本発明は,被研磨物を研磨するための固定砥粒研磨パッドに関する。
近年,LSI高集積化技術の一つとして,多層配線化技術が急速に普及している。この多層配線化技術は,半導体ウェハに半導体回路を立体的に形成して,単位面積当たりの回路規模を増大させる技術である。かかる多層配線化を行うためには,ウェハ処理工程において新たな配線を積層する前に,ベースとなる下層の表面を,浅い焦点深度でも余裕を持った露光を行えるように,CMP(Chemical Mechanical Po1ishing:化学的機械的研磨法)によって高精度で平坦化する必要がある。
また,CMPは,LSIの高速動作を実現する銅配線技術に必要なダマシンプロセスにとっても必須となっている。このダマシンプロセスとは,配線材料の埋め込み技術であり,絶縁膜に溝加工を施して,そこに配線材料を埋め込み,溝外部の余分な薄膜をCMPにより,研磨・除去する技術である。
さらに,近年,半導体デバイスの小型化,薄厚化の要請から,半導体ウェハの薄厚化が求められている。このため,半導体ウェハの裏面を砥石などで機械的に研削加工した後,この研削により生じた加工歪の除去や抗折強度の向上を目的として,研削後の半導体ウェハ裏面をCMPによって研磨加工している。
このように,半導体デバイスを製造する様々な場面において,CMPが利用されている。このCMPでは,一般的に,不織布の研磨パッドと,例えばシリカなどの遊離砥粒を含む研磨液(スラリー)とを使用して,半導体ウェハ等の被研磨物の表面が研磨される。しかし,遊離砥粒を含む研磨液を使用したCMPでは,大部分の遊離砥粒が廃液中に残存してしまうので,廃液処理が困難であるといい問題があった。また,研磨時の砥粒の消費量は,通常,砥粒全体の3〜4%程度であることから,大部分の砥粒が研磨に寄与することなく無駄に消費されているという問題もあった。
これらの問題を解決するため,遊離砥粒を含有しない研磨液(例えばアルカリ溶液)と,研磨パッドに砥粒を含有させた固定砥粒研磨パッドとを使用したCMPが検討されている(例えば特許文献1参照)。かかるCMPでは,大部分の砥粒が研磨に寄与して消費されるため,廃液中に砥粒が殆ど残存しないので,廃液を濾過して再利用することができる。さらに,遊離砥粒を使用した場合と比して,砥粒が無駄にならないので,研磨工程のランニングコストを大幅に低減することも可能である。
しかしながら,上記従来の固定砥粒研磨パッドでは,結合剤による砥粒の固定が十分ではなかった。このため,固定砥粒研磨パッドを長時間使用すると,固定砥粒研磨パッドから砥粒が脱離してしまうため,研磨レートが低下してしまうという問題があった。
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,砥粒を強固に固定して,長時間使用しても研磨レートを維持することが可能な,新規かつ改良された固定砥粒研磨パッド,およびこれを備えた研磨装置を提供することにある。
上記課題を解決するために,本発明の第1の観点によれば,親水性を有する砥粒と,前記砥粒を結合する結合剤とからなる固定砥粒研磨パッドであって,前記結合材は,親水性を有するポリオールを含み,前記親水性を有するポリオールは,Smallの式を用いて算出されるSP値が9.5以上,10.5以下である固定砥粒研磨パッドが提供される。かかる構成により,固定砥粒研磨パッドを製造する際,砥粒と結合剤を混合したときに,親水性を有する砥粒と親水性を有するポリオールとが相溶状態となる。このため,この相溶状態の砥粒とポリオールとを一体的に結合することにより,結合剤は砥粒を強固に固定できる。このため,研磨加工中に固定砥粒研磨パッドから砥粒が脱離することがないので,固定砥粒研磨パッドを長寿命化でき,研磨加工を長時間行っても研磨レートを維持することができる。
また,上記親水性を有するポリオールは,SP(Solubility Parameter;溶解性パラメータ)値が9以上16以下であるように構成してもよい。かかる構成により,親水性を有するポリオールの親水性が,親水性を有する砥粒と同程度になるので,両者をより好適な相溶状態にすることができる。ここで,親水性を有するポリオールのSP値の下限値を9としたのは,SP値が9未満のポリオールを用いた場合には,親水性を有する砥粒とポリオールとが十分に相溶状態とならず,親水性を有する砥粒を強固に固定できないことが実験結果により判明したからである。一方,親水性を有するポリオールのSP値の上限値を16としたのは,親水性を有するポリオールのSP値の上限値が,一般的に16とされているからである。
また,上記親水性を有するポリオールは,SP値が9以上11以下であることがより好ましい。SP値が9〜11の範囲内にある親水性を有するポリオールを使用すれば,親水性を有する砥粒を強固に固定できることが実験データから判明している。
また,上記親水性を有するポリオールは,グリセリン系ポリオール,ペンタエリスリトール系ポリオール,ソルビトール系ポリオールおよびシュークローズ系ポリオールからなる群より選択された少なくともいずれかであるように構成してもよい。このようなポリオールは,高い親水性を有するので,親水性を有する砥粒と好適に相溶状態となることができる。
