本発明は、複数の気筒が左右のバンクに分けて配列されて各バンクの気筒が不等間隔で点火・爆発する不等間隔点火式のV型多気筒内燃機関に関するものである。
一般的なV型多気筒エンジンにおいて、シリンダブロックは上部に所定角度で傾斜した2つのバンクを有しており、各バンクに設けられた各シリンダにピストンが移動自在に嵌合し、各ピストンは下部に回転自在に支持されたクランクシャフトに連結されている。また、シリンダブロックの各バンクの上部にはシリンダヘッドが締結されることで各燃焼室が構成されており、各燃焼室には吸気ポート及び排気ポートが形成され、吸気弁及び排気弁により開閉可能となっている。そして、吸気管の下流部が2つに分岐して各バンクの吸気ポートに連結される一方、排気管の上流部が2つに分岐して各バンクの排気ポートに連結され、この排気管の下流部に触媒装置が装着されている。
例えば、V型8気筒エンジンにて、左バンクには第1気筒、第3気筒、第5気筒、第7気筒が設けられ、右バンクには第2気筒、第4気筒、第6気筒、第8気筒が設けられ、各バングに排気マニホールドを介して排気管が連結されている。そして、動弁系の動バランスを最適化するために各気筒の点火順序は、第1気筒、第8気筒、第7気筒、第3気筒、第6気筒、第5気筒、第4気筒、第2気筒となっている。また、V型8気筒エンジンでは、ピストンによるポンピングロスの低減や発生するNOxの低減などの目的で、排気弁の閉止時期を遅角すると共に吸気弁の開弁時期を進角することで、排気弁の開放期間後期と吸気弁の開放期間前期とをオーバーラップさせるようにしている。
特開平3−070810号公報
特表2003−515025号公報
ところが、上述したV型8気筒エンジンにあっては、点火順序が気筒番号順でないため、左バンクでは第1気筒、第7気筒、第3気筒、第5気筒の順に不等間隔で点火され、右バンクでは第8気筒、第6気筒、第4気筒、第2気筒の順に点火されることとなり、各バンクにおける点火(爆発)間隔が不等となっている。そのため、左バンクでは、第1気筒のオーバーラップ期間と第7気筒の排気行程が重なると共に、第3気筒のオーバーラップ期間と第5気筒の排気行程が重なってしまう。また、右バンクでは、第2気筒のオーバーラップ期間と第8気筒の排気行程が重なると共に、第6気筒のオーバーラップ期間と第4気筒の排気行程が重なってしまう。
そして、一方の気筒のオーバーラップ期間と他方の気筒の排気行程が重なると、一方の気筒の吸気弁及び排気弁の開放状態で、他方の気筒の排気弁が開放することとなり、この他方の気筒の排気ポートから排出された排気ガスが排気マニホールドを通って一方の気筒に排気脈動として悪影響を与える。即ち、一方の気筒に他方の気筒の排気脈動が作用することで、この一方の気筒では、排気マニホールドから排気ポートを通ってシリンダ(燃焼室)内に戻る排気ガス循環量、つまり、内部EGR量が増加してしまう。すると、各気筒間で内部EGR量が相違することで吸入空気量も相違し、燃焼がばらついて不安定となり、出力トルクが変動してしまうと共に、オーバーラップによる燃費の改善や排気ガス性能の向上などの効果を得ることができない。
なお、不等間隔点火を行うエンジンにて、特定気筒における排気干渉による充填効率やノック特性のばらつきを抑制するものとして、例えば、上記特許文献1、2に記載された技術がある。ところが、特許文献1の内燃機関の排気装置は、点火順序で先行する気筒との点火間隔が小さい気筒の排気マニホールドの集合部をエゼクタ形状としたものであり、排気マニホールドの排気脈動による特定気筒における内部EGR量の増加で発生する燃焼変動を抑制することはできない。また、特許文献2の多気筒型内燃機関は、オーバーラップ期間を減少することで排気衝撃を減少したものであり、排気脈動による特定気筒の内部EGR量の増加を十分に抑制することはできず、且つ、オーバーラップによる燃費の改善や排気ガス性能の向上を図ることができない。
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、各気筒における排気ガス再循環量を均一化することで気筒間の燃焼のばらつきを抑制した内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の内燃機関は、複数の気筒が左右のバンクに分けて配列されて該各バンクの気筒が不等間隔で点火されると共に、各気筒における排気弁の開放期間と吸気弁の開放期間とがオーバーラップする期間を有する内燃機関において、前記各バンクにて、特定の気筒の排気行程に前記オーバーラップ期間が重なる第1の気筒の燃料噴射を前記吸気弁の開放期間における所定時期に実行する一方、特定の気筒の排気行程に前記オーバーラップ期間が重ならない第2の気筒の燃料噴射を前記排気弁の開放期間における所定時期に実行する燃料噴射制御手段を設けたことを特徴とするものである。
本発明の内燃機関では、燃料を燃焼室に噴射する燃料噴射手段を設け、前記燃料噴射制御手段は、該燃料噴射手段により前記第1の気筒の燃料噴射を前記排気弁が閉止して前記吸気弁が開放しているときに実行する一方、前記第2の気筒の燃料噴射を前記排気弁及び前記吸気弁が開放しているときに実行することを特徴としている。
本発明の内燃機関では、燃料噴射量が予め設定された所定量以上であるとき、前記燃料噴射制御手段は、前記第2の気筒の燃料噴射を前記排気弁が開放しているときと、該排気弁が閉止した後に実行することを特徴としている。
