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JP5254714B2 - 電動工具用マイコン搭載システム及び電池パック - Google Patents

電動工具用マイコン搭載システム及び電池パック Download PDF

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Description

本発明は、電動工具本体、電動工具用電池パック、又は電動工具用充電器に搭載される、AD変換器が内蔵されたマイコンを搭載したシステム、及び、このシステムが搭載された電動工具用電池パックに関する。
近年、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池などの各種二次電池を内蔵した電動工具用電池パックとして、高機能化・高効率化のためにマイコンを搭載し、このマイコンが、二次電池の電圧や温度等の各種情報に基づいて二次電池の充・放電を制御したり、二次電池の過充電や過放電等を検出したりするよう構成されたものが知られている。
電池パックに限らず、二次電池を充電するために電池パックへ充電用電力を供給する電動工具用充電器、或いは電池パックからの電力供給を受けて動作する電動工具本体においても、マイコンを搭載し、このマイコンによって各種制御を実現するよう構成されたものが広く用いられつつある。
電動工具用の電池パックや充電器、電動工具本体に搭載されるマイコンは、一般にAD変換器を内蔵している。そして、例えば電池パックにおいては、電池パック内の二次電池の電圧や温度等の各種情報(アナログ信号)がマイコンのADポートから内部のAD変換器に入力され、AD変換器によってデジタルデータに変換される。マイコンは、このデジタルデータに基づき、二次電池を含む電池パック内の各種の状態を判断し、これに基づいて、充・放電制御や過充電・過電圧検出などの各種制御を行う。
ところで、AD変換器を内蔵したマイコンにより各種制御がなされる電池パックや充電器等において、マイコン内のAD変換器自体の故障、或いは、マイコンのADポートにゴミが付着するなどの異常が生じて、入力されるアナログ信号が正しくデジタルデータに変換されなくなると(以下まとめて「AD異常」ともいう)、マイコンによる各種制御が正常に行われなくなるおそれがある。
例えば、マイコンが二次電池の電圧をAD変換器を介して取り込み、その電圧値に基づいて充電を制御する場合に、AD異常が生じると、例えば本来は二次電池の電圧が3Vまで充電されているにもかかわらずAD変換器にて2Vと誤変換されてしまうなど、マイコンが二次電池の電圧を正しく認識することができなくなる。そうなると、実際には満充電状態になっているにもかかわらずマイコンはそのことがわからないまま充電を継続させてしまい、二次電池が過充電状態となってしまうおそれがある。
そこで従来は、このようなAD異常に起因したマイコンの誤動作から二次電池を保護するために、マイコンとは別に、二次電池の電圧を検出して過充電・過放電の検出を行う保護用IC(セカンドプロテクトICなどと呼ばれる)を設ける方法が採られている(例えば、非特許文献1参照。)。
この保護用ICは、複数の電池セル(二次電池)が直列接続されてなる組電池に対し、電池セル毎に電圧を検出し、どれか1つの電池セルでも過充電或いは過放電が検出された場合には、保護動作を働かせて充電・放電を強制的に停止させるものである。なお、保護動作は、電池パックの正極端子と二次電池の正極(最も電位の高い電池セルの正極)との間に接続されているFETをオフしてこの通電経路を遮断することにより行われる。
そのため、このような保護用ICを設けることで、仮にマイコンにおいてAD異常が生じて二次電池の電圧が正常にAD変換されなくなったとしても、二次電池が過充電・過放電状態になった場合には保護用ICによって二次電池を保護することができる。
ミツミ電機株式会社、"リチウムイオン電池保護用(2セル直列用)Monolithic IC MM3112 Series"、応用回路図、[online]、[2008年7月1日検索]、インターネット<URL : http://www.mitsumi.co.jp/Catalog/pdf/battery#mm#3112.pdf>
しかしながら、非特許文献1に記載されている保護用ICを用いる保護方法だと、二次電池が過充電・過放電状態(或いはそれに近い状態)にならないとこれらを検出できないため、AD異常が生じたとき、一時的ではあっても二次電池が正常時の電圧範囲から外れてしまうことは避けられない。
つまり、保護用ICは、マイコンのAD異常を検出するものではなく、あくまでも、二次電池の実際の電圧をみて、例えば正常時よりも高い電圧になっている(つまり過充電状態或いはそれに近い状態になっている)場合に過充電状態と判断して保護動作を働かせる。そのため、マイコンにAD異常が生じて二次電池の電圧を正しくAD変換できなくなったとしても、すぐに保護動作が働くわけではなく、そのAD異常に起因して二次電池の充電電圧が次第に上昇していって過充電状態になったときにはじめて、保護用ICが保護動作を働かせることになる。そのため、一時的ではあっても二次電池の電圧が実際に正常範囲から外れてしまうのは不可避なのである。
また、マイコンとは別に保護用ICを設けることになるため、当然ながら、この保護用ICを設けるためのスペースが必要となって電池パックが大型化し、保護用IC自体のコストも含め、全体としてコストアップを招いてしまう。
電池パックに限らず、充電器や電動工具本体に搭載されたマイコンについても、AD異常が生じると、マイコンによる正常な制御ができなくなるおそれがある。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、マイコンとは別に保護用ICを設けることなく、マイコンがAD異常状態となった場合にこれを検出できるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明の電動工具用マイコン搭載システムは、AD変換器を内蔵し、このAD変換器によるAD変換対象のアナログ信号が入力されるADポートが少なくとも1つ設けられたマイコンと、このマイコンの動作用電源とは別に設けられ、予め決められた値の基準電圧を生成してADポートへ入力するする基準電圧生成手段と、基準電圧に対応したデジタルデータである基準データが予め記憶された基準データ記憶手段と、マイコンの内部に設けられ、ADポートに入力された基準電圧がAD変換器によりAD変換されて得られる診断用データと基準データ記憶手段に記憶されている基準データとを比較して、両者の差が予め決められた許容範囲内にない場合に、AD変換器によるAD変換結果が正常に得られないAD異常状態であると判定する第1の判定手段と、を備え、基準電圧生成手段は、マイコンに供給される予め決められた電圧の動作用電源を入力とし、この動作用電源から、該予め決められた電圧よりも低い基準電圧を生成することを特徴とするものである。
このように構成された電動工具用マイコン搭載システムでは、基準電圧に対応したデジタルデータ、即ち基準電圧がAD変換器によって正しくデジタルデータ化された場合の値が、例えば工場出荷時などで基準データとして予め基準データ記憶手段に記憶されている。そのため、AD変換器が正常であって、ADポートに入力されるアナログ信号が正しくデジタルデータに変換される正常状態(以下「AD正常状態」ともいう)であれば、基準電圧が実際にAD変換器にてAD変換されると、そのAD変換結果(診断用データ)は、基準データ記憶手段に記憶された基準データと一致するか、完全に一致はしなくとも両者の差は許容範囲内にあるはずである。これに対し、AD異常状態の場合は、基準電圧に対する正しいAD変換結果が得られないため、診断用データと基準データとの差が許容範囲を外れてしまう。第1の判定手段は、このように両者の差が許容範囲内にない場合に、AD異常状態と判定する。
従って、このように構成された本発明の電動工具用マイコン搭載システムによれば、基準電圧に対応した正しいデジタルデータ(基準データ)が予め記憶されており、マイコン自身が(詳しくはマイコン内の第1の判定手段が)その記憶されている基準データと実際のAD変換結果(診断用データ)との比較結果に基づいてAD異常状態か否かを判定するため、従来技術のようにマイコンとは別に保護用ICを設けることなく、AD異常状態となった場合にマイコン自身がこれを精度良く検出することができる。
特に、AD異常状態の原因がAD変換器自体の異常である場合にもその異常を確実に判定することができる。即ち、AD変換器自体が異常となる原因の1つとして例えばマイコンに供給される動作用電源の低下が考えられ、マイコンの動作用電源が低下するとマイコンに内蔵されているAD変換器が正しくAD変換できなくなる。これに対し、基準電圧を生成する基準電圧生成手段はマイコンの動作用電源とは別に設けられているものであるため、この基準電圧を用いてAD変換器自体の異常を正しく判定することができるのである。
また、仮にマイコンの動作用電源が上記予め決められた電圧から低下してしまっても、基準電圧生成手段が生成する基準電圧はもともとその予め決められた電圧より低い値に設定されているため、マイコンの動作用電源を利用して、且つその動作用電源の変動の影響を受けずに、基準電圧を生成することができる。
そして、基準電圧生成手段が上記のように構成された電動工具用マイコン搭載システムは、更に、次のように構成することができる。即ち、マイコンの動作用電源の電圧が予め決められた下限値以下となった場合にマイコンへリセット信号を出力するリセット手段を備え、マイコンは、このリセット手段からリセット信号が入力されたときはその動作が初期化されるよう構成されている。そして、基準電圧生成手段は、基準電圧として、上記下限値より小さい値であってAD変換器によるAD変換が可能な電圧を生成する。
このように構成された電動工具用マイコン搭載システムによれば、基準電圧生成手段は上記下限値より小さい基準電圧を生成するため、仮にマイコンの動作用電源が低下しても(即ち基準電圧生成手段に入力される入力電源電圧が低下しても)、基準電圧生成手段は正常に基準電圧を生成できる。なお、マイコンの動作用電源が上記下限値以下にまで低下してしまうと、その値によっては基準電圧生成手段が正しく基準電圧を生成できなくなるおそれもあるが、そもそも、マイコンの動作用電源が上記下限値以下になればマイコンは初期化され、マイコンによるAD異常状態か否かの判定も行われないため、実質的な影響はない。
更に、基準電圧生成手段の具体的構成として、例えば、ダイオードを備え、当該基準電圧生成手段に入力される電源によって該ダイオードに順方向バイアスを加えることにより生じる該ダイオードの順方向電圧を、基準電圧として生成するよう構成することもできる。ダイオードの順方向電圧を利用して基準電圧を生成することで、基準電圧生成手段の構成をより簡素化することができ、延いては電動工具用マイコン搭載システムの構成をより簡素化することができる。
