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JP4288641B2 - 化合物半導体成膜装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、スパッタ法により基材表面にCIGS系の化合物半導体を成膜する化合物半導体成膜装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄膜太陽電池の光吸収層として、Cu(In,Ga)Se2をベースとしたI−III−VI族によるCIGS系の化合物半導体が用いられている。その化合物半導体は、蒸着法、スパッタ法などによって基板上に成膜される。
【0003】
その際、蒸着法によるのでは、成膜される化合物半導体の結晶の品質が良く、18%を越えるエネルギー変換効率の高い光吸収層を得ることができるが、成膜に時間を要して、量産時の製品のスループットが悪いものになっている。
【0004】
また、スパッタ法によるのでは、蒸着法に比べて成膜レートが高いために成膜を短時間で行わせることが可能であり、また、ターゲットの寿命が長くなってその供給回数が軽減するとともに、ターゲット自体が安定なために同一の成膜を生成させるのに再現性があるものになっている。しかし、蒸着法に匹敵するエネルギー変換効率が得られていないのが現状である。その理由としては、Cu,In,Seの各単体ターゲットを用いて成膜を行わせると、主にSeターゲットから放出されるSeの負イオンなどが成膜自体にダメージを与えて、成膜中に多くの欠陥を生じて品質を低下させてしまうということが報告されている。そのために、スパッタ法により成膜した光吸収層のエネルギー変換効率は7〜8%程度にとどまっている。
【0005】
また、従来、スパッタ法を採用する場合に、Seターゲットから放出される負イオンによる成膜のダメージを回避するために、Seの供給のみを蒸着法によって行わせる試みがなされ、CIGS系の化合物半導体薄膜による光吸収層のエネルギー変換効率が10%を越す太陽電池が製造されている(T.Nakada et al.“Microstructual Characterization for Sputter−Deposited CulnSe2 Filmsand Photovoltaic Devices”Jpn.Appl.Phys.34 1995 4715−4721の文献参照)。
【0006】
しかし、このようなスパッタ法と蒸着法とを併用してCIGS系の化合物半導体を成膜させるのでは、CuやInのターゲット表面に蒸着時のSe蒸気が付着して汚染し、その表面にCuSeやInSeといった高抵抗化合物が生成されてしまうために、定電力でスパッタリングを安定して継続させることができなくなり、再現性が失われて製品間のバラツキをきたしてしまうという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、基板上にCIGS系の化合物半導体を成膜させるに際して、蒸着法によるのでは時間がかかることである。また、スパッタ法によのでは、Seターゲットから放出されるSeの負イオンなどが成膜自体にダメージを与えて、成膜の品質が低下してしまうことである。
【0008】
また、スパッタ法を採用する場合に、Seターゲットから放出される負イオンによる成膜のダメージを回避するために、Seの供給のみを蒸着法によって行わせるようにすると、CuやInのターゲット表面がSe蒸気によって汚染されて、定電力でのスパッタリングを安定して行わせることができなくなってしまうことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、真空槽内に配設されたターゲットに直流電力を供給して、スパッタリングによりその真空槽内に設けられた基材の表面にCIGS系の化合物半導体を成膜する装置にあって、短時間で高品質なCIGS系による化合物半導体を成膜させることができるようにするべく、その化合物半導体を生成するための複数種のSe化合物からなるターゲットを複数設けるとともに、各ターゲットへの供給電力を段階的に制御する電力供給制御手段を設けるようにしている。
【0010】
具体的には、CuGaSe2またはCuInSe2からなる第1のターゲットと、Cu2Seからなる第2のターゲットと、InSeまたはGaSeからなる第3のターゲットとを設けて、電力供給制御手段により、第1段階として、第1ないし第3の各ターゲットにCuリッチな成膜を行わせるようにそれぞれ規定された電力を供給し、第2段階として、第2のターゲットへの電力供給を停止して、(In,Ga)リッチ状態へ調整していくようにする。
【0011】
【実施例】
