JP3837923B2 - 平面型偏波共用アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリプレート等の平面アンテナを積層した平面形偏波共用アンテナ装置に関し、特に送受信の効率の向上に関する。本発明は、例えば移動体用のアンテナ装置に好適に適用される。
【0002】
【従来の技術】
図1および図2は、「平面型偏波共用アレーアンテナの特性」(塚本活也等、電子情報通信学会論文誌、B−II、Vol.J79−B−II、No.8、pp.476〜485、1996年8月)に開示されているアンテナ装置の構成を示している。アンテナ1は、2つのトリプレートアンテナ2、3を直交方向に積み重ねた構成を有する。下層アンテナ2は水平偏波を受信し、上層アンテナ3は垂直偏波を受信する。
【0003】
アンテナ1は、積層された下地板4、水平偏波給電回路板5、中地板(水平偏波放射回路板)6、垂直偏波放射回路板7および上地板(放射回路板)8を有する。各層の間は低誘電率の誘電体で隔離されている。給電回路板5、7はそれぞれ給電プローブ5a、7aおよび給電ライン5b、7bを有する。水平給電プローブ5aと垂直給電プローブ7aは直交する。
【0004】
中地板6は、各アンテナ素子ごとに、放射素子としての2つの結合スロット6aを有する。図2に示す如く、下層の水平給電プローブ5aの電磁結合が得られるように、スロット6aの長辺が水平給電プローブ5aと直交している。
【0005】
一方、図2に示すように、上層アンテナ3の給電プローブ7aはスロット6aの長辺と平行であり、かつ、給電プローブ7aの下側には金属部分が配置されている。これにより、中地板6は、上層アンテナ3の電磁結合を無視できるグランドとなっている。
【0006】
上地板8は、アンテナアレーに対応するように配置された複数の放射窓8aを有する。放射窓8aは正方形の開口アパーチャ素子で、垂直偏波を受信するとともに、水平偏波を下層アンテナ2まで透過させる。
【0007】
放射回路板である中地板6および上地板8は金属板やプリント板で構成される。中地板6は、下層アンテナ2の放射回路および上層アンテナ3のグランドとして機能し、これにより全体の層数が削減されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の平面型偏波共用アンテナ装置には、以下に説明するように、さらなる効率の向上が望まれる。特に、アンテナを移動体に搭載する場合、低背化(背丈を低くすること)の要求が強く、また、広範囲の任意の場所で十分な性能を発揮できることが求められ、このような要求に応える高効率アンテナの提供が望まれる。
【0009】
従来のアンテナでは、各アンテナ素子の2つの結合スロット6a(スロットペア)の位相が原理的に揃わず、これは受信方向の誤差要因となる。スロット間に1波長分の間隔を開ければスロットペアの位相は揃うが、そのようなスロット間隔はアンテナアレー上では実現困難である。そのため、1素子のアンテナ効率が低いという不利な点がある。図1および図2のアンテナは、多数のアンテナ素子の間のキャンセル作用により位相ずれの影響を防止している。しかし、例えば車両用アンテナのように少数素子のアンテナ構成が求められる場合、上記のキャンセル作用を期待できないこともある。このような場合でも高いアンテナ効率を得るためには、1素子単体の性能を向上することが望ましい。
【0010】
また、従来のアンテナ装置は、車両等の移動体に搭載した場合に偏波角損失の面での不利がある。例えばCS放送を考えると、送信局(衛星)と受信局(車両)との経度差に起因して、水平偏波が水平線から傾く(垂直偏波も同様)。この傾きの角度が偏波角である。従来のBS放送では偏波角を考慮する必要がなかったが、CS放送の場合には偏波角の影響でノイズが増加する。固定受信局では、偏波角が常に一定なので、偏波角損失が生じないようにアンテナの向きを最初にセッティングしてやればよい。しかし、移動体の場合には、場所によって偏波角が変わるので、偏波角損失を低減する他の手法の提供が望まれる。
【0011】
