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JP3901421B2 - 臓器吻合装置 - Google Patents

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JP3901421B2 JP2000072550A JP2000072550A JP3901421B2 JP 3901421 B2 JP3901421 B2 JP 3901421B2 JP 2000072550 A JP2000072550 A JP 2000072550A JP 2000072550 A JP2000072550 A JP 2000072550A JP 3901421 B2 JP3901421 B2 JP 3901421B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体の例えば隣接する臓器の壁どうしを一対の磁石どうしの吸着により強く挟圧して局所的にアポトーシスを起こさせ、臓器どうしを連通させる連通孔(通路)と、この連通孔周りに吻合を形成させることによりバイパスを形成する臓器吻合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、被検体の腸などの臓器の吻合は、その腫瘍や潰瘍、炎症、外傷などにより腸または胆管の狭窄が進行したときに、その腸の内容物や胆管の胆汁を再び流すために例えば2つの中空腸間にバイパス(連通孔)を形成するためによく行われている。
【0003】
この種の吻合のために使用される従来の臓器吻合装置の一例としては、特開平9−10218号公報に記載されたものがある。これは自動的に自己芯出しが可能な一対の磁石を、吻合させようとする2つの臓器壁の両側に配置し、これら大小一対の磁石どうしの吸着により、これら臓器壁を両側から強く挟んで圧迫(挟圧)して局所的にアポトーシスを起こさせ、連通孔(瘻孔)と吻合を形成させるものであり、小磁石の外周縁を、吻合を促進させるための鋭い切断縁に形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の臓器吻合装置では、小磁石の外周縁を鋭い切断縁に形成しているので、この小磁石を所定の臓器内に挿入して所定の部位に誘導し配置するまでに他の多くの臓器を切断縁により傷つけてしまうという危険性を孕んでいる。
【0005】
また、一対の磁石の吸着により臓器壁に連通孔と吻合を形成した後に、この連通孔形成を保持するための手段が全く無いので、その吻合後は、例えばドレナーチューブをこの臓器吻合装置とは別途に体内に挿入し、その連通孔まで誘導してこの連通孔内に挿入し、その挿入状態を吻合が完了するまでの例えば約3ケ月程度維持しなければならないという煩雑なステップが別途必要になる。
【0006】
さらに、一対の磁石の吸着面のN極面とS極面とは、各々1面ずつしか無いので、これら吸着面どうしを、臓器壁を介して高精度で対向配置しなければ同極どうしで反発してしまい。相互に吸着できず、これら磁石の高い配置精度が要求され、一対の磁石の吸着が必ずしも容易ではないという課題がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、臓器内の所定の部位に一対の磁石を他の臓器を殆ど傷つけることなく安全に配置して吻合を形成させることができると共に、その吻合後の連通孔形成を簡単かつ確実に保持することができる臓器吻合装置を提供することにある。
【0008】
また、他の目的は、臓器内の所定の部位において一対の磁石の吸着面どうしの位置合わせを簡単かつ確実に行うことができる臓器吻合装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、被検体の相互に吻合させようとする臓器の所定部位に、これらの各臓器壁を介して対向配置されて相互に吸着されることにより、これら臓器壁間を連通せしめる連通孔を備えた吻合部を形成する一対の磁石と、これら一対の磁石の一方に、着脱自在に取り付けられる可撓性を有するガイドワイヤーと、このガイドワイヤーを内部に挿通させた状態で被検体内に挿入されて上記一方の磁石のガイドワイヤー取付面に当接してこのガイドワイヤーを一方の磁石から取り外す際にこの磁石を支持する一方、上記吻合部の連通孔内に挿入されてこの連通孔の形成を維持するガイドチューブと、を具備していることを特徴とする臓器吻合装置である。
【0010】
この発明によれば、被検体の各臓器壁を介して対向配置された一対の磁石どうしが吸着されると、これら一対の磁石により臓器壁がその両側から挟まれて強く圧迫(挟圧)されるので、やがてアポトーシスを起こし、これら臓器壁どうしを連通せしめる連通孔が形成されると共に、その連通孔の外周縁が癒着して吻合が形成され、バイパスが形成される。この後、ガイドチューブとガイドワイヤーとが一方の磁石から取外される。さらにこの後、ガイドチューブの先端部が吻合部の連通孔内に挿通され、吻合が完了するまでその挿通状態で留置される。これにより、吻合部の連通孔の形成が維持される。一方、相互に吸着された状態で取外された一対の磁石は排便などと共に体外に排出される。
【0011】
したがって、この発明によれば、磁石の外周縁を従来例のような鋭い切断縁に形成していないので、この磁石を所定の臓器内に挿入して所定の部位に誘導し配置するまでに他の多くの臓器を切断縁により傷付けてしまうという危険性を有効に防止することができる。
【0012】
また、一対の磁石の吸着により臓器壁に連通孔と吻合を形成して連通孔を形成した後は、この吻合部近傍の被検体内に一方の磁石と共に既に挿入されているガイドチューブを、直ちに吻合部の連通孔内に挿入し、その挿入状態を吻合が完了するまで保持する。これにより、この連通孔の形成を簡単に保持することができる。このために、従来例のように吻合後に、例えばドレナーチューブを臓器吻合装置とは別途に被検体内に挿入し、さらに吻合部の連通孔まで誘導して挿入し、その挿入状態を吻合が完了するまでの例えば約3ケ月程度体内に留置するなどの煩雑なステップを省略することができる。
