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JP4281525B2 - 車両のブレーキ装置 - Google Patents

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JP4281525B2
JP4281525B2 JP2003390899A JP2003390899A JP4281525B2 JP 4281525 B2 JP4281525 B2 JP 4281525B2 JP 2003390899 A JP2003390899 A JP 2003390899A JP 2003390899 A JP2003390899 A JP 2003390899A JP 4281525 B2 JP4281525 B2 JP 4281525B2
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Description

本発明は、運転者が制動操作により要求する制動力を、該制動操作により発生するブレーキ液圧により直接的に達成するのではなく、該ブレーキ液圧の検出値に基づき、別の液圧源からの液圧を調圧して得られるユニット液圧により車輪制動ユニットを作動させるようにした、所謂車両のバイワイヤ式ブレーキ装置に関するものである。
自動ブレーキや、左右制動力差制御により車両の挙動を動的制御する要求や、車輪の制動ロックを防止するアンチスキッド制御の電子化要求などのため、ブレーキユニット液圧を電子制御可能にした様々なブレーキ液圧制御回路が考案されたり、実用化されている。
かかるブレーキユニット液圧を電子制御可能にしたブレーキ液圧制御回路としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。
つまり、ブレーキペダルの踏み込みに応動するマスターシリンダからの液圧を車輪のホイールシリンダへ供給するブレーキ液圧回路中に、上記の電子制御に際して閉じる遮断弁を挿置し、マスターシリンダのリザーバ内における作動液を媒体として吐出するポンプ、これを駆動する電動モータ、およびポンプからの作動液を蓄圧するアキュムレータで構成された液圧源を設ける。
上記ブレーキユニット液圧の電子制御に際しては、マスターシリンダおよびホイールシリンダ間のブレーキ液圧回路を遮断弁により遮断した状態で、上記液圧源のアキュムレータ内圧を用いて増圧弁を介しホイールシリンダ内のブレーキユニット液圧を増圧したり、減圧弁を介しホイールシリンダ内のブレーキユニット液圧を減圧することにより、マスターシリンダ液圧とは別個にブレーキユニット液圧を電子制御し得るようにしたものである。
特開2000−168536号公報
ところで、上記のようにして全ての車輪を電子制御可能としたブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置にあっては、ブレーキユニット液圧の電子制御中も通常通りのブレーキペダルフィーリングが必要であることから、遮断弁およびマスターシリンダ間のブレーキ液圧回路にストロークシミュレータを接続して設ける必要がある。
ところでブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置は、ブレーキユニット液圧の電子制御システムに異常が発生してブレーキユニット液圧の電子制御ができなくなった場合も制動不能になることのないよう、当該異常時は前記の遮断弁を開いてマスターシリンダ液圧によりブレーキユニット液圧を賄い得るようにしたフェールセーフ対策を具えている。
しかしてマスターシリンダ液圧によりブレーキユニット液圧を賄う場合、遮断弁が開いていることでマスターシリンダがストロークを行いつつブレーキ液圧を発生することから、ストロークシミュレータが不要である。
これがため、遮断弁を開いてマスターシリンダ液圧によりブレーキユニット液圧を賄う異常時は、ブレーキ液圧回路とストロークシミュレータとの間の連通を絶って遮断状態にする必要がある。
従来は、かかるストロークシミュレータの遮断、連通を電磁弁により行うのが常套であった。
しかし電磁弁は一般的に高価であり、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置がコスト高になる要因の1つになっていた。
そこで、遮断弁を閉じた状態でブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動する時は、マスターシリンダが理論上ストロークすることなくマスターシリンダ液圧を発生させることから、マスターシリンダのピストンストロークに機械的に連動するようストロークシミュレータを設置し、制動操作力を入力しないピストンの常態位置ではストロークシミュレータをマスターシリンダと連通した連通状態にして上記本来の機能を果たすようになすが、制動操作によりマスターシリンダのピストンがストロークする(押し込まれる)時はストロークシミュレータをマスターシリンダとの連通が絶たれた遮断状態にして作動することのないようになすことが考えられる。
しかし、ストロークシミュレータを上記のようにマスターシリンダのピストンストロークに機械的に連動させる場合、以下の問題の発生が懸念される。
ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置は、車両のイグニッションスイッチがOFFにされている場合、全ての弁を含む制御システムもOFF状態である。
そして遮断弁は、制御システムの異常で制御信号が供給されない時もマスターシリンダ液圧により制動可能となるよう、常開弁で構成してONによる附勢時に閉じるようなものとするのが常識的である。
このため例えば、運転者が乗車してイグニッションスイッチをONする前にブレーキペダルを踏み込み、この状態でイグニッションスイッチをONにした場合、上記ブレーキペダルの踏み込みでマスターシリンダがストロークし、これに連動してストロークシミュレータがブレーキ液圧回路から遮断された状態で、遮断弁がイグニッションスイッチのONにより閉じられることになる。
この場合、ブレーキペダルから足を放して制動操作を止めても、マスターシリンダ内のピストン前後で液の往来が発生しないため、マスターシリンダ内のピストンは常態位置から押し込み位置にストロークしたままとなり、ストロークシミュレータは遮断状態に保持される。
この遮断状態は、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置としての機能を妨げるものではないが、ストロークシミュレータの作動を不能にし、ブレーキペダル(マスターシリンダ)のストロークがない状態での制動を余儀なくされ、違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる。
本発明は、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置の場合、マスターシリンダのような初動手段とは別の液圧源を具えており、これからの液圧を用いてストロークシミュレータを強制的に連通状態に復帰させることができるとの事実認識に基づき、
或いは、初動手段としてタンデムマスターシリンダを用いた2系統式のブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に限られるが、1系統をブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動させ、他系統をマスターシリンダからの液圧により直接作動させれば、少なくとも上記違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関した問題を解消し得るとの事実認識に基づき、