また,上記親水性を有する砥粒は,アモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナおよびアルミナ水和物からなる群より選択された少なくともいずれかであるように構成してもよい。このような砥粒は,親水性を有するので,親水性を有するポリオールと好適に相溶状態となることができる。
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,上記説明した固定砥粒研磨パッドを具備することを特徴とする研磨装置が提供される。かかる構成により,研磨装置は,遊離砥粒を含まない研磨液を供給しながら,固定砥粒研磨パッドに対して被研磨物を押圧して擦り合わせることにより,長時間にわたって研磨レートを維持しつつ,被研磨物を高精度で湿式研磨加工することができる。
以上説明したように本発明によれば,長時間使用しても固定砥粒研磨パッドから砥粒が脱離しにくい。このため,固定砥粒研磨パッドの研磨レートの低下を防止して,固定砥粒研磨パッドを長寿命化することができる。
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施の形態)
まず,図1に基づいて,本発明の第1の実施の形態にかかる固定砥粒研磨パッドが使用される研磨装置の全体構成について説明する。なお,図1は,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16が使用される研磨装置10を示す斜視図である。
本実施形態にかかる研磨装置10は,図1に示すように,例えば,モータ12により回転可能な研磨テーブル14と,研磨テーブル14上に貼り付けられた固定砥粒研磨パッド16と,固定砥粒研磨パッド16と対向するように被研磨物を保持する基板保持部20と,基板保持部20を回転及び昇降させる基板保持部駆動手段18と,固定砥粒研磨パッド16上に研磨液25を供給する研磨液供給ノズル24と,を備える。なお,以下では,この研磨装置10による被研磨物として,シリコンウェハ等の半導体ウェハ30の例を挙げて説明するが,かかる例に限定されるものではない。
研磨テーブル14は,例えば,ステンレス鋼,セラミックスなどで形成された略円盤状のテーブルであり,上面に例えば平滑な水平面を有する。この研磨テーブル14は,例えばその下方の装置内に設けられたモータ12の駆動力がスピンドル26,変速機(図示せず)等を介して伝達されることにより,水平方向(図1の太矢印の方向)に所定速度(例えば40rpm)で回転することができる。
固定砥粒研磨パッド16は,例えば,研磨テーブル14の上面に極力平坦になるよう貼り付けられ,研磨テーブル14の回転に伴って回転することができる。固定砥粒研磨パッド16は,砥粒を含有しているので,半導体ウェハ30の被研磨面と擦り合わされることで,当該被研磨面を機械的に研磨することができる。かかる固定砥粒研磨パッド16は,本実施形態にかかる特徴的な構成要素であり,その詳細については後述する。
基板保持部駆動手段18は,例えば,ロッド28を介して基板保持部20を回転させながら略垂直方向に昇降させるための機構であり,例えば,回転モータ等の回転機構(図示せず。)と,シリンダ等の加圧機構(図示せず。)などを備える。かかる構成により,基板保持部駆動手段18は,例えば,回転機構によって基板保持部20を水平方向(図1の細矢印の方向)に回転させながら,加圧機構によって基板保持部20を下降させて,基板保持部20に保持された半導体ウェハ30を固定砥粒研磨パッド16に押圧することができる。この押圧力(即ち,研磨圧)は,例えば50〜500g/cm2である。なお,研磨テーブル14の回転方向と基板保持部20の回転方向は,図1のように逆方向であることが好ましいが,かかる例に限定されず,同一方向であってもよい。
また,基板保持部20は,例えば,略円盤形状を有する上盤(研磨ヘッド)であり,研磨テーブル14の上方に回転自在に設置される。この基板保持部20は,例えば,真空チャック機構(図示せず。)を具備しており,その下面側に半導体ウェハ30を吸着・保持することができる。かかる基板保持部20は,例えば,ロッド28を介して基板保持部駆動手段18に連結されている。また,基板保持部20の下面側外縁部には,半導体ウェハ30の外周を保持するリテーナリング22が設けられており,半導体ウェハ30の横ずれを防止することができる。
研磨液供給ノズル24は,研磨加工時に,例えば固定砥粒研磨パッド16上に研磨液25を供給する研磨液供給手段である。この研磨液25は,例えば,遊離砥粒を含まないアルカリ溶液(例えばpH12.5)であり,アンモニア水溶液とエチレンジアミン四酢酸などを所定割合で混合して生成される。かかる研磨液は,研磨液供給ノズル24から固定砥粒研磨パッド16上に供給された後,固定砥粒研磨パッド16の回転に伴って半導体ウェハ30の被研磨面と固定砥粒研磨パッド16表面との間に入り込んで,当該被研磨面を化学的に研磨する。
以上のように,本実施形態にかかる研磨装置10は,研磨液供給ノズル24によって遊離砥粒を含まない研磨液25を供給しながら,半導体ウェハ30を固定砥粒研磨パッド16に対して押圧することができる。これにより,固定砥粒研磨パッド16表面と半導体ウェハ5の被研磨面とを相互に擦り合わせて,当該被研磨面を研磨できる。このとき,固定砥粒研磨パッド16と半導体ウェハ30の双方が回転しているので,両者は複合的な方向で擦り合わせられて,当該被研磨面全体を均等に研磨することができる。
