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JP3944681B2 - シリコーンゴム接着剤組成物及び該接着剤組成物と熱可塑性樹脂との一体成形体 - Google Patents

シリコーンゴム接着剤組成物及び該接着剤組成物と熱可塑性樹脂との一体成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に加熱硬化型シリコーンゴム組成物と熱可塑性樹脂との一体成形体において、射出成形を用いて簡単かつ短時間で成形可能で、プライマーレス成型に適した接着性良好なシリコーンゴム接着剤組成物、及びこれと熱可塑性樹脂との一体成形体に関するものであり、電気、電子、自動車、精密機械、建築関係等に有用なものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、シリコーンゴムの特性を生かして、電気、電子、自動車、建築分野などでその用途が広がり、組立の作業性、密閉性、絶縁性などが要求される。また、使用用途により樹脂との接着が必要となり、プライマーを介して接着を行う場合が多いが、作業上プライマー塗布工程が必要となり、手間がかかる。そこで、シリコーンゴム組成物に接着剤を添加した自己接着型シリコーンゴムを用いた場合、前記塗布工程が不要となるため作業時間の短縮ができ、コスト削減ができるし作業性も向上するため、樹脂との一体成形体を製造する上で有効な手段となっている。
【0003】
付加型の加熱硬化性シリコーンゴムのプライマーレス成型において、有機樹脂と接着させる方法は数多く報告されている。例えば、樹脂上に自己接着性シリコーンゴム材料を硬化させる方法があり、この自己接着性シリコーンゴム組成物については、接着成分を特定した技術が多く提案されている。また、有機樹脂に珪素原子に直結した水素原子を30モル%以上含有するオルガノポリシロキサンを添加し、付加硬化型シリコーンゴムと接着させる方法(特公平2−34311号公報)、有機樹脂へのシリコーンゴムの物理的な嵌合方法により一体化させる方法(特公昭63−4529号公報)、脂肪族不飽和基と珪素原子結合加水分解性基を有する化合物をグラフトしたオレフィン樹脂にシリコーンゴムを接着一体化させる方法(特開昭63−183843号公報)、本出願人が報告した不飽和基及び珪素原子に直結した水素原子を含有する化合物を添加した熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとを接着一体化させる方法、熱可塑性樹脂に脂肪族不飽和基を含有してなる熱可塑性オリゴマーを配合した樹脂とオイルブリード性シリコーンゴムとの一体成形体(特開平9−165516号公報、特開平9−165517号公報)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、付加型加熱硬化シリコーンゴムの場合、汎用の熱可塑性樹脂、例えばABS,PPO,PPS,PC,PE,PP,PBT、アクリル、PA、芳香族PA等への樹脂に対して短時間の成形で十分な接着性を得ることができず、十分な接着能を有するためには、上記提案のように樹脂の改質が必要であった。樹脂を改質した場合、余分な工程がかかり、コストが高くなるし、改質により樹脂の特性に変化を生じ易くしてしまう場合があった。また、樹脂改質しないでも接着する場合は、金型を使用して成形する場合に金型に接着する難点があり、特にポリアミド系樹脂には要求を十分満足できるものがなかった。こうした中で、熱可塑性樹脂とシリコーンゴムの一体成形体を形成するのに金型を使用した場合、金型には接着せず成型可能でありかつ熱可塑性樹脂とシリコーンゴムとが強固に接着した一体成形体の供給が強く望まれていた。
【0005】
本発明は、上記要望に応えたもので、熱可塑性樹脂と強固に一体化することができるシリコーンゴム接着剤組成物及びこれと熱可塑性樹脂との一体成形体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、シリコーンゴム組成物中に接着性付与成分とゴム成分と非相溶のシロキサン骨格を有する有機珪素化合物を配合したシリコーンゴム接着剤組成物を使用することにより、熱可塑性樹脂と接着一体化成形させた場合、両者が強固に接着したシリコーンゴムと熱可塑性樹脂との一体成形体が得られると共に、射出成型方法を用いて上記熱可塑性樹脂に対して短時間の硬化条件で十分な接着力を有し、また成形金型から実用上十分な剥離をする上記シリコーンゴムと熱可塑性樹脂との一体成形体を得ることができ、特に結晶性の高いナイロン66、芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂にも有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、
(A)加熱硬化型のオルガノポリシロキサン組成物として、
(1)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン、
(2)1分子中に平均2個以上の珪素原子結合水素原子(Si−H基)を有するアルキルハイドロジェンポリシロキサン、
(3)付加反応触媒、からなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物
又は
(i)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン、
(ii)有機過酸化物、からなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物
から選ばれる加熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物;100重量部
(B)補強性シリカ微粉末;1〜100重量部
(C)接着性付与成分;0.1〜50重量部
(D)アルケニル基及びSi−H基から選ばれる(A)成分と反応性の官能基を有し、該反応性官能基を除いた珪素原子に結合する非置換又は置換1価炭化水素基の1〜90モル%がフェニル基及び/又はフルオロアルキル基である、(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する、(C)成分以外の直鎖状オルガノポリシロキサン;0.05〜20重量部を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム接着剤組成物を提供する。また、本発明は、この接着剤組成物の硬化物(シリコーンゴム)と熱可塑性樹脂との一体成形体を提供する。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のシリコーンゴム接着剤組成物は、
