本発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)が、真空蒸着およびスピンコートのいずれの方法でも非晶質の薄膜形成が可能であり、またこれらを電子輸送層として用いた有機電界発光素子が、汎用の有機電界発光素子に比べて駆動電圧の低下や高効率化が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、一般式(1)
[式中、Ar
1およびAr
2は、各々独立に炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良いフェニル基、ナフチル基またはビフェニリル基を示す。R
1、R
2およびR
3は、各々独立に水素原子またはメチル基を示す。Xは、フェニレン基、ナフチレン基またはピリジレン基を示し、これらの基は炭素数1から6のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良い。pは0から2の整数を示す。pが2のとき、Xは同一または相異なっていても良い。Pyは炭素数1から6のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良いピリジル基を示す。]で表されることを特徴とする1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体である。
また本発明は、一般式(1)で表される1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体を、一般式(2)
[式中、X、pおよびPyは前記と同じ内容を示し、Mは、−ZnR
4基、−MgR
5基、−SnR
6R
7R
8基、−B(OH)
2基、−BR
9基、−BF
3 −(Z
1)
+基または−SiR
10R
11R
12基を示す。但し、R
4およびR
5は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示し、R
6、R
7およびR
8は、各々独立に炭素数1から4のアルキル基を示し、R
9は2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ基、エチレンジオキシ基、1,3−プロパンジオキシ基または1,2−フェニレンジオキシ基を示し、(Z
1)
+はアルカリ金属イオンまたは四級アンモニウムイオンを示し、R
10、R
11およびR
12は、各々独立にメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基または塩素原子を示す。]で表される化合物と、一般式(3)
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2およびR
3は、前記と同じ内容を示し、Yは脱離基を示す。]で表される化合物とを、金属触媒の存在下でカップリング反応させることにより得ることを特徴とする製造方法である。
さらに本発明は、一般式(1)で表される1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体を、一般式(4)
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3、およびMは、前記と同じ内容を示す。]で表される化合物と、一般式(5)
[式中、X、p、Py、およびYは、前記と同じ内容を示す。]で表される化合物とを、金属触媒の存在下でカップリング反応させることにより得ることを特徴とする製造方法である。
また本発明は、一般式(1)で表される1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体を構成成分とする有機電界発光素子である。
さらに本発明は、一般式(3)で表されることを特徴とする化合物である。
また本発明は、一般式(3)で表される化合物を、一般式(6)
[式中、R
1、R
2、R
3およびYは、前記と同じ内容を示す。]で表される化合物と、一般式(7)
[式中、Ar
1は前記と同じ内容を示す。]で表される化合物と、一般式(8)
[式中、Ar
2は前記と同じ内容を示す。]で表される化合物とを、ルイス酸の存在下で反応させて、一般式(9)
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3およびYは、前記と同じ内容を示し、Z
3は陰イオンを示す。]で表される塩を得、これをアンモニア水で処理して得ることを特徴とする製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
Ar1およびAr2で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良いフェニル基としては、具体的には、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2,4−ジプロピルフェニル基、3,5−ジプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、3,5−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基等があげられる。
また、2,4−ジブチルフェニル基、3,5−ジブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、2−ペンチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、2,4−ジペンチルフェニル基、3,5−ジペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、3−ネオペンチルフェニル基、4−ネオペンチルフェニル基、2,4−ジネオペンチルフェニル基、3,5−ジネオペンチルフェニル基、2−ヘキシルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2,4−ジヘキシルフェニル基、3,5−ジヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジシクロヘキシルフェニル基または3,5−ジシクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。
有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基または4−シクロヘキシルフェニル基が望ましく、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−ブチルフェニル基または4−tert−ブチルフェニル基がさらに望ましい。
