図6は従来の使い捨ておむつの正面図である。
おむつ1は外面シート2と、液透過性の内面シート3と、両シート間に介在する吸収体4とから成る。前記外面シート2は外側に向けられるものであるため、尿が外側に洩れないよう不透液性で且つ通気性のよい樹脂シートで形成される。また、内面シート3は肌側に向けられて直接肌と接し、また尿が与えられる側となるため、尿などの水分を吸収体4に透過するよう透液性の不織布や軟質の多孔性シートなどの肌にやさしい素材で形成される。また、吸収体4としては、粉砕パルプまたは粉砕パルプと高吸水性ポリマーなどの混合物が使用される。
前記吸収体4は着用者の体の形に合わせて例えば砂時計形状に切断されて成形され、成形後の吸収体4が外面シート2と内面シート3とで挟まれる。外面シート2および内面シート3は吸収体4とほぼ同じ形状で、吸収体4より大きく成形されており、吸収体4の存在しない両端部でホットメルト型接着剤などにより互いに接着接合されている。
図6に示すおむつ1では、後面部1Cが着用者の尻に当てられ、中間部1Bが股間に当てられ、前面部1Aが腹側に当てられる。そして、後面部1Cにおいておむつ1の横方向に延出している翼片1bを図にて矢印(i)に示す方向に引いて前面部1Aに重ね合わせて、前面部1Aの掛止ファスナー6に翼片1bの掛止ファスナー7を掛止させておむつ1を着用する。
おむつ1の中間部1Bの横方向の端部にはおむつ1の縦方向に向かって延びる平板状のゴム5が、外面シート2と内面シート3の間にて伸ばされた状態でホットメルト型接着剤などにより部分的に接着されており、大腿部ギャザー1aが形成されている。このおむつ1を装着したとき、大腿部ギャザー1aは着用者の大腿部を弾性的に締め付けるようになっている。
このおむつが成人に使用される場合、おむつの大きさは幼児用おむつよりもかなり大きくなり、その分おむつ1個当たりに使用される材料が多くなるので、おむつの単価が高くなる。したがって、排尿の度におむつを取り替えることは経済的ではない。そこで、通常は尿取りパッド8が併用して使用され、排尿後にこの尿取りパッド8だけを取り替えるようにしている。
図6および図7において、符号8は男性用の尿取りパッドである。尿取りパッド8は不透液性の樹脂シートなどの外側シート9と不織布などの内側シート10と両シート間に設けられた吸収体11とが重ねられたシート状の積層体から成る。この積層体の幅方向および長辺方向の端部の吸収体が存在しない領域において、外側シート9と内側シート10がホットメルト型接着剤により接着されている。また、幅方向の端部には、長辺方向に延びる平ゴムなどの弾性体12が、外側シート9と内側シート10の間にて伸ばされた状態で部分的に接着されており、これによりギャザー8aが形成されている。そして、この積層体の長辺方向の端部において、外側シート9の表面には粘着剤などが塗布された粘着部13,14が設けられている。
この尿取りパッド8が着用されるとき、シート状の積層体は長辺方向の中央が頂点になるようにその両端が(ii)方向へ導かれて円錐形状に成形され、粘着部13の上に積層体の他端が重ね合わされて粘着部13において積層体の両端が接合され、図7(B)に示すような円錐形の袋状の尿取りパッド8に成形される。
この尿取りパッド8を男性の着用者に対し重ね合わせ部8bが前方に向くように装着し、尿取りパッド8を装着した状態で、おむつ1の中間部1Bにおいて内面シート3と粘着部14を粘着させて、おむつ1を着用する。
また、図7(A)に示すものと同じ構造のものが女性用の尿取りパッドとしても使用される。このときには、この積層体の長さ方向がおむつの長さ方向に合うよう、尿取りパッド8の外側シート9とおむつ1の内面シート3が向かい合うよう中間部1Bに重ね合わせ、粘着部13,14をおむつの内面シート3に粘着させて使用する。
おむつ1は、前述したように砂時計形状に成形されており、中間部1Bが前面部1Aおよび後面部1Cより幅狭に形成されているが、尿は主に中間部1Bで吸収されるため、中間部1Bは尿を吸収するためにある程度の幅寸法を要する。よって、中間部1Bは着用者の股間部の幅よりも広く形成されている。
このようなおむつが着用された状態では、前記中間部1Bが、横方向の両側から着用者の大腿部により押されて袋状に膨らみ、着用者の股間部とおむつの間に隙間が生じてしまう。よって、図7(A)(B)に示す尿取りパッドが使用されるものでは、中間部1Bの前方よりの膨らみ部分に尿取りパッドが位置するため、この尿取りパッドの体への押え力が弱くなる。そのため、着用者が動いたときなどに、おむつ内で尿取りパッドの位置がずれやすく、尿を効果的に吸収できなくなる。
