JP3607205B2 - 中空ラックバー製造方法及び中空ラックバー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車のパワーステアリング装置などにおいて使用される軽量中空ラックバーの製造方法に関するものであり、ラックバーのピッチおよび傾角が均等な標準歯から変化した所謂VGR型のラックバーの製造に特に適したものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のパワーステアリング装置に使用される中空ラックバーの製造方法としては従来は丸棒からの切削によるものが多かったが軽量化のためパイプ材からの鍛造によるものが使用されるようになってきている。それとともに、最近のパワーステアリング装置は油圧駆動から電動駆動のものに変わりつつあり、それとの関連でラックバーとしてラックバーのピッチおよび傾角が均等な標準歯から変化した非均等なVGR型のラックバーが注目されている。かかるVGR型のラックバーは特殊切削による製造が高コストであるため軽量化も兼ねたパイプ材からの鍛造が採用されつつある。パイプ材からの鍛造によるラックバーの形成技術としては例えば特公平3−5892号などがある。特公平3−5892号におけるラックバーの転造成形においては、まず、パイプを型によって保持しつつプレスをかけることにより中空棒のラックバー形成面の平坦化が加熱下で行われる。次に、内周に直線方向の歯列を有した成形型をパイプ材の前記平坦部に当てつつ軸方向における外側よりパイプ材の空洞に芯金が圧入される。芯金はテーパ状の作用部を有しており、テーパ部が平坦部に内周側において係合することにより平坦部の肉は成形型の歯列に向けて塑性変形的に流動することにより張り出され、パイプ材の平坦部に成形型の歯列に順じた形状の直線方向の歯列が付与され、ラックバーとすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特公平3−5892号に開示されている技術によれば、歯列を有した内型によるパイプ材を保持し、一端より心金をパイプ材中に圧入することにより型の凹部に対するパイプ材の肉の塑性流動を惹起させ、パイプ材の表面に歯列を形成しようとしている。しかしながら、従来技術では心金は一端側のみからの圧入である。しかしながら、この方式では型に対するパイプ材の肉の流動に片寄り(偏析)が必ず生じるので、成形完了後の残留応力の不均一及びこれに伴う弾性歪の戻りの不均一の原因となり、必要な精度と強度が得られなかった。
【0004】
他方この出願の出願人は特願2000−34544号において金型により保持されたパイプ材に対して心金を左右から複数回交互に圧入することによりパイプ材の表面に凹凸模様を付す技術を提案している。
【0005】
この発明は本出願人の提案に係るこの技術をラックバーの製造により特化させ、より精度の高いラックバーをより低コストにて製造できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、内面に歯型を有した金型により中空素型材を保持しつつ、芯金を前記素型材の軸方向の空洞に圧入し、芯金の拡径作用頭部により材料を金型の内面に向けて内側より外側へ金属流動させることにより張り出させ、中空素型材の外周に金型内周の歯型に順じた形状を付与することにより中空ラックバーを製造する方法であって、金型間に保持された中空素型材へ心金が両端側より交互に圧入され、このような交互の圧入は複数回繰り返されることを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0009】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、この発明の転造は前記のように金属の流動性に優れている成形転造原理下で実施されるが、それでも圧入方向が片方向のみでの連続成形では金属流動に必ず相当の片寄りが生じ、これが歯型の精度に悪影響を及ぼす。また、後工程での反対方向からの圧入による矯正では金属の流動量差と時効による硬化により完全復元は不可能である。この発明における挿入方向の交互の繰返しは、成形の過程で生じた偏流が微量なうちに時効硬化の発生に先だってその都度修正するため、偏析を完全に排除した理想的な成形を行うことができる。そのため、スプリングバックなどの均等化、熱処理などの不均一変形、金属流動の巻き込みに起因する応力集中や亀裂発生などを事前に排除した高精度・高強度の加工を実施することができる。そのため、本質的に塑性加工であるにも関わらず数ミクロン差が問題となる要求精度に対しては熱処理工程での狂いも抑制することができる。そして、長尺の心金の先端の張り出し用の拡径頭部は素材の肉を塑性流動させ金型の凹部に押し込むが、このような押込みは所謂創成転造方式による滑りがなく、所謂成形転造方式で行われ、歯型欠陥はそもそも少ないものである上、拡径頭部は1歯づつ成形移動しつつ複数回繰返して歯型を部分的に順次移動成形するので、一度に過大な成形力を必要としないので挿入力抑制と心金の座屈防止の利点がある。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、中空素型材の一端側からの心金圧入と他端側からの心金の抜去とはラッピングされていることを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0011】
請求項2の発明の作用効果を説明すると、片側での圧入完了後の心金の後退中に反対側での心金の圧入が開始するようにラッピングされている。自動車のパワーステアリングのラックバーは通常はその長さは600〜800ミリメートルであり、心金のストロークは1000ミリメートル前後である。このようなラッピング動作は塑性加工による発熱に伴う前記加工軟化状態に近い準温間加工条件を維持させまた時効硬化時間を与えないためにも重要である。即ち、このような条件を維持するためには連続加工間待機時間を90秒未満とする必要があるが、片側での心金圧入後の完全抜去を待って反対側での心金の圧入を開始したとすると、2分以上の成形時間が必要である。また、ラッピング動作は作業タクトの短縮にも有効である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、金型の潤滑はこれを行うが素型材はその成形完了まで潤滑油による積極的冷却は回避することを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0013】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、金型については一般的な鍛造加工に順じて潤滑兼清掃油による強制的な冷却機構を設けるが、心金については潤滑油(高粘度のもの)のためのオイルポットの形成にとどめる。これにより、ワークである素材の過度の冷却は排除され、塑性加工の発熱により生じた180℃程度の加工軟化近傍の準温間状態を維持するのに有効なものとなる。即ち、素材は加工の工程に順じて塑性加工発熱が蓄積され、百数十度近くまで昇温せしめられる。もちろん、その熱は成形歯型や心金に伝達される。そして、成形品の取出しと次ぎの素材の供給のため金型が開かれたときに清掃も兼ねた液体の噴射により金型は過剰昇温防止の冷却を受ける。一方、心金は複数回連続交互挿入のために、金型外に待機しているときのみ液体又は気体により冷却を受ける。そして、成形中ワークには心金の圧入による塑性加工発熱が蓄積されるが、ワークは成形完了まで積極的冷却はしないようにし、その結果、加工硬化の開始する前の加工軟化状態に近い準温間加工を実現することができ、その結果、ワークに対するスムースな塑性加工の付与が実現される。