Ar1およびAr2で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良いビフェニリル基としては、4−ビフェニリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−トリフルオロメチルビフェニル−4−イル基、2,5−ジメチルビフェニル−4−イル基、2’,5’−ジメチルビフェニル−4−イル基、4’−エチルビフェニル−4−イル基、4’−プロピルビフェニル−4−イル基、4’−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、4’−ヘキシルビフェニル−4−イル基、3−ビフェニリル基、3’−メチルビフェニル−3−イル基、3’−トリフルオロメチルビフェニル−3−イル基、3’−エチルビフェニル−3−イル基、3’−プロピルビフェニル−3−イル基、3’−ブチルビフェニル−3−イル基、3’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基または3’−ヘキシルビフェニル−3−イル基等が挙げられる。
有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、4−ビフェニリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4’−tert−ブチルビフェニル−4−イル基、3−ビフェニリル基、3’−メチルビフェニル−3−イル基または3’−tert−ブチルビフェニル−3−イル基が望ましく、4−ビフェニリル基または3−ビフェニリル基がさらに望ましい。
Ar1およびAr2で表される炭素数1から6のアルキル基またはトリフルオロメチル基で1つ以上置換されていても良いナフチル基としては、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−エチルナフタレン−1−イル基、4−プロピルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、4−ヘキシルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−エチルナフタレン−1−イル基、5−プロピルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−ヘキシルナフタレン−1−イル基等があげられる。
また、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、6−エチルナフタレン−2−イル基、6−プロピルナフタレン−2−イル基、6−ブチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、6−ヘキシルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−エチルナフタレン−2−イル基、7−プロピルナフタレン−2−イル基、7−ブチルナフタレン−2−イル基、7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基または7−ヘキシルナフタレン−2−イル基等が挙げられる。
有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で、1−ナフチル基、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−tert−ブチルナフタレン−1−イル基、2−ナフチル基、6−メチルナフタレン−2−イル基、6−tert−ブチルナフタレン−2−イル基、7−メチルナフタレン−2−イル基または7−tert−ブチルナフタレン−2−イル基が望ましく、1−ナフチル基または2−ナフチル基がさらに望ましい。
R1、R2およびR3は、有機電界発光素子用材料としての性能が良い点で水素原子が望ましい。
Xとしては、フェニレン基、ナフチレン基またはピリジレン基であり、これらは炭素数1から6のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されていても良い。例えば、1,3−フェニレン基、2−メチル−1,3−フェニレン基、4−メチル−1,3−フェニレン基、5−メチル−1,3−フェニレン基、2−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、4−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、5−tert−ブチル−1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、2−tert−ブチル−1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基等があげられる。
また1,4−ナフチレン基、2−メチル−1,4−ナフチレン基、5−メチル−1,4−ナフチレン基、6−メチル−1,4−ナフチレン基、2−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、5−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、6−tert−ブチル−1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2−メチル−1,5−ナフチレン基、3−メチル−1,5−ナフチレン基、4−メチル−1,5−ナフチレン基、2−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、3−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、4−tert−ブチル−1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、1−メチル−2,6−ナフチレン基、3−メチル−2,6−ナフチレン基、4−メチル−2,6−ナフチレン基、1−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基、3−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基、4−tert−ブチル−2,6−ナフチレン基等があげられる。