特に前面部1Aと中間部1Bとの境界部分では、幅方向の寸法が極端に変化するため、中間部1Bが大腿部により押されたときに、中間部1Bと前面部1Aとの境界部分において主に前面部1A側に膨らみが発生しやすい。男性用の尿取りパッドは、前面部1Aと中間部1Bとの境界領域の前面部1A側に寄った位置に設置されるものであるため、特に男性の場合には、おむつによる尿取りパッドへの押さえ力が低下し、尿取りパッドの位置ずれが発生しやすい。
また、尿取りパッドを使用しないで直におむつを着用するときには、おむつと体の間に生じた隙間から、尿や便などの排泄物が横洩れしたり、また排泄物を一定の場所で保持できず着用者に不快感を与えるものであった。この場合も、前面部1Aと中間部1Bとの境界領域で主に前面部1A側に膨らみが発生しやすく、この部分からの排泄物の洩れが生じやすい。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、着用者の体の外形に沿って変形可能で、且つ着用者の体にフィットでき、また尿取りパッドを用いる場合には、この尿取りパッドの位置ずれを防止できるおむつを提供することを目的としている。
また、本発明は、特に前面部と中間部との境界領域において体から離れる膨らみが形成されにくいおむつを提供することを目的としている。
本発明は、吸収体の外側に外面シートが内側に透液性の内面シートが重ねられた積層体により形成され、着用者の腹側に当てられる前面部と、尻側に当てられる後面部と、股間部に当てられる中間部とを有するおむつにおいて、
前記前面部から中間部を経て後面部に至る方向を縦方向としたときに、
前記吸収体が設けられている領域の内部で、少なくとも前記中間部に、吸収体が存在しない部分または吸収体の肉厚を薄くした薄肉部が、縦方向に線状に延び且つ前記吸収体の前端と後端まで至らないように形成されており、
前記吸収体の外側には、前記吸収体が存在しない部分を横断する方向、または前記薄肉部を横断する方向へ、吸収体に対して収縮力を与える弾性部材が設けられ、この弾性部材は、縦方向の中心域よりも前記前面部側に寄った位置に部分的に設けられており、
前記前面部には、前記外面シートの表面に第1の止着部が設けられ、前記後面部の両側部に、前記第1の止着部に重ねられて接合される第2の止着部が設けられており、前記吸収体が存在しない部分または前記薄肉部が、前記第1の止着部と重なる領域に延びていることを特徴とするものである。
また、前記弾性部材は、前記前面部と中間部の双方にまたがる位置に複数本設けられていることが好ましい。
本発明は、内面シートの内側に尿取りパッド(補助パッド)が取り付けられる使い捨ておむつにおいて有効であり、前記尿取りパッドが取付けられる領域に前記弾性部材が配置されたものとなる。
本発明では、前記第1の止着部がおむつの横方向に長い長方形または帯状である場合に、吸収体が存在しない部分または薄肉部を止着部と同じ位置に形成することが有効である。
また、前記吸収体が存在しない部分を有するものであり、前記弾性部材は、吸収体と外面シートとの間に設けられ、前記吸収体が存在しない部分において、弾性部材と内面シートと外面シートとが互いに接着固定されている構造とすることが好ましい。
さらに、平面に展開された状態で、前記弾性部材は、中間部の縦方向の中心に向かって突状となるように湾曲して取り付けられたものとすることが可能である。
本発明では、吸収体が設けられている領域の内部に、吸収体が存在しない部分、あるいは吸収体の肉厚が他の部分よりも薄く形成された薄肉部のどちらかが線状に形成されるが、以下では、主に「薄肉部」を代表させて説明する。また本発明において縦方向とは、前面部から中間部を経て後面部に向かう方向または後面部から前面部に向かう方向であり、図2では図示上下方向が縦方向である。また横方向は、図2の左右方向である。
本発明では、おむつの縦方向に線状に延びる薄肉部が形成され、吸収体に対し線状の薄肉部に直交する方向への収縮力を与える弾性部材が設けられている。この弾性部材は例えば平ゴムなどであり、これがおむつの横方向へ延び且つ縦方向に間隔を開けて複数本(複数条)設けられる。
弾性部材は、吸収体の外側に設けられ、例えば吸収体と外面シートとの間において伸ばされた状態で、弾性部材と外面シートとが互いにホットメルト型接着剤などで接着される。
弾性部材により吸収体および外面シートなどに横方向へ収縮させる弾性力が作用し、吸収体および外面シートが横方向に収縮してフロントギャザーが形成される。このフロントギャザーが形成されると、中間部が着用者の股間に挟まれたときに、体から離れる方向への膨らみが発生しなくなり、着用者の股間にフィットしやすくなる。
すなわち、吸収体の剛軟度より弾性力の強い弾性部材を設けることにより、薄肉部と直交する方向に弾性部材による収縮力が作用し、図3(B)に示すように、薄肉部にて隣接する厚肉部どうしが寄せられ、厚肉部が横方向に収縮されて、吸収体がおむつの内側に向けてやや凸形状に変形し、おむつが体に密着するようになる。すなわち、おむつが体側から離れる方向に膨らみにくくなって、肌にフィットしやすくなる。特に、薄肉部において、弾性部材と外面シートと内面シートとが互いに接着されていると、弾性部材の収縮力が、内面シートおよび外面シートに直接に作用し、図3(B)に示すように隣接する厚肉部どうしが寄せられやすくなる。
本発明では、前記弾性部材で吸収体が横方向へ収縮されているフロントギャザーが、おむつの縦方向の中心域よりも前面部寄りの中間部の領域に部分的に限定されて設けられ、または前記フロントギャザーが、前面部と中間部との境界領域に形成され、好ましくは、前面部と中間部とに渡る領域(平面形状が砂時計形状の吸収体の外形状の変局部)に限定して部分的に設けられている。すなわち、これらの部分以外(この部分の前後)で少なくとも前面部と中間部には弾性部材が設けられていない。この種のおむつ(使い捨ておむつ)が体に装着されるとき、股間部での排尿位置は、男性、女性共におむつの縦方向の中心域よりも前面部寄りの位置である。したがって、本発明において、弾性部材が設けられている領域は、前記の排尿位置にほぼ一致する。
この排尿位置に相当する部分において、吸収体が外側から横方向へ部分的に収縮させられることにより、排尿位置にて吸収体が体に押し付けられるようにしてフィットするようになり、尿の洩れを有効に防止できる。特に、本発明のおむつは、内面シートの内側に尿取りパッド(補助パッド)が取付けられる組み合わせおむつにおいて有効な構造であり、尿取りパッドが取付けられる部分がちょうど前記弾性部材が設けられている位置に一致する。したがって、前記フロントギャザーの部分で尿取りパッドの部分でのおむつの膨らみが抑制され、尿取りパッドと体が密着し、尿取りパッドの位置ずれを防止することが可能となる。特に図2(A)に示すように、前面部と中間部の境界領域で、縦方向へ一定の範囲αにて弾性部材が設けられていると、男性と女性の双方において、フロントギャザーの領域が尿取りパッドを有効に押さえることができる。
また、弾性部材を設ける部分が、おむつの中心域よりも前面部寄りの部分、または前面部と中間部との境界部分に限定されているため、これ以外の部分では、吸収体が自然な状態で肌に当たるようになる。すなわち、尻部に当たる後面部、股に挟まれる中間部、さらに止着部が設けられる前面部と後面部との合わせ部などには、横方向の無理な収縮力が作用しないため、それぞれの部分におむつが自然にフィットし、特に尻部や排便部ではおむつが広い面積に広がって体にフィットすることになり、便の洩れなどを有効に防止できる。
さらに、図2(B)に示されているように、中間部と前面部との境界において、中間部から延びる薄肉部と、前面部から延びる薄肉部が互い違いに交じわるように構成しておくと、両薄肉部が設けられている部分(図2(B)のα部分)では、薄肉部の数が多くなって、薄肉部による吸収体の横方向への分割数が多くなり、この部分では弾性部材の収縮力を受けて吸収体が横方向へ大きく収縮できるようになる。よっておむつの中間部と前面部との境界付近で発生しやすい前方への膨らみを防止できる。
また、尿取りパッドを併用しない場合にも、おむつが股間部にフィットするものとなるので、尿や便の横洩れを防止でき尿や便をおむつ内に安定的に保持できる。また、縦方向に線状に形成された薄肉部は、尿をおむつの全域に広がるように導く機能をも有するため、尿などを吸収体で確実に吸収できるようになる。