(A)加熱硬化型のオルガノポリシロキサン組成物、
(B)補強性シリカ微粉末、
(C)接着性付与成分、
(D)(A)成分と反応性の官能基を有し、かつ、(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する有機珪素化合物
を必須成分とする。
【0009】
上記(A)成分に係る熱硬化性オルガノポリシロキサン組成物としては、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物又は有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物とするもので、特に付加反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物が好ましい。この場合、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、
(1)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン
100重量部
(2)1分子中に平均2個以上の珪素原子に結合した水素原子を有するアルキルハイドロジェンポリシロキサン 0.1〜50重量部
(3)付加反応触媒 触媒量
からなるものであり、有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、
(i)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン
100重量部
(ii)有機過酸化物 触媒量
からなるものである。
【0010】
ここで、付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物の(1)成分の1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
1 aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0011】
上記R1で示される珪素原子に結合した非置換の1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニルが挙げられる。
【0012】
この場合、R1のうち少なくとも2個はアルケニル基(特に炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、珪素原子に結合する全有機基中(即ち、前記平均組成式(1)におけるR1としての非置換の1価炭化水素基中)0.001〜20モル%、特に0.01〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、本発明で用いるアルキルポリシロキサンは、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合したアルケニル基を含んだものであることが好ましい。なお、アルケニル基以外のR1としては、メチル基等のアルキル基である。
【0013】
上記アルキルポリシロキサンの構造は、通常は、主鎖がR1 2SiO2/2で示されるジアルキルシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がR1 3SiO1/2で示されるトリアルキルシロキシ基で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジアルキルポリシロキサンであるが、部分的にはR1SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状構造、環状構造などであってもよい。このアルケニル基含有アルキルポリシロキサンの重合度(或いは粘度)には特に制限がなく、室温(25℃)で液状の低重合度のものから、生ゴム状(ガム状)の高重合度のものまで使用可能であるが、通常、平均重合度(重量平均重合度)10〜10,000、特に50〜10,000であり、好ましくは100〜10,000、より好ましくは100〜2,000程度のものが使用される。この平均重合度が10未満では、硬化物としてのゴム物性が不十分となる場合がある。なお、その粘度は25℃において100〜1,000,000cps、特に500〜500,000cpsであることが好ましい。
【0014】
また、(2)成分のアルキルハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)
2 bcSiO(4-b-c)/2 (2)
で示され、1分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜150個程度の珪素原子結合水素原子(即ち、Si−H基)を有することが必要である。
【0015】
上記式(2)中、R2は炭素数1〜12のアルキル基であり、特にメチル基等のアルキル基が好ましい。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはbは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cは1.5〜2.5である。
【0016】
1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSi−H基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このアルキルハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは3〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが望ましく、その粘度は25℃において0.1〜10,000cps、特に0.5〜5,000cpsであることが望ましい。
【0017】
式(2)のアルキルハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0018】
このアルキルハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(1)成分のアルキルポリシロキサン100部(重量部、以下同じ)に対して0.1〜300部、好ましくは0.3〜200部、特に好ましくは0.5〜100部である。また、(2)成分のアルキルハイドロジェンポリシロキサンは、(1)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、(2)成分中の珪素原子に結合した水素原子(Si−H基)の量が0.3〜20モル、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.8〜3モル、特に0.8〜2.5モル程度となる量で配合することもできる。
【0019】
(3)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として0.1〜1,000ppm、好ましくは0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度とすればよい。
【0020】
付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、上記(1)、(2)、(3)成分にて構成される。
【0021】
一方、有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物の(i)成分の1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサンとしては、上記(1)成分と同様のものを使用することができる。
【0022】
また、(ii)成分の有機過酸化物としては、従来公知のものを使用することができ、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0023】
有機過酸化物の配合量は触媒量であり、通常、(i)成分のオルガノポリシロキサン100部に対して0.01〜10部とすることができる。
【0024】
有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、上記(i)、(ii)成分にて構成される。
【0025】
次に、(B)成分の補強性シリカ微粉末は、シリカの種類に特に限定はなく、通常使用されるものであればよく、ゴムの補強材として使用されるものである。
【0026】
その補強性シリカ微粉末としては、従来のシリコーンゴム組成物に使用されているものを使用できるが、好ましくは比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ微粉末を用いる。特に50〜400m2/gの沈澱シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカなどが好適に使用される。ゴム強度を向上させるにはヒュームドシリカが好適である。また、上記補強性シリカ微粉末は有機珪素化合物等で表面が疎水化処理されたシリカ微粉末であってもよい。
【0027】
その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で直接処理されたものを用いることができる。その処理法としては一般的周知の技術により処理でき、例えば、常圧で密閉された機械混練装置或いは流動槽に上記未処理のシリカ微粉末と処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温或いは熱処理にて混合処理し、場合により触媒を使用して処理を促進してもよいが、混練後乾燥することにより調製することができる。処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよい。
【0028】
処理剤は、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシランなどのシランカップリング剤、ポリジメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンなどの有機珪素化合物が挙げられ、これらの処理剤で表面処理し、疎水性シリカ微粉末として用いる。処理剤としては、シラン系カップリング剤又はシラザン類が好ましい。
【0029】
(B)成分の配合量は、(A)成分100部に対して1〜100部とすることがよく、1部未満では機械的強度が弱くなり、100部を超えると(B)成分の充填が困難となり、作業性、加工性が悪くなる。好ましくは2〜80部がよい。
【0030】
なお、上記疎水化処理したシリカ微粉末を更に配合時に疎水化処理すればより好適である。その場合、配合時に使用する疎水性を与える表面処理剤としては、シラン系カップリング剤やその部分加水分解物、オルガノシラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル或いはオルガノハイドロジェンポリシロキサンオイル等が挙げられる。
【0031】
使用される表面処理剤において、シラン系カップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルアミノシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン及びクロロプロピルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシランなどが例示されるが、シラン系であれば特に限定なく使用でき、また上記シランの部分加水分解物も使用できる。
【0032】
使用されるオルガノシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン等が例示される。
【0033】
使用されるチタネート系カップリング剤としては、テトラi−プロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート及びオクチレングリコールチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が例示される。
【0034】