【0013】
さらに、例えば被検体などに飲み込まれる他方の磁石の吸着面は、複数面有するので、一対の磁石どうしの吸着を容易に行わせることができる。
【0014】
請求項2の発明は、被検体の体外から体内に挿入されて、内部にガイドワイヤーを取り付けた磁石を挿通させることにより、この磁石を臓器の所定部位の近傍に案内する筒状のシースを具備していることを特徴とする請求項1記載の臓器吻合装置である。
【0015】
一方の磁石はシース内を単に挿通させることにより体外から体内の所定の臓器の部位の近傍に案内させることができ、その案内の容易性向上と案内精度の向上とを共に図ることができる。
【0016】
請求項3の発明は、上記一方の磁石は、他方の磁石よりも大きい吸着面を有することを特徴とする請求項1または2記載の臓器吻合装置である。
【0017】
この発明によれば、一方の磁石は、他方の磁石よりも大きい吸着面を有するので、体内の所定部位における他方の磁石との吸着を簡単かつ確実に行うことができ、その操作時間を短縮することができる。このために、被検体の体力の消耗を低減することができる。
【0018】
また、吻合部の連通孔は小さい方の磁石の吸着面とほぼ同じ大きさに形成されるので、大きい方の磁石がこの連通孔を通って小磁石の臓器側へ移動するのを防止することができる。
【0019】
請求項4の発明は、一対の磁石は、ほぼ同大に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の臓器吻合装置である。
【0020】
この発明によれば、大腸と小腸の腸管どうしの吻合の場合には相互にほぼ同形同大の磁石が使用され、吻合完成後、これら磁石は例えば相互に吸着したままの状態で大腸側へ移動するように誘導されて大便等と共に体外に排出される。
【0021】
請求項5の発明は、磁石の表面は、耐酸性膜及び抗血栓性膜の少なくとも一方によりコーティングされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の臓器吻合装置である。
【0022】
この発明によれば、磁石の表面が耐酸性膜によりコーティングされているので、体内の酸性液などにより、酸化して変質ないし劣化するのを防止することができる。また、磁石の表面が抗血栓性膜によりコーティングされているので、血中の磁石による血栓の生成を防止することができる。
【0023】
請求項6の発明は、磁石が、希土類元素の磁石であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の臓器吻合装置である。
【0024】
この発明によれば、磁石が希土類元素の磁石であるので、磁力を強化することができる。このために、吻合を形成しようとする臓器壁の厚さが厚い場合でも磁石どうしの吸着を簡単かつ確実に行うことができ、その操作時間を短縮することができる。
【0025】
また、磁力の強い一対の磁石どうしが吸着するので、これら磁石により強く挟圧される臓器壁のアポトーシスと、臓器壁どうしを連通せしめる連通孔及びこの連通孔周りの吻合を形成させる確実性を向上させることができる。
【0026】
請求項7の発明は、他方の磁石は、被検体により飲み込まれてから誘導用の磁石により体外から誘導されて臓器の所定部位に案内されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の臓器吻合装置である。
【0027】
この発明によれば、他方の磁石が被検体により飲み込まれた後、この磁石を誘導用の磁石により体外から臓器の所定部位に案内することができるので、他方の磁石の位置決め作業の簡単化と位置決め精度の向上を共に図ることができる。
【0028】
請求項8の発明は、誘導用磁石は、N極とS極を軸方向両端に設けた磁石本体の軸方向中間部に、柄を直交方向に設けてなることを特徴とする請求項7記載の臓器吻合装置である。
【0029】
この発明によれば、磁石本体の軸方向両端にN極とS極とを設けているので、その柄を中心軸回りに回動させることより、磁石本体の磁極を体内の磁石に向けて適宜吸着または反発させて体内の所定部位に誘導することができる。
【0030】
請求項9の発明は、他方の磁石は、内視鏡の把持手段により着脱自在に把持されて臓器の所定部位に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の臓器吻合装置である。
【0031】
この発明によれば、他方の磁石を内視鏡の把持鉗子等の把持手段により着脱自在に把持して臓器の所定部位に配置するので、他方の磁石の体内での搬送を内視鏡により監視しながら臓器の所定部位に配置することができる。このために、他方の磁石の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0032】
請求項10の発明は、内視鏡の把持手段は、非磁性体よりなることを特徴とする請求項9に記載の臓器吻合装置である。
【0033】
この発明によれば、内視鏡の把持鉗子等の把持手段が非磁性体よりなるので、この内視鏡の把持手段に磁石が吸着して把持手段から磁石を取外せなくなるのを防止することができる。
【0034】
請求項11の発明は、他方の磁石は、内視鏡の把持手段により把持されるための非磁性の柔軟な把持具を備えていることを特徴とする請求項8または9に記載の臓器吻合装置である。
【0035】
この発明によれば、他方の磁石は、内視鏡の把持手段により把持されるための非磁性の柔軟な把持具を備えているので、他方の磁石の非磁性保持具を、内視鏡の把持手段により簡単かつ確実に把持することができる。しかも、他方の磁石の保持具が柔軟であるので、被検体内の臓器を傷付けるのを防止することができる。
【0036】
請求項12の発明は、臓器が、消化器、血管、尿管、膀胱のいずれかであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の臓器吻合装置である。
【0037】
