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JP4676728B2 - 電子部品用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

電子部品用セパレータ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子部品、例えば、リチウムイオン二次電池、ポリマーリチウム二次電池等のリチウム二次電池または電気二重層キャパシタに使用されるセパレータおよびその製造方法に関する。
近年、産業機器、民生機器に関わらず、電気・電子機器の需要増加、及びハイブリッド自動車の開発により、電子部品であるリチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池の需要が著しく増加している。また、上記用途の多様化に伴って、より容量の高いリチウム電池や急速充放電が可能な電気二重層キャパシタなどへのニーズも高まっている。 これらの電気・電子機器は小型化、高機能化が日進月歩で進行しており、特にリチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池においても、小型化、高機能化が要求されている。
リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池は、活物質とリチウム含有酸化物とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンと混合してアルミニウム製集電体上にシート化した正極と、リチウムイオンを吸蔵放出し得る炭素質材料とポリフッ化ビニリデン等のバインダーを1−メチル−2−ピロリドンと混合して銅製集電体上にシート化した負極と、多孔質電解質膜とを、正極、電解質膜、負極の順に捲回もしくは積層して形成された電極体に駆動用電解液を含浸させ、アルミニウムケースにより封止された構造のものである。従来、上記リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池のセパレータとしてはポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン等のポリオレフィン系の多孔質膜や不織布が使用されている。
ところで、上記リチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池は、前述の通り小型化が進んでいるためにセパレータも薄膜化が要求されている。しかしながら、従来のセパレータを薄膜化すると、正極、負極間で内部短絡が発生したり、電池の安全性に寄与するシャットダウン効果が発現できなくなったり、或いは電子部品を駆動させるために必要である駆動用電解液を十分保持できなくなるという問題が発生するのみならず、機械的強度の低下により製造工程での作業性、生産性を損ない、製品の信頼性の低下などの問題が発生する。なお、ここでいうシャットダウンとは、電池内温度が何らかの異常によって上昇した際に、140℃乃至150℃付近でセパレータの微細孔が閉塞されて電流の流れを止めてしまう現象である。
これらの問題を解決する目的で、従来種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、電池が異常発熱する環境下および過充電時での安全性を確保する目的で、複合膜中にポリエチレン粒子等のフィラーを混合してシャットダウン機能をもたせることが提案されている。そして具体的には、ポリエチレン粒子が付着した不織布にフッ化ビニリデン樹脂含有塗布液を含浸塗布した後、溶媒水溶液中に浸漬して凝固させ、溶媒を除去することによって製造することが記載されている。しかしながら、特許文献1には、微粒子の粒子径については何等考慮されていなく、十分なシャットダウン効果の発現は期待できない他、フィラー粒子間の空隙に関しては考慮されておらず、従って特にセパレータを薄膜化し、更には粒子間の空隙が大きい場合にはマイクロショートなどの不具合を起こす問題があった。
また、フィラー粒子を含む複合膜よりなるセパレータを製造するために、可塑剤を有機溶剤で抽出除去する方法があるが、形成される多孔質構造体樹脂の細孔は孔径が小さいものとなるために、フィラー粒子により孔が閉塞されるという問題があった。また、可塑材を用いず、有機溶媒を別の溶媒で置換する方法の場合は、複合体内部の空隙が大きくなりやすいために、ポリエチレン等のフィラー粒子が一定の温度域で溶融しても、その空隙を満遍なく埋めることができず、シャットダウン機能が十分に発現されない等の問題がある他、マイクロショートを発生しやすい等の問題があった。したがって、フィラー粒子を含有させる場合には、溶融時には、素早く孔を埋める必要があり、フィラー粒子間の空隙を十分に考慮する必要がある。
また、近年、大型のリチウム系電池や電気二重層キャパシタでは、上記のようなシャットダウン機能は求められない場合がある。このような電子部品では、必ずしも上記の熱可塑性を有する樹脂粒子を用いる必要はないが、本質的には、薄膜セパレータでフィラー粒子間の空隙が大きい場合は、上記のマイクロショートが発生しやすい場合があり問題となる。このような観点からも、前述のように、フィラー粒子間の空隙は十分に考慮する必要がある。
特開2003−317693号公報
本発明は、上記のような実状に鑑みて提案されたものであり、その目的は、薄膜であるにもかかわらず短絡を起こさず、作業性、生産性が極めて良好であり、優れたシャットダウン効果を有する電子部品用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明の電子部品用セパレータは、多孔質構造体及び平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含有した電子部品用セパレータであって、平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする。
また、本発明の電子部品用セパレータの製造方法は、樹脂フィルムの一面に、シート状多孔質基材を載置する工程、該シート状多孔質基材の上に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、形成された塗工層を乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする。
また、第2の製造方法は、樹脂フィルム上の一面に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、シート状多孔質基材を前記工程で得られた塗工層に重ね合わせる工程、その後、乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする。
また、第3の製造方法は、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液に、シート状多孔質基材を含浸した後に余剰な塗布液を除去する工程、その後、乾燥して溶媒を除去するか、又は前記良溶媒及び貧溶媒を置換する液体中に浸漬して前記良溶媒及び貧溶媒を除去した後に更に乾燥により該良溶媒及び貧溶媒を置換する液体を除去する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする。
