放電サイクル特性、高率放電特性および高温での連続充電特性に優れた非水電解液二次電池用負極とそれを用いた非水電解液二次電池に関するものである。
高電圧、高エネルギー密度である非水電解液二次電池は携帯用電子機器の主電源として用いられている。その非水電解液二次電池の負極材料には主に黒鉛が採用されている。リチウム金属を負極に用いるとエネルギー密度が最も高くなるが、充電時にリチウム金属の表面に析出したデンドライトが充放電の繰り返しにより成長して、セパレータを貫通して内部短絡を引き起こすという安全面での課題がある。
また、黒鉛を負極材料とするリチウム二次電池では、黒鉛の理論容量(372mAh/g)がリチウム金属の理論容量よりもかなり小さく、高エネルギー密度化には限界がある。
最近、新規の負極材料としてSiやSnを用いることが検討されている。Siは理論上リチウムをSi原子5個あたり最大22個まで、すなわち、Li22Siの組成になるまで吸蔵することが可能である。Siの理論容量は4199mAh/gであり、黒鉛の理論容量に比べて遥かに大きく、高エネルギー密度化が可能となる。
また、Siはリチウムと合金化するため、充放電時のデンドライトによる内部短絡も起こらない。しかし、Siを用いた負極の課題はリチウムとの合金化反応により、体積が最大で約4倍に膨張することである。
そのため、充放電サイクルを繰り返すとSi粒子内に大きな内部歪みが生じてクラックが発生し、粒子が微粉化して充放電サイクル特性を著しく低下させてしまう。充放電サイクル特性低下を抑制するために、Siを初期の時点で微粉化したり、Siと合金化可能な他元素と合金化させるなどの検討がなされている。
また、PまたはSbよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むSi、またはBを含むSiのいずれか一方と、Siと合金可能な金属であるMg、Ti、Zr、V、Mo、W、Mn、Fe、Cu,CoおよびNiよりなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合してメカニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの結晶質合金相を用いる非水電解液二次電池用負極材料が提案されている(特許文献1、2参照)。
この負極材料は、PまたはSbよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むSi、またはBを含むSiを非晶質化することで、Siとリチウムとの反応による体積膨張が抑制できる。また、非晶質化することで結晶子サイズが小さくなることでLiイオンの拡散経路となる結晶粒界が増加し、結晶子内部でのLiイオンの拡散距離も短くなり、加えて、結晶質合金相は負極の電子伝導性を向上する効果を果たし、負極の高率放電特性も向上する。
特開2004−335271号公報 特開2004−335272号公報
しかしながら、結晶質合金相の導電性の向上に加えて、Si自身もPまたはSbよりなる群から選ばれる少なくとも1種またはBをドープすることにより真性半導体から不純物半導体となり電気伝導性が向上するのに加えて、微粉化して非晶質となることでSiの活性が高くなっている。そのため、高温での連続充電時にLiを含むSi非晶質層と電解液との反応によるSi表面への有機被膜形成とそれによるLiの消費反応が起こり、長期信頼性が低下するものとなっていた。
本発明は上記課題を解決し、充放電サイクル性能、高率放電特性と高温での連続充電特性に優れたSiを負極に用いた非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、PまたはSbの少なくとも一種をドープしたN型半導体のSiと、BをドープしたP型半導体のSiと、Siと合金可能な金属と、を混合し、メカニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの結晶質合金相とを活物質として用い、前記結晶質合金相は、前記金属とSiとの質量比が10:90〜40:60である非水電解液二次電池用負極である。
この非水電解液二次電池用負極を非水電解液二次電池に用いることで、高温での連続充電特性での劣化を抑制することができ、長期保存性能が著しく向上する。
本発明は、Siを負極に用いた非水電解液二次電池において、優れた充放電サイクル性能と高率放電特性を低下させることなく、高温での連続充電特性も向上させることができ、長期間の様々な用途に対応することができる。
本発明の一実施の形態における非水電解液二次電池の断面図
本発明における第1の発明は、PまたはSbの少なくとも一種をドープしたN型半導体のSiと、BをドープしたP型半導体のSiと、Siと合金可能な金属と、を混合し、メカニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの結晶質合金相とを活物質として用いた非水電解液二次電池用負極である。
メカニカルアロイング法は、ボールミルを用いて原料混合物を、機械的に撹拌、混合し、原料混合物にエネルギーを与えて固相反応により合金粉末を作製する方法である。メカニカルアロイング法で用いるボールミルとしては、転動ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルがあげられる。