また、図2(A)(B)に示すように、前面部15Aに線状の薄肉部23bが形成され、この薄肉部23bが、前面部15Aに設けられる第1の止着部19と同じ位置に延びるように構成することが好ましい。体に装着されるときに、前面部は横方向への収縮力を受け、この収縮力により第1の止着部19の表面が波状に変形しやすい。しかし、この第1の止着部19の部分に薄肉部23bが設けられていると、前面部にて横方向への収縮力が作用したときに、薄肉部23bの部分では横方向へ縮まるが、薄肉部23bと薄肉部23bとの間の部分では縮みや変形が小さくなり、止着部19の表面もほぼ平滑になりやすい。よって第1の止着部19と第2の止着部20との接合面積を十分に確保でき、止着強度を向上できる。特に、図2(A)に示すように、止着部19の近傍に横方向の弾性部材22が設けられていると、この弾性部材の収縮力が止着部19の部分に横方向への収縮力を与えやすいが、このときも止着部19の裏側に複数の薄肉部23bが形成されていることにより、止着部19の表面全域に波形の変形が生じにくく、止着可能な平面部を広く確保できる。
さらに、前記弾性部材をおむつの横方向の両端から中央に向かうにつれて、縦方向の中心部に向けて突状に形成すると、おむつ前面部を着用者の股間部の形に合わせて変形でき、フィット性がさらに向上する。
以上詳述したように本発明のおむつでは、前面部側または中間部と前面部との境界領域に弾性部材が設けられてギャザーが形成されており、このギャザーの形成領域により着用者の股間部を弾性的に押さえることができる。よって、おむつと股間部との間に隙間が生じず、おむつが股間部にフィットするものとなる。
そして、おむつの縦方向に、吸収体が存在しない部分または薄肉部が形成されているので、前記部分または前記薄肉部によりおむつが着用者の体の外形に沿って変形しやすく、また吸収体が横方向へ収縮して股間部が袋状に膨らむことを効果的に防止できる。
よって、例えばこのおむつと尿取りパッドが組み合わされるとき、尿取りパッドの位置ずれがおこらず、尿取りパッドを安定的に保持でき、尿取りパッドにより効果的に尿を吸収することができる。また、尿取りパッドを併用せずこのおむつのみを装着するときは、尿や便などの排泄物を確実に保持でき、横洩れ等の心配が生じないものとなる。
また、前記弾性部材は、前記尿取りパッドが取付けられる部分に設けられているため、それ以外の部分は自然の状態で肌に当たるようになり、身体全体への装着感が良好になる。
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のおむつの装着状態を示す斜視図、図2はこのおむつの展開平面図であり、(A)はおむつの表側の展開平面図、すなわち着用されたときに体の外側に向けられる面の展開平面図、(B)はおむつの裏側の展開平面図、すなわち着用されたときに着用者の体側に向けられる面の展開平面図である。また、図3(A)(B)は図2(B)または図4(B)のIII−III線での断面図である。
おむつ15は外面シート16と内面シート17と、この両シートの間に介在する吸収体18とから成る積層体により形成されている。前記外面シート16は体の外側に向けられるため尿などが外側に洩れないよう不透液性で且つ通気性の樹脂シートなどが使用されている。また、内面シート17は着用者の肌側に向けられて肌に直接触れるため、透液性の不織布などの肌に優しい素材が使用され、例えば目付け15〜25g/m2の不織布が使用される。
吸収体18としては、尿をよく吸収でき、しかも着用者に不快感を与えないよう粉砕パルプあるいは粉砕パルプと高吸水性ポリマーなどの混合物が使用されている。吸収体18に使用されるパルプとしては、例えば比重が100〜500g/m2と軽いものが一般的に使用される。前記吸収体18は中間部15Bにおいて多少幅が狭くなるよう砂時計形状にパターン積織法やカッティングなどにより成形される。図2(B)にてハッチングで示す領域が吸収体18が存在する領域である。
図2(A)および(B)に示されているように、おむつ15の前面部15Aには、おむつの横方向に延出する前翼片15a,15aが、後面部15Cには、横方向の両側部となる後翼片15b,15bが延出されて形成されている。