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、心金は複数の拡径頭部を供えたことを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0015】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、心金に複数の拡径頭部を設けることにより、第1の頭部では歯型の両端部、第2頭部では歯型の中央部、第3の頭部では歯型の全体又は肩部のみ、などと、金属の流動性の張り出し距離を考慮した低出力成形を実現することができる。そして、単なる拡径量の順次拡大ではないため、金属流動の移動距離、即ち、金属流動により生ずる金属粒子間の滑り量の抑制が可能なため、成形出力を低減させたり各工程間での出力の均一化を実現しうる。また、成形全長が2百数十ミリメートルを超過する部分に第3,4,5等の拡径頭部を設置することにより、2工程分の連続成形を1本の心金で実現することが可能となる。この場合、心金は長大なものとなり、かつ心金の必要ストローク長も大きなものとなるが、心金に座屈防止用の案内部を設置したり、心金の交互の圧入にラッピングを持たせることにより対処することは可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明における中空ラックバーの製造の主要工程のみの概略工程図を示し、素材管の事前研摩工程とボンデリューベP1と、事前研摩を受けた素材管のラック歯形成面の冷間平潰工程P2と、平潰後の心金の交互圧入繰返鍛造工程P3と、繰返交互圧入鍛造により得られたラックバーの拘束型熱処理工程P4とを示す。ここに拘束型熱処理とは焼入れによる精度の狂いを生じせしめないため、ワークに拘束を加えながら行う熱処理、即ち、焼入れ及び焼戻し、のことをいう。通常は研摩は熱処理による狂いが生ずるので精度を維持するため熱処理後に行われている。この工程P4の熱処理は前述の拘束型の熱処理であり、金属流動の偏析が少ないので、焼入れによる精度の狂いは生じない。従って、鍛造前の研摩加工精度劣化の懸念なく行いうる。このような鍛造前の研摩は円管で行う。成形後の歯型の研摩はラックバーが所謂VGR型の場合はピッチ可変でかつ傾角可変のため実施し難くなるが、この実施形態のように歯型の形成前に円管又は平面状態で研摩を施すことにより事後研摩と比較して効率を著しく高める利点がある。
【0019】
次ぎに、平潰工程P2及び心金の繰返交互圧入による鍛造工程P3について図2〜図4を参照にしながら詳細に説明すると、図2は型開状態、図3は型閉鎖所歌、図4は心金圧入状態を示す。図2において、中空ラックバーの転造成形のための金型10は上型12と下型14とから構成され、図中(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図を示す。図2では上型12と下型14とが離間した状態を示す。上型12は下型14に面したその内周面における長さ方向凹部にラック歯状の歯部12−1を有しており、一方、下型14は上型12に面した上面に断面半円弧状の長さ方向溝14−1を形成している。図2では下型14の断面半円弧状長さ方向溝14−1に素型材である円形断面管18がすでに載置された状態を示している。この発明のラックバーの転造成形に適した素材管18の材質としては塑性加工性が良いため、張出加工や圧延加工性に優れており、かつ加工変態が起こり難くいことが好ましく、更に、後工程での熱処理における焼入れ性能が良好であることが必要である。
【0020】
図2の状態から上型12と下型14とを相互に向き合う方向に移動させると、上型12の歯部12−1が円管12の上面に接触し、平坦に押しつぶされ、最終的には上型12と下型14とが合体した金型10の閉鎖状態に至る。このとき、この実施形態のよう円管18を中空部をフリーにした場合は円管18の上面は図3(イ)に示すように中央部18−がやや凹面に変形せしめられる。また、金型10は円形断面の素材管18の約半分の長さを持っており、円管18の片端は金型10の長さ方向端面とほぼ面一となり、反対端はオーバハングしている。しかしながら、下型14に面した上型12の下面に形成される歯部12−1は金型10の端面から幾分手前に留まっており、従って、金型10の閉鎖状態においては素材管18の左端18A及び右端18Bは平坦に圧潰されておらず、換言すれば素材管18の両端18A, 18Bは円形断面のままに留まっている
【0021】
以上説明したようにこの発明の実施形態では素材管18のラック形成面である上面の平坦化をラック転造形成用金型10の閉鎖即ち上型12と下型14との合体によって行っている。そのため、金型10は型開きすることなくそのまま次の工程である転造工程に移行することができる。これにより、工程数を削減することができると共に、クランプ動作の回数を低減することができるためクランプによる傷の発生の機会を削減することができる利点がある。また、転造用の型を異形化のために使用していることから異形化の精度は異形化専用の本来の型を使用した場合と比較して低下があるが、要求精度がよほど高くない限りは実際上の問題はない。平坦化のため専用の型により円管の上面を潰し、その後型開きし、転造用の金型にクランプするような通常の工程をとることももとより可能である。
【0022】
図5は専用の型を使用してラック歯形成面の平坦化をした例を示し、(イ)では素材管18にストッパとしての心金19を挿入しておき、プレス型17にて平坦化する例を示す。この場合は心金19を使用しているためラック歯形成面18−1は完全平坦となり、図3の(イ)に示す如き中凹状態が回避される。完全平坦化によりラック塑性成形時における金属流動の不均一性をより理想的に排除することができるため、最終的な鍛造精度の維持をより容易としうる。図5の(ロ)は円管からのラック形成面平坦化時の心金の別形状を示し、この場合、心金19は張出肩部19Aを有しており、そのため両肩が張り出したような素材管18の断面形状を得るのが容易となる。
【0023】
次ぎに図4に示す芯金の圧入・引き戻しによる転造工程を説明する。図4の(ロ)に示すように、芯金20A, 20Bは金型10にクランプされることにより上面が平坦化されたた素材管18の両側に軸方向に対向して配置される。芯金20A, 20Bはその断面形状は図4(イ)に示すように断面平坦化された素材管18の部分の断面形状に順じた断面形状を有している。芯金20A, 20Bの先端は案内部20A−1, 20B−1をなしており、断面平坦化された素材管18の部分への導入のガイドとなる。案内部20−1の背後には拡径部20A−2, 20B−2が継続し、芯金20A, 20Bの圧入時に素材管18の平坦部に係合することにより素材管の肉を内から外に金型のラック歯状部12−1の凹凸に向けて金属流動させ、素材管の平坦部18−1にその凹凸形状に相補的なラック状歯部が賦型される。芯金20A, 20Bは第1の拡径部20A−2, 20B−2に後続して第2の拡径部20A−3, 20B−3が続いており、芯金20A, 20Bの一回の圧入による順次の多段階の金属流動が得られるようになっている。図6は心金の拡径部の各種の形状の例を示しており、(イ)は歯型の中央部を加工するための形状であり、(ロ)は両側部の張り出し形状の形成用であり、(ハ)は精度出し用である。このように心金に各種の機能に適した形状を持たせることにより、スムーズな成形を実現することができる。即ち、金属流動の移動距離を押えることができるため、成形出力としては小さくでき、各工程間での出力の均一化を図ることができる。また、2百数十mmを超えるような歯成形全長の場合は第3, 4, 5頭というように多数の加工部を設けることができるが、この場合は成形力を増やすことなく2工程分の連続成形も可能であり、好都合である。この場合は心金は長大なものが必要となり、必要ストローク長も長くなるが、心金の座屈防止用の案内部を設けたり、交互挿入のラップ化により対処することができる。