メカニカルアロイング法により得られるSi非晶質相は、広角X線回折法により得られるX線回折像において、Siの(111)面の回折ピークが存在しなくなっており、最大結晶子サイズが200nm以下になっている。
PまたはSbから少なくとも一種をSiにドープすることにより、電子が電荷キャリアとなるN型半導体になり、純Siの真性半導体に比べて電気伝導性が向上する。また、同様にBをドープすることにより、正孔が電荷キャリアとなるP型半導体になり、純Siの真性半導体に比べて電気伝導性が向上する。
このN型半導体とP型半導体からなるSiと、Siと合金可能な金属とを混合し、メカ
ニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの合金相を非水電解液二次電池用負極として用いることで、電極の微粉化によりサイクル劣化を抑制することができ、また、負極の電気伝導性の向上と反応面積が大きくなることで高率放電特性にも優れ、加えて高温連続充電時の負極での電解液の分解による被膜形成反応やガス発生反応が抑制される。
高温連続充電時の負極での反応は主にLiを含むSiの非晶質相と電解液との反応により起こっていて、N型半導体またはP型半導体の単一のSiを用いた場合は電気伝導性が向上したため、純Siに比べて電解液との反応が速く進む。そのため、有機被膜の厚みが急激に厚くなり、負極の抵抗成分が上昇するのに加えて、Siに含まれるLiも消費されて容量低下もおこり、両方の要因により劣化反応がおこっていると考えられる。
本発明のSiの非晶質相の電解液との反応の抑制については、N型半導体とP型半導体のSiが単に混合されているだけでなく、メカニカルアロイングの合成プロセスによりPN接合面がたくさん形成されていることが関係している。そのPN接合面ではダイオードの特徴であるブロックキングにより電流が流れないため、PN接合面以外でのSiと電解液との還元分解反応が継続して進行することが抑制できて、生成される有機被膜を薄くすることができると思われる。加えて、充電状態のSiに含まれるLiの消費も少なくなり、連続充電時の特性劣化が軽減される。ただし、PN接合面でも有機電解液に起因する有機被膜が非常に薄いものが形成されていて、有機被膜自身はPN接合面以外にできるものとは異なるものと思われる。
本発明においては、Siに、SbまたはPよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とB元素の原子をドープさせる方法としては、半導体分野において従来公知の母合金ドープ法、芯ドープ、ガスドープ法、熱拡散法、イオン注入法などを用いることができる。真性半導体の純SiへのP、Sb、Bへの添加量は、1cmあたりのSiに対して1×1017〜1×1020個ドープすることが好ましい。なお、ドープに用いる純Siは単結晶、多結晶、非晶質いずれでもよい。
前記Siと合金化可能な金属としては、Ti、Co、Ni、Cu、Mg、Zr、V、Mo、W、MnおよびFeを用いることができる。負極の電気伝導性の観点からは電子伝導性の高いSiとTiとの結晶質合金相が好ましく、組成式TiSiで表される金属間化合物相が特に好ましい。
合金化させる金属元素MとSiとの質量比(M/Si)が10:90〜40:60であることが好ましい。また、三元合金については、Siと合金化元素M1と合金化元素M2との質量比が10:90(M1とM2の質量比は任意)〜40:60(M1とM2の質量比は任意)であることが好ましい。
本発明における第2の発明は、第1の発明において、N型半導体のSiとP型半導体のSiの混合質量比を1:9〜9:1の範囲とした非水電解液二次電池用負極である。N型半導体のSiとP型半導体のSiの混合質量比は1:9〜9:1にすることが好ましい。N型半導体のSiとP型半導体のSiの混合比率において、どちらか一方が1割未満になると、PN接合面の数が減少するため、充電時の負極での電解液の反応抑制効果が低下する。
負極自体の電気伝導性の観点からは、N型半導体のSiとP型半導体のSiの比率のどちらが支配的になっても大きな差は見られない。
本発明における第3の発明は、第1または第2の発明に記載の非水電解液二次電池用負
極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極とをセパレータを介して対向配置した発電要素を非水電解液とともに外装体内に封入してなる非水電解液二次電池である。
PまたはSbの少なくとも一種をドープしたN型半導体のSiと、BをドープしたP型半導体のSiと、Siと合金可能な金属と、を混合し、メカニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの結晶質合金相とを非水電解液二次自電池用負極の活物質として用いることで、電極の微粉化によりサイクル劣化を抑制することができ、また、負極の電気伝導性の向上と反応面積が大きくなることで高率放電特性にも優れ、加えて高温連続充電時の負極での電解液の分解による被膜形成反応が抑制される。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施の形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1は本発明の実施の形態による非水電解液二次電池の一例であるコイン型リチウム二次電池の断面構造図である。