本発明の電動工具用マイコン搭載システムは、第1の判定手段による判定機能に加えて、第2の判定手段による判定機能をも備えたものとして構成してもよい。即ち、AD変換対象のアナログ信号がAD変換器へ入力されるまでの信号経路上に設けられ、実行指令が入力されたときに該アナログ信号を予め決められた分圧比にて分圧することにより診断用アナログ信号を生成する信号分圧手段と、マイコンの内部に設けられ、信号分圧手段による分圧を実行させるための実行指令又は信号分圧手段による分圧を実行させないための停止指令を該信号分圧手段へ出力する指令出力手段とを備える。そして、マイコンの内部に設けられた第2の判定手段は、指令出力手段に実行指令を出力させて信号分圧手段による分圧を実行させ、該実行時の診断用アナログ信号をAD変換器によってAD変換させることにより診断用データを取得すると共に、指令出力手段に停止指令を出力させて信号分圧手段による分圧を停止させ、該停止時のアナログ信号をAD変換器によってAD変換させることにより比較用データを取得して、該取得した診断用データと比較用データとを比較し、両者が信号分圧手段における分圧比に対応した関係にない場合に、AD異常状態であると判定する。
このように第2の判定手段を備えた電動工具用マイコン搭載システムでは、第2の判定手段により、信号分圧手段による分圧が行われていないときのAD変換結果である比較用データと、信号分圧手段による分圧が行われているときのAD変換結果である診断用データとが比較される。AD正常状態であれば、両データの関係は、信号分圧手段における分圧比に対応した関係になるはずである。これに対し、AD異常状態の場合、両データの関係はその分圧比に対応した関係から外れてしまう。第2の判定手段は、このように両データの関係がその分圧比に対応した関係にない場合に、AD異常状態と判定する。
従って、このように構成された電動工具用マイコン搭載システムによれば、信号分圧手段を設け、分圧の実行時及び非実行時それぞれのAD変換結果に基づいてAD異常状態か否かの判定が可能であるため、簡易的な構成で精度良く判定を行うことができる。
そして、このように第2の判定手段を備えた電動工具用マイコン搭載システムは、より具体的には、次のように構成することができる。即ち、AD変換対象のアナログ信号がADポートへ入力されるまでの信号経路上には、該信号経路上に直列に接続された少なくとも1つの抵抗からなる信号入力回路が設けられている。そして、信号分圧手段は、信号入力回路からAD変換器への信号経路上に設けられ、実行指令が入力されたときに、信号入力回路に入力されたAD変換対象のアナログ信号を上記分圧比にて分圧することにより診断用アナログ信号を生成する。
このように構成された電動工具用マイコン搭載システムでは、信号分圧手段の前段に信号入力回路が設けられているため、信号分圧手段による分圧比は、信号分圧手段内部の構成(分圧に寄与する構成)及び信号入力回路を構成する抵抗の抵抗値によって決定される。そのため、このように信号入力回路を備えたシステムにおいては、その信号入力回路を構成する抵抗を利用して所望の分圧比を実現することができる。
そして、上記の信号分圧手段は、より具体的には、一端がADポートに電気的に接続された分圧用抵抗と、停止指令が入力されたときには分圧用抵抗の他端側を電気的にオープン状態とし、実行指令が入力されたときには分圧用抵抗の他端側を一端側よりも電位の低い部位へ電気的に接続することにより該分圧用抵抗に電流を流して前記分圧を行う分圧制御手段とを備えたものとして構成することができる。このように構成することで、信号分圧手段を簡易的に構成することが可能となる。
この場合更に、分圧制御手段は、分圧用抵抗の他端側と接地電位との間を電気的に導通・遮断するスイッチ手段を備え、停止指令が入力されたときには該スイッチ手段をオフして分圧用抵抗の他端側と接地電位との間を遮断し、実行指令が入力されたときには該スイッチ手段をオンして分圧用抵抗の他端側を接地するものとして構成するとよい。分圧制御手段をこのように構成することで、分圧するかしないかの切り替えを、単にスイッチ手段のオン・オフにより実現できるため、信号分圧手段をより簡易的に構成することができ、延いては電動工具用マイコン搭載システム全体もより簡素化される。
そして、上記のように構成された本発明の電動工具用マイコン搭載システムは、少なくとも1つの電池セルを有する電動工具用電池パックに搭載することで、その少なくとも1つの電池セルと電動工具用マイコン搭載システムを備えた電動工具用電池パックとしての適用が可能である。より具体的には、少なくとも1つの電池セルと、本発明の電動工具用マイコン搭載システムとを備え、AD変換対象のアナログ信号として、電池セルのうち少なくとも1つに対して該電池セルの電圧を直接又は間接的に示す電池電圧信号がADポートへ入力されるよう構成され、マイコンが、電池電圧信号のAD変換器によるAD変換結果に基づいてその電池セルの状態を監視する電動工具用電池パックとして構成することができる。
このように構成された電動工具用電池パックによれば、仮にAD異常状態が生じて電池セルの電圧が誤った値にAD変換されてしまうようになっても、そのAD異常状態は判定手段によって確実に判定されるため、マイコンがその誤った値(電池セルの電圧)に基づいて電池セルの状態を監視し続けてしまうのを防止することが可能となる。そのため、マイコンの異常(ここではAD異常状態)に対する信頼性の高い電動工具用電池パックの提供が可能となる。
また、第2の判定手段を備えた電動工具用マイコン搭載システムと少なくとも1つの電池セルとを備えた電動工具用電池パックの場合は、より具体的には次のように構成することもできる。即ち、電池セルのうち少なくとも1つには、一端が該電池セルの正極に接続された正極側抵抗と、一端が該電池セルの負極に接続された負極側抵抗と、該各抵抗の他端間に接続されてマイコンからの実行指令及び停止指令に応じて該他端間を導通・遮断するスイッチ手段と、を有する放電用回路が接続されている。マイコンは、スイッチ手段により他端間が遮断されている際に正極側抵抗の他端側からADポート側へ出力される電圧の、AD変換器によるAD変換結果に基づいて、該電池セルの電圧を監視するよう構成されている。また、放電用回路は、信号分圧手段として機能し、停止指令が入力されたときはスイッチ手段をオフして該電池セルの正極の電圧を正極側抵抗を介してそのままADポート側へ出力させ、実行指令が入力されたときは、スイッチ手段をオンして、当該放電用回路を構成する各抵抗による分圧比にて該電池セルの正極の電圧を分圧することにより診断用アナログ信号を生成するよう構成されている。
また、第2の判定手段を備えた電動工具用マイコン搭載システムと少なくとも1つの電池セルとを備えた電動工具用電池パックは、次のように構成することもできる。即ち、電池セルのうち少なくとも1つには、一端が該電池セルの正極に接続された正極側抵抗と、一端が該電池セルの負極に接続された負極側抵抗と、該各抵抗の他端間に接続されてマイコンからの実行指令及び停止指令に応じて該他端間を導通・遮断するスイッチ手段と、該各抵抗の他端間においてスイッチ手段と直列に設けられた分圧用抵抗と、を有する放電用回路と、各抵抗の他端間の電圧を該電池セルの電圧として検出してADポート側へ出力する電圧検出手段と、が接続されている。マイコンは、スイッチ手段により他端間が遮断されている際に電圧検出手段からADポート側へ出力される電圧の、AD変換器によるAD変換結果に基づいて、該電池セルの電圧を監視するよう構成されている。また、放電用回路は、信号分圧手段として機能し、停止指令が入力されたときはスイッチ手段をオフして該電池セルの電圧がそのまま電圧検出手段へ入力されるようにし、実行指令が入力されたときは、スイッチ手段をオンして、当該放電用回路を構成する各抵抗による分圧比にて該電池セルの電圧を分圧することにより、該分圧された電圧に対する電圧検出手段からの出力が診断用アナログ信号として生成されるよう構成されている。
上記いずれの構成においても、電動工具用電池パックにもともと備えられている放電用回路を、信号分圧手段としても利用する。そのため、第2の判定手段を備えた電動工具用マイコン搭載システムが適用される電動工具用電池パックが、放電用回路を備えたものであれば、その放電用回路を利用してその電動工具用マイコン搭載システムの一部を構成できるため、より効果的である。
そして、上述した本発明の電動工具用電池パックは、内部の電池セルとして種々のものを用いることができ、例えば、二次電池を用いた電動工具用電池パック、即ち繰り返し充電可能な電動工具用電池パックとして構成できる。
この場合、更に、二次電池を充電するための充電用電源が入力される充電用電源入力端子と、充電用電源入力端子から二次電池に至る充電用電源供給経路上に設けられ、マイコンからの遮断指令により該充電用電源供給経路を遮断可能な遮断手段とを備え、マイコンは、判定手段によりAD異常状態と判定されたとき、遮断指令を出力することにより遮断手段に充電用電源供給経路を遮断させるものとして構成するとよい。
このように構成された電動工具用電池パックによれば、例えば二次電池への充電が行われている際にAD異常状態が発生した場合、マイコンがその発生を判定して充電用電源供給経路を遮断する。また例えば、既にAD異常状態となっているときに二次電池への充電が行われようとした場合も、マイコンがそのAD異常状態を判定して充電用電源供給経路を遮断し、充電を行わせないようにすることができる。そのため、二次電池への充電の際にAD異常状態が発生しても、そのAD異常状態に起因して生じる問題(例えば過充電)を未然に防ぐことが可能となり、より信頼性の高い電動工具用電池パックの提供が可能となる。
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された実施形態の充電システムを構成する電動工具用の充電器及び電池パックを示す斜視図であり、図2は、この充電システム及び電動工具本体のブロック図である。
本実施形態の充電システム1は、電動工具本体100(図2参照)の電力源として用いられる電池パック20に対する充電を行うための、充電器10及び電池パック20からなるシステムであり、電池パック20内の二次電池を充電器10にて充電するよう構成されたものである。
充電器10は、図示しない車両のシガーソケットからのDC電源2(図2参照)から所定電圧の充電用直流電源を生成するものであり、シガーソケットに接続して車両のバッテリからのDC電源2を当該充電器10内へ入力するためのシガープラグ15を備えている。このシガープラグ15を車両のシガーソケットに挿入すると、シガーソケットの正極端子及び負極端子(図示略)が、それぞれ、シガープラグ15のプラグ側正極端子31及びプラグ側負極端子32(図2参照)に接続され、これにより、DC電源2が電源コード14を介して充電器10の内部へ入力されるようになる。
充電器10は、その上面の一端側に電池パック20が装着される充電側装着部12が形成されており、この充電側装着部12における所定の位置(充電側装着部12の内部)に充電側ターミナル11が設けられている。この充電側ターミナル11は、電池パック20へ充電用直流電源を供給するための充電側正極端子8と充電側負極端子9(いずれも図2参照)、さらに電池パック20との間で各種信号の送受信を行うための一又は複数の充電側信号端子(図示略)を備えた構成となっている。また、充電器10には、当該充電器10の動作状態や電池パック20の充電状態等を外部へ表示するための、複数のLED等を備えた表示部13が設けられている。