【0024】
図4(ロ)においては第1の工程として左側の芯金20Aが平坦化されたばかりの素材管18に圧入された最初の状態を示している。左側の芯金20Aの圧入は素材管の平坦部18−1の右端に最後の拡径部が到達するまで行われ、その後芯金20Aは素材管18から完全に抜去される至るまで左側に向けて後退される。
【0025】
左側の芯金20Aの抜去と適切なラッピングのタイミング差をもって右側の芯金20Bは図4(ロ)の左側への前進を開始し、右側の芯金20Bが素材管18の内部空洞に導入されるに至り、その拡径部により左側の芯金20Aについて説明したものと同様な金属流動の過程が惹起される。右側芯金20Aの圧入→抜去とラッピングする左側芯金20Bの圧入−抜去は複数回繰り返される。即ち、素材管18に対する左右の芯金20A, 20Bの圧入が交互に複数回繰り返される。このようなラッピングを伴った左右の芯金20A, 20Bの交互の圧入・後退動作は、例えば歯丈3.5 mmの歯型を成形するとすると、1.75 mmは山として張り出され、1.75 mmは谷として押し込まれなければならいが、この発明において(イ)塑性成形発熱下における加工軟化近傍における200℃前後の準温間加工条件を維持しつつ(ロ)時効硬化時間を与えず、(ハ)素材の肉の偏析を抑制しつつ成形するので、鍛造によるラックバーの構成にも関わらずミクロン単位の高い精度を得るというこの発明の本質を達成せしめるものである。以下これについて具体的に説明する。
【0026】
素材管18に対する心金20A, 20Bの圧入は素材管18の肉を塑性変形により歯部12−1により形成される凹部に流動せしめ、素材管18にこの歯部12−1に相補的な形状の歯部を形成せしめるのであるが、このような塑性変形による発熱の蓄積は素材を昇温せしめる。このような塑性変形は通常は素材を硬化せしめ、換言すれば、素材に加わるせん断ひずみとせん断応力との関係はせん断ひずみが増大するほどせん断応力が増大する関係にあり、これを加工硬化と称する。ところが、素材を所謂臨界せん断ひずみ付近変形させた状態で素材の温度を上昇させると逆に与えられたひずみの増大とともにせん断応力が減少する温度域があり、これを加工軟化と称する。即ち、図7(イ)は一定温度Т1における結晶のせん断ひずみ−応力特性を示し(丸善書店刊行加藤著金属塑性工学15ページより転載)、実線Lにて示すようにせん断ひずみの増大に従って応力は最初は直線的に増大するが、応力γ1(臨界せん断応力)においてクロススリップによって応力の増大はL1(温度Т1でのひずみ−応力曲線)のように緩やかとなる。そして、この臨界せん断応力付近において温度をТ1からТ2に増大させると応力は実線Lのように減少し、さらに引っ張るとひずみの増大と共に応力は減少し、最終的には温度Т2でのひずみ−応力曲線L2に従って変化する。この塑性変形がある程度進行した段階での温度上昇下でのひずみの増大にともなう応力低下を加工軟化と称する。そして、この発明では塑性変形発熱された素材の温度を加工軟化近傍の200℃付近の準温間温度に維持しつつ心金の繰返し的な圧入を行うことにより素材の加工硬化を排除しつつ流動性を高め、鍛造であるにも関わらずミクロン単位の高精度の加工を実現するようにしている。このような、積極的な加熱を行わないが、塑性変形発熱に伴う加工軟化近傍の200℃近傍での塑性加工をこの明細書では準温間加工と称する。図7の(ロ)は鋼材における温度と変形抵抗との関係を示しており、この発明の準温間加工は温度200℃付近のRの範囲によって示され、この領域では変形抵抗の極小領域に対応する。尚、通常の温間加工条件はR´の領域で表され、準温間加工条件より高温度側に位置し、このときは変形抵抗は極大となっており、本発明のような加工軟化による素材の流動性の増大による加工精度向上の利益は得られない。この発明のような準温間加工のために適した温度はもとより素材依存性があるが、ラックバーの製造のための通常の鋼材で百数十℃付近で効果はある。準温間加工条件を維持するため、強制的な加熱装置は必要はないが、金型及び心金が冷えすぎないように工夫する必要はある。即ち、連続圧入においては一回の加工が終了し型開きした場合に清掃も兼ねて洗浄液が噴射される。これは金型の冷却となるが、このような動作は十数回の連続成形に対して一回のみであり、金型と素材を冷やしすぎる懸念はない。他方、心金については常時多量な潤滑油をかけるのが通常であるが、これは素材を冷却させ加工硬化を起こさせる可能性があり、常時多量な潤滑油をかけず金型からの後退した後の待機中のみに空気冷却するというように素材を加工軟化近傍に維持するため放熱制御のための工夫は必要である。そして、心金の潤滑不良の恐れに対しては心金を燐酸塩処理し、更に心金の表面の硬化処理と共に油溜まりとして機能しうる微細オイルポットを形成したり、潤滑油として高粘度指数のものを使用したりすることによる対策が可能である。
【0027】
次ぎに、この発明では心金20A, 20Bはラッピング作動され、換言すれば、心金20A, 20Bの一方が圧入成形後に後退を開始しまだ完全に後退をし切らないうちに心金20A, 20Bの他方が圧入のための移動を開始するようにされ、この動作は心金が完全に抜去されるまで次ぎの圧入の開始を待つとすると素材の温度が降下するため、ラッピング動作により素材の温度が下がりすぎるのを防止することができるため準温間加工条件の維持のため重要であると共に時効による硬化時間を与えないための時間短縮に重要である。即ち、塑性加工においては加工後放置すると素材は硬化を開始し、塑性加工後のこのような時効による初期硬化は最速には1〜2分程度で開始するといわれている。通常の自動車用パワーステアリング用のラックバーは長さが600〜800mmであり、心金のストロークは1000 mm前後となる。このような長さのラックバーの加工の場合、第1心金の往復完了後に第2心金の往復を開始させたり溜め打ちすると時効硬化の懸念がある。心金20A, 20Bのラッピング動作はこのような分単位の時間でも起こりうる時効硬化に対しても十分対処でき、加工軟化近傍の準温間加工との併用で心金20A, 20Bの圧入による繰返し的な塑性加工の間の素材に加わる応力に関わらず素材を軟化状態に維持し、素材の高い流動性を得ることができるため、心金20A, 20Bの繰返し圧入とあいまって塑性加工に関わらず32ミクロンの精度を得ることができる。
【0028】
以上の準温間による加工及び時効効果の抑制に加え、この発明では心金の左右からの交互圧入は素材の肉の偏析があった場合にこれを毎回その都度修正する作用も達成するものである。即ち、左右の芯金20A, 20Bの複数回の交互圧入により金型の凹部に対する均等な金属流動を得ることができ、精度の高い転造を実現できる効果がある。図8は転造により得られた実際のラックの歯部の断面顕微鏡写真における歯部の層形成状態から把握された塑性加工時の肉の流動状態を模式的に表したものである。矢印f1に示すような交互圧入を行うこの発明の肉の流動状態は(イ)にて表され対称的な流動状態が得られていることが分かる。一方、(ロ)は芯金の圧入方向が矢印f2のような一方のみである場合の流動状態を示しており、この場合は肉の流動に片寄りがあり、また巻き込みが発生していることが分かる。(ロ)に示すような肉の不均一な流動状態は、ラック歯の成形完了後における不均一な応力残留及びこれに伴う弾性歪の戻り即ちスプリングバック量の不均一を惹起せしめ、製品の精度と強度の低下の原因となるがこの発明においては均等な肉の流動が確保されるためこのような問題点は解消されている。