この発明によれば、請求項1〜11のいずれか1項に記載の臓器吻合装置を消化器、血管、尿管、膀胱のいずれかの臓器の吻合の形成に使用することができる。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。なお、これらの図において、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0053】
図1は本発明の第1の実施形態に係る臓器吻合装置1の構成を示す部分縦断面図である。この臓器吻合装置1は、角部を面取りした円柱状の磁石2と、この第1の磁石2の吸着面2aよりも大きく、かつ磁極を異にして磁気的に吸着し合う吸着面3aを有し、角部を面取りした偏平円柱状の第2の磁石3とを備えている。第2の磁石3は、その吸着面3aの裏面に、この吸着面3aとは磁極を異にする吸着面3bを形成しており、複数の吸着面3a,3bを備えている。これら第1,第2の磁石2,3は共に例えば希土類元素磁石からなり、これらの外面には耐酸性膜または耐硫化膜と、抗血栓性膜の少なくともいずれかをそれぞれコーティングしている。
【0054】
第1の磁石2は、その吸着面2aの裏面2bの中央部に、可撓性を有するガイドワイヤー4の先端部(図1では右端部)を若干の遊びをもって挿入せしめる挿入凹部5を形成し、この挿入凹部5内にガイドワイヤー4の先端部を挿入せしめて、例えば仮止め用の接着剤6を充填して着脱自在に取り付けている。例えば仮止め用の接着剤6としては、時間の経過と共に、あるいは体内の酸性液や体液などにより、その接着力を除々に低減させる接着剤を使用してもよい。
【0055】
そして、円筒状のガイドチューブ7は、可撓性を有する例えばドレナージチュブとほぼ同様の組成よりなり、ガイドワイヤー4を一方の磁石2の挿入凹部5から引き抜くときに、内部にガイドワイヤー4を挿通させた状態で先端面が一方の磁石2の裏面2bに当接して、この裏面2bを軸方向で支持すると共に、後述するように形成された吻合部の連通孔内に挿入されて、その連通孔の形成の維持を図るものである。
【0056】
なお、ガイドワイヤー4は、第1の磁石2の吸着面2aの裏面2bに着脱自在に取り付ければよく、これら仮止め用の接着剤6によらず、係止機構により着脱自在に取り付けるように構成してもよい。また、第1の磁石2の吸着面2aの方を第2の磁石3の吸着面3aよりも大きくしてもよい。
【0057】
図2は総胆管9に狭窄10が発生した場合に、この臓器吻合装置1を使用することにより、狭窄10の上流側の総胆管9の一部壁9aを小腸11の一部壁11aに連通せしめる連通孔(バイパス)を吻合により形成する場合の総胆管9の狭窄10周りの臓器の部分縦断面図である。
【0058】
この場合は、総胆管9の閉塞10よりも上流側であって、かつ吻合させようとする一部壁9aの内側に、第1の磁石2を配置する一方、この総胆管9の一部壁9aの近傍に位置する小腸11の一部壁11aの内側に、第2の磁石3を配置する。
【0059】
すなわち、まず、硬質の円筒管などからなるシース8を、例えば被検体の脇腹などの腹壁12に開けた孔の経皮経肝的ドレナージ通路から体内に挿入して、総胆管9内に挿通し、その一部壁9aの内側近傍に配置する(図3参照)。次に、被検体の体外に突出しているシース8の外部開口端から、その内部に第1の磁石2を挿入し、さらにガイドワイヤー4を持ってシース8内を挿通させて体内へ押し込んで挿入し、X線透視画面を見ながら総胆管9の一部壁9aの所定の部位に配置する。
【0060】
一方、第2の磁石3を、図示しない内視鏡の非磁性体よりなる把持鉗子に着脱自在に保持させて例えば口などから挿入し、さらに小腸11の所定の一部壁11aの内側に配置し、この第2の磁石3の吸着面3aを第1の磁石2の吸着面2aに対向させる。
【0061】
しかし、内視鏡により第2の磁石3を所定部位に配置できない場合は、第2の磁石3を、例えば被検体に飲み込ませて一旦胃12aの内部に移動させてから、この胃12aの外部から図示しない誘導用の磁石の磁力の案内によりX線透過で透視しながら小腸11の所定の一部壁11aの内側に配置し、この第2の磁石3の吸着面3aを第1の磁石2の吸着面2aに対向させてもよい。なお、このとき、腸管の途中は収縮して第2の磁石3が通りにくい場合があるが、この場合は所要のチューブ等を誘導のために目的の腸管まで通しておくと、磁石が通り易くなるうえに、チューブから造影できるので、所定部位へ誘導する位置決め精度を向上させることができる。
【0062】
図4に示すようにこれら一対の磁石2、3の吸着面2a,3aどうしが所定距離内で対向配置されると、これら一対の磁石2、3の吸着面2a,3aどうしが小腸11の一部壁11aと総胆管9の一部壁9aとを介して磁力により強く吸着するので、これら両一部壁9a,11aがこれら一対の磁石2、3により強く挟まれて圧迫される。
【0063】
このために、図5に示すようにやがてこれら両壁9a,11aの被挟圧部14の外周縁部14aがアポトーシスを起こし、吻合部を形成する。すなわち、図6に示すように被挟圧部14の外周縁部14aが環状にアポトーシスを起こして被挟圧部14の内方どうしを連通せしめる連通孔13が形成されると共に、この連通孔13周りが癒着されて吻合が形成されてバイパスが形成される。すなわち、連通孔13を介して総胆管9の狭窄10よりも上流側を小腸11の一部にバイパスさせることができ、総胆管9から胆汁液を小腸11に供給することができる。
【0064】
この連通孔13の形成後は、被検体の外部に突出するシース8の外端部内にガイドチューブ7を挿入して、体内に挿入し、X線で透視しながら図5に示すようにガイドチューブ7の先端を第1の磁石2のガイドワイヤー4の取付面である裏面2bに押し当てておき、その状態でガイドワイヤー4を仮止め用接着剤6の接着力に抗して体外側へ強く引き抜き、第1の磁石2から取り外す。
【0065】