発電要素を収容するコイン型の電池外装体の容器は、耐食性に優れたステンレス鋼からなる正極缶1と、同様にステンレス鋼の負極缶2、及び正極缶1と負極缶2とを絶縁する機能に加え、物理的に発電要素を液蜜的に電池容器内に密閉するためのガスケット3を有している。
正極缶1と負極缶2との間に介在されるガスケット3には、ポリプロピレン(PP)樹脂からなるものを使用した。このガスケット3と正極缶1及び負極缶2とガスケット3との間にブチルゴムをトルエンで希釈した溶液を塗布し、トルエンを蒸発させることによりブチルゴム膜からなるシーラントとした。
正極4は、遷移金属酸化物を活物質に含む。負極5は本発明の負極材料である。正極4と負極5との間に配置されるセパレータ6には、図示していない非水電解液が充填されている。
本発明の負極5の材料は、PまたはSbの少なくとも一種をドープしたN型半導体のSiとBをドープしたP型半導体のSiとを混合したSiと、Siと合金可能な金属とを混合しメカニカルアロイング法により得られたSi非晶質相とSiの合金相を活物質として用い、導電剤とバインダーからなるものである。
負極5の導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラックからなる群より選択される少なくとも一種と、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛性炭素からなる群より選択される少なくとも一種を混合したものが好ましい。
導電性の点からはカーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラックなどの比表面積が大きいものが好ましいが、Si非晶質相とSiの合金相の充放電時の膨張収縮の緩和と集電性の確保のため、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛性炭素からなる群より選択される少なくとも一種と混合することが好ましい。導電材の配合量としては10〜30質量%以下の範囲である。
負極5の結着剤としては、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸などである。特に、架橋型でないポリアクリル酸が好ましく、その重量平均分子量は、300,000以上、3,000,000以下の範囲のものを用いると優れたバインダー性能が得られる。バインダーの配合量としては5〜30質量%以下の範囲が好ましい。
多孔質絶縁体としてのセパレータ6の材料としては、ポロプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフイド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック、無機のガラス繊維からなるガラスセパレータなどが使用できる。不織布、フイルムなどのセパレータを使用することも可能である。
非水電解液を構成する溶質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiAsF、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)などの単体あるいは複数成分を混合して使用することができる。
また、非水電解液を構成する溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、スルホラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、γ−ブチロラクトンなどの単体または複数成分を使用することができるが、これに限定されるものではない。
エチレンサルフィド、1,3プロパンサルトン、1,4ブタンスルトン、スルホレン、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカボネートを有機電解液に対して1〜10質量%添加して用いることができる。
正極4の材料には、電池反応に使用されるリチウムを含有する遷移金属酸化物、電池反応に使用されないリチウムを含有する遷移金属酸化物、リチウムを含有しない遷移金属酸化物を用いることができる。
電池反応に使用されるリチウムを含有する遷移金属酸化物としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1−X(0<X<1)、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、スピネル型のLi1+X Mn2−X(0≦X≦0.33)またはスピネル型のマンガンの一部を異種元素で置換したLi1+X Mn2−X−yAO(AはCr、Ni、Co、Fe、Al、B、0≦X≦0.33、0<y≦0.25)やLiFePOなどがあげられる。