かかる研磨加工は,例えば,固定砥粒研磨パッド16に含まれる砥粒による機械的研磨作用と,研磨液25による化学的研磨作用との複合作用とによって,半導体ウェハ30を湿式研磨するCMP加工である。このため,上記のような研磨装置10は,半導体ウェハ30の被研磨面を高精度で研磨加工して,鏡面化することができる。
また,このような研磨加工では,使用する研磨液25中に遊離砥粒が含まれていないので,廃液処理を非常に容易かつ迅速に行うことができる。また,廃液を濾過して研磨液を再利用できるので,コスト面で有益であるだけでなく,廃液を産業廃棄物として廃棄処理しなくて済むため,環境親和面においても有益である。
なお,本実施形態にかかる研磨装置10において,例えば,基板保持部20,研磨テーブル14および研磨液供給ノズル24には,各々,温度調節装置(図示せず。)を設けてもよい。これにより,上記箇所の温度を適宜好適に設定することにより,より好適な研磨加工を実行することができる。
また,研磨加工中には,基板保持部駆動手段18によって基板保持部20を略水平方向に揺動させるようにしてもよい。これにより,固定砥粒研磨パッド16と干渉する半導体ウェハ30を略水平方向に往復運動させることができるので,被研磨面全体をより均等に研磨できる。
次に,本実施形態にかかる特徴である固定砥粒研磨パッド16の構成について詳細に説明する。
まず,図2に基づいて,固定砥粒研磨パッド16に施された溝加工について説明する。なお,図2は,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16に施された溝加工を示す斜視図である。
図2に示すように,固定砥粒研磨パッド16の表面には,溝加工が施されている。かかる溝加工により,研磨液25を,固定砥粒研磨パッド16の全体(特に中心付近)に効率的に均一に行き渡らせることができる。このため,半導体ウェハ30の被研磨面の平坦化,研磨レートの向上,局部的な昇温による熱膨張の防止などを図ることができる。この溝加工としては,例えば,図2(a)に示すような放射状の溝加工や,図2(b)に示すような格子状の溝加工を施すことができる。
図2(a)に示すように,固定砥粒研磨パッド16に放射状溝16aを形成する場合には,固定砥粒研磨パッド16の中心点において放射状に例えば16〜32分割する(中心角22.5°〜11.25°で分割する)ことが好ましい。また,この溝幅は,例えば1〜2mmであり,溝深さは例えば1〜2mm程度であることが好ましい。なお,固定砥粒研磨パッド16の中心近傍においては,溝16aが過度に集中するのを防止するため,中心から所定範囲(例えば中心から100mm以内)には溝加工を施さないことが好ましい。
また,図2(b)に示すように,固定砥粒研磨パッド16に格子状溝16bを形成してもよい。このとき,固定砥粒研磨パッド16の外径が600〜2000mmで,厚さが5〜10mmである場合には,例えば15mm〜30mm間隔で格子状溝16bを形成することが好ましい。
なお,このような溝加工は必ずしも施されなくてもよく,固定砥粒研磨パッド16の表面は略平坦面であってもよい。
次に,図3および図4を参照しながら,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16における砥粒の結合状態について詳細に説明する。なお,図3は,従来の固定砥粒研磨パッドにおいて,非親水性を有する砥粒50を結合剤によって結合した状態を模式的に示す説明図である。一方,図4は,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16において,親水性を有する砥粒40を結合剤によって結合した状態を模式的に示す説明図である。
一般的に,固定砥粒研磨パッドは,例えば,研磨性能を有する微粒子である砥粒を,ポリオールや多官能イソシアネートなどを含む結合剤によって結合して構成されている。ところが,従来の固定砥粒研磨パッドでは,上述したように,結合剤による砥粒の固定力が不十分であるため,固定砥粒研磨パッドを長時間使用すると砥粒が脱離してしまうという問題があった。
本願発明者らは,固定砥粒研磨パッドから砥粒を脱離させないために,砥粒の親水性という特性に注目して,固定砥粒研磨パッドの材料について研究,検討した。この結果,図3(a)に示すアルミナ,ダイヤモンド,炭化珪素(SiC)などといった非親水性を有する砥粒(以下では「非親水性砥粒」という。)50は,親水性を有するポリオール(以下では「親水性ポリオール」という。)60を含む結合剤を使用したとしても,図3(b)に示すように,非親水性砥粒50と親水性ポリオール60とが非相溶体となるために,非親水性砥粒50が結合剤中に強固に固定されないことが分かった。このため,かかる非親水性砥粒50は研磨加工中に脱離しやすく,固定砥粒研磨パッドを長時間使用すると研磨レートの低下が起こることが判明した。なお,上記非相溶体とは,非親水性砥粒50と親水性ポリオール60とを混合しても両者が相互に溶け合わず,親水性ポリオール60中に非親水性砥粒50がほぼ原形(塊状)をとどめたまま分離して存在している状態である。