電池パック20は、その一側面に、充電器10の充電側装着部12に装着される電池側装着部22が形成されており、この電池側装着部22における所定の位置に、充電側ターミナル11と電気的に接続される電池側ターミナル21が設けられている。この電池側ターミナル21は、充電器10から供給される充電用直流電源が入力される電池側正極端子28と電池側負極端子29、さらに充電器10における充電側信号端子と接続される電池側信号端子19が設けられている。
電池パック20の電池側装着部22を充電器10の充電側装着部12に装着すると、双方のターミナル11,21が電気的に接続される。これにより、充電器10による、電池パック20内の組電池23(図2参照)の充電が可能な状態となる。
なお、電動工具等の電力供給対象に対して電池パック20の電力を供給する際は、その対象となる電動工具等における所定の装着部に電池側装着部22が装着される。これにより、電池側ターミナル21を介して、電池パック20の電力(組電池23の電力)が電動工具等へ供給されることとなる。
次に、充電システム1を構成する充電器10と電池パック20、及び電池パック20の電力により動作する電動工具本体100の内部構成について、図2のブロック図に基づいて具体的に説明する。
充電器10は、図2に示すように、外部から入力されるDC電源2を、電池パック20内の組電池23を充電するための所定電圧の充電用直流電源に変換して出力するコンバータ3と、このコンバータ3を含む、充電器10の動作全体を制御するマイコン6と、コンバータ3を構成する電力変換回路17内のスイッチングFET(図示略)をオン・オフ制御するスイッチングIC4と、マイコン6からの充電制御信号に従ってスイッチングIC4の動作を制御するスイッチングIC制御回路5とを備えている。また、図示は省略したものの、充電器10内の各種回路を動作させるための制御用電源を生成する定電圧電源回路を備えており、マイコン6もこの制御用電源により動作する。
コンバータ3は、入力されるDC電源2の電圧変動を抑制して平滑化する入力平滑回路16と、DC電源2の電力を所定の交流電力に変換(変圧)する電力変換回路17と、この電力変換回路17による変換後の交流電力を直流に整流・平滑化する出力平滑回路18とを備えている。電力変換回路17は、トランス及びこのトランスの一次巻線の一端に接続されたスイッチングFETを備え、DC電源2が入力平滑回路16を介してトランスの一次巻線側に入力されるよう構成されている。そして、スイッチングIC4からのオン・オフ信号によってスイッチングFETがオン・オフすることにより、トランスの一次巻線に断続的な電流(交流の一種)が流れ、これにより、トランスの二次巻線側に交流電力が発生する。この交流電力が出力平滑回路18にて整流・平滑化されることにより、充電用直流電源が生成され、電池パック20へ出力される。
マイコン6は、スイッチングIC制御回路5を介してスイッチングIC4によるスイッチングFETのオン・オフを制御し、延いては電池パック20への充電用直流電源の生成・出力を制御する。
電池パック20は、図2に示すように、組電池23と、充電器10によるこの組電池23への充電の制御を含む、当該電池パック20内における各種制御を行うマイコン25とを備えている。
組電池23は、複数の電池セルBa,Bb,・・・,Bnが直列接続されて構成されている。各電池セルは、本実施形態ではいずれもリチウムイオン二次電池である。なお、組電池23を構成する各電池セルがリチウムイオン二次電池であることはあくまでも一例であり、他の各種二次電池セルからなる組電池であってもよい。
また、電池パック20は、組電池23の電圧、及びこの組電池23を構成する各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの電圧を各々検出するためのセル電圧検出回路24を備えている。このセル電圧検出回路24により検出された各電池セルの電圧は、それぞれ、マイコン25のADポート45,46,・・・,47(図3参照)に入力され、マイコン25に内蔵されたAD変換器42(図3参照)によりAD変換される。マイコン25は、このAD変換結果に基づいて各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの状態を監視する。
また、本実施形態の電池パック20には、マイコン25のADポートの診断(本例では各電池セルBa,Bb,・・・,Bnのうち電位の最も低い電池セルBaの電圧が入力されるADポート45の診断)、即ち、このADポート45に入力される電圧に対するデジタルデータがAD変換器42によって正しく得られるAD正常状態か或いは正しく得られないAD異常状態かをマイコン25自身が診断(以下「ADポート自己診断」という)するために用いられる、ADポート自己診断用回路26が設けられている。
更に、本実施形態の電池パック20には、マイコン25内のAD変換器42が正常に動作するAD正常状態か或いは正常に動作しないAD異常状態かをマイコン25自身が診断(以下「AD変換器自己診断」という)する際に用いられる基準電圧Vrefを生成する、三端子レギュレータ55が設けられている。
ADポート自己診断用回路26の構成を含め、マイコン25が実行するADポート自己診断及びAD変換器自己診断の詳細については後述する。
更に、本実施形態の電池パック20には、充電用直流電源が入力される電池側正極端子28から組電池23の正極(最も電位の高い電池セルBnの正極)に至る充電用電源供給経路に、この充電用電源供給経路を遮断するための保護回路27が設けられている。この保護回路27は、マイコン25から入力される許可信号又は停止信号に従って動作する。
なお、本実施形態の電池パック20は、充電器10から充電用直流電源が入力される電池側正極端子28が、電動工具等の電力供給対象に電力を供給する際の電源出力用正極端子としても共用される構成にされている。但し、この構成はあくまでも一例であり、電動工具等に電力を供給する際の正極端子を、充電のための電池側正極端子28とは別に設けるようにしてもよい。
電動工具本体100は、電池パック20が装着されることによってこの電池パック20から電力供給を受けて動作するものであり、当該電動工具本体100内の制御全体を統括するマイコン101と、図示しない工具ビットを回転駆動させるためのモータ103と、マイコン101からの指令に基づいてモータ103を駆動する駆動回路102と、を備えている。
次に、本実施形態の充電システム1を構成する電池パック20のより具体的な構成について、図3を用いて説明する。
セル電圧検出回路24は、各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎にその電圧を検出してマイコン25側へ出力するための回路によって構成されている。詳しくは、最も電位の低い電池セルBaに対しては、この電池セルBaの電圧(即ちこの電池セルBaの正極の電位)を分圧して、その分圧後の電圧を当該電池セルBaの電圧を示す電池電圧信号としてマイコン25のADポート45へ出力するための、抵抗R1及び抵抗R2からなる分圧回路(本発明の信号入力回路に相当)が設けられている。なお、各抵抗R1,R2の抵抗値は例えば数MΩである。
また、この電池セルBaの正極側に直列接続された他の電池セルBb,・・・,Bnに対しては、それぞれ、差動増幅器34,・・・,35が設けられている。そして、各差動増幅器34,・・・,35から出力される電圧が、対応する各電池セルBb,・・・,Bnの電圧を示す電池電圧信号として、それぞれ、マイコン25における対応する各ADポート46,・・・,47に入力される。なお、図示は省略したものの、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの正極と負極の間、及び、最も電位の高い電池セルBnの正極と最も電位の低い電池セルBaの負極の間には、ノイズ低減用のコンデンサが設けられている。
また、図示は省略したものの、電池パック20には、当該電池パック20内の各種回路を動作させるための一定電圧(本例では5V)の制御用電源Vccを生成する定電圧電源回路が設けられており、マイコン25もこの制御用電源Vccにより動作する。
三端子レギュレータ55は、本発明の基準電圧生成手段に相当するものであり、マイコン25の動作用電源とは別に独立して設けられた電源である。この三端子レギュレータ55は、マイコン25の動作用電源でもある制御用電源Vccを入力として、この制御用電源Vccから、AD変換器自己診断の際に用いられる基準電圧Vrefを生成する。本実施形態では基準電圧Vrefとして2Vの定電圧を生成する。そのため、仮に何らかの異常で制御用電源Vccが低下してしまっても、三端子レギュレータ55が2Vの基準電圧を生成するために必要な最低限度の範囲(例えば2.5V以上)にある限り、三端子レギュレータ55は安定した2Vの基準電圧を生成することができる。
そして、三端子レギュレータ55にて生成された基準電圧Vrefは、マイコン25が備えるADポートの1つである基準電圧入力ポート50に入力され、マルチプレクサ43を介してAD変換器42に入力される。
マイコン25は、ハードウェア的には、CPU36,ROM37,RAM38,及びEEPROM39等からなる主制御部41と、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換するAD変換器42と、主制御部41からの切替指令に基づき、各ADポート45,46,・・・,47に入力された各電池電圧信号又は基準電圧入力ポート50に入力された基準電圧Vrefのうちいずれか1つを選択的にAD変換器42へ入力させるためのマルチプレクサ(MPX)43とを備えた、一般的な構成となっている。
このような構成により、セル電圧検出回路24から各ADポート45,46,・・・,47に入力され、マルチプレクサ43を介して順次AD変換器42に入力される各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの電圧(電池電圧信号)は、AD変換器42により順次AD変換されて、そのAD変換後のデジタルデータ(以下「電池電圧データ」ともいう)が主制御部41に入力される。
主制御部41は、このAD変換後の電池電圧データに基づいて、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの状態を監視する。具体的な監視内容は、過充電状態になっていないか、或いは過放電状態になっていないか、更には、上述したADポート自己診断などがある。
また、電池パック20には、マイコン25をリセット(初期化)するためのリセットIC56が備えられている。このリセットIC56は、本発明のリセット手段に相当するものであり、制御用電源Vccを入力とし、この制御用電源Vccがリセット電圧(本例では3V。本発明の下限値に相当。)以下となった場合にマイコン25へリセット信号を出力する。このリセットIC56からのリセット信号は、マイコン25のリセット信号入力ポート51を介して主制御部41へ入力される。つまり、リセットIC56は、マイコン25の動作用電源である制御用電源Vccを監視し、その値がマイコン25の正常な動作を妨げる値(3V以下)にまで低下した場合にはマイコン25をリセットするように構成されている。
そのため、三端子レギュレータ55は、少なくともマイコン25が正常に動作している状態(即ち制御用電源Vccがリセット電圧3Vより大きい状態)では、基準電圧2Vを安定して生成することができる。
