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JP4307849B2 - クロム含有原料の還元方法 - Google Patents

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JP4307849B2 JP2003001200A JP2003001200A JP4307849B2 JP 4307849 B2 JP4307849 B2 JP 4307849B2 JP 2003001200 A JP2003001200 A JP 2003001200A JP 2003001200 A JP2003001200 A JP 2003001200A JP 4307849 B2 JP4307849 B2 JP 4307849B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェロクロムの製造技術の分野に属し、詳しくはクロム含有原料の予備還元方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炭素フェロクロム(以下、単に「フェロクロム」という。)の製造は、クロム鉱石を予備処理した後、サブマージドアーク電気炉(以下、単に「電気炉」ともいう。)で溶融・還元することにより行われている。クロム鉱石の予備処理法としては、ブリケット法、焼結法、焼成ペレット法、予備還元ペレット法などがある。
【0003】
予備還元ペレット法は、コークスとともに微粉砕したクロム鉱石を造粒して生ペレットを製造し、これをロータリーキルンにより1300℃以上で還元焙焼して予備還元ペレットとするものである。予備還元ペレットの還元率は、内装コークスのみの場合には60〜70%であるが、さらに外装コークスを併用することにより80%にも達する。このため、電気炉におけるクロム鉱石の還元所要熱が他の予備処理法に比べて大幅に少なくなり、電力消費量を大幅に削減できる(非特許文献1、特許文献1参照)。
【0004】
上記予備還元ペレット法は電力消費量の少ない方法として優れたものであるが、予備処理にロータリーキルンを用いるものであることから、以下のようなロータリーキルン特有の多くの問題点を有する。すなわち、ロータリーキルンは転動により原料を移動させるという基本原理に基づくためダスト発生量が多く、キルン内にダムリングが生起しやすい問題がある。また、原料の滞留時間にバラツキが生じるため過剰な長さを必要とし、設備の設置面積が大きいこと、キルンの表面積が大きくなり熱放散量が多いため燃料消費量が高いこと等の問題もある。さらに、外装コークスを併用する場合には、ロータリーキルン内で外装コークスの酸化損失が大きい問題もある。
【0005】
また、熱力学的に酸化クロムは酸化鉄より還元されにくい。キルン内のペレットは、キルン排出端に備えられたバーナで加熱され徐々に昇温するため、内装コークスはクロム鉱石中の還元されやすい酸化鉄の還元に優先的に消費され、還元されにくい酸化クロムの還元が遅れる問題がある。
【0006】
そこで、上記ロータリーキルン特有の問題点を解決するため、予備還元に回転炉床炉を用いる方法が提案されている。
【0007】
一つは、CrおよびFeを含む製鉄ダストに炭材を添加して造粒して得られた生ペレットをシャフト予熱器で約600〜800℃の温度に予熱してから回転炉床炉内に装入し還元雰囲気中で約1000〜1800℃の温度に徐々に加熱するものである(特許文献2参照)。
【0008】
他の一つは、ステンレス鋼製造工程で生じた含クロム廃棄物に適当量のクロム鉱石を配合したものとコークスとを造粒して製造した生ペレットをロータリーハース炉(回転炉床炉)の炉床に静置して、燃焼ガスにより加熱し、含クロム鉄ペレットを製造するものである(特許文献3参照)。
【0009】
【非特許文献1】
日本鉄鋼協会編、鉄鋼便覧、第3版、第2巻、発行所:日本鉄鋼協会、昭和54年10月15日発行、p.412−415
【特許文献1】
特開昭51−30519号公報
【特許文献2】
特開昭56−93834号公報
【特許文献3】
特開平9−209047号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献2および3に開示された方法によれば、ロータリーキルンと異なり、原料を回転炉床上に静置することからダスト発生量が少なく、ダムリング生成の問題も生じない。また、原料の滞留時間が均一となるため過剰な炉床面積を必要とせず、設備がコンパクト化し、炉の表面積が小さくなり熱放散量が少ないため燃料消費量も低減できる。
【0011】