【0029】
以上述べたようにこの発明によるラックバーの鍛造型の形成においては、(イ)塑性成形発熱下における準温間加工条件を維持しつつ(ロ)時効硬化時間を排除し、(ハ)素材の肉の偏流の修正を行っているため、鍛造によるラックバーの構成にも関わらず32ミクロンという高い精度を得ることができ、生産コスト的の低減の観点からも優れたものとすることができる。
【0030】
この発明の実施において、塑性加工の開始において心金20A, 20B、金型10及びパイプ18は室温状態(コールドスタート)とすることができる。即ち、塑性加工前には外部からの加熱をなんら行わないようにすることができる。塑性加工を室温から開始しても、塑性加工の開始とともにその素材の塑性変形による発熱によって比較的短時間のうちに温度は上昇し、準温間条件に持ち込むようにすることができる。これにより、事前の加温が省略できその分コストダウンを図ることができる。
【0031】
以上とは逆に、塑性加工の開始前に炭素鋼の一次軟化温度付近に補助昇温してから成形開始することに任意である。補助昇温の実施により鋼材の加工軟化付近の温度(準温間加工条件)である約200℃に昇温させた状態で素材管18への心金20A, 20Bを開始できるため加工の初期段階から加工量を増加することができ、全加工数の圧縮、心金の交互圧入回数を例えば12回から10回に縮減でき、効率を増加させ、原価低減を実現することができる。
【0032】
この発明の実施において、素材管18として継目無管はもとより採用可能であるが、コスト低減の観点から継目管を採用することが可能である。継目管の場合は、そのシーム部は図2(イ)などにおいて上型12の歯型12−1の部分の反対側に、即ち下型14の半円面14−1に対向位置せしめる。ラックバーにおいては歯列は円周の180°に満たない一方向部位のみである。従って、予備成形の平潰し時にシーム部を反対側に配置選択することは容易であるが、あえてこれに限定しない。この場合、心金挿入時に歯張り出し面の反対面、即ち、シーム部には下型14の面14−1から強力な反力が加わりうる。しかしながら、このような反力に対処しうるようなアイヨニングやバテット管の造形加工は経験上問題無くなしうるものである。
【0033】
図9〜図11は上型12の実際の組立構造の一例を示しており、上型12はホルダ120と、ホルダ120における矩形空洞120Aに歯列を構成するように収容される一連の歯型セクション122と、矩形空洞120Aの底部に敷設される金属製支持パッド124と、一連の歯型セクション122の両端におけるスペーサ126と、テーパ駒128とからなり、テーパ駒128の圧入により一連の歯型セクション122はホルダ120の矩形空洞120A内に保持され、これにより図2(イ)などに図示される上型12の下面の歯列12−1が得られる。図10に示すようにホルダ120の矩形空洞120Aはその四隅に切欠120B を有しており、この切欠部120Bの設置により応力集中を回避するようになっている。当業者には常識であるが、金型治工具はその寿命がランニングコスト、引いては製品の製造コストに直接影響する。この発明の転造方式では噛み合い回転も軸方向の回転も移動滑りもないため、歯型面における磨耗は少ないが、ホルダ120と歯列122とのミクロン単位の息つきの繰返しによる疲労破損が生じうる。しかしながら、ホルダへの準圧入構造とし、また、R部の曲率は可能なかぎりにおいて大きくとられており、また応力集中排除の工夫もされている。そのため、数千回から万単位にも及ぶ寿命を得ることができ、治工具のランニングコストを通常のラックバーの製造方式であるブローチ加工より低減することが可能である。
【0034】
以上の説明においては、心金の圧入による金型での成形過程において素材の肉は金型の凹部を完全に充満させる所謂完全充満式の成形を前提としていた。図12(イ)は完全充満式の成形により得られる歯型を示しており、この場合金属流動のため素材の圧縮荷重の1.1〜1.3倍の荷重を加える。そのため、歯型治工具の磨耗や破損が起こり易く、ランニングコスト上昇の原因となる。(ロ)は不完全充満成形における歯型の断面を示しており、この場合、圧縮荷重は10〜30%減となっており、歯先の中央部に微小の凹部が残留する。しかしながら、このような歯型の部分的中断があっても歯のあたり長さ面としては完全充満成形のものと大差がない。また、曲げ強度について多少の低下はもとより回避できないが、鍛造成形の場合は歯先の強度自体が切削方式と比較して2〜3倍大きいため問題は生じえない。荷重の10〜30%減により疲労破壊寿命を10〜100倍延長させることができ、これによりランニングコストの著しい低減が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の中空ラックバー製造方法における主要工程のみの概略を説明するブロックダイアグラムである。
【図2】図2はこの発明における成形型の開放状態を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示したものである。
【図3】図3はこの発明における成形型の閉鎖状態を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示して表したものである。
【図4】図4はこの発明における心金圧入転造時の成形型を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示したものである。
【図5】図5は平坦化型を使用した場合の素材管及び心金の横断面形状を(イ)及び(ロ)のそれぞれの例について表した図である。
【図6】図6は圧入転造に使用する心金の頭部の各種の横断面形状を(イ)〜(ハ)のそれぞれの例について表した図である。
【図7】図7の(イ)せん断ひずみとせん断応力との関係を模式的に表すグラフであり、加工軟化現象について説明し、(ロ)は鋼材の温度と変形抵抗との関係を表すグラフを示している。
【図8】図8は圧入転造時の素材の流動状態をこの発明の交互往復圧入の場合を(イ)で従来技術の片側圧入の場合を(ロ)でそれぞれ模式的に説明する図である。
【図9】図9は上型の縦断面図(図11のIX−IX線に沿って表される矢視断面図)である。
【図10】図10は上型の平面図である。
【図11】図11は上型の横断面図(図9のXI−XI線に沿って表される矢視断面図)である。
【図12】図12は転造時にの歯型断面形状を完全充満方式の場合を(イ)で、不完全充満状態の場合を(ロ)でそれぞれ表すである。
【符号の説明】
10…金型
12…上型
12−1…歯部
14…下型
17…平坦化用プレス型
18…素材管
19…平坦化用心金
20A, 20B…芯金
20A−1, 20B−1…案内部
20A−2, 20B−2…第1の拡径部
20A−3, 20B−3…第2の拡径部
120…ホルダ
120A…矩形空洞
120B…切欠部
122…歯型セクション
124…支持パッド
126…スペーサ
128…テーパ駒
