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JP5162113B2 - 極端紫外光源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外(EUV:extreme ultra violet)光源装置に関する。
近年、半導体プロセスの微細化に伴って光リソグラフィも微細化が急速に進展しており、次世代においては、100〜70nmの微細加工、更には50nm以下の微細加工が要求されるようになる。そのため、例えば、50nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光源と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
EUV光源としては、ターゲットにレーザビームを照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(laser produced plasma:レーザ生成プラズマ)光源(以下において、「LPP式EUV光源装置」ともいう)と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)光源と、軌道放射光を用いたSR(synchrotron radiation)光源との3種類がある。これらの内でも、LPP光源は、プラズマ密度をかなり大きくできるので黒体輻射に近い極めて高い輝度が得られ、ターゲット物質を選択することにより必要な波長帯のみの発光が可能であり、ほぼ等方的な角度分布を持つ点光源であるので光源の周囲に電極等の構造物がなく、2πsteradianという極めて大きな捕集立体角の確保が可能であること等の利点から、数十ワット以上のパワーが要求されるEUVリソグラフィ用の光源として有力であると考えられている。
ここで、LPP式EUV光源装置におけるEUV光の生成原理について簡単に説明する。ノズルからターゲット物質を噴射し、このターゲット物質に向けてレーザビームを照射することにより、ターゲット物質を励起してプラズマ化させる。このプラズマからは、極端紫外光(EUV)光を含む様々な波長成分が放射される。そこで、その内の所望の波長成分を、集光ミラー(EUV集光ミラー)を用いて選択的に反射集光することにより、EUV光を利用する機器(例えば、露光装置)に出力する。例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を集光するためには、モリブデン及びシリコンが交互に積層された膜(Mo/Si多層膜)が反射面に形成された集光ミラーが用いられる。なお、特許文献1の図6には、LPP光源の概念図が示されている。
このようなLPP式EUV光源装置においては、プラズマから放出される高速イオンや高速中性粒子による影響が問題となっている。EUV集光ミラーはプラズマ近傍に設置されているので、それらの粒子によってミラーの反射面がスパッタされ、損傷してしまうからである。ところが、EUV集光ミラーは、高い反射率を維持するために、例えば、0.2nm(rms)程度の高い表面平坦性が要求されるので、非常に高価である。そのため、EUV露光システム(光源としてEUV光を利用する露光システム)の運転コストの削減や、メンテナンス時間の低減等の観点から、EUV集光ミラーの長寿命化が望まれている。なお、高速イオンや中性粒子を含むプラズマからの飛散物やターゲット物質の残骸は、デブリ(debris)と呼ばれている。
特許文献1には、このようなデブリの影響を低減すると共に、EUV光の出力向上を図るために、ターゲットを高い繰り返し周波数で高速に供給するEUV光源装置が開示されている。このEUV光源装置は、ターゲットに電荷を与える電荷付与手段と、電荷を帯びたターゲットを、電磁場を利用して加速させる加速手段とを有するターゲット供給装置を備えている(第2頁、図1)。特許文献1に開示されているように、ドロップレットターゲットを加速して早くプラズマ発光点に到達させることにより、ワーキングディスタンスを大きくしつつ、EUV光の出力を向上させることが可能となる。
また、特許文献2には、ターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲットにレーザビームを照射することによりプラズマを発生させるレーザ部と、プラズマから放出される極端紫外光を集光して出射する集光光学系と、プラズマから放出される荷電粒子をトラップするために、電流が供給されたときに集光光学系内に磁場を発生させる磁場発生部とを備えるEUV光源装置が開示されている。即ち、特許文献2においては、プラズマから放出される高速イオンを磁場の作用によってトラップすることにより、EUV集光ミラーへの衝突を防いでいる。また、特許文献2には、電荷を持たない中性粒子を同様にトラップするために、中性粒子に紫外線を照射してイオン化することも開示されている。
特開2003−297737号公報(第2、5頁、図1、6) 米国特許US6,987,279B2(第1頁)
ところが、EUV光源装置に、ドロップレットターゲットを帯電させて加速する技術(特許文献1)と、イオンを磁場の作用によってトラップする技術(特許文献2)との両方を適用しようとすると、次のような問題が発生する。
即ち、一般に、運動する荷電粒子は、磁場の作用により、運動する方向に直交する方向のローレンツ力を受ける。ここで、荷電粒子の電荷をq、速度をv(ベクトル)、磁束密度をB(ベクトル)とすると、磁場中を運動する荷電粒子に働くローレンツ力F(ベクトル)は、次式(1)によって表される。
F=q(v×B) …(1)
従って、速度vと磁束密度Bとの為す角をθとすると、ローレンツ力の大きさ|F|は、次式(2)によって表される。
|F|=|q|・|v|・|B|・sinθ …(2)
また、ローレンツ力Fの向きは、電荷qが正電荷である場合に、ベクトル積v×Bの向きに一致する。そのため、プラズマから発生したイオン(帯電したデブリ)の内で、磁束密度Bに平行でない速度成分を有するもの(即ち、磁束線を横切る荷電粒子)は、磁場の作用によって、プラズマ発生点近傍にトラップされる。