本発明の電子部品用セパレータは、薄膜で且つ高イオン伝導性であり、粒子径を適度に設計したフィラー粒子を含有することで、薄膜であってもマイクロショートを起こしにくい電気化学素子を製造することが可能であり、特にリチウム系二次電池に用いた場合においては、必要に応じて過充電に対する良好なシャットダウン機能の付与を有することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子部品用セパレータは、多孔質構造体及び平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子を含有した電子部品用セパレータであって、前記フィラー粒子の平均粒子径を大きい順にa、b、c、・・・m、nとした場合に、隣り合う平均粒子径の関係がb≧{(2√3−3)/3}a、c≧{(2√3−3)/3}b、・・・n≧{(2√3−3)/3}mであることを特徴とする。
互いに隣接するこのような2種類の平均粒子径の関係を有するフィラー粒子を図示すると図1の通りである。すなわち、図1に示すように平均粒子径がaのフィラー粒子A3個によって形成される間隙の面積Sよりも平均粒子径がbのフィラー粒子B1個の面積Sの方が大きい。そのためフィラー粒子A間にフィラー粒子Bが入り込まなくなる。その結果、フィラー粒子Aとフィラー粒子Bとの間で生じた間隙がフィラー粒子Aのみから構成される間隙よりも小さくなるため、マイクロショートに繋がる貫通孔の発生を抑えることが可能となる。また、フィラー粒子間の間隙が小さいため溶融されたフィラー粒子がその間隙を十分に埋めることができ良好なシャットダウン性を有する。平均粒子径がbのフィラー粒子が、{2√3−3}/3}aよりも小さい場合では、平均粒子径がaのフィラー粒子によって形成される間隙に、平均粒子径のbのフィラー粒子が入り込んでしまうため、平均粒子径がaのフィラー粒子によって形成される間隙がそのまま電子部品用セパレータに生じてフィラー粒子間の間隙が大きく貫通孔が生じてマイクロショートが発生する。
また、本発明においては、上記平均粒子径がaのフィラー粒子及び平均粒子径がbのフィラー粒子に加えて更に、平均粒子径が異なる第3のフィラー粒子や第4のフィラー粒子を加えてもよい。このような場合では、平均粒子径が異なるフィラー粒子を大きい順に対比して、隣り合うフィラー粒子の関係が前記関係を有すればよい。すなわち、複数のフィラー粒子の平均粒子径の関係がa>b>c>・・・m>nであった場合は、b≧{(2√3−3)/3}a、c≧{(2√3−3)/3}b・・・n≧{(2√3−3)/3}mでなければならない。平均粒子径が異なる第3のフィラー粒子や第4のフィラー粒子を加えた場合では、更にフィラー粒子間の間隙が小さくなるため、マイクロショートに繋がる貫通孔の発生を抑えることが可能となり、また、フィラー粒子間の間隙が小さいため溶融されたフィラー粒子がその間隙を十分に埋めることができ良好なシャットダウン性を有する。本発明におけるフィラー粒子の平均粒子径とは、一次粒子の平均値をいう。
本発明においては、前記フィラー粒子の少なくとも1種類の融点が80℃以上であることが好ましい。融点が80℃以上のフィラー粒子を用いた場合には、良好なシャットダウン効果を発現することができる。この原因については必ずしも明らかではないが、従来の技術では、不織布の目開きは時として数十μm以上である場合があり、この間隙を十数μmの粒子が溶融しても均一に目を埋めることが難しいのに対して、本発明の構造のように、互いに異粒子径を持つ粒子を配することで、フィラー粒子が熱溶融時に埋めるべき間隙が狭くなるためにシャットダウン効果が発現しやすいものと考えられる。かかる融点のフィラー粒子は、フィラー粒子を構成する少なくとも1種類であればよく、他のフィラー粒子は実質上融点を有さないものであっても何ら構わない。即ち、フィラー粒子の一部が熱溶融すれば、他のフィラー粒子間にできる間隙、あるいは、フィラー粒子とシート状多孔質基材との間隙をかかる融点のフィラー粒子が簡単に埋めることが可能である。
前記フィラー粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子、スチレン粒子等の樹脂粒子からなるフィラーや実質上融点を有さないシリカなどの無機粒子を挙げることができる。また、フィラー粒子は、樹脂粒子のみで構成してもよいし、無機粒子のみで構成してもよいし、樹脂粒子と無機粒子を併用して構成してもよい。
本発明の電子部品用セパレータには、機械的強度を向上させるためにシート状多孔質基材を含むことが好ましい。シート状多孔質基材としては不織布を挙げることができる。不織布の構成材料である繊維は、セルロースパルプからなる紙の他、綿、大麻、黄麻等の靭皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等からなる紙、あるいはレーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維及び再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維及びプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維等からなる不織布、織布及び網状物(メッシュ)を挙げることができる。
不織布は、公知の技術を用いて製造することができる。すなわち、湿式、乾式、乾式パルプ式、スパンボンド式、メルトブロー式、フラッシュ紡糸式、トウ開繊式等により製造することができる。不織布の目開きは、短絡防止の目的からできるだけ小さい方が好ましい。その目的から、不織布に使用する繊維の繊維径は、できるだけ細いものが望ましい。
すなわち、本発明では0.15デニール以下の繊維を少なくとも1重量%以上、より好ましくは5重量%以上含むことが好ましい。0.15デニール以下の繊維が1重量%未満の場合は、目開きを小さくする効果が薄れるので好ましくないが、不織布の目開きが比較的大きい場合においても、本発明のフィラー粒子を用いる場合は、0.15デニール以下の繊維が必ずしも含まれていなくても、短絡の発生を抑えることが可能である。
シート状多孔質基材の膜厚としては、特に規定はないが、電子部品のうち、特にリチウムイオン二次電池及びポリマーリチウム二次電池あるいは電気二重層キャパシタ等に使用する場合は、小型化を可能にするために、セパレータの膜厚が50μm以下、特に5〜30μmの範囲になるように選択するのが好適である。但し、セパレータの膜厚が50μm以上であってもプレス処理を施すことによって薄膜化が十分可能である。一方、上記以外の電子部品によっては必ずしも薄膜である必要はなく、セパレータの膜厚は50μm以上であっても構わない。また、厚膜として用いる用途の場合は、50μm以下の薄膜のセパレータを2枚以上重ねて用いることも可能である。
本発明の別のシート状多孔質基材として、フィルム面の垂直方向に貫通した実質上遮蔽構造を有しない平均孔径が50μm以下の貫通孔を有し、隣接する貫通孔間の最短距離の平均が100μm以下である微多孔樹脂フィルムを用いることができる。微多孔樹脂フィルムは、その材質がポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリフェニルスルフォン、ポリテトラフルオロエチレン等が望ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、熱収縮が少なく、また電解液に用いる有機溶媒やイオン性液体に対して溶解しないものであれば、いずれのものも用いることができる。ポリオレフィン系樹脂では、特にポリエチレンやポリプロピレンが好適に用いられる。これらの樹脂は、過充電や過熱時において、電気化学反応の暴走を抑制するための所定温度域で熱溶融し、微多孔樹脂フィルムの貫通孔を塞ぐために安全性において良好な特性をもたらすものである。ポリエステルのうち、特にポリエチレンテレフタレートは、上記所定温度域においては溶けないものの、耐熱収縮が少なく、比較的高温域においても電極間の短絡を生じないために好適に用いられる。また、ポリエチレンナフタレートや、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等は、電解液やイオン性流体への耐性が良好であり、耐熱収縮性も良好なことから、本発明では好適に用いることができる。