また、2,4−ピリジレン基、3−メチル−2,4−ピリジレン基、5−メチル−2,4−ピリジレン基、6−メチル−2,4−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、5−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、6−tert−ブチル−2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、3−メチル−2,5−ピリジレン基、4−メチル−2,5−ピリジレン基、6−メチル−2,5−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、4−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、6−tert−ブチル−2,5−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基、3−メチル−2,6−ピリジレン基、4−メチル−2,6−ピリジレン基、3−tert−ブチル−2,6−ピリジレン基、4−tert−ブチル−2,6−ピリジレン基、3,5−ピリジレン基、2−メチル−3,5−ピリジレン基、4−メチル−3,5−ピリジレン基等をあげることができる。
また、6−メチル−3,5−ピリジレン基、2−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、4−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、6−tert−ブチル−3,5−ピリジレン基、3,6−ピリジレン基、2−メチル−3,6−ピリジレン基、4−メチル−3,6−ピリジレン基、5−メチル−3,6−ピリジレン基、2−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、4−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、5−tert−ブチル−3,6−ピリジレン基、4,6−ピリジレン基、2−メチル−4,6−ピリジレン基、3−メチル−4,6−ピリジレン基、5−メチル−4,6−ピリジレン基、2−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基、3−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基または5−tert−ブチル−4,6−ピリジレン基等を例示することができる。
有機電界発光素子としての性能が良い点で、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,4−ピリジレン基、2,6−ピリジレン基、3,5−ピリジレン基、3,6−ピリジレン基または4,6−ピリジレン基が望ましい。
Pyとしては、具体的には、2−ピリジル基、3−メチルピリジン−2−イル基、4−メチルピリジン−2−イル基、5−メチルピリジン−2−イル基、6−メチルピリジン−2−イル基、3−エチルピリジン−2−イル基、4−エチルピリジン−2−イル基、5−エチルピリジン−2−イル基、6−エチルピリジン−2−イル基、3−プロピルピリジン−2−イル基、4−プロピルピリジン−2−イル基、5−プロピルピリジン−2−イル基、6−プロピルピリジン−2−イル基、3−ブチルピリジン−2−イル基、4−ブチルピリジン−2−イル基、5−ブチルピリジン−2−イル基、6−ブチルピリジン−2−イル基、3−tert−ブチルピリジン−2−イル基、4−tert−ブチルピリジン−2−イル基、5−tert−ブチルピリジン−2−イル基等があげられる。
また、6−tert−ブチルピリジン−2−イル基、3−フルオロピリジン−2−イル基、4−フルオロピリジン−2−イル基、5−フルオロピリジン−2−イル基、6−フルオロピリジン−2−イル基、3−ピリジル基、2−メチルピリジン−3−イル基、4−メチルピリジン−3−イル基、5−メチルピリジン−3−イル基、6−メチルピリジン−3−イル基、2−エチルピリジン−3−イル基、4−エチルピリジン−3−イル基、5−エチルピリジン−3−イル基、6−エチルピリジン−3−イル基、2−プロピルピリジン−3−イル基、4−プロピルピリジン−3−イル基、5−プロピルピリジン−3−イル基、6−プロピルピリジン−3−イル基、2−ブチルピリジン−3−イル基、4−ブチルピリジン−3−イル基、5−ブチルピリジン−3−イル基等があげられる。
また、6−ブチルピリジン−3−イル基、2−tert−ブチルピリジン−3−イル基、4−tert−ブチルピリジン−3−イル基、5−tert−ブチルピリジン−3−イル基、6−tert−ブチルピリジン−3−イル基、2−フルオロピリジン−3−イル基、2−フルオロピリジン−4−イル基、2−フルオロピリジン−5−イル基、2−フルオロピリジン−6−イル基、4−ピリジル基、2−メチルピリジン−4−イル基、3−メチルピリジン−4−イル基、2−エチルピリジン−4−イル基、3−エチルピリジン−4−イル基、2−プロピルピリジン−4−イル基、3−プロピルピリジン−4−イル基、2−ブチルピリジン−4−イル基、3−ブチルピリジン−4−イル基、2−tert−ブチルピリジン−4−イル基、3−tert−ブチルピリジン−4−イル基、1−フルオロピリジン−4−イル基、2−フルオロピリジン−4−イル基等を例示することができる。
有機電界発光素子としての性能が良い点で、2−ピリジル基、3−ピリジル基または4−ピリジル基が望ましい。
上記のXおよびPyから成る置換基−Xp−Pyとしては、次の(I)から(LVII)の基本骨格で示される基、およびこれらの基本骨格が炭素数1から6のアルキル基またはフッ素原子で1つ以上置換されたものが例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
次に本発明の製造方法について説明する。本発明の一般式(1)で表される1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体は、下記[製造方法−A]または[製造方法−B]の方法によって製造することができる。
[製造方法−A]は「工程A−1」と「工程A−2」から成る。
[製造方法−A]
「工程A−1」
[式中、Y、X、p、PyおよびMは、前記と同じ内容を表す。]
「工程A−2」
[式中、M、X、p、Py、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3およびYは、前記と同じ内容を示す。]
まず、「工程A−1」では、化合物(5)をブチルリチウムやtert−ブチルリチウム等のリチウム試薬でリチオ化後、カップリング用試薬を反応させることにより、カップリング反応に通常用いられる反応種である化合物(2)が得られる。