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車のパワーステアリング装置などにおいて使用される軽量中空ラックバーの製造方法に関するものであり、ラックバーのピッチおよび傾角が均等な標準歯から変化した所謂VGR型のラックバーの製造に特に適したものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のパワーステアリング装置に使用される中空ラックバーの製造方法としては従来は丸棒からの切削によるものが多かったが軽量化のためパイプ材からの鍛造によるものが使用されるようになってきている。それとともに、最近のパワーステアリング装置は油圧駆動から電動駆動のものに変わりつつあり、それとの関連でラックバーとしてラックバーのピッチおよび傾角が均等な標準歯から変化した非均等なVGR型のラックバーが注目されている。かかるVGR型のラックバーは特殊切削による製造が高コストであるため軽量化も兼ねたパイプ材からの鍛造が採用されつつある。パイプ材からの鍛造によるラックバーの形成技術としては例えば特公平3−5892号などがある。特公平3−5892号におけるラックバーの転造成形においては、まず、パイプを型によって保持しつつプレスをかけることにより中空棒のラックバー形成面の平坦化が加熱下で行われる。次に、内周に直線方向の歯列を有した成形型をパイプ材の前記平坦部に当てつつ軸方向における外側よりパイプ材の空洞に芯金が圧入される。芯金はテーパ状の作用部を有しており、テーパ部が平坦部に内周側において係合することにより平坦部の肉は成形型の歯列に向けて塑性変形的に流動することにより張り出され、パイプ材の平坦部に成形型の歯列に順じた形状の直線方向の歯列が付与され、ラックバーとすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
特公平3−5892号に開示されている技術によれば、歯列を有した内型によるパイプ材を保持し、一端より心金をパイプ材中に圧入することにより型の凹部に対するパイプ材の肉の塑性流動を惹起させ、パイプ材の表面に歯列を形成しようとしている。しかしながら、従来技術では心金は一端側のみからの圧入である。しかしながら、この方式では型に対するパイプ材の肉の流動に片寄り(偏析)が必ず生じるので、成形完了後の残留応力の不均一及びこれに伴う弾性歪の戻りの不均一の原因となり、必要な精度と強度が得られなかった。
【0004】
他方この出願の出願人は特願2000−34544号において金型により保持されたパイプ材に対して心金を左右から複数回交互に圧入することによりパイプ材の表面に凹凸模様を付す技術を提案している。
【0005】
この発明は本出願人の提案に係るこの技術をラックバーの製造により特化させ、より精度の高いラックバーをより低コストにて製造できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明によれば、内面に歯型を有した金型により中空素型材を保持しつつ、芯金を前記素型材の軸方向の空洞に圧入し、芯金の拡径作用頭部により材料を金型の内面に向けて内側より外側へ金属流動させることにより張り出させ、中空素型材の外周に金型内周の歯型に順じた形状を付与することにより中空ラックバーを製造する方法であって、金型間に保持された中空素型材へ心金が両端側より交互に圧入され、このような交互の圧入は複数回繰り返されることを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0009】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、この発明の転造は前記のように金属の流動性に優れている成形転造原理下で実施されるが、それでも圧入方向が片方向のみでの連続成形では金属流動に必ず相当の片寄りが生じ、これが歯型の精度に悪影響を及ぼす。また、後工程での反対方向からの圧入による矯正では金属の流動量差と時効による硬化により完全復元は不可能である。この発明における挿入方向の交互の繰返しは、成形の過程で生じた偏流が微量なうちに時効硬化の発生に先だってその都度修正するため、偏析を完全に排除した理想的な成形を行うことができる。そのため、スプリングバックなどの均等化、熱処理などの不均一変形、金属流動の巻き込みに起因する応力集中や亀裂発生などを事前に排除した高精度・高強度の加工を実施することができる。そのため、本質的に塑性加工であるにも関わらず数ミクロン差が問題となる要求精度に対しては熱処理工程での狂いも抑制することができる。そして、長尺の心金の先端の張り出し用の拡径頭部は素材の肉を塑性流動させ金型の凹部に押し込むが、このような押込みは所謂創成転造方式による滑りがなく、所謂成形転造方式で行われ、歯型欠陥はそもそも少ないものである上、拡径頭部は1歯づつ成形移動しつつ複数回繰返して歯型を部分的に順次移動成形するので、一度に過大な成形力を必要としないので挿入力抑制と心金の座屈防止の利点がある。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、中空素型材の一端側からの心金圧入と他端側からの心金の抜去とはラッピングされていることを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0011】
請求項2の発明の作用効果を説明すると、片側での圧入完了後の心金の後退中に反対側での心金の圧入が開始するようにラッピングされている。自動車のパワーステアリングのラックバーは通常はその長さは600〜800ミリメートルであり、心金のストロークは1000ミリメートル前後である。このようなラッピング動作は塑性加工による発熱に伴う前記加工軟化状態に近い準温間加工条件を維持させまた時効硬化時間を与えないためにも重要である。即ち、このような条件を維持するためには連続加工間待機時間を90秒未満とする必要があるが、片側での心金圧入後の完全抜去を待って反対側での心金の圧入を開始したとすると、2分以上の成形時間が必要である。また、ラッピング動作は作業タクトの短縮にも有効である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、金型の潤滑はこれを行うが素型材はその成形完了まで潤滑油による積極的冷却は回避することを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0013】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、金型については一般的な鍛造加工に順じて潤滑兼清掃油による強制的な冷却機構を設けるが、心金については潤滑油(高粘度のもの)のためのオイルポットの形成にとどめる。これにより、ワークである素材の過度の冷却は排除され、塑性加工の発熱により生じた180℃程度の加工軟化近傍の準温間状態を維持するのに有効なものとなる。即ち、素材は加工の工程に順じて塑性加工発熱が蓄積され、百数十度近くまで昇温せしめられる。もちろん、その熱は成形歯型や心金に伝達される。そして、成形品の取出しと次ぎの素材の供給のため金型が開かれたときに清掃も兼ねた液体の噴射により金型は過剰昇温防止の冷却を受ける。一方、心金は複数回連続交互挿入のために、金型外に待機しているときのみ液体又は気体により冷却を受ける。そして、成形中ワークには心金の圧入による塑性加工発熱が蓄積されるが、ワークは成形完了まで積極的冷却はしないようにし、その結果、加工硬化の開始する前の加工軟化状態に近い準温間加工を実現することができ、その結果、ワークに対するスムースな塑性加工の付与が実現される。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、心金は複数の拡径頭部を供えたことを特徴とする中空ラックバーの製造方法が提供される。