しかしながら、上記特許文献2に開示された方法においては、シャフト予熱器内の600〜800℃程度の温度でも内装炭材による酸化鉄の還元は開始され(一方、この程度の温度では炭材による酸化クロムの還元は起こらない)、さらに回転炉床炉内でもペレットが徐々に加熱されるため、炭材は酸化鉄の還元に優先的に消費されてしまう。このため、酸化クロムの還元が開始しうる温度に達した時には炭材が不足して酸化クロムと炭材との接触機会が維持できず、クロムの還元率が低くなる。一方、前記接触機会を維持するために内装炭材の配合量を増加させると、生ペレットの強度が低下して粉化し炉床に付着物を形成すること、回転炉床炉からの排ガス中へのダストロスが増加すること、還元ペレットが粉化し、ないしは粉化しなくとも密度が低下して電気炉内の溶湯中に溶け込みにくくなり溶解歩留が悪化すること等の問題が生じる。
【0012】
また、上記特許文献3に開示された方法においては、ペレットの加熱温度や昇温速度についての記載が一切なく、上記酸化クロムの還元が遅れる問題については、まったく触れられていない。
【0013】
そこで、本発明は、炭材を内装した、酸化クロムおよび酸化鉄を含むクロム含有原料を還元(予備還元)するに際し、内装炭材が酸化鉄の還元に優先的に消費されることを抑制して酸化クロムの還元を促進し、クロムの還元率を高めることができるクロム含有原料の還元方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物を得る還元工程とを、備え、前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法である。
【0015】
炭材内装塊成化物を移動炉床炉内で輻射加熱して急速昇温することにより、内装炭材が酸化鉄の還元に消費されてしまう前に酸化クロムの還元が開始され、クロム酸化鉄と内装炭材との接触機会を維持しつつ酸化クロムの還元が進行するため、クロム還元率の高い還元混合物が得られる。また、混合物の加熱還元に静置式の移動炉床炉を用いることにより、ダスト発生量が大幅に減少する。またダストの炉壁への付着に起因すると考えられるダムリングの発生も防止される。さらに、移動炉床炉内における混合物の滞留時間を均一にすることができるため、ロータリーキルンのような過剰設備を必要とせず設備がコンパクトで設備の設置面積が小さく、かつ熱放散量も小さい。
【0018】
請求項に記載の発明は、前記還元工程における雰囲気温度を1250〜1400℃とすることを特徴とする請求項1に記載のクロム含有原料の還元方法である。
【0019】
還元工程すなわち移動炉床炉内の雰囲気温度を上記温度とすることにより、上記請求項1に記載の混合物の急速昇温がより確実に達成される。
【0020】
請求項に記載の発明は、酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物としたのち、引き続きこの還元混合物を輻射加熱し溶融して還元溶融物を得る還元・溶融工程と、を備え、前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法である。
【0021】
還元後に溶融させることでメタルおよび/またはスラグが凝集し、メタルおよび/またはスラグの表面積とメタル/スラグ間の界面の面積が減少し、再酸化などの好ましくない反応を減少させることができる。また、還元後に移動炉床炉からの排出工程などの好ましくない温度降下を引き起こす工程がなく溶融させるためのエネルギーロスが少なくなる。
【0022】
請求項に記載の発明は、酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物としたのち、引き続きこの還元混合物を輻射加熱し溶融して還元溶融物を得る還元・溶融工程と、この還元溶融物を、前記移動炉床炉内において冷却し固化させて還元固化物を得る固化工程と、この還元固化物を、メタルとスラグとに分離する分離工程とを、備え、前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法である。
【0023】
移動炉床炉のみで還元・溶融することによりスラグを分離除去したメタルが得られるため、溶解炉が不要となり、設備コストの大幅な削減やエネルギー消費量の大幅な低減効果が得られる。
【0024】
請求項に記載の発明は、前記輻射加熱により急速昇温し加熱還元を行う領域の雰囲気温度を1250〜1400℃とし、前記輻射加熱し溶融を行う領域の雰囲気温度を、前記還元を行う領域の雰囲気温度より高い1350〜1700℃とすることを特徴とする請求項またはに記載のクロム含有原料の還元方法である。
