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JP3837757B2 - セレン含有水の処理方法 - Google Patents

セレン含有水の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセレン含有水を生物汚泥と嫌気状態で接触させてセレンを還元し、不溶化したセレン化合物を生物汚泥に吸着させて除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Se6+、Se4+等のセレン化合物を含有する排水を無害化する処理方法として、セレン含有水を生物汚泥と嫌気状態で接触させてセレン化合物を還元する生物処理方法がある。例えば、セレン化合物の生物反応として、水環境学会年会講演集、1995、P176には、(亜)セレン酸還元菌によりラクトースの存在下にSe6+およびSe4+が還元されることが報告されている。この方法はセレン化合物に汚染された場所から、(亜)セレン酸還元菌を分離してセレン化合物の還元に利用するものであるが、このほかに脱窒菌、硫酸塩還元菌、酸生成菌等を利用して嫌気性下にセレン化合物を還元することができる。
【0003】
このような嫌気処理ではセレン化合物は還元により不溶化して生物汚泥に吸着されるので、固液分離により汚泥を分離して排出することにより、セレン化合物が除去される。セレン化合物の還元には基質として有機物の存在が必要であり、過剰に加えられた有機物が嫌気処理工程後に残留するので、嫌気処理後の処理液を好気処理して過剰の有機物を分解する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記処理では、嫌気処理工程で還元され不溶化したセレン化合物は生物汚泥に吸着されて除去されるが、セレンは毒性を有するため、生物汚泥中のセレン含有率が高くなると生物汚泥の活性が低下し、セレン除去率および有機物除去率が低下するという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、嫌気処理において不溶化したセレン化合物による生物汚泥の活性低下を防止して、生物汚泥の活性を高く維持することができ、これによりセレン化合物を安定して効率よく除去することが可能なセレン含有水の処理方法を提案することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のセレン含有水の処理方法である。
〔1〕 セレン含有水を生物汚泥と嫌気状態で接触させてセレンを還元し、不溶化したセレン化合物を生物汚泥に吸着させて除去する方法において、
セレン含有水および有機物を供給して生物汚泥と嫌気状態で接触させて処理を行う嫌気処理工程と、
下記式(1)のSeXで示される生物汚泥中のセレン含有率が20重量%(対MLSS)を超えないように、系に供給する有機物量を制御する制御工程と
を含むことを特徴とするセレン含有水の処理方法。
SeX=ΔSe/ΔX ・・・・(1)
ΔX=ΔBOD・Y ・・・・(2)
但し、SeX:汚泥中のセレン含有率(−)
ΔSe:除去セレン(mg/l)
ΔX:汚泥生成量(mg/l)
ΔBOD:除去BOD(mg/l)
Y:汚泥転換率
〔2〕 嫌気処理工程における生物汚泥を移送して好気処理を行う好気処理工程を含む上記〔1〕記載の方法。
【0007】
本発明において、「(亜)セレン酸」は「セレン酸および/または亜セレン酸」を意味する。また「Se6+」、「Se4+」、「Se0」または「Se2-」は、それぞれの酸化数+VI、+IV、ゼロまたは−IIのセレンを意味する。これらを単にSeと記述する場合がある。
また本発明において、「(亜)硝酸」は「硝酸および/または亜硝酸」を意味する。
【0008】
本発明において処理の対象となるセレン含有水は、Se6+および/またはSe4+のセレン化合物を含む排水その他の水である。Se6+またはSe4+のセレン化合物としては(亜)セレン酸などがあげられる。具体的なセレン含有水としては金属精錬工業排水、ガラス工業排水、化学工業排水、石炭または石油燃焼排ガス処理プロセスの排水などがあげられる。これらのセレン含有水中にはセレン化合物以外に有機物、窒素化合物、硫酸塩などが含まれていてもよい。
【0009】
本発明ではこのようなセレン含有水を、嫌気処理工程において嫌気性生物汚泥と嫌気状態で接触させて嫌気処理を行い、セレン化合物を還元する。