この前翼片15a,15a及び後翼片15b,15bは、外面シート16および内面シート17を横方向に延出させ、両シート16と17を吸収体18を介在させることなくホットメルト型接着剤24により互いに接着することにより形成されている。または、外面シート16及び内面シート17とは別に、樹脂シートまたは目付の大きい不織布を所定形状に切断して、水不溶性の接着剤で取り付けることにより前翼片15aと後翼片15bとを形成してもよい。
前面部15Aでは、外面シート16の表面に、止着手段の一例として掛止ファスナーを形成する第1の止着部19が縦方向に間隔を開けて固着され、後翼片15bの先端部(後面部15Cの両側部)には、同じく止着手段としての掛止ファスナーを形成する第2の止着部20が縦方向に間隔を開けて固着されている。おむつ15が装着されるとき、後面部15Cは着用者の尻側に当てられ、中間部15Bは股間部に当てられて、前面部15Aが腹側に当てらる。そして、後翼片15b,15bが前面部15Aの外面シート16上に重ね合わされて、第2の止着部20と第1の止着部19が掛止接合される。
図2(A)に示すように、第1の止着部19の縦方向の幅寸法の中心線間の間隔(縦方向の配置ピッチ)P1よりも、第2の止着部20の縦方向の幅寸法の中心線間の間隔(縦方向の配置ピッチ)P2の方が大きくなっている。また第1の止着部19,19の縦方向の終端部間の全長寸法H1よりも、第2の止着部20,20の縦方向の終端部間の間隔寸法H2の方が大きく形成されている。さらに、第1の止着部19の縦方向の幅寸法B1が、第2の止着部20の縦方向の幅寸法B2よりも十分に大きく形成されている。
例えば、成人用(老人用)のおむつの場合、第1の止着部19の配置ピッチP1は80mmで、第2の止着部20の配置ピッチP2は135mmである。P2/P1の比はほぼ3.1/1.9であり、P2/P1は3/2以上であることが好ましい。また、寸法H1は130mmで、H2は165mmであり、その差は35mmである。さらに幅寸法B1は50mmで、幅寸法B2は30mmであり、B1/B2は5/3またはそれ以上であることが好ましい。さらに第1の止着部19はおむつの横方向に長辺が向けられた長方形または帯状であり、その長さは例えば235mmである。
第1の止着部19は横方向の長さ寸法が大きいため、着用者の胴回りの大きさに合わせて、止着部19と20の接合位置を変えて着用することが可能である。さらに、第2の止着部20の配置ピッチP2が第1の止着部19の配置ピッチP1よりも大きく、第2の止着部20の縦方向の終端部間の寸法H2が、第1の止着部19の縦方向の終端部間の寸法H1よりも大きいため、装着状態では、図1に示すように、必然的に、後翼片15bの縁部が縦方向に対して斜めに設置され、第2の止着部20と20が縦方向に対して斜めに向けられて第1の止着部19に止着される。
したがって、図1に示すように、縦方向の上側に位置する第1の止着部19と第2の止着部20との止着位置を、縦方向の下側(中間部15B側)に位置する第1の止着部19と第2の止着部20との止着位置よりもおむつの内側に寄せた状態で、第2の止着部20が第1の止着部19の縦方向のほぼ中心に止着できるようになる。よって、装着状態のおむつは、腰回りで太く、胴回り(ウエスト)で細くなり、体にフィットしやすく、またウエストの部分で身体に確実に締め付けることができるようになる。
また、この実施の形態では、第2の止着部20が、先端に掛止頭部を有するキノコ形状または鉤形状の多数の掛止突体が形成された樹脂製の掛止シートであり、第1の止着部19は、ポリエステル繊維によりトリコット編みされた織布または不織布である。なお、第2の止着部20として掛止シートの代りに粘着テープが設けられ、第1の止着部19の織布または不織布の代りにフィルムが設けられ、装着状態で粘着テープがフィルム表面に粘着させられるものであってもよい。
おむつ15の中間部15Bの両縁部には、例えば2本の平ゴム21,21が縦方向に伸ばされた状態で、外面シート16と内面シート17の間にて、両シートに対しホットメルト型接着剤などにより接着されている。この平ゴム21,21により縦方向が収縮させられて皺が寄り、大腿部ギャザー15cが形成される。この大腿部ギャザー15cにより、おむつは外面シート16側が凸状の立体形状となる。おむつ15を装着したときに、この大腿部ギャザー15cが着用者の足の付け根を適度に締め付け、大腿部とおむつの間に隙間が生じるのを防止し、おむつが着用者の大腿部にフィットできるものとなっている。