ところが、特許文献1においては、ドロップレットターゲットを加速するために帯電させているので、帯電したターゲットがレーザ照射位置まで到達する間に磁束線を横切ると、ローレンツ力Fによってその軌道が変化してしまう。ここで、式(1)及び(2)から明らかなように、ローレンツ力の大きさ|F|は、電荷q、速度v、及び、磁束密度Bの大きさに依存するので、ドロップレットターゲットの軌跡もそれらの大きさに応じて変化してしまい、予測することができない。
先にも述べたように、LPP式EUV光源装置においては、ドロップレットターゲットにレーザ光を照射することによりプラズマを生成する。そのため、ドロップレットターゲットの軌道は、常に安定していることが望ましい。ドロップレットターゲットの軌道が変化すると、ドロップレットターゲットに照射されるレーザビームの位置合わせが不完全になるので、生成されるプラズマの励起強度や、形状や、プラズマの生成回数等が変化してしまうからである。その結果、EUV光の安定性が低下し、利用可能なEUV光が減少してしまう。そして、EUV光の利用効率の低下に伴うEUV光源装置の運転コスト及び維持コストの増加や、EUV光の照度が安定しないことによるEUV露光装置の性能低下をもたらし、最終的には、そのEUV露光装置によって生産される半導体デバイスの品質を不安定にしてしまう。
そこで、本発明は、EUV光源装置において、ターゲットの軌道を擾乱させることなく、ドロップレットターゲットをレーザ照射位置に高速に供給する機構と、プラズマから発生したイオン(帯電したデブリ)を磁場の作用によりトラップする機構とを両立させることを目的とする
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、(i)内部で極端紫外光が生成されるチャンバと、(ii)チャンバ内にターゲット物質を噴射するターゲットノズルと、(iii)ターゲットノズルから噴射されるターゲット物質を帯電させる電荷供給装置と、(iv)静電加速装置、誘導加速装置、及び、高周波加速装置の内の1つを含み、電荷供給装置によって帯電され、レーザ光を照射される前のターゲット物質を、少なくとも電場の作用により加速する加速装置と、(v)電磁石、超伝導磁石、及び、永久磁石の内のいずれかを含み、チャンバ内にミラー磁場を形成する1組の磁石と、ターゲット物質の軌道において該ミラー磁場の磁束線が略直線状且つターゲット物質の進入方向に対して略平行となるように、補助的な磁場を形成する少なくとも1つの補助磁場形成装置とを含む磁場形成装置と、(vi)ターゲットノズルに対抗して配置されたターゲット回収筒とを具備する。
本発明の1つの観点によれば、静電加速装置、誘導加速装置、及び、高周波加速装置の内の1つを用いてターゲット物質を少なくとも電場の作用により加速すると共に、プラズマから放出されたイオンをトラップするために形成される磁場を、ターゲット物質の軌道において、磁束線が略直線状且つターゲット物質の進入方向に対して略平行となるように形成するので、そのような領域に帯電したターゲット物質を導入しても、磁場の作用により軌道が変動するのを抑制できる。従って、ターゲット物質がプラズマ発光点に安定的に供給されるようになり、ターゲット物質の高速供給とイオンをトラップする技術とを両立させることが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る極端紫外(EUV)光源装置の構成を示す図である。また、図2は、図1に示すII−IIにおける断面図である。本実施形態に係る極端紫外光源装置は、レーザビームをターゲット物質に照射して励起させることによりEUV光を生成するレーザ生成プラズマ(LPP)方式を採用している。図1に示すように、このEUV光源装置は、EUV光の生成が行われるチャンバ10と、ターゲット供給装置11と、ターゲットノズル12と、レーザ装置13と、集光レンズ14と、EUV集光ミラー15と、ターゲット回収筒16と、電荷供給装置17と、加速装置18と、電磁石19a及び19b並びにヨーク19cと、同期コントローラ20と、ターゲットモニタ21(図2)を有している。また、本実施形態に係るEUV光源装置は、ターゲット回収配管22と、イオン排出管23と、ターゲット排出管24と、ターゲット循環装置25と、ターゲット供給管26とを更に有していても良い。
ターゲット供給装置11は、レーザビームを照射されることにより励起してプラズマ化するターゲット物質をターゲットノズル12に供給する。ターゲット物質としては、キセノン(Xe)や、キセノンを主成分とする混合物や、アルゴン(Ar)や、クリプトン(Kr)や、低気圧状態でガスとなる水(HO)若しくはアルコールや、錫(Sn)やリチウム(Li)等の溶融金属や、水又はアルコールに錫や酸化錫や銅等の微小な金属粒子を分散させたものや、水にフッ化リチウム(LiF)や塩化リチウム(LiCl)を溶解させたイオン溶液等が用いられる。
ターゲット供給装置11に導入されるターゲット物質の状態は、気体、液体、固体のいずれであっても良い。例えばキセノンのように、常温で気体のターゲット物質を液体ターゲットとして用いる場合には、ターゲット供給装置11においてキセノンガスを加圧及び冷却することにより、液化されたキセノンがターゲットノズル12に供給される。反対に、例えば錫のように、常温で固体の物質を液体ターゲットとして用いる場合には、ターゲット供給装置11において錫を加熱することにより、液化された錫がターゲットノズル12に供給される。
ターゲットノズル12は、ターゲット供給装置11から供給されたターゲット物質を噴射することにより、真空チャンバ10内の所定の位置(プラズマ発光点)に液滴状のターゲット物質1を供給する。ターゲットノズル12は、ピエゾ素子等の振動機構を備えており、次のような原理によりターゲット物質から液滴(ドロップレット)を生成する。即ち、レイリーの微小擾乱の安定性理論によれば、速度vで流れる直径dのターゲット噴流を、周波数fで振動させることによって擾乱させるときに、ターゲット噴流に生じた振動の波長λ(λ=v/f)が所定の条件(例えば、λ/d=4.51)を満たす場合に、均一な大きさの液滴が周波数fで繰り返して形成される。そのときの周波数fは、レイリー周波数と呼ばれる。
レーザ装置13は、高い繰り返し周波数(例えば、パルス幅が数n秒〜数十n秒程度、周波数が1kHz〜10kHz程度)でパルス発振可能なレーザ光源であり、ターゲット物質1を照射することによりプラズマ化させるためのレーザビーム2を射出する。また、集光レンズ14は、レーザ装置13から射出されたレーザビーム2を集光し、プラズマ発光点(以下において、レーザ照射位置とも言う)に照射させる。なお、集光レンズ14の替わりに、それ以外の集光光学部品や、複数の光学部品が組み合わせられた集光光学系を用いても良い。