上記のような事実に基づいて,本願発明者らは,固定砥粒研磨パッドの砥粒として,親水性を有する砥粒(以下では「親水性砥粒」という。)を使用することにより,砥粒と親水性ポリオールとの結合力を強化して,砥粒を強固に固定できることに想到した。この親水性砥粒とは,水などの極性物に対して相溶性(例えば水溶性)を示す砥粒であり,例えば,アモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナまたはアルミナ水和物などからなる砥粒である。この親水性砥粒は,水と同じく極性物である親水性ポリオールに対しても相溶性を示す。
この原理について,図4に基づいてより詳細に説明する。上記アモルファス状態のシリカ等の親水性砥粒40は,通常時(水等の溶媒と混合されていないとき)には,図4(a)に示すように,それぞれの粒ごとに略塊状となっている。ところが,かかる親水性砥粒40を親水性ポリオール60に混合すると,図4(b)および(c)に示すように,親水性砥粒40と親水性ポリオール60との相溶体が形成される。この相溶体とは,親水性砥粒40と親水性ポリオール60とを混合したときに,親水性砥粒40が,原形を失って略ひも状40aに分解し,親水性ポリオール60と溶け合って一体化している状態である。この相溶体としては,例えば,図4(b)に示す完全相溶体と,図4(c)に示す部分相溶体とが考えられる。
具体的には,図4(b)に示すように,完全相溶体の場合には,親水性砥粒40の全部が,ひも状40aに分離し,全く原形を留めずに親水性ポリオール60中に分散して溶け合っている。一方,図4(c)に示すように,部分相溶体の場合には,親水性砥粒40の一部分(例えば外周部分)が,ひも状40aにほぐれて親水性ポリオール60と溶け合い,その他の部分(例えば中心部分)40bが略塊状を有している。
このように,親水性砥粒40と親水性ポリオール60とは相溶体を形成する。このため,かかる相溶体を結合剤に含まれる多官能イソシアネート等により結合することで,親水性砥粒40を結合剤中に強固に固定することができる。このため,かかる親水性砥粒40と,親水性ポリオール60を含む結合剤とを使用して製造された固定砥粒研磨パッド16は,親水性砥粒40が脱離しにくいため,長時間に渡って使用しても研磨レートが低下することがない。
かかる観点から,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16は,砥粒として親水性砥粒40を使用し,結合剤に含まれるポリオールとして親水性ポリオール60を使用して製造されていることを特徴とする。特に,この親水性ポリオール60として,例えば,SP値が9以上16以下であるポリオールを使用し,親水性砥粒40のSP値と親水性ポリオール60のSP値とを近似させていることを特徴とする。
このように,本実施形態では,ポリオールの親水性の指標として,SP(Solubility Parameter;溶解性パラメータ)値を採用している。このSP値は,物質の極性を表す指標であり,ある分子集団の集まる強さ(即ち,分子間力の強さ)を表す。よって,SP値と分子間力の強さとは正の相関がある。このため,異なる物質であっても,SP値が近似していれば,分子間力の強さも似ていることになり,両物質は互いに近接し,互いの分子同士が入れ替わってもなんら問題はない。この結果,SP値の近いものほど相互によく混じり合い,よくぬれ,よく接合するといえる。つまり,SP値はぬれやすさ(親水性)の指標とすることができる。
かかるSP値は,一般的には,以下の数式1に示すように,凝集エネルギー密度(Cohesive Energy Density;CED:即ち,1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーΔE)を1/2乗して算出できる。このようにして算出したSP値は,単位体積当たりの極性の大きさを示す。
・・・・(数式1)
この数式1において
ΔE:蒸発エネルギー[cal/mol]
d:密度[g/cc]
V:モル容積[cc/mol]
M:グラム分子量[g/mol]
ΔH:蒸発潜熱[cal/mol]
T:絶対温度[K]
R:ガス定数[cal/(mol*K)]
である。
溶剤の場合には,上記の数式1でSP値を実験的に求めることが可能であるが,ポリマーの場合には,揮発しないため,上記数式1ではSP値を求めることができない。このため,ポリマーの場合には,一般的に,次のSmallの式(数式2)を用いてSP値が算出される。
・・・・(数式2)
この数式2において
M:ポリマーの単位分子量
d:密度
G:原子団・基に固有の定数
である。
かかる数式2を用いて,ポリマーの一種であるポリオールについても,SP値を算出することができる。従って,本実施形態にかかる親水性ポリオール60のSP値は,上記数式2に基づいて算出された数値を採用している。