【0025】
雰囲気温度1250〜1400℃として還元混合物中の酸化クロムの還元を十分に進行させてから、雰囲気温度を1350〜1700℃に高めて還元混合物を溶融させることにより、クロム分をスラグ中に酸化クロムとして移行させることなく、メタル中に金属クロムとして回収できるため、高いクロム歩留が得られる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記還元工程において、前記混合物とともに前記移動炉床炉の炉床上に炭素質の雰囲気調整材を装入することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のクロム含有原料の還元方法である。
【0027】
炭素質の雰囲気調整材を混合物とともに炉床上に装入することにより、雰囲気調整材から脱揮発された揮発分や、雰囲気ガス中のCOおよびHOによるソリューションロス反応で生じたCOおよびHガスによって混合物近傍の雰囲気が還元性に保たれ、還元混合物の再酸化が防止できる。また、上記揮発分やCOおよびHガス等が移動炉床炉内で輻射加熱の燃料として利用でき、移動炉床炉での燃料消費量を削減できる。また、脱揮後の雰囲気調整材は炭素主体の物質となるため高温下でも軟化することがなく、このような炭素主体の物質の存在により炉床へのビルドアップ(付着物形成)が防止され、還元混合物を移動炉床炉から排出する排出装置の負荷や刃先などの部材の磨耗を低減できる。さらには、還元混合物とともに排出された炭素主体の物質は、次工程の溶解工程で還元剤および/または熱源として利用できる。
請求項7に記載の発明は、前記混合工程において、前記混合物を塊成化することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のクロム含有原料の還元方法である。
混合物を塊成化することにより、移動炉床炉からのダスト発生量が減るとともに、移動炉床炉内における混合物内部の伝熱効率が向上して還元速度が上昇する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
〔実施の形態1〕
図1に、本発明の一実施形態に係るクロム含有原料の還元工程を示す。ここに、符号1は酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料(以下、単に「原料」ともいう。)、符号2は炭素質還元材、符号3は造粒機、符号4は塊成物(混合物)、符号5は移動炉床炉、符号6は還元塊成物(還元混合物)、符号7は溶解炉、符号8はメタル、符号9はスラグを示す。
【0030】
クロム含有原料1としては、クロム鉱石のほかフェロクロム製造工場で発生するダストやスラグなどのフェロクロム製造工程の残渣も使用できる。また、必要に応じて鉄鉱石やミルスケールを加えて成分調整してもよい。ロータリーキルンを用いず静置式の移動炉床炉5を使用するため、ダムリングの発生がなく原料1のスラグ成分の制限がないので、自由な原料選択ができる。原料1中に水分を多く含む場合は、事前に乾燥しておくことが望ましい。乾燥の度合いは後工程の混合工程での混合手段(本実施の形態では造粒機3)を考慮して決めるとよい。炭素質還元材2としては固定炭素を含むものであればよく、石炭、コークス、木炭、廃トナー、バイオマスの炭化物などが利用できる。また、これらを適宜混合して用いてもよい。
【0031】
クロム含有原料1と炭素質還元材2の粒度は、後述するように還元反応の面からは細かくなるほど接触機会が増すので好ましいが、細かすぎると造粒が困難となるので、ともに200メッシュ以下(−75μm)が70%程度とすることが好ましい。したがって、クロム含有原料1と炭素質還元材2とは必要により事前に粉砕しておくとよい。
【0032】
炭素質還元材2の塊成物(混合物)4中の配合率は、移動炉床炉5内で原料1中の酸化クロムおよび酸化鉄を還元するのに必要な炭素量と、溶解炉6で還元塊成物(還元混合物)6中の残留酸化クロムの還元等により消費される炭素量と、メタル8中に残存させる目標炭素量とから決定すればよい。なお、酸化クロムの還元が固相反応であることを考慮して、塊成物(混合物)4に配合する炭素量は、後述の理論必要炭素量より過剰とすることがクロム還元率を高める上で重要である。
【0033】