このようなレーザビーム2をターゲット物質1に照射することにより、プラズマ3が生成され、そこから様々な波長成分が放射される。
EUV集光ミラー15は、プラズマ3から放射される様々な波長成分の内から、所定の波長成分(例えば、13.5nm付近のEUV光)を集光する集光光学系である。EUV集光ミラー15は、例えば、波長が13.5nm付近のEUV光を選択的に反射するモリブデン(Mo)/シリコン(Si)多層膜が形成されている凹状の反射面を有している。このEUV集光ミラー15により、EUV光4は所定の方向(図1においては、マイナスY方向)に反射集光され、例えば、露光装置に出力される。なお、EUV光の集光光学系は、図1に示すような集光ミラーに限定されず、複数の光学部品を用いて構成しても良いが、EUV光4の吸収を抑えるために反射光学系とすることが必要である。
ターゲット回収筒16は、プラズマ発光点を挟みターゲットノズル12に対向する位置に配置されている。ターゲット回収筒16は、ターゲットノズル12から噴射されたにもかかわらず、レーザビームを照射されることなくプラズマ化しなかったターゲット物質を回収する。それにより、不要なターゲット物質が飛散してEUV集光ミラー15等を汚染するのを防止すると共に、チャンバ内の真空度が低下するのを防いでいる。
電荷供給装置17は、例えば、電子銃や、ECR(電子サイクロトロン)プラズマ発生装置や、マイクロ波プラズマ発生装置や、誘電帯電装置であり、ターゲット物質1に電荷を供給することにより帯電させる。
加速装置18は、例えば、静電加速装置や、誘導加速装置や、RF(高周波)加速装置であり、電場及び/又は磁場の作用により、帯電したターゲット物質1を加速させる。それにより、EUV光の出力低下を招くことなく、ワーキングディスタンスを大きくすることができる。
なお、電荷供給装置17及び加速装置18の具体的な構成については、後で説明する。
電磁石19a及び19bの各々は、コイル巻き線やコイル巻き線の冷却機構等を含んでいる。また、望ましくは、電磁石19a及び19bに、ヨーク(電磁軟鉄のように、磁束を誘導するために用いられる部材)19cが配置される。これらの電磁石19a及び19bには、図示しない電源装置及びコントローラが接続されており、各電磁石19a及び19bに供給される電流を調節することにより、真空チャンバ10内に所望の磁場が形成される。
電磁石19a及び19bのコイルは、互いに平行、又は、略平行に、且つ、開口部の中心が一致するように対向して配置されており、1組のミラーコイルを形成している。ミラーコイルは、同じ向きに流れる電流を供給されることにより、プラズマ発生点を含む領域にミラー磁場を形成する。
ここで、ミラー磁場とは、電磁石19a及び19bのコイル近傍においては磁束密度が高く、それらのコイルの中間においては磁束密度が低い磁場のことである。通常、磁場閉じ込め核融合等で用いられるミラー磁場においては、イオンやプラズマの閉じ込め効果を高めるために、ミラー比を大きくする磁場設計が行われている。しかしながら、本実施形態においては、磁束線方向(Z軸方向)にイオンを効率良く排出する目的から、ミラー比が小さくなるように、電磁石19a及び19bの電磁石コイル、又は、ヨーク19cの設計を行っている。なお、ミラー比とは、2つのコイルの中間部における最小磁束密度Bに対するコイル近傍の最大磁束密度Bのこと(即ち、B/B)である。
このようなミラー磁場中において、荷電粒子(プラズマ3から放出される高速イオン等)は、ローレンツ力を受けることにより、磁束線に垂直な面内において回転する軌道を描いて運動するため、Z軸付近にトラップされる。また、そのような荷電粒子がZ方向の速度成分を有している場合には、Z軸に沿ってらせん軌道を描きながら移動し、電磁石19a及び19bの外側に排出される。それにより、荷電粒子がEUV集光ミラー15付近に飛来して、ミラーを汚染又は損傷するのを防いでいる。
また、本実施形態においては、電磁石19a及び19bに、互いに強さの異なる磁場をそれぞれ発生させることにより、図1の磁束線6に示すように、プラズマ3の位置で磁束線の中心軸に直交する面について、上下に非対称な磁場を形成している。なお、図1には、電磁石19a側の磁場を、電磁石19b側の磁場よりも強くした場合における磁束線6が示されている。従って、磁場の作用によりトラップされたイオンは、磁束密度の低い方(図1においては、下方)に導かれる傾向が強くなる。その結果、イオンをプラズマ発光点付近に滞留させることなく、ターゲット回収筒16やイオン排出管23の方向に積極的に導くことが可能になる。
さらに、本実施形態においては、ターゲット物質1の軌道の近傍において、磁束線6が略直線となり、且つ、ターゲット物質1の進入方向に対して略平行となるように、磁場の形状が制御されている。言い換えれば、磁束線6が略直線となる領域を形成し、この直線領域に沿うように、ターゲットノズル12からプラズマ発光点に向けてターゲット物質1を噴射する。それにより、帯電したターゲット物質1の速度ベクトルと磁束密度ベクトルとが平行になり、ターゲット物質1が磁束線6を横切ることはなくなる。その結果、帯電したターゲット物質1が受けるローレンツ力を低減できるので、ターゲット物質1の軌道の変動が抑制される。
このような電磁石19a及び19b並びにヨーク19cは、真空チャンバ10内において使用されるため、チャンバ内の真空度保持並びに汚染物質の放出防止のために、ステンレスやアルミニウム等の非磁性体金属又はセラミックスによって形成された収納容器によって密閉されている。それによって、コイル巻き線等はチャンバ内の真空空間と隔てられる。
各電磁石19a及び19bが発生する磁場の強さを互いに変化させるためには、電磁石19a及び19bに供給する電流の強さを変化させたり、電磁石19a及び19bのコイルの巻き数や径を互いに変化させたりすれば良い。また、ミラー磁場及び磁場による荷電粒子の排出作用の詳細については、特許文献2、並びに、ニコルソン(Dwight R. Nicholson)著、「プラズマ理論への序説(Introduction to Plasma Theory)」(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ出版(Johon Wiley & Sons, Inc.))の第2章第6節を参照されたい。