嫌気処理工程で使用する生物汚泥はセレン含有水を嫌気状態に維持することにより生成する生物汚泥であり、活性汚泥処理法のような排水の好気性処理法における生物汚泥(活性汚泥)を採取し、これをセレン含有水に加えて嫌気状態に維持することにより自然発生的に生成させることもできる。このような生物汚泥には(亜)セレン酸を還元するような菌が優勢となり、このような菌によりセレン含有水中の(亜)セレン酸が還元される。
【0010】
嫌気処理工程における生物汚泥中に生成する生物相は、セレン含有水の組成および嫌気処理の条件等により異なる。例えば原水または反応液中に(亜)硝酸イオンが存在する系では硝酸呼吸を行う脱窒菌が優勢となる。また炭水化物等の有機物が存在する系では、酸発酵菌、水素生成菌等が出現し、硫酸塩が存在する系では硫酸塩還元菌が出現する。その他系に存在する物質により、その分解に適した菌が出現し、それらの分解に伴ってセレン化合物の還元が行われる。これらの中では脱窒菌が特に適している。
【0011】
嫌気処理工程で使用できる脱窒菌は硝酸呼吸により(亜)硝酸イオンの酸素を利用して有機物を分解する細菌であり、シュードモナス等の通性嫌気性菌の中に見られる。このような脱窒菌はアンモニア性窒素含有排水の生物反応を利用した硝化脱窒による脱窒方法における脱窒工程に利用されている。
上記の脱窒菌としては、このような生物脱窒法における脱窒菌をそのまま利用できるほか、活性汚泥処理法のような排水の好気性処理における好気性汚泥(活性汚泥)を採取し、これを有機物および(亜)硝酸イオンの存在下に嫌気状態に維持することにより、自然発生的に生成させることもできる。
【0012】
このような脱窒菌その他の(亜)セレン酸を還元する菌を含む生物汚泥は通常フロック状の生物汚泥となっており、本発明ではフロック状の生物汚泥をそのまま懸濁状態で用いることもできるが、粒状、繊維状、その他の空隙率の大きい担体に担持させて用いることもできる。担体としては生物汚泥を担持できるものであれば制限はないが、砂、活性炭、アルミナゲル、発泡プラスチックなどがあげられる。担体に生物汚泥を担持させるには、担体の存在下に馴養ないし処理を行うことにより、担持させることができる。またポリビニルアルコールやポリエチレングリコールなどのゲル中にセレン酸を還元する菌を固定してもよい。
【0013】
嫌気処理工程では、セレン含有水を上記のような生物汚泥と嫌気状態で接触させることにより、セレン含有水中の(亜)セレン酸すなわちSe6+および/またはSe4+は還元されて不溶化する。このときSe6+はSe4+を経てSe0および/またはSe2-に還元されるものと推定される。嫌気処理工程における嫌気状態とは酸素を遮断する状態を意味するが、セレン化合物の還元を阻害しない程度の若干の酸素の混入は許容される。
【0014】
上記の嫌気処理工程では、生物汚泥の呼吸のための酸素源および栄養源が必要になる。酸素源としては嫌気状態であるため分子状酸素ではなく、(亜)硝酸、炭水化物、有機酸、硫酸などの形で含まれる酸化剤となりうる酸素が利用される。栄養源としては反応液中に含まれる有機物や生物汚泥中に含まれる有機物などが基質として利用される。これらの酸素源や栄養源はセレン含有水に含まれていればそのまま利用できるが、含まれていない場合には、メタノール等が別途添加される。これにより生物汚泥は高い活性に維持され、これらの分解に伴って(亜)セレン酸が還元される。
【0015】
脱窒菌を含む生物汚泥の場合について説明すると、反応系に(亜)硝酸イオンを存在させることにより、生物汚泥中に脱窒菌を出現させて活性を高く維持し、これにより(亜)セレン酸を還元させる。(亜)硝酸イオンはすでに反応系に存在するときはそのまま利用することができるが、存在しないときは(亜)硝酸塩等を添加することができる。(亜)硝酸イオンは脱窒菌の活性を維持する限度(NOxとして1〜10mg/l程度)で添加すればよい。
【0016】
原水が有機性またはアンモニア性窒素を含有する場合は、予め硝化工程において原水を硝化菌と接触させて好気性下に硝化を行って有機性またはアンモニア性窒素を(亜)硝酸性窒素に転換し、その硝化液を脱窒菌を含む生物汚泥と嫌気性下に接触させて脱窒を行うとともに、(亜)セレン酸を還元する。この場合、硝化工程ではセレン化合物は(亜)セレン酸となっているが、嫌気処理工程としての脱窒工程で還元される。