本発明の内燃機関では、燃料を吸気系に噴射する燃料噴射手段を設け、前記燃料噴射制御手段は、該燃料噴射手段により前記第1の気筒の燃料噴射を前記吸気弁が開放しているときに実行する一方、前記第2の気筒の燃料噴射を前記排気弁が開放して前記吸気弁が閉止しているときに実行することを特徴としている。
本発明の内燃機関によれば、複数の気筒が左右のバンクに分けて配列され、各バンクの気筒が不等間隔で点火されると共に、各気筒における排気弁の開放期間と吸気弁の開放期間とがオーバーラップする期間を有する内燃機関にて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1の気筒の燃料噴射を吸気弁の開放期間における所定時期に実行する一方、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重ならない第2の気筒の燃料噴射を排気弁の開放期間における所定時期に実行する燃料噴射制御手段を設けている。従って、第1の気筒では、排気脈動の影響を受けて内部排気ガス再循環量が増加する。一方、第2の気筒では、排気脈動の影響を受けないものの、燃料噴射制御手段により排気弁の開放期間における所定時期に燃料が噴射されることで、燃焼室内の排気ガスが燃料の気化潜熱により冷却されるため、第1の気筒と同様に、内部排気ガス再循環量が増加する。即ち、第1の気筒の内部排気ガス再循環量と、第2の気筒の内部排気ガス再循環量が同量となることから、各気筒における排気ガス再循環量が均一化され、気筒間の燃焼のばらつきを抑制することができる。
以下に、本発明にかかる内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンの概略平面図、図2は、実施例1のV型8気筒エンジンの概略構成図、図3は、実施例1のV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャート、図4は、実施例1のV型8気筒エンジンにおける吸気弁及び排気弁の開放時期を表すタイムチャートである。
実施例1では、内燃機関としてV型8気筒エンジンを適用している。このV型8気筒エンジンにおいて、図1及び図2に示すように、シリンダブロック11は上部に所定角度で傾斜した左右のバンク12,13を有しており、各バンク12,13にそれぞれ4つのシリンダボア14,15が形成され、各シリンダボア14,15にピストン16,17がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部に図示しないクランクシャフトが回転自在に支持されており、各ピストン16,17はコネクティングロッド18,19を介してこのクランクシャフトにそれぞれ連結されている。
一方、シリンダブロック11の各バンク12,13の上部にはシリンダヘッド20,21が締結されており、シリンダブロック11とピストン16,17とシリンダヘッド20,21により各燃焼室22,23が構成されている。そして、この燃焼室22,23の上部、つまり、シリンダヘッド20,21の下面に吸気ポート24,25及び排気ポート26,27が対向して形成され、この吸気ポート24,25及び排気ポート26,27に対して吸気弁28,29及び排気弁30,31の下端部が位置している。この吸気弁28,29及び排気弁30,31は、シリンダヘッド20,21に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート24,25及び排気ポート26,27を閉止する方向に付勢支持されている。また、シリンダヘッド20,21には、吸気カムシャフト32,33及び排気カムシャフト34,35が回転自在に支持されており、吸気カム36,37及び排気カム38,39が図示しないローラロッカアームを介して吸気弁28,29及び排気弁30,31の上端部に接触している。
従って、エンジンに同期して吸気カムシャフト32,33及び排気カムシャフト34,35が回転すると、吸気カム36,37及び排気カム38,39がローラロッカアームを作動させ、吸気弁28,29及び排気弁30,31が所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート24,25及び排気ポート26,27を開閉し、吸気ポート24,25と燃焼室22,23、燃焼室22,23と排気ポート26,27とをそれぞれ連通することができる。
また、このエンジンの動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁28,29及び排気弁30,31を最適な開閉タイミングに制御する吸気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)40,41と排気可変動弁機構42,43により構成されている。この吸気可変動弁機構40,41及び排気可変動弁機構42,43は、例えば、吸気カムシャフト32,33及び排気カムシャフト34,35の軸端部にVVTコントローラが設けられて構成され、油圧ポンプ(または電動モータ)によりカムスプロケットに対する各カムシャフト32,33,34,35の位相を変更することで、吸気弁28,29及び排気弁30,31の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、各可変動弁機構40,41,42,43は、吸気弁28,29及び排気弁30,31の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト32,33及び排気カムシャフト34,35には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ44,45,46,47が設けられている。