この後、ガイドワイヤー4全体をシース8を通して体外に引出す一方、図7に示すようにガイドチューブ7の図中先端部をドレナージチューブとほぼ同様に連通孔13内に挿通した状態で吻合が停止されるまで所定時間(例えば約3週間程度)保持し、しかる後にガイドチューブ7全体をシース8を通して体外に引出す。しかる後に、シース8も被検体から取り外される。このために、連通孔13が吻合癒着により再び閉塞するのを有効に防止することができ、連通孔13、すなわち、バイパスを保持することができる。吻合完成以後は、ガイドチューブ7を連通孔13から引き抜いても連通孔13の吻合癒着は阻止される。
【0066】
そして、被挟圧部14を介して相互に吸着している一対の磁石2,3は、その吸着状態のままで小腸11,大腸などを順次経て排便などと共に体外に排出される。
【0067】
したがって、この臓器吻合装置1によれば、被検体の外部に突出するガイドワイヤー4の外端部を体内側へ押し込み、あるいは体外側へ引張り、または中心軸周りに回す等の適宜操作により、第1の磁石2を被検体内の所要の臓器の所定部位に容易かつ確実に配置することができる。また、臓器壁9a,11aに吻合を形成した後は、直ちにシース8を介してガイドチューブ7の先端部を、その連通孔13内に挿入することにより、この連通孔13の癒着による閉塞を有効に停止させて連通孔13の形成を簡単に維持することができる。このために、従来例のように臓器壁9a,11aの吻合後に、これとは別途に例えばドレナージチューブを脇腹などから体内に挿入し、さらに吻合部の連通孔13まで誘導して挿入し、その挿入状態を癒着吻合が停止するまでの例えば約3ケ月程度維持しなければならないという煩雑なステップを省略することができる。
【0068】
また、第1,第2磁石2,3のいずれにも外周縁を従来例のような鋭い切断縁に形成せずに、角部を面取りしているので、これら磁石2,3の飲み込みなどにより、所定の臓器内の所定部位に誘導し配置するまでに他の多くの臓器を切断縁により傷つけてしまうという危険性を有効に防止することができる。
【0069】
さらに、第1,第2磁石2,3の表面を耐酸性膜や耐硫化膜によりコーティングしているので、これが体内の酸性液や体液などにより、酸化して変質ないし劣化するのを防止ないし低減して、寿命を延ばすことができる。また、これら磁石2,3の外表面に抗血栓性膜をコーティングしているので、血中での磁石による血栓の生成を防止できる。
【0070】
さらにまた、第1,第2磁石2,3が希土類元素の磁石であるので、磁力を強化することができる。このために、吻合を形成しようとする臓器壁9a,11aの厚さが厚い場合でも磁石2,3どうしの吸着を簡単かつ確実に行うことができ、その作業時間を短縮することができる。
【0071】
また、磁力の強い一対の磁石2,3どうしが吸着するので、これら磁石2,3により強く挟圧される臓器壁9a,11aのアポトーシスないし臓器壁9a,11aどうしを連通せしめる連通孔13及びこの連通孔13周りの癒着吻合を形成させる確実性を向上させることができる。
【0072】
さらに、一対の磁石2,3の一方の吸着面2aまたは3aを他方の吸着面2aまたは3aよりも大きく形成しているので、これら一対の磁石2,3の吸着面2a,3aどうしの吸着をより簡単かつ確実に行わせることができる。また、第1の磁石2よりも大きい第2の磁石3が連通孔13よりも大きいので、この連通孔13内を通って総胆管9側へ移動するのを防止できる。
【0073】
さらにまた、第2磁石3を内視鏡の把持鉗子により着脱自在に保持して臓器の所定部位に配置する場合には、その第2磁石3の臓器内での移動を内視鏡により監視することができるので、その第2磁石3の位置決め精度の向上を図ることができる。さらに、内視鏡の把持鉗子が、非磁性体よりなるので、この内視鏡の把持鉗子に第2磁石3が吸着して把持鉗子から取り外せなくなるのを防止することができる。
【0074】
図8は小腸11に閉塞15(イレウス)が発生した場合に、この閉塞15よりも上流側の小腸11の一部壁11bを大腸16の一部壁16aに連通せしめる連通孔13(バイパス)を吻合により形成する場合の当該連通孔13周りの臓器の部分縦断面図である。
【0075】
この場合も上記臓器吻合装置1を上述した方法で使用することにより、閉塞15よりも上流側の小腸11の一部壁11bを大腸16の一部壁16aに連通せしめる連通孔13(バイパス)を形成することができるが、今回は上記第1の磁石2に代えて、上記第2の磁石3を2個使用する場合について説明する。
【0076】
小腸11内側へ配置される一方の磁石3は、上述した方法と同様に被検体により飲み込まれてから図9に示すハンマー状の誘導磁石18の磁力により誘導されて小腸11内の所定部位11bに案内され、あるいは図示しない内視鏡の把持鉗子により把持されて、小腸11の閉塞15よりも上流側の所定の部位11bに吸着面3aを対向させて配置される。他方の磁石3は内視鏡の把持鉗子に把持されて肛門等から大腸16内に挿入され、大腸壁の所定部位16aに誘導されて一方の磁石3に対向配置される。これら一対の磁石3,3の対向配置の際、これら一対の磁石3,3どうしの対向面は、互いに吸着するように誘導磁石18により体外からN極またはS極に適宜調節される。
【0077】
これにより、一対の磁石3,3の異極どうしが対向して吸着されるので、これら磁石3,3により小腸11の一部壁11bと大腸16の一部壁16aとが両側から強く挟まれて圧迫される。このために、やがてこれら両壁11b,16aの被挟圧部の外周縁部はアポトーシスを起こし、これら両壁11b,16aの内方どうしを連通せしめる連通孔13が形成されると共に、この連通孔13周りが癒着吻合されて、連通孔13が形成される。すなわち、連通孔13により、小腸11の閉塞15よりも上流側の一部壁11bの内方を大腸16の一部壁16aの内方に連通せしめるバイパスが形成される。
【0078】
図9は、上記誘導磁石18の一例の斜視図であり、これは体内の磁石3の移動を体外から誘導する強力な磁力を有する磁石であり、N極とS極とを軸方向両端に配置する例えば円柱状の磁石本体18aの軸方向中間部に柄18bを直交するように設け、この柄18bを中心軸回りに回動させることによりN極やS極を所定方向に向けるようになっている。また柄18bを持つこことにより、X線照射領域から外れて被曝を回避することができる。
