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JP3566033B2 - ホログラムメモリ装置およびこのホログラムメモリ装置により記録対象情報を記録および再生する方法 - Google Patents

ホログラムメモリ装置およびこのホログラムメモリ装置により記録対象情報を記録および再生する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はホログラフィの原理を用いたホログラムメモリ装置、およびこのホログラムメモリ装置により情報を記録および再生する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11に従来のホログラムメモリ装置の一例を示す。図11に示すホログラムメモリ装置での情報記録は以下のようにして行われる。すなわち、まず、レーザ光源101から出射されたレーザ光が、ビームスプリッタ102で物体光と参照光に分離される。
【0003】
このうち物体光は、ページコンポーザとして機能する液晶パネル103を通過する。物体光は、液晶パネル103を通過する際に、面としての情報を付加され、ニオブ酸リチウム結晶からなるホログラム記録媒体104に入射するようになっている。なお、液晶パネル103により付加される情報のイメージは103aで示すようなものであり、図11に示すイメージ103aにおいて、例えば白い部位が1を表すデジタルデータ、黒い部位が0を表すデジタルデータとなる。
【0004】
一方、参照光は、機械式のスキャナ105により偏向され、ビームスプリッタ106を透過し、格子状ミラー107に入射する。参照光は格子状ミラー107のいずれかの部分により反射され、ビームスプリッタ106、およびレンズ108を経てホログラム記録媒体104に入射する。
【0005】
物体光および参照光はホログラム記録媒体104内で干渉し、その干渉情報がホログラム記録媒体104内に記録されるようになっている。なお、参照光のホログラム材料への入射角度は、スキャナ105により決定されるようになっている。
【0006】
情報の読み出しを行う際には、情報が記録された場合と同じ角度で参照光をホログラム記録媒体104に照射することにより物体光が再生され、この再生された物体光はCCD(CCDアレイ)109に導かれる。そしてCCD109は物体光を光電変換して電気信号とし、この信号がデジタルデータに変換されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようなホログラムメモリ装置においては、ホログラム記録媒体の多重記録性を利用することにより膨大な量の情報を記録することができる。しかし、このことは、多重記録された情報を再生する場合に、記録時のホログラム記録媒体への参照光の入射角度を精密に再現する必要があることを意味する。
【0008】
また、ホログラムメモリ装置においては、物体光に付加されたデジタルデータを誤差なく迅速に電気的なデジタルデータに変換する必要性から、ホログラム記録材料とCCD109との位置関係を精密に調節する必要がある。
【0009】
従って、磁気ディスクや光ディスクのように、記録媒体であるホログラム材料を入れ替えて、異なる情報を記録・再生することは極めて困難である。このため、従来のホログラムメモリ装置、例えば上記のホログラムメモリ装置においては、ホログラム記録媒体104は不動の構成要素として設けられており、またホログラム記録媒体104とCCD109との相対的位置関係も不変となっている。しかし、従来のホログラムメモリ装置のように、ホログラム記録媒体を装置の一部をなす構成要素とすると、ホログラムメモリが本質的に有する大容量記録性を十分に生かすことができない。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、記録媒体の入れ替えを可能とすることができるようなホログラム記録媒体に対する情報の記録・再生方法を提供するとともに、前記方法を行うのに適したホログラムメモリ装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の情報付加要素により物体光に情報を付加する空間光変調器を備えたホログラムメモリ装置によりホログラム記録媒体に記録対象情報を記録する方法において、記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報を明部および暗部の組み合わせとして割り付けるための第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域として割り付けるための第2のデータ領域と前記空間光変調器の情報付加要素に割り付けるためのマップを作成する工程と、作成されたマップに基づいて、前記空間光変調器の各情報付加要素の状態を、入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれるようにする第1の状態または入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれないようにする第2の状態のいずれかの状態に調節する工程と、調整された前記空間光変調器を経由して前記ホログラム記録媒体に物体光を入射させるとともに、参照光を前記ホログラム記録媒体に入射させ、物体光と参照光の干渉情報を前記ホログラム記録媒体に記録する工程と、を備え、物体光を前記空間光変調器を経由して前記ホログラム記録媒体に入射させる際に、前記第1の状態とされた情報付加要素に入射した物体光のみが前記ホログラム記録媒体に入射し、これにより、前記ホログラム記録媒体上に、前記第1の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の一方を表す明部および前記第2の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の他方を表す暗部の組み合わせを有する二次元画像が投影され、前記再生条件情報は、ダミーデータからなる再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記マップ上に割り付けられており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能としたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、参照光を照射することによりホログラム記録媒体から再生される物体光が投影される画像センサを備えたホログラムメモリ装置を用いて、記録対象情報とその再生条件を示す再生条件情報とを含む情報が記録されたホログラム記録媒体から記録対象情報を再生する方法において、物体光に付加された情報を画像センサにより暫定的に読み出す暫定読出工程と、読み出された情報から再生条件情報を抽出する抽出工程と、抽出された再生条件情報に基づいて再生条件を調節する調節工程と、調節された再生条件により記録対象情報を読み出す記録対象情報読出工程と、を備え、前記暫定読出工程において、物体光はデジタルデータの0および1の一方を表現する明部およびデジタルデータの0および1の他方を表現する暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として前記画像センサ上に投影され、前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記二次元画像上に割り付けられており、前記抽出工程は、前記画像センサ上に投影された二次元画像上の前記再生位置検出情報に対応する領域の位置を特定する工程を含み、前記調節工程は、前記抽出工程において特定された前記再生位置検出情報に対応する領域の位置に基づいて物体光が前記画像センサの所定位置に正しく投影されているかを判定する工程と、この判定に基づいて再生条件を調節する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明は、ホログラム記録媒体に対する記録対象情報の記録を行うためのホログラムメモリ装置において、物体光および参照光を生成する手段と、物体光に情報を付加する複数の情報付加要素を有する空間光変調器と、記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とを、予め定められた規則に基づいて、前記空間光変調器の各情報付加要素に割り付けるためのマップを作成するマップ作成手段と、前記マップに基づいて前記空間光変調器を制御する手段と、を備え、前記空間光変調器の各情報付加要素は、入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれるようにする第1の状態または入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれないようにする第2の状態のいずれかの状態をとることができるように構成され、これにより、前記空間光変調器を経由してホログラム記録媒体に向かう物体光が、前記第1の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の一方を表す明部および前記第2の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の他方を表す暗部を有する二次元画像の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有するとして前記ホログラム記録媒体上に投影されるようになっており、前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記マップ作成手段は、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とを予め定められた位置関係をもって前記マップ上に割り付けるように構成されており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能としたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明は、記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とを含む情報が記録されたホログラム記録媒体から記録対象情報の再生を行うホログラムメモリ装置において、 参照光を生成する手段と、 参照光をホログラム記録媒体に照射した場合に再生される物体光が投影される画像センサと、 画像センサにより読み取られた情報から再生条件情報を抽出する抽出手段と、 前記画像センサにより読み取られた情報のうち再生条件情報に基づいて情報の再生条件を調節する調節手段と、を備え、 前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記二次元画像上に割り付けられており、 前記抽出手段は、デジタルデータの0および1の一方を表現する明部およびデジタルデータの0および1の他方を表現する暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域と、この第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として前記画像センサ上に投影された物体光から、前記二次元画像の前記再生位置検出情報に対応する領域の位置を特定する手段を有し、 前記調節手段は、前記抽出手段が特定した前記再生位置検出情報に対応する領域の位置に基づいて、物体光が前記画像センサの所定位置に正しく投影されているか判定する手段と、この判定に基づいて再生条件を調節する手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明は、情報が付加された物体光とこの物体光と干渉する参照光との干渉情報が記録されたホログラム記録媒体において、 このホログラム記録媒体に記録された情報には、記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とが含まれており、 このホログラム記録媒体に記録された情報は、このホログラム記録媒体上に、デジタルデータの0および1の一方を表す明部およびデジタルデータの0および1の他方を表す暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として投影された物体光と、参照光との干渉情報であり、 前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記二次元画像には、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって割り付けられており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能としたことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は本発明の一実施形態を示す図である。
【0018】
まず、ホログラムメモリ装置の全体構成について説明する。図1に示すように、ホログラムメモリ装置は、干渉性の良い光、例えばレーザ光を発生する光源装置1と、光源装置1からのレーザ光を参照光と物体光とに分けるビームスプリッタ2とを有している。
【0019】
ホログラムメモリ装置の物体光の光路上には、情報を物体光に付加するための空間光変調器3が設けられており、この空間光変調器3は変調器制御部4により制御されている。空間光変調器3は、例えば液晶パネルから構成されている。
【0020】
なお、空間光変調器としては、液晶パネルの他に例えばTI社(Texas Instrument Incorporated) 製のDMD(デジタルマイクロミラーアレーデバイス)を使用することも可能である。DMDによる物体光への情報の付加は、DMDを構成する各マイクロミラーを揺動させ、第1の方向を向いたマイクロミラーにより所定の幅を有する物体光の一部をホログラム記録媒体に入射するように反射し、第2の方向を向いたマイクロミラーにより物体光の残りの部分をホログラム記録媒体に入射しない方向にそらすことにより行われる。このように物体光を互いに異なる方向に反射させた場合、物体光を光路に垂直な面に投影すると、後に説明する投影像60と同様な投影像が得られる。このようにして、DMDにより物体光に情報を付加することもできる。
【0021】
また、参照光の光路上には、ホログラム記録媒体5への参照光の入射角度を調節するための手段として参照光偏向器10が設けられており、この参照光偏向器10には、参照光偏向器10の動作を制御する偏向器制御部20が設けられている。
【0022】
また、ホログラム記録媒体5から再生される物体光の光路上には、CCD等の光電変換素子がアレー状に配列された画像センサ30が設けられている。
【0023】
図2に示すように、画像センサ30は画像センサホルダ40に取り付けられており、この画像センサホルダ40は、ホログラムメモリ装置本体に固着された取付台41に4つの圧電素子42、43、44、45を介して取り付けられている。各圧電素子は画像センサ制御部8により制御されるようになっている。
【0024】
上記態様で設けられた画像センサ30は、圧電素子42および43に同一の電圧を印加することにより、若しくは圧電素子44および45に同一の電圧を印加することにより、物体光の光路に垂直な平面上を平行移動することができるようになっている。
【0025】
また、画像センサ30は、圧電素子42および43に逆の電圧を印加することにより、若しくは圧電素子44および45に逆の電圧を印加することにより、物体光の光路に垂直な平面上で回転移動することができるようになっている。
【0026】
なお、画像センサ30を変位させる機構は、上記構成のものに限定されるものではなく、他の種類のアクチュエータを使用してもよい。
【0027】
前述した画像センサ制御部8、偏向器制御部20および変調器制御部3はこのホログラムメモリ装置全体を制御する中央制御演算部7により制御されるようになっており、この中央制御演算部7には入出力装置9が接続されている。
【0028】
また、図1に概略的に