【0015】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、心金に複数の拡径頭部を設けることにより、第1の頭部では歯型の両端部、第2頭部では歯型の中央部、第3の頭部では歯型の全体又は肩部のみ、などと、金属の流動性の張り出し距離を考慮した低出力成形を実現することができる。そして、単なる拡径量の順次拡大ではないため、金属流動の移動距離、即ち、金属流動により生ずる金属粒子間の滑り量の抑制が可能なため、成形出力を低減させたり各工程間での出力の均一化を実現しうる。また、成形全長が2百数十ミリメートルを超過する部分に第3,4,5等の拡径頭部を設置することにより、2工程分の連続成形を1本の心金で実現することが可能となる。この場合、心金は長大なものとなり、かつ心金の必要ストローク長も大きなものとなるが、心金に座屈防止用の案内部を設置したり、心金の交互の圧入にラッピングを持たせることにより対処することは可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明における中空ラックバーの製造の主要工程のみの概略工程図を示し、素材管の事前研摩工程とボンデリューベP1と、事前研摩を受けた素材管のラック歯形成面の冷間平潰工程P2と、平潰後の心金の交互圧入繰返鍛造工程P3と、繰返交互圧入鍛造により得られたラックバーの拘束型熱処理工程P4とを示す。ここに拘束型熱処理とは焼入れによる精度の狂いを生じせしめないため、ワークに拘束を加えながら行う熱処理、即ち、焼入れ及び焼戻し、のことをいう。通常は研摩は熱処理による狂いが生ずるので精度を維持するため熱処理後に行われている。この工程P4の熱処理は前述の拘束型の熱処理であり、金属流動の偏析が少ないので、焼入れによる精度の狂いは生じない。従って、鍛造前の研摩加工精度劣化の懸念なく行いうる。このような鍛造前の研摩は円管で行う。成形後の歯型の研摩はラックバーが所謂VGR型の場合はピッチ可変でかつ傾角可変のため実施し難くなるが、この実施形態のように歯型の形成前に円管又は平面状態で研摩を施すことにより事後研摩と比較して効率を著しく高める利点がある。
【0019】
次ぎに、平潰工程P2及び心金の繰返交互圧入による鍛造工程P3について図2〜図4を参照にしながら詳細に説明すると、図2は型開状態、図3は型閉鎖所歌、図4は心金圧入状態を示す。図2において、中空ラックバーの転造成形のための金型10は上型12と下型14とから構成され、図中(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図を示す。図2では上型12と下型14とが離間した状態を示す。上型12は下型14に面したその内周面における長さ方向凹部にラック歯状の歯部12−1を有しており、一方、下型14は上型12に面した上面に断面半円弧状の長さ方向溝14−1を形成している。図2では下型14の断面半円弧状長さ方向溝14−1に素型材である円形断面管18がすでに載置された状態を示している。この発明のラックバーの転造成形に適した素材管18の材質としては塑性加工性が良いため、張出加工や圧延加工性に優れており、かつ加工変態が起こり難くいことが好ましく、更に、後工程での熱処理における焼入れ性能が良好であることが必要である。
【0020】
図2の状態から上型12と下型14とを相互に向き合う方向に移動させると、上型12の歯部12−1が円管12の上面に接触し、平坦に押しつぶされ、最終的には上型12と下型14とが合体した金型10の閉鎖状態に至る。このとき、この実施形態のよう円管18を中空部をフリーにした場合は円管18の上面は図3(イ)に示すように中央部18−がやや凹面に変形せしめられる。また、金型10は円形断面の素材管18の約半分の長さを持っており、円管18の片端は金型10の長さ方向端面とほぼ面一となり、反対端はオーバハングしている。しかしながら、下型14に面した上型12の下面に形成される歯部12−1は金型10の端面から幾分手前に留まっており、従って、金型10の閉鎖状態においては素材管18の左端18A及び右端18Bは平坦に圧潰されておらず、換言すれば素材管18の両端18A, 18Bは円形断面のままに留まっている
【0021】
以上説明したようにこの発明の実施形態では素材管18のラック形成面である上面の平坦化をラック転造形成用金型10の閉鎖即ち上型12と下型14との合体によって行っている。そのため、金型10は型開きすることなくそのまま次の工程である転造工程に移行することができる。これにより、工程数を削減することができると共に、クランプ動作の回数を低減することができるためクランプによる傷の発生の機会を削減することができる利点がある。また、転造用の型を異形化のために使用していることから異形化の精度は異形化専用の本来の型を使用した場合と比較して低下があるが、要求精度がよほど高くない限りは実際上の問題はない。平坦化のため専用の型により円管の上面を潰し、その後型開きし、転造用の金型にクランプするような通常の工程をとることももとより可能である。
【0022】
図5は専用の型を使用してラック歯形成面の平坦化をした例を示し、(イ)では素材管18にストッパとしての心金19を挿入しておき、プレス型17にて平坦化する例を示す。この場合は心金19を使用しているためラック歯形成面18−1は完全平坦となり、図3の(イ)に示す如き中凹状態が回避される。完全平坦化によりラック塑性成形時における金属流動の不均一性をより理想的に排除することができるため、最終的な鍛造精度の維持をより容易としうる。図5の(ロ)は円管からのラック形成面平坦化時の心金の別形状を示し、この場合、心金19は張出肩部19Aを有しており、そのため両肩が張り出したような素材管18の断面形状を得るのが容易となる。
【0023】
次ぎに図4に示す芯金の圧入・引き戻しによる転造工程を説明する。図4の(ロ)に示すように、芯金20A, 20Bは金型10にクランプされることにより上面が平坦化されたた素材管18の両側に軸方向に対向して配置される。芯金20A, 20Bはその断面形状は図4(イ)に示すように断面平坦化された素材管18の部分の断面形状に順じた断面形状を有している。芯金20A, 20Bの先端は案内部20A−1, 20B−1をなしており、断面平坦化された素材管18の部分への導入のガイドとなる。案内部20−1の背後には拡径部20A−2, 20B−2が継続し、芯金20A, 20Bの圧入時に素材管18の平坦部に係合することにより素材管の肉を内から外に金型のラック歯状部12−1の凹凸に向けて金属流動させ、素材管の平坦部18−1にその凹凸形状に相補的なラック状歯部が賦型される。芯金20A, 20Bは第1の拡径部20A−2, 20B−2に後続して第2の拡径部20A−3, 20B−3が続いており、芯金20A, 20Bの一回の圧入による順次の多段階の金属流動が得られるようになっている。図6は心金の拡径部の各種の形状の例を示しており、(イ)は歯型の中央部を加工するための形状であり、(ロ)は両側部の張り出し形状の形成用であり、(ハ)は精度出し用である。このように心金に各種の機能に適した形状を持たせることにより、スムーズな成形を実現することができる。即ち、金属流動の移動距離を押えることができるため、成形出力としては小さくでき、各工程間での出力の均一化を図ることができる。また、2百数十mmを超えるような歯成形全長の場合は第3, 4, 5頭というように多数の加工部を設けることができるが、この場合は成形力を増やすことなく2工程分の連続成形も可能であり、好都合である。この場合は心金は長大なものが必要となり、必要ストローク長も長くなるが、心金の座屈防止用の案内部を設けたり、交互挿入のラップ化により対処することができる。
【0024】
図4(ロ)においては第1の工程として左側の芯金20Aが平坦化されたばかりの素材管18に圧入された最初の状態を示している。左側の芯金20Aの圧入は素材管の平坦部18−1の右端に最後の拡径部が到達するまで行われ、その後芯金20Aは素材管18から完全に抜去される至るまで左側に向けて後退される。