【0079】
図10(a),(b)は上記第2の磁石3の変形例を示す正面図である。磁石3は、その円盤形状の直径方向で一周する紐状凹部3bを形成し、この紐状凹部3b上にて、非磁性体よりなる柔軟な保持具である紐21を締結し、この紐21の一端(図10中上端)にリング状の小さいループ21aを形成し、このループ21aを図示しない内視鏡の把持鉗子に把持させることにより、この磁石3を把持し易くすると共に、体内の移動中に脱落しないように構成している。また、紐21が紐状凹部3b内にほぼ納められており、磁石3の外周面から殆ど突出していないので、この磁石3の臓器内の移動中に紐21が臓器の一部に引っ掛かって移動が阻害されるのをほぼ防止することができる。
【0080】
図11は上記磁石3の変形例の一例を示す磁石22の拡大斜視図である。この磁石22は偏平円柱状をなし、その側周面には、直径方向にほぼ直状に貫通する挿通孔22aを穿設し、誘導用ワイヤー23を遊挿させるようになっている。また、この磁石22の一側周面には非磁性で柔軟な紐24を締結している。この紐24は挿通孔22a内を挿通して磁石22の一側周面上で締結され、この締結部には内視鏡の把持鉗子により把持される紐ループ24aを形成している。そして、この磁石22は上記第2の磁石3と同様に角部を面取りすると共に、その外表面には、耐酸化性膜と抗血栓性膜の少なくとも一方がコーティングされている。
【0081】
したがって、この磁石22を被検体内の所定部位に配置する場合は、まず、誘導用ワイヤー23を被検体内に挿入して、その先端部を体内の所定部位の近傍まで配置する。
【0082】
次に、この誘導用ワイヤー22の体外へ延出している端部に、この磁石22の挿通孔22aを挿通させる一方、磁石22の紐ループ24aを内視鏡の把持鉗子により把持させて誘導用ワイヤー23に沿って体内へ移動し、所定部位まで誘導させる。
【0083】
したがって、この磁石22によれば、誘導用ワイヤー23に沿って磁石22を体内の所定部位に誘導するので、その誘導精度を向上させることができる。なお、上記実施形態では、本発明の吻合装置1を使用して総胆管9と小腸11、小腸11と大腸16を吻合せるさせる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば消化器、血管、尿管、膀胱どうし、あるいはこれらとその近傍の臓器との吻合に使用してもよい。
【0084】
図12は本発明の第2の実施形態に係る臓器吻合装置31の一対の第4の磁石32,32の一方の斜視図である。この臓器吻合装置31は、第4の一対の磁石32,32を有し、これら各磁石32は、角部を面取りした所要大の円柱状または角柱状の磁石本体32aの軸方向一端を、磁極を相互に異にして磁気的に吸着し合う吸着面32bにそれぞれ形成している。
【0085】
各磁石本体32aは例えば希土類元素磁石からなり、これらの外面には耐酸性膜または耐硫化膜と、抗血栓性膜の少なくともいずれかをコーティングしている。
【0086】
また、図12と図13に示すように各磁石本体32aの吸着面32bの軸方向反対側の各他端面32cには、その吸着面32bかつ上記連通孔13の開口径よりも大径の円盤状の大径端部33を同心状に一体ないし一体的に取り付けている。
【0087】
大径端部33は例えばプラスチック等により円盤状に形成されているが、被検体内で所要期間(例えば約3ケ月程度または3ケ月以上の所要の期間)経過後に溶融するプラスチック等の素材により角部を面取りした円盤状に形成してもよい。
【0088】
また、大径端部33の軸方向外端面のほぼ中央部には、外方に凸の例えば半円弧状の把手33aを一体に連成しており、この把手33aを図示しない内視鏡の把持鉗子等により把持し得るようになっている。
【0089】
図13は以上のように構成された第4の一対の磁石32,32を、バイパス(連通孔13)を形成しようとする所要臓器の一対の壁34,35の所定部位にてそれぞれ対向配置した状態を示す縦断面図である。
【0090】
すなわち、第4の一対の磁石32,32の一方を例えば被検体の口から飲み込ませ、この磁石32の位置をX線等の放射線透過で透視して視認しつつ、この被検体の体外から図9で示す誘導用磁石18によりこの磁石32を上記所要臓器壁34または35の所定部位に移動させておく。
【0091】
一方、他方の磁石32については、その把手33aを、例えば図示しない内視鏡の把持鉗子により把持して被検体の所要臓器壁34または35の所定部位に配置し、一方の磁石32と両壁34,35を介して対向配置する。
【0092】
すると、これら一対の磁石32,32の両吸着面32b,32bどうしが磁気吸着力により両壁34,35を介してほぼ同心状に吸着するので、これら両壁34,35が一対の磁石32,32により強く挟まれて圧迫される。この圧迫が所要期間経過すると、これら両壁34,35の被圧迫部ないしその外周縁部でアポトーシスを起こし、図14に示すように両壁34,35に両磁石32,32とほぼ同径の連通孔36が形成されると共に、この連通孔36の外周縁部の両壁34,35が癒着されて吻合が形成され、所要の臓器どうしが連通するバイパスが形成される。
【0093】
しかし、図16に示すように相互に吸着している一対の磁石32,32の大径端部33,33の方が連通孔36よりも大径であるので、連通孔36が開通しても両磁石32,32の両大径端部33が連通孔36に係止され、一対の磁石32が連通孔36から軸方向に抜け落ちるのを防止することができる。
【0094】
このために、一対の磁石32,32が連通孔36内に挿通された状態で所要期間(例えば3ケ月以上)経過すると、連通孔36の外周縁部の吻合部の吻合作用がほぼ停止する。
【0095】
そこで、この後、一対の磁石32,32の一方に、その把手33aを例えば内視鏡の把持鉗子等により把持して一方の壁34または35側へ引き抜く方向の力を加える。すると、一対の磁石32,32の一方の大径端部33が連通孔36の開口一端に突き当たって、この連通孔36の外周縁部が弾性変形し、この大径端部33が連通孔36を通って一方の壁34または35側の臓器へ引き抜かれ、やがて便等と共に後被検体の外部へ排出される。