【0017】
上記の嫌気処理工程は嫌気処理槽に原水、有機物を導入して行われる。
セレン含有水と生物汚泥との接触には嫌気処理槽を用い、浮遊法、生物膜法など、任意の方法が採用できる。浮遊法は脱窒細菌を含むフロック状の生物汚泥を浮遊状態で攪拌して接触させる方法であり、生物脱窒法における脱窒工程と同様に行われる。
生物膜法は生物汚泥を担体に支持させて生物膜を形成し、これをセレン含有水と接触させる方法であり、固定床式、流動床式など、また上向流式、下向流式など脱窒工程で採用されているのと同様の方式が採用できる。
【0018】
嫌気処理槽における滞留時間は(亜)セレン酸イオンが還元されるのに必要な時間であるが、これは系内に存在する有機物の分解に必要な時間としてとらえることもでき、系内で脱窒等を行う場合は脱窒等に必要な時間の1.1倍以上とすることができる。
嫌気処理は上記の滞留時間となるように所定の汚泥濃度(500〜50000mg/l、好ましくは2000〜20000mg/l)に維持して反応を行う。
【0019】
上記の嫌気処理工程においてセレン化合物が還元されると、不溶性のセレン化合物が生成し、生物汚泥に吸着される。生物汚泥に吸着されたセレン化合物は、固液分離により生物汚泥を分離して排出することにより系外に除去される。
【0020】
上記の嫌気処理工程から取出される嫌気性処理液中には、過剰に添加された有機物その他の被酸化性物質が含まれているので、これらを酸化、分解するために、嫌気処理工程の後に好気処理工程を設けることができる。このような好気処理工程としては、嫌気処理工程で基質として利用された余剰の有機物を分解するための活性汚泥処理工程等があげられる。
【0021】
このような好気処理工程で使用する生物汚泥は通常の活性汚泥が使用でき、被処理液を曝気することにより自然発生的に生成させることができるが、下水処理装置その他の活性汚泥処理装置において生成した活性汚泥を生物汚泥として使用することもできる。好気処理工程は、嫌気性処理液をこのような生物汚泥と好気状態で接触、すなわち曝気することにより、有機物その他の被酸化性物質が酸化される。処理条件は通常の活性汚泥処理と同様に行われる。
【0022】
嫌気処理工程の生物汚泥として脱窒細菌を用いる場合、脱窒細菌は通常の活性汚泥に含まれる生物相と同種の通性嫌気性菌であるため、嫌気処理工程における生物汚泥を分離することなく、そのまま好気処理工程に移送して好気処理を行うことができる。この場合、嫌気処理工程で不溶化したセレン化合物が好気処理により再溶出しないように曝気量を制限し、好気処理工程における酸化還元電位(ORP)を160mV以下に維持するように処理を行うのが好ましい。ここでORPは銀・塩化銀電極を対照とする値である。
【0023】
上記の処理において、生物汚泥に吸着されるセレン化合物は、セレンとして20重量%(対MLSS)以下のセレン含有率の場合には、生物汚泥の活性に影響しないが、20重量%を超えると毒性が現われ始め、生物活性が低下する。これは嫌気処理工程および好気処理工程のいずれの場合も同様である。本発明では、セレン含有率が20重量%を超えないように、系に供給する有機物量を制御することにより、汚泥生成量を変えて生物汚泥中のセレン含有率を20重量%以下に維持し、これによりセレンの毒性を低くして、セレンおよび有機物の除去率を高くする。
【0024】
生物汚泥中のセレン含有率は次式(1)のSeXで表わされる。
SeX=ΔSe/ΔX ・・・・(1)
ΔX=ΔBOD・Y ・・・・(2)
但し、SeX:汚泥中のセレン含有率(−)
ΔSe:除去セレン(mg/l)
ΔX:汚泥生成量(mg/l)
ΔBOD:除去BOD(mg/l)
Y:汚泥転換率
【0025】
本発明では上記SeXが0.2(20重量%)を超えないΔXを与えるように有機物(BOD)を供給する。セレン除去の観点から見ると、除去セレンに対するメタノール等の有機物供給量は少ないほど効率はよいが、有機物供給量が少ないと汚泥生成量が少なくなってセレン含有率が高くなるので、セレン含有率が20重量%を超えないように、有機物を供給する。この場合、余分の有機物を分解するための酸素源(例えばNOx)も同様に添加される。
【0026】
脱窒反応においては、脱窒N量の約3重量倍のBODが必要であり、このBODに対し10〜30重量%がΔxとなる。また有機酸発酵、水素生産反応においては、有機物の種類により汚泥転換率の値が大きく変わり、Δxは除去BODの5〜50重量%の範囲となる。好気処理においては、除去BODの20〜50重量%がΔxとなる。