一方,親水性砥粒40は,不定形で存在しているため,ポリオールのようにSP値を定義することは難しい。このため,親水性砥粒40については,SP値ではなく,使用する砥粒の種類によって親水性の有無を区別することが好適である。例えば,水ガラスに代表されるアモルファス状態のシリカ,気相法若しくはゾルーゲル法で得たアモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナ,あるいはアルミナ水和物であれば,親水性砥粒40と考えることができる。一般的に,アモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナ,またはアルミナ水和物は,極性物質であり,水に対して完全に相溶するか,あるいは一部が相溶するため,親水性を有するといえる。従って,これらの物質からなる砥粒は,SP値が9以上16以下のポリオール(即ち,親水性ポリオール60)とは,近似したSP値を有すると推測され,本実施形態にかかる親水性砥粒40に該当する。
前述したように,砥粒と結合剤の材料であるポリオールのSP値が近いほど,砥粒のポリオールへの溶解性は良好になり,相溶体を形成しやすくなる。つまり,ポリオールの分子単位と砥粒の分子単位とが互いに近接し,互いの分子同士が入れ替わった状態となりやすい。このため,上記親水性砥粒40と親水性ポリオール60とを材料とした固定砥粒研磨パッド16においては,親水性砥粒40を強固に固定できるため,固定砥粒研磨パッド16から親水性砥粒40が脱離しにくい。
次に,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16の材料および製法について詳細に説明する。
本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16は,例えば,親水性砥粒40を結合剤によって結合して製造されたウレタン研磨パッドである。この結合剤は,例えば,上記SP値が9以上16以下である親水性多官能ポリオール60と,多官能イソシアネートと,触媒と,整泡剤と,発泡剤とを含む。このような結合剤に対して,平均粒径が例えば0.02〜50μmの親水性砥粒40を,体積比率0.1〜60%の割合で混合して液状混合物を生成した後,結合剤に含まれる各成分の化学反応によって,この液状混合物を固化させる。この結果,結合剤中に親水性砥粒40が固定されて,固定砥粒研磨パッド16が完成する。
以下に,かかる固定砥粒研磨パッド16を構成するための各材料についてそれぞれ説明する。
まず,親水性砥粒40としては,平均粒子径が例えば0.02〜50μmであれば,アモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナ,あるいはアルミナ水和物などを採用することができる。アモルファス(非結晶)状態のシリカの例としては,例えば,コロイダルシリカ,ヒュームドシリカ,水ガラスに代表されるアモルファス状態のシリカ,或いは気相法若しくはゾルーゲル法などで得られたアモルファス状態のシリカ,およびこれらの組合せなどが挙げられる。
また,親水性多官能ポリオール60としては,例えば,ポリエステルポリオール,ポリエーテルポリオール,ポリマーオー,ルおよびこれらの組合せ等が使用できる。
このうち,ポリエステルポリオールとしては,例えば,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,1,2−プロピレングリコール,トリメチレングリコール,1,3又は1,4−プチレングリコール,ヘキサメチレングリコール,デカメチレングリコール,グリセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,ソルビトール等の水酸基を2つ以上有する化合物の1種又は2種以上と,例えば,アジピン酸,コハク酸,マロン酸,マレイン酸,酒石酸,ピメリン酸,セバシン酸,フタル酸,テレフタル酸,インフタル酸,トリメリット酸等のカルボキシル基を2つ以上有する化合物の1種又は2種以上との縮合重合により得られるもの,あるいは,ε−カプロラクトン等の開環重合により得られるものなどが挙げられる。
特に,親水性の強い,グリセリン系,ペンタエリスリトール系,ソルビトール系,シュークローズ系のポリエーテルポリオールが好適である。これらのポリオールの親水性をSP値で表現すると,グリセリン系でSP値9〜13,ペンタエリスリトール系でSP値10〜12,ソルビトール系でSP値11〜16,シュークローズ系でSP値11〜16である。
また,多官能イソシアネートとしては,例えば,2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI),4,4−ジフエニルメタンジイソシアネート(MDI),フェニレンジイソシアネート(PDI),ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート;1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI),4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI),1,3−又は1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)等の脂環族ポリイソシアネート,及びこれらポリイソシアネートのカルボジイミド変性体,ビウレット変性体,アロファネート変性体,二量体,三量体,または,ポリメチレンポリフエニルポリイソシアネート(クルードMDI,ポリメリックMDI)等が挙げられ,これらは単独で使用してもよいし,或いは2種以上を併用してもよい。