電池反応に使用されないリチウムを含有する遷移金属酸化物としては、Li0.33 MnO、LiMnO2、Li1.33 Ti1.67、LiFeOなどがあげられる。リチウムを含有しない遷移金属酸化物としては、V、Nb、TiO、Mなどである。
正極4の導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラックからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。加えて、天然黒鉛、人造黒鉛などを混合して用いることができる。導電材の配合量としては、3〜10質量%の範囲である。正極4の結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、その配合量は5〜10質量%の範囲である。
コイン型形状の電池において負極5での非水電解液との反応性を抑制するより効果的な方法は以下の通りである。電池構成時に負極5に金属リチウムを圧接させて非水電解液を注入することで負極と金属リチウムが短絡した状態となり、負極5のSiにリチウムが短時間で急激に挿入される。
この方法を用いることにより短時間で充電することが可能となり、Liを含まない未反応のSiと電解液との酸化分解反応に伴う有機被膜形成を抑制することができる。この有
機被膜はLiを含有しているSiとの反応により形成される有機被膜とは成分が異なり、抵抗成分が高くなる。
4V級の正極4を組み合わせて、充電反応により正極4のリチウム含有遷移金属酸化物からのリチウムを負極5に挿入した電池に比べて、負極5にリチウムを圧着させる方法が初期の酸化分解反応を抑制することができる為、高温連続充電時における負極5での劣化を軽減することができる。
圧接するリチウムについては、負極5としてのペレットに直接リチウムを圧着する場合は、リチウムが圧着されている面を負極缶2側に配置することにより、負極5での電解液液の分解反応の進行が軽減される。また、圧接するリチウムを負極缶2上に圧着させておいて、負極5と圧接しても同様の効果が得られる。
詳細なメカニズムについては不明であるが、電池構成時に負極5に金属リチウムを圧接させて非水電解液を注入することで、負極5と金属リチウムが短絡した状態となる時に、リチウムが存在しない側に短時間ではあるが、製造工程において光が照射されることでPN接合面にわずかではあるが起電力が発生してPN接合面にも何らかの電流が流れて従来できる被膜とは異なった被膜が瞬時に形成されることで、負極5での連続充電時の抵抗成分の上昇による劣化を抑制しているのではと思われる。
上記構成の電池とすることで、優れた充放電サイクル性能と高率放電特性を有し、高温での連続充電時にも安定な非水電解液二次電池を提供することができる。
以下、本発明の好ましい実施例について説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例及び比較例で用いた厚さ1.4mm 、直径6.8mmの二次電池の断面図である。
正極4は、水酸化リチウムと二酸化マンガンを400℃で10時間焼成して得られたリチウム含有マンガン酸化物を活物質に、導電剤としてカーボンブラック及び結着剤としてフッ素樹脂粉末を85:7:8の重量比で混合したもの20mgを、直径4mm、厚さ0.7mmのペレット状に成型した後、250°C中で12時間乾燥したものである。得られたペレット状の正極材料は、正極缶1の内面にカーボン塗料を塗布することで形成された正極集電体7に接触するようにしてある。
負極5は、活物質としてTi−Si合金を、導電材としてカーボンブラックと天然黒鉛を、結着剤として重量平均分子量が300,000のポリアクリル酸を80:4:8:8の重量比で混合したもの8mgを、直径4mm、厚さ0.3mmのペレット状に成型した後、150°C中で12時間乾燥したものである。
活物質のTi−Si合金は、母合金ドープ法によりSiの1cmあたりP原子を1×1018個ドープしたSiウェハを、乳鉢で砕いて平均粒径1mmの粉末とした。また、母合金ドープ法によりSiの1cmあたりB原子を1×1018個ドープしたSiウェハを、乳鉢で砕いて平均粒径1mmの粉末とした。
このN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で10:90で混合した1.5Kgと、平均粒径0.5mmのTi粉末1kgと、1インチ径のステンレス鋼製ボール300kgとを、内容積95リットルのステンレス鋼製の振動ボールミル(商品コード:FV−3
0、中央加工機社製)の容器内に入れて蓋をした。
容器内を減圧し、Arガスを容器内が1気圧になるまで導入した。次いで、振動ボールミルの振幅を8mm、駆動モータの回転数を1200rpmにそれぞれ設定して、20時間メカニカルアロイングを行い、負極活物質として用いるTi37wt%−Si63wt%合金粉末を作製した。
波長1.5405ÅのCuKα線を線源として、広角X線回折装置(商品コード:RINT−2500、理学電機社製)を用いて、回折角2θ=10°〜80°の範囲における回折強度を測定した。Siの(111)面に帰属する回折角付近におけるピークの有無を調べたところ、ピークは存在しなかった。