図1は、CIGS系薄膜太陽電池の一般的な構造を示している。
【0012】
ここでは、ソーダライムガラスSLMからなる基板11上に、非加熱にてDCスパッタ法によってプラス側のMo電極層12が約1μmの厚さに薄膜形成されている。そのMo電極層12上には、CIGS系の化合物半導体による光吸収層13がTs=580〜600℃(指示温度)にてDCスパッタ法により約1.3μmの厚さで形成されている。その光吸収層13上には、CdSまたはZnSによるバッファ層14が溶液成長法により80℃で約800〜1000Åの厚さに形成されている。そして、その上に高抵抗ZnO膜15が約700Åの厚さをもって、さらにその上にZnO:Alからなる透明導電層16が約0.6μmの厚さをもって、共に非加熱にてRFスパッタ法により形成されている。ZnO膜15上には、透明導電層16に接してマイナス側のAl電極17が設けられている。また、最上部にはMgF2からなる反射防止膜18が1000Åの厚さをもって設けられている。その反射防止膜18は、太陽電池の発電に直接寄与するものではないが、光吸収層13とバッファ層14との界面のPN接合部に到達する光量を光閉込め効果などによって増大させることができるものとなっている。
【0013】
本発明による化合物半導体成膜装置は、このような太陽電池にあって、基板11上にMo電極層12が形成されたものを基材として、その基材表面にスパッタ法によりCIGS系の化合物半導体の成膜を行わせて光吸収層13を薄膜形成するに際して、その化合物半導体を生成するための複数種のSe化合物からなるターゲットを複数設けるとともに、各ターゲットへの供給電力を段階的に制御する電力供給制御手段を設けるようにしている。
【0014】
図2は、本発明の一実施例による化合物半導体成膜装置の概略構成を示している。
【0015】
それは、本体が真空槽1からなっており、排気系としてR.PとD.Pとが用いられている。その真空槽1の到達真空度としては、10−5Pa程度になっている。
【0016】
真空槽1内の上部中央には、表面にCIGS系の化合物半導体を成膜させる基材2が配設されている。その基材2としては、その表面積が100mm×100mm程度の大きさである。そして、その基材2は、その表面に形成される化合物半導体薄膜の組成比分布および膜厚分布の均一化を有効に図るために、回転機構3によって回転駆動されるようになっている。そして、基材2の裏面に接触して、基材2を加熱するヒータ板4が設けられている。
【0017】
また、真空槽1の内部には、基材2にそれぞれ対向するように、3種類のSe化合物からなるスパッタリングのターゲット51,52,53が配設されている。各ターゲット51,52,53のサイズは、4”φ×5mmt程度である。基材2と各ターゲット51,52,53との間隔は250mm程度に設定されている。
【0018】
第1のターゲット51としては、CuGaSe2(またはCuInSe2)が用いられる。第2のターゲット52としては、Cu2Seが用いられる。第3のターゲット53としては、InSe(またはGaSe)が用いられる。
【0019】
第1ないし第3の各ターゲット51〜53には、それぞれの供給電力を独立して調整することができる電力供給コントローラ6を介して、直流電源7が接続されている。
【0020】
このように構成された本発明による化合物半導体成膜装置の動作について、以下説明する。
【0021】
まず、真空槽1の内部に基材2をセットしたうえで、ポンプ(図示せず)を駆動することによってその内部を真空排気し、真空度が10−4Pa程度になったら基材2を回転させながら580〜600℃まで加熱する。
【0022】
そして、電力供給コントローラ6の制御下において、第1段階として、第1ないし第3の各ターゲット51〜53の全てにそれぞれ規定の電力を供給することによってスパッタリングさせて、基材2の表面にCuリッチなCIGS膜を約0.7μmの厚さに形成する。その場合、Cu/(In,Ga)の組成比としては1.3程度である。そのときの第1ないし第3の各ターゲット51〜53に供給する規定の電力は表1に示す通りである。
【0023】
第1ないし第3の各ターゲット51〜53にそれぞれ供給する規定の電力としては、各ターゲットの成膜レートを調整しながら、成膜されるCIGS蒲膜のCu/(In,Ga)が1.3程度になるように設定されている。
【0024】
Figure 0004288641
【0025】