図2に微多孔樹脂フィルムの一例を示した。図2において、(イ)は微多孔樹脂フィルムの平面図を示し、(ロ)は(イ)におけるZ−Z線の断面図を示す。
本発明においては、図2に示す微多孔樹脂フィルム1を形成する貫通孔2の直径Xが0.01〜50μm、より好ましくは0.1〜30μmであることが好ましい。Xが0.01μm未満であるとイオン伝導性を阻害しやすい。一方、Xが50μmを越える範囲であると、後述する多孔質構造体と複合しても電子部品の通常使用環境化でも短絡を起こしやすく望ましくない。
本発明に用いる微多孔樹脂フィルムは、隣接する前記貫通孔どうしの周囲間の最短距離Yが0.01〜100μmが好ましく、より好ましくは0.1〜50μmである。Yが0.01μm未満の場合は、微多孔樹脂フィルムの機械的強度が劣る場合があり捲回時に破断しやすくなるなどの不都合を生じる場合がある。一方、Yが50μmを越す場合には、上記の機械的強度は問題ないものの、貫通孔の孔径が小さい場合には、イオン伝導性が低下する不都合が生じる場合がある。
本発明に用いる微多孔樹脂フィルムの膜厚は電池用途であれば20μm以下であることが望ましい。これは、近年の電池の大容量の要求にともなって、電極をできる限り厚くすることが望ましく、その容量増加分はセパレータをできるだけ薄くすることが求められているためである。また、電気二重層キャパシタ等の電子部品では、電解液を多量に保持する必要がある場合は、更に膜厚をあげることも必要な場合があるため、本発明においては、セパレータ用途に応じて膜厚設計を決めればよい。
また、本発明では、図3に例示するように、貫通孔2が垂直方向に直接的に貫通しない位置に2枚の微多孔樹脂フィルム1を配する構成を採用することができる。このような構成をとることによって、過充電や充放電サイクル時において発生するデンドライトを上記の微多孔樹脂フィルムの少なくともソリッドな樹脂部分においてその成長を確実に止めることが可能であり、リチウムイオン二次電池やリチウムポリマー二次電池のみならず、リチウム金属を用いた場合に発生するデンドライトによる充放電サイクル早期の短絡をも防止することが可能となる。但し、本発明においては、2枚の微多孔樹脂フィルムを重ねる場合に貫通孔の位相が同じとなってセパレータ表面に対して垂直方向に貫通孔が同時に存在していてもなんらかまわない。なお、複数枚の微多孔樹脂フィルムを用いる場合は、図3に例示するように、微多孔樹脂フィルム1の間に、多孔質構造体3及び平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子A及びBを構成することで、イオンの流通路を形成するなどの工夫を施すことが電池性能上はより望ましい。
なお、本発明で用いる微多孔樹脂フィルムの作製方法は、例えば、レーザーで微少な貫通孔を連続的に形成する方法や、予め、断続的な微細スリットをフィルム上に形成しておき、該スリットの方向と垂直方向に延伸することで微多孔樹脂フィルムを形成することが可能であるが、必ずしも上記の方法によらなくてもよい。
また、本発明においては、前記シート状多孔質基材の融点は180℃を超すことが望ましい。シート状多孔質基材の融点が180℃以下であると、加熱時に熱溶融し収縮しやすいために、電極間での短絡を起こすことがあり問題となる場合がある。また、本発明においては、該シート状多孔質基材である不織布または微多孔樹脂フィルムを構成する材質の少なくとも1種類の融点が180℃を超すものであれば、上記の過熱時における収縮は防止できるために、本発明では好適に使用することが可能である。不織布の場合には、これを構成する繊維の一部の融点が180℃を超すものであれば収縮は問題なく、また、微多孔樹脂フィルムの場合においては、特に、複数枚の微多孔樹脂フィルムを重ねて用いる場合は、そのうちの例えば1枚の材質の融点が180℃を超すものであれば、過熱時の収縮が起きしにくくなり好適である。
また、本発明においては、多孔質構造体が溶媒可溶型樹脂であり、前記シート状多孔質基材及び前記フィラー粒子が有機電解液に対して70℃までの範囲で実質上膨潤しない素材を含むことが好ましい。70℃までの範囲で有機電解液に全ての多孔質構造体が溶解またはゲル化してしまうと、電池の高温使用環境下においてイオン伝導性が阻害される場合があり好ましくない。膨潤する温度が70℃を超える範囲の素材を一部用いて多孔質を構成した場合、70℃までの高温使用環境下においても、少なくとも多孔質体構造体が残存するために、イオン伝導性が極端に低下することはなく好適である。
該多孔質構造体を形成する樹脂は、実質的に溶媒可溶型の樹脂であることが本発明においては望ましい。更には、多孔質構造体の材質としていわゆるポリマー電解質に用いられる樹脂を選択することで、電解液の保持性や電解液の抽液性が向上するほか、安全性の向上やサイクル特性の向上をも図ることができ好適である。特に、前記溶媒可溶型の樹脂は、上記の様々な特性から、ポリフッ化ビニリデンまたは及びフッ化ビニリデン共重合体であることが最も望ましい。ポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた場合は、一般的な電解液に対する耐性が良好であるために、電解液に濡れても多孔質を維持しやすいことから、イオン伝導を阻害せず、しかも電解液を保持しやすいために安全性やサイクル特性の向上に対しても効果的であり好適に用いられる。また、この樹脂の共重合体である例えばフッ化ビニリデン−ヘキサフロロプロピレンの共重合体を混合して用いれば、通常使用環境下で該樹脂が膨潤するために電極との密着性を適度に与えることも可能であり、サイクル特性を更に向上することが可能となる。共重合体としては上記の例示に必ずしも限定されるものではなく、上記の様々な特性を考慮して種々選択して用いればよく、上記の例のように複数種を複合して用いても何らかまわない。また本発明では、用いる溶媒可溶型の樹脂は、上記のフッ化ビニリデン系のものに限らず、上記の利点を発現するものであれば、いずれも好適に使用でき、例えば、ポリアクリトニトリルや、ポリエチレンオキサイド等のゲル電解質と称されるような樹脂は、いずれも好適に用いることができる。
上記ポリフッ化ビニリデンとしては、フッ化ビニリデンホモポリマー又はフッ化ビニリデンを含むコポリマーを挙げることができる。フッ化ビニリデンホモポリマーは、フッ化ビニリデンのモノマーの付加重合反応によりえられ、その重合方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光・放射線重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合等を挙げることができる。また、フッ化ビニリデンを含むコポリマーは、フッ化ビニリデンと他のモノマーを共重合させた樹脂であり、他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体、フッ化ビニル、3フッ化エチレン、3フッ化塩化エチル、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル等の含フッ素単量体、マレイン酸モノメチル、シトラコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有単量体、又はアリルグリシジンエーテル、クロトン酸グリシジルエステル等のエポキシ基含有ビニル単量体、等を挙げることができる。この中でも特に、フッ化ビニリデンと4フッ化エチレン又は6フッ化プロピレンのいずれか1種類以上とからなるコポリマーが好ましい。