図2(A)に示されているように、おむつ15の中間部15Bでの縦方向の中心域よりも前面部15A側の部分、さらに詳しくは中間部15Bから、前記中間部15Bと前面部15Aとの境界部分にかけての領域αには、おむつの横方向に延びる平ゴムなどの弾性部材22が、縦方向に間隔を開けて複数本設けられている。この弾性部材22は、吸収体18の外側で且つ外面シート16の内面に設けられ、伸び率が、1.5倍ないし3倍、好ましくは2倍ないし2.5倍となるように伸ばされた状態で外面シート16にホットメルト型接着剤24で接着固定されている。弾性部材22と外面シート16は、ホットメルト型接着剤24により弾性部材22の全長にわたって接着され、または弾性部材22と外面シート16はホットメルト型接着剤24で部分的に接着されている。なお、図3(A)に示すように、吸収体18に吸収体が存在しない部分が設けられる場合は、弾性部材22と内面シート17と外面シート16とが、互いに前記接着剤24により接着固定される。
前記弾性部材22により領域αにおいておむつが横方向に収縮させられ、フロントギャザーGが形成される。図2に示す例では、前記フロントギャザーGが中間部15B、および中間部15Bと前面部15Aとの境界部にかけて形成されている。図6および図7(B)に示される男性用の尿取りパッド8が併用される場合、弾性部材22が設けられている領域αは、前記尿取りパッド8が装着される領域にほぼ一致している。この場合、中間部15Bの横方向の中心線Oから前面部15Aにて最も端に設けられた弾性部材22までの距離(図2(A)にてMで示す)は250mm程度であることが望ましい。
図2(B)に示されているように、おむつ15の吸収体18が設けられている領域のほぼ全面に、複数本の薄肉部23a,23b,23cが形成されている。薄肉部23aは、中間部15Bにて縦方向に直線状に延び、横方向に一定の間隔を開けて3条形成されている。また薄肉部23bと23cは、前面部15Aと後面部15Cにおいて、縦方向に直線状に延び、また横方向に一定の間隔を開けて4条ずつ設けられている。また中間部15Bに設けられた薄肉部23aと、前面部15Aおよび後面部15Cに設けられた薄肉部23b,23cとは、互いに分離されており不連続である。
また、中間部15Bに設けられている3条の薄肉部23aと、前面部15Aに設けられた4条の薄肉部23bは、中間部15Bと前面部15Aとの境界部にて、薄肉部の終端部どうしが互い違いに入り込むように形成されており、この部分では薄肉部23aと薄肉部23bとが横方向に互いに重なった位置に形成されている。なお、薄肉部23aと薄肉部23bとが互い違いに交じり合う部分は、前記弾性部材22が設けられてフロントギャザーGが形成される領域αの中に位置している。なお、薄肉部23aと薄肉部23bとが互い違いに形成される部分は、中間部15Bと前面部15Aとの境界に正確に一致している必要はなく、境界部付近であれば、中間部15B側に寄った位置であってもよいし、前面部15A側に寄った位置であってもよい。また薄肉部23aと薄肉部23bが互い違いとなる部分は、前記領域α内であることが好ましいが、弾性部材22による収縮力を受ける場所であれば領域αから若干外れていてもよい。
さらに、前面部15Aでは、横方向に帯状に延びる縦方向に間隔を開けた第1の止着部19が設けられているが、前面部15Aに形成されている前記薄肉部23bは、第1の止着部19が設けられた領域の裏側に重なるように延びている。
このおむつ15では、縦方向に直線状に延びる薄肉部23a,23b,23cが設けられ、薄肉部23aと23bが形成されている領域αにおいて、弾性部材22により前記薄肉部と直交する方向への弾性収縮力が与えられている。
この弾性収縮力が吸収体18の剛軟度より大きいとき、厚肉部がおむつの横方向両側から寄せられ、薄肉部23aを挟んで隣合う厚肉部どうし、または図3(B)に示すように吸収体が存在しない領域の両側の厚肉部どうしが密着し、さらに横方向に収縮して厚肉部における吸収体18がおむつの内側(着用者の体側)に向けて凸形状に変形する。これにより、領域αにおいておむつは体に密着し、おむつと体との間に空間が形成されることはない。このようにおむつを体にフィットするように変形させるためには、例えばJIS P 8125で測定した吸収体18の剛軟度が3〜20g・cmのとき、2倍の長さに伸張したときの弾性力が10g以上である弾性部材を2本以上設ければ、弾性部材による弾性収縮力が吸収体の剛軟度を上回り、厚肉部において吸収体を収縮させることができる。但し、弾性収縮力が強すぎるとおむつの幅寸法が小さくなりすぎてしまうので、弾性部材一本当たりの弾性力の上限は100g程度で、本数は弾性部材の弾性力によって異なるが、通常2本ないし50本程度が好ましい。