さらにまた、従来のアンテナ装置には、平行平板モードの観点から、アンテナの低背化が困難という不利な点がある。平行平板モードとは、放射に寄与せず地板間を電波する電磁波をいう。周知のように、多数のアンテナ素子を適当な間隔で配置することにより、平行平板モード波が他のアンテナ素子から放射され有効利用される。しかし、低背化のためには、高さ方向に配列される素子数を削減する必要がある。そこで、平行平板モードを有効利用性を確保しつつ、高さ方向の素子数を削減できるようにすることが求められる。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高効率の平面型偏波共用アンテナ装置を提供することにある。本発明は、移動体用アンテナに係る上記の課題を解決できるが、ただし移動体用アンテナに限定されるものではない。
【0013】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するため、本発明は、異なる方向の偏波用の平面アンテナを積層した構成のアンテナ素子を少なくとも一つ含む平面型偏波共用アンテナ装置において、前記平面アンテナの給電プローブが、偏波方向の両端にパッチエッジを設けたパッチ形状を有し、下層の給電プローブの上に配置され、下層平面アンテナを上層と結合する結合スロットを有する中地板を備え、前記結合スロットを下層の給電プローブの両端に設けた前記パッチエッジのそれぞれの上にそれぞれ配置することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、電磁波が結合スロットを通って、プローブ両端のパッチエッジに受信される(送信では逆、以下同様)。両端のパッチエッジには同相の磁流が発生するので、従って、両エッジ、すなわち、両スロットで放射波の位相が揃う。これにより、1アンテナ素子の効率を上げることができる。
【0015】
(2)また本発明の一態様では、平面アンテナの給電プローブが、移動体の移動エリア内における偏波角の代表値に対応する方向を向くように、放射窓の上下辺または左右辺に対して傾けて配置される。本発明によれば、プローブの向きを偏波角の代表値に揃えることで、移動エリア内における偏波角の変化を吸収することができ、偏波角損失を平均的に低減することができる。
【0016】
好ましくは、下層平面アンテナを上層と結合する結合スロットが、前記給電プローブの設置角度に応じて傾けて配置される。これにより、結合スロットとプローブの向きのずれに起因する交差偏波成分の発生が回避される。
【0017】
好ましくは、複数の前記アンテナ素子が、素子アレーを形成するように配置され、そして、素子アレーに対応する格子状の整列された放射窓群を有する上地板が設けられる。この態様では、給電プローブは傾けて配置されるが、放射窓は格子状に設けられ、傾けることなく整列されている。従って、放射窓間の配線スペースを確保し、配線の自由度を高くできる。
【0018】
(3)また本発明の一態様は、素子アレーを形成する複数のアンテナ素子を含み、各アンテナ素子が、異なる方向の偏波用の平面アンテナを積層した構成をもつ平面型偏波共用アンテナ装置において、前記平面アンテナは、給電プローブの数が行方向と列方向とで非同一に配置された素子アレーからなる平面アンテナであり、下層平面アンテナの給電プローブは偏波方向の両端にパッチエッジを備えたパッチ形状を有し、給電プローブのパッチエッジと略直交する方向と、前記素子アレーの給電プローブの数が多い辺の方向とが揃えられていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、下記のように、高いアンテナ効率を確保しつつ、長手方向をもつ素子アレー(長方形、楕円形など)を構成できる。平行平板モード波には、伝播しやすい方向と、伝播しにくい方向がある。例えば、パッチ形状の給電プローブでは、平行平板モード波は主として給電方向に伝播する。本発明によれば、下層アンテナの平行平板モードの伝播方向がアレー長手方向に揃えられる。従って、下層の平行平板モード波が、アレー長手方向に配列されたアンテナ素子群を使って有効利用される。放射すべき電波を平行平板モードとして閉じこめやすい下層アンテナの平行平板モードの有効利用が確保されるので、長方形または楕円形などの素子アレーでも十分なアンテナ効率が得られる。その結果、横長、縦長などの素子配列が可能となり、横長アンテナにより低背化が可能となる。
【0020】