各シリンダヘッド20,21の吸気ポート24,25には吸気マニホールド48,49を介してサージタンク50が連結され、このサージタンク50には吸気管51が連結されており、この吸気管51の空気取入口にはエアクリーナ52が取付けられている。また、吸気管51には、エアクリーナ52の下流側に位置してスロットル弁を有する電子スロットル装置53が設けられている。一方、排気ポート26,27には、排気マニホールド54,55及び触媒装置56,57を介して連結管58が連結され、この連結管58には排気管59が連結され、この排気管59には触媒装置60が装着されている。
また、各シリンダヘッド20,21には、各燃焼室22,23に直接燃料(ガソリン)を噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)61,62が装着されており、各インジェクタ61,62にはデリバリパイプ63,64が連結され、この各デリバリパイプ63,64には高圧燃料ポンプ65から所定圧の燃料を供給可能となっている。また、シリンダヘッド20,21には、燃焼室22,23の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ66,67が装着されている。
ところで、車両には、燃料噴射制御手段としての電子制御ユニット(ECU)68が搭載されており、このECU68は、インジェクタ61,62の燃料噴射タイミングや点火プラグ66,67の点火時期などを制御可能となっており、検出した吸入空気量、吸気温度、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。即ち、吸気管51の上流側にはエアフローセンサ69及び吸気温センサ70が装着され、計測した吸入空気量及び吸気温度をECU68に出力している。また、電子スロットル装置53にはスロットルポジションセンサ71が設けられ、アクセルペダルにはアクセルポジションセンサ72が設けられており、現在のスロットル開度及びアクセル開度をECU68に出力している。更に、クランクシャフトにはクランク角センサ73が設けられ、検出したクランク角度をECU68に出力し、ECU68はクランク角度に基づいてエンジン回転数を算出する。また、シリンダブロック11には水温センサ74が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU68に出力している。
また、ECU68は、エンジン運転状態に基づいて吸気可変動弁機構40,41及び排気可変動弁機構42,43を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁30,31の開放時期と吸気弁28,29の開放時期のオーバーラップとをなくすことで、排気ガスが吸気ポート24,25または燃焼室22,23に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁28,29の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート24,25に吹き返す量を少なくして体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁28,29の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとして体積効率を向上させる。
ところで、本実施例のV型8気筒エンジンにおいて、図1に示すように、左バンク12には第1気筒#1、第3気筒#3、第5気筒#5、第7気筒#7が直列に設けられ、右バンク13には第2気筒#2、第4気筒#4、第6気筒#6、第8気筒#8が直列に設けられ、各バング12,13に排気マニホールド54,55を介して連結管58及び排気管59が連結されている。そして、動弁系の動バランスを最適化するために、各気筒の点火順序は、第1気筒#1、第8気筒#8、第7気筒#7、第3気筒#3、第6気筒#6、第5気筒#5、第4気筒#4、第2気筒#2となっている。
そのため、このV型8気筒エンジンでは、点火順序が気筒番号順でないため、左バンクでは第1気筒#1−(180°CA)−第7気筒#7−(90°CA)−第3気筒−(180°CA)−第5気筒#5−(270°CA)−第1気筒#1の順に不等間隔で点火され、また、右バンクでは第8気筒#8−(270°CA)−第6気筒#6−(180°CA)−第4気筒#4−(90°CA)−第2気筒#2−(180°CA)−第8気筒#8の順に点火されることとなり、各バンクにおける点火(爆発)間隔が不等間隔となっている。そのため、左バンク12では、特定の気筒のオーバーラップ期間と他の気筒の排気行程が重なってしまい、排気行程にある気筒から排出された排気ガスが排気マニホールドを通ってオーバーラップ期間にある気筒に排気脈動として作用し、この気筒の内部EGR量だけが増加してしまう。