【0096】
したがって、この一対の壁34,35に連通孔(バイパス)36が開通した後、直ちにこの連通孔36から一対の磁石32,32が引き抜かれずにこの連通孔36内に暫時留置されるので、この連通孔36が吻合により閉塞されるのを未然に防止し、連通孔36の形成を維持することができる。
【0097】
図15は上記図12で示す第4の一対の磁石32,32の一方と図1等で示す大形の第2の磁石3とにより、所要の臓器の一対の壁34,35にバイパス、つまり連通孔36を形成するために、これら一対の壁34,35を介してこれら磁石32,3を所定部位で対向配置した状態を示す縦断面図である。
【0098】
すなわち、この第2の磁石3と第4の磁石32とによっても、これら両磁石3,32が磁気吸引力により一対の壁34,35を介して相互に吸着してこれら壁34,35を強く挟圧して圧迫するので、この圧迫が所要期間経過すると、一対の壁34,35の非圧迫部ないしその外周縁部にてアポトーシスを起こし、図16に示すように一対の壁34,35には、小形の第3の磁石32とほぼ同形の連通孔36が開通される。
【0099】
そして、この連通孔36は大形の第2の磁石3と小形の第4の磁石32の大径端部33よりも小径であるので、相互に吸着した第2,第4の磁石3,32が連通孔36から抜け落ちて連通孔36が吻合癒着により閉塞するのを防止し、連通孔36の形成を維持することができる。
【0100】
この連通孔36の形成維持後はX線照射で透視しながら図示しない内視鏡の把持鉗子等により第3の磁石32の把手33aを把持して例えば第2の磁石3側へ押し込む。または、大形の第2の磁石3を内視鏡の把持鉗子により把持して、この第2の磁石3側へ引き込む。
【0101】
すると、第4の磁石32の大径端部33が連通孔36の開口一端に突き当たって、連通孔36の外周縁部の吻合部と弾性変形させて連通孔36内に強制的に挿入され、さらに、この第4の磁石32の大径端部33が連通孔36内を通って大形の第2の磁石3側の臓器へ引き抜かれ、この後、これら一対の磁石3,32は吸着した状態で体外に排出される。
【0102】
したがって、これら第2,第4の磁石3,32によっても、これら磁石3,32が一対の壁34,35に連通孔36を形成した後も、この連通孔36内で挿通した状態で留置されるので、連通孔36が吻合により閉塞されるのを防止し、連通孔36の形成を維持することができる。
【0103】
図17は上記第4の各磁石32の一変形例に係る第5の磁石37の斜視図、図18はその縦断面図である。この第4の磁石37は上記第3の磁石32の吸着面32bに、その吸着面32bとほぼ同形のプラスチック等の非磁性材料により円柱状または軸方向両端閉塞の円筒状に形成されたスペーサ38を同心状に固着した点に特徴があり、これ以外の構成は上記第4の磁石32と同一であるので、その同一部分には図17中、同一符号を付している。
【0104】
スペーサ38の軸方向長さは、第5の一対の磁石37,37どうしの相互の磁気吸着力を、連通孔(バイパス)36を形成しようとする臓器やその壁34,35の厚さ、バイパス形成手術の目的等に種々応じた最適値に制御するために適宜選択されるものであって、スペーサ38の軸長を異にする第5の磁石37を予め複数種類を作成用意しておく。
【0105】
したがって、この第5の一対の磁石37,37により所要臓器の一対の壁34,35に連通孔36を形成する場合には、その臓器やその壁34,35の厚さ等に対応した適切な磁気吸引力により一対の壁34,35を挟圧することができる一方、磁石本体32a,32a自体の磁気吸着力を制御する必要がないので、効率向上を図ることができる。
【0106】
なお、上記第4,第5の磁石32,37の大径端部33は被検体内に所要期間留置されたときに、その体液等により溶融するプラスチック等の素材により構成してもよい。これによれば、一旦開穿された連通孔36内に留置された相互吸着状態の一対の磁石37,37がこの連通孔36の吻合作用が停止して連通孔36が閉塞する虞がなくなってから、これら磁石32,37の各大径端部33が溶融し連通孔36の開口径よりも小径に縮小した後に、臓器の活動によりこれら一対の磁石37,37が連通孔36内を通ってその一方の壁34または35側の臓器内へ移動し、やがて大便等と共に体外に排出される。
【0107】
したがって、この場合は、連通孔36を開穿し、その内部に留置されている第5の一対の磁石37,37を内視鏡の把持鉗子等により把持して体外へ排出する作業を省略することができる。
【0108】
図19は上記各磁石2,3,32,37の移動を案内するドレナージチューブであるイレウスチューブ39の一部の一部切欠正面図である。このイレウスチューブ39は、可撓性を有する例えばプラスチックス等により上記各磁石2,3,32,37よりも小さい内径を有するチューブから構成されており、例えば被検体内の長い腸管内等に挿入される。
【0109】
イレウスチューブ39は、その外表面に、各磁石2,3,32,37の移動方向を示す表記の一例である複数の矢印40を鉛(Pb)やバリウム(BA)、プラチナ(Pt)等の放射線(X線)不透過材によりマーキングしている。
【0110】
このために、図20に示すようにイレウスチューブ39を被検体内へ例えば口等から挿入してからさらに長い腸管内に挿入して一面からX線透視した場合には、このイレウスチューブ39が複雑に交錯し、各磁石2,3,32,37の移動方向を見極めることが非常に困難に陥る場合があるが、そのX線透視の場合にも、イレウスチューブ39の外表面には、磁石2,3,32,37の挿入方向を示す矢印40をX線不透過材により表記しているので、その矢印40を視認することができる。
【0111】
したがって、イレウスチューブ39とともに、被検体内に挿入された磁石2,3,32,37のいずれかを、イレウスチューブ39の外面に沿って被検体外から誘導用磁石18により矢印40で示す方向に誘導することにより、その移動に迷うことなく効率的に移動させることができる。