これらの着想を具体化したブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置を提案することを目的とする。
前者の着想に基づく本発明による車両のブレーキ装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず、本発明の前提となるブレーキ装置を説明するに、これは、
運転者の制動操作により押圧される初動素子を有し、該初動素子の押圧力に応じたブレーキ液圧を出力する初動手段と、
該初動手段から車輪ブレーキユニットへ至るブレーキ液圧出力回路を遮断する遮断弁と、
該遮断弁を閉じた状態で、別の液圧源からの液圧を、上記初動手段および遮断弁間における上記ブレーキ液圧の検出値に基づき調圧して、上記遮断弁および車輪ブレーキユニット間におけるユニット液圧となす液圧制御手段と、
上記初動素子のストロークに機械的に連動して上記初動手段との連通を絶たれた遮断状態になるが、該初動素子の常態位置では初動手段と連通された連通状態になって上記遮断弁の閉によっても前記運転者の制動操作にストロークを付与し得るようになすストロークシミュレータとを具えた、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置とする。
本発明は、上記のような車両のブレーキ装置において、
上記遮断弁を閉じた時にストロークシミュレータが前記遮断状態、連通状態であるのを検知するストロークシミュレータ遮断・連通検知手段を設ける。
そして、この手段がストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、遮断弁を一旦開いて上記別の液圧源からの液圧により初動素子を上記常態位置に押し戻すよう構成すると共に、
該初動素子の押し戻しによりストロークシミュレータが上記連通状態になったのをストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が検知した時遮断弁を閉じるよう構成したものである。
後者の着想に基づく本発明による車両のブレーキ装置は、請求項4に記載のごとくに構成する。
先ず、本発明の前提となるブレーキ装置を説明するに、これは、
運転者の制動操作に連動するプライマリピストン、および、このプライマリピストンを介して運転者の制動操作力を入力されるセカンダリピストンを有するタンデムマスターシリンダと、
このタンデムマスターシリンダから車輪ブレーキユニットへ至る2系統のブレーキ液圧出力回路を個々に遮断する遮断弁と、
これら遮断弁を閉じた状態で、別の液圧源からの液圧を、上記タンデムマスターシリンダおよび両遮断弁間における上記2系統ブレーキ液圧出力回路の液圧検出値に基づき調圧して、両遮断弁および車輪ブレーキユニット間における2系統ブレーキ液圧出力回路内のユニット液圧となす液圧制御手段と、
上記セカンダリピストンのストロークに機械的に連動してタンデムマスターシリンダとの連通を絶たれた遮断状態になるが、該セカンダリピストンの常態位置ではタンデムマスターシリンダと連通された連通状態になって上記両遮断弁の閉によっても運転者の制動操作にストロークを付与し得るようになすストロークシミュレータとを具えた、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置とする。
本発明は、上記のような車両のブレーキ装置において、
上記両遮断弁を閉じた時にストロークシミュレータが上記遮断状態、連通状態であるのを検知するストロークシミュレータ遮断・連通検知手段を設ける。
そして、この手段がストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、上記両遮断弁の一方を開いて対応するブレーキ液圧出力回路の系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させ、他方の閉状態の遮断弁に係わるブレーキ液圧出力回路の系統を別の液圧源からの液圧により作動させるよう構成したものである。
前者の本発明によれば、遮断弁の閉時にストロークシミュレータが初動手段に対し遮断状態である場合、遮断弁を一旦開いて上記別の液圧源からの液圧により初動素子を常態位置に押し戻し、これによりストロークシミュレータが初動手段に対し連通状態になった後に遮断弁を閉じることから、
ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動するに際し遮断弁を閉じた時にストロークシミュレータが初動手段と連通しない遮断状態であっても、上記別の液圧源からの液圧により初動素子を常態位置に押し戻してストロークシミュレータを初動手段に連通させ得ることとなり、その後に遮断弁を閉じることでストロークシミュレータを所定通りに作動させつつブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動させることができる。
よって、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動する時にストロークシミュレータが作動不能になるのを確実に回避することができ、制動操作ストロークのない違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる事態の発生を解消することができる。
後者の本発明によれば、2系統ブレーキ液圧出力回路中における遮断弁の閉時にストロークシミュレータがマスターシリンダに対し遮断状態である場合、両遮断弁の一方を開いて対応するブレーキ液圧出力回路の系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させ、他方の閉状態の遮断弁に係わるブレーキ液圧出力回路の系統を別の液圧源からの液圧により作動させることから、
タンデムマスターシリンダを用いた2系統式のブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に限られるが、上記他系統をマスターシリンダからの液圧により直接作動させることで、少なくとも制動操作ストロークのない違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる事態の発生を解消することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になるブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置を、これにより制動される前輪1および後輪2(共に1輪のみを図示した)と共に示し、本実施例ではこのブレーキ装置を2系統式液圧ブレーキ装置とし、一方の系統で左右前輪1を制動するよう、また他系統で左右後輪2を制動するよう構成する。
これがため、初動手段としてタンデムマスターシリンダ3を設け、このタンデムマスターシリンダ3は、ブレーキペダル4からの制動操作力を入力されるようこれに連結した第1初動素子としてのプライマリピストン5、および、このプライマリピストン5を介し制動操作力を入力される第2初動素子としてのセカンダリピストン6を有し、これらピストンによりマスターシリンダ3内をプライマリピストン室7およびセカンダリピストン室8に区画されたものとする。