カップリング用試薬としては、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化トリメチルスズ、塩化トリブチルスズ、トリブチルスズヒドリド、ヘキサメチルジスタナン、ヘキサブチルジスタナン、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)ボラン、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)メトキシボラン、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)イソプロポキシボラン、エチレンジオキシボラン、1,3−プロパンジオキシボラン、ビス(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)ジボラン、1,2−フェニレンジオキシボラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランまたは二塩化ジエチルシラン等が例示でき、これらとの反応によりMが−ZnCl種、−ZnBr種、−ZnI種、−Sn(CH3)3種、−Sn(C4H9)3種、−B(OH)2種、−B(OMe)2種、−B(O−iso−C3H7)2種、−B(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)種、−B(エチレンジオキシ)種、−B(1,3−プロパンジオキシ)種、−B(1,2−フェニレンジオキシ)種、−Si(OCH3)3種、−Si(OC2H5)3種または−SiCl2(C2H5)種等である化合物(2)を得ることができる。
ホウ酸エステルと反応させた場合は、反応後にフッ化水素水と反応させ、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたはフッ化テトラブチルアンモニウム等で処理することによって、Mを−BF3 −K+種、−BF3 −Cs+種または−BF3 −N(C4H9)4 +種等のような塩としても良い。
また、化合物(5)をリチオ化せずに、直接臭化マグネシウムまたは臭化イソプロピルマグネシウム等と反応させてMが−MgBr種等である化合物(2)を得ることもできる。
得られたこれらの化合物(2)は、反応後単離しても良いが、単離せずに次の「工程A−2」に供しても良い。
収率が良い点で、リチオ化後にジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化トリメチルスズまたは塩化トリブチルスズと反応させて、Mが−ZnCl種、−ZnBr種、−ZnI種、−Sn(CH3)3種または−Sn(C4H9)3種である化合物(2)を得、単離せずに「工程A−2」に供することが望ましい。リチオ化後にジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)または塩化トリメチルスズと反応させて、Mが−ZnCl種または−Sn(CH3)3種である化合物(2)を得、単離せずに「工程A−2」に供することがさらに望ましい。
Yで表される脱離基は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基等を例示することができるが、収率が良い点で臭素原子またはヨウ素原子が望ましい。
「工程A−1」でリチオ化に用いるリチウム試薬と化合物(5)とのモル比は、1:1から5:1が望ましく、収率が良い点で1:1から3:1がさらに望ましい。
「工程A−1」でリチウム試薬およびカップリング用試薬との反応の際に用いる溶媒として、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、キシレン、クロロホルムまたはジクロロメタン等が例示でき、これらを適宜組合わせて用いても良い。収率が良い点でテトラヒドロフランを単独で用いることが望ましい。
「工程A−1」での化合物(5)の濃度は、10mmol/Lから10000mmol/Lが望ましく、収率が良い点で50mmol/Lから200mmol/Lがさらに望ましい。
「工程A−1」でのリチオ化の際の反応温度は、−150℃から−20℃が望ましく、収率が良い点で−100℃から−60℃から適宜選ばれた温度がさらに望ましい。
「工程A−1」でのリチオ化の際の反応時間は、1分から3時間が望ましく、収率が良い点で15分から1時間がさらに望ましい。
「工程A−1」でカップリング用試薬と化合物(5)とのモル比は、1:1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
「工程A−1」でのカップリング用試薬を加えた後の反応温度は、−150℃から−20℃の低温領域から−20℃から50℃の高温領域に昇温することが望ましく、収率が良い点で−100℃から−60℃の低温領域から0℃から30℃の高温領域に昇温することがさらに望ましい。
「工程A−1」でのカップリング用試薬との反応時間は、基質や反応スケール等によって異なり、特に制限はないが、低温領域での反応は1分から1時間が望ましく、収率が良い点で5分から30分がさらに望ましい。高温領域での反応は、10分から10時間が望ましく、収率が良い点で30分から5時間がさらに望ましい。
「工程A−2」では、「工程A−1」で得られた化合物(2)を、金属触媒の存在下に化合物(3)と反応させることにより、本発明の1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)を得ることができる。
「工程A−2」で用いることのできる金属触媒は、例えば「Metal−catalyzed Cross−coupling Reactions」、Wiley−VCH,1998年、「Modern Organonickel Chemistry」、Wiley−VCH,2005年、またはJournal of the American Chemical Society,126巻,3686−3687ページ,2004年に記載されているパラジウム触媒、ニッケル触媒、鉄触媒、ルテニウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒、オスミウム触媒およびコバルト触媒等を列挙することができる。
収率が良い点でパラジウム触媒、ニッケル触媒または鉄触媒が望ましく、パラジウム触媒がさらに望ましい。