使用されるオルガノポリシロキサンオイルとしては、環状、鎖状、分岐状、網目構造のいずれでもよいが、粘度0.65〜100,000センチストークス(25℃)の直鎖状又は環状のジメチルポリシロキサンが好適に使用される。使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンオイルとしては、分子構造が環状、鎖状、分岐状、網目構造のいずれでもよいが、下記平均組成式(3)で示される直鎖状のメチルハイドロジェンポリシロキサンが望ましく使用される。
【0035】
【化1】
Figure 0003944681
【0036】
なお、式中rは0〜50の整数、sは1〜50の整数の範囲である。rが50より多いと、粘度が高く処理しにくくなる。sが50より多くても同様に粘度が高く、表面が濡れ難く好ましくない。
【0037】
処理剤の配合量は、その処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよいが、特に問題がなければそれより少ない配合量で行ってもよい。特には、上記シリカ微粉末100部に対して0.1部未満では、処理剤としての効果がなく、20部より多いと、工程上無駄となり、コスト的にも不利であることから、0.1〜20部となるような量であり、好ましくは0.5〜10部となる量である。
【0038】
処理法は、シリカ微粉末だけを処理するようにしても他の成分と混練しながら処理してもどちらでもよいが、一般的周知の技術により処理でき、例えば、常圧で機械混練装置に他の配合物と処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温或いは熱処理にて混合処理し、場合により触媒を使用して処理を促進してもよいが、混練することにより調製することができる。
【0039】
本発明に使用される(C)成分の接着性付与成分は、従来付加硬化型シリコーン接着剤などに使用されている接着成分が有効に用いられる。
【0040】
この接着性付与成分としては、例えば、分子中にSi−H基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、エステル基、無水カルボキシ基、アミノ基及びアミド基の1種又は2種以上を含有する有機化合物又は有機珪素化合物、或いはこれらの混合物などが挙げられるが、好ましくは1分子中に少なくとも1個、通常1〜10個、特には2〜6個程度のSi−H基(即ち、珪素原子に結合した水素原子)及び/又はアルケニル基を有しかつグリシドキシ基等のエポキシ基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基などのアルコキシシリル基、アクリル基、メタクリル基、エステル基、無水カルボキシ基、アミノ基、アミド基の1種又は2種以上を含有する珪素原子数1〜30、好ましくは2〜20、特には4〜10程度の直鎖状又は環状のオルガノシロキサンオリゴマーやオルガノアルコキシシランなどの有機珪素化合物を使用することができる。
【0041】
具体的には、エポキシ基、アルコキシシリル基、エステル基、アルケニル基、アミノ基、無水カルボキシ基、アクリル基、メタクリル基を含むものとして、例えば、アリルグリシジルエーテル等のアルケニル基とエポキシ基を有する非珪素系の有機化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性基含有アルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のアルケニル基含有アルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基又はメタクリル基含有アルコキシシランなどのオルガノアルコキシシラン等が挙げられる他、オルガノシロキサンオリゴマーとして下記のような化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】
Figure 0003944681
【0043】
【化3】
Figure 0003944681
【0044】
また、(C)成分の接着性付与成分として下記に示すような分子中にフェニレン骨格を含有し、エポキシ基、アルケニル基、水酸基から選ばれる少なくとも2個の官能性基を有する非珪素系の有機化合物を例示することもできる。
【化4】
Figure 0003944681
(Rは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、nは0又は1〜16の整数である。)
【0045】
本発明に使用される(C)成分としては上記化合物が有効であるが、このような化合物を(C)成分として用いた場合には十分な接着力が得られるものの、金型等の金属成形治具を用いた場合には、この成形治具に接着してしまうおそれがある。最も成形治具にテフロン樹脂コート等を施すなど、接着性に乏しい素材を表面に使用するという方法も問題解決の一つの手段であるが、使用寿命の点から信頼性に劣る場合がある。このような場合には、エポキシ基、アルコキシ基、無水カルボキシ基を含有しない珪素化合物が有用である。具体的には、熱可塑性樹脂又は該樹脂を含む組成物と良好に接着しながら金属に対して接着し難い化合物として、1分子中に少なくとも1個、通常1〜20個、特には3〜10個程度のSi−H基を有しかつ通常珪素原子には直接結合していない、1〜3価のフェニル骨格又はフェニレン骨格等を有する珪素原子数1〜30、好ましくは2〜20、特には4〜12程度の直鎖状、分岐状、環状のオルガノシロキサンオリゴマーなどの有機珪素化合物を使用することができる。このようなものとして下記のような化合物を例示することができる。これらのうち特にフェニル骨格或いはフェニレン骨格を2個以上含む化合物が好適である。
【0046】
【化5】
Figure 0003944681
【0047】
【化6】
Figure 0003944681
【0048】
また、アミノ基、アミド基を有する接着性付与成分としては、通常使用されるものでよいが、その他に下記のものが例示される。
X−C36−NH−Ph−NH−C36−X
X−C36−NH−Ph−Ph−NH−C36−X
X−C36−NH−Ph−CH2−Ph−NH−C36−X
X−C24−CO−NH−Ph−NH−CO−C24−X
X−C24−CO−NH−Ph−CH2−Ph−NH−CO−C24−X
X−C36−CO−NH−Ph−CH2−Ph−NH−CO−C36−X
X−C24−CO−NH−Ph−O−Ph−NH−CO−C24−X
X−C36−NH−CO−Ph−CO−NH−C36−X
X−C36−NH−CO−Ph−CO−Ph−CO−NH−C36−X