【0025】
左側の芯金20Aの抜去と適切なラッピングのタイミング差をもって右側の芯金20Bは図4(ロ)の左側への前進を開始し、右側の芯金20Bが素材管18の内部空洞に導入されるに至り、その拡径部により左側の芯金20Aについて説明したものと同様な金属流動の過程が惹起される。右側芯金20Aの圧入→抜去とラッピングする左側芯金20Bの圧入−抜去は複数回繰り返される。即ち、素材管18に対する左右の芯金20A, 20Bの圧入が交互に複数回繰り返される。このようなラッピングを伴った左右の芯金20A, 20Bの交互の圧入・後退動作は、例えば歯丈3.5 mmの歯型を成形するとすると、1.75 mmは山として張り出され、1.75 mmは谷として押し込まれなければならいが、この発明において(イ)塑性成形発熱下における加工軟化近傍における200℃前後の準温間加工条件を維持しつつ(ロ)時効硬化時間を与えず、(ハ)素材の肉の偏析を抑制しつつ成形するので、鍛造によるラックバーの構成にも関わらずミクロン単位の高い精度を得るというこの発明の本質を達成せしめるものである。以下これについて具体的に説明する。
【0026】
素材管18に対する心金20A, 20Bの圧入は素材管18の肉を塑性変形により歯部12−1により形成される凹部に流動せしめ、素材管18にこの歯部12−1に相補的な形状の歯部を形成せしめるのであるが、このような塑性変形による発熱の蓄積は素材を昇温せしめる。このような塑性変形は通常は素材を硬化せしめ、換言すれば、素材に加わるせん断ひずみとせん断応力との関係はせん断ひずみが増大するほどせん断応力が増大する関係にあり、これを加工硬化と称する。ところが、素材を所謂臨界せん断ひずみ付近変形させた状態で素材の温度を上昇させると逆に与えられたひずみの増大とともにせん断応力が減少する温度域があり、これを加工軟化と称する。即ち、図7(イ)は一定温度Т1における結晶のせん断ひずみ−応力特性を示し(丸善書店刊行加藤著金属塑性工学15ページより転載)、実線Lにて示すようにせん断ひずみの増大に従って応力は最初は直線的に増大するが、応力γ1(臨界せん断応力)においてクロススリップによって応力の増大はL1(温度Т1でのひずみ−応力曲線)のように緩やかとなる。そして、この臨界せん断応力付近において温度をТ1からТ2に増大させると応力は実線Lのように減少し、さらに引っ張るとひずみの増大と共に応力は減少し、最終的には温度Т2でのひずみ−応力曲線L2に従って変化する。この塑性変形がある程度進行した段階での温度上昇下でのひずみの増大にともなう応力低下を加工軟化と称する。そして、この発明では塑性変形発熱された素材の温度を加工軟化近傍の200℃付近の準温間温度に維持しつつ心金の繰返し的な圧入を行うことにより素材の加工硬化を排除しつつ流動性を高め、鍛造であるにも関わらずミクロン単位の高精度の加工を実現するようにしている。このような、積極的な加熱を行わないが、塑性変形発熱に伴う加工軟化近傍の200℃近傍での塑性加工をこの明細書では準温間加工と称する。図7の(ロ)は鋼材における温度と変形抵抗との関係を示しており、この発明の準温間加工は温度200℃付近のRの範囲によって示され、この領域では変形抵抗の極小領域に対応する。尚、通常の温間加工条件はR´の領域で表され、準温間加工条件より高温度側に位置し、このときは変形抵抗は極大となっており、本発明のような加工軟化による素材の流動性の増大による加工精度向上の利益は得られない。この発明のような準温間加工のために適した温度はもとより素材依存性があるが、ラックバーの製造のための通常の鋼材で百数十℃付近で効果はある。準温間加工条件を維持するため、強制的な加熱装置は必要はないが、金型及び心金が冷えすぎないように工夫する必要はある。即ち、連続圧入においては一回の加工が終了し型開きした場合に清掃も兼ねて洗浄液が噴射される。これは金型の冷却となるが、このような動作は十数回の連続成形に対して一回のみであり、金型と素材を冷やしすぎる懸念はない。他方、心金については常時多量な潤滑油をかけるのが通常であるが、これは素材を冷却させ加工硬化を起こさせる可能性があり、常時多量な潤滑油をかけず金型からの後退した後の待機中のみに空気冷却するというように素材を加工軟化近傍に維持するため放熱制御のための工夫は必要である。そして、心金の潤滑不良の恐れに対しては心金を燐酸塩処理し、更に心金の表面の硬化処理と共に油溜まりとして機能しうる微細オイルポットを形成したり、潤滑油として高粘度指数のものを使用したりすることによる対策が可能である。
【0027】
次ぎに、この発明では心金20A, 20Bはラッピング作動され、換言すれば、心金20A, 20Bの一方が圧入成形後に後退を開始しまだ完全に後退をし切らないうちに心金20A, 20Bの他方が圧入のための移動を開始するようにされ、この動作は心金が完全に抜去されるまで次ぎの圧入の開始を待つとすると素材の温度が降下するため、ラッピング動作により素材の温度が下がりすぎるのを防止することができるため準温間加工条件の維持のため重要であると共に時効による硬化時間を与えないための時間短縮に重要である。即ち、塑性加工においては加工後放置すると素材は硬化を開始し、塑性加工後のこのような時効による初期硬化は最速には1〜2分程度で開始するといわれている。通常の自動車用パワーステアリング用のラックバーは長さが600〜800mmであり、心金のストロークは1000 mm前後となる。このような長さのラックバーの加工の場合、第1心金の往復完了後に第2心金の往復を開始させたり溜め打ちすると時効硬化の懸念がある。心金20A, 20Bのラッピング動作はこのような分単位の時間でも起こりうる時効硬化に対しても十分対処でき、加工軟化近傍の準温間加工との併用で心金20A, 20Bの圧入による繰返し的な塑性加工の間の素材に加わる応力に関わらず素材を軟化状態に維持し、素材の高い流動性を得ることができるため、心金20A, 20Bの繰返し圧入とあいまって塑性加工に関わらず32ミクロンの精度を得ることができる。
【0028】
以上の準温間による加工及び時効効果の抑制に加え、この発明では心金の左右からの交互圧入は素材の肉の偏析があった場合にこれを毎回その都度修正する作用も達成するものである。即ち、左右の芯金20A, 20Bの複数回の交互圧入により金型の凹部に対する均等な金属流動を得ることができ、精度の高い転造を実現できる効果がある。図8は転造により得られた実際のラックの歯部の断面顕微鏡写真における歯部の層形成状態から把握された塑性加工時の肉の流動状態を模式的に表したものである。矢印f1に示すような交互圧入を行うこの発明の肉の流動状態は(イ)にて表され対称的な流動状態が得られていることが分かる。一方、(ロ)は芯金の圧入方向が矢印f2のような一方のみである場合の流動状態を示しており、この場合は肉の流動に片寄りがあり、また巻き込みが発生していることが分かる。(ロ)に示すような肉の不均一な流動状態は、ラック歯の成形完了後における不均一な応力残留及びこれに伴う弾性歪の戻り即ちスプリングバック量の不均一を惹起せしめ、製品の精度と強度の低下の原因となるがこの発明においては均等な肉の流動が確保されるためこのような問題点は解消されている。
【0029】
以上述べたようにこの発明によるラックバーの鍛造型の形成においては、(イ)塑性成形発熱下における準温間加工条件を維持しつつ(ロ)時効硬化時間を排除し、(ハ)素材の肉の偏流の修正を行っているため、鍛造によるラックバーの構成にも関わらず32ミクロンという高い精度を得ることができ、生産コスト的の低減の観点からも優れたものとすることができる。