なお、本発明のアンテナ素子は、例えば、前記平面アンテナとしてのトリプレートアンテナを積層したものである。ただし、平面アンテナはトリプレートアンテナには限定されない。例えば、アンテナ素子は、トリプレートアンテナの上にマイクロストリップアンテナを積層したものでもよい。また、本発明のアンテナ装置は、送信用に用いられても、受信用に用いられても、両方に用いられてもよく、この点は当業者には周知の事実である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、受信アンテナを例にして図面を参照し説明する。なお、図1、図2に関連してすでに説明した事項については、適宜説明を省略する。
【0022】
[アンテナ素子]
図3は、アンテナ装置を構成する1つのアンテナ素子10を示している。アンテナ素子10は、2つのトリプレートアンテナ12、14を直交方向に積み重ねた構成を有する。下層アンテナ12は水平偏波を受信し、上層アンテナ14は垂直偏波を受信する。より具体的には、アンテナ素子10は、積層された下地板16、水平偏波給電回路板18、中地板(水平偏波放射回路板)20、垂直偏波給電回路板22および上地板(放射回路板)24を有する。各板の間は厚さ2mm程度の誘電体で隔離されている。水平偏波給電回路板18は水平給電プローブ30を有し、垂直偏波給電回路板22は垂直給電プローブ32を有する。また、中地板20には結合スロット34が設けられ、上地板24には放射窓36が設けられている。
【0023】
図4は、アンテナ素子10を上方から見た図である。直交する水平給電プローブ30、垂直給電プローブ32は、それぞれ水平偏波、垂直偏波を受信する。2つの結合スロット34の長辺が下層の水平給電プローブ30と直交しており、これにより、水平給電プローブ30の電磁結合が得られる。また、結合スロット34の長辺は、上層の垂直給電プローブ32と平行であり、かつ、垂直給電プローブ32の下側には金属部分が配置されている。これにより、中地板20は、上層アンテナ14の電磁結合を無視できるグランドとなっている。以上より、中地板20は、下層アンテナ12の放射回路および上層アンテナ14のグランドとして機能している。また、放射窓36は、14mm×14mmの正方形の開口アパーチャ素子で、垂直偏波を受信するとともに、水平偏波を下層アンテナ12まで透過させる。
【0024】
本実施形態では、その特徴として、給電プローブ30、32が長方形のパッチ形状を有している。水平給電プローブ30は、その偏波方向の両端に、偏波方向と交差(直交)するパッチエッジ30a、30bを有する。パッチエッジ30bからは、インピーダンスマッチングが得られるように幅を調整された細長い給電ライン30cが延びている。垂直給電プローブ32も、同様に、偏波方向と交差するパッチエッジ32a、32bおよびパッチエッジ32bから延びる給電ライン32cを有する。
【0025】
パッチ形状のプローブを設けたことで、パッチエッジに磁流が流れ、アンテナ素子10は磁流アンテナとして機能する。垂直偏波は、放射窓36を通って垂直給電プローブ32に受信される。パッチエッジ32a、32bには、図4(b)の矢印X方向の同相の磁流が生じる。
【0026】
また、水平偏波は、放射窓36および2つの結合スロット34を通って水平給電プローブ30に達し、パッチエッジ30a、30bには、図4(c)の矢印Y方向に同相の磁流が流れる。このとき、スロット幅方向(矢印Z)の電界を生じているスロット34を通った電磁波によりパッチエッジ30a、30bに磁流が発生し、パッチエッジ30a、30bの間には定在波が生じる。そして、両エッジ30a、30b、すなわち、2つのスロット34の位相が揃う。これにより、アンテナ素子単体の効率を上げることができる。
【0027】
本実施形態は、特に、アンテナ素子数を少なくしたい場合に好適である。従来のアンテナでは、プローブがパッチ形状を有していないので、スロットペアの位相を揃えるためには、スロット間に1波長分の間隔を開ける必要がある。しかし、例えばCS放送の波長は20mm以上(自由空間で24mm程度、誘電体内で22mm程度)であり、そのような広い間隔のスロットペアを設けることは合理的でない。従来は多数の素子アレーの相互作用を利用して位相ずれの影響をなくしていたが、アンテナの素子数を少なくしようとすると上記の位相ずれが無視できなくなる。一方、本実施形態によれば、スロット間隔が小さいにもかかわらずスロット間の位相が揃うので、アンテナ素子単体でのアンテナ効率を向上することができる。従って、少数の素子でアレーアンテナを構成しても高いアンテナ効率を得ることができる。これは、後述する横長アレーアンテナを構成する場合にも有利である。