なお、本実施形態においては、ミラー磁場を形成するために電磁石コイルを用いているが、その替わりに、超伝導磁石や永久磁石を用いても良い。
同期コントローラ20は、後述するターゲットモニタ21の出力信号に基づいて、ターゲット物質1が所定のタイミングでプラズマ発光点に到達するように、電荷供給装置17及び加速装置18の動作を制御すると共に、レーザ装置13との動作タイミングを同期制御する。EUV光源装置は、EUV変換効率を向上させる観点から、例えば、数n秒〜数十n秒程度のパルス幅でレーザ(レーザビーム2)照射を行うからである。
図2を参照すると、ターゲットモニタ21は、CCDカメラ又はリニアに配置されたフォトセンサアレイを含んでおり、ターゲット物質1が所定の位置を通過したときに、その時刻を表す信号を出力する。ターゲットモニタ21がモニタする位置はレーザ照射位置であっても良いし、ターゲット物質1がレーザ照射位置に到達する時刻との相関があれば、それ以外の位置であっても良い。例えば、ターゲット物質1の軌道上であれば、モニタ位置とレーザ照射位置との間の距離と、ターゲット物質1の速度とに基づいて、ターゲット物質1がレーザ照射位置を通過する時刻を算出できる。
再び、図1を参照すると、ターゲット回収配管22は、ターゲット回収筒16によって回収されたターゲット物質をターゲット循環装置25に搬送する。
イオン排出管23は、電磁石19b(又は、ヨーク19c)の開口部に接続されるように設置されており、磁場にトラップされて電磁石19bの外側に導出されたイオンを回収して、ターゲット循環装置25に搬送する。
ターゲット排出管24は、チャンバ10内に残存するターゲット物質をチャンバ10の外部に排出するための通路である。
ターゲット循環装置25は、ターゲット回収配管22や、イオン排出管23や、ターゲット排出管24を介して回収された残存ターゲット物質やイオンを再利用するための装置であり、吸引動力源(吸引ポンプ)、ターゲット物質の精製機構、及び、圧送動力源(圧送ポンプ)を備えている。ターゲット循環装置25は、チャンバ10内から回収されたターゲット物質等を精製機構において精製し、ターゲット供給管26を介してターゲット供給装置11に圧送する。
なお、ターゲット循環装置25によるポンプ作用を補助するために、ターゲット回収配管22や、イオン排出管23や、ターゲット排出管24に、排気ポンプを別途設けても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、プラズマから放出されたイオンをトラップするための磁場を、ターゲット物質の軌道において磁束線が略直線状となるように形成し、帯電したターゲット物質をその直線部分に沿うように導入するので、磁場の作用によってターゲット物質の軌道が変動するのを抑制することができる。それにより、所定のタイミングで、一定の位置(レーザ照射位置)にターゲット物質を供給することが可能になる。従って、ターゲット物質に対してレーザビームを確実にパルス照射できるようになるので、EUV光を安定して発光させることが可能になる。その結果、極端紫外光源装置において、EUV光の利用効率の低減を防ぐと共に、安定した照度を得ることが可能になる。それにより、EUV光源装置の運転コストの削減や、稼働率の向上を図ることが可能となり、さらに、そのようなEUV光源装置を利用する露光システムにおいて露光性能が安定するので、稼働率や露光処理能力の向上を図ると共に、半導体デバイスの品質を安定させることが可能となる。
次に、図1に示す電荷供給装置17として用いられる装置について詳しく説明する。
図3は、熱電子放射型電子銃の電子発生原理を説明するための図である。図3に示すように、加熱用電源101によってフィラメント102を加熱することにより、フィラメント102の先端から熱電子が発生する。この熱電子が加速用電極(陽極)103によって加速され、ターゲット物質1(図1)に向けて放出される。このとき、電子の加速エネルギーを比較的低く(例えば、100eV以下)して、電子をターゲット物質1に照射すると、電子はターゲット物質1に付着する。それにより、ターゲット物質1は負に帯電する。一方、電子の加速エネルギーを比較的高く(例えば、100eVより大きく)して、電子をターゲット物質1に照射すると、電子の衝突エネルギーにより、ターゲット物質の表面の原子から2次電子が放出される。それにより、ターゲット物質1は正に帯電する。
図4は、電界放射型電子銃の電子発生原理を説明するための図である。図4に示すように、引出し電極(陽極)112によって強い電場を形成することにより、エミッタ(陰極)111の先端から電子が発生する。この電子が加速用電極(陽極)113によって加速され、ターゲット物質1(図1)に向けて放出される。この場合においても、加速エネルギーが比較的低い(例えば、100eV以下)電子をターゲット物質1に照射することにより、ターゲット物質1に電子が付着して、ターゲット物質1が負に帯電する。一方、加速エネルギーが比較的高い(例えば、100eVより大きい)電子をターゲット物質1に照射することにより、ターゲット物質から2次電子が放出されて、ターゲット物質1が正に帯電する。
図5は、ECRプラズマ発生装置の第1の構成例を示す模式図である。図5に示す放電室121は、例えば、石英管によって形成されており、その内部には適切な圧力の中性粒子ガス(プラズマガス)が供給されている。中性粒子ガスとしては、キセノン(Xe)や、アルゴン(Ar)や、ヘリウム(He)等が用いられる。また、放電室121の内部には、その周囲に配置された電磁石122により、高磁場(例えば、875gauss)が形成されている。そのため、放電室121中に存在する電子は、磁力線に巻きつくような旋回運動(サイクロトロン運動)を行っている。このような放電室121に、マイクロ波発生装置123からマイクロ波導波管124を介してマイクロ波(電場)を導入する。このとき、放電室121に形成された電場が、電子のサイクロトロン運動と同じ周波数で変化する場合には、電子は電場からエネルギーを得て、所謂、サイクロトロン共鳴状態となる。例えば、875gaussの磁場に対して、2.45GHzのマイクロ波を導入すると、サイクロトロン共鳴状態が引き起こされる。