【0030】
この発明の実施において、塑性加工の開始において心金20A, 20B、金型10及びパイプ18は室温状態(コールドスタート)とすることができる。即ち、塑性加工前には外部からの加熱をなんら行わないようにすることができる。塑性加工を室温から開始しても、塑性加工の開始とともにその素材の塑性変形による発熱によって比較的短時間のうちに温度は上昇し、準温間条件に持ち込むようにすることができる。これにより、事前の加温が省略できその分コストダウンを図ることができる。
【0031】
以上とは逆に、塑性加工の開始前に炭素鋼の一次軟化温度付近に補助昇温してから成形開始することに任意である。補助昇温の実施により鋼材の加工軟化付近の温度(準温間加工条件)である約200℃に昇温させた状態で素材管18への心金20A, 20Bを開始できるため加工の初期段階から加工量を増加することができ、全加工数の圧縮、心金の交互圧入回数を例えば12回から10回に縮減でき、効率を増加させ、原価低減を実現することができる。
【0032】
この発明の実施において、素材管18として継目無管はもとより採用可能であるが、コスト低減の観点から継目管を採用することが可能である。継目管の場合は、そのシーム部は図2(イ)などにおいて上型12の歯型12−1の部分の反対側に、即ち下型14の半円面14−1に対向位置せしめる。ラックバーにおいては歯列は円周の180°に満たない一方向部位のみである。従って、予備成形の平潰し時にシーム部を反対側に配置選択することは容易であるが、あえてこれに限定しない。この場合、心金挿入時に歯張り出し面の反対面、即ち、シーム部には下型14の面14−1から強力な反力が加わりうる。しかしながら、このような反力に対処しうるようなアイヨニングやバテット管の造形加工は経験上問題無くなしうるものである。
【0033】
図9〜図11は上型12の実際の組立構造の一例を示しており、上型12はホルダ120と、ホルダ120における矩形空洞120Aに歯列を構成するように収容される一連の歯型セクション122と、矩形空洞120Aの底部に敷設される金属製支持パッド124と、一連の歯型セクション122の両端におけるスペーサ126と、テーパ駒128とからなり、テーパ駒128の圧入により一連の歯型セクション122はホルダ120の矩形空洞120A内に保持され、これにより図2(イ)などに図示される上型12の下面の歯列12−1が得られる。図10に示すようにホルダ120の矩形空洞120Aはその四隅に切欠120B を有しており、この切欠部120Bの設置により応力集中を回避するようになっている。当業者には常識であるが、金型治工具はその寿命がランニングコスト、引いては製品の製造コストに直接影響する。この発明の転造方式では噛み合い回転も軸方向の回転も移動滑りもないため、歯型面における磨耗は少ないが、ホルダ120と歯列122とのミクロン単位の息つきの繰返しによる疲労破損が生じうる。しかしながら、ホルダへの準圧入構造とし、また、R部の曲率は可能なかぎりにおいて大きくとられており、また応力集中排除の工夫もされている。そのため、数千回から万単位にも及ぶ寿命を得ることができ、治工具のランニングコストを通常のラックバーの製造方式であるブローチ加工より低減することが可能である。
【0034】
以上の説明においては、心金の圧入による金型での成形過程において素材の肉は金型の凹部を完全に充満させる所謂完全充満式の成形を前提としていた。図12(イ)は完全充満式の成形により得られる歯型を示しており、この場合金属流動のため素材の圧縮荷重の1.1〜1.3倍の荷重を加える。そのため、歯型治工具の磨耗や破損が起こり易く、ランニングコスト上昇の原因となる。(ロ)は不完全充満成形における歯型の断面を示しており、この場合、圧縮荷重は10〜30%減となっており、歯先の中央部に微小の凹部が残留する。しかしながら、このような歯型の部分的中断があっても歯のあたり長さ面としては完全充満成形のものと大差がない。また、曲げ強度について多少の低下はもとより回避できないが、鍛造成形の場合は歯先の強度自体が切削方式と比較して2〜3倍大きいため問題は生じえない。荷重の10〜30%減により疲労破壊寿命を10〜100倍延長させることができ、これによりランニングコストの著しい低減が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の中空ラックバー製造方法における主要工程のみの概略を説明するブロックダイアグラムである。
【図2】図2はこの発明における成形型の開放状態を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示したものである。
【図3】図3はこの発明における成形型の閉鎖状態を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示して表したものである。
【図4】図4はこの発明における心金圧入転造時の成形型を示し、(イ)は横断面図、(ロ)は縦断面図をそれぞれ示したものである。
【図5】図5は平坦化型を使用した場合の素材管及び心金の横断面形状を(イ)及び(ロ)のそれぞれの例について表した図である。
【図6】図6は圧入転造に使用する心金の頭部の各種の横断面形状を(イ)〜(ハ)のそれぞれの例について表した図である。
【図7】図7の(イ)せん断ひずみとせん断応力との関係を模式的に表すグラフであり、加工軟化現象について説明し、(ロ)は鋼材の温度と変形抵抗との関係を表すグラフを示している。
【図8】図8は圧入転造時の素材の流動状態をこの発明の交互往復圧入の場合を(イ)で従来技術の片側圧入の場合を(ロ)でそれぞれ模式的に説明する図である。
【図9】図9は上型の縦断面図(図11のIX−IX線に沿って表される矢視断面図)である。
【図10】図10は上型の平面図である。
【図11】図11は上型の横断面図(図9のXI−XI線に沿って表される矢視断面図)である。
【図12】図12は転造時にの歯型断面形状を完全充満方式の場合を(イ)で、不完全充満状態の場合を(ロ)でそれぞれ表すである。
【符号の説明】
10…金型
12…上型
12−1…歯部
14…下型
17…平坦化用プレス型
18…素材管
19…平坦化用心金
20A, 20B…芯金
20A−1, 20B−1…案内部
20A−2, 20B−2…第1の拡径部
20A−3, 20B−3…第2の拡径部
120…ホルダ
120A…矩形空洞
120B…切欠部
122…歯型セクション
124…支持パッド
126…スペーサ
128…テーパ駒
Claims (4)
- 内面に歯型を有した金型により中空素型材を保持しつつ、芯金を前記素型材の軸方向の空洞に圧入し、芯金の拡径作用頭部により材料を金型の内面に向けて内側より外側へ金属流動させることにより張り出させ、中空素型材の外周に金型内周の歯型に順じた形状を付与することにより中空ラックバーを製造する方法であって、金型間に保持された中空素型材へ心金が両端側より交互に圧入され、このような交互の圧入は複数回繰り返されることを特徴とする中空ラックバーの製造方法。
- 請求項1に記載の発明において、中空素型材の一端側からの心金圧入と他端側からの心金の抜去とはラッピングされていることを特徴とする中空ラックバーの製造方法。
- 請求項1に記載の発明において、金型の潤滑はこれを行うが素型材はその成形完了まで潤滑油による積極的冷却は回避することを特徴とする中空ラックバーの製造方法。
- 請求項1に記載の発明において、心金は複数の拡径頭部を備えたことを特徴とする中空ラックバーの製造方法。
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