[混合工程]:原料1と炭素質還元材2とを混合するには図示しない混合機を用いるとよい。混合物はそのまま移動炉床炉5に装入してもよいが、造粒機3で塊成化することが好ましい。塊成化することにより、移動炉床炉5や溶解炉7からのダスト発生量が減るとともに、移動炉床炉5内における塊成物(混合物)4内部の伝熱効率が向上して還元速度が上昇するからである。塊成物(混合物)4には造滓材などの副原料を添加してもよい。造粒機3としては、ブリケットプレスなどの圧縮成形機やディスク型ペレタイザーなどの転動造粒機のほか押出成形機を用いてもよい。造粒後の塊成物(混合物)4の水分が高い場合は移動炉床炉5に装入する前に乾燥してもよい。
【0034】
[還元工程]:造粒した塊成物(混合物)4は移動炉床炉5に装入し、輻射加熱する。移動炉床炉4としては回転炉床炉や直線炉、多段炉などが使用できる。また、輻射加熱には燃焼バーナ等を使用できる。
【0035】
塊成物(混合物)4は輻射加熱により急速昇温され、塊成物(混合物)4内部でクロム含有原料1中の酸化鉄と酸化クロムとが炭素質還元材2中の固定炭素により主として以下の反応式(1)および(2)により還元される。
【0036】
FeO+C→Fe+CO−36.8kcal …(1)
ΔG0=35350−35.9T
7Cr23+27C→2Cr73+21CO−1250.6kcal …(2)
ΔG0=1230132−886.97T
【0037】
式(1)の反応開始温度は712℃であり、式(2)の反応開始温度は1114℃である。式(2)で還元されたFeはその一部が式(2)によって生成するCr73に固溶して(Cr・Fe)73となるものと考えられる(非特許文献1参照)。
【0038】
塊成物(混合物)4の輻射加熱が開始された時点から、塊成物(混合物)4の温度が酸化クロムの還元反応開始温度である1114℃に到達した時点までの、塊成物(混合物)4の平均昇温速度を13.6℃/s以上とするとよい(後述の実施例1参照)。ここに、「塊成物(混合物)4の輻射加熱が開始された時点」とは、移動炉床炉5内において燃焼バーナ等で輻射加熱されている領域(輻射加熱領域)に塊成物(混合物)4が入った時点を指し、塊成物(混合物)4が炉床上に供給された時点から輻射加熱領域に入る時点までの領域は含まない。この塊成物(混合物)4が炉床上に供給された時点から輻射加熱領域に入る時点までの領域を含めない理由は、この領域では塊成物(混合物)4は主として炉床からの伝導伝熱だけで加熱され、かつ、この領域の滞留時間(通過時間)は通常短いので、FeOの還元反応開始温度である712℃まで昇温されず、還元反応による内装炭材の固定炭素分が実質的に消費されないためである。
【0039】
塊成物(混合物)4の輻射加熱を行う領域(還元工程)の雰囲気温度は1250〜1400℃とすることが好ましい。1250℃未満では塊成物(混合物)4の1114℃までの昇温速度が不十分となりやすいためであり、1400℃を超えると還元塊成物(還元混合物)6が軟化して還元塊成化物6同士が固着したり炉床に付着しやすくなるためである。
【0040】
また、塊成物(混合物)4の輻射加熱を行う領域(還元工程)の滞留時間は、例えば雰囲気温度1300℃の場合、5.3〜42.7minが好適である(後述の実施例1参照)。
【0041】
また、還元生成したFeやCr73が再酸化しないように、塊成物(混合物)4の輻射加熱を行う領域(還元工程)の雰囲気組成は、燃焼バーナの空気比の調整や移動炉床炉1内への還元ガスの吹込みなどによって還元性雰囲気とするのがよい。
【0042】
移動炉床炉5内で還元された還元塊成物(還元混合物)6は、移動炉床炉5内に設けられた輻射式冷却板や冷媒吹き付け装置などにより通常1000℃程度に冷却してから排出装置で排出する。
【0043】
なお、前述の理論必要炭素量とは、塊成物(混合物)6中の酸化鉄および酸化クロムを上記式(1)および(2)の反応を経て、(Cr・Fe)73を生成するのに理論上必要とされる炭素量をいい、具体的には下式で定義される。
【0044】
理論必要炭素量(mol)=(Cr23のmol数)×27/7+(Feと結合しているOのmol数)+(Feのmol数)×3/7
【0045】
なお、上記還元工程において、塊成物(混合物)4とともに移動炉床炉5の炉床上に炭素質の雰囲気調整材を装入することも推奨される。雰囲気調整材は塊成物(混合物)4を炉床上に装入する前に、床敷として装入することが特に好ましいが、塊成物(混合物)4と同時に、あるいは塊成物(混合物)4の装入後に装入しても一定の効果が得られる。
【0046】
炭素質の雰囲気調整材を装入する効果は、前述したように、(1)塊成物(混合物)4近傍を還元雰囲気に維持し、還元塊成物(還元混合物)6の再酸化を防止する、(2)雰囲気調整材から発生する揮発分やCOガス等が移動炉床炉5の燃料として利用でき移動炉床炉5での燃料消費量を削減できる、(3)炉床のビルドアップを防止して排出装置の負荷や刃先などの部材の磨耗を低減する、(4)還元塊成物(還元混合物)6とともに排出された脱揮後の雰囲気調整材は次工程の溶解工程で還元剤および/または熱源として利用できる、等である。