【0028】
また、本実施形態によれば、プローブ素子にパッチ形状を採用したので、アンテナが広帯域化されるという利点も得られる。
【0029】
[偏波角損失の低減]
例として、CS放送受信用のアンテナを搭載した移動体としての車両を考える。CS衛星は赤道上の静止衛星である。CS衛星(送信局)と車両(受信局)の位置の経度が異なるので、図5に示すように、水平偏波は水平線に対して傾いた状態で到来する(垂直偏波も同様)。この傾きの角度が偏波角θである。偏波角θの水平偏波を、水平線と平行に配置した給電プローブをもつアンテナで受信したとする。この場合、水平偏波のキャリアが減少し、かつ、垂直偏波を受信しまうことによるノイズ成分が生じ、その結果として生じる損失が偏波角損失である。
【0030】
固定受信局では、偏波角が常に一定なので、偏波角損失が生じないようにアンテナの向きを最初にセッティングしてやればよい。しかし、移動体の場合には、移動体の移動に伴って送受信局の相対位置が変わり、従って場所によって偏波角が変わってしまう。
【0031】
そこで、図6に示すように、本実施形態の特徴として、水平給電プローブ40および垂直給電プローブ42(偏波面)が、車両の移動エリア(アンテナの使用エリア)内における偏波角の代表値に対応する方向を向くように傾けられる。移動エリアは、例えば日本全国である。偏波角の代表値は、例えば、移動エリアの東西方向の中央地点での偏波角である。また例えば、移動体の最も集中する地点での偏波角である。また例えば、移動エリアの地図の図心に対応する地点における偏波角である。その他の任意の代表的な偏波角を適用してよい。図6の例では、関西地方のある特定地点の偏波角が代表値に選定され、その角度だけ給電プローブ40、42が傾けて配置されている。なお、アンテナ素子は、放射窓36の横辺が水平になるように車両に搭載されるものとする。
【0032】
上記のようにプローブの向きを偏波角の代表値に揃えることで、移動エリア内における偏波角の変化を吸収することができる。移動エリアのどこに車両がいるときでも、できるだけ少ない偏波角条件でCS放送を受信できる。従って、偏波角損失を平均的に抑制することができ、アンテナ性能の向上が図れる。
【0033】
さらに、図6に示されるように、本実施形態では、給電プローブ40、42だけでなく、結合スロット44も同じ角度だけ傾けられている。各スロット内辺44aは、水平給電プローブ40のパッチエッジ40a、40bと平行であり、かつ、垂直給電プローブ42の縦エッジ42a、42bと平行である。
【0034】
もしスロット内辺とパッチエッジが平行でないと、パッチエッジ上の磁流の向きとスロット内の電界の向きが合わなくなる。その結果、受信波に交差偏波成分が生じ、すなわち下層アンテナには垂直偏波が部分的に受信される。
【0035】
本実施形態では、結合スロット44を傾けたことにより、上記の交差偏波成分の発生が回避され、高い交差偏波識別能力が得られている。
【0036】
[アレー型アンテナ装置]
図7は、上記のアンテナ素子を使って構成したアレー型アンテナ装置を示している。64個のアンテナ素子が4×16の長方形のマトリックス状に配置されて、横長素子アレーが形成されている。素子アレーを備えた組アンテナ50は、回転テーブル52の上に載せられている。回転テーブル52は、素子アレーがCS衛星の方角を向くように回動される(矢印A)。また、素子アレーがCS衛星と対面するように(法線の角度が衛星の仰角と一致するように)、組アンテナ50の傾き角度が調整される(矢印B)。なお、組アンテナ50の角度を機械的に変更する代わりに、電子走査、位相制御の原理でビーム方向を調整してもよい。
【0037】