また、図2(B)に示すものでは、弾性部材22の弾性力が与えられる領域αに、中間部15B側の薄肉部23aの終端と、前面部15A側の薄肉部23bの終端の双方が位置し、しかも両薄肉部23aと23bが不連続であるため、中間部15Bと前面部15Aの境界部では、吸収体18の分割数が多くなるため、この部分でおむつが横方向へ収縮しやすくなり、前方へ膨らみにくくなる。
薄肉部23aと23bとが互い違いに入り込む形状ではなく、図4(B)に示すように、両薄肉部23aと23bの終端部どうしが縦方向の上下方向へ若干離れていても、両薄肉部23aと23bが、弾性部材22による弾性収縮力の影響を受ける位置に設けられていれば、αの領域において中間部15Bと前面部15Aとが横方向へ収縮しやすくなり、吸収体18の前方への膨らみを防止できる。しかし、図2(B)に示すように、中間部15Bと前面部15Aとの境界領域において、3条の薄肉部23aと4条の薄肉部23bとが互い違いに入り込むように交じり合っている構造とすると、この部分では、吸収体18が横方向へ8分割されることになるため、弾性部材22の収縮力を受けた吸収体18が横方向に寄せられてさらに収縮しやすくなる。
したがって、おむつの吸収体18が体にフィットし、吸収体18と体の間に隙間が形成されなくなり、尿や便の洩れを防止できる。また中間部15Bの薄肉部23aにより、おむつ15を直に着用するときなどに尿が一箇所に集中することが防がれ、前面部および後面部の吸収体に尿を分散させやすくなる。
弾性部材22による収縮力を受ける前記中間部15Bの薄肉部23aおよび前面部15Aの薄肉部23bは、隣合う薄肉部間の間隔(図2(B)にてLで示す長さ)が、通常10ないし100mm程度で、薄肉部23a,23bの幅(図2(B)にlで示す長さ)が1ないし15mmとなるよう形成される。この数値の範囲内で薄肉部23a,23bを形成すると、着用者の体の外周に沿って変形しやすく、且つ尿の分散性のよいおむつとなる。
このおむつ15が成人男性に装着されるときには、通常図7(A)(B)に示されているような尿取りパッド8が併用される。この尿取りパッド8は、図7(A)に示すシート状のものが、外側シート9が外側に向くよう円錐形状に成形されて、図7(B)に示す袋状にされ、重ね合わせ部8bが体の前面部になるよう着用される。そして、尿取りパッド8を着用した状態で、おむつ15の後面部15Cを尻側に、中間部15Bを股間部に、前面部15Aを腹側に当て、尿取りパッド8の粘着部14をおむつ15の前面部の内面シート17に粘着接合し、止着部19と20とを掛止しておむつ15が装着される。このとき、おむつ15は薄肉部23a,23b,23cにより着用者の体の外周に沿って変形し、さらに前面部15Aと中間部15Bの境界の領域αは尿取りパッド8の形状に合わせて変形する。そしてフロントギャザーGが着用者の股間部に当たり、尿取りパッド8の外形に合わせて伸張して弾性的に尿取りパッド8にフィットし、尿取りパッド8を着用者の体から外れないよう押さえることができる。したがって、尿取りパッド8が位置ずれせず、尿取りパッド8によって効果的に尿を吸収できる。
また、このおむつ15が女性に使用されるときには、前記尿取りパッド8は図7(A)に示されるシート状のままで、おむつ15の中間部15Bの内面シート17上に重ねられ、これが装着される。前記フロントギャザーGは、この尿取りパッド8に当てられるので、尿取りパッド8をフロントギャザーGにより安定的に保持できるものとなる。また女性用の尿取りパッドが用いられる場合には、弾性部材22が図2(A)よりもさらに中心線O寄りに設けられることが好ましい。
このように尿取りパッド8が用いられると、股間部および腰の部分で、装着されたおむつに膨らみが形成されるが、前記のように、このおむつでは、第2の止着部20と20がおむつの縦方向に対して斜めに向けられた状態で、第1の止着部19,19に止着されるため、前記の膨らみがあっても、ウエスト部分で細くでき、ウエストの部分で止着部19と20とで、おむつを確実に締め付けることが可能である。