ここで、本実施形態の電池パック20が有する特徴的機能である、ADポート自己診断機能及びAD変換器自己診断機能について、それぞれ説明する。
まず、ADポート自己診断用回路26を利用して行うADポート自己診断機能について説明する。ADポート45が正常な状態、即ち、ADポート45に入力される電池電圧信号に対する電池電圧データがAD変換器42によって正しく得られるAD正常状態ならば、電池電圧データとして、電池セルBaの電圧が抵抗R1,R2で分圧された値に対応したデジタルデータが正しく得られる。一方、図3に例示するように、例えばADポート45にゴミ等(ゴミ、水などの異物)が付着すると、ADポート45とグランドとの間に抵抗が付加されたことと等価な状態となるため、ADポート45に入力される電池電圧信号は、電池セルBaの電圧が抵抗R1,R2で分圧された値とは異なるものになってしまう。そのため、その値がAD変換器42によりAD変換されて得られる電池電圧データも、電池セルBaの電圧を示す正しいデータとは異なるものとなってしまう。
そこで本実施形態のマイコン25は、このようなADポート45の異常等に起因したAD異常状態を検出できるよう、ADポート自己診断機能を備えている。電池パック20には、ADポート自己診断を行う際に用いられる、本発明の信号分圧手段としてのADポート自己診断用回路26が設けられている。このADポート自己診断用回路26は、ADポート自己診断の際に、最も電位の低い電池セルBaに対応したADポート45に入力される、その最も電位の低い電池セルBaの電圧を示す電池電圧信号(即ちセル電圧検出回路24を構成する抵抗R1と抵抗R2の接続点の電圧)をさらに分圧するための回路であり、分圧用抵抗R3と、分圧スイッチ33(本発明の分圧制御手段に相当)とを備えている。
分圧用抵抗R3は、一端がADポート45に接続され、他端が分圧スイッチ33の一端に接続されている。分圧スイッチ33の他端はグランドラインに接続(接地)されている。そのため、分圧スイッチ33がオフされているときは、分圧用抵抗R3の他端が電気的にオープン状態となり、電池セルBaの電圧は、セル電圧検出回路24内の抵抗R1、R2により分圧された値の電池電圧信号としてADポート45へ入力される。一方、分圧スイッチ33がオンされているときは、分圧用抵抗R3の他端が接地される。そのため、電池セルBaの電圧は、セル電圧検出回路24内の抵抗R1,R2および分圧用抵抗R3により分圧された値の電池電圧信号としてADポート45へ入力される。
分圧スイッチ33のオン・オフは、マイコン25の主制御部41から自己診断指令出力ポート48を介して出力される自己診断指令により制御される。即ち、主制御部41は、ADポート自己診断を行わない通常時は、自己診断指令として停止指令を出力し、分圧スイッチ33をオフさせる。一方、ADポート自己診断を実行する際には、自己診断指令として実行指令を出力し、分圧スイッチ33をオンさせる。
このような構成において、マイコン25によるADポート自己診断は、次のような手順で行われる。まず、マイコン25が自己診断指令出力ポート48から停止指令を出力して分圧スイッチ33をオフさせ、そのときADポート45に入力される電池電圧信号であるオフ時電圧VadoffをAD変換器42にてAD変換させることにより、現在のオフ時電圧Vadoffに対応した電池電圧データであるオフ時データDoffを得る。このオフ時データDoffは本発明の比較用データに相当するものである。また、電池セルBaの電圧をVbとすると、オフ時電圧Vadoffの電圧は次式(1)で表せる。
Vadoff=R2・Vb/(R1+R2) …(1)
マイコン25は、オフ時電圧Vadoffに対するAD変換結果であるオフ時データDoffを得ると、続いて、自己診断指令出力ポート48から実行指令を出力することにより、分圧スイッチ33をオンさせる。この分圧スイッチ33のオン時にADポート45に入力される電池電圧信号であるオン時電圧Vadonは、本発明の診断用アナログ信号に相当するものである。そして、その電池電圧信号をAD変換器42にてAD変換させることにより、オン時データDonを得る。このオン時データDonは本発明の診断用データに相当するものである。また、オン時電圧Vadonは、次式(2)で表せる。
Vadon={R2・R3/(R1・R2+R2・R3+R3・R1)}・Vb …(2)
上記式(1)、(2)により、Vbを消去すると、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonとの間の関係は、次式(3)で表せる。
Vadon={R3(R1+R2)/(R1・R2+R2・R3+R3・R1)}
・Vadoff …(3)
なお、上記式(3)は、電池セルBaの電圧を分圧してADポート45へ入力するための各抵抗R1、R2、分圧用抵抗R3によって定まるものであり、この式(3)の関係が、本発明の「分圧比に対応した関係」に相当するものである。
従って、ADポート45に入力される電池電圧信号に対するデジタルデータがAD変換器42によって正しく得られるAD正常状態であれば、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonとの間は上記式(3)の関係が成立するはずであり、故に、オフ時データDoffとオン時データDonとの間も、上記式(3)の関係(或いはこれに対応した関係)となる。一方、図3に例示するようにADポート45にゴミ等が付着すると、既述の通りグランドとの間に抵抗が付加されたことと等価な状態になることから、上記式(3)は成立しなくなる。
そこでマイコン25は、AD変換器42によるAD変換結果に基づいて上記式(3)が成立するか否かを判断し、成立するならばAD正常状態と判定し、成立しないならばAD異常状態と判定する。そして、AD異常状態と判定した場合は、許可・停止信号出力ポート49から保護回路27へ停止信号を出力することにより、電池側正極端子28から組電池23の正極へ至る経路を遮断する。
保護回路27は、電池側正極端子28から組電池23の正極へ至る充電用電源供給経路に設けられた遮断スイッチ30(本発明の遮断手段に相当)を備えている。マイコン25は、通常は、保護回路27へ許可信号を出力して遮断スイッチ30をオンさせることにより、充電用電源供給経路を導通させ、組電池23への充電或いは組電池23から外部への電源出力が可能な状態とする。
一方、マイコン25は、既述の通り各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの電圧(電池電圧信号)をAD変換器42を介して取り込むことにより、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの状態を監視している。そして、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnのうちいずれか1つでも過充電状態或いは過放電状態といった異常状態を検出した場合は、保護回路27へ停止信号を出力して遮断スイッチ30をオフさせることにより、充電用電源供給経路を遮断して、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnを保護するようにしている。
更に、本実施形態では、マイコン25は、過充電や過放電などの異常状態に加え、上述したADポート自己診断によってAD異常状態を検出した場合にも、保護回路27へ禁止信号を出力して遮断スイッチ30をオフさせ、充電用電源供給経路を遮断する。
なお、保護回路27を構成する遮断スイッチ30及びADポート自己診断用回路26を構成する分圧スイッチ33は、これら各スイッチとしての機能を実現できる限りその具体的構成は適宜考えられるが、本実施形態では、いずれもMOSFETにより構成されている。
上述したように、本実施形態では、マイコン25がADポート自己診断を行い、上記式(3)が成立するか否かによってAD正常状態かAD異常状態かを判定するようにしているが、マイコン25における上記式(3)の成立・不成立の判断処理が容易に行えるよう、分圧用抵抗R3として次式(4)を満たす抵抗値のものを用いている。
R3=R1・R2/(R1+R2) …(4)
分圧用抵抗R3の抵抗値を上記式(4)のように選べば、上記式(3)は、次式(5)のように表すことができる。
Vadoff=2・Vadon …(5)
つまり、マイコン25による上記式(3)が成立するか否かの判断は、本実施形態では実際には上記式(5)が成立するか否かを判断することにより行われる。そのため、マイコン25は上記判断処理を容易に行うことができる。
続いて、三端子レギュレータ55で生成される基準電圧Vrefを用いて行うAD変換器自己診断機能について説明する。本実施形態の電池パック20では、マイコン25に供給される制御用電源Vccは、その内部においてAD変換器42にも供給され、AD変換器42はこの制御用電源Vccを元にAD変換を行う。そのため、マイコン25に供給される制御用電源Vccが正常時の5Vから低下すると、当然ながらAD変換器42の動作電源も低下する。そのため、その低下の度合いによっては、マイコン25はまだ動作可能であるもののAD変換器42によるAD変換が正常に行われなくなる(正常なデジタルデータが得られなくなる)おそれがある。
そこで本実施形態のマイコン25は、三端子レギュレータ55が生成する、制御用電圧Vccの変動に依存しない一定の基準電圧Vrefを用いて、AD変換器42により正しいデジタルデータが得られるAD正常状態か或いは正しいデジタルデータが得られないAD異常状態かを診断する。その詳細な診断方法については、図4を用いて後述する。
次に、上記のように構成された本実施形態の電池パック20における、マイコン25により実行される電池パック充電制御処理について、図4に基づいて説明する。
図4は、マイコン25により実行される電池パック充電制御処理を示すフローチャートである。電池パック20内のマイコン25は、その内部のROM37内に電池パック充電制御処理プログラムが格納されており、組電池23へ充電するための所定の条件が成立すると、CPU36がROM37からこの電池パック充電制御処理プログラムを読み出し、このプログラムに従って組電池23への充電を開始させる。
この処理が開始されると、マイコン25は、まず、充電を開始するための各種データの初期処理(データの初期化等)を実行する(S110)。そして、EEPROM39内に設定されている充電用フラグを参照し(S120)、充電許可フラグ又は充電禁止フラグのどちらが設定されているかを判断する(S130)。
ここで、充電禁止フラグが設定されている場合は、既に何らかの異常(例えば過充電・過放電・AD異常状態)が発生・検出された状態にあるということなので、あらためて充電禁止フラグの設定を行い(S230)、充電禁止処理を行う(S240)。この充電禁止処理は、具体的には、許可・停止信号出力ポート49から停止信号を出力して保護回路27内の遮断スイッチ30をオフさせ、充電用電源供給経路を遮断するものである。
一方、充電許可フラグが設定されている場合は、組電池23への充電を開始することになるが、すぐに充電を開始するのではなく、充電開始前にAD変換器自己診断及びADポート自己診断処理を行う。
即ち、まず三端子レギュレータ55から基準電圧入力ポート50へ入力される基準電圧VrefをAD変換器42にてAD変換させて、基準電圧実測データDrefを測定する(S140)。この基準電圧実測データDrefは本発明の診断用データに相当するものである。