パラジウム触媒としては、さらに具体的には、パラジウム黒、パラジウムスポンジ等のパラジウム金属が例示でき、また、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭素、パラジウム/シリカ、パラジウム/Y型ゼオライト、パラジウム/A型ゼオライト、パラジウム/X型ゼオライト、パラジウム/モルデナイト、パラジウム/ZSM−5等の担持パラジウム金属も例示できる。また、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム、シアン化パラジウム、ナトリウムヘキサクロロパラデート、カリウムヘキサクロロパラデート、ナトリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラクロロパラデート、カリウムテトラブロモパラデート、アンモニウムテトラクロロパラデート、アンモニウムヘキサクロロパラデート等の金属塩を例示できる。
さらに、π―アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、ホウフッ化テトラ(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロジアンミンパラジウム、硝酸テトラアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウムテトラクロロパラデート、ジクロロジピリジンパラジウム、ジクロロ(2,2’−ビピリジル)パラジウム、ジクロロ(フェナントロリン)パラジウム、硝酸(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム、硝酸ジフェナントロリンパラジウム、硝酸ビス(テトラメチルフェナントロリン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウムおよびジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等の錯化合物を例示できる。
これらのパラジウム触媒は単独で用いても良いが、さらに三級ホスフィンと組合わせて用いても良い。用いることのできる三級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリネオペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリ(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(2−ヒドロキシエチル)ホスフィン、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(2−シアノエチル)ホスフィン、(+)−1,2−ビス[(2R,5R)−2,5−ジエチルホスホラノ]エタン、トリアリルホスフィン、トリアミルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等があげられる。
また、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、イソブチルジフェニルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、(R)−(+)−2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−メトキシ−1,1’−ビナフチル、(−)−1,2−ビス[(2R,5R)−2,5−ジメチルホスホラノ]ベンゼン、(+)−1,2−ビス[(2S,5S)−2,5−ジメチルホスホラノ]ベンゼン、(−)−1,2−ビス((2R,5R)−2,5−ジエチルホスホラノ)ベンゼン、(+)−1,2−ビス[(2S,5S)−2,5−ジエチルホスホラノ]ベンゼン、1,1’−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン等があげられる。
また、(−)−1,1’−ビス[(2S,4S)−2,4−ジエチルホスホラノ]フェロセン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(+)−1,2−ビス[(2R,5R)−2,5−ジ−イソプロピルホスホラノ]ベンゼン、(−)−1,2−ビス[(2S,5S)−2,5−ジ−イソプロピルホスホラノ]ベンゼン、(±)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等があげられる。
また、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(2R,3R)−(−)−2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、(2S,3S)−(+)−2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン、(2S,3S)−(−)−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、cis−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エチレン、ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、(2S,4S)−(−)−2,4−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、(2R,4R)−(−)−2,4−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、R−(+)−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等があげられる。
また、(2S,3S)−(+)−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ブタンジオール、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリス(3−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス[4−(ペルフルオロへキシル)フェニル]ホスフィン、トリス(2−チエニル)ホスフィン等があげられる。
また、トリ(m−トリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(p−トリル)ホスフィン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、トリス(3,5−キシリル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、(S)−(+)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、(R)−(−)−4,12−ビス(ジフェニルホスフィノ)−[2.2]−パラシクロファン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等があげられる。