【0027】
汚泥生成量はBOD汚泥負荷によっても変わり、BOD汚泥負荷が高くなれば汚泥生成量は増大し、低ければ減少する。これは次式で表わされる。
Δx=a・ΔBOD−Kd・X ・・・・(3)
但し、Kd:自己消化速度定数(day-1
X:汚泥量(g)
【0028】
上記の関係から汚泥中のセレン含有率が20重量%を超えないように有機物添加量を制御する。このような有機物添加量は嫌気処理工程および好気処理工程の双方において汚泥中のセレン含有率が20重量%を超えないように制御する。嫌気処理工程と好気処理工程が独立した生物相で運転される場合は嫌気処理工程についてのみ制御を行うことができるが、生物汚泥が各工程間に移送されるときは、各工程でセレン含有率が20重量%を超えないように制御を行う必要がある。
【0029】
上記のような汚泥中のセレン含有率維持のための制御は、浮遊式生物汚泥による処理の場合だけでなく、固定床式、生物膜濾過式などによる処理の場合も同様に行われる。固定床式または生物膜濾過式の場合、単一槽内の充填層の途中に散気装置を設けて、下部を嫌気処理工程、上部を好気処理工程とすることができる。これらの場合、(亜)硝酸イオン等の酸素源の添加はやや少な目にし、有機物を脱窒等に必要な有機物量より過剰な添加量としておき、有機物添加の過剰分について上記式により制御するのが好ましい。
【0030】
このように生物処理汚泥中のセレン含有率が20重量%を超えないように有機物の供給量を制御することにより、セレンによる阻害を防止して生物汚泥の活性を高く維持持することができ、これによりセレンおよび有機物の除去率を高くして、高水質の処理水を得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は本発明の実施例の一形態による処理装置を示す系統図である。図1において1は嫌気処理槽、2は好気処理槽、3は固液分離槽、4は制御装置である。
【0032】
図1の処理方法では、原水路5から原水(セレン含有水)を返送汚泥路6からの返送汚泥とともに嫌気処理槽1に導入し、攪拌機7により緩やかに攪拌して槽内の生物汚泥と混合し、嫌気処理を行い、セレン化合物を還元する。このとき有機物路8からメタノール等の有機物を基質として導入し、また酸素源路9から(亜)硝酸塩等の酸素源を導入する。これらは原水中に存在するときは導入する必要はない。
【0033】
生物汚泥として脱窒菌を利用するときは酸素源として(亜)硝酸塩を導入し、硫酸塩還元菌を利用するときは硫酸塩を導入し、酸生成菌を利用するときはこれらは不要で、原水中の有機物がそのまま利用される。嫌気処理槽1ではこれらの酸素源を利用して、硝酸呼吸等の分子状酸素を用いない呼吸が行われる際セレン化合物の酸素も利用され、セレン化合物は還元されて不溶化する。
【0034】
嫌気処理槽1において不溶化したセレンは生物汚泥に吸着されて汚泥を形成する。このような汚泥を含む槽内液は移送路11から好気処理槽2に導入され、ブロア12により空気路13から散気装置14を通して導入される空気により曝気されて好気処理を受け、残留する有機物その他の被酸化性物質が酸化、分解される。
【0035】
好気処理槽2内の混合液は移送路15から固液分離槽3に抜出され、ここで固液分離され、分離液は処理水として処理水路16から排出される。分離汚泥の一部は返送汚泥路6から嫌気処理槽1に返送され、残部は余剰汚泥として排泥路17から排出される。
【0036】
上記の処理において、制御装置4に分析により得られた汚泥のセレン含有率信号21を入力し、その信号に基づいて有機物供給量を演算し、有機物供給ポンプ22を制御して有機物供給量を制御する。
【0037】
これにより嫌気処理槽1および好気処理槽2における生物汚泥中のセレン含有率が20重量%を超えないように維持され、生物汚泥の活性低下は起こらない。好気処理槽2では酸化還元電位160mV以下となるように曝気することによりセレンの酸化による溶出は起こらず、有機物その他の被酸化性物質が酸化、分解される。こうして嫌気処理槽1で還元されて不溶化したセレン化合物は、好気処理槽2においても不溶性の状態を維持し、固液分離槽3において固形物として分離され、その一部が余剰汚泥として排出される。
【0038】