プライマリピストン5およびセカンダリピストン6は、ブレーキペダル4から制動操作力を入力されない間、リターンスプリング9,10により図示の常態位置にされて、ピストン室7,8とリザーバ11との間を通じる入口ポート12,13を丁度開き、
ブレーキペダル4から制動操作力を入力されてピストン5,6が押し込み方向へストロークすると、ピストン5,6がポート12,13を直ちに閉じて室7,8内にブレーキ液圧を発生するものとする。
タンデムマスターシリンダ3には更に、室7,8に常時通じる出口ポート14,15を設け、これらポート14,15にそれぞれ、左右後輪2のブレーキユニット16へ至る後輪用ブレーキ液圧出力回路17、および、左右前輪1のブレーキユニット18へ至る前輪用ブレーキ液圧出力回路19を接続して設ける。
ブレーキ液圧出力回路17,19中には、マスターシリンダ3に近い側から順次、遮断弁20,21および増圧弁22,23を挿置し、これら遮断弁20,21および増圧弁22,23はON時に閉じる常開の電磁弁とする。
増圧弁22,23と、ブレーキユニット16,18との間において、ブレーキ液圧出力回路17,19中にそれぞれ、減圧弁24,25を介してリザーバ11に至るリザーバ回路26を接続し、これら減圧弁24,25は、ON時に開く常閉の電磁弁とする。
遮断弁20,21と、増圧弁22,23との間において、ブレーキ液圧出力回路17,19間を相互に連通可能にする連通弁27を設け、この連通弁27も、ON時に開く常閉の電磁弁とする。
遮断弁20と、増圧弁22との間において、ブレーキ液圧出力回路17に、ポンプ28を含む別の液圧源を接続して設ける。
タンデムマスターシリンダ3にストロークシミュレータ31を設け、これはピストン31aおよびバネ31bで構成し、室31c内にプライマリピストン室7から作動液が流入する時、ピストン31aがバネ31bに抗してストロークすることにより後述する所定の機能を果たすものとする。
ところで、ストロークシミュレータ31(室31c)とプライマリピストン室7との間を常時通じさせたままにせず、これらストロークシミュレータ31(室31c)とプライマリピストン室7との間に開閉弁32を設ける。
この開閉弁32は、セカンダリピストン6のストロークに連動して開閉するよう設け、セカンダリピストン6が図示の常態位置にあるとき開閉弁32を開いて、ストロークシミュレータ31をプライマリピストン室7と連通した連通状態にし、セカンダリピストン6が図示の常態位置から押し込み方向にストロークするとき開閉弁32を閉じて、ストロークシミュレータ31をプライマリピストン室7との連通が絶たれた遮断状態にするものとする。
図1に示す上記したブレーキ装置の作用を次に説明する。
車両のイグニッションスイッチを投入すると、遮断弁20,21がONにより閉状態にされ、連通弁27がONにより開状態にされる。
この状態で運転者がブレーキペダル4を踏み込み、制動操作力をプライマリピストン5に入力すると、このピストン5が入口ポート12を閉じた後、プライマリピストン室7内にブレーキ液圧を発生させる。
このブレーキ液圧はセカンダリピストン6を押圧し、これが入口ポート13を閉じた後、セカンダリピストン室8内にもブレーキ液圧を発生させる。
ところで、遮断弁20,21が閉じているため、ピストン5,6が入口ポート12,13を閉じた後は、室7,8内にブレーキペダル4の踏力(制動操作力)に対応するブレーキ液圧Pmを発生させて回路17,19に出力するが、ピストン5,6(ブレーキペダル4)をそれ以上はストロークさせ得なくなる。
しかし、セカンダリピストン6が入口ポート13を閉じる微少なストロークでは、開閉弁32が閉じることがなく開状態を保ってストロークシミュレータ31をプライマリピストン室7に通じた連通状態に維持する。
よって、ストロークシミュレータ31は室31c内にプライマリピストン室7からの作動液が流入し得る状態にあり、ブレーキペダル踏力(制動操作力)の増大に応じてプライマリピストン5がプライマリピストン室7の作動液をストロークシミュレータ31の室31c内に送り込みつつストローク可能である。
この間ストロークシミュレータ31のピストン31aは、バネ31bに抗しストロークすることからバネ反力による負荷を運転者に感じさせることができ、所定のストローク・制動力特性を持ったブレーキペダル操作フィーリングを運転者に与える得る。
ブレーキペダルの踏み込みが行われると、ポンプ28を含む別の液圧源が作動され、これからの液圧Ppが一方で遮断弁20の下流側において回路17に、他方で、開状態の連通弁27を経由し遮断弁21の下流側において回路19に供給される。
増圧弁22,23および減圧弁24,25は、ポンプ28を含む別の液圧源からの液圧Ppを元圧とし、これを、マスターシリンダ3からの液圧Pmに基づき調圧して後輪ブレーキユニット液圧Pwrおよび前輪ブレーキユニット液圧Pwfとなし、これらをそれぞれ、後輪ブレーキユニット16および前輪ブレーキユニット18に供給するものとする。
これがため増圧弁22,23および減圧弁24,25は、本発明における液圧制御手段を構成する。
ここで、故障により上記ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置としての作動が不能になり、後輪ブレーキユニット液圧Pwrおよび前輪ブレーキユニット液圧Pwfを制御し得なくなった場合のフェールセーフ動作を説明する。
この場合、全ての電磁弁20〜25および27と、ポンプ28をOFFする。遮断弁20,21はOFFにより開状態となり、増圧弁22,23もOFFにより開状態となり、減圧弁24,25はOFFにより閉状態となり、連通弁27もOFFにより閉状態となる。
これにより、マスターシリンダ3から回路17,19への液圧Pmが遮断弁20,21および増圧弁22,23を順次経て後輪ブレーキユニット16および前輪ブレーキユニット18に向かい、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置としてではなく、マスターシリンダ3からの液圧Pmで直接的に制動を行う通常の液圧式ブレーキ装置として車輪を制動することができ、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置の故障時も制動不能になることがない。
ところで上記した型式のブレーキ装置にあっては、ストロークシミュレータ31を、前記のごとくマスターシリンダ3のセカンダリピストン6に機械的に連動する開閉弁32で、マスターシリンダ3(プライマリピストン室7)に通じた連通状態、この連通を絶った遮断状態にさせることから、以下の問題の発生が懸念される。
例えば図6に示すように、運転者が乗車してイグニッションスイッチをONする前の瞬時t0にブレーキペダル4を踏み込み、この状態で瞬時t1にイグニッションスイッチをONにした場合、
イグニッションスイッチのONに先立つブレーキペダル4の踏み込みで、遮断弁20,21の開状態と相まってマスターシリンダ3のピストン5,6が押し込まれ(図6ではセカンダリピストン6のストロークのみを示した)、当該ピストン6のストロークに連動する開閉弁32の閉によりストロークシミュレータ31がマスターシリンダ3(プライマリピストン室7)から遮断され、この状態で遮断弁20,21がイグニッションスイッチのONにより瞬時t1に閉じられることになる。
この場合、ブレーキペダル4から足を放して制動操作を止めても、遮断弁20,21が閉状態であるため、マスターシリンダ3内のピストン5,6は押し込まれた位置にストロークしたままとなり常態位置に戻り得ず、ストロークシミュレータ31が遮断状態に保持される。