また、(S)−(−)−2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、ビス(2−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、(1R,2R)−(+)−N,N’−ビス(2’−ジフェニルホスフィノベンゾイル)−1,2−ジアミノシクロヘキサン、(1S,2S)−(+)−N,N’−ビス(2’−ジフェニルホスフィノベンゾイル)−1,2−ジアミノシクロヘキサン、(±)−N,N’−ビス(2’−ジフェニルホスフィノベンゾイル)−1,2−ジアミノシクロヘキサン、(1S,2S)−(−)−N,N’−ビス(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフトイル)−1,2−ジアミノシクロヘキサン、(1R,2R)−(+)−N,N’−ビス(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフトイル)−1,2−ジアミノシクロヘキサン等があげられる。
また、(±)−N,N’−ビス(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフトイル)ジアミノシクロヘキサン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、ビス(p−スルホナトフェニル)フェニルホスフィン二カリウム塩、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、(S)−(−)−1−(2−ジフェニルホスフィノ−1−ナフチル)イソキノリンおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィン等が例示できる。
「工程A−2」で用いられるパラジウム触媒は、上記の金属、担持金属、金属塩および錯化合物のいずれでも良いが、収率が良い点で、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム、パラジウム/アルミナおよびパラジウム/炭素が望ましく、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムがさらに望ましい。
また、用いられる三級ホスフィンは、上記の三級ホスフィンのいずれでも良いが、収率が良い点で、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルおよび(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルが望ましい。
またトリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルおよび(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルがさらに望ましい。
また、「工程A−2」では、塩基の添加なしでも反応は十分に進行するが、収率向上のため塩基を添加しても良い。添加する塩基としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジイソプロピルアミンまたはエチルジイソプロピルアミン等の無機塩基または有機塩基が例示できる。
「工程A−2」での化合物(2)と化合物(3)とのモル比は、1:0.5から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.75から1:2がさらに望ましい。
「工程A−2」での金属触媒と化合物(3)とのモル比は、0.001:1から0.5:1が望ましく、収率が良い点で0.01:1から0.1:1がさらに望ましい。
「工程A−2」で用いることのできる溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジエチルエーテル、キシレン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンまたはヘキサメチルリン酸トリアミド等が例示でき、これらを適宜組合せて用いても良い。収率が良い点でジオキサン、ジエチルエーテル、トルエンまたはテトラヒドロフランが望ましい。「工程A−1」で生成した化合物(2)を単離せずに「工程A−2」に供する場合は、「工程A−1」で用いる溶媒をそのまま用いることもできる。
「工程A−2」での化合物(3)の濃度は、5mmol/Lから1000mmol/Lが望ましく、収率が良い点で10mmol/Lから200mmol/Lがさらに望ましい。
「工程A−2」での反応温度は、0℃から用いる溶媒の還流温度から適宜選ばれた温度望ましく、収率が良い点で溶媒の還流温度がさらに望ましい。
「工程A−2」での反応時間は、10分から48時間が望ましく、収率が良い点で30分から24時間がさらに望ましい。
次に、[製造方法−B]について説明する。[製造方法−B]は「工程B−1」と「工程B−2」から成る。
[製造方法−B]
「工程B−1」
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3、YおよびMは、前記と同じ内容を示す。]
「工程B−2」
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3、M、X、p、YおよびPyは、前記と同じ内容を示す。]
まず、「工程B−1」では、化合物(3)をブチルリチウムやtert−ブチルリチウム等のリチウム試薬でリチオ化後、カップリング用試薬を反応させることにより、カップリング反応に通常用いられる反応種である化合物(4)が得られる。