また、マイコン25のEEPROM39には、2Vの基準電圧Vrefに対する正しいデジタルデータが、基準データDmemとして予め記憶されている。即ち、本実施形態では、電池パック20の製造工程中、AD変換器42が正常(制御用電圧Vccが正常の5V)な状態のときに、三端子レギュレータ55からの基準電圧Vrefを実際にAD変換器42にてAD変換させ、そのAD変換結果を基準データDmemとしてEEPROM39に記憶させている。なお、基準データDmemをこのようにEEPROM39に記憶させるのはあくまでも一例であり、例えば、ROM37に基準電圧Vrefに対する基準データ(設計上の理論値)を予め書き込んでおくようにしてもよい。
このように、2Vの基準電圧Vrefに対する正しい基準データDmemが予めEEPROM39に記憶されているため、S140にて基準電圧VrefをAD変換器42にて実際にAD変換させて基準電圧実測データDrefを得た後は、そのAD変換により得られた基準電圧実測データDrefがEEPROM39内の基準データDmemと一致するか否かを判断することにより、AD正常状態であるかAD異常状態であるかを判定する(S150)。
そして、基準電圧実測データDrefが基準データDmemと一致せずにAD異常状態と判定された場合は(S150:NO)、S230、S240の処理により、充電を停止させる。一方、基準電圧実測データDrefが基準データDmemと一致したことによりAD正常状態と判定された場合は(S150:YES)、続いてADポート自己診断の実行に入る。
即ち、まず自己診断指令出力ポート48からADポート自己診断用回路26へ停止指令を出力して分圧スイッチ33をオフさせ(S160)、そのときにADポート45へ入力される電池セルBaの電池電圧信号(オフ時電圧Vadoff)を測定する(S170)。即ち、このオフ時電圧VadoffをAD変換器42にてAD変換させて、オフ時データDoffを得る。次に、自己診断指令出力ポート48からADポート自己診断用回路26へ実行指令を出力して分圧スイッチ33をオンさせ(S180)、そのときにADポート45へ入力される電池セルBaの電池電圧信号(オン時電圧Vadon)を測定する(S190)。即ち、このオン時電圧VadonをAD変換器42にてAD変換させて、オン時データDonを得る。
そして、得られたオフ時データDoffとオン時データDonとに基づいて、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonが上記式(3)の関係を満たすか否かを判断することにより、ADポート45が正常であるか否か、即ちAD正常状態かAD異常状態かを判定する(S200)。なお、図4のS200におけるαは、上記式(3)の右辺におけるVadoffの係数であり、本実施形態では実際にはα=1/2である(式(5)参照)。
そして、上記式(3)が成立してAD正常状態と判定したときは、EEPROM39に充電許可フラグを設定して(S210)、充電処理を開始する(S220)。具体的には、再度停止指令を出力して分圧スイッチ33をオフに設定した上で、組電池23への充電を開始する。
一方、上記式(3)が成立せずにAD異常状態と判定したときは、EEPROM39に充電禁止フラグを設定して(S230)、充電禁止処理を実行、即ち保護回路27内の遮断スイッチ30をオフさせて充電用電源供給経路を遮断する(S240)。
なお、図4の電池パック充電制御処理では、充電開始前の自己診断として、まずAD変換器自己診断処理(S140〜S150)を実行し、その後にADポート自己診断処理(S160〜S200)を実行するようにしたが、この順序は逆にしてもよい。これら各自己診断処理の結果について、図4の処理では、いずれか一方の自己診断処理においてAD異常状態と判断された場合にはS230,S240に進んで充電を禁止するようにしたが、双方の自己診断処理の結果がともにAD異常状態であった場合に、S230以下の処理に進んで充電を禁止するようにしてもよい。
また、S150の判定処理では、DrefとDmemが厳密に一致した場合にAD正常状態と判定するようにしてもよいが、AD変換器42の分解能や三端子レギュレータ55により生成される基準電圧Vrefの誤差等を考慮して、ある程度の許容範囲を設けても良い。即ち、DrefとDmemが完全に一致しなくても、その差が所定の許容範囲内であればAD正常状態と判定するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態の電池パック20では、自己診断用に三端子レギュレータ55が設けられていると共に、この三端子レギュレータ55にて生成される基準電圧Vrefに対応した正しいデジタルデータである基準データDmemが、予め、EEPROM39に記憶されている。そして、基準電圧Vrefを実際にAD変換器42にてAD変換させて得られた基準電圧実測データDrefとEEPROM39内の基準データDmemとを比較して、両者が一致すればAD正常状態、一致しなければAD異常状態と判断する。
また、本実施形態の電池パック20では、組電池23における最も電位の低い電池セルBaからセル電圧検出回路24を介してマイコンのADポート45へ至る経路に、分圧用抵抗R3及び分圧スイッチ33からなるADポート自己診断用回路26が設けられ、このADポート45に対するADポート自己診断をマイコン25が行うようにしている。このADポート自己診断は、まず、分圧スイッチ33をオフさせた通常時における電池セルBaの電圧を示すオフ時電圧VadoffをAD変換器42により測定する。続いて、分圧スイッチ33をオンさせたときの電池セルBaの電圧を示すオン時電圧VadonをAD変換器42により測定する。そして、測定された各電圧Vadoff,Vadonが上記式(3)の関係(実際には上記式(5)の関係)を満たすか否かを、これらのAD変換後の各データDon,Doffに基づいて判断する。
従って、本実施形態の電池パック20によれば、基準電圧Vrefに対応した正しい基準データDmemと実際のAD変換結果である基準電圧実測データDrefとの比較結果に基づくAD変換器自己診断が行われるため、従来技術のようにマイコンとは別に保護用ICを設けることなく、AD異常状態となった場合にマイコン25自身がこれを精度良く検出することができる。
特に、AD異常状態の原因がAD変換器42自体の異常である場合にもその異常を確実に判定することができる。即ち、AD変換器42自体が異常となる原因の1つとして上述したようにマイコン25に供給される制御用電源Vccの低下が考えられ、制御用電源Vccが低下するとマイコン25に内蔵されているAD変換器42が正しくAD変換できなくなる。これに対し、基準電圧Vrefを生成する三端子レギュレータ55はマイコン25の電源とは別に設けられているものであるため、この基準電圧Vrefを用いてAD変換器42自体の異常を正しく判定することができるのである。
また、本実施形態では、三端子レギュレータ55が生成する基準電圧Vrefの値が、マイコン25がリセットされるリセット電圧3Vよりも小さい2Vに設定されており、制御用電源Vccが仮に3Vまで低下したとしても三端子レギュレータ55は2Vの基準電圧Vrefを安定して生成することができる。つまり、マイコン25の制御用電源Vccが3V以下とならない正常時である限り(マイコン25がリセットされずに動作できる限り)、三端子レギュレータ55は安定して2Vの基準電圧Vrefを生成できる。そのため、制御用電源Vccの変動によらずマイコン25はAD変換器自己診断を精度良く行うことができる。
また、本実施形態の電池パック20によれば、ADポート自己診断において、マイコン25自身が、自己診断指令(実行指令及び停止指令)によってADポート自己診断用回路26内の分圧スイッチ33をオン・オフさせることによりオフ時電圧Vadoffの測定(オフ時データDoffの取得)及びオン時電圧Vadonの測定(オン時データDonの取得)を行う。そして、これら各測定結果に基づいてAD異常状態か否かを判定する。そのため、仮に、AD変換器42自体は正常であるもののADポート45にゴミ等が付着することによって正常なAD変換結果が得られなくなるような状態となっても、その異常状態を精度良く検出することができる。
しかも、遮断スイッチ30からなる保護回路27を備え、組電池23への充電を開始する際にAD異常状態と判定された場合は、マイコン25が遮断スイッチ30をオフさせて充電用電源供給経路を遮断する。
そのため、充電開始の際にAD異常状態となっていたとしても、そのAD異常状態に起因して生じる問題(例えば過充電)を未然に防ぐことが可能となり、AD異常状態の発生に対してより信頼性の高い電池パック20が実現される。
また、ADポート自己診断を行うために必要なハードウェア構成としては、診断対象のADポート(本例ではADポート45)に分圧用抵抗R3及び分圧スイッチ33からなるごく簡易的な回路を備えると共に、分圧スイッチ33をオン・オフさせるための自己診断指令を出力する自己診断指令出力ポート48をマイコン25に設けるだけでよく、分圧スイッチ33のオン時及びオフ時それぞれのAD変換結果に基づいてAD異常状態か否かの判定が可能であるため、ごく簡易的な構成でありながら精度良く判定を行うことができる。
なお、マイコン25が実行する図4の電池パック充電制御処理において、S160及びS180の処理は本発明の指令出力手段が実行する処理に相当し、S150の処理は本発明の第1の判定手段が実行する処理に相当し、S200の処理は本発明の第2の判定手段が実行する処理に相当する。また、比較用データDmemが記憶されたEEPROM39は本発明の基準データ記憶手段に相当する。
[第2実施形態]
図5に、本実施形態の電池パック60の電気回路図を示す。本実施形態の電池パック60も、第1実施形態の電池パック20と同様、充電器10からの充電用直流電源によって内部の組電池23の充電が可能に構成されており、その外形も図1に示した電池パック20と同じである。そして、本実施形態の電池パック60が第1実施形態の電池パック20と異なるのは、ADポート自己診断用回路26は設けられておらず、組電池23とセル電圧検出回路24の間にセルバランス回路70が設けられている点である。この相違点以外については、基本的には第1実施形態の電池パック20と同じ構成であるため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。そして、以下、第1実施形態と異なる構成について具体的に説明する。
セルバランス回路70は、組電池23を構成する各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎に、内部容量を抜く(放電させる)ための回路であり、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの正極及び負極からセル電圧検出回路24に至る経路上にそれぞれ接続された抵抗R5と、各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎に設けられ、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnをその正極と負極にそれぞれ接続された抵抗R5を介して放電させるためのスイッチ71,72,・・・,73とを備えている。また、各スイッチ71,72,・・・,73には、図5に示すように抵抗R6が直列に接続されている。