X−C36−O−CO−NH−Ph−NH−CO−O−C36−X
X−C36−O−CO−NH−CH2−Ph−CH2−NH−CO−O−C36−X
X−C36−O−CO−NH−Ph−CH2−Ph−NH−CO−O−C36−X
X−C36−NH−CO−NH−Ph−NH−CO−NH−C36−X
X−C36−NH−CO−NH−Ph−CH2−Ph−NH−CO−NH−C36−X
但し、Xは、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−トリヒドロシクロテトラシロキサン基を示す。また、Phはフェニル基又はフェニレン基を示す。
【0049】
なお、上記接着性付与成分は上記成分を単独で用いても併用してもよい。
また、1個のアルケニル基とエステル基を少なくとも1個有する有機化合物或いは有機珪素化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸類、安息香酸アリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ピロメリット酸テトラアリルエステル、アルキル酸アリルエステル等のアリルエステル類などを含有した有機化合物或いは有機珪素化合物を配合してもよい。
【0050】
接着性付与成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン組成物100部に対して0.1〜50部がよく、配合量が0.1部未満では十分な接着性が得られず、50部を超えると物性低下を引き起こす可能性がある。好ましくは0.2〜30部である。
【0051】
本発明に使用される(D)成分の(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する有機珪素化合物は、(C)成分の接着性付与成分をゴム表面に排出する効果をもつ必須成分であり、接着力を向上させるために必要なものである。
【0052】
この場合、(D)成分の有機珪素化合物としては、そのシロキサン骨格の珪素原子に結合する置換基の少なくとも1個が(A)成分のオルガノポリシロキサン組成物を構成するポリシロキサン成分と架橋反応が可能な反応性官能基であり、珪素原子に結合した残余の基が上記反応性官能基以外の非置換又は置換1価炭化水素基であるオルガノポリシロキサンであるものが好ましい。
【0053】
ここで、上記反応性官能基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基であり、これは上記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物のポリシロキサン成分の1つであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−H基と架橋反応する。また、反応性官能基としての珪素原子に結合する置換基としては水素原子(即ちSi−H基の水素原子)でもよい。これは、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物のポリシロキサン成分の1つであるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンのアルケニル基と架橋反応する。
【0054】
上記反応性官能基は、分子中に少なくとも1個有することが必要であるが、好ましくは1〜100個、特に2〜80個である。
【0055】
一方、珪素原子に結合した残余の基としての上記非置換又は置換1価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜10のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、3−クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、C49CH2CH2基、C817CH2CH2基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0056】
このような非置換又は置換1価炭化水素基の中では、メチル基、フェニル基、フルオロアルキル基が好ましい。この場合、フルオロアルキル基としては、アルキル基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子で置換したものであればよいが、特に
CF3−(CF2q−(CH2p
(但し、pは0〜4、好ましくは2〜3の整数、qは0〜7の整数である。)
で示されるもの、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、C49CH2CH2基、C817CH2CH2基等が好ましい。
【0057】
反応性官能基を除いた珪素原子に結合した残余の基としての上記非置換又は置換1価炭化水素基のうち、フェニル基及び/又はフルオロアルキル基は、珪素原子に結合する全置換基の1〜90モル%であることが好ましいが、より好ましくは2〜85モル%、特には3〜80モル%である。なお、残りの置換基は、メチル基等のアルキル基であることが好ましい。
【0058】
上記以外の(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する有機珪素化合物としては、接着性を害しない限り、シリコーン変性パーフルオロアルキルエーテル化合物、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、ウレタン変性シリコーンオイルなどを用いてもよい。
【0059】
(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する有機珪素化合物は、25℃での粘度が10cps以上10,000,000cps以下、より好ましくは15cps以上1,000,000cps以下、更に好ましくは20cps以上100,000cps以下であることが好ましい。
【0060】
この場合、(D)成分は、(A)成分と非相溶でなければ効果がなく、(A)成分と相溶性のないオルガノポリシロキサンを選択すればよい。例えば、(A)成分としてジメチルポリシロキサンを使用した場合、(D)成分にはフェニル基含有オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0061】