また、得られた合金粉末をTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて観察したところ、その最大結晶子サイズは40nmであり、平均結晶子サイズは10nmであった。Siの非晶質相とTiとSiの合金相からなる活物質が得られた。
厚さ0.20mmのリチウム金属のシートをφ3.7mmに打ち抜き、この負極5のペレットの表面に圧着した。負極5のペレットのリチウム金属が圧着されている面は、負極缶2側になるように配置している。
電池組み立て時に、非水電解液を注入することによりリチウムと負極5が短絡した状態になり、電気化学的にリチウムが負極5の非晶質相のSi中に吸蔵される。この反応によりLi―Si合金を得た。また、正極4と負極5との間に配置されるセパレータ6には、ポリプロピレン製の不織布とポリプロピレン製のフイルムとポリプロピレン製の不織布の3枚からなるものを使用した。
プロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の体積比が3:2:5の混合溶媒に溶質として1molのLiN(CFSOを溶解させた非水電解液を用いた。この非水電解液を正極缶1、負極缶2とガスケット3からなる電池容器内のセパレータ6に体積で8μ1が充填されている。このようにして得られた非水電解液二次電池を、本実施例1に係る電池Aとした。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で20:80に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Bを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で40:60に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Cを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で50:50に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Dを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で60:40に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Eを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で80:20に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Fを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で90:10に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Gを作製した。
電池DのSi粉末へのP原子をSb原子に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Hを作製した。
電池DのSi粉末への1cmあたりP原子を1×1018個ドープを、P原子を1×1018個ドープしたSi粉末とSb原子を1×1018個ドープしたSi粉末の混合物に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である電池Iを作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で0:100に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である比較電池1を作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で5:95に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である比較電池2を作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で95:5に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である比較電池3を作製した。
電池AのN型半導体とP型半導体のSi粉末を質量比で100:0に代えて作製したTi−Si合金の活物質を用いた以外は同構成である比較電池4を作製した。
発明電池AからIと比較電池1から4について、高率放電特性、充放電サイクル特性、高温での連続充電特性を評価した。
高率放電特性は、20℃で0.005mAで2Vまで放電したときの値を放電初期容量100として、0.1mAで2Vまで放電したときの値を高率放電特性の容量とした。充放電サイクル特性は、充放電電圧範囲3.3V〜2.0V、0.1mAの定電流で充放電を行い、100サイクル目の放電容量の維持率を充放電サイクル特性とした。