カップリング用試薬としては、「工程A−1」で例示した、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化トリメチルスズ、塩化トリブチルスズ、トリブチルスズヒドリド、ヘキサメチルジスタナン、ヘキサブチルジスタナン、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリイソプロピル、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)ボラン、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)メトキシボラン、(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)イソプロポキシボラン、エチレンジオキシボラン、1,3−プロパンジオキシボラン、ビス(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)ジボラン、1,2−フェニレンジオキシボラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランまたは二塩化ジエチルシラン等が例示でき、これらとの反応によりMが−ZnCl種、−ZnBr種、−ZnI種、−Sn(CH3)3種、−Sn(C4H9)3種、−B(OH)2種、−B(OMe)2種、−B(O−iso−C3H7)2種、−B(2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオキシ)種、−B(エチレンジオキシ)種、−B(1,3−プロパンジオキシ)種、−B(1,2−フェニレンジオキシ)種、−Si(OCH3)3種、−Si(OC2H5)3種または−SiCl2(C2H5)種等である化合物(4)を得ることができる。
ホウ酸と反応させた場合は、反応後にフッ化水素水と反応させ、炭酸カリウム、炭酸セシウムまたはフッ化テトラブチルアンモニウム等で処理することによって、Mを−BF3 −K+種、−BF3 −Cs+種または−BF3 −N(C4H9)4 +種等のような塩としても良い。
また、化合物(3)をリチオ化せずに、直接臭化マグネシウムまたは臭化イソプロピルマグネシウム等と反応させてMが−MgBr種等である化合物(4)を得ることもできる。
得られたこれらの化合物(4)は、反応後単離しても良いが、単離せずに「工程B−2」に供しても良い。
収率が良い点で、リチオ化後にジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化トリメチルスズまたは塩化トリブチルスズと反応させて、Mが−ZnCl種、−ZnBr種、−ZnI種、−Sn(CH3)3種または−Sn(C4H9)3種である化合物(4)を得、単離せずに「工程B−2」に供することが望ましい。リチオ化後にジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)または塩化トリメチルスズと反応させて、Mが−ZnCl種または−Sn(CH3)3種である化合物(4)を得、単離せずに「工程B−2」に供することがさらに望ましい。
Yで表される脱離基は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメチルスルホニルオキシ基等を例示することができるが、収率が良い点で臭素原子またはヨウ素原子が望ましい。
「工程B−1」でリチオ化に用いるリチウム試薬と化合物(3)とのモル比は、1:1から5:1が望ましく、収率が良い点で1:1から3:1がさらに望ましい。
「工程B−1」でリチオ化およびカップリング用試薬との反応の際に用いる溶媒として、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、キシレン、クロロホルムまたはジクロロメタン等が例示でき、これらを適宜組合わせて用いても良い。収率が良い点でテトラヒドロフランを単独で用いることが望ましい。
「工程B−1」での化合物(3)の濃度は、5mmol/Lから1000mmol/Lが望ましく、収率が良い点で10mmol/Lから200mmol/Lがさらに望ましい。
「工程B−1」でのリチオ化の際の反応温度は、−150℃から−20℃が望ましく、収率が良い点で−100℃から−60℃から適宜選ばれた温度がさらに望ましい。
「工程B−1」でのリチオ化の際の反応時間は、1分から3時間が望ましく、収率が良い点で5分から1時間がさらに望ましい。
「工程B−1」でカップリング用試薬と化合物(3)とのモル比は、1:1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1から1:3がさらに望ましい。
「工程B−1」でのカップリング用試薬を加えた後の反応温度は、−150℃から−20℃の低温領域から−20℃から50℃の高温領域に昇温することが望ましく、収率が良い点で−100℃から−60℃の低温領域から0℃から30℃の高温領域に昇温することがさらに望ましい。
「工程B−1」でのカップリング用試薬との反応時間は、基質や反応スケール等によって異なり、特に制限はないが、低温領域での反応は1分から3時間が望ましく、収率が良い点で5分から1時間がさらに望ましい。高温領域での反応は、10分から10時間が望ましく、収率が良い点で30分から5時間がさらに望ましい。
「工程B−2」では、「工程B−1」で得られた化合物(4)を、金属触媒の存在下に化合物(5)と反応させることにより、1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)が得られる。
「工程B−2」で用いることのできる金属触媒は「工程A−2」で例示したパラジウム触媒、ニッケル触媒、鉄触媒、ルテニウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒、オスミウム触媒およびコバルト触媒等を列挙することができる。収率が良い点でパラジウム触媒、鉄触媒またはニッケル触媒が望ましく、パラジウム触媒がさらに望ましい。
パラジウム触媒としては、さらに具体的には、「工程A−2」で例示したパラジウム黒等の金属、パラジウム/アルミナ、パラジウム/炭素等の担持金属、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等の金属塩、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム、ジクロロ[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等の錯化合物が例示できる。収率が良い点で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムが望ましい。
これらの金属、担持金属、金属塩および錯化合物は単独で用いても良いが、さらに三級ホスフィンと組合わせて用いても良い。用いることのできる三級ホスフィンとしては、「工程A−2」で例示した、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルおよび(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等が例示できる。
「工程B−2」での化合物(4)と化合物(5)とのモル比は、1:0.25から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.5から1:1.5がさらに望ましい。