【0047】
炭素質の雰囲気調整材としては石炭や廃プラスチック、廃タイヤ、バイオマスが好ましい。例えば石炭やバイオマスを用いた場合は、移動炉床炉5内でチャー化され、揮発分は移動炉床炉での燃料となり、チャー分は溶解炉での還元剤および/または熱源として利用できる。この他コークス、木炭、石油コークス、チャーなども使用できる。これらは揮発分が少ないため移動炉床炉5での燃料消費量の低減効果は石炭などに比べると小さい。
【0048】
雰囲気調整材のサイズ(粒径)は特に制限されるものではないが、好ましくは平均5mm以下、より好ましくは平均2mm以下とすることが推奨される。
【0049】
また、炉床上に供給する雰囲気調整材の厚みは1〜50mm程度が好ましい。
【0050】
また、雰囲気調整材に加えて、炉床へのビルドアップ防止のために炉床保護材を供給してもよい。この場合、雰囲気調整材は炉床保護材の上に装入するのが好ましい。炉床保護材としては高融点物質を含むものが望ましく、さらに炭素質物質を含むものが好ましい。高融点物質としては、アルミナおよび/またはマグネシアを含む酸化物、あるいは炭化珪素を含むものが推奨される。
【0051】
[溶解工程]:移動炉床炉5から排出された還元塊成物(還元混合物)6は好ましくはそれ以上冷却せずに高温のまま溶解炉7に装入する。溶解炉7はシュートなどで移動炉床炉5の排出部と直結してもよいし、コンベアなどの搬送機器を用いたり、一旦コンテナなどに貯えてから溶解炉7に装入してもよい。移動炉床炉5と溶解炉7とが近接していない場合や、溶解炉7の運転を停止しているような場合には、還元塊成物(還元混合物)6は常温まで冷却して半製品(フェロクロム精錬原料)とし、保管・輸送して用いてもよい。あるいは冷却せずに高温のまま熱間成形して表面積を小さくしてから冷却して耐再酸化性の良好な半製品とし、保管・輸送して用いることも好ましい。溶解炉7としては電気炉が使用できるが、石炭、重油、天然ガスなどの化石エネルギーを利用した溶解炉を使用してもよい。溶解炉7には必要に応じて造滓材などを装入し、1400〜1700℃の高温で還元塊成物(還元混合物)6を溶解し、メタル8とスラグ9に分離する。メタル8はそのままチャージクロムとするか、必要に応じて二次精錬を行ってフェロクロムとする。
【0052】
〔実施の形態2〕
図2に、本発明の別の実施形態に係るクロム含有原料の還元工程を示す。ここに、符号11は酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料(以下、単に「原料」ともいう。)、符号12は炭素質還元材、符号13は造粒機、符号14は塊成物(混合物)、符号15は移動炉床炉、符号16は還元固化物、符号17はスクリーン、符号18はメタル、符号19はスラグを示す。
【0053】
本実施の形態2において、原料11、炭素質還元材12、造粒機13および塊成物(混合物)14は、上記実施の形態1の原料1、炭素質還元材2、造粒機3および塊成物(混合物)14と同様であり、[混合工程]についても上記実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
[還元・溶融工程]:造粒した塊成物(混合物)14を移動炉床炉15に装入し、先ず雰囲気温度1250〜1400℃で輻射加熱する。この輻射加熱による塊成物(混合物)4の昇温速度は、上記実施の形態1と同様、塊成物(混合物)4の輻射加熱が開始された時点から、塊成物(混合物)4の温度が酸化クロムの還元反応開始温度である1114℃に到達した時点までの、塊成物(混合物)4の平均昇温速度を13.6℃/s以上とするとよい。また、この領域における塊成物(混合物)4の滞留時間は5.3〜42.7minが好適である。
【0055】
引き続き移動炉床炉15内でこの還元塊成物(還元混合物)を、上記還元を行う領域の雰囲気温度(1250〜1400℃)より高い1350〜1700℃、好ましくは1350〜1650℃、より好ましくは1350〜1600℃の雰囲気温度で加熱し溶融し、還元溶融物とする。加熱溶融温度の下限を1350℃としたのは、この温度未満の温度では還元塊成物(還元混合物)の溶融が困難となるためであり、上限を1700℃としたのは、この温度を超えると還元炉の耐熱性に問題が生じやすくなるためである。この温度域での還元塊成物(還元混合物)の滞留時間は0.5〜10minの範囲で還元塊成物(還元混合物)が十分に溶融してメタルとスラグに分離するように適宜調整すればよい。還元塊成物(還元混合物)の滞留時間の下限を0.5minとしたのは、これより滞留時間が短いとメタルとスラグの分離が不十分となりやすいためであり、上限を10minとしたのは、これより滞留時間を延長してもメタルとスラグの分離の程度は飽和し、却って再酸化のおそれが増加するためである。