【0112】
なお、上記各磁石2,3,32,37のいずれか、または上記スペーサ38に、血管内膜成長因子等の吻合を促進する物質を事前に付着させておいてもよい。これによれば、上記各連通孔13,36(バイパス)が開穿された後は、これら連通孔13,36の開口周縁部が上記各磁石2,3,32,37またはスペーサ38に予め付着されている血管内膜成長因子に接触して吻合が促進される。このために、その吻合の迅速性の向上を図ることができる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、被検体の各臓器壁を介して対向配置された一対の磁石どうしが吸着されると、これら一対の磁石により臓器壁がその両側から挟まれて強く圧迫(挟圧)されるので、やがてアポトーシスを起こし、これら臓器壁どうしを連通せしめる連通孔が形成されると共に、その連通孔の外周縁が癒着して吻合が形成され、バイパスが形成される。この後、ガイドチューブとガイドワイヤーとが一方の磁石から取外される。この後、ガイドチューブの先端部が吻合部の連通孔内に挿通され、吻合が完了するまでその挿通状態で留置される。これにより、吻合部の連通孔の形成が維持される。一方、相互に吸着された状態で取外された一対の磁石は排便などと共に体外に排出される。
【0114】
したがって、この発明によれば、磁石の外周縁を従来例のような鋭い切断縁に形成していないので、この磁石を所定の臓器内に挿入して所定の部位に誘導し配置するまでに他の多くの臓器を切断縁により傷付けてしまうという危険性を有効に防止することができる。
【0115】
また、一対の磁石の吸着により臓器壁に連通孔と吻合を形成して連通孔を形成した後は、この吻合部近傍の被検体内に一方の磁石と共に既に挿入されているガイドチューブを、直ちに吻合部の連通孔内に挿入し、その挿入状態を吻合が完了するまで保持する。これにより、この連通孔の形成を簡単に保持することができる。このために、従来例のように吻合後に、例えばドレナーチューブを臓器吻合装置とは別途に被検体内に挿入し、さらに吻合部の連通孔まで誘導して挿入し、その挿入状態を吻合が完了するまでの例えば約3ケ月程度体内に留置するなどの煩雑なステップを省略することができる。
【0116】
さらに、例えば被検体などに飲み込まれる他方の磁石の吸着面は、複数面有するので、一対の磁石どうしの吸着を容易に行わせることができる。
【0117】
請求項2の発明によれば、一方の磁石はシース内を単に挿通させることにより体外から体内の所定の臓器の部位の近傍に案内させることができ、その案内の容易性向上と案内精度の向上とを共に図ることができる。
【0118】
請求項3の発明によれば、一方の磁石は、他方の磁石よりも大きい吸着面を有するので、体内の所定部位における他方の磁石との吸着を簡単かつ確実に行うことができ、その操作時間を短縮することができる。このために、被検体の体力の消耗を低減することができる。
【0119】
また、吻合部の連通孔は小さい方の磁石の吸着面とほぼ同じ大きさに形成されるので、大きい方の磁石がこの連通孔を通って小磁石の臓器側へ移動するのを防止することができる。
【0120】
請求項4の発明によれば、大腸と小腸の腸管どうしの吻合の場合には相互にほぼ同形同大の磁石が使用され、吻合完成後、これら磁石は例えば相互に吸着したままの状態で大腸側へ移動するように誘導されて大便等と共に体外に排出される。
【0121】
請求項5の発明によれば、磁石の表面が耐酸性膜によりコーティングされているので、体内の酸性液などにより、酸化して変質ないし劣化するのを防止することができる。また、磁石の表面が抗血栓性膜によりコーティングされているので、血中の磁石による血栓の生成を防止することができる。
【0122】
請求項6の発明によれば、磁石が希土類元素の磁石であるので、磁力を強化することができる。このために、吻合を形成しようとする臓器壁の厚さが厚い場合でも磁石どうしの吸着を簡単かつ確実に行うことができ、その操作時間を短縮することができる。
【0123】
また、磁力の強い一対の磁石どうしが吸着するので、これら磁石により強く挟圧される臓器壁のアポトーシスと、臓器壁どうしを連通せしめる連通孔及びこの連通孔周りの吻合を形成させる確実性を向上させることができる。
【0124】
請求項7の発明によれば、他方の磁石が被検体により飲み込まれた後、この磁石を誘導用の磁石により体外から臓器の所定部位に案内することができるので、他方の磁石の位置決め作業の簡単化と位置決め精度の向上を共に図ることができる。
【0125】
請求項8の発明によれば、磁石本体の軸方向両端にN極とS極とを設けているので、その柄を中心軸回りに回動させることより、磁石本体の磁極を体内の磁石に向けて適宜吸着または反発させて体内の所定部位に誘導することができる。
【0126】
請求項9の発明によれば、他方の磁石を内視鏡の把持鉗子等の把持手段により着脱自在に把持して臓器の所定部位に配置するので、他方の磁石の体内での搬送を内視鏡により監視しながら臓器の所定部位に配置することができる。このために、他方の磁石の位置決め精度の向上を図ることができる。
【0127】
請求項10の発明によれば、内視鏡の把持鉗子等の把持手段が非磁性体よりなるので、この内視鏡の把持手段に磁石が吸着して把持手段から磁石を取外せなくなるのを防止することができる。
【0128】
請求項11の発明によれば、他方の磁石は、内視鏡の把持手段により把持されるための非磁性の柔軟な把持具を備えているので、他方の磁石の非磁性保持具を、内視鏡の把持手段により簡単かつ確実に把持することができる。しかも、他方の磁石の保持具が柔軟であるので、被検体内の臓器を傷付けるのを防止することができる。
【0129】
請求項12の発明によれば、請求項1〜11のいずれか1項に記載の臓器吻合装置を消化器、血管、尿管、膀胱のいずれかの臓器の吻合の形成に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る臓器吻合装置の部分縦断面図。