即ち、図4に示すように、左バンク12では、第1気筒#1にて、クランク角度360°CAの近傍で吸気可変動弁機構40により吸気弁28による吸気タイミングが進角されると共に、排気可変動弁機構42により排気弁30による排気タイミングが遅角されることで、ここにオーバーラップ期間OLが設けられる。一方、第7気筒#7にて、クランク角度360°CAの近傍で排気弁30が開き始めることで排気行程が開始される。そのため、このクランク角度360°CAの近傍で、第1気筒#1のオーバーラップ期間と第7気筒#7の排気行程初期が重なってしまう。
すると、第1気筒#1の吸気弁28及び排気弁30の開放状態で、第7気筒#7の排気弁30が開放することとなり、第7気筒#7の排気ポート26から排出された排気ガスが排気マニホールド54を通って第1気筒#1に排気脈動として作用する。即ち、第7気筒#7から第1気筒#1に排気脈動が作用すると、この第1気筒#1では、この排気脈動により排気マニホールド54から排気ポート26を通って燃焼室22内に戻る内部EGR量が増加し、吸気ポート24から吸入される空気量が減少してしまう。
この現象は、第1気筒#1に限らず、第5気筒#5の排気行程にオーバーラップ期間OLが重なる第3気筒#3、また、右バンク13にて、第8気筒#8の排気行程にオーバーラップ期間OLが重なる第2気筒#2、第4気筒#4の排気行程にオーバーラップ期間OLが重なる第6気筒#6で発生するものである。そして、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6で内部EGR量が増加すると、この現象が発生しない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の内部EGR量及び空気量と相違することとなり、燃焼がばらついて不安定となり、出力トルクが変動してしまう。
そこで、実施例1では、図3に示すように、各バンク12,13にて、特定の気筒としての第7気筒#7、第8気筒#8、第5気筒#5、第4気筒#4の排気行程に、オーバーラップ期間が重なる第1の気筒としての第1気筒#1、第3気筒#3、第2気筒#2、第6気筒#6の燃料噴射を吸気弁28,29の開放時期に実行する一方、オーバーラップ期間が重ならない第2の気筒としての第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の燃料噴射を排気弁30,31の開放時期に実行(燃料噴射制御手段)するようにしている。
具体的に説明すると、ECU68は、エンジン運転状態に基づいて吸気可変動弁機構40,41及び排気可変動弁機構42,43を制御することで、排気弁30,31の開放時期の後期と吸気弁28,29の開放時期の前期を重ねるオーバーラップ期間を設定している。そして、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、吸気弁28,29が開放して排気弁30,31が閉止した後、つまり、吸気弁28,29のみが開放した状態で所定期間にわたって燃料を噴射する。一方、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、排気弁30,31が開放して吸気弁28,29も開放したオーバーラップ期間になったときから所定期間にわたって燃料を噴射、つまり、吸気TDCの近傍で燃料を噴射する。なお、排気弁30,31の閉止動作に拘らず所定期間だけ燃料を噴射する。この場合、第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6と、内部EGR量と、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8とで、それぞれ異なる燃料噴射マップを用いて燃料噴射を実行すると良い。
従って、第1気筒#1、第3気筒#3、第2気筒#2、第6気筒#6では、オーバーラップ期間に第7気筒#7、第5気筒#5、第8気筒#8、第4気筒#4の排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、吸気弁28,29のみが開放しているときに燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の吸入される空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される。一方、第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、オーバーラップ期間に他の気筒の排気脈動の影響を受けないが、吸気TDCの近傍で燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の内部EGRが燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮する。そのため、排気弁30,31の開放時に、排気ポート26,27から燃焼室22,23に引き込まれる排気ガス(内部EGR)量が増加する。その結果、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6の内部EGR量と、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の内部EGR量とがほぼ同量となり、各バンク12,13の各気筒における内部EGR量がほぼ均一状態となる。