多孔質構造体を構成する樹脂としては、前記のポリフッ化ビニリデンやフッ化ビニリデン共重合体の他に、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルを含む共重合体、ポリスチレン、スチレンを含む共重合体、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド、ポリイミドアミド、ポリフェニルスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンの少なくとも1種類以上を含む共重合体などを挙げることができる。それぞれのホモポリマーは、それぞれの樹脂のモノマーの付加重合反応により得られ、その重合方法としては、公知の技術を用いることができる。すなわちラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光・放射線重合、縣濁重合法、乳化重合泡、塊状重合法などにより得ることができる。また、それぞれの樹脂を含むコポリマーは、それぞれの樹脂のモノマーと他のモノマーを共重合させた樹脂であり、他のモノマーとしては特に規定はない。これらのコポリマーも前記ホモポリマーと同様な重合方法で得ることができる。
本発明においては多孔質構造体を構成する樹脂がアミド系溶媒またはケトン系溶媒またはフラン系溶媒に可溶であることが望ましい。本発明で特に好適に用いられるフッ化ビニリデン系樹脂はアミド系溶媒で溶解した場合において、成膜性が非常に良好であるため、特に好適に用いることができるが、塗工面の乾燥効率を向上する上では、ケトン系溶媒やフラン系溶媒に可溶である樹脂を用いることが望ましい。本発明では、乾燥速度や成膜状態を見ながら、上記の溶媒を適宜混合して用いてもよい。
本発明においては、電子部品用セパレータの厚さは1〜30μmであることが望ましい。1μm以下であると、本発明のフィラー粒子の存在下であっても微少なピンホールが生じやすく、マイクロショートを発生しやすい。一方、30μmよりも厚いと、電子部品用セパレータの内部抵抗が上昇し、電池性能やキャパシタ性能を低下せしめる原因となり望ましくない。
本発明の電子部品用セパレータを適用できる電気化学素子は、通常のリチウム系電池のほか、キャパシタでも良好に用いることができる。本発明の電子部品用セパレータは、いずれのものも、透気度が低く、従って、電子部品用セパレータとしての内部抵抗を低く抑えることが可能であるため、特に、高いレート特性が必要な場合、あるいは、低温における特性が必要な場合は、電池であっても、キャパシタであってもこれらの特性において同様の効果が期待できるためである。また、本発明の電子部品用セパレータは、極めて薄膜であってもマイクロショートを起こさないために、電極部分の体積をより多くすることが可能であるために、電池であれキャパシタであれ容量を大きくすることが可能である。
次に、本発明の電子部品用セパレータの製造方法について述べる。
本発明の第1の製造方法は、樹脂フィルムの一面に、シート状多孔質基材を載置する工程、該シート状多孔質基材の上に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、形成された塗工層を乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子を含み前記フィラー粒子の平均粒子径を大きい順にa、b、c、・・・m、nとした場合に、隣り合う平均粒子径の関係がb≧{(2√3−3)/3}a、c≧{(2√3−3)/3}b、・・・n≧{(2√3−3)/3}mであることを特徴とする。
また、第2の製造方法は、樹脂フィルム上の一面に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、シート状多孔質基材を前記工程で得られた塗工層に重ね合わせる工程、その後、乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子を含み前記フィラー粒子の平均粒子径を大きい順にa、b、c、・・・m、nとした場合に、隣り合う平均粒子径の関係がb≧{(2√3−3)/3}a、c≧{(2√3−3)/3}b、・・・n≧{(2√3−3)/3}mであることを特徴とする。
また、第3の製造方法は、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液に、シート状多孔質基材を含浸した後に余剰な塗布液を除去する工程、その後、乾燥して溶媒を除去するか、又は前記良溶媒及び貧溶媒を置換する液体中に浸漬して前記良溶媒及び貧溶媒を除去した後に更に乾燥により該良溶媒及び貧溶媒を置換する液体を除去する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子を含み前記フィラー粒子の平均粒子径を大きい順にa、b、c、・・・m、nとした場合に、隣り合う平均粒子径の関係がb≧{(2√3−3)/3}a、c≧{(2√3−3)/3}b、・・・n≧{(2√3−3)/3}mであることを特徴とする。
前記第1及び第2の製造方法に用いられる樹脂フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムには離型処理、易接着処理等の表面処理を施したものでもよい。樹脂フィルムは電子部品用セパレータの表面保護膜の機能を有し、樹脂フィルムに電子部品用セパレータを保持させたままの状態で積層物を巻き取って保管・搬送することもできる。
上記樹脂フィルムの選択は、樹脂フィルム上に塗工される塗布液との親和性及び形成される多孔質構造体との剥離性に関連して形成される電子部品用セパレータの性状に影響を及ぼす。本発明では、第1及び第2の製造方法において、積層体から樹脂フィルムを剥離する剥離強度が0.1〜75g/20mmが好ましく、より好ましくは0.1〜40g/20mmである。すなわち、塗工、乾燥後の樹脂フィルム上に形成された多孔質構造体を20mmの幅で切り出したテープ状の試験片を準備し、その試験片に端部における多孔質構造体の一部を剥離し、その端部における多孔質構造体の端部と、もう一方の剥離していない端部とをテンシロンの上下のチャックにそれぞれ固定し、50mm/secの速度で引っ張り測定した場合に得られる剥離の引っ張り荷重を5点測定し、その平均値を、上記切り出し幅である20mmの幅で割った値を剥離強度として評価値とする。
本発明において、第2の製造方法の場合には、前記の如くシート状多孔質基材を重ね合わせる前に樹脂フィルム上に塗布液を塗工するが、樹脂フィルムの剥離強度が0.1g/20mm未満のような比較的離型性が良好な樹脂フィルムでは、塗布液粘度が低い場合に塗工直後の湿潤状態にある塗工面が安定せず、塗布液の単位面積あたりの塗布量が、塗工直後からシート状多孔質基材をウェット状態の塗工層に重ね合わせる間で変動してしまい、セパレータの面方向で多孔質構造体の単位面積あたりの重量が変動してしまう。この現象は本質的には、樹脂フィルムの表面張力に由来するものである。また、これとは別に、樹脂フィルムの剥離強度が0.1g/20mm未満の場合には、乾燥工程において電子部品用セパレータが樹脂フィルムから剥離する場合があり好ましくない。一方、75g/20mmを超すような接着性が高いフィルムでは、上記のような変動は認められないが、樹脂フィルムから電子部品用セパレータを効率的に剥離し取り出すことが困難となるため好ましくない。一方、樹脂フィルム上にシート状多孔質基材を載置して重ねた後、その上に塗布液を塗工する本発明の第1の製造方法においては、塗布液が直接的にシート状多孔質基材上に塗工されるために塗布液は塗工後においてシート状多孔質基材に絡むため流動しにくく、樹脂フィルムの剥離強度が0.1g/20mm未満の場合であっても、上記のような塗布量のバラツキは発生しないが、乾燥工程において電子部品用セパレータが樹脂フィルムから剥離する場合があり好ましくない。一方、剥離強度が75g/20mmを超す樹脂フィルムを用いる場合には、樹脂フィルムから電子部品用セパレータを効率的に剥離し取り出すことが困難となるため好ましくない。