高温での連続充電特性は、60℃の乾燥雰囲気で3.3Vの電圧を100日間連続印加した後、20℃で、0.1mAで2Vまで放電して得られた容量を放電維持率とした。放電維持率は、評価前の電池を20℃で、0.1mAの定電流で2Vまで放電して得られた値を100として算出した。その結果を(表1)に示す。
(表1)に示すように発明電池AからIと比較電池1から4について、高率放電特性、充放電サイクル特性において優れた性能が得られた。しかし、高温での連続充電特性において発明電池AからIでは優れた性能が得られたが、比較電池1から4については劣化率が大きくなった。
PまたSbを含むP型またはBを含むN型のどちらか一方からなるSiを用いた場合と、P型とN型のSiの混合比の比率でどちらか一方が一割より少なくなる場合において、高温連続充電時に負極での電解液の分解反応が進行することにより、電解液の分解により形成される厚い有機被膜の抵抗成分の上昇と、負極に含まれるリチウムの消失とにより、放電容量の低下が大きくなった。
一方、本発明のP型とN型のSiを混合して作製した負極を用いた電池は、メカニカルアロイング時に形成されたPN接合面の存在により、高温連続時でも、更なる有機電解液の分解反応が進行しなかったため、放電容量の低下は小さかった。
(実施例2)
電池Aの正極をVに、負極に圧着するリチウム金属を厚さ0.11mm、打ち抜きφ3.7mmに代えて用いた以外は同構成である電池Jを作製した。
電池Aの正極をLiCoOに代えて用い、負極に圧着するリチウム金属を無しにした以外は同構成である電池Kを作製した。
電池Aの正極をLiMnに代えて用い、負極に圧着するリチウム金属を無しにした以外は同構成である電池Lを作製した。
発明電池Aと発明電池J〜Lについて、高温での連続充電特性を評価した。発明電池J〜Kの高温での連続充電特性は、発明電池Jは60℃の乾燥雰囲気で3.7Vの電圧を、発明電池K、Lは60℃の乾燥雰囲気で4.0Vの電圧を100日間連続印加した後、20℃で、0.1mAの定電流で2.5Vまで放電して得られた容量を放電容量維持率とした。放電容量維持率は、評価前の電池を、それぞれ発明電池Jは3.7Vまで、発明電池K、Lは4.0Vの電圧まで0.1mAで充電した後、0.1mAの定電流で2.5Vまで放電したときの値を初期容量100として算出した。発明電池Aについては実施例1と同様の評価を行った。その結果を(表2)に示す。
(表2)に示すように負極に金属リチウムを圧着した発明電池AとJについて90%以上の高い容量維持率が得られた。一方、充電により正極活物質に含まれるリチウムを負極に移動させた発明電池KとLについては発明電池AとJにくらべて容量維持率が低下した。
電池構成時に負極に金属リチウムを圧接させて負極5にリチウムを挿入させて電池を充電する場合は、負極5と金属リチウムの圧接は電気化学的には外部短絡された状態になり、充電反応が短時間で進行するため、副反応が抑制されていると考えられる。
正極からリチウムを移動させて負極に挿入する場合には、副反応のリチウムが挿入されていないSi非晶質部分に酸化分解反応により有機被膜が部分的に形成されるため、高温連続充電時に若干劣化が起こったと思われる。
(実施例3)
電池Aの負極ペレットのリチウム金属が圧着されている面が、負極缶2に対して逆側のセパレータ側になるように配置している以外は同構成である電池Mを作製した。
電池Aの負極缶2にリチウム金属が圧着されており、負極ペレットがそのリチウム金属に圧接されていること以外は同構成である電池Nを作製した。
実施例1と同様に率放電特性、充放電サイクル特性、高温での連続充電特性を評価した。その結果を(表3)に示す。
(表3)に示すようにリチウム金属が負極缶側に配置されている発明電池AとNについては連続充電特性が発明電池Mに比べて向上した。
優れた充放電サイクル性能と高率放電特性を有し、高温での連続充電時にも安定な非水電解液二次電池を提供することで長期間の様々な用途に対応することができ、産業上の利用価値は非常に高い。
1 正極缶
2 負極缶
3 ガスケット
4 正極
5 負極
6 セパレータ
7 正極集電体

Claims (3)

  1. PまたはSbの少なくとも一種をドープしたN型半導体のSiと、BをドープしたP型半導体のSiと、Siと合金可能な金属と、を混合し、メカニカルアロイング法により得られたSiの非晶質相とSiの結晶質合金相とを活物質として用い、前記結晶質合金相は、前記金属とSiとの質量比が10:90〜40:60である非水電解液二次電池用負極。
  2. 前記N型半導体のSiと前記P型半導体のSiの混合質量比を1:9〜9:1の範囲とした請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
  3. 前記請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用負極と、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極とをセパレータを介して対向配置した発電要素を非水電解液とともに外装体内に封入してなる非水電解液二次電池。
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