この遮断状態は、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置としての前記の機能を妨げるものではないが、ストロークシミュレータ31の作動を不能にし、ブレーキペダル4(マスターシリンダ3)のストロークがない状態での制動操作を余儀なくされ、違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる。
本実施例においては特に、かかる問題を解決するため図2〜図5に示す制御プログラムを実行して、マスターシリンダ3とは別の液圧源(ポンプ28)からの液圧を用いたマスターシリンダ増圧制御によりストロークシミュレータ31を強制的に連通状態に復帰させるようになす。
図2は、ストロークシミュレータ31を強制的に連通状態に復帰させる制御が必要かどうかを判定するためのプログラムで、先ずステップS1において、遮断弁20,21が共にONにより閉状態にされているか否かをチェックする。
ステップS1で遮断弁20,21が共に閉状態にされていると判定する時、制御をステップS2に進め、ここでストロークシミュレータ遮断フラグが1か否かをチェックする。
ストロークシミュレータ遮断フラグは、図4および図5に付き後述するようにして、ストロークシミュレータ31がマスターシリンダ3との連通を絶たれた遮断状態であるとの判定時は1にされ、ストロークシミュレータ31がマスターシリンダ3に連通された連通状態であるとの判定時は0にされるものとする。
ステップS1で遮断弁20,21が共に閉状態にされていると判定し、且つ、ステップS2でストロークシミュレータ遮断フラグが1(ストロークシミュレータ31が遮断状態)と判定する時は、前記した違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関する問題を生ずることから、ステップS3において、この問題を解消すべくストロークシミュレータ31を連通状態にするためのマスターシリンダ増圧制御指令を、図6の瞬時t2におけるようなマスターシリンダ増圧制御フラグの1へのセットにより発する。
しかし、ステップS2でストロークシミュレータ遮断フラグが0(ストロークシミュレータ31が連通状態)と判定する時は、前記した違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関する問題を生じないことから、ステップS4において、マスターシリンダ増圧制御フラグを0にリセットし、マスターシリンダ増圧制御指令を発しない。
ステップS1で遮断弁20,21の少なくとも一方がOFFにより開いていると判定する場合は、ステップS5においてストロークシミュレータ遮断フラグが0か否かにより、ストロークシミュレータ31が連通状態か否かをチェックする。
ストロークシミュレータ遮断フラグが0(ストロークシミュレータ31が連通状態)であれば、ステップS4を実行してマスターシリンダ増圧制御フラグを0にリセットし、ピストン6が常態位置であるにもかかわらず無駄にマスターシリンダ増圧制御指令が発せられることのないようにし、
ストロークシミュレータ遮断フラグが0(ストロークシミュレータ31が連通状態)でなければ、制御をそのまま終了してマスターシリンダ増圧制御フラグを現在のままに保持する。
図3は、図2につき上記したようにして決定したマスターシリンダ増圧制御フラグに応じ以下のごとくに、マスターシリンダ3とは別の液圧源(ポンプ28)からの液圧を用いたマスターシリンダ増圧制御を介し、ストロークシミュレータ31を強制的に連通状態に復帰させるための制御プログラムであり、これによる処理を、図6のタイムチャートを併せ参照しつつ以下に説明する。
ステップS11においては、上記のマスターシリンダ増圧制御フラグが1か否かによりストロークシミュレータ31を連通状態にするためのマスターシリンダ増圧制御指令が発せられているか否かをチェックする。
ステップS11でマスターシリンダ増圧制御フラグが1(マスターシリンダ増圧制御指令が発せられている)と判定する時には(図6の瞬時t2)、ステップS12において、イグニッションスイッチがONされた時の前記の状態に対し、図6の瞬時t2におけるごとく以下の制御を行う。
つまり、ポンプ28を駆動してこれから液圧Ppが出力されるようにし、遮断弁21をOFFして開き、増圧弁22,23をONして閉じる。
イグニッションスイッチがONされた図6の瞬時t1に、遮断弁20がONにより閉状態であり、連通弁27がONにより開状態であることから、ポンプ28からの液圧Ppが連通弁27および遮断弁21を経て回路19によりセカンダリピストン室8に供給される。
セカンダリピストン室8への液圧Ppは、押し込まれた位置にとどまっているセカンダリピストン6を図6のストローク変化により示すごとく押し戻し、この時、プライマリピストン室7内の作動液を介しプライマリピストン5もブレーキペダル4への踏力に抗して押し戻し、ついにはこれらピストン6,5を常態位置に復帰させる。
ピストン6の常態位置(ストローク=0)への復帰により、閉状態だった開閉弁32が開状態に切り替わりストロークシミュレータ31を、図6の瞬時t3において図1に示す連通状態にすることができる。
かようにストロークシミュレータ31が連通状態にされると、図2のステップS2におけるストロークシミュレータ遮断フラグが図5につき後述する処理により0にされることから、図2のステップS4でマスターシリンダ増圧制御フラグが0にされる結果、図3のステップS11は制御をステップS13に進め、ここで図6の瞬時t3におけるごとく、ポンプ28の駆動を停止してこれから液圧Ppが出力されないようにし、遮断弁21をONして閉じ、増圧弁22,23をOFFして開く。
これによりブレーキ装置は、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として機能可能な状態になる。
ところで本実施例によれば、イグニッションスイッチのONによる遮断弁20,21の閉時にストロークシミュレータ31が遮断状態である場合、セカンダリピストン室8に係わる遮断弁21を一旦開いてポンプ28からの液圧Ppによりタンデムマスターシリンダ3のピストン5,6を常態位置に押し戻し、ピストン6の押し戻しによりストロークシミュレータ31が連通状態になった後に遮断弁21を閉じることから、
ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動するに際し遮断弁20,21を閉じた時にストロークシミュレータ31が遮断状態であっても、ポンプ28からの液圧Ppによりタンデムマスターシリンダ3のピストン5,6を常態位置に押し戻してストロークシミュレータ31を連通させ得ることとなり、その後に遮断弁21を閉じることでストロークシミュレータを所定通りに作動させつつブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動させることができる。
よって、ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動する時にストロークシミュレータ31が作動不能になるのを確実に回避することができ、制動操作ストロークのない違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる事態の発生を解消することができる。
次に、前記したストロークシミュレータ遮断フラグの決定処理を図4および図5により説明する。