図8には、上層および下層の給電回路板60、62が示されている。上層には垂直偏波を受信するための給電プローブ60aが配列され、下層には水平偏波を受信するための給電プローブ62aが配列されている。各回路板60、62には、プローブ間の隙間に給電ライン60b、62bが設けられている。図示されないが、各地板も回路板60、62と同様のサイズを有し、結合スロット等が適当に配列されている。
【0038】
(1)前述したように、給電プローブ60a、62aは、偏波角の代表値に応じて傾けられており、結合スロット(図示せず)も同様に傾けられている。もし、アンテナ素子全体を傾けてしまうと、上地板の正方形の放射窓も傾く。その結果、給電ラインの配線スペースが著しく制約され、図8に示すような給電ライン60b、62bの配線が困難になる。
【0039】
しかしながら、本実施形態では、プローブ、スロットを傾けたものの、図7に示すように、上地板(放射回路板)54の放射窓56(正方形)は、その上下辺を水平線(アレイの横配列方向)に対して傾けることなく、格子状に整列配置されている。従って、放射窓56の間に配線スペースが残され、配線の自由度が確保されている。
【0040】
(2)さらに、本実施形態のもう一つの特徴として、平行平板モードを有効利用するための下記の対策が施されている。平行平板モードとは、前述のように、放射に寄与せず地板間を電波する電磁波をいう。多数のアンテナ素子を一方向に配列し、素子間の間隔を1波長にすれば、平行平板モードの電磁波は他のアンテナ素子から放射され、有効利用され、アンテナ効率も高くなる。しかし、図7のように低背化を狙って横長アレーを採用する場合、縦方向には平行平板モードを十分に有効利用できる数の素子を配列できない。そこで、本実施形態では、下記のようにして平行平板モードの有効利用性を確保してる。
【0041】
平行平板モードには、伝播しやすい方向と伝播しにくい方向がある。本実施形態のパッチ形状の給電プローブの場合、図9に示すように、主要な伝播方向は給電方向と一致する。平行平板モードは給電方向に生じやすいからである。特に、下層アンテナでは給電方向の平行平板モードの強度が大きい。平行平板モードは、不連続点たるスロットで主として生じるからである。
【0042】
また、平行平板モードは、上層アンテナよりも下層アンテナで多く生じる。すなわち、平行平板モードの電磁波の比率は下層アンテナで高い。下層アンテナは、上部の開口が小さく、電磁波を閉じこめやすいからである。
【0043】
本実施形態では、図8(b)に示すように、下層アンテナの給電方向(すなわち平行平板モードの伝播方向)と素子アレーの長手方向(横方向、長辺)とが揃えられている。従って、下層アンテナで生じた平行平板モードが、伝播方向に並んだ他の素子から有効に放射される。これにより、発生率の高い下層アンテナの平行平板モードの有効利用性を確保できる。
【0044】
上層アンテナについては、平行平板モードの伝播方向には4つのアンテナ素子しか並んでいない。しかし、平行平板モードの発生率が低く、十分なアンテナ効率が確保される。
【0045】
以上より、本実施形態では、横長の素子アレーを採用して縦方向の素子数を削減したにもかかわらず、平行平板モードの十分な有効利用性が確保され、効率の高いアンテナを実現することができる。横長アレーの採用により、移動体に適した背丈の低いアンテナ装置を実現できる。
【0046】
なお、アレー形状は、図7の長方形には限定されず、任意の形状でよく、例えば楕円形でもよい。
【0047】
図7の横16素子、縦4素子の横長アレーを試作してアンテナ効率を測定した結果を示す。各アンテナ素子は、図6の寸法形状を有している。周波数帯域は、12.25〜12.75GHzである。縦方向の素子数が少ないにもかかわらず、両偏波共について、60%近い高いアンテナ効率が得られた。アンテナ効率は、指向性利得または無指向性比で表される。
【0048】
また、同アンテナについて、16dB以上の高い交差偏波識別度が得られた。交差偏波識別度は、主偏波と交差偏波の強度の比で表される。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、パッチ形状のプローブとスロットの適切な配置により、各アンテナ素子の結合スロット間の位相が揃えられる。従って、アンテナ素子単体の効率を向上でき、素子数が1または少数でも高いアンテナ効率が得られる。また、給電プローブの角度の適切な設定により、移動体のエリア内の偏波角変化の影響を吸収して、偏波角損失を平均的に抑制できる。また、長方形等の長手方向をもつ素子アレーでも、平行平板モードの有効利用ができ、アンテナ効率を確保できる。