また、剥離強度が上記範囲にある樹脂フィルムを用いる別の利点として、以下に述べる内容が多孔質構造体の細孔の孔径を制御する上で重要である。すなわち、上記のいずれの製造方法においても共通するが、剥離強度を0.1g/20mmに近い低い範囲にした場合は、樹脂フィルムの接するセパレータ面の細孔の孔径が、塗工表層にあたるセパレータ面のものに比べて大きくなり、逆に75g/20mmに近い高い範囲に設計した場合は、樹脂フィルムに接するセパレータ面の細孔の孔径が、塗工表層にあたるセパレータ面のものに比べて小さくなる。また、0.1g/20mm未満の場合は、樹脂フィルムに接する側のセパレータ面の細孔が閉塞する場合があり、75g/20mmを超す場合は、塗工表層にあたるセパレータ面の細孔が閉塞しやすくなる。これらの現象の原因は必ずしも明らかではないが、シート状多孔質基材の表面張力が異なる材質を用いた場合でも同様の孔径の表裏非対称性が生ずることから、表面張力の強さによって生ずるものと考えられる。したがって、本発明では、電池設計からの要求からシート状多孔質基材の材質を固定しても、そのシート状多孔質基材に複合される多孔質構造体を含むセパレータの表裏両面における孔径の対称性を、樹脂フィルムの表面性で制御することが可能となる。つまり、本発明では、従来はシート状多孔質基材の材質によって必ずしも上記の表裏両面の細孔の孔径の対称性が制御できなかったことに比較して、樹脂フィルムの剥離強度の設定によって、孔径の対称性を制御が可能である。
前記本発明の第1、第2及び第3の製造方法における良溶媒とは、多孔質構造体を形成する樹脂が溶解する溶媒である。該樹脂としてポリフッ化ビニリデン樹脂を用いた場合は、良溶媒の例として、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルスルホキシド等が挙げられる。フッ化ビニリデン樹脂の良溶媒中の分散、溶解は、市販の攪拌機を使用して行うことができる。また、貧溶媒とは多孔質構造体を形成する樹脂が溶解しない溶媒である。貧溶媒としては、良溶媒より沸点の高い溶媒を選択する。貧溶媒の例として、フタル酸ジブチル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。塗布液におけるフッ化ビニリデン樹脂の濃度は、得られるセパレータの特性を考慮に入れて適宜設定することができる。
前記良溶媒及び貧溶媒は、共沸や、乾燥の温度差及び蒸気圧の差が大きい組み合わせは、ピンホールに代表される貫通孔の発生頻度を高める点で好ましくなく、また製造効率上も望ましくない。良溶媒と貧溶媒の沸点差は、50℃以内、特に30℃以内とすることが製造効率上好ましい。50℃を超す場合には、製造のプロセス速度があげられないほか、乾燥エネルギーが大きくなり好ましくない。また、50℃を超す場合は、乾燥条件を段階的に設定する場合に、プロセス方向への瞬時の条件切り替えが実質的に不可能となるために、大量生産には不向きであるという問題もある。
また、本発明では、前記塗布液に多孔質構造体を形成するための樹脂を溶解する良溶媒を少なくとも2種以上含み、かつ、前記樹脂を溶解しない貧溶媒を少なくとも1種以上含んでもよい。塗布液のハンドリング性からは、塗布液粘度をある程度低くすることが重要であるため、比較的低粘度である補助的な良溶媒を、これとは異なる主たる良溶媒と併用して、塗布液粘度を低減することが望ましい。このような補助的良溶媒の選択は、上記の溶媒粘度のほか、貧溶媒との乾燥バランスや、溶媒同士の共沸性を考慮して選択すればよい。本発明における補助的良溶媒は1種類に限らず複数種用いてもよい。
前記塗布液をシート状多孔質基材または樹脂フィルム上に塗工する方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等により塗布又はキャスティング法等を挙げることができる。これにより、シート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成する樹脂が積層及び浸入する。次に、塗工されたシート状多孔質基材上の塗布液から溶媒を乾燥により蒸発させて多孔質構造体を形成し積層体を得る。次に積層体から樹脂フィルムを剥離して本発明の電子部品用セパレータを得ることができる。
本発明の第1、第2及び第3の製造方法における塗布液において、前記溶媒として吸湿性が高いものを用いる場合には、できる限り水分の混入を防ぐことが必要である。本発明では、塗布液は、カールフィッシャー法による測定で水分量が0.7重量%以下であることが好ましく、更に0.5重量%以下であることが好ましい。水分量が0.7重量%を超すと、ゲル化が早期に進み塗布液の保存期間が極端に短くなったり、形成される多孔質構造体の膜厚が著しく不均一なものとなり、膜厚が厚いところでは塗布液が水分混入によるゲル化によって孔径が極端に小さくなり、0.1μm未満の孔径の割合が多くなる。また、ゲルが溶媒の乾燥によって固化する際に収縮するため、膜厚の薄い部分(非ゲル部分)を引っ張って、15μm越える孔径の割合が多くなる。そしてゲルは部分的な発生であるため、全体として多孔質構造体は孔径が大きい部分が多くなり、結果として、バブルポイント法による平均孔径は15μmを越えた大きなものとなり、そしてフィラー粒子の平均粒子径が孔径の1%より低い値になる。このような大きな孔径がスポット的に発生すると、その部分でのマイクロショートが発生しやすく、一方孔径が小さな部分が大きな部分として混在すると、面方向での内部抵抗のバラツキを大きくするため、電池やキャパシタ性能のバラツキを生ずることとなり問題となる。また、かかるバラツキはサイクル特性にも悪影響を及ぼしやすい。
本発明の第1、第2及び第3の製造方法において、シート状多孔質基材及び/又は塗布液に平均粒子径が異なる少なくとも2種類以上のフィラー粒子を含むものであるが、該フィラー粒子が樹脂粒子からなるフィラー粒子の場合では、その粒子が溶融しない温度条件で乾燥処理することが好ましい。フッ化ビニリデン樹脂を溶解可能な溶媒は、沸点が高いものが多いために、実質的には70〜180℃の加熱温度が必要となる。このため、乾燥風量を多くすることによって乾燥を早期に行いつつ、更にはプロセス速度を上げることによって、できるだけ短時間で乾燥を終了すればよい。加熱温度が70℃より低いと、乾燥効率が悪く製造効率があがらない。一方、180℃を超える範囲では、微粒子の多くが溶融してしまうためにシャットダウン機能の付与に悪影響がある。また、一般的には、乾燥条件は段階的に設定し、良溶媒を先に乾燥させた後に貧溶媒を乾燥させることが多孔質構造体を形成する上で好ましいが、セパレータの膜性能上は、共沸しなければ、両溶媒は必ずしもはっきりと分けて乾燥しなくてもよい。乾燥は、多孔質構造体の空隙率や、孔径の制御を適宜行いつつ乾燥条件を決定することによって行なうことが望ましい。本発明では、上記のように溶媒処方の組み合わせ、乾燥温度及び送風量の各条件を適宜選択することによって、セパレータのシャットダウン機能及びその他の電池性能の最適化と、製造効率向上の両立を実現することができる。また、本発明では、上記従来技術におけるような、溶媒などによる貧溶媒、残留溶媒の除去工程を設ける必要がなく、塗工後に乾燥工程を一度経由するだけで、セパレータとして最適な多孔質構造体を簡便に製造することができる。したがって、製造効率が非常に良好なことから、安価で良質なセパレータを大量に提供することが可能となる。
