JP4360208B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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単結晶製造装置1は、例えばシリコンのような原料多結晶を収容して溶融するための部材や、熱を遮断するための断熱部材などを有しており、これらは、メインチャンバー2内に収容されている。メインチャンバー2の天井部からは上に伸びる引上げチャンバー3が連接されており、この上部に単結晶4をワイヤー5で引上げる機構(不図示)が設けられている。
尚、ガス整流筒12の外側下端には原料融液6と対向するように遮熱部材13が設けられ、原料融液6の表面からの輻射をカットするとともに原料融液6の表面を保温するようにしている。
成長速度Vが比較的高速の場合には、単結晶中で空孔型が優勢となる。この場合、2次欠陥としてはCOP(Crystal Originated Particle)やFPD(Flow Pattern Defect)などとして観察されるボイド(Void)欠陥が形成される。そして、この欠陥が分布する領域をV領域という。また、このV領域の境界近辺には、酸化処理後にOSF(酸化誘起積層欠陥、Oxidation Induced Stacking Fault)として観察される欠陥が分布することが知られている。そして、この欠陥が分布する領域をOSF領域という。これらの2次欠陥は、酸化膜特性を劣化させる原因となる。
シリコン単結晶への炭素のドープは、ルツボ内のシリコン多結晶原料を溶融した後に固形の炭素をシリコン融液に投入しても良いし、原料溶融中あるいはシリコン単結晶引上げ時の雰囲気ガスをCO等の炭素を含む雰囲気とすることによってもシリコン単結晶に炭素をドープすることもできる。しかし炭素のドープを、シリコン多結晶原料をルツボに充填する時に、高純度の炭素粉末をルツボ内に投入することにより行うようにすれば、炭素濃度の濃度制御が容易であり、かつ正確に行うことができる。さらに、シリコン多結晶原料をルツボに充填した後、シリコン多結晶塊の隙間から高純度の炭素粉末を投入するのが好ましい。この方法では、シリコン融液中に炭素粉末が溶け残って結晶が有転位化する心配もなくなる。また、高純度の炭素粉末をシリコン多結晶塊の平らな部分同士等で挟み込んでおくのがより好ましい。このような方法であれば、炉内雰囲気の圧力で吹き飛ばされる恐れもなくなる。
一方、単結晶中にドープするボロンの濃度を高くすればするほど、ボロンを単結晶の外へ飛ばすのに長時間の熱処理が必要となり、また、該単結晶から切り出したウェーハにエピタキシャル層を成長させる際などにはオートドーピングの問題が生じる場合がある。また、単結晶中にドープする炭素濃度を高くすればするほど、該単結晶から作製するデバイスのデバイス特性が劣化する恐れがある。しかし、本発明では、ボロン及び炭素を合せてドープすることで、N領域の単結晶の製造マージンをより広げることができる上に、それぞれの濃度を低減、特には半減することが可能であるため、長時間の熱処理時間、オートドーピング、デバイス特性の劣化等の問題が生じるのを抑制することも可能である。
本発明者らは、N領域となるV/G値の範囲、すなわちN領域の結晶の製造マージンを拡大する方法について研究を重ねた。
シリコン単結晶を製造する際に、原子半径がシリコンより小さいボロンや炭素などの不純物をドープし、該不純物がシリコンの置換位置に入ると、格子間の間隔が広がりやすく、格子間型の点欠陥が発生しやすくなる。すなわち、シリコン単結晶はI−richのものになりやすくなる。したがって、優勢な点欠陥がI領域からV領域へと変化するV/G値が大きくなる。つまりN領域となるV/G値が大きくなるため、N領域の単結晶が製造可能な成長速度Vを高速とすることが可能である。加えて、ボロンや炭素などの不純物には転位をピニングする(押えつける)効果があるため、I−rich側で発生する2次欠陥である転位クラスターの発生も抑制される。
このように、ボロンや炭素をドープすることにより、N領域の結晶を製造するための成長速度Vを高速とすることが可能なだけでなく、I−rich側での2次欠陥の発生をも抑制することが可能であり、その結果、N領域の結晶の製造マージンを大きく拡大することができる。
また、高濃度のボロン、炭素をドープする場合、以下の問題もある。すなわち、ドープするボロンを高濃度とすればするほど、ボロンを単結晶の外へ飛ばすのに長時間の熱処理が必要となり、また、その単結晶から切り出したウェーハにエピタキシャル層を成長させる際などにはオートドーピングの問題が生じる場合がある。さらに、ドープする炭素を高濃度とすればするほど、その単結晶から作製するデバイスのデバイス特性が劣化する恐れがある。
ここで、図5に、ボロン及び炭素を合せた濃度(atoms/cc;ここでは、ボロンと炭素が1:1の濃度である。)と、結晶中心でOSFが消滅するV/G値(mm2/℃・min)の関係を示すグラフを示す。図5から、ボロン及び炭素を、合せて1×1017atoms/cc以上(特には、2×1017atoms/cc以上)の範囲となるようにドープして結晶を育成すれば、結晶中心でOSFが消滅するV/G値(mm2/℃・min)が、急激に大きい値となり、N領域の単結晶の製造マージンを大幅かつ確実に大きくすることができることが判る。
一方、前述のように、ドープするボロン、ドープする炭素を高い濃度とすればするほど、長時間の熱処理、オートドーピング、デバイス特性の劣化等の問題が顕著になってくる。しかし、ボロン及び炭素を、合せてドープすることで、ボロン、炭素が、合せて高濃度であっても、それぞれ単独では、濃度を低く、特には半減することができ、長時間の熱処理、オートドーピング、デバイス特性の劣化等の問題が生じることを抑制することが可能である。
これらの検討の結果、N領域の単結晶の製造マージンをより大きくかつ確実に拡大するためには、原子半径が小さいサブスティテューショナル(置換型)の不純物であるボロンと炭素を同時に、かつ所定濃度以上、特には合せて1×1017atoms/cc以上となるようにドープして結晶を育成すればよいことに想到し、本発明を完成させた。