図4は、ストロークシミュレータ31の遮断状態を判定するためのプログラム、図5は、ストロークシミュレータ31の連通状態を判定するためのプログラムで、これら制御プログラムが本発明におけるストロークシミュレータ遮断・連通検知手段に相当する。
まず図4の遮断状態判定プログラムを説明するに、ステップS21においては、遮断弁20,21がともに開状態か否かをチェックし、共に開状態ならステップS22で、ブレーキペダル4やピストン5,6の制動操作ストローク量検出値Stを読み込み、次のステップS23で、このストローク量検出値Stが、ストロークシミュレータの遮断状態を判定するための設定値(例えば5mm)以上か否かを判定する。
ステップS23でストローク量検出値Stが設定値(例えば5mm)以上であると判定する時は、ストロークシミュレータ31が遮断状態になっていることから、ステップS24においてストロークシミュレータ遮断フラグを1にセットする。
ステップS23でストローク量検出値Stが設定値(例えば5mm)以上でないと判定する時は、ストロークシミュレータ31が遮断状態になっていないことから、ステップS24をスキップして制御を終了させ、ストロークシミュレータ遮断フラグを現在のままに保持する。
ステップS21で遮断弁20,21の少なくとも一方が閉じていると判定する時は、ステップS25において、遮断弁20,21が共に閉じているか否かをチェックする。
遮断弁20,21の一方が開いている場合は、ストロークシミュレータ遮断フラグの決定が不要であるから、制御をそのまま終了してストロークシミュレータ遮断フラグを現在のままに保持する。
ステップS25で遮断弁20,21が共に閉じていると判定する場合は、ステップS26で、ブレーキペダル4やピストン5,6の制動操作ストローク量検出値Stおよびブレーキ液圧検出値Pmを読み込む。
次のステップS27では、前回も遮断弁20,21が共に閉じていたかどうかを判定し、そうでなければステップS28で、上記の制動操作ストローク量検出値Stおよびブレーキ液圧検出値Pmをそれぞれ、対応する初期値Sti,Pmiにセットした後、制御をステップS29に進め、そうであればステップS28をスキップして制御をステップS29に進める。
ステップS29では、制動操作ストローク量検出値Stの初期値Stiに対する偏差ΔSt(=St−Sti)、および、ブレーキ液圧検出値Pmの初期値Pmiに対する偏差ΔPm(=Pm−Pmi)を演算する。
次のステップS30においては、ストローク量偏差偏差ΔStに対するブレーキ液圧偏差ΔPmの圧力変化率(=ΔPm/ΔSt)を演算する。
更にステップS31では、この圧力変化率、つまり、ストローク量変化に対するブレーキ液圧変化の圧力変化率が設定値(例えば20Mpa/mm)以上である時をもってストロークシミュレータ31が遮断状態であると判定し、ステップS24に制御を進めてストロークシミュレータ遮断フラグを1にセットする。
なお図4には図示しなかったが、運転者がブレーキペダル4による制動操作中である間に、つまり、セカンダリピストン6が押し込まれている間に、遮断弁20,21が閉じられた時をもってストロークシミュレータ31が遮断状態であると判定するような判定を行うことも可能であることは勿論である。
次に図5に示した、ストロークシミュレータ31の連通状態判定プログラムを説明する。
先ずステップS41において、遮断弁20,21がともに閉状態か否かをチェックし、共に閉状態ならステップS42で、ブレーキペダル4やピストン5,6の制動操作ストローク量検出値Stを読み込み、次のステップS43で、このストローク量検出値Stが、ストロークシミュレータの連通状態を判定するための設定値(例えば1mm)未満か否かを判定する。
ステップS43でストローク量検出値Stが設定値(例えば1mm)未満であると判定する時は、ストロークシミュレータ31が連通状態になっていることから、ステップS44において、このことを示すようにストロークシミュレータ遮断フラグを0にリセットする。
ステップS43でストローク量検出値Stが設定値(例えば1mm)未満でないと判定する時は、以下のようにしてストロークシミュレータ31の連通状態を判定する。
先ずステップS45において、ブレーキ液圧検出値Pmを読み込み、次のステップS46において、このブレーキ液圧検出値Pmから所定のマップを基に、ストロークシミュレータ31が連通状態である時のストローク量特性値Strを読み出し、ステップS47において、ストローク量検出値Stとストローク量特性値Strとの間におけるストローク量偏差の絶対値Aを算出する。
次いでステップS48において、ストローク量偏差の絶対値Aが連通状態判定用の設定値(例えば5mm)未満であるか否かを判定し、A<設定値(例えば5mm)である時ストロークシミュレータ31が連通状態になっていることから、ステップS44において、このことを示すようにストロークシミュレータ遮断フラグを0にリセットする。
ステップS41で遮断弁20,21の少なくとも一方が開状態であると判定する時は、ステップS49において、ブレーキ液圧検出値Pmを読み込み、次のステップS50において、図3のステップS12におけるストロークシミュレータ連通用のマスターシリンダ増圧制御が行われているか否かをチェックする。
このマスターシリンダ増圧制御中である間、ステップS51において、ブレーキ液圧検出値Pmが、ステップS52で更新する最大値Pmmaxを越えているか否かにより、ブレーキ液圧検出値Pmが上昇中か否かを判定する。
上昇中であれば、ステップS52において最大値Pmmaxにブレーキ液圧検出値Pmをセットして更新する。
なお、ブレーキ液圧検出値Pmの上昇中は、セカンダリピストン6がストロークシミュレータ31を遮断状態にする押し込み位置からストロークシミュレータ31を連通状態にする常態位置に向け押し戻されている最中であることを意味し、換言すれば、セカンダリピストン6が未だ常態位置に戻っておらず、ストロークシミュレータ31が未だ連通状態になっていないことを意味する。
次のステップS53においては、ブレーキ液圧検出値Pmが最大値Pmmax未満か否かを判定する。
このPm<Pmmaxは、セカンダリピストン6が常態位置近くまで押し戻されて入口ポート13を開くことによりブレーキ液圧Pmが低下していることを意味する。
ステップS53では、ブレーキ液圧検出値Pmが最大値Pmmaxよりも所定圧(例えば5Mpa)だけ低い設定値未満に低下したか否かを判定し、Pm<Pmmax-5Mpa(所定圧)になった時をもって、セカンダリピストン6が常態位置まで押し戻され、ストロークシミュレータ31が連通状態になったとの判定により、ステップS44で、このことを示すようにストロークシミュレータ遮断フラグを0にリセットする。
以上説明したような、図4および図5に示すストロークシミュレータ31の遮断・連通判定手法によれば、ストロークシミュレータ31のストロークを検出するなどの手段を付加することなく、既存の検出値を利用して安価に当該判定を行うことができる。
図7および図8は本発明の他の実施例を示し、本実施例では、図1の2系統式のブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置において、ストロークシミュレータ31が遮断状態の時に遮断弁20,21が閉状態にされた場合の違和感のあるブレーキ操作フィーリングの解消を、ポンプ28が接続された側の回路17の系統はポンプ28からの液圧Ppによりブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として作動させ、他系統はマスターシリンダ3からの液圧Pmにより直接作動させることで、少なくとも上記違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関した問題を解消しようとするものである。