本発明においては、上記いずれの製造方法も好適に用いられるが、例えばシート状多孔質基材の空隙率が大きい場合は第2の製造方法が好ましい。すなわち、第1の製造方法の場合は、樹脂フィルム上にシート状多孔質基材を重ねた上に塗布液を塗工するために、シート状多孔質基材を構成する例えば不織布の場合には、これを構成する繊維間の空隙に空気が残存しやすく、塗工欠点となる場合があるためである。しかしながら、第1の製造方法は、予めシート状多孔質基材を樹脂フィルムと同軸に巻いておくことが可能であるため、第2の製造方法のようにシート状多孔質基材を別に巻き出すための巻き出し機構が不要であるため、より効率の良い製造が可能である。したがって、空隙率が比較的低く成膜性に問題のないシート状多孔質基材の場合には第1の製造方法が適している。シート状多孔質基材の空隙率は、電池設計を優先して決めるべきであり、その設計要求によって製造方法を適宜選択すればよい。第2の製造方法では、例えばシート状多孔質基材の空隙率の大小に関わらず、塗工欠点のない均質なセパレータを製造することが可能であるが、いずれの方法を用いる場合であっても、上記の空隙率に代表されるシート状多孔質基材の諸物性を考慮してその製造方法を選択すれば、均質なセパレータを製造することが可能である。
また、本発明の第3の製造方法においては、前記多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液に、前記シート状多孔質基材を含浸した後に余剰な塗布液を除去する工程を有する。この製造方法においては、塗布液をシート状多孔質基材に含浸しているためシート状多孔質基材の内部には塗布液が一様にしみこんでおり、ドクターブレードなどで表面に付着する塗布液をかきとることで、該表面に残る塗布液を表裏両面とも極く薄い層とした後に、乾燥することで表裏それぞれに1〜2μm程度の非常に薄い多孔質構造体を有する均一なセパレータを得ることができる。また、上記のように表面層が非常に薄膜である場合は、含浸、かきとり後、塗布液で湿潤状態にあるシート状多孔質基材を、良溶媒及び貧溶媒を置換する液体中に浸漬して、該良溶媒及び貧溶媒を上記置換用液体で置換することで均一なセパレータを得ることができる。この置換用液体としては、イオン交換水等を挙げることができる。
本発明者らの検討によれば、多孔質構造体を形成する樹脂として、例えばポリフッ化ビニリデンを用いた場合においては、塗布量が多い場合において、溶媒置換法ではセパレータの表面にスキン層を生じやすく、従って、透気度が高くなってしまう不具合が発生する場合があったが、上記のようにセパレータの表層部に残る塗布層が溶媒除去後に目安として片面で1〜2μm程度、両面で2〜4μm程度であれば、上記の溶媒置換法でもスキン層を生じにくく、従って、低透気度を有する均一なセパレータを得ることが可能である。また、上記のように、極く薄膜の多孔質構造体を形成する場合には、溶媒置換される塗布液中の溶媒量は少ないために、抽出された溶媒の処理は比較的容易である点も利点である。
上記の第1、第2及び第3の製造方法により得られる本発明の電子部品用セパレータは、いずれも低透気度を有し、特に、高いレート特性や低温特性を要求されるリチウム系電池及び特にパワー用途のキャパシタには好適に用いることができる。
以下に、本発明の電子部品用セパレータを実施例によって説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
重量平均分子量30万のフッ化ビニリデンホモポリマーを1−メチル−2−ピロリドン及びジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加してフッ化ビニリデンホモポリマー成分が10重量%になるように調整した塗布液を得た。この溶液中に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、0.6重量%であった。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム面に、予め融点が250℃のポリエチレンテレフタレート繊維よりなる厚さ10μmの不織布に一次平均粒子径が5μmで融点が113℃のポリエチレン粒子、及び同じ融点を有しその一次平均粒子径が1μmのポリエチレン粒子をそれぞれ1g/m保持させておいたものを載置し、その不織布に上記塗布液をキャスティング法により塗布した。次に、不織布の内部に含まれる塗布液中の溶剤を熱により蒸発させ、樹脂フィルムを剥離することによって、不織布繊維間にフッ化ビニリデンホモポリマーの多孔質構造体を有する厚さが18μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。なお、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は17g/20mmであった。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の平均孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
重量平均分子量30万のフッ化ビニリデンホモポリマーを1−メチル−2−ピロリドン及びジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加してフッ化ビニリデンホモポリマー成分が5重量%になるように調整した塗布液を得た。この塗布液中に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、0.65重量%であった。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム面に、予め融点が240℃のポリエチレンテレフタレート繊維よりなる厚さ10μmの不織布に一次平均粒子径が1μmで融点が113℃のポリエチレン粒子と一次平均粒子径が0.3μmで融点が132℃のポリエチレン粒子を前者が10g/m後者を7g/m保持させておいたものを載置し、その不織布上に上記塗布液をキャスティング法により塗布した。次に、不織布の内部に含まれる塗布液中の溶剤を熱により蒸発させ、樹脂フィルムを剥離することによって、不織布繊維間にフッ化ビニリデンホモポリマーの多孔質構造体を有する複合膜を得た。これにプレス処理を施し、厚さが11μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。なお、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は0.6g/20mmであった。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は殆ど認められなかった。