(D)成分の分子形状は、特には限定されないが、鎖状、環状、分岐状或いは三次元網状構造でもよく、好ましくは直鎖状のものがよい。
(D)成分の配合量は、(A)成分100部に対して0.05〜20部がよく、0.05部未満では、接着力を向上するには不十分であり、20部を超えると、逆に接着力が低下する。好ましくは0.1〜10部がよい。
【0062】
また、本発明にオイルブリード性を付与するために1種以上のフェニル基含有の無官能オルガノポリシロキサンを(A)成分100部に対して1〜20部添加してもよい。
【0063】
本発明のシリコーンゴム接着剤組成物には、上記した成分以外に、目的に応じて各種の添加剤、例えば酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン等の金属酸化物及びその複合物、石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、カーボン等の無機充填剤を添加することができ、また目的とする特性を損なわない限り、顔料、耐熱剤、難燃剤、可塑剤、反応制御剤等を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0064】
また、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物を用いる場合、ビニルシクロテトラシロキサン等のビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアネート、アルキルマレエート、エチニルシクロヘキサノール等のアセチレンアルコール類、シラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びそれらの混合物からなる群から選ばれる化合物などの付加反応制御剤等を本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。
【0065】
本発明のシリコーンゴム接着剤組成物は、上記した(A)〜(D)成分、任意成分を常温で均一に混合するだけでも得ることが可能であるが、好ましくは(B)成分は、(A)成分のうち(2)、(3)成分、或いは(ii)成分を除いた成分とプラネタリーミキサーやニーダー等で100〜200℃の範囲で1〜4時間熱処理し、その時点で上記処理剤を添加してもよい。その後室温で(2)、(3)成分、或いは(ii)成分、(C)、(D)成分を混合して組成物を得ることができる。成型方法は、混合物の粘度により自由に選択することができ、注入成型、圧縮成型、射出成型、押出成型、トランスファー成型等いずれの方法を採用してもよい。その硬化条件は、通常60〜200℃で10秒〜24時間の範囲内で加熱成形することができる。
【0066】
本発明のシリコーンゴム接着剤組成物は、有機樹脂との一体成形体を得る場合に好適に用いられる。この場合、本発明に使用される熱可塑性樹脂は、通常のオレフィン重合系或いは縮重合系等の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ナイロン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶樹脂等、或いはこれらの混合物であってもよい。
【0067】
このような組成からなる上記未硬化シリコーンゴム接着剤組成物を上記熱可塑性樹脂の上に一体成形する方法としては、予め成形された熱可塑性樹脂の上に未硬化のシリコーンゴム接着剤組成物を所望の形状にしてのせ、熱可塑性樹脂の溶融する温度以下の温度で加熱する方法、予め成形された熱可塑性樹脂の上に未硬化のシリコーンゴム接着剤組成物をのせ、熱可塑性樹脂の溶融する温度以下で圧縮する方法、射出成型機により熱可塑性樹脂を金型に先に射出成形し、次いで該金型内にシリコーンゴム接着剤組成物を加熱射出する方法等が挙げられる。なお、上記熱可塑性樹脂の成形体を製造する方法の一例として、例えば上記熱可塑性樹脂をペレット化し、熱可塑性樹脂の軟化点以上に加熱した成形金型へ注入し、次いで金型を熱可塑性樹脂の軟化点以下に冷却する公知の方法が便利である。この場合、一般に射出成型機、トランスファー成型機と呼ばれている機器の使用が可能である。
【0068】
一方、シリコーンゴム接着剤組成物は未硬化の状態で液状、パテ状、ペースト状のいずれでもよいが、成形のし易さから液状もしくはペースト状のものが好ましい。なお、本発明に係るシリコーンゴム接着剤組成物の硬化条件は、熱可塑性樹脂との強固な接着性を発現させるためには樹脂が変形、溶融、変質しない温度、硬化時間で行うことが必要である。樹脂の種類にもよるが、100〜150℃で0.2〜30分程度、とりわけ0.4〜10分程度の硬化条件で一体成形体を得ることができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、シリコーンゴム接着剤組成物と熱可塑性樹脂との一体成形体において、射出成形を用いて簡単かつ短時間で成形可能で、プライマーレス成型に適した熱可塑性樹脂との接着性良好なシリコーンゴム接着剤組成物を与え、かつ熱可塑性樹脂を改質せずに接着可能である一体成形体を得ることができ、電気、電子、自動車、精密機械、建築関係等に有用なものである。
【0070】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。
シリコーンゴム組成物調製例
表1,2に示すように、(A)成分中の(1)成分として両末端がそれぞれジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が10,000cpsのジメチルポリシロキサン、(B)成分のシリカ微粉末として比表面積200m2/gのヒュームドシリカを使用し、ヘキサメチルジシラザンを(1)成分100部に対して8部加え、ニーダーミキサーに配合して均一に混合した後、更に150℃で1時間加熱混合してシリコーンゴムベースを得た。このシリコーンゴムベースに残りの(A)成分中の(2)成分として下記平均組成式(4)で示されるメチルハイドロジェンポリシロキサン、(3)成分として塩化白金酸の1%2−エチルヘキサノール溶液、更に反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノールの50%エタノール溶液を加え、更に(C)成分として下記I〜IIIの接着性付与成分、(D)成分として下記<1>〜<4>の(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する有機珪素化合物を均一に混合し、シリコーンゴム組成物を得た。