図7は、図2に代わる制御プログラム、図8は、図3に代わる制御プログラムである。
図7は、図2のステップS3およびステップS4をそれぞれ、ステップS6およびステップS7に置換したものに相当し、上記の片系統ブレーキバイワイヤ制御が必要かどうかを判定するためのプログラムである。
ステップS1で遮断弁20,21が共に閉状態にされていると判定し、且つ、ステップS2でストロークシミュレータ遮断フラグが1(ストロークシミュレータ31が遮断状態)と判定する時は、前記した違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関する問題を生ずることから、ステップS6において、この問題を解消すべく片系統ブレーキバイワイヤ制御指令を、片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグの1へのセットにより発する。
しかし、ステップS2でストロークシミュレータ遮断フラグが0(ストロークシミュレータ31が連通状態)と判定する時は、前記した違和感のあるブレーキ操作フィーリングに関する問題を生じないことから、ステップS7において、片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグを0にリセットし、片系統ブレーキバイワイヤ制御指令を発しない。
ステップS1で遮断弁20,21の少なくとも一方がOFFにより開いていると判定し、ステップS5でストロークシミュレータ遮断フラグが0(ストロークシミュレータ31が連通状態)と判定する場合、ステップS7を実行して片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグを0にリセットし、ピストン6が常態位置であるにもかかわらず無駄に片系統ブレーキバイワイヤ制御指令が発せられることのないようにする。
図8は、図7につき上記したように決定した片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグに応じ以下のごとくに、片系統ブレーキバイワイヤ制御を行うための制御プログラムであり、これによる処理を以下に説明する。
ステップS14においては、上記の片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグが1か否かにより片系統ブレーキバイワイヤ制御指令が発せられているか否かをチェックする。
ステップS14で片系統ブレーキバイワイヤ制御フラグが1(片系統ブレーキバイワイヤ制御指令が発せられている)と判定する時には、ステップS15において、イグニッションスイッチがONされた時の前記の状態に対し以下の制御を行う。
つまり、遮断弁21をOFFして開き、連通弁27をOFFして閉じる。
イグニッションスイッチがONされた時に、遮断弁20がONにより閉状態であることから、連通弁27の上記閉操作と相まって、後輪2を通常通りのブレーキバイワイヤ制御により制動させることができる。
つまり、ブレーキペダル4による制動操作がある時ポンプ28を駆動させ、これからの液圧Ppを、タンデムマスターシリンダ3からの液圧Pmの検出値に応じ、増圧弁22および減圧弁24の開閉(デューティー)制御により調圧して後輪ブレーキユニット液圧Pwrとなし、これにより後輪2を通常通りのブレーキバイワイヤ制御下に制動させることができる。
一方で前輪のブレーキ系は、上記の通り遮断弁21がOFFにより開状態にされ、連通弁27がOFFにより閉状態にされていることから、前輪1をマスターシリンダ3から回路19へのブレーキ液圧Pmにより直接制動することができる。
つまり、イグニッションスイッチがONされた時に増圧弁23がOFFにより開状態、減圧弁25がOFFにより遮断状態にされているため、マスターシリンダ3から回路19へのブレーキ液圧Pmは、開状態の遮断弁21および増圧弁23を経て前輪ブレーキユニット18に向かい、前輪ブレーキユニット液圧Pwfとして前輪1の制動を行うことができる。
以上の片系統ブレーキバイワイヤ制御によれば、2系統ブレーキ液圧出力回路17,19中における遮断弁20,21の閉時にストロークシミュレータ31がマスターシリンダ3に対し遮断状態である場合、ブレーキ液圧出力回路17の系統をポンプ28からの液圧Ppにより作動させるも、ブレーキ液圧出力回路19の系統をタンデムマスターシリンダ3からの液圧Pmにより直接作動させることから、タンデムマスターシリンダ3のピストン5,6をストロークさせ得ることとなり、制動操作ストロークのない違和感のあるブレーキ操作フィーリングとなる事態の発生を解消することができる。
しかして、タンデムマスターシリンダ3のピストン5,6は上記のようにストローク可能であっても、ピストン6の前後で作動液の往来が行われ得ないため、ピストン5,6は片系統ブレーキバイワイヤ制御の開始時における押し込み位置を越えて戻ることができない。
従って、ピストン6は常態位置に戻り得ず、結果として開閉弁32を開き得ず、ストロークシミュレータ31を連通状態に復帰させることができない。
この問題解決のため図8のステップS16では、上記の片系統ブレーキバイワイヤ制御中に、運転者がブレーキペダル4から足を放したか否かを、ブレーキスイッチ16のOFFか否かによりチェックし、運転者がブレーキペダル4から足を放すまでは片系統ブレーキバイワイヤ制御を繰り返し、運転者がブレーキペダル4から足を放した時にステップS17で、連通弁27をONにより開状態にすると共に遮断弁20をOFFにより開状態にする。
これにより、そして遮断弁21が片系統ブレーキバイワイヤ制御中に開状態にされていることから、また、ポンプ28がブレーキペダル4の釈放に呼応して通常制御により停止されることから、ピストン6の前後で作動液の往来が行われ得るようになり、ピストン5,6はリターンスプリング9,10により片系統ブレーキバイワイヤ制御の開始時における押し込み位置を越えて常態位置に戻される。
ピストン6の常態位置への戻りは開閉弁32をしてこれを開状態にし、ストロークシミュレータ31を連通状態に復帰させることができる。
かようにストロークシミュレータ31が連通状態にされると、図7のステップS2におけるストロークシミュレータ遮断フラグが図5につき前述したとおり0にされることから、図7のステップS7で片系統ブレーキバイワイヤフラグが0にされる結果、図8のステップS14は制御をステップS18に進め、ここで、遮断弁20,21をONして閉じる。
これによりブレーキ装置は、両系統ブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置として機能可能な状態に完全復帰することができる。
なお上記では、図1のブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に対して片系統ブレーキバイワイヤ制御を行うことから、ポンプ28に近い系統の後輪2をブレーキバイワイヤ制御により制動し、ポンプ28から遠い系統の前輪1をマスターシリンダ3からの液圧Pmにより制動する片系統ブレーキバイワイヤ制御としたが、