重量平均分子量60万のポリアミドイミド樹脂をジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加してポリアミドイミド樹脂成分が10重量%になるように調整した塗布液を得た。この塗布液中に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、0.5重量%であった。次にポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム面に、予め融点が240℃のポリエチレンテレフタレート繊維よりなる厚さ10μmの不織布に一次平均粒子径が3μmで融点が113℃のポリエチレン粒子と一次平均粒子径が1μmで融点が148℃のポリプロピレン粒子を前者が20/m、後者を10g/m保持させておいたものを載置し、その不織布上に上記塗布液をキャスティング法により塗布した。次に、不織布の内部に含まれる塗布液中の溶剤を熱により蒸発させ、樹脂フィルムを剥離することによって、不織布繊維間にポリアミドイミド樹脂の多孔質構造体を有する厚さが23μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。なお、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は65g/20mmであった。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
重量平均分子量20万のフッ化ビニリデンホモポリマーを1−メチル−2−ピロリドン及びジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加してフッ化ビニリデンホモポリマー成分が8重量%になるように調整した塗布液を得た。この塗布液中に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、0.5重量%であった。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム面に、予めポリエチレンテレフタレート繊維よりなる厚さ10μmの不織布に一次平均粒子径が1.5μmで融点が350℃のポリテトラフルオロエチレン粒子と一次平均粒子径が0.5μmで融点が350℃のポリテトラフルオロエチレン粒子をそれぞれ5g/m保持させておいたものを載置し、その不織布上に上記塗布液をキャスティング法により塗布した。次に、不織布の内部に含まれる塗布液中の溶剤を熱により蒸発させ、樹脂フィルムを剥離することによって、不織布繊維間にフッ化ビニリデンホモポリマーの多孔質構造体を有する複合膜を得た。これにプレス処理を施し、厚さが25μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。なお、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は15g/20mmであった。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
重量平均分子量30万のポリアミドイミド樹脂をジメチルアセトアミド(良溶媒)に溶解し、フタル酸ジブチル(貧溶媒)を添加してポリアミドイミド樹脂が10重量%になるように調整した塗布液を得た。この塗布液中に含まれる水分量をカールフィッシャー法で測定したところ、0.51重量%であった。次に、ポリエチレンテレフタレートからなる樹脂フィルム面に、フィルム面の垂直方向に貫通した実質上遮蔽構造を有しない平均孔径が20μm隣接する貫通孔間の最短距離が20μmであって厚さが6μmの微多孔樹脂フィルム面に、予め一次平均粒子径が5μmで融点が350℃のポリテトラフルオロエチレン粒子を10g/mと、一次平均粒子径が2μmで融点が350℃のポリテトラフルオロエチレン粒子を5g/m付着させておいたものを載置し、該微多孔樹脂フィルム上に上記溶液をキャスティング法により塗布した。次に、該微多孔質樹脂フィルムに塗布された塗布液中の溶剤を熱により蒸発させ、上記樹脂フィルムを剥離することによって、該微多孔樹脂フィルムの表裏及び貫通孔の内部にポリアミドイミド樹脂の多孔質構造体を有する厚さが10μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。なお、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は16g/20mmであった。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例1において、不織布を構成する繊維の一部を繊維径が0.1デニールのものが10重量%になるように置き換えた以外は、実施例1と同様にして本発明の電子部品用セパレータを得た。この際の不織布の厚さは10μmであった。また得られた電子部品用セパレータの厚さは20μmであり、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は20g/20mmであった。この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例1において、不織布を構成する繊維の一部を繊維径が0.1デニールのものが50重量%になるように置き換えた以外は、実施例1と同様にして電子部品用セパレータを得た。この際の不織布の厚さは10μmであった。また得られた電子部品用セパレータの厚さは18μmであり、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は16g/20mmであった。この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートよりなる樹脂フィルムに直接キャスティング法により、実施例1と同様の塗布液を塗工し、塗布直後に湿潤状態にある塗工面上に、実施例1の2種のポリエチレン粒子を保持した不織布をウェットラミネーションにより重ねた。それ以外は実施例1と同様にして本発明の電子部品用セパレータを得た。得られた電子部品用セパレータの厚さは21μmであり、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は14g/20mmであった。この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例6の不織布を用いた他は、実施例3と同様にして本発明の電子部品用セパレータを得た。得られた電子部品用セパレータの厚さは21μmであり、樹脂フィルムの積層体に対する剥離強度は21g/20mmであった。この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例5の微多孔樹脂フィルムを実施例5の塗布液に含浸後、表裏両面をドクターブレードでそれぞれかきとった後に、イオン交換水に浸漬した後、80℃の乾燥機にて1時間乾燥して微多孔樹脂フィルムの表裏及び貫通孔の内部にポリアミドイミド樹脂の多孔質構造体を有する厚さが9μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例3の塗布液に実施例1の2種のフィラー粒子を混合・分散した塗布液を準備し、この塗布液を用いて不織布を載置しない以外は実施例1と同様にして、不織布を用いない厚さが12μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
実施例3の塗布液に実施例3の2種のフィラー粒子を混合・分散した塗布液を準備し、この塗布液を用いて不織布を載置しない以外は実施例1と同様にして、不織布を用いない厚さが11μmの本発明の電子部品用セパレータを得た。
この電子部品用セパレータを電子顕微鏡で観察したところ、ピンホールなどの貫通孔は存在せず、前記多孔質構造体は、セパレータの片面からもう一方の面に多数の細孔の繋がりによって通じており、各細孔の孔径はセパレータの厚さより小さかった。また、セパレータの厚さ方向で孔径分布の傾斜は認められず、厚さ方向に均質な多孔質構造であることを確認した。
[比較例1]
厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート繊維よりなる不織布のみを比較用の電子部品用セパレータとした。
[比較例2]