【0056】
なお、上記のように移動炉床炉15内で2段階に雰囲気温度を変化させることなく、最初から1350〜1700℃の雰囲気温度により1段階で加熱して還元と溶融とを同時に進行させてもよく、より短時間で還元溶融物を得ることができる。
【0057】
なお、メタルとスラグの溶融の状態は、必ずしも両者とも溶融した状態である必要はなく、この両者が分離できる状態であれば、スラグのみが溶融した状態またはメタルのみが溶融した状態であってもよい。
また、雰囲気調整材と炉床保護材は実施の形態1と同様である。
【0058】
[固化工程]:この還元溶融物を移動炉床炉15内において1000℃程度に冷却し固化させて還元固化物16とする。移動炉床炉15内での冷却・固化手段としては上記実施の形態1で述べた輻射式冷却板や冷媒吹き付け装置などを用いることができる。また、移動炉床炉15から排出した後にさらに冷却してもよく、この際の冷却・固化手段としては、水砕、間接水冷、冷媒吹き付けなどの手段を用いることができる。
【0059】
[分離工程]:この還元固化物を、必要に応じて解砕したのちスクリーン17によりメタル(粗フェロクロム)18とスラグ19に篩い分ける。分離されたスラグ19からは必要に応じてさらに磁選、浮選などの手段によりメタル分を回収することができる。分離されたメタル(粗フェロクロム)18は必要に応じて二次精錬を行って製品フェロクロムとする。あるいはメタル(粗フェロクロム)18は半製品(フェロクロム精錬原料)として、溶解炉での溶解原料として用いてもよい。半製品として用いる場合、上記実施の形態1の方法では半製品である還元塊成物中にはスラグ分が残存しているのに対し、本実施の形態2の方法によれば半製品であるメタル18からはすでにスラグ分が除去されているため、溶解炉でのスラグ分の溶解エネルギーが不要となり、溶解炉の消費エネルギーが大幅に減少する。また溶解炉でのスラグ生成量が著しく減少することから溶解炉の生産効率も格段に向上する。また、このメタル(粗フェロクロム)18はフェロクロムの原料とできるほか、このままでクロム含有合金製造の製鋼原料として使用することも可能である。また、スラグ分がない分半製品の重量が減少して保管や輸送コストが削減できるため、クロム鉱石の産出場所で本発明を実施すれば好適である。また、保管や輸送の便利のため必要に応じて塊成化などを行ってもよい。
【0060】
なお、雰囲気調整材は回収して再利用することも可能であり、またメタルとともに溶解炉に装入してもよい。さらに、炉床保護材は回収して再利用することが好ましい。
【0061】
【実施例】
[実施例1]
本発明の移動炉床炉内における混合物の還元状況を把握するため、実験室規模の小型加熱炉を用いて以下の還元実験を実施した。
【0062】
クロム含有原料として表1に示す組成の原料と炭素質還元材としてコークス粉(固定炭素分:77.7質量%)を85.7:14.3の質量比で混合し、適量の水分を添加して小型ディスク型ペレタイザーで造粒して直径13mmのペレットを作製した。このペレットを乾燥後、小型加熱炉中にバッチ装入し、雰囲気温度一定の下で保持時間を種々変更して加熱還元を行い、還元後のペレットの組成を化学分析してCr還元率およびFe金属化率を求めた。雰囲気は窒素雰囲気とし、雰囲気温度は1200℃および1300℃の2水準とした。
【0063】
【表1】
Figure 0004307849
【0064】
還元実験の結果から得られた、保持時間(滞留時間)とCr還元率、Fe金属化率および残留炭素量との関係を図3および図4に示す。ここに、Cr還元率およびFe金属化率の定義は以下のとおりとした。
【0065】
Cr還元率(%)=(金属Cr分(質量%)+炭化Cr中のCr分(質量%))/全Cr分(質量%)×100
Fe金属化率(%)=(金属Fe分(質量%)+炭化Crに固溶したFe分(質量%))/全Fe分(質量%)×100
【0066】
図3は雰囲気温度1200℃、図4は雰囲気温度1300℃の場合をそれぞれ示すが、いずれの雰囲気温度でもFeの還元がCrの還元に優先して行われることがわかる。なお、Cr還元率は実験開始直後に一旦低下してから上昇している。このCr還元率が実験開始直後に一旦低下する理由は、ペレットの昇温中に酸化クロムの還元開始温度に達するより先に、初期の原料中に存在していた金属クロム(表1参照)が酸化鉄と直接反応して酸化鉄を還元する一方、金属クロム自身は酸化されたためと考えられる。また、雰囲気温度は1200℃より1300℃の方が、還元速度が著しく大きいことがわかる。