図1では嫌気処理槽1の嫌気処理液をそのまま好気処理槽2に移送しているが、嫌気処理槽1の後に別の固液分離槽を設けて、分離汚泥を嫌気処理槽1へ返送することにより、嫌気処理槽1と好気処理槽2を独立した生物汚泥で処理してもよい。また嫌気処理槽1と好気処理槽2は浮遊式の生物汚泥としているが、生物膜法など固定式の生物汚泥を用いる処理を行ってもよい。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。各例中、%は重量%である。
実施例1
Na2SeO4 40mg/l、NaNO3 600mg/l、KH2PO4 50mg/l、K2HPO4 50mg/l、MgSO4・7H2O 50mg/l、メタノール500mg/lを含む合成排水を1.2 literの嫌気処理槽に導入してpH7.4、滞留時間24時間で嫌気処理を行った。混合液を2 literの固液分離槽で固液分離し、分離汚泥の一部を嫌気処理槽に返送し、残部を余剰汚泥として排出した。
その結果、処理水Seは0.25mg/l以下、Se除去率95%以上で60日間にわたって、安定した処理が可能であった。運転開始30日後の嫌気処理槽におけるMLSSは3800mg/l、MLVSS/MLSSは77%、汚泥のセレン含有率は12%(対MLSS)であった。
【0040】
実施例2
Na2SeO4を60mg/lとするほかは、実施例1と同条件で処理を行った。その結果、処理水Seは0.25mg/l以下、Se除去率は95%以上で、30日間にわたり安定した処理が可能であった。運転開始30日後の嫌気処理槽におけるMLSSは3900mg/l、MLVSS/MLSSは68%、汚泥のセレン含有率は19%であった。
【0041】
実施例3
Na2SeO4を80mg/lとするほかは、実施例1と同条件で処理を行った。運転開始約10日後にSe除去が良好になり、最良のときは処理水Seは0.1mg/l以下になったが、約30日後からSe除去が悪化し、6週目には全く除去できなくなった。運転開始30日後の嫌気処理槽におけるMLSSは3900mg/l、MLVSS/MLSSは63%、汚泥のSe含有率は21%であった。 除去できなくなった後、合成排水のメタノールを750mg/l、NaNO3を900mg/lに増加したところ、汚泥のSe含有率は22%から19%に低下し、処理水Seは12mg/lから1mg/lに低下した。
【0042】
以上の結果より、汚泥中のSe含有率を20mg/lを超えないようにすることにより、Se除去率を高くし、安定した処理を行えることがわかる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、生物汚泥中のセレン含有率が20重量%を超えないように、供給有機物量を制御することにより、生物汚泥の活性低下を防止して生物汚泥の活性を高く維持してセレンおよび有機物除去率を高くし、これにより安定してセレンおよび有機物を除去することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による処理装置を示す系統図である。
【符号の説明】
1 嫌気処理槽
2 好気処理槽
3 固液分離槽
4 制御装置
5 原水路
6 返送汚泥路
11、15 移送路
12 ブロア
13 空気路
14 散気装置
16 処理水路
17 排泥路
21 セレン含有率信号
22 有機物供給ポンプ

Claims (2)

  1. セレン含有水を生物汚泥と嫌気状態で接触させてセレンを還元し、不溶化したセレン化合物を生物汚泥に吸着させて除去する方法において、
    セレン含有水および有機物を供給して生物汚泥と嫌気状態で接触させて処理を行う嫌気処理工程と、
    下記式(1)のSeXで示される生物汚泥中のセレン含有率が20重量%(対MLSS)を超えないように、系に供給する有機物量を制御する制御工程と
    を含むことを特徴とするセレン含有水の処理方法。
    SeX=ΔSe/ΔX ・・・・(1)
    ΔX=ΔBOD・Y ・・・・(2)
    但し、SeX:汚泥中のセレン含有率(−)
    ΔSe:除去セレン(mg/l)
    ΔX:汚泥生成量(mg/l)
    ΔBOD:除去BOD(mg/l)
    Y:汚泥転換率
  2. 嫌気処理工程における生物汚泥を移送して好気処理を行う好気処理工程を含む請求項1記載の方法。
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