即ち、最も電位の低い電池セルBaに対しては、この電池セルBaの負極に抵抗R5が接続されている。また、この電池セルBaの正極(即ち電池セルBbの負極)にも抵抗R5が接続されている。そして、これら正極・負極にそれぞれ接続された各抵抗R5の他端間は、抵抗R6及びスイッチ71からなる直列回路にて接続されている。そのため、スイッチ71がオンされると、電池セルBaの正極から抵抗R5,抵抗R6,スイッチ71,及び抵抗R5を介して負極に至るまで閉回路が形成され、放電が行われる。他の各電池セルBb,・・・,Bnについても同様であり、それぞれ、対応するスイッチ72,・・・,73をオンして閉回路を形成することで、対応する電池セルを放電させることができる。なお、各スイッチ71,72,・・・,73の具体的構成は種々考えられるが、本実施形態ではいずれもMOSFETにより構成されている。
ここで、セルバランス回路70が有する基本的機能である、セルバランス機能について、簡単に説明する。本実施形態のように、リチウムイオン二次電池からなる電池セルを直列に複数接続した組電池23において、充放電サイクルを繰り返すと、例えば、充放電時の周囲温度が同じであれば各電池セルはいずれも同じように劣化していくが、ある電池セルだけ温度が高くなると、その電池セルは他の電池セルよりも自己放電量などが増加し、バッテリ残容量が少なくなって、容量アンバランスが発生する。
このように各電池セル間で容量のアンバランスが生じると、充放電を繰り返す度に、放電の際にはその容量の少ない電池セルが他の電池セルよりも先に空になる。そのため、そのまま放電を継続すると過放電状態となり、劣化が進み、その電池セルが他のセルよりも先に劣化して充電可能な容量が少なくなる。また、充電の際には、その容量の少ない電池セルが先に満充電状態になる。それでもなお、他の電池セルが満充電になるまで充電が継続されると、その容量の少ない電池セルは過充電状態となってしまう。このような、過放電状態、過充電状態が継続されると、その電池セルの劣化だけがどんどん進み、やがて、他の電池セルはいずれも正常であるにも拘わらず、その劣化した電池セルの存在によって組電池全体が使用不能となってしまう。また、電池セルの容量のアンバランスは、上述した劣化に伴うものに限らず、電池セル自体の個体差によっても生じる可能性がある。
そこで、各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎にその電圧を監視しているマイコン61は、各電池セルの電圧値に基づき、特定の電池セルが過充電状態にならないよう、或いは特定の電池セルが過放電状態にならないよう、充電時或いは放電時に各スイッチ71,72,・・・,73を適宜オンさせて(通常はオフ)、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの容量・電圧値のバランスをとるようにしている。これがマイコン61による、セルバランス回路70を用いたセルバランス機能である。
なお、セルバランス回路70内の各スイッチ71,72,・・・,73のオン・オフは、マイコン61のスイッチ制御信号出力ポート63から出力されるスイッチ制御信号によって制御され、通常時は全てオフされており、このオフ時の各電池セルBa,Bb,・・・,Bnの電圧をマイコン61が監視している。そして、セルバランス機能の実行時或いは後述するADポート自己診断の実行時には、何れか一つのスイッチが選択的にオンされる。
そして本実施形態では、このセルバランス回路70が、セルバランスという基本的機能実現のために用いられるだけでなく、各ADポート45,46,・・・,47に入力されるアナログ信号に対するデジタルデータがAD変換器42によって正しく得られるかを診断する、ADポート自己診断にも用いられる。
ADポート自己診断機能としては、既に第1実施形態で説明した、ADポート自己診断用回路26を用いた方法があり、第1実施形態のADポート自己診断機能を本実施形態においても採用することは可能である。しかし、セルバランス回路70を構成する各抵抗R5,R6は、セルバランス機能実行時に適切な放電が行われるよう、抵抗値の小さいもの(例えば100Ω〜1kΩ)が用いられる。これに対し、セル電圧検出回路24を構成する抵抗R1,R2は、セルバランス回路70の抵抗R5,R6よりも十分に大きな抵抗値(例えば数MΩ)である。そのため、仮に、セルバランス回路70からセル電圧検出回路24に至る経路上において、図5に示すようにその経路とグランドとの間にゴミ等が付着すると、上述した抵抗値の違いにより、そのゴミ等の付着に起因するAD異常状態を精度良く判定できなるおそれがある。
そこで本実施形態では、セルバランス回路70をADポート自己診断のためにも利用し、これにより図5に示す位置にゴミ等が付着してAD異常状態となってもこれを精度良く検出できるようにしている。具体的には、各スイッチ71,72,・・・,73のオン時とオフ時のそれぞれの電圧値をAD変換器42によりAD変換し、そのAD変換結果に基づいて判定を行う。
例えば、電位の最も低い電池セルBaについては、この電池セルBaに対応したスイッチ71がオフされているときは、この電池セルBaの電圧(正極の電圧)がそのまま抵抗R5を介してセル電圧検出回路24へ出力される。一方、スイッチ71がオンされているときは、電池セルBaの電圧が、抵抗R5及び抵抗R6により分圧されてセル電圧検出回路24へ出力される。
そのため、説明を簡単化するためにセル電圧検出回路24を無視すると、スイッチ71がオフされているときにADポート45へ入力されるオフ時電圧Vadoffは、電池セルBaの電圧Vbそのものである。これに対し、スイッチ71がオンされているときにADポート45へ入力されるオン時電圧Vadonは、次式(6)で表される。
Vadon={(R5+R6)/(2・R5+R6)}・Vb …(6)
よって、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonとの間には、次式(7)の関係が成り立つ。
Vadon={(R5+R6)/(2・R5+R6)}・Vadoff …(7)
なお、上記式(7)は、電池セルBaの電圧を分圧してADポート45へ入力するための各抵抗R5、R6によって定まるものであり、この式(7)の関係が、本発明の「分圧比に対応した関係」に相当するものである。
従って、ADポート45に入力される電池電圧信号に対するデジタルデータがAD変換器42によって正しく得られるAD正常状態であれば、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonとの間は上記式(7)の関係が成立するはずであり、故に、オフ時データDoffとオン時データDonとの間も、上記式(7)の関係(或いはこれに対応した関係)となる。一方、図5に例示するように電池セルBaの電圧をマイコン61側へ出力するための信号経路上にゴミ等が付着すると、グランドとの間に抵抗が付加されたことと等価な状態になることから、上記式(7)は成立しなくなる。
そこでマイコン61は、AD変換器42によるAD変換結果に基づいて上記式(7)が成立するか否かを判断し、成立するならばAD正常状態と判定し、成立しないならばAD異常状態と判定する。そして、AD異常状態と判定した場合は、許可・停止信号出力ポート49から保護回路27へ停止信号を出力することにより、電池側正極端子28から組電池23の正極へ至る経路を遮断する。
また本実施形態では、最も電位の低い電池セルBa以外の他の各電池セルBb,・・・,Bnに対応した各ADポート46,・・・,47についても、同様にしてADポート自己診断を行うことができる。例えば、最も電位の高い電池セルBnについては、まずスイッチ73をオフさせ、このときに差動増幅器35からADポート47へ入力されるオフ時電圧VadoffをAD変換器42にてAD変換させてオフ時データDoffを得る。続いて、スイッチ73をオンさせ、このときに差動増幅器35からADポート47へ入力されるオン時電圧VadonをAD変換器42にてAD変換させてオン時データDonを得る。そして、得られた各データDoff、Donに基づき、上記各電圧Vadoff,Vadonの間に上記式(7)が成立するか否かを判断し、成立しないならばAD異常状態と判定する。
以上が本実施形態におけるADポート自己診断機能の概要であるが、最も電位の低い電池セルBaの電圧が入力されるADポート45に対する自己診断時は、実際には、セル電圧検出回路24内の抵抗R1,R2も寄与する。但し、これら抵抗R1,R2を考慮したとしても、本例ではR5,R6<<R1,R2の関係があることから、自己診断の際に用いる判定式は、次に説明するように結局は上記式(7)に帰着する。
即ち、セル電圧検出回路24の抵抗R1,R2を考慮すると、スイッチ71のオフ時のオフ時電圧Vadoffは、次式(8)のように表される。
Vadoff={R2/(R1+R2+R5)}・Vb …(8)
ここで、R5<<R1,R2の関係があることから、上記式(8)は次式(9)のように変形できる。
Vadoff={R2/(R1+R2)}・Vb …(9)
また、スイッチ71のオン時のオン時電圧Vadonについても、抵抗R1,R2を考慮すると、次式(10)のように表される。
Vadon={(R5+R6)/(2・R5+R6)}・{R2/(R1+R2+R5)}
・Vb …(10)
ここで、R5,R6<<R1,R2の関係があることから、上記式(10)は次式(11)のように変形できる。
Vadon={(R5+R6)/(2・R5+R6)}・{R2/(R1+R2)}
・Vb …(11)
よって、上記式(9)、(11)から、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonとの間には、次式(12)の関係が成り立つ。
Vadon={(R5+R6)/(2・R5+R6)}・Vadoff …(12)
つまり、式(12)は式(7)と同じである。
なお、セルバランス回路70において、セルバランス機能を実現するためだけならば、抵抗R6は不要である。しかし、本実施形態では、セルバランス機能に加えてADポート自己診断機能をも実現すべく、各スイッチのオン時に電池電圧が所定の分圧比にて分圧されるよう、抵抗R6を挿入している。但し、最も電位の低い電池セルBaに対しては、その電圧は差動増幅器に入力されないため、スイッチ71に接続されている抵抗R6は必ずしも必要ではない。
次に、上記のように構成された本実施形態の電池パック60における、マイコン61により実行される電池パック充電制御処理について、図6に基づいて説明する。
なお、図6の電池パック充電制御処理において、S310〜S330の各処理は、図4に示した第1実施形態の電池パック充電制御処理におけるS110〜S130の処理と全く同じであり、S340〜S350のAD変換器自己診断処理についても図4のS140〜S150と全く同じであり、S410〜S440の各処理についても図4のS210〜S240の処理と同じである。そのため、これら図4と同じ処理についてはその詳細説明を省略し、図4とは異なるADポート自己診断処理(S360〜S400)について、以下に詳しく説明する。