【0067】
ここで、時刻t(s)におけるクロム還元率が下式(3)であらわされるとする。なお、上記実験開始直後にクロム還元率が一旦低下する部分は除外するものとした。
【0068】
Cr(%)=A(1−exp(−t/τ))+k …(3)
ここに、RCrはクロム還元率、τは時定数、A,kは定数である。
【0069】
図3および図4より、雰囲気温度1200℃における時定数τは約1240s(約20.7min)であるのに対し、雰囲気温度1300℃における時定数τは約320s(約5.3min)となる。雰囲気温度1200℃でも酸化クロムの還元は進むが、非常に時間がかかり効率的でないことが分かる。したがって、雰囲気温度は1250℃以上とすることが好ましく、1300℃以上とすることがより好ましい。
【0070】
ペレット(混合物)の反応時間(滞留時間)は、目標とする製品の品位・生産性等を考慮して決定すればよいが、上記時定数τを尺度とすると、1τ以上8τ以下とすることが好ましい。1τ未満であると金属化されるべきCrの約40%未満しか還元されず、一方8τを超えると還元がほぼ飽和し却って再酸化の可能性が高まるからである。したがって、例えば雰囲気温度1300℃の場合には、ペレット(混合物)の滞留時間は、この温度における1τ〜8τすなわち5.3〜42.7minとするとよい。
【0071】
次に、既述したように、十分に高いCr還元率を得るためには内装炭材が消費されてしまう前に酸化クロムの還元を開始させる必要があるが、そのためには、Fe金属化率が50%になるまでにペレット(混合物)の温度を酸化クロムの還元開始温度である1114℃以上に昇温させる必要があると考えられる。ここで、雰囲気温度1300℃においては、図4より、ペレットの滞留時間125sでFe金属化率が80%以上に達していることから、Fe金属化率が50%となるペレット(混合物)の滞留時間は約78sと推定される。また、ペレット(混合物)の小型加熱炉への装入時の温度は約25℃である。したがって、78sの間に1089℃(1114℃―50℃=1089℃)昇温させる必要があることになり、この間の平均昇温速度は13.6℃/s(1089℃÷78s=13.6℃/s)となる。以上より、ペレット(混合物)の平均昇温速度は13.6℃/s以上とすることが好ましい。
【0072】
次に、ペレットの内装炭材量を増やした例として、クロム含有原料とコークス粉との配合比(質量比)を83.7:16.3に変更して1300℃の雰囲気温度で上記と同様の還元実験を行った。コークス粉の配合率が14.3質量%のときにCr還元率が9.6%であったのに対し、コークス粉の配合率を16.3質量%に増量したときにはCr還元率は14.7%へと大きく上昇した。クロム含有原料と炭素質還元材との接触機会が増加した効果によると考えられる。
【0073】
[実施例2]
本実施例では、実施例1とは異なる原料および炭素質還元材を用いた。クロム含有原料として表2に示す組成のクロム鉱石を、炭素質還元材として表3に示す組成の石炭を使用した。クロム鉱石、石炭とも75μm以下が約80質量%となるように粉砕した。配合比(質量比)をクロム鉱石:石炭=73:27として、直径20mm、厚さ9mmのタブレットに塊成化したものを、雰囲気温度1350℃、保持時間36minで加熱還元した。本還元実験においては、タブレットの昇温速度を把握するため、タブレットに熱電対を取り付けてタブレットの温度変化を測定した。その結果、タブレットを小型加熱炉内へ装入してから、タブレットが1200℃に昇温されるまでの所要時間は約60sであった。また、還元後のタブレットのクロム還元率は90%に達した。
【0074】
【表2】
Figure 0004307849
【0075】
【表3】
Figure 0004307849
【0076】
[実施例3]
上記実施例2で使用したものと同じクロム鉱石および石炭を用い、配合比を種々変更して直径20mm、厚さ9mmのタブレットに成形したものを、上記実施例1,2と同じ小型加熱炉内で雰囲気温度1350℃にて20min保持する還元実験を実施した。表4に、配合比と還元後のタブレットのCr還元率および圧潰強度との関係を示す。なお、タブレットの昇温速度は実施例2と同様であった。
【0077】
【表4】
Figure 0004307849
【0078】
本実施例の範囲では、約80%の高いCr還元率が得られ、石炭配合比が低いほど、還元後のタブレットに輸送や溶解に際して粉化などの問題を生じない高い圧潰強度が得られることがわかった。