このような親水性多官能ポリオール60と多官能イソシアネートとは,例えば,官能基比率で(活性水素化合物:イソシアネート)=1:1〜1:1.2となる範囲で配合される。活性水素とイソシアネートを反応させる際,例えば,金属化合物系触媒やアミン系触媒などの触媒を用いてもよい。この金属化合物系触媒の具体例としては,例えば,酢酸スズ,オクチル酸スズ,ジブチルスズジラウレート,ジブチルスズクロライド等の有機スズ系化合物や;オクチル酸鉛,ナフテン酸鉛等の有機鉛化合物;ナフテン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物;などが挙げられる。また,アミン系触媒の具体例としては,例えば,トリエチルアミン,トリエチレンジアミン,N−メチルモルホリン等の3級アミン類;テトラエチルヒドロキシルアンモニウム等の4級アンモニウム塩;イミダゾール,2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;などが挙げられる。また,上記のようなアミン系触媒と有機金属系触媒の中のいずれか1つを単独であるいは2つ以上を組み合わせて使用してもよいし,アミン系触媒と有機金属系触媒を併用してもよい。
また,発泡剤としては,例えば,水またはカルボン酸などを使用することができる。この発泡剤による発泡倍率は,例えば1.1〜5倍である。
また,その他の助剤として,例えば,研磨パッドに通常使用される公知の着色剤,可塑剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,分散剤などを加えてもよい。
本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16の組成物において,各成分が配合される割合は,研磨性能が得られれば特に制限はないが,例えば,親水性多官能ポリオール60の100重量部に対して,触媒が0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜3重量部),水が0.01〜5重量部(好ましくは0.05〜2重量部),整泡剤が配合される場合には0.05〜5重量部(好ましくは0.4〜2.0重量部)となるように配合できる。
また,配合される多官能イソシアネートは,研磨性能が得られれば特に制限はないが,芳香族系イソシアネートが好ましい。また,多官能イソシアネートの配合量は,イソシアネートインデックスが,例えば75〜125(好ましくは100〜120)となる量が好ましいが,かかる例に限定されない。
固定砥粒研磨パッド16を製造する場合には,例えば,まず,上記割合で各成分を混合して液状混合物を生成する。次いで,かかる液状混合物を金型に注入し,例えば,20℃〜30℃の室温で24時間放置して,固化させる。かかるモールド成形により,例えば,発泡ポリウレタン中に体積比0.1〜60%の親水性砥粒を含有した固定砥粒研磨パッド16を製造することができる。なお,固定砥粒研磨パッド16の成形方法は,上記のようなモールド成形の例に限定されず,例えば,反応射出成形等の公知のあらゆる成形方法であってもよい。また,成形された固定砥粒研磨パッド16の形状は,図2に示したような略円盤形状の例に限定されず,例えば略円環状など任意の形状であってもよい。
次に,上記実施形態に基づいて,各種の固定砥粒研磨パッド16を製造し,半導体ウェハ30を研磨加工した場合の研磨レート,砥粒の脱離の有無などを調査した実験結果について説明する。なお,以下では,実施例1〜3に係る固定砥粒研磨パッド16と,比較例1〜4に係る固定砥粒研磨パッドとを比較する。実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16は,親水性砥粒40と,SP値が9〜16の範囲内にある親水性ポリオールとを材料としているものであり,一方,比較例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16は,親水性砥粒40を使用していないか,或いはポリオールのSP値が上記範囲外となっているものである。
(実施例1〜3)
下記の表1に示すような組成および配合割合で,実施例1〜3に係る固定砥粒研磨パッド16を製造した。
具体的には,分子量が250〜4000であり官能基数が2〜5のポリエーテルポリオール(三洋化成社製 商品名:サンニックス)と,ポリエステルポリオール(旭電化工業社製 商品名:アデカニューエース,住友バイエルウレタン製 商品名:デスモフェン,バイコール),イソシアネートNCO基の含有量が31%であるイソシアネート(ダウ・ポリウレタン社製 商品名:PAPI 135)と,水と,アミン系触媒(東ソー社製,商品名:TOYOCAT−ET)と,シリコーン整泡剤(日本ユニカー社製,商品名:L−5309)と,親水性研磨砥粒(コロイダルシリカ:扶桑化学工業社製,ヒュームドシリカ:信越石英社製,それぞれ砥粒径2〜8μm)とを,下記表1の割合で配合して,液状混合物を調整した。この液状混合物を金型に注入して,20〜30℃の室温で24時間放置し,発泡硬化させ,固定砥粒研磨パッド16を製造した。