「工程B−2」での金属触媒と化合物(5)とのモル比は、0.001:1から0.5:1が望ましく、収率が良い点で0.01:1から0.1:1がさらに望ましい。
「工程B−2」で用いることのできる溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジエチルエーテル、キシレン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンまたはヘキサメチルリン酸トリアミド等が例示でき、これらを適宜組合わせて用いても良い。収率が良い点でジオキサン、ジエチルエーテル、トルエンまたはテトラヒドロフランが望ましい。「工程B−1」で生成した化合物(4)を単離せずに「工程B−2」に供することが収率が良い点でさらに望ましく、その際は「工程B−1」で用いるテトラヒドロフラン等の溶媒をそのまま用いることもできる。
「工程B−2」での化合物(5)の濃度は、5mmol/Lから1000mmol/Lが望ましく、収率が良い点で10mmol/Lから200mmol/Lがさらに望ましい。
「工程B−2」での反応温度は、0℃から用いる溶媒の還流温度から適宜選ばれた温度が望ましく、収率が良い点で溶媒の還流温度がさらに望ましい。
「工程B−2」での反応時間は、1時間から120時間が望ましく、収率が良い点で6時間から72時間がさらに望ましい。
1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)の粗成生物は、「工程A−2」または「工程B−2」の終了後に溶媒を留去することにより得られる。粗生成物の精製方法としては、再結晶、カラム精製または昇華等が例示できる。
1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)の製造方法は、以上の製造方法−A、製造方法−Bのいずれでも良いが、収率が良い点で、製造方法−Aが望ましい。
化合物(5)は、Y−X−Y、Y−X2−Y、Y−Py、Y−X−Py、Y−X−M、Y−X2−M、M−PyまたはM−X−Py等を用いて、例えばJ.Tsuji著、「Palladium Reagents and Catalysts」,John Wiley & Sons,2004年に記載の汎用的な金属触媒を用いるカップリング反応により容易に得ることができる。その際、「製造方法−A」または「製造方法−B」で例示したリチウム試薬、触媒、溶媒、反応条件等が適用できる。
次に、化合物(3)の合成法について詳細に述べる。化合物(3)の合成は、例えば特開2006−062962号公報に記載の方法を用いることができる。
すなわち、一般式(6)
[式中、R
1、R
2、R
3およびYは、前記と同じ内容を示す。]で表される化合物と、一般式(7)
[式中、Ar
1は前記と同じ内容を示す。]で表される化合物および一般式(8)
[式中、Ar
2は前記と同じ内容を示す。]で表される化合物とを、ルイス酸の存在下で反応させて、一般式(9)
[式中、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2、R
3およびYは、前記と同じ内容を示し、Z
3は陰イオンを示す。]で表される塩を得、これをアンモニア水で処理することにより製造することができる。
化合物(7)と化合物(8)とのモル比は1:1であることが必須である。
化合物(7)および(8)と化合物(6)のモル比は1:10〜10:1の広い範囲で高い収率が得られるが、量論量でも充分に反応は進行する。
反応に用いる溶媒は、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンまたは1,2−ジクロロベンゼン等が例示できる。収率が良い点で、ジクロロメタンまたはクロロホルムが望ましい。
ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、三塩化鉄、四塩化スズおよび五塩化アンチモン等が例示できる。収率が良い点で五塩化アンチモンが望ましい。
塩(9)は単離することもできるが、溶液のまま次の反応操作に供してもよい。単離する場合、塩(9)のZ3は、陰イオンであれば特に限定はないが、上に挙げたルイス酸にフッ化物イオンまたは塩化物イオンが結合したテトラフルオロホウ酸イオン、クロロトリフルオロホウ酸イオン、テトラクロロアルミニウム酸イオン、テトラクロロ鉄(III)酸イオン、ペンタクロロスズ(IV)酸イオンまたはヘキサクロロアンチモン(V)酸イオンを対陰イオンとして得ると収率が良い。
用いるアンモニア水の濃度に特に制限はないが、5〜50%が好ましく、市販の28%でも反応は充分に進行する。
反応温度には特に制限はないが、−50℃〜溶媒還流温度から適宜選ばれた温度で反応を行うことが好ましい。また反応時間は、反応温度との兼合いによるが、30分〜24時間である。
1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)は薄膜を製造することができるが、その製造方法に特に限定はなく、例えば真空蒸着法による成膜が可能である。真空蒸着法による成膜は、汎用の真空蒸着装置を用いることにより行うことができる。真空蒸着法で膜を形成する際の真空槽の真空度は、例えば有機電界発光素子作製の製造タクトタイムや製造コストを考慮すると、一般的に用いられる拡散ポンプ、タ−ボ分子ポンプ、クライオポンプ等により到達し得る1×10−2〜1×10−5Pa程度が望ましい。蒸着速度は、形成する膜の厚さによるが0.005〜1.0nm/秒が望ましい。また、1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)は、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、酢酸エチルまたはテトラヒドロフラン等に対する溶解度が高いため、汎用の装置を用いたスピンコ−ト法、インクジェット法、キャスト法またはディップ法等による成膜も可能である。
本発明の1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)から成る薄膜は、高い表面平滑性、アモルファス性、耐熱性、電子輸送能、正孔ブロック能、酸化還元耐性、耐水性、耐酸素性、電子注入特性等をもつため、有機電界発光素子の材料として有用であり、とりわけ電子輸送材、正孔ブロック材、発光ホスト材等として用いることができる。従って、本発明の1,3−ビス(1,3,5−トリアジニル)ベンゼン誘導体(1)から成る薄膜は、有機電界発光素子の構成成分としての利用が期待される。