【0079】
【発明の効果】
以上より、本発明によれば、炭材を内装した、酸化クロムおよび酸化鉄を含むクロム含有原料を還元するに際し、内装炭材が酸化鉄の還元に優先的に消費されることを抑制して酸化クロムの還元を促進し、クロムの還元率を高めることができる。そして、このクロム還元率の高い還元クロム鉄をフェロクロム精錬原料として溶解炉で溶解してフェロクロムとすることにより、高いクロム歩留が達成できる。また、この還元クロム鉄を溶解炉で溶解することなく、そのままチャージクロムとして用いることや、必要に応じて二次精錬を行ってフェロクロムとすることもできる。この場合には、溶解炉が不要となり、設備コストの大幅な削減やエネルギー消費量の大幅な低減効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るクロム含有原料の還元工程を示すフロー図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係るクロム含有原料の還元工程を示す設備フロー図である。
【図3】雰囲気温度1200℃における、滞留時間とCr還元率、Fe金属化率および残留炭素量との関係を示すグラフ図である。
【図4】雰囲気温度1300℃における、滞留時間とCr還元率、Fe金属化率および残留炭素量との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1、11…クロム含有原料
2、12…炭素質還元材
3、13…造粒機
4、14…塊成物(混合物)
5、15…移動炉床炉
6…還元塊成物(還元混合物)
7…溶解炉
8、18…メタル
9、19…スラグ
16…還元固化物
17…スクリーン

Claims (7)

  1. 酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、
    この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物を得る還元工程と、
    を備え
    前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法。
  2. 前記還元工程における雰囲気温度を1250〜1400℃とすることを特徴とする請求項1に記載のクロム含有原料の還元方法。
  3. 酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、
    この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物としたのち、引き続きこの還元混合物を輻射加熱し溶融して還元溶融物を得る還元・溶融工程と、
    を備え
    前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法。
  4. 酸化クロムおよび酸化鉄を含有するクロム含有原料と炭素質還元材とを混合して混合物となす混合工程と、
    この混合物を移動炉床炉内で輻射加熱により急速昇温し加熱還元して還元混合物としたのち、引き続きこの還元混合物を輻射加熱し溶融して還元溶融物を得る還元・溶融工程と、
    この還元溶融物を、前記移動炉床炉内において冷却し固化させて還元固化物を得る固化工程と、
    この還元固化物を、メタルとスラグとに分離する分離工程と、
    を備え
    前記還元工程において、前記混合物の輻射加熱が開始された時点から、前記混合物の温度が1114℃に到達した時点までの、前記混合物の平均昇温速度を、13.6℃/s以上とすることを特徴とするクロム含有原料の還元方法。
  5. 前記輻射加熱により急速昇温し加熱還元を行う領域の雰囲気温度を1250〜1400℃とし、前記輻射加熱し溶融を行う領域の雰囲気温度を、前記還元を行う領域の雰囲気温度より高い1350〜1700℃とすることを特徴とする請求項またはに記載のクロム含有原料の還元方法。
  6. 前記還元工程において、前記混合物とともに前記移動炉床炉の炉床上に炭素質の雰囲気調整材を装入することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のクロム含有原料の還元方法。
  7. 前記混合工程において、前記混合物を塊成化することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のクロム含有原料の還元方法
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