ここで、マイクロ波エネルギーの有効利用の観点からは、右回転円偏光しているマイクロ波を用いる方が有利である。その理由は、次の通りである。即ち、図5に示すように、磁束が下向きの磁場(磁束密度B)が形成されている放電室121に対して、磁束と一致する方向(矢印方向)からマイクロ波を導入する場合を考える。このとき、水平偏光しているマイクロ波を放電室121内の電子に照射すると、電子は、電子サイクロトロン運動の1周期あたりに2回だけマイクロ波によって加速される。それに対して、右回転円偏光しているマイクロ波を電子に照射すると、マイクロ波の偏光方向と電子のサイクロトロン運動の回転方向とが常に一致することになるので、マイクロ波によって電子を加速し続けることが可能となるからである。その際に、磁束密度の高い方から低い方に向けてマイクロ波を照射することにより、電子臨界密度以上の高い密度のプラズマを生成することが可能である。なお、マイクロ波プラズマの発生原理の詳細については、電気学会・マイクロ波プラズマ調査専門委員会編、「マイクロ波プラズマの技術」、第1版、株式会社オーム社、平成15年9月25日、p.18−21を参照されたい。
このようにしてサイクロトロン共鳴状態となって加速された電子は、周囲の中性粒子に衝突して電離させる。そして、電子の衝突による電離と、電場から電子へのエネルギーの供給とが連鎖的に生じてプラズマが生成される。このプラズマは、オリフィス125を通って放電室121から真空チャンバ10(図1)内の空間(即ち、ターゲット物質1の軌道)に向けて放射される。
図5に示すように、オリフィス125の外側には、メッシュ状の開口部を有する引き出し電極126が配置されている。また、引き出し電極126には、高電圧電源装置127が接続されている。このような引き出し電極126に負の高電圧を印加した状態で、オリフィス125から放射されたプラズマに、引き出し電極126の開口部を通過させる。それにより、正に帯電したプラズマのみを選択的に取り出すことができる。このようなプラズマをターゲット物質1に照射することにより、ターゲット物質1を正に帯電させることができる。
図6は、ECRプラズマ発生装置の第2の構成例を示す模式図である。
図6においては、マイクロ波導波管135をL字に曲げ、窓136によって仕切った先の部分を放電室131としている。従って、放電室131に導波路を兼ねさせると共に、後述するように、その内部に磁場を形成できるようにするために、放電室131は、銅やアルミニウム等の導電性非磁性体金属材料によって形成されている。この放電室131の向かい合う2箇所(図6においては上部及び下部)には、ターゲットノズル12(図1)から噴射されたターゲット物質1を通過させるためのオリフィス132が形成されている。さらに、放電室131の内部には、プラズマガスとして、キセノン(Xe)や、アルゴン(Ar)や、ヘリウム(He)等の中性粒子ガスが充填されている。或いは、ターゲット物質1としてキセノンを用いる場合には、真空チャンバ10(図1)内に残留したキセノンガスをプラズマガスとして用いても良い。
このような放電室131の内部に、放電室131の周囲に配置された電磁石133によって高磁場を形成すると共に、マイクロ波発生装置134から導波管135及び窓136を介してマイクロ波(電場)を導入すると、放電室131内にプラズマが発生する。なお、プラズマ発生の原理については、第1の構成例において説明したのと同様である。このようなプラズマ領域に対してターゲット物質1を通過させることにより、ターゲット物質1が帯電する。ここで、通常、プラズマ中においては、イオンよりも電子の方が大きい速度で運動しているので、電子がターゲット物質1に衝突する確率が高くなる。そのため、本構成例において、ターゲット物質1は負に帯電する。
図7は、マイクロ波プラズマ発生装置の構成例を示す模式図である。
図7においては、マイクロ波導波路144の一部を窓145によって仕切ることにより放電室141を形成している。この放電室141は、マイクロ波を閉じ込めて振動させるために、金属材料で形成されていると共に、終端が閉じられている。また、放電室141の向かい合う2箇所(図7においては上部及び下部)には、ターゲットノズル12(図1)から噴射されたターゲット物質1を通過させるためのオリフィス142が形成されている。これらのオリフィス142は、放電室141内に発生する定常波の電界強度が最も強くなる領域をターゲット物質1が通過するように配置されている。
このような放電室141に、マイクロ波発生装置143から導波管144及び窓145を介してマイクロ波を導入すると、放電室141の終端においてマイクロ波が反射して、放電室141内に定常波が生成される。それにより、放電室141内にマイクロ波プラズマが発生する。そして、ターゲットノズル12からターゲット物質1を噴射して、定常波の内で最も電界強度が強い領域に形成されたマイクロ波プラズマ中を通過させる。それにより、ターゲット物質1が負に帯電する。なお、負に帯電する理由については、第2の構成例において説明したのと同様である。
図8は、誘電帯電装置の構成例を示す模式図である。ターゲット物質1を噴射するターゲットノズル12の下流側には、ターゲット物質1を通過させるための開口が形成された電極151が配置されている。これらのターゲットノズル12と電極151との間には、高電圧電源装置152によって、例えば、約1kVの高電圧が印加されている。それにより、ターゲットノズル12内を通るターゲット物質の連続流が液滴(ドロップレット)に分裂する際に、外部電極によって誘電分極し、その結果、ターゲット物質1が帯電する。
次に、図1に示す加速装置18として用いられる装置について詳しく説明する。
図9は、誘導加速装置の原理を説明するための図である。図9の(a)に示すように、誘導加速装置は、加速空洞(加速される粒子200を通過させる通路)を形成している導体201と、導体201内に配置された磁性体202と、磁性体202を囲むように形成された配線203とを含んでいる。磁性体202は、粒子200の通路を囲むように配置されている。図9の(b)に示すように、磁性体202は、加速空洞内にステップ状の誘導電場を発生させるためのトランスの磁性体コアに相当する。また、配線203はトランスの1次側配線に相当し、導体201はトランスの2次側配線に相当する。この配線203(1次側配線)に電圧を供給することにより磁性体202内に磁場(磁束密度Bθ)を発生させると、同じ磁性体202を囲む導体(2次側配線)201に誘導起電力が発生し、導体201と配線203との間のギャップ204に誘導電場Eが発生する。荷電粒子200は、このギャップ204を通過する際に、電場Eによって加速される。