なお,表1のポリオールA,B,Cは,官能基比率で(活性水素化合物:イソシアネート)の比が同じになるように,複数のポリオールを混合してSP値を調整したものである。実施例1および3では,SP値が10.5のポリオールAを使用しており,実施例2では,SP値が9.5のポリオールBを使用した。
また,実施例1および2では,親水性砥粒40としてコロイダルシリカを使用し,実施例3では,親水性砥粒40としてヒュームドシリカを使用した。
このような実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16を,上記図1に示した研磨装置10の研磨テーブル14に粘着テープで貼り付けた後,ダイヤモンドを電着した修正リングを用いて固定砥粒研磨パッド16の表面を修正し,発泡構造が表面に露出した厚み9mmの固定砥粒研磨パッド16を得た。次いで,この固定砥粒研磨パッド16に対して被研磨物である半導体ウェハ30を押圧し,固定砥粒研磨パッド16と半導体ウェハ30との間に研磨液25を供給しながら,固定砥粒研磨パッド16と半導体ウェハ30との相対運動によって半導体ウェハ30を研磨加工した。この研磨加工において,研磨圧力は,300g/cm2であり,研磨テーブル14の回転数は40rpmに設定した。
このような研磨加工において,半導体ウェハ30の重量変化に基づいて,半導体ウェハの厚みの変化を測定し,それぞれの固定砥粒研磨パッド16による研磨レート[μm/min]を算出した。なお,研磨加工開始初期の研磨レートと,2時間にわたり研磨加工を行った後の研磨レートとをそれぞれ算出した。
また,研磨加工後に,半導体ウェハ30の表面にスクラッチ(引っ掻き傷)が発生しているか否かを観察した。なお,スクラッチの発生は,固定砥粒研磨パッドから砥粒が脱離して,半導体ウェハ30を局部的に削り取ったことを意味する。
比較例
(比較例1〜3)
また,下記の表1に示すような組成および配合割合で,比較例1〜3に係る固定砥粒研磨パッドを製造した。
比較例1は,ポリオールとしてSP値が8.5のポリオールCを使用した点を除いては,上記実施例1と同一条件である。また,比較例2は,砥粒として非親水性砥粒50である炭化珪素(フジミインコーポレッド社製,砥粒径2〜8μm)を使用した点を除いては,上記実施例1と同一条件である。また,比較例3は,砥粒として非親水性砥粒50であるアルミナ(フジミインコーポレッド社製,砥粒径2〜8μm)を使用した点を除いては,上記実施例1と同一条件である。
かかる比較例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッドを用いて,上記実施例の場合と同様な条件で研磨加工実験を行い,研磨レートを算出するとともに,研磨加工後のスクラッチの有無を調べた。
(比較例4)
また,比較例4として,遊離砥粒方式の湿式研磨加工に用いられる一般的な研磨パッド(ロデール・ニッタ社製,商品名:SUBA400)と,遊離砥粒を含む研磨液(フジミインコーボレーテッド社製,商品名:コンポール80)とを用いて研磨加工実験を行った。
<実験結果>
以上のような実施例1〜3および比較例1〜4の実験結果を,表1の下部側の「研磨パッドの物性」の欄に示す。
*発泡倍率の数値は,未発泡の硬化物の密度D1と,発砲後の固定砥粒研磨パッドの密度D2との比(D1/D2)を表す。
まず,ともに固定砥粒研磨パッドを用いた実施例1〜3と比較例1〜4とを比較検討する。
表1に示すように,実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16を用いた場合には,2時間という長時間にわたり研磨加工を行っても,研磨レートにほとんど変化がない。具体的には,2時間の研磨加工後の研磨レートは,研磨加工初期の研磨レートと比して,実施例1で97%,実施例2で95%,実施例3で102%であり,高い研磨レートを維持している。また,実施例1〜3のいずれの場合にも,スクラッチは発生しなかった。
かかる実験結果によれば,実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16では,長時間の研磨加工によっても砥粒がほとんど脱離しなかったことが分かる。この事実は,実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16は,親水性砥粒40と,SP値が9以上の親水性を有するポリオールA,Bを含む結合剤を使用しているので,親水性砥粒40とポリオールA,Bとが相溶体となり,この結果,親水性砥粒40が結合剤によって強固に固定されていることを実証しているといえる。
これに対し,比較例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッドを用いた場合には,研磨レートが大幅に低下している。具体的には,2時間の研磨加工後の研磨レートは,研磨加工初期の研磨レートと比して,比較例1で33%,比較例2で28%,比較例3で50%であり,いずれの場合も半分以下にまで大幅に低下している。さらに,比較例2および3の場合には,スクラッチが発生していた。