図6に示すように、本実施形態の電池パック充電制御処理におけるADポート自己診断処理では、まず、スイッチ制御信号出力ポート63からセルバランス回路70へスイッチ制御信号として停止指令を出力することにより、スイッチ71をオフさせる(S360)。なお、初期状態では全てのスイッチ71,72,・・・,73がオフされている。
そして、スイッチ71のオフ時にADポート45へ入力される電池セルBaの電池電圧信号(オフ時電圧Vadoff)を測定する(S370)。即ち、このオフ時電圧VadoffをAD変換器42にてAD変換させて、オフ時データDoff(本発明の比較用データに相当)を得る。次に、スイッチ制御信号出力ポート63からセルバランス回路70へスイッチ制御信号として実行指令を出力して、スイッチ71をオンさせ(S380)、そのときにADポート45へ入力される電池セルBaの電池電圧信号(オン時電圧Vadon)を測定する(S390)。即ち、このオン時電圧VadonをAD変換器42にてAD変換させて、オン時データDon(本発明の診断用データに相当)を得る。
そして、得られたオフ時データDoffとオン時データDonとに基づいて、オフ時電圧Vadoffとオン時電圧Vadonが上記式(7)の関係を満たすか否かを判断することにより、ADポート45が正常であるか否か、即ちAD正常状態かAD異常状態かを判定する(S400)。なお、図6のS400におけるβは、上記式(7)の右辺におけるVadoffの係数である。
そして、上記式(7)が成立してAD正常状態と判定したときは、EEPROM39に充電許可フラグを設定して(S410)、充電処理を開始する(S420)。具体的には、スイッチ71を再びオフに戻した上で、組電池23への充電を開始する。
一方、上記式(7)が成立せずにAD異常状態と判定したときは、EEPROM39に充電禁止フラグを設定して(S430)、充電禁止処理を実行、即ち保護回路27内の遮断スイッチ30をオフさせて充電用電源供給経路を遮断する(S440)。
なお、図6において破線で囲まれている一連のADポート自己診断処理(S360〜S400)は、実際には、組電池23を構成する各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎に順次行われる。そして、全ての電池セルBa,Bb,・・・,BnについてAD正常状態と判定されたときに、S410以下の処理に進むことになる。一方、各電池セルBa,Bb,・・・,Bnのうち1つでもAD異常状態と判定された場合は、S430以下に進み、充電が停止される。
以上説明した本実施形態の電池パック60によれば、電池パック60においてセルバランス機能のためにもともと備えられているセルバランス回路70を用いて、ADポート自己診断も行うようにしている。そのため、ADポート自己診断のためだけに必要な構成を抑制しつつ、効率的にADポート自己診断を実現することが可能となる。
なお、本実施形態において、セルバランス回路70における各電池セルBa,Bb,・・・,Bn毎の閉回路(電池セルの正極から抵抗R5,R6,スイッチ,抵抗R5を経て負極に至る回路)は本発明の放電用回路に相当し、そのうち特に抵抗R6は本発明の分圧用抵抗に相当し、各スイッチ71,72,・・・,73は本発明の放電用回路を構成するスイッチ手段に相当する。また、各差動増幅器34,・・・,35は本発明の電圧検出手段に相当する。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、三端子レギュレータ55の入力電源として制御用電源Vccを用いたが、これはあくまでも一例であり、所望の基準電圧Vref(上記例では2V)を生成できる限り、三端子レギュレータ55の入力電源は特に限定されない。
また、上記実施形態では、基準電圧Vrefを生成するための基準電圧源として、三端子レギュレータ55を設けたが、例えば図7に示す電池パック80のように、三端子レギュレータ55に代えて、ダイオードD1を備えた簡易的な基準電圧源85を備えるようにしてもよい。図7に示す電池パック80は、基準電圧源85が、カソードが接地されアノードが抵抗R11を介して制御用電源Vccに接続されたダイオードD1を備えた構成となっている。これにより、ダイオードD1には順方向に電流が流れ、ダイオードD1のアノード−カソード間には順方向電圧Vf(≒0.6V)が発生する。この順方向電圧Vfを、AD変換器自己診断の際の基準電圧Vrefとして用いるのである。
このように、基準電圧源としてダイオードD1の順方向電圧Vfを用いることで、基準電圧源の構成をより簡素化することができ、延いては電池パック80全体を簡素化することができる。
また、図7に示すように、電池パック80の電池側正極端子28から組電池23の正極に至る充電用電源供給経路上に、保護回路27に加えて、これと直列に、セルフコントロールプロテクタ86を備えるようにしてもよい。このセルフコントロールプロテクタ86は、充電用供給経路上に直列に挿入される2つのヒューズ87,87と、この各ヒューズ87,87を溶断するための2つの発熱用抵抗R21,R21を備えた一般的な構成である。マイコン81は、2つの許可・停止信号出力ポート49,83を備えており、AD異常状態と判定した場合は、各許可・停止信号出力ポート49,83から停止信号を出力することで、保護回路27内の遮断スイッチ30をオフさせると共に、セルフコントロールプロテクタ86を動作させるためのFET88をオンさせる。これにより、セルフコントロールプロテクタ86を構成する発熱用抵抗R21が発熱し、ヒューズ87が溶断して、充電用電源供給経路を遮断する。
このように、保護回路27に加えてセルフコントロールプロテクタ86を備え、AD異常状態となったときにこのセルフコントロールプロテクタ86を動作させて充放電を完全に不能とすることで、組電池23をより確実に異常状態から保護することが可能となり、より信頼性の高い電池パックの提供が可能となる。
更に、第1実施形態では、ADポート自己診断用回路26を抵抗R3及び分圧スイッチ33により構成したが、図7に示すように、このうち抵抗R3のみをマイコン81の外に設け、この抵抗R3による分圧を有効化するための分圧スイッチ96をマイコン81の内部に設けるようにしてもよい。つまり、抵抗R3は、一端がADポート45に接続され、他端が自己診断用ポート93に接続された構成とする。そして、抵抗R3の他端は、自己診断用ポート93を介してマイコン81内部で分圧スイッチ96に接続されている。マイコン81は、その内部において分圧スイッチ96を自己診断指令(実行指令・停止指令)によりオン・オフ制御することで、第1実施形態と全く同じようにADポート自己診断を行うことができる。
なお、抵抗R3を含め、ADポート自己診断用回路全体をマイコン81内に内蔵するようにしてもよい。
また、第1実施形態では、最も電位の低い電池セルBaに対応したADポート45について、ADポート自己診断処理を行う構成としたが、例えば図7に示すように、他の各電池セルBb,・・・,Bnに対応した各ADポート46,・・・,47についても、ADポート自己診断処理を行うようにすることができる。
即ち、図7に示すように、セル電圧検出回路24内において各差動増幅器34,・・・,35の出力側にそれぞれ、最も電位の低い電池セルBaと同じように抵抗R1及び抵抗R2からなる分圧回路を設ける。そして、これら各分圧回路の出力側は、それぞれ、マイコン81における対応する各ADポート46,・・・,47に接続すると共に、分圧用抵抗R3を介して対応する各自己診断用ポート94,・・・,95に接続する。そして、各自己診断用ポート94,・・・,95は、マイコン81内において、それぞれ分圧スイッチ97,・・・,98に接続する。
このように構成し、最も電位の低い電池セルBaに対応した分圧スイッチ96と同じ要領で他の各分圧スイッチ97,・・・,98をそれぞれ制御することで、全ての電池セルBa,Bb,・・・,Bnに対応した各ADポート45,46,・・・,47の自己診断処理を行うことができる。
また、上記実施形態では、ADポート自己診断、AD変換器自己診断を、組電池23への充電が開始される前に行うようにしたが、これら各自己診断をいつ実行するかは特に限定されるものではなく、例えば、充電が開始された後(充電中)も定期的に自己診断を行うようにしてもよいし、充電中か否かに関係なく定期的に実行するようにしてもよい。
充電中にも自己診断を行うようにすれば、充電が行われている際にAD異常状態が発生した場合、マイコンがその発生を判定して充電用電源供給経路を遮断することができるため、過充電等を未然に防ぐことができる。
また、上記実施形態では、AD異常状態となった場合に電池パック内にて保護回路27を動作させることにより充電用電源供給経路を遮断するようにしたが、これに加えて、充電器10においても電池パックへの充電用電源の供給を停止させるようにしてもよい。例えば、電池パックにてAD異常状態が判定されたときに、電池パック内のマイコンから保護回路27へ出力される停止信号を、図2に破線矢印で示すように充電器10内のマイコン6やコンバータ3にも出力するようにする。そして、充電器10では、電池パックから停止信号が入力された場合、マイコン6がスイッチングIC制御回路5へ充電を停止させる旨の充電制御信号を出力したり、或いは、コンバータ3における充電側正極端子8へ至る充電用電源供給経路を遮断するスイッチを設けてこれを遮断させたりすればよい。このように、AD異常状態となった場合に電池パック内で保護回路27を動作させるだけでなく充電器10側でも充電用直流電源の出力を停止させるようにすることで、AD異常状態に対する信頼性をより高めることができる。
また、上記実施形態では、基準電圧Vrefを用いたAD変換器自己診断機能と、ADポート自己診断用回路26(第1実施形態)又はセルバランス回路70(第2実施形態)を用いたADポート自己診断機能の、二種類の自己診断機能を兼ね備えた電池パックについて説明したが、例えばAD変換器自己診断機能のみを備えた電池パック、或いはADポート自己診断機能のみを備えた電池パックを構成することもできる。
また、上記実施形態では、電池パック20の充電を行う充電器として、外部のDC電源2を所定電圧の充電用直流電源に変換して出力する構成の充電器10を例示したが、このように外部からDC電源を取り込む構成の充電器はあくまでも一例であって、AC電源(例えば商用100V)を取り込み、これを充電用直流電源に変換して出力する構成の充電器であってもよい。
また、上記各実施形態では、本発明を電池パック内のマイコンに適用した例について説明したが、本発明の適用は電池パック内のマイコンに限定されず、例えば充電器10内のマイコン6や電動工具本体100内のマイコン101に適用してもよく、AD変換器内蔵のマイコンを搭載した電動工具用の電池パック、充電器、或いは電動工具本体であれば、本発明を適用することが可能である。
実施形態の充電システムを構成する充電器及び電池パックの斜視図である。 第1実施形態の充電システム及び電動工具本体を表すブロック図である。 第1実施形態の電池パックの構成を表す電気回路図である。 第1実施形態の電池パック内のマイコンで実行される電池パック充電制御処理を表すフローチャートである。 第2実施形態の電池パックの構成を表す電気回路図である。 第2実施形態の電池パック内のマイコンで実行される電池パック充電制御処理を表すフローチャートである。 電池パックの他の例を表す電気回路図である。