【図2】 図1で示す臓器吻合装置により総胆管狭窄のバイパスを形成する方法の一例を示すための総胆管の狭窄周りの臓器の部分縦断面図。
【図3】 図1で示す臓器吻合装置の一方の磁石を小腸の所定部位に配置するステップを示す要部拡大図。
【図4】 図1で示す臓器吻合装置の一対の磁石により総胆管の一部壁と小腸の一部壁とを共に挟圧するステップを示す要部拡大図。
【図5】 図1で示す臓器吻合装置の一対の磁石により総胆管の一部壁と小腸の一部壁とに連通孔(バイパス)と吻合を形成したステップの要部拡大図。
【図6】 吻合部の連通孔の正面図。
【図7】 図1で示す臓器吻合装置のガイドチューブを連通孔内に挿入すると共に、このガイドチューブにより一対の磁石を小腸側に押し出すステップを示す要部拡大図。
【図8】 図1で示す臓器吻合装置などにより腸閉塞のバイパスを形成する方法の一例を示すための腸閉塞周りの臓器の部分縦断面図。
【図9】 図1で示す臓器吻合装置の第2の磁石の体内での移動を体外から誘導するための誘導用磁石の外観斜視図。
【図10】 (a)は図1で示す第2の磁石に紐状凹部を形成した状態の正面図、(b)はその紐状凹部内で紐を締結した状態の正面図。
【図11】 図1で示す第2の磁石の一変形例の外観斜視図。
【図12】 本発明の第2の実施形態に係る臓器吻合装置の第4の一対の磁石の一方の斜視図。
【図13】 図12で示す磁石の一対が一対の所要臓器壁を介して吸着している状態を示す要部縦断面図。
【図14】 図13で示す第4の一対の磁石が一対の所要臓器壁に連通孔を開穿した後、この連通孔からの抜けが阻止される状態を示す要部縦断面図。
【図15】 図12で示す第4の磁石と図1等で示す大形の大2の磁石が一対の所要臓器壁を介して吸着している状態を示す要部縦断面図。
【図16】 図15で示す第2,第4の磁石が一対の所要臓器壁に連通孔を開穿した後、この連通孔からの抜けが阻止される状態を示す要部縦断面図。
【図17】 図12で示す第4の磁石の一変形例の斜視図。
【図18】 図17で示す第4の磁石の縦断面図。
【図19】 図1〜図18で示す各磁石の移動を案内するイレウスチューブの一部の一部切欠正面図。
【図20】 図19で示すイレウスチューブの腸管内に挿入したときのX線透視の模式図。
【符号の説明】
1,31 臓器吻合装置
2 第1の磁石
2a 第1の磁石の吸着面
3 第2の磁石
3a 第2の磁石の吸着面
3b 第2の磁石の紐状凹部
4 ガイドワイヤー
6 仮止め用接着剤
7 ガイドチューブ
8 シース
9 総胆管
9a 総胆管の一部壁
10 狭窄
11 小腸
11a、11b 小腸の一部壁
12 腹壁
12a 胃
13 連通孔
15 閉塞
18 誘導用磁石
22 第3の磁石
22a 挿通孔
23 誘導用ワイヤー
19 第3の磁石の柄
20 紐
32 第4の磁石
32a 第4の磁石の磁石本体
33 第4の磁石の大径端部
33a 大径端部の把手
34,35 所要の一対の臓器壁
37 第5の磁石
38 第5の磁石のスペーサ
39 イレウスチューブ

Claims (12)

  1. 被検体の相互に吻合させようとする臓器の所定部位に、これらの各臓器壁を介して対向配置されて相互に吸着されることにより、これら臓器壁間を連通せしめる連通孔を備えた吻合部を形成する一対の磁石と、これら一対の磁石の一方に、着脱自在に取り付けられる可撓性を有するガイドワイヤーと、このガイドワイヤーを内部に挿通させた状態で被検体内に挿入されて上記一方の磁石のガイドワイヤー取付面に当接してこのガイドワイヤーを一方の磁石から取り外す際にこの磁石を支持する一方、上記吻合部の連通孔内に挿入されてこの連通孔の形成を維持するガイドチューブと、を具備していることを特徴とする臓器吻合装置。
  2. 被検体の体外から体内に挿入されて、内部にガイドワイヤーを取り付けた磁石を挿通させることにより、この磁石を臓器の所定部位の近傍に案内する筒状のシースを具備していることを特徴とする請求項1記載の臓器吻合装置。
  3. 上記一方の磁石は、他方の磁石よりも大きい吸着面を有することを特徴とする請求項1または2記載の臓器吻合装置。
  4. 一対の磁石は、ほぼ同大に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の臓器吻合装置。
  5. 磁石の表面は、耐酸性膜及び抗血栓性膜の少なくとも一方によりコーティングされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の臓器吻合装置。
  6. 磁石が、希土類元素の磁石であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の臓器吻合装置。
  7. 他方の磁石は、被検体により飲み込まれてから誘導用の磁石により体外から誘導されて臓器の所定部位に案内されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の臓器吻合装置。
  8. 誘導用磁石は、N極とS極を軸方向両端に設けた磁石本体の軸方向中間部に、柄を直交方向に設けてなることを特徴とする請求項7記載の臓器吻合装置。
  9. 他方の磁石は、内視鏡の把持手段により着脱自在に把持されて臓器の所定部位に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の臓器吻合装置。
  10. 内視鏡の把持手段は、非磁性体よりなることを特徴とする請求項9に記載の臓器吻合装置。
  11. 他方の磁石は、内視鏡の把持手段により把持されるための非磁性の柔軟な保持具を備えていることを特徴とする請求項8または9に記載の臓器吻合装置。
  12. 臓器が、消化器、血管、尿管、膀胱のいずれかであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の臓器吻合装置。
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