かかる実験結果によれば,比較例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16では,砥粒の固定力が不十分であるため,長時間の研磨加工により砥粒が脱離してしまったことが分かる。例えば,比較例1の場合には,SP値が9未満(具体的には8.5)であり十分な親水性を有していないポリオールCを用いため,親水性砥粒40であるコロイダルシリカがポリオールCと十分に相溶体を形成できず,結果として,砥粒の固定力が不十分であったと考えられる。また,比較例2および3の場合には,SP値が9以上(具体的には10.5)のポリオールAを使用しているが,炭化珪素またはアルミナ等の非親水性砥粒50を用いているため,非親水性砥粒50とポリオールAとが全く相溶状態とならないため,非親水性砥粒50の固定力が弱かったと考えられる。
次に,固定砥粒研磨パッドを用いた実施例1〜3と,砥粒を含まない研磨パッドを用いた比較例4とを比較検討する。
表1に示すように,実施例1〜3の場合の研磨レート(0.35〜0.4μm/min)は,比較例4の場合の研磨レート(0.32〜0.33μm/min)と比して約1.2倍もあり,非常に高研磨レートであるといえる。このように,実施例1〜3にかかる固定砥粒研磨パッド16は,上記のように砥粒が脱離しにくいという利点だけでなく,研磨性能にも非常に優れるという利点もあるといえる。
以上のように,本実施形態にかかる固定砥粒研磨パッド16は,親水性砥粒40と,親水性ポリオール60とを含むため,混合された親水性砥粒40と親水性ポリオール60とが相溶体となって一体化し,この相溶体を多官能イソシアネート等によって安定して結合することができる。このため,固定砥粒研磨パッド16に親水性砥粒40を強固に固定することができるので,研磨加工時に固定砥粒研磨パッド16から親水性砥粒40が脱離しにくい。従って,長時間使用しても,固定砥粒研磨パッド16の研磨性能(研磨レート等)が低下することがなく,固定砥粒研磨パッド16を長寿命化することができる。また,親水性砥粒40がほとんど脱離しないたので,被研磨物の被研磨面におけるスクラッチの発生を防止して,研磨精度を向上させることもできる。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば,上記実施形態では,被研磨物として半導体ウェハ30を研磨する例について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。被研磨物としては,例えば,CSP基板,GPS基板,BGA基板,ガラス基板,石英板,サファイア基板,セラミックス材,金属材などであってもよい。
また,研磨液25の成分,濃度,pH等は,上記アルカリ溶液の例に限定されない。例えば,研磨液は,遊離砥粒を含まず,湿式研磨加工を好適に実現可能なものであれば,任意の成分,濃度に調整することができる。
また,上記実施形態においては,固定砥粒研磨パッド16に放射状または格子状の溝を形成した例を挙げて説明したが,本発明はかかる例には限定されない。例えば,六角形状,波形状など好適な方式で溝を形成することができる。また,溝の断面形状を正方形状(長方形状)として説明したが,略半円形状,略V字形状,略U字形状など他の形状でも実施することができる。また,固定砥粒研磨パッド16表面に上記のような溝加工を必ずしも施さなくてもよい。
また,上記実施例では,親水性ポリオール60として,SP値が9.5および10.5のポリオールの例を挙げて説明したが,本発明はかかる例に限定されない。親水性ポリオール60は,SP値が9以上16以下であれば任意のポリオールであってよい。また,ポリオールの親水性は,上記SP値以外の他の指標を用いて評価することも可能であり,かかる他の指標によって評価されたポリオールが,親水性砥粒60と相溶状態になるものであれば,任意のポリオールを親水性ポリオール60として使用できる。
また,上記実施形態では,親水性砥粒40として,アモルファス状態のシリカ,シリカ−アルミナおよびアルミナ水和物などの例を挙げたが,本発明はかかる例に限定されない。親水性砥粒40としては,親水性ポリオール60と相溶状態になるものであれば,任意の材料の砥粒を使用できる。
本発明は,研磨装置に適用可能であり,特に,固定砥粒研磨パッドと研磨液を用いて湿式研磨加工を行う研磨装置に適用可能である。
本発明の第1の実施形態にかかる固定砥粒研磨パッドが使用される研磨装置を示す斜視図である。
本発明の第1の実施形態にかかる固定砥粒研磨パッドに施された溝加工を示す斜視図である。
従来の固定砥粒研磨パッドにおいて,非親水性を有する砥粒を結合剤によって結合した状態を模式的に示す説明図である。
本発明の第1の実施形態にかかる固定砥粒研磨パッドにおいて,親水性を有する砥粒を結合剤によって結合した状態を模式的に示す説明図である。
符号の説明
10 研磨装置
14 研磨テーブル
16 固定砥粒研磨パッド
20 基板保持部
25 研磨液
30 半導体ウェハ
40 親水性砥粒
50 非親水性砥粒
60 親水性ポリオール