符号の説明
1…充電システム、2…DC電源、3…コンバータ、4…スイッチングIC、5…スイッチングIC制御回路、6,25,61,81…マイコン、8…充電側正極端子、9…充電側負極端子、10…充電器、11…充電側ターミナル、12…充電側装着部、13…表示部、14…電源コード、15…シガープラグ、16…入力平滑回路、17…電力変換回路、18…出力平滑回路、19…電池側信号端子、20,60,80…電池パック、21…電池側ターミナル、22…電池側装着部、23…組電池、24…セル電圧検出回路、26…ADポート自己診断用回路、27…保護回路、28…電池側正極端子、29…電池側負極端子、30…遮断スイッチ、33,96,97,98…分圧スイッチ、34,35…差動増幅器、36…CPU、37…ROM、38…RAM、39…EEPROM、41,62,82…主制御部、42…AD変換器、43…マルチプレクサ、45,46,47…ADポート、48…自己診断指令出力ポート、49,83…許可・停止信号出力ポート、50…基準電圧入力ポート、52…主制御部、55…三端子レギュレータ、63…スイッチ制御信号出力ポート、70…セルバランス回路、71,72,73…スイッチ、85…基準電圧源、86…セルフコントロールプロテクタ、87…ヒューズ、88…FET、93,94,95…自己診断用ポート、Ba,Bb,Bn…電池セル、D1…ダイオード、R1,R2,R3,R5,R6,R11…抵抗、R21…発熱用抵抗

Claims (12)

  1. 電動工具本体、電動工具用電池パック、又は電動工具用充電器に搭載される、電動工具用マイコン搭載システムであって、
    AD変換器を内蔵し、このAD変換器によるAD変換対象のアナログ信号が入力されるADポートが少なくとも1つ設けられたマイコンと、
    前記マイコンに供給される予め決められた電圧の動作用電源とは別に設けられ、前記動作用電源を入力として、この動作用電源から、前記予め決められた電圧よりも低い、予め決められた値の基準電圧を生成して前記ADポートへ入力するする基準電圧生成手段と、
    前記基準電圧に対応したデジタルデータである基準データが予め記憶された基準データ記憶手段と、
    前記マイコンの内部に設けられ、前記ADポートに入力された前記基準電圧が前記AD変換器によりAD変換されて得られる診断用データと、前記基準データ記憶手段に記憶されている基準データとを比較して、両者の差が予め決められた許容範囲内にない場合に、前記AD変換器によるAD変換結果が正常に得られないAD異常状態であると判定する第1の判定手段と、
    を備えたことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  2. 請求項記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記マイコンの動作用電源の電圧が予め決められた下限値以下となった場合に該マイコンへリセット信号を出力するリセット手段を備え、
    前記マイコンは、前記リセット手段から前記リセット信号が入力されたときはその動作が初期化されるよう構成されており、
    前記基準電圧生成手段は、前記基準電圧として、前記下限値より小さい値であって前記AD変換器によるAD変換が可能な電圧を生成する
    ことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記基準電圧生成手段は、ダイオードを備え、当該基準電圧生成手段に入力される電源によって該ダイオードに順方向バイアスを加えることにより生じる該ダイオードの順方向電圧を、前記基準電圧として生成するよう構成されている
    ことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  4. 請求項1〜いずれかに記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記AD変換対象のアナログ信号が前記AD変換器へ入力されるまでの信号経路上に設けられ、実行指令が入力されたときに該アナログ信号を予め決められた分圧比にて分圧することにより診断用アナログ信号を生成する信号分圧手段と、
    前記マイコンの内部に設けられ、前記信号分圧手段による前記分圧を実行させるための前記実行指令又は前記信号分圧手段による前記分圧を実行させないための停止指令を該信号分圧手段へ出力する指令出力手段と、
    前記マイコンの内部に設けられ、前記指令出力手段に前記実行指令を出力させて前記信号分圧手段による前記分圧を実行させ、該実行時の前記診断用アナログ信号を前記AD変換器によってAD変換させることにより診断用データを取得すると共に、前記指令出力手段に前記停止指令を出力させて前記信号分圧手段による前記分圧を停止させ、該停止時の前記アナログ信号を前記AD変換器によってAD変換させることにより比較用データを取得して、該取得した前記診断用データと前記比較用データとを比較し、両者が前記信号分圧手段における前記分圧比に対応した関係にない場合に前記AD異常状態であると判定する第2の判定手段と、
    を備えたことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  5. 請求項記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記AD変換対象のアナログ信号が前記ADポートへ入力されるまでの信号経路上に、該信号経路上に直列に接続された少なくとも1つの抵抗からなる信号入力回路が設けられ、
    前記信号分圧手段は、前記信号入力回路から前記AD変換器への信号経路上に設けられ、前記実行指令が入力されたときに、前記信号入力回路に入力された前記AD変換対象のアナログ信号を前記分圧比にて分圧することにより前記診断用アナログ信号を生成する
    ことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  6. 請求項記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記信号分圧手段は、
    一端が前記ADポートに電気的に接続された分圧用抵抗と、
    前記停止指令が入力されたときには前記分圧用抵抗の他端側を電気的にオープン状態とし、前記実行指令が入力されたときには前記分圧用抵抗の他端側を前記一端側よりも電位の低い部位へ電気的に接続することにより該分圧用抵抗に電流を流して前記分圧を行う分圧制御手段と、
    を備えていることを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  7. 請求項記載の電動工具用マイコン搭載システムであって、
    前記分圧制御手段は、前記分圧用抵抗の他端側と接地電位との間を電気的に導通・遮断するスイッチ手段を備え、前記停止指令が入力されたときには該スイッチ手段をオフして前記分圧用抵抗の他端側と前記接地電位との間を遮断し、前記実行指令が入力されたときには該スイッチ手段をオンして前記分圧用抵抗の他端側を接地する
    ことを特徴とする電動工具用マイコン搭載システム。
  8. 少なくとも1つの電池セルと、
    請求項1〜いずれかに記載の電動工具用マイコン搭載システムと、
    を備え、
    前記AD変換対象のアナログ信号として、前記電池セルのうち少なくとも1つに対して該電池セルの電圧を直接又は間接的に示す電池電圧信号が前記ADポートへ入力されるよう構成されており、
    前記マイコンは、前記電池電圧信号の前記AD変換器によるAD変換結果に基づいて、該電池セルの状態を監視する
    ことを特徴とする電動工具用電池パック。
  9. 少なくとも1つの電池セルと、
    請求項載の電動工具用マイコン搭載システムと、
    を備え、
    前記電池セルのうち少なくとも1つには、一端が該電池セルの正極に接続された正極側抵抗と、一端が該電池セルの負極に接続された負極側抵抗と、該各抵抗の他端間に接続されて前記マイコンからの前記実行指令及び前記停止指令に応じて該他端間を導通・遮断するスイッチ手段と、を有する放電用回路が接続され、
    前記マイコンは、前記スイッチ手段により前記他端間が遮断されている際に前記正極側抵抗の他端側から前記ADポート側へ出力される電圧の、前記AD変換器によるAD変換結果に基づいて、該電池セルの電圧を監視するよう構成されており、
    前記放電用回路は、前記信号分圧手段として機能し、前記停止指令が入力されたときは前記スイッチ手段をオフして該電池セルの正極の電圧を前記正極側抵抗を介してそのまま前記ADポート側へ出力させ、前記実行指令が入力されたときは、前記スイッチ手段をオンして、当該放電用回路を構成する前記各抵抗による分圧比にて該電池セルの正極の電圧を分圧することにより前記診断用アナログ信号を生成するよう構成されている
    ことを特徴とする電動工具用電池パック。
  10. 少なくとも1つの電池セルと、
    請求項記載の電動工具用マイコン搭載システムと、
    を備え、
    前記電池セルのうち少なくとも1つには、
    一端が該電池セルの正極に接続された正極側抵抗と、一端が該電池セルの負極に接続された負極側抵抗と、該各抵抗の他端間に接続されて前記マイコンからの前記実行指令及び前記停止指令に応じて該他端間を導通・遮断するスイッチ手段と、該各抵抗の他端間において前記スイッチ手段と直列に設けられた分圧用抵抗と、を有する放電用回路と、
    前記各抵抗の他端間の電圧を該電池セルの電圧として検出して前記ADポート側へ出力する電圧検出手段と、
    が接続され、
    前記マイコンは、前記スイッチ手段により前記他端間が遮断されている際に前記電圧検出手段から前記ADポート側へ出力される電圧の、前記AD変換器によるAD変換結果に基づいて、該電池セルの電圧を監視するよう構成されており、
    前記放電用回路は、前記信号分圧手段として機能し、前記停止指令が入力されたときは前記スイッチ手段をオフして該電池セルの電圧がそのまま前記電圧検出手段へ入力されるようにし、前記実行指令が入力されたときは、前記スイッチ手段をオンして、当該放電用回路を構成する前記各抵抗による分圧比にて該電池セルの電圧を分圧することにより、該分圧された電圧に対する前記電圧検出手段からの出力が前記診断用アナログ信号として生成されるよう構成されている
    ことを特徴とする電動工具用電池パック。
  11. 請求項8〜10いずれかに記載の電動工具用電池パックであって、
    前記少なくとも1つの電池セルは二次電池であることを特徴とする電動工具用電池パック。
  12. 請求項11記載の電動工具用電池パックであって、
    前記二次電池を充電するための充電用電源が入力される充電用電源入力端子と、
    前記充電用電源入力端子から前記二次電池に至る充電用電源供給経路上に設けられ、前記マイコンからの遮断指令により該充電用電源供給経路を遮断可能な遮断手段と、
    を備え、
    前記マイコンは、前記判定手段により前記AD異常状態と判定されたとき、前記遮断指令を出力することにより前記遮断手段に前記充電用電源供給経路を遮断させる
    ことを特徴とする電動工具用電池パック。
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