【0071】
【化7】
Figure 0003944681
【0072】
(D)成分
<1>25℃の粘度が1,000cpsのフェニル基含有量10モル%の両末端ジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
<2>25℃の粘度が1,000cpsのフェニル基含有量20モル%の両末端ジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
<3>25℃の粘度が2,000cpsのフェニル基含有量30モル%の両末端ジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
<4>25℃の粘度が3,000cpsのフェニル基含有量60モル%の両末端ジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
<5>25℃の粘度が1,000cpsのフェニル基含有量20モル%で、分子中にSi−H基を6個含有する、両末端トリメチルシロキシ基で封鎖されたジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体
【0073】
【化8】
Figure 0003944681
【0074】
[実施例1]
熱可塑性樹脂用射出成型機に数平均分子量が約1万のポリカーボネート樹脂(PC)、数平均分子量が約2万のポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ナイロン6−6(PA66)、ポリフタルアミド(PPA)をそれぞれ投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmの各樹脂シートを数枚得た。次に、作成した各樹脂シート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(I)のものを使用し、(D)成分として<1>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0075】
ここで、図1において、a,bは樹脂シート、c,dはそれぞれ支持体把持部、eはシリコーンゴム組成物の硬化物である。
【0076】
[実施例2]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(II)のものを使用し、(D)成分として<1>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0077】
[実施例3]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(III)のものを使用し、(D)成分として<1>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0078】
[実施例4]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(III)のものを使用し、(D)成分として<2>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0079】
[実施例5]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(III)を使用し、(D)成分として<3>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0080】
[実施例6]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で接着性付与成分として式(III)を使用し、(D)成分として<4>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0081】
[実施例7]
(D)成分として<5>を2部添加した以外は実施例6と同様にして得られた試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0082】
[比較例1]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、(C)成分の接着性付与成分と(D)成分を添加しないで得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0083】
[比較例2]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、(C)成分の接着性付与成分を使用せず、(D)成分として<2>を添加して得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いてJ1SK6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0084】
[比較例3]
熱可塑性樹脂用射出成型機に実施例1と同様の樹脂を投入し、290℃で可塑化した後、多数個取りシート型金型キャビティに射出し(射出条件は、射出時間6秒、冷却時間30秒、射出圧力1,000kg/cm2、硬締圧力35ton、キャビティ温度100℃)、厚み2mm×幅25mm×長さ100mmのシートを数枚得た。次に、作成したシート、同寸法のクロムメッキ金属板を引張り剪断接着試験片作成治具に固定し、上記調製例で(C)成分の接着性付与成分として式(III)のものを使用し、(D)成分を用いずに得たシリコーンゴム組成物を同治具に適量流し込み、120℃の恒温槽にて10分間加熱し、硬化させた。このように得られた図1の試験片を用いて、JIS K6850の方法に準じて接着性を調べた。
【0085】
[実施例8]
実施例4と同様の樹脂とシリコーンゴム組成物の成形を2基の射出装置を備えた2色射出成型機を使用して行った。この成型機は、射出装置のノズル部(1)及び(2)が図2のように金型に連結する。ノズル部(1)は金型パーティングラインから、ノズル部(2)は金型右側面中央部から射出する。また、使用した金型は、左側金型片(3)と右側金型片(4)とからなり、それぞれの相対向する面の2カ所には成形凹部が形成されており、該各成形凹部により図2に示したようにキャビティ部(5)及び(6)が形成されている。