図10は、RF加速装置の原理を説明するための図である。RF加速装置は、銅等によって形成された円筒状の複数の加速空洞211〜216を含んでいる。これらの加速空洞211〜216は、1つおきに共通配線されてRF電源装置217に接続されている。また、加速空洞211〜216の長さは、加速空洞211側から導入される荷電粒子210の速度に合わせて徐々に長くなるように設計されている。RF電源装置217は、荷電粒子210が加速空洞211〜216を通過するタイミングに同期して、各加速空洞211〜216に交流電圧を印加する。なお、図10の(a)は、ある瞬間における電場の様子を示しており、図10の(b)は、別の瞬間における電場の様子を示している。例えば、荷電粒子210がマイナスの電荷を有している場合には、荷電粒子210があるギャップを通過する際に、マイナスの加速空洞からプラスの加速空洞に向かうように電圧印加タイミングを調整する。それにより、荷電粒子210は、ギャップを通過する毎に少しずつ加速される。
図11は、ヴァンデグラフ型静電加速装置の原理を説明するための図である。ヴァンデグラフ型静電加速装置は、加速管221と、直流高電圧電源222と、電荷運搬部223と、電荷を蓄積するキャップ224とを備えている。電荷運搬部223は、例えば、絶縁材料によって形成されたベルトコンベアであり、直流高電圧電源222から供給された電荷をキャップ224に運搬する。それにより、キャップ224と接地電位との間に高電圧(例えば、数百キロ〜数メガボルト)が発生するので、これを加速電界として、加速管221内において荷電粒子220を加速する。
次に、本発明の第2の実施形態に係る極端紫外光源装置について、図12を参照しながら説明する。
本実施形態に係る極端紫外光源装置は、図1に示す極端紫外光源装置に対して、補助磁場形成装置31を更に設けたものである。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
ここで、電磁石19a及び19bによって形成される磁場においては、電磁石19aから離れるほど磁束線が発散してしまう。また、電磁石19a及び19bにヨーク19cが設けられている場合には、磁束線はより発散し易い。そこで、本実施形態においては、補助磁場形成装置31を設けることにより、より広い領域において、磁束線が略直線状、且つ、ターゲット物質1の進入方向に対して略平行となるようにしている。それにより、ターゲット物質1の軌道の変動をより確実に防いでいる。
なお、補助磁場形成装置31の配置は、加速装置18の下方には限定されず、電荷供給装置17と電磁石19aとの間であればどこであっても良い。
次に、本発明の第3の実施形態に係る極端紫外光源装置について、図13を参照しながら説明する。
本実施形態に係る極端紫外光源装置は、図12に示す極端紫外光源装置に対して、加速装置18の上部に補助磁場形成装置32を更に追加したものである。
ここで、ターゲット物質1は、電荷供給装置17によって電荷を与えられるとすぐに磁場の影響を受けてしまう。そこで、本実施形態においては、補助磁場形成装置32を設けることにより、磁束線6が略直線状且つターゲット物質1の進入方向に対して略平行とする領域をさらに拡張している。それにより、帯電したターゲット物質1の軌道を、より確実に安定させることができる。補助磁場形成装置32としては、電磁石や超伝導磁石や永久磁石が用いられる。
次に、本発明の第4の実施形態に係る極端紫外光源装置について説明する。図14は、本実施形態に係る極端紫外光源装置の構成を示す図であり、図15は、図14に示すXV−XVにおける断面図である。本実施形態に係る極端紫外光源装置は、図1に示す極端紫外光源装置に対して、ターゲット位置調整装置41と、ターゲット位置コントローラ42と、ターゲット位置モニタ43とを更に設けたものである。その他の構成については、図1に示すものと同様である。
ターゲット位置調整装置41は、ターゲット位置コントローラ42の制御の下で、電荷を供給されたターゲット物質1が磁場の中心(即ち、プラズマ発光点の軸上)を通るように、ターゲット物質1の位置を調整する。ターゲット位置調整装置41としては、電場や磁場のように、帯電したターゲット物質1に対して力学的作用を及ぼす装置が用いられる。
ターゲット位置コントローラ42は、ターゲット位置モニタ43から出力された検出信号に基づいて、ターゲット位置調整装置41の動作を制御する。
図15に示すように、ターゲット位置モニタ43は、CCDカメラ等のイメージセンサ又はリニアに配置されたフォトセンサアレイを含んでおり、レーザ照射位置(プラズマ発光点)に対するターゲット物質1の位置を検出する。ターゲット位置モニタ43が設置される位置は、レーザ照射位置を直接臨む位置であっても良いし、それ以外でも、レーザ照射位置に対するターゲット物質1の位置と相関がある位置であればどこでも良い。また、図15に示すように、ターゲット物質1を互いに異なる複数の方向から臨むように、ターゲット位置モニタ43を複数配置することにより、ターゲット物質1の位置検出精度を高めることができる。
本実施形態によれば、帯電したターゲット物質1の位置を調整して、ミラー磁場の磁束線が略直線状となっている領域に正確に投入するので、ターゲット物質1の軌道の変動をより効果的に抑制することが可能になる。
次に、図14に示すターゲット位置調整装置41の具体的な構成について説明する。
図16に示す極端紫外光源装置は、ターゲット位置調整装置として、電圧発生装置51と、2組の電極対52及び53とを有しており、電場の作用によりターゲット物質1の位置を調整する。
電圧発生装置51は、ターゲット位置コントローラ42の制御の下で、パルス的又は連続的な高電圧を電極対52及び53に供給する。
各電極対52及び53は、ターゲット物質1の軌道を挟んで互いに平行となるように対向配置された2枚の電極板を含んでいる。電極対52は、2枚の電極板の間にX方向の電場が形成されるように配置されており、電極対53は、2枚の電極板の間にY方向の電場が形成されるように配置されている。
このように、互いに異なる2つの方向の電場が電極対52及び53によってそれぞれ形成されている領域に、帯電したターゲット物質1を通過させることにより、ターゲット物質1の位置が2次元的に調整される。X方向及びY方向におけるターゲット物質1の変位量は、電圧発生装置51から電極対52及び53に供給される電圧値によって制御される。