ポンプ28と同様な液圧源が前輪ブレーキ系にも設けられ、前後輪を個々の液圧源からの液圧によりブレーキバイワイヤ制御するようにしたブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置の場合、いずれの系をブレーキバイワイヤ制御し、いずれの系をマスターシリンダ3からの液圧Pmにより作動させるようにするかは任意である。
また、本発明の着想を適用するブレーキ装置は、図1のブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に限られず、例えば図9に示すように、遮断弁20,21と、増圧弁22,23との間において2系統ブレーキ液圧出力回路17,19にそれぞれ、ポンプ28からの共通な液圧Ppを逆止弁29,30を介して供給可能としたブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に対しても同様に適用することができ、同様の作用効果を達成することができる。
図9のようなブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置に本発明の着想を適用する場合、図1における連通弁27の制御が不要であり、制御の簡便化を図ることができて大いに好都合である。
本発明の一実施例になるブレーキ装置を示すシステム図である。 図1のブレーキ装置を、ストロークシミュレータ連通制御する必要があるか否かを判断するための制御プログラムを示すフローチャートである。 図1のブレーキ装置を、ストロークシミュレータ連通制御するために実行するマスターシリンダ増圧制御プログラムを示すフローチャートである。 ストロークシミュレータのマスターシリンダに対する遮断状態を検知するプログラムを示すフローチャートである。 ストロークシミュレータのマスターシリンダに対する連通状態を検知するプログラムを示すフローチャートである。 図3の制御による動作タイムチャートである。 本発明の他の例を示す、図2と同様な制御プログラムのフローチャートである。 同例における、片系統ブレーキバイワイヤ制御プログラムを示すフローチャートである。 図1のブレーキ装置の他に、本発明の着想を適用可能なブレーキバイワイヤ式ブレーキ装置を例示するシステム図である。
符号の説明
1 左右前輪
2 左右後輪
3 タンデムマスターシリンダ(初動手段)
4 ブレーキペダル
5 プライマリピストン(初動素子)
6 セカンダリピストン(初動素子)
7 プライマリピストン室
8 セカンダリピストン室
9,10 リターンスプリング
11 リザーバ
12,13 入口ポート
14,15 出口ポート
16 後輪ブレーキユニット
17 後輪用ブレーキ液圧出力回路
18 前輪ブレーキユニット
19 前輪用ブレーキ液圧出力回路
19を接続して設ける。
20,21 遮断弁
22,23 増圧弁
24,25 減圧弁
26 リザーバ回路
27 連通弁
28 ポンプ(別の液圧源)
29,30 逆止弁
31 ストロークシミュレータ
32 開閉弁

Claims (13)

  1. 運転者の制動操作により押圧される初動素子を有し、該初動素子の押圧力に応じたブレーキ液圧を出力する初動手段と、
    該初動手段から車輪ブレーキユニットへ至るブレーキ液圧出力回路を遮断する遮断弁と、
    該遮断弁を閉じた状態で、別の液圧源からの液圧を、前記初動手段および遮断弁間における前記ブレーキ液圧の検出値に基づき調圧して、前記遮断弁および前記車輪ブレーキユニット間におけるユニット液圧となす液圧制御手段と、
    前記初動素子のストロークに機械的に連動して前記初動手段との連通を絶たれた遮断状態になるが、該初動素子の常態位置では初動手段と連通された連通状態になって前記遮断弁の閉によっても前記運転者の制動操作にストロークを付与し得るようになすストロークシミュレータとを具えた車両のブレーキ装置において、
    前記遮断弁を閉じた時に前記ストロークシミュレータが前記遮断状態、連通状態であるのを検知するストロークシミュレータ遮断・連通検知手段を設け、
    この手段がストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記遮断弁を一旦開いて前記別の液圧源からの液圧により前記初動素子を前記常態位置に押し戻すよう構成すると共に、該初動素子の押し戻しにより前記ストロークシミュレータが前記連通状態になったのを前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が検知した時前記遮断弁を閉じるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  2. 前記初動手段が、運転者の制動操作力を入力される第1初動素子としてのプライマリピストン、および、このプライマリピストンを介して運転者の制動操作力を入力される第2初動素子としてのセカンダリピストンを有し、このセカンダリピストンに前記ストロークシミュレータを連動させて前記遮断状態、連通状態にするようにしたタンデムマスターシリンダであり、
    該タンデムマスターシリンダからの2系統ブレーキ液圧出力回路にそれぞれ前記遮断弁を挿入し、
    これら遮断弁および対応する車輪ブレーキユニット間において前記2系統ブレーキ液圧出力回路を相互に連通させる連通弁を設け、
    前記別の液圧源をこれら2系統に共通な1個の液圧源とし、
    前記両遮断弁を閉じ、前記連通弁を開いた状態で、前記液圧制御手段が前記共通な1個の液圧源からの液圧を調圧して2系統の前記ユニット液圧となすようにした、請求項1に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が、前記両遮断弁の閉時にストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記セカンダリピストンに係わる系統の遮断弁を一旦開くと共に前記連通弁を開いて前記共通な1個の液圧源からの液圧により前記セカンダリピストンを前記常態位置に押し戻すよう構成すると共に、該セカンダリピストンの押し戻しによりストロークシミュレータが前記連通状態にされたのを前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が検知する時、前記セカンダリピストンに係わる系統の遮断弁を閉じるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  3. 前記初動手段が、運転者の制動操作力を入力される第1初動素子としてのプライマリピストン、および、このプライマリピストンを介して運転者の制動操作力を入力される第2初動素子としてのセカンダリピストンを有し、このセカンダリピストンに前記ストロークシミュレータを連動させて前記遮断状態、連通状態にするようにしたタンデムマスターシリンダであり、
    該タンデムマスターシリンダからの2系統ブレーキ液圧出力回路にそれぞれ前記遮断弁を挿入し、
    これら遮断弁および対応する車輪ブレーキユニット間において前記2系統ブレーキ液圧出力回路にそれぞれ、前記別の液圧源からの共通な液圧を逆止弁を介して供給可能とし、