【0050】
以上より、低背化の要求に応えられ、かつ、広いエリアのいろいろな移動先で十分な性能を発揮できる、移動体に適した高効率のアンテナを提供できる。
【0051】
ただし、本発明は、その技術的範囲内で、移動体以外のアンテナにも同様に適用可能であることはもちろんである。例えば、パッチエッジの上に結合スロットを配置するアンテナ素子の構成は、固定型のアンテナにも同様に適用でき、アンテナ素子の効率を向上できる。また、平行平板モードを有効利用できる縦長アレーアンテナを構成し、家庭用に提供することもできる。また、受信用に限られず、送信用のアンテナも本発明の技術的範囲に含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の平面型偏波共用アンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】 図1中の1のアンテナ素子を上方から見た図である。
【図3】 本発明の実施形態のアンテナ装置を構成する1のアンテナ素子を示す図である。
【図4】 図3のアンテナ素子を上方から見た図である。
【図5】 偏波角の定義と偏波角損失を示す図である。
【図6】 偏波角損失の低減のために給電プローブを傾けたアンテナ素子を示す図である。
【図7】 アレーアンテナ装置を示す斜視図である。
【図8】 図7のアンテナの給電回路板を示す図である。
【図9】 平行平板モードの伝播方向を示す図である。
【符号の説明】
10 アンテナ素子、12 下層トリプレートアンテナ、14 上層トリプレートアンテナ、16 下地板、18 水平偏波給電回路板、20 中地板、22垂直偏波放射回路板、24 上地板、30 水平給電プローブ、30a,30b,32a,32b パッチエッジ、32 垂直給電プローブ、34 結合スロット、36 放射窓、50 組アンテナ、52 回転テーブル。
Claims (5)
- 異なる方向の偏波用の平面アンテナを積層した構成のアンテナ素子を少なくとも一つ含む平面型偏波共用アンテナ装置において、
前記平面アンテナの給電プローブが、偏波方向の両端にパッチエッジを設けたパッチ形状を有し、
下層の給電プローブの上に配置され、下層平面アンテナを上層と結合する結合スロットを有する中地板を備え、前記結合スロットを下層の給電プローブの両端に設けた前記パッチエッジのそれぞれの上にそれぞれ配置することを特徴とする平面型偏波共用アンテナ装置。 - 請求項1に記載の平面型偏波共用アンテナ装置において、
アンテナ使用エリアにおける偏波角の代表値に対応する方向を向けて、前記給電プローブが配置されていることを特徴とする平面型偏波共用アンテナ装置。 - 請求項1または2のいずれかに記載の平面型偏波共用アンテナ装置において、
複数の前記アンテナ素子が、長手方向をもつ素子アレーを形成するように配置されており、
下層平面アンテナの平行平板モードの伝搬方向が素子アレーの長手方向と揃えられていることを特徴とする平面型偏波共用アンテナ装置。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の平面型偏波共用アンテナ装置において、
前記アンテナ素子は、前記平面アンテナとしてのトリプレートアンテナを積層したものであることを特徴とする平面型偏波共用アンテナ装置。 - 底地板と、
前記底地板の上に配置された第1の方向の偏波用の下側給電プローブと、
前記下側給電プローブの上に配置され、下層アンテナを上層と結合する結合スロットを有する中地板と、
前記中地板の上に配置された第2の方向の偏波用の上側給電プローブと、
前記上側給電プローブの上に配置され、上下層のアンテナのための放射窓を有する上地板と、
を含み、前記給電プローブは、偏波方向の両端にパッチエッジを設けたパッチ形状を有し、
前記結合スロットが、下層の給電プローブの両端の前記パッチエッジの上にそれぞれ配置されていることを特徴とする平面型偏波共用アンテナ装置。
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