図17に示す極端紫外光源装置は、ターゲット位置調整装置として、電源装置61と、電磁石部62とを含んでおり、磁場の作用によりターゲット物質1の位置を調整する。
電源装置61は、ターゲット位置コントローラ42の制御の下で、パルス的又は連続的に電流を電磁石部62に供給する。
図18は、電磁石部62を示す平面図である。図18に示すように、電磁石部62は、ターゲット物質1の軌道を挟んで互いに平行となるように対向配置された2対の電磁石を含んでいる。これらの電磁石においては、同じ磁極同士が対向するように電流の向きが決定されており、それにより、4つの電磁石の間には、磁束線7によって表される磁場が形成される。また、これらの電磁石は、磁場の中心(言い換えれば、4つの電磁石によってそれぞれ形成される磁場が相殺される位置)が、プラズマ発光点の軸上(即ち、電磁石19a及び19bによって形成される磁場の中心軸上)に来るように配置されている。
図18に示すように、帯電したターゲット物質1が、電磁石部62によって形成される磁場の中心を、磁束線7を含む面に直交する方向(例えば、紙面の表面から裏面に向かう方向)に通過する場合には、ターゲット物質1は磁束線7を横切ることはない。従って、ターゲット物質1は、磁場の影響を受けることなく直進する。一方、ターゲット物質1の位置が磁場の中心からずれていると、ターゲット物質1は磁束線7を横切ることになる。そのため、帯電したターゲット物質1は、ローレンツ力を受けて中心方向に押し戻される。そして、図18に示すように、磁束線7は、中心から周辺に向かって次第に密になっているので、ターゲット物質1の通過位置が周辺に近づくほど、ターゲット物質1はより多くの磁束線7を横切ることになるので、より大きい力で中心方向に押し戻される。結局、帯電したターゲット物質1は、磁束密度の小さい方向(即ち、磁場中心の方向)に力を受けて、その位置は磁場中心に収束する。
なお、電磁石部62によって形成される磁場の中心をプラズマ発光点の軸上に合わせるためには、4つの電磁石に供給される電流の強さを調整することにより行っても良いし、それらの電磁石の位置を調整することにより行っても良い。また、図17においては、電磁石の替わりに永久磁石を用いて、同様の原理によりターゲット物質1の位置調整を行っても良い。
以上の説明においては、電場及び磁場のいずれかの作用によりターゲット物質の位置を調整しているが、それらの両方の作用を利用しても良い。例えば、図14に示すターゲット位置調整装置41として、電荷供給装置17の下流に、図16に示す電極対52及び53を設け、さらにその下流に、図17に示す電磁石部62を設ける。それにより、電場の作用によりターゲット物質1の軌道を調整した後で、磁場の作用によりターゲット物質1の軌道をプラズマ発光点の軸上に収束させることができる。その結果、より高い精度でターゲット物質1の位置を調整することが可能になる。
ここで、本実施形態においては、磁場に投入されるターゲット物質1の位置を調節するためにターゲット位置調整装置41を設けているが、それ以外の用途のためにターゲット位置調整装置41を利用しても良い。
ここで、液滴のターゲット物質1が生成される周波数fと、レーザ装置13(図14)がレーザビーム2をパルス発振する繰り返し動作周波数f'とは、必ずしも同じではない。例えば、LPP型EUV光源装置において一般に用いられるYAGレーザの繰り返し動作周波数f'が10kHz程度であるのに対し、速度約30m/sで滴下する直径約60μmの液滴を形成する場合に、液滴を生成するための振動の周波数fは約110kHzとなる。このように、通常、液滴の生成周波数fは、繰り返し周波数f'の数倍から数十倍となる。そのような場合には、ターゲットノズル12から噴射されたターゲット物質1は、数個の間隔でレーザビーム2を照射される。そのため、EUV集光ミラー15の周辺には、レーザビーム2が照射されないターゲット物質1も投入されてしまうが、そのような状態はデブリ発生の観点からあまり好ましくない。即ち、あるターゲット物質1にレーザビーム2を照射することによりプラズマが生成されるが、それによって発生した熱エネルギーによって近隣のターゲット物質1が蒸発してしまう。そのため、近隣のターゲット物質は、EUV光の生成に貢献しないにも関わらず、真空チャンバ10内の汚染原因になってしまうからである。
そこで、ターゲット位置調整装置41を、液滴のターゲット物質1を間引くために利用できる。即ち、図19に示すように、ターゲットノズル12(図14)から噴射されたターゲット物質1の内から、所定のターゲット物質1'の軌道を、ターゲット位置調整装置41によってターゲット物質1の進行方向(プラズマ発光点に向かう方向)とは異なる方向に変更する。それにより、レーザビーム2の照射タイミングに合うターゲット物質1のみを、プラズマ発光点に投入することができる。また、軌道を変更されたターゲット物質1'は、例えば、ターゲット排出管24の方向に導いて回収すれば良い。その後で、ターゲット循環装置25によりターゲット物質1を精製して再利用しても良い。
このように、不要なターゲット物質1を間引くことにより、プラズマ発光点付近においけるターゲット物質1の蒸発量を低減できるので、真空チャンバ10内の真空度の低下(圧力上昇)を防止できると共に、EUV集光ミラー15等の真空チャンバ10内の部品の汚染を抑制することが可能になる。
以上説明した本発明の第4の実施形態は、図1に示す極端紫外光源装置に対してターゲット位置調整装置を設けているが、図12や図13に示す極端紫外光源装置に対して同様の装置を設けても良い。それにより、ターゲット物質1の軌道の精度をより高めることが可能になる。
本発明は、露光装置の光源として用いられる極端紫外光源装置において利用することが可能である。