このように実施例1の内燃機関にあっては、V型8気筒エンジンにて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、排気弁30,31が閉止して吸気弁28,29のみが開放した状態で所定期間にわたって燃料を噴射する一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放した吸気TDC近傍で所定期間にわたって燃料を噴射するようにしている。
従って、排気行程にオーバーラップ期間が重なる気筒#1,#2,#3,#6では、この期間に排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、吸気弁28,29のみが開放した状態で燃料を噴射することで、燃焼室22,23内で空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない気筒#4,#5,#7,#8では、この期間に排気脈動の影響を受けないが、吸気TDCの近傍で燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の内部EGRが燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、排気ポート26,27から燃焼室22,23に引き込まれる排気ガス量が増加する。そのため、各気筒#1,#2,#3,#6にて排気脈動により増加される内部EGR量と、各気筒#4,#5,#7,#8にて排気脈動の影響を受けないが燃料冷却により増加される内部EGR量とがほぼ同量となり、全てのバンク12,13の各気筒#1〜#8における内部EGR量がほぼ均一状態となる。その結果、気筒間の燃焼のばらつきを抑制することができると共に、出力トルクの変動を抑制することができ、また、オーバーラップによる燃費の改善や排気ガス性能の向上を適正に図ることができる。
図5は、本発明の実施例2に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2のV型8気筒エンジンの構成は、前述した実施例1とほぼ同様であるため、図1及び図2を用いて説明する。この実施例2のV型8気筒エンジンにおいて、図1及び図2、図5に示すように、各バンク12,13にて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6の燃料噴射を吸気弁28,29の開放時期に実行する一方、オーバーラップ期間が重ならない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の燃料噴射を排気弁30,31の開放時期と吸気弁28,29の開放時期に分割して実行(燃料噴射制御手段)するようにしている。
即ち、前述した実施例1では、排気脈動が作用する気筒#1,#2,#3,#6では、排気脈動が作用しない気筒#4,#5,#7,#8にて、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放した吸気TDC近傍で所定期間にわたって燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の内部EGRを燃料の気化潜熱により冷却して体積を減少し、排気弁30,31により開放されている排気ポート26,27から燃焼室22,23に引き込まれる排気ガス量、つまり、内部EGR量を増加させるようにしている。ところが、エンジンの高回転高負荷領域では、一度に噴射する燃料量が多く、つまり、燃料噴射期間が長くなり、排気弁30,31により排気ポート26,27が閉止された後も燃料噴射が継続されることとなる。すると、後半の燃料噴射は、吸気ポート24,25から吸入される空気を冷却することとなり、EGR量を十分に増加させることができない。
そこで、実施例2では、ECU68は、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、吸気弁28,29が開放して排気弁30,31が閉止した後、つまり、吸気弁28,29のみが開放した状態で所定期間にわたって燃料を噴射する。一方、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放したオーバーラップ期間と同期間(吸気TDCの近傍)にわたって1回目の燃料噴射を実行する。そして、排気弁30,31が閉止して吸気弁28,29も閉止した後に所定期間にわたって2回目の燃料噴射を実行する。
従って、第1気筒#1、第3気筒#3、第2気筒#2、第6気筒#6では、オーバーラップ期間に第7気筒#7、第5気筒#5、第8気筒#8、第4気筒#4の排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、吸気弁28,29のみが開放しているときに燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の吸入される空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される。一方、第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、オーバーラップ期間に他の気筒の排気脈動の影響を受けないが、このオーバーラップ期間と吸気弁28,29及び吸気弁28,29閉止した期間にそれぞれ燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の内部EGRが燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮するため、排気弁30,31の開放時に、排気ポート26,27から燃焼室22,23に引き込まれる排気ガス(内部EGR)量が増加する。このとき、吸気弁28,29のみが開放している期間には燃料を噴射しないため、噴射燃料により吸気ポート24,25からの吸入空気を冷却することはなく、内部EGRが確実に冷却されてEGRガス量が増加される。