実施例1において、一次平均粒子径が5μmのポリエチレン粒子だけを用いた以外は、実施例1と同様にして比較用の電子部品用セパレータを得た。この電子部品用セパレータの厚さは17μmであった。
[比較例3]
実施例1において、一次平均粒子径が1μmのポリエチレン粒子の代わりに一次平均粒子径が0.05μmで融点が113℃のポリエチレン粒子に変えた以外は、実施例1と同様にして比較用の電子部品用セパレータを得た。この電子部品用セパレータの厚さは18μmであった。
上記実施例及び比較例で得られた電子部品用セパレータの特性を下記のように評価した。
〔イオン伝導度〕
上記実施例1〜12及び比較例1〜3で得られた電子部品用セパレータを使用してコイン型セルを作製し、そのイオン伝導度を測定した。その結果を表1に示す。なお、測定環境、測定装置は次の通りである。
測定環境:20℃50%RH
測定装置:Solartron社製 SI 1287 1255B
Figure 0004676728
表1より明らかなように、本発明の実施例1から12の電子部品用セパレータは、比較例3よりもイオン伝導性が優れていることが確認された。これは、低透気度であるということと、電極とセパレータとがセパレータ表面の樹脂層により隙間なく接触していることがイオン伝導性を良くした要因であると考えられる。
〔シャットダウン性〕
上記実施例1〜3、6〜8、11及び比較例2、3で得られた電子部品用セパレータを使用してコイン型セルを作製し、そのシャットダウン性を確認した。その結果を表2に示す。試験方法としては、満充電したコイン型セルに更に充電を行い、その際の電池内部の温度変化を測定し、温度が下がり始めた点をシャットダウン温度とした。
Figure 0004676728
表2より明らかなように、本発明の実施例の電子部品用セパレータは、シャットダウン機能を有することが確認された。一方、比較例2ではフィラー粒子の平均粒子径が一定であるために、フィラー粒子が溶融してもフィラー粒子間の空隙を埋めきれずに電池反応を抑えきれず、シャットダウン機能が働かなかった。本発明の異なる平均粒子径を有するフィラー群を用いた場合は、良好なシャットダウン性を有することが明らかとなった。この比較対照から、本発明ではフィラー粒子間の空隙が小さく、従ってシャットダウン機能を持たせやすいことがわかる。
〔短絡性〕
ステンレス製の平板上に10cm×10cmの正方形に切り出した上記実施例1〜12及び比較例1〜3で得られた電子部品用セパレータを置き、同じくステンレス製の底面積が0.5cmの円筒形の圧子を用いて30kgの力で押したときのステンレス板とステンレス円筒間の電気的な短絡を確認した。その結果を表3に示し、○は短絡が生じなかったことを示し、×は短絡が生じたことを示す。
Figure 0004676728
本発明の実施例の電子部品用セパレータはいずれも短絡しなかった。一方、比較例1及び比較例2の電子部品用セパレータは短絡が生じて問題があることが確認された。特に、実施例2、5、10、11及び12のような厚さ15μm以下の薄いセパレータであっても短絡を生ずることなく、本発明の課題が解決されたことを確認した。
〔耐熱性〕
実施例3、5、9、10及び12の電子部品用セパレータについて、その寸法安定性を確認したところ、いずれも200℃の雰囲気下、10時間放置後においても寸法変化が殆どみられず、また、透気度などの変化も確認されないことから、耐熱性が良好であることを確認した。
2種類のフィラー粒子の平均粒子径の関係を説明する図である。 微多孔樹脂フィルムの一例を示した図である。 2枚の微多孔樹脂フィルムを重ねた電子部品用セパレータの模式的断面図である。
符号の説明
1 微多孔樹脂フィルム
2 貫通孔
3 多孔質構造体
A フィラー粒子
B フィラー粒子

Claims (11)

  1. 多孔質構造体及び平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含有した電子部品用セパレータであって、平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする電子部品用セパレータ。
  2. 前記フィラー粒子の少なくとも1種類の融点が80℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用セパレータ。
  3. シート状多孔質基材を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品用セパレータ。
  4. 前記シート状多孔質基材が不織布か、又はフィルム面の垂直方向に貫通した実質上遮蔽構造を有しない平均孔径が0.01〜50μmの貫通孔を有し、隣接する貫通孔間の最短距離の平均が0.01〜100μmである微多孔樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の電子部品用セパレータ。
  5. 前記シート状多孔質基材の融点が180℃を超すことを特徴とする請求項3に記載の電子部品用セパレータ。
  6. 樹脂フィルムの一面に、シート状多孔質基材を載置する工程、該シート状多孔質基材の上に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、形成された塗工層を乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする電子部品用セパレータの製造方法。
  7. 樹脂フィルム上の一面に、多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液を塗工する工程、シート状多孔質基材を前記工程で得られた塗工層に重ね合わせる工程、その後、乾燥して溶媒を除去することによってシート状多孔質基材の表面及び/又は内部に多孔質構造体を形成した積層体を得る工程、その後該積層体から樹脂フィルムを剥離する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする電子部品用セパレータの製造方法。
  8. 多孔質構造体を形成する樹脂と少なくとも該樹脂を溶解する良溶媒または良溶媒と貧溶媒の両方を含む塗布液に、シート状多孔質基材を含浸した後に余剰な塗布液を除去する工程、その後、乾燥して溶媒を除去するか、又は前記良溶媒及び貧溶媒を置換する液体中に浸漬して前記良溶媒及び貧溶媒を除去した後に更に乾燥により該良溶媒及び貧溶媒を置換する液体を除去する工程を有し、前記シート状多孔質基材及び/又は前記塗布液に平均粒子径が異なる2種類のフィラー粒子を含み平均粒子径がaのフィラー粒子Aが、平均粒子径がbのフィラー粒子Bよりも大きい粒子であり、前記フィラー粒子A3個が隣接することによって形成される間隙の面積S よりもフィラー粒子B1個の面積S の方が大きいことを特徴とする電子部品用セパレータの製造方法。
  9. 前記塗布液中に含まれる水分量がカールフィッシャー法による測定で0.7重量%以下であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子部品用セパレータの製造方法。
  10. 前記塗布液に含まれる貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点よりも高いことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子部品用セパレータの製造方法。
  11. 前記積層体から樹脂フィルムを剥離する強度が0.1〜75g/20mmであることを特徴とする請求項6または7に記載の電子部品用セパレータの製造方法。
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