さらに、ボロン及び炭素を合せてドープすることで、それぞれの濃度を低減、特には半減することが可能であり、これによりボロン及び炭素を所望の濃度以下とし、長時間の熱処理、オートドーピング、デバイス特性の劣化等の問題が生じるのを十分に抑えることも可能となる。
一方、炭素が非常に高濃度にシリコン単結晶中にドープされると、当該シリコン単結晶から作製したウェーハ上に形成した酸化膜の耐圧特性等を低下させる恐れがある。ウェーハに上記熱処理を加えることで、シリコン表面の炭素の濃度を低減させることもできるので、この観点からも上記熱処理を行うことが好ましい。さらに、本発明のウェーハは、バルク部ではボロンと炭素が高濃度に存在するため、ウェーハのゲッタリング能力が非常に高いという利点がある。
(実施例1)
図1に示した単結晶製造装置1に、直径32インチ(約800mm)の石英ルツボ7を装備し、炭素ドープ用の高純度炭素粉をシリコン多結晶塊の平らな部分同士で挟み込んで、シリコン多結晶原料とともに石英ルツボ7に充填し、さらに、ボロンドープ用のボロンエレメントを投入した。この時、シリコン単結晶中のボロンと炭素の濃度が合わせて約1×1019atoms/cc(それぞれ単独では5×1018atoms/cc)となるように添加して、溶融し、原料融液6とした。そして、チョクラルスキー法(CZ法)により、直胴部の直径が12インチ(約300mm)、直胴部の長さが約140cmのシリコン単結晶4を、成長速度を1.1mm/minから0.3mm/minにまで徐々に低下させながら育成した。
尚、シリコン単結晶4の育成時には、中心磁場強度3000Gの水平磁場を印加した。
(1)FPD(V領域)およびLSEPD(I領域)の検査
1)検査用のサンプルに30分間のセコエッチングを無攪拌で施した後、サンプルを顕微鏡で観察することにより結晶欠陥の確認を行った。
2)サンプルの抵抗率が低い場合、選択エッチング後にステインが出ることもあるので、上記セコエッチングによる結晶欠陥の確認の他、ライト液を用いた結晶欠陥の確認も行った。
(2)OSFの検査
検査用のサンプルにウエット酸素雰囲気下、1150℃で100分間の熱処理を行った後、サンプルを顕微鏡で観察することによりOSFの有無を確認した。
図3(a)から明らかなように、調査を行った直胴部からはいずれの結晶欠陥も観察されず、無欠陥結晶であることが確認できた。
得られた単結晶の成長軸方向20cm毎の部位からウェーハを切り出し、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製した。このサンプルを用いて、上記と同様の方法により、FPD(V領域)、LSEPD(I領域)、OSFの検査を行った。
図2(a)から明らかなように、調査を行ったいずれのサンプルからも、結晶欠陥が観察されず、無欠陥結晶であることが確認できた。
原料融液6を作製する際に、ボロンドープ用のボロンエレメントと炭素ドープ用の高純度炭素粉とをシリコン単結晶中の濃度が合せて約1×1015atoms/cc(それぞれ単独では5×1014atoms/cc)となるように添加したことを除いては、実施例1と同様の方法により、シリコン単結晶4を、成長速度を1.1mm/minから0.3mm/minにまで徐々に低下させながら育成した。
図3(b)から明らかなように、成長速度の速い方でFPD(V領域)、V領域の境界付近でOSF、成長速度の遅い方でLSEPD(I領域)が観察された。
得られた単結晶の成長軸方向20cm毎の部位から約2mm厚のウェーハを切り出し、平面研削及び研磨を行って検査用のサンプルを作製した。このサンプルを用いて、上記と同様の方法により、FPD(V領域)、LSEPD(I領域)、OSFの検査を行った。
図2(b)から明らかなように、調査を行ったいずれのサンプルからも、FPDが観察され、ほぼ1.0mm/minの成長速度では、V領域の結晶となり、無欠陥結晶を製造することができないことが確認できた。
例えば、上記実施例1では、N領域のみのシリコン単結晶を製造する場合につき説明したが、必要に応じ、N領域とI領域の混在したシリコン単結晶、あるいは、I領域のみのシリコン単結晶を引上げる際に、本発明の方法を用いることも可能である。
4…単結晶、 5…ワイヤー、 6…原料融液、 7…石英ルツボ、
8…黒鉛ルツボ、 9…シャフト、 10…黒鉛ヒーター、 11…断熱部材、
12…ガス整流筒、 13…遮熱部材、 14…ガス導入口、 15…ガス流出口、
16…種ホルダー、 17…種結晶。
Claims (4)
- チョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する方法において、単結晶を育成する際に、ボロン及び炭素を、単結晶中の濃度が合せて1×1017atoms/cc以上1×10 20 atoms/cc以下の範囲となるようにドープして、結晶全面がN領域の単結晶を育成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
- 前記単結晶を育成する際に、ボロン及び炭素を、単結晶中の濃度がそれぞれ0.5×10 17 atoms/cc以上0.5×10 20 atoms/cc以下の範囲となるようにドープすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載された方法により製造されたシリコン単結晶をシリコンウェーハに加工した後、1000℃より高い温度で熱処理を加えることにより、シリコンウェーハ表面のボロンの濃度を1×1016atoms/cc以下の範囲となるように調整することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
- 前記製造するシリコンウェーハの直径が、200mm以上であることを特徴とする請求項3に記載のシリコンウェーハの製造方法。
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