その結果、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6の内部EGR量と、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の内部EGR量とがほぼ同量となり、各バンク12,13の各気筒における内部EGR量がほぼ均一状態となる。
このように実施例2の内燃機関にあっては、V型8気筒エンジンにて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、排気弁30,31が閉止して吸気弁28,29のみが開放した状態で所定期間にわたって燃料を噴射する一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放したオーバーラップ期間に1回目の燃料噴射を実行すると共に、排気弁30,31及び吸気弁28,29が閉止した後に2回目の燃料噴射を実行するようにしている。
従って、排気行程にオーバーラップ期間が重なる気筒#1,#2,#3,#6では、排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、吸気弁28,29のみが開放した状態で燃料を噴射することで、燃焼室22,23内で空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない気筒#4,#5,#7,#8では、排気脈動の影響を受けないが、オーバーラップ期間及び排気弁30,31及び吸気弁28,29が閉止した後に燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の内部EGRが燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、排気ポート26,27から燃焼室22,23に引き込まれる排気ガス量が増加する。この場合、エンジンが高回転高負荷領域にあって燃料噴射間が長くなっても、吸気弁28,29のみが開放している期間に燃料を噴射しないため、噴射燃料の気化潜熱による冷却作用が吸入空気に対して適用されることはなく、この噴射燃料の気化潜熱により内部EGRが確実に冷却されてEGRガス量を増加できる。
そのため、各気筒#1,#2,#3,#6にて排気脈動により増加される内部EGR量と、各気筒#4,#5,#7,#8にて排気脈動の影響を受けないが燃料冷却により増加される内部EGR量とがほぼ同量となり、全てのバンク12,13の各気筒#1〜#8における内部EGR量がほぼ均一状態となる。その結果、気筒間の燃焼のばらつきを抑制することができると共に、出力トルクの変動を抑制することができ、また、オーバーラップによる燃費の改善や排気ガス性能の向上を適正に図ることができる。
図6は、本発明の実施例3に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例3のV型8気筒エンジンの基本的な構成は、燃料噴射手段としてシリンダヘッドに装着されたインジェクタが吸気ポートに噴射するポート噴射式内燃機関であるが、その他の構成は前述した実施例1とほぼ同様であるため、図1及び図2を用いて説明する。この実施例3のV型8気筒エンジンにおいて、図1及び図2、図6に示すように、各バンク12,13にて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6の燃料噴射を吸気弁28,29の開放時期に実行する一方、オーバーラップ期間が重ならない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の燃料噴射を吸気弁28,29が開放する前(排気弁30,31の開放時期)に実行(燃料噴射制御手段)するようにしている。
具体的に説明すると、ECU68は、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放したオーバーラップ期間から所定期間(吸気TDCの近傍)にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射する。一方、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、吸気弁28,29が開放する前に所定期間にわたって燃料噴射を実行する。