【0086】
この射出成型機にて各樹脂を290℃にて溶融し、ノズル部(1)からキャビティ部(5)に射出し、樹脂シート成形体(7)を形成させた。その条件は、射出時間6秒、冷却時間35秒、キャビティ部(5)及び左側金型片(3)の温度は100℃であった(図3参照)。
【0087】
次に、右側金型片(4)を外し、片開きを行うと共に、左側金型片(3)の凹部に樹脂シート成形体(7)を保持したまま左側金翠片(3)を180°回転させ、右側金型片(4)を合わせて再び型締めし、シリコーンゴムシート成形体形成用のキャビティ部をシート成形体(7)に形成された面と左側金型片(4)の形成凹部とで形成せしめた(図4参照)。
【0088】
この状態で射出装置のノズル部(2)から樹脂シート成形体(7)に形成された面に実施例1と同様のシリコーンゴム組成物(組成を表1,2に示す)を射出し、ゴムシート成形体(8)を形成させた。その条件は射出時間6秒、硬化時間90秒、左側金型片(3)の温度は100℃、右側金型片(4)の温度は120℃であった(図5参照)。
【0089】
以上の製造工程によって図6に示すような樹脂シートとゴムシートからなる複合体(幅2.5mm、長さ15cm、厚み2mm(樹脂とゴムは同寸法)を得た。金型離型性、寸法精度、生産性は良好であった。またその接着性を調べた。
【0090】
以上の各例の評価結果を表1,2に示す。なお、評価方法は下記の通りである。
接着試験条件:
JIS K6850引張り剪断接着試験において25kgf/cm2以上を接着とした。
【0091】
【表1】
Figure 0003944681
【0092】
【表2】
Figure 0003944681
【0093】
表1,2に示した本発明のシリコーンゴム接着剤組成物は、短時間硬化が可能で、各樹脂と強固に接着した一体成形体を得ることができるものであった。また、金型離型性、寸法精度、生産性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着性を調べた試験片を示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図2】2色射出成型装置の概略図である。
【図3】同装置を用いて第1のキャビティ部に樹脂を射出した状態を示す概略図である。
【図4】樹脂成形体を第2のキャビティ部に挿入した状態を示す概略図である。
【図5】第2のキャビティ部にシリコーンゴム組成物を射出した状態を示す概略図である。
【図6】2色射出成型装置を用いて得られた複合体の斜視図である。
【符号の説明】
1 ノズル部
2 ノズル部
3 左側金型片
4 右側金型片
5 キャビティ部
6 キャビティ部
7 樹脂シート成形体
8 ゴムシート成形体

Claims (7)

  1. (A)加熱硬化型のオルガノポリシロキサン組成物として、
    (1)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン、
    (2)1分子中に平均2個以上の珪素原子結合水素原子(Si−H基)を有するアルキルハイドロジェンポリシロキサン、
    (3)付加反応触媒、からなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物
    又は
    (i)1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するアルキルポリシロキサン、
    (ii)有機過酸化物、からなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物
    から選ばれる加熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物;100重量部
    (B)補強性シリカ微粉末;1〜100重量部
    (C)接着性付与成分;0.1〜50重量部
    (D)アルケニル基及びSi−H基から選ばれる(A)成分と反応性の官能基を有し、該反応性官能基を除いた珪素原子に結合する非置換又は置換1価炭化水素基の1〜90モル%がフェニル基及び/又はフルオロアルキル基である、(A)成分と非相溶なシロキサン骨格を有する、(C)成分以外の直鎖状オルガノポリシロキサン;0.05〜20重量部
    を含有してなることを特徴とするシリコーンゴム接着剤組成物。
  2. (C)成分の接着性付与成分が、分子中にSi−H基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、エステル基、無水カルボキシ基、アミノ基及びアミド基の1種又は2種以上を含有する有機珪素化合物或いはそれらの混合物である請求項1記載のシリコーンゴム接着剤組成物。
  3. (C)成分の接着性付与成分が、分子中にフェニレン骨格を含有し、エポキシ基、アルケニル基、水酸基から選ばれる少なくとも2個の官能性基を有する非珪素系の有機化合物である請求項1記載のシリコーンゴム接着剤組成物。
  4. (C)成分の接着性付与成分が、分子中に少なくとも1個のSi−H基及び/又はアルケニル基を有し、かつアクリル基、メタクリル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、エステル基、無水カルボキシ基、アミノ基及びアミド基の1種又は2種以上を含有する有機珪素化合物又はそれらの混合物である請求項1又は2記載のシリコーンゴム接着剤組成物。
  5. (C)成分の接着性付与成分が、分子中に少なくとも1個のSi−H基を有し、かつフェニレン骨格を少なくとも1個有する珪素原子数1〜30の有機珪素化合物である請求項1又は2記載のシリコーンゴム接着剤組成物。
  6. (C)成分の接着性付与成分が、分子中に少なくとも1個のSi−H基を有し、かつフェニル骨格を少なくとも1個有する珪素原子数2〜30の分岐状又は環状のオルガノシロキサンオリゴマーである請求項1又は2記載のシリコーンゴム接着剤組成物。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項記載のシリコーンゴム接着剤組成物の硬化物と熱可塑性樹脂との一体成形体。
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