本発明の第1の実施形態に係る極端紫外光源装置の構成を示す図である。 図1のII−IIにおける断面を示す図である。 熱電子放射型電子銃の電子発生原理を説明するための図である。 電界放射型電子銃の電子発生原理を説明するための図である。 ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ発生装置の第1の構成例を示す模式図である。 ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ発生装置の第2の構成例を示す模式図である。 マイクロ波プラズマ発生装置の構成例を示す模式図である。 誘電帯電装置の構成例を示す模式図である。 誘導加速装置の原理を説明するための図である。 RF(高周波)加速装置の原理を説明するための図である。 ヴァンデグラフ型静電加速装置の原理を説明するための図である。 本発明の第2の実施形態に係る極端紫外光源装置の構成を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る極端紫外光源装置の構成を示す図である。 本発明の第4の実施形態に係る極端紫外光源装置の構成を示す図である。 図14に示すXV−XVにおける断面を示す図である。 電場の作用を用いたターゲット位置調整装置を備える極端紫外光源装置の構成を示す図である。 磁場の作用を用いたターゲット位置調整装置を備える極端紫外光源装置の構成を示す図である。 図17に示す電磁石部を示す平面図である。 図14に示すターゲット位置調整装置を、ターゲット物質を間引きする装置として利用する例を示す図である。
符号の説明
1…ターゲット物質(ドロップレットターゲット)、2…レーザビーム、3…プラズマ、4…EUV光、6、7…磁束線、10…真空チャンバ、11…ターゲット供給装置、12…ターゲットノズル、13…レーザ装置、14…集光レンズ、15…EUV集光ミラー、16…ターゲット回収筒、17…電荷供給装置、18…加速装置、19a、19b…電磁石、19c…ヨーク、20…同期コントローラ、21…ターゲットモニタ、22…ターゲット回収配管、23…イオン排出管、24…ターゲット排出管、25…ターゲット循環装置、26…ターゲット供給管、31、32…補助磁場形成装置、41…ターゲット位置調整装置、42…ターゲット位置コントローラ、43…ターゲット位置モニタ、51…電圧発生装置、52、53…電極対、61…電源装置、62…電磁石部、101…加熱用電源、102…フィラメント、103、113…加速用電極、111…エミッタ、112、126…引き出し電極、121、131、141…放電室、122、133…電磁石、123、134、143…マイクロ波発生装置、124、136、144…マイクロ波導波管、125、132、142…オリフィス、127、152…高電圧電源装置、200、210、220…荷電粒子、136、145…窓、151…電極、201…導体、202…磁性体、203…配線、204…ギャップ、211〜216…加速空洞、217…RF電源装置

Claims (9)

  1. レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、
    内部で極端紫外光が生成されるチャンバと、
    前記チャンバ内にターゲット物質を噴射するターゲットノズルと、
    前記ターゲットノズルから噴射されるターゲット物質を帯電させる電荷供給装置と、
    静電加速装置、誘導加速装置、及び、高周波加速装置の内の1つを含み、前記電荷供給装置によって帯電され、前記レーザ光を照射される前のターゲット物質を、少なくとも電場の作用により加速する加速装置と、
    電磁石、超伝導磁石、及び、永久磁石の内のいずれかを含み、前記チャンバ内にミラー磁場を形成する1組の磁石と、ターゲット物質の軌道において該ミラー磁場の磁束線が略直線状且つターゲット物質の進入方向に対して略平行となるように、補助的な磁場を形成する少なくとも1つの補助磁場形成装置とを含む磁場形成装置と、
    前記ターゲットノズルに対抗して配置されたターゲット回収筒と、
    を具備する極端紫外光源装置。
  2. 前記磁場形成装置が、
    前記チャンバ内にミラー磁場を形成する1組の電磁石と、
    前記1組の電磁石によって形成されるミラー磁場の磁束線が、ターゲット物質の軌道において、略直線状且つターゲット物質の進入方向に対して略平行となるように、前記1組の電磁石に供給される電流を制御する制御部と、
    を含む、請求項1記載の極端紫外光源装置。
  3. 前記少なくとも1つの補助磁場形成装置が、前記加速装置と前記1組の磁石との間、及び/又は、前記電荷供給装置と前記加速装置との間に配置されている、請求項1又は2記載の極端紫外光源装置。
  4. レーザ光源から出力されたレーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、
    内部で極端紫外光が生成されるチャンバと、
    前記チャンバ内にターゲット物質を噴射するターゲットノズルと、
    前記ターゲットノズルから噴射されるターゲット物質を帯電させる電荷供給装置と、
    帯電したターゲット物質の位置を複数の方向から検出してそれぞれ検出信号を出力する複数のターゲット位置モニタと、
    ターゲット物質が通過する領域に、互いに異なる2つの方向の電場を発生させる2対の電極と、
    前記2対の電極に電圧を供給する電圧発生装置と、
    前記複数のターゲット位置モニタから出力される検出信号に基づいて、前記電圧発生装置によって前記2対の電極に供給される電圧値を制御するターゲット位置コントローラと、
    前記電荷供給装置によって帯電され、前記レーザ光を照射される前のターゲット物質を、少なくとも電場の作用により加速する加速装置と、
    前記ターゲットノズルに対抗して配置されたターゲット回収筒と、
    を具備する極端紫外光源装置。
  5. 前記加速装置が、ターゲット物質の経路における前記電荷供給装置及び前記2対の電極の下流に配置されている、請求項記載の極端紫外光源装置。
  6. 前記チャンバ内にミラー磁場を形成する1組の電磁石をさらに具備する、請求項又は記載の極端紫外光源装置。
  7. 前記チャンバ内のターゲット物質を前記チャンバ外に排出するターゲット排出管をさらに具備する、請求項1〜のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
  8. 前記ターゲットノズルが、ピエゾ素子を含む振動機構を備える、請求項1〜のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
  9. レーザ光を集光する集光レンズをさらに具備する、請求項1〜のいずれか1項記載の極端紫外光源装置。
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