    前記両遮断弁を閉じた状態で、前記液圧制御手段が前記別の液圧源からの共通な液圧を調圧して2系統の前記ユニット液圧となすようにした、請求項1に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が、前記両遮断弁の閉時にストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記セカンダリピストンに係わる系統の遮断弁を一旦開いて前記別の液圧源からの共通な液圧により前記セカンダリピストンを前記常態位置に押し戻すよう構成すると共に、該セカンダリピストンの押し戻しによりストロークシミュレータが前記連通状態にされたのを前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が検知する時、前記セカンダリピストンに係わる系統の遮断弁を閉じるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  4. 運転者の制動操作に連動するプライマリピストン、および、このプライマリピストンを介して運転者の制動操作力を入力されるセカンダリピストンを有するタンデムマスターシリンダと、
    該タンデムマスターシリンダから車輪ブレーキユニットへ至る2系統のブレーキ液圧出力回路を個々に遮断する遮断弁と、
    これら遮断弁を閉じた状態で、別の液圧源からの液圧を、前記タンデムマスターシリンダおよび両遮断弁間における前記2系統ブレーキ液圧出力回路の液圧検出値に基づき調圧して、前記両遮断弁および前記車輪ブレーキユニット間における前記2系統ブレーキ液圧出力回路内のユニット液圧となす液圧制御手段と、
    前記セカンダリピストンのストロークに機械的に連動して前記タンデムマスターシリンダとの連通を絶たれた遮断状態になるが、該セカンダリピストンの常態位置ではタンデムマスターシリンダと連通された連通状態になって前記両遮断弁の閉によっても前記運転者の制動操作にストロークを付与し得るようになすストロークシミュレータとを具えた車両のブレーキ装置において、
    前記両遮断弁を閉じた時に前記ストロークシミュレータが前記遮断状態、連通状態であるのを検知するストロークシミュレータ遮断・連通検知手段を設け、
    この手段がストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記両遮断弁の一方を開いて対応するブレーキ液圧出力回路の系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させ、他方の閉状態の遮断弁に係わるブレーキ液圧出力回路の系統を別の液圧源からの液圧により作動させるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  5. 前記両遮断弁および対応する車輪ブレーキユニット間において前記2系統のブレーキ液圧出力回路を相互に連通させる連通弁を設け、
    前記別の液圧源を、前記2系統ブレーキ液圧出力回路に共通な1個の液圧源とし、
    前記両遮断弁を閉じ、前記連通弁を開いた状態で、前記液圧制御手段がこの共通な1個の液圧源からの液圧に対し前記の調圧を行って両系統のユニット液圧となすようにした、請求項4に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が、前記両遮断弁の閉時にストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記連通弁を閉じ、該連通弁の閉状態で前記共通な1個の液圧源からの液圧によりユニット液圧を発生させ得ない系統の遮断弁を開いて、該系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  6. 請求項5に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が、前記両遮断弁の閉時にストロークシミュレータの遮断状態を検知したことで、1系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させている間、運転者の制動操作力がなくなった時に、前記連通弁を開くと共に、他系統の遮断弁を一旦開いてタンデムマスターシリンダのピストンを常態位置に復帰させた後に、再度閉じるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  7. 前記両遮断弁および対応する車輪ブレーキユニット間において前記2系統のブレーキ液圧出力回路にそれぞれ、前記別の液圧源からの共通な液圧を逆止弁を介して供給可能とし、
    前記両遮断弁を閉じた状態で、前記液圧制御手段が該別の液圧源からの共通な液圧を調圧して両系統のユニット液圧となすようにした、請求項4に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段が、前記両遮断弁の閉時にストロークシミュレータの遮断状態を検知する場合、前記遮断弁の一方を開いて該当する系統をタンデムマスターシリンダからの液圧により作動させるよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段は、前記遮断弁が開状態の間における運転者の制動操作ストローク量を検出し、このストローク量検出値が設定値以上である時をもってストロークシミュレータが前記遮断状態であると判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  9. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段は、前記遮断弁が閉状態の間における運転者の制動操作ストローク量、および前記初動手段またはタンデムマスターシリンダの発生液圧を検出し、これら検出値から、ストローク量検出値の変化に対する発生液圧検出値の変化が設定値以上である時をもってストロークシミュレータが前記遮断状態であると判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  10. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段は、運転者が制動操作中である間に前記遮断弁が閉じられた時をもってストロークシミュレータが前記遮断状態であると判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段は、前記遮断弁が閉状態である間に運転者の制動操作量が微少設定値未満になった時をもってストロークシミュレータが前記連通状態であると判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  12. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段は、前記遮断弁が閉状態の間における運転者の制動操作ストローク量、および前記初動手段またはタンデムマスターシリンダの発生液圧を検出し、発生液圧検出値から求めた基準ストローク量とストローク量検出値との対比によりストロークシミュレータの前記連通状態を判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。
  13. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のブレーキ装置において、
    前記別の液圧源からの液圧により行われる前記初動素子の常態位置への押し戻しが終わり、前記初動手段がリザーバに通じて発生液圧を低下されきった時をもって、前記ストロークシミュレータ遮断・連通検知手段はストロークシミュレータが前記連通状態であると判定するよう構成したことを特徴とする車両のブレーキ装置。

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