従って、第1気筒#1、第3気筒#3、第2気筒#2、第6気筒#6では、オーバーラップ期間に第7気筒#7、第5気筒#5、第8気筒#8、第4気筒#4の排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、このオーバーラップ期間から所定期間にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の吸入される空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される。一方、第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、オーバーラップ期間に他の気筒の排気脈動の影響を受けないが、吸気弁28,29が開放する前に所定期間にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射することで、燃料の気化がこの吸気ポート24,25で行われることとなり、燃焼室22,23内で燃料の気化潜熱により空気が冷却されることはなく、吸入空気が増加しない。その結果、排気脈動の影響を受ける第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6の内部EGR量と、排気脈動の影響を受けない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8の内部EGR量とがほぼ同量となり、各バンク12,13の各気筒における内部EGR量がほぼ均一状態となる。
このように実施例3の内燃機関にあっては、V型8気筒エンジンにて、特定の気筒の排気行程にオーバーラップ期間が重なる第1気筒#1、第2気筒#2、第3気筒#3、第6気筒#6では、排気弁30,31及び吸気弁28,29が開放したオーバーラップ期間から所定期間にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射する一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない第4気筒#4、第5気筒#5、第7気筒#7、第8気筒#8では、吸気弁28,29が開放する前に所定期間にわたって燃料噴射を実行するようにしている。
従って、排気行程にオーバーラップ期間が重なる気筒#1,#2,#3,#6では、排気脈動の影響を受けて内部EGR量が所定量増加するが、このオーバーラップ期間から所定期間にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射することで、燃焼室22,23内の吸入される空気が燃料の気化潜熱により冷却されて体積が収縮し、多くの空気が燃焼室22,23内に導入される一方、排気行程にオーバーラップ期間が重ならない気筒#4,#5,#7,#8では、排気脈動の影響を受けないが、吸気弁28,29が開放する前に所定期間にわたって吸気ポート24,25に燃料を噴射することで、燃料の気化潜熱により空気が冷却されることはなく、吸入空気が増加しない。そのため、各気筒#1,#2,#3,#6にて排気脈動により増加される内部EGR量と、各気筒#4,#5,#7,#8にて排気脈動の影響を受けないが燃料冷却により増加される内部EGR量とがほぼ同量となり、全てのバンク12,13の各気筒#1〜#8における内部EGR量がほぼ均一状態となる。その結果、気筒間の燃焼のばらつきを抑制することができると共に、出力トルクの変動を抑制することができ、また、オーバーラップによる燃費の改善や排気ガス性能の向上を適正に図ることができる。
なお、上述した各実施例では、各気筒の点火順序を、第1気筒#1、第8気筒#8、第7気筒#7、第3気筒#3、第6気筒#6、第5気筒#5、第4気筒#4、第2気筒#2としたが、この順序に限るものではなく、各バンク12,13の気筒がそれぞれ不等間隔で点火・爆発するようになっていればよいものである。また、上述の各実施例では、本発明の機関をV型8気筒エンジンとして説明したが、気筒数はこれに限るものではない。
以上のように、本発明にかかる内燃機関は、排気脈動が作用する気筒の燃料噴射時期と、排気脈動が作用しない気筒の燃料噴射時期を異ならせることで、全ての気筒で排気ガス再循環量をほぼ均一にするものであり、不等間隔点火・爆発式の内燃機関に有用である。
本発明の実施例1に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンの概略平面図である。
実施例1のV型8気筒エンジンの概略構成図である。
実施例1のV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャートである。
実施例1のV型8気筒エンジンにおける吸気弁及び排気弁の開放時期を表すタイムチャートである。
本発明の実施例2に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャートである。
本発明の実施例3に係る内燃機関を表すV型8気筒エンジンにおける燃料噴射時期を表すタイムチャートである。
符号の説明
12,13 バンク
22,23 燃焼室
24,25 吸気ポート
26,27 排気ポート
28,29 吸気弁
30,31 排気弁
36,37 吸気カム
38,39 排気カム
40,41 吸気可変動弁機構
42,43 排気可変動弁機構
54,55 排気マニホールド
61,62 インジェクタ(燃料噴射手段)
66,67 点火プラグ
68 電子制御ユニット、ECU(燃料噴射制御手段)
#1,#2,#3,#6 気筒(第1の気筒)
#4,#5,#7,#8 気筒(第2の気筒)