第1段階でのCu/(In,Ga)の範囲としては、1.0<Cu/(In,Gd)<1.9の範囲が望ましい。その理由としては、Cu/(In,Ga)<1.0すなわちIII族(In,Ga)のリッチ状態では、CuSeの液層アシスト成長を利用した薄膜形成が不可能になるため、結晶粒径が大きなCIGS薄膜を形成することが難かしくなる。また、Cu/(In,Ga)>1.9では、成膜初期段階においてIII族がほとんど存在しない状態であり、バンドエンジニアリングを考えた場合においても不適切で、かつ光吸収層としての機能を果たせなくなる可能性がある。そして、成膜上、Cu/(In,Ga)の組成比が1.9程度から太陽電池の光吸収層として最適範囲とされる0.8<Cu/(In,Ga)<0.95付近まで組成比を制御することは、III族を含むターゲットの供給電力の調整でできないこともないが、成膜レートやターゲットの寿命などを考えると得策とはいえない。以上の点をふまえると、Cu/(In,Ga)=1.3付近は最も適した組成比であることがわかる。この組成比であれば、充分にCuSeの液層アシスト成長を利用した薄膜形成が可能になる。最初にCuリッチの成膜を行わせることで、蒸着法で利用しているCuSeの液層を介した成長に似た現象が生じ、粒径の大きなCIGS薄膜が形成できるようになる。
【0026】
次いで、電力供給コントローラ6の制御下において、第2段階として、第2のターゲット52への電力供給を停止したうえで、第1および第3の各ターゲット51,53には規定通りの電力を供給し続けて、基材2の表面に重ねてCIGS膜を約0.6μmの厚さに形成させる。
【0027】
しかして、この第2段階のスパッタリングを行わせることによって、Cu成分を第1のターゲット51のみから供給させることで、第1段階のスパッタリングによるCuリッチ状態が(In,Ga)リッチ状態(Cu/(In,Ga)<1.0)に調整されていく。
【0028】
そして、この第2段階によるスパッタリングが終了したら、電力供給コントローラ6の制御下において、第3段階として、第2のターゲット52への電力供給を停止した状態のまま、第3のターゲット53には規定通りの電力を供給し続けながら、第1のターゲット51への供給電力を規定の半分に低下させてスパッタリングを行わせる。それにより、基材2の表面に薄膜形成されるCIGS膜のバンドギャップが膜表面に向かって傾斜して、グレーディング構造が形成される。
【0029】
以上のようにして基材2の表面に形成されたCIGS薄膜を、別の真空槽にてTs=500℃(指示温度)で、Se雰囲気中で1時間アニール処理することによって、組成の安定したCIGS薄膜が得られる。
【0030】
図3は、以上説明した基材2の表面にCIGS薄膜を形成するプロセスを示している。
【0031】
また、図4は、そのCIGS薄膜成長の過程を模擬的に示している。
【0032】
第1段階においては、図4(a)に示すように、第1ないし第3の各ターゲット51〜53にそれぞれ規定の電力を供給することにより、各ターゲットから化合物または単体の状態で基材2に向かってスパッタリングされる。その後、図4(b)に示すように、徐々に膜が形成されはじめると同時に、基材2の加熱温度がTs=580〜600℃と高いために、蒸気圧の高いInSeやSeが基材2から抜け出すものも現われる。また、膜がCuリッチな状態のために、520℃で液層化するCuSeの支配が顕著に現れはじめ、膜が単層に近い形(粒径が大)となる。そのときのCu/(In,Ga)は1.3である(XRF測定値)。
【0033】
そして、第2ないし第3段階において、第2ターゲット52からの供給を停止することでCu/(In,Ga)を0.9程度にまで調整していく。そのとき結晶は、図4の(c)に示すように、第1段階での粒径を反映した形で成長を続け、最終的に比較的大きな粒径のCIGS薄膜が得られるようになる。太陽電池のエネルギー変換効率が最も高いのはCu/(In,Ga)=0.9付近とされている。
【0034】
図5は、100mm角の基材2の表面にCIGS薄膜を形成した太陽電池の面内における実測したエネルギー変換効率η(%)の分布状態の一例を示している。
【0035】
このように、本発明によれば、スパッタ法によりエネルギー変換効率15%を越える太陽電池の製造が可能になり、また、100mm角の基材を用いても面内平均14%以上のエネルギー変換効率をもった太陽電池のミニモジュールの製造ができるようになる。
【0036】
表2および図6は、本発明の成膜法によって光吸収層が作製された太陽電池と従来の成膜法によって光吸収層が作製された太陽電池との各特性を示している。
【0037】
Figure 0004288641
【0038】