また、尿取りパッドを使用せず、おむつ15のみを装着するときには、フロントギャザーGが着用者の股間部の形に沿って変形し、股間部に弾性的にフィットする。したがって、着用者の体とおむつ15との間に隙間が生じず、尿や便の横洩れを防止でき、尿や便をおむつ15内に確実に保持できる。また、前記薄肉部23a,23b,23cにより、尿を中間部にのみに集中させることなく分散できるので、おむつ15の吸収性能を向上できる。
さらに、図2(A)(B)に示すように、前面部15Aに形成された薄肉部23bは、第1の止着部19と重なる位置にまで延びている。前面部15Aに後翼片15b,15bが重ねられて止着部19と20とが止着されるとき、前面部15Aの表面に変形力が与えられやすい。特に図2(A)に示すように、第1の止着部19が設けられた部分の近傍に弾性部材22によるフロントギャザーGが設けられていると、この弾性部材22の収縮力が第1の止着部19の部分に作用して、第1の止着部19が横方向への収縮力を受けやすくなる。
この収縮力に対し、第1の止着部19が設けられている部分では、薄肉部23bの幅が縮まるが、薄肉部23bと薄肉部23bとの間の吸収体が存在している部分では横方向に若干縮まるにしろ、その表面はほぼ平坦となる。よって第1の止着部19は、薄肉部23bと薄肉部23bとの間の部分で平坦な部分が残りやすくなり、この部分が止着領域として比較的広くなり、第2の止着部20をこの平坦部にて第1の止着部19に接合することにより、止着強度を高く確保できる。
図4(A)(B)は、前述のように、中間部15Bの方向へ延びる薄肉部23aと、前面部15Aの方向へ延びる薄肉部23bの終端部どうしが、縦方向へ若干離れ、縦方向へ所定の幅Haの領域となる薄肉部の不存在部23dが形成された形態を示している。なお、この不存在部23dは、弾性部材22が設けられてフロントギャザーGが形成されているαの領域の内部に位置している。
薄肉部23aまたは23bが形成されている部分では、弾性部材22による横方向への収縮力により、陥没が形成され、内面シート17に凹部が形成され、内面シート17の凹凸が顕著になる。しかし、薄肉部の不存在部23dが設けられていると、この部分では内面シート17の凹凸がやや緩やかになり、比較的平面領域を広く確保できる。図7(A)(B)に示すように、尿取りパッド8がフロントギャザーGの内側に設置されるとき、粘着部14を前記不存在部23dに粘着させると、薄肉部が存在していないために、粘着部14と内面シート17とが対面する確率(対面する面積)を広くできる。したがって、尿取りパッド8の接着強度を高くでき、パッドのずれを防止できる。
しかも、前記のように、薄肉部の不存在部23dの前後には薄肉部23aと23bが存在しているため、弾性部材22でおむつを横方向へ収縮させる機能を大きく阻害することはない。
また薄肉部の不存在部23dは、排尿位置に形成されるため、不存在部23dに多くの吸収体18が存在することにより、尿の吸収効果の低下を防止できる。
図5は本発明のおむつの他の実施の形態を示すものであり、おむつ15を展開して外側から見た図である。この例では、弾性部材22がおむつの両端から中央に向かうにつれて、おむつ15の中間部15Bの中心方向へ突出するように湾曲して取り付けられている。このように弾性部材22を形成すると、おむつ15は尿取りパッド8および着用者の股間部の形により合うように変形し、さらにフィット性の高いものとなる。
また図5においても、第1の止着部19の縦方向の配置ピッチP1よりも、第2の止着部20の縦方向の配置ピッチP2の方が大きく、また第1の止着部19の終端部間の寸法H1よりも、第2の止着部20の終端部間の寸法H2の方が大きく、さらに第1の止着部19の縦方向の幅寸法B1が第2の止着部20の縦方向の幅寸法B2よりも十分に大きくなっている。
よって、身体に装着されたときに、必然的に胴回り部分(ウエスト)の部分で細くでき、胴回り部分におむつを確実に締め付けることができる。
また図5でも前面部15Aにおいて、薄肉部23bが、第1の止着部19と重なる領域に形成されている。
以上、本発明をオープンタイプのおむつを例にとり説明したが、本発明の薄肉部23a,23b,23cを設けたことによる効果およびフロントギャザーを設けたことによる効果に関しては、パンツ型のおむつに形成しても効果を発揮する。また、大人用のみならず幼児用のおむつに形成してもよい。