ここで、Aは光吸収層としてCu,In,Seの各単体ターゲットを用いて従来のスパッタ法によりCIS薄膜を形成した太陽電池を、Bは従来のCu,Inをスパッタ法、Seを蒸着法によりCIS薄膜を形成した太陽電池を、Cは従来のCu,In,CuGa(30wt%)をスパッタ法、Seを蒸着法によりCIGS薄膜を形成した太陽電池を示している。Dは、本発明によるCuInSe2,GaSe,Cu2Seのターゲットを用いた化合物半導体成膜装置によってCIGS薄膜を形成した太陽電池を示している。Eは、本発明によるCuGaSe2,InSe,Cu2Seのターゲットを用いた化合物半導体成膜装置によりCIGS薄膜を形成した太陽電池を示している。
【0039】
Aの太陽電池とBの太陽電池とを比較すると、Seを蒸着法によって供給することでエネルギー変換効率ηが2倍以上に向上することがわかる。これにより、単体のSeをスパッタ法によってCIS薄膜中に供給することは、何らかのダメージを与えていることが推測される。
【0040】
Bの太陽電池とCの太陽電池とを比較すると、CISにGaを添加することによって開路電圧Vocが増大し、結果的にエネルギー変換効率ηが向上している。C,D,Eの各太陽電池に着目すると、D,EはAのようにSeをスパッタ法により供給しているにもかかわらず、エネルギー変換効率ηの低下がみられない。これは、Se化合物をターゲットに用いることで、Se単体の負イオンによるダメージを低減できることが推測される。
【0041】
また、Cの太陽電池に関しても、エネルギー変換効率ηの低下はみられないが、Cu,InおよびCuGaのターゲットの表面がSe蒸気によって汚染されるために、再現性に乏しいという問題がある。
【0042】
しかして、本発明に係るD,Eの太陽電池によれば、Seの負イオンによるダメージが低減され、エネルギー変換効率ηに優れた再現性の良いものとなることがわかる。
【0043】
【発明の効果】
以上、本発明による化合物半導体成膜装置にあっては、真空槽内に設けられた化合物半導体を生成するためのCuGaSe2またはCuInSe2からなる第1のターゲット、Cu2Seからなる第2のターゲットおよびInSeまたはGaSeからなる第3のターゲットへの供給電力を段階的に制御するようにしたもので、最初はCuリッチな状態から次第に(In,Ga)リッチな惜態に移行するように、Cu/(In,Ga)の組成比を調整しながらスパッタリングを行わせることにより、スパッタダメージを低減して、蒸着法に近い粒径の大きな高品質なCIGS薄膜を短時間で再現性良く形成できるようになり、エネルギー変換効率の高い太陽電池を容易に量産できるようになりるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】CIGS系薄膜太陽電池の一般的な構造を示す正断面図である。
【図2】本発明による化合物半導体成膜装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図3】本発明によって基材の表面にCIGS薄膜を形成するプロセスを示す図である。
【図4】本発明によって基材の表面にCIGS薄膜を形成する際における成膜の成長過程を模擬的に示す図である。
【図5】本発明によって100mm角の基材の表面にCIGS薄膜を形成したしたときの面内における実測したエネルギー変換効率η(%)の分布状態の一例を示す図である。
【図6】本発明によって光吸収層が作製された太陽電池と従来の成膜法によって光吸収層が作製された太陽電池との各特性を示す図である。
【符号の説明】
1 真空槽
2 基材
11 ガラス基板
12 Mo電極層
3 回転機構
4 ヒータ板
51,52,53 ターゲット
6 電力供給コントローラ
7 直流電源

Claims (3)

  1. 真空槽内に配設されたターゲットに直流電力を供給して、スパッタリングによりその真空槽内に設けられた基材の表面にCIGS系の化合物半導体を成膜する装置であって、その化合物半導体を生成するためのCuGaSe2またはCuInSe2からなる第1のターゲット、Cu2Seからなる第2のターゲットおよびInSeまたはGaSeからなる第3のターゲットを設けるとともに、各ターゲットへの供給電力を段階的に制御する電力供給制御手段を設けたことを特徴とする化合物半導体成膜装置。
  2. 電力供給手段により、第1段階として、第1ないし第3の各ターゲットにCuリッチな成膜を行わせるようにそれぞれ規定された電力を供給し、第2段階として、第2のターゲットへの電力供給を停止するようにしたことを特徴とする請求項1の記載による化合物半導体成膜装置。
  3. 電力供給手段により、第3段階として、第2のターゲットへの電力供給を停止した状態のままで、第1のターゲットへり供給電力を所定に低下させるようにしたことを特徴とする請求項2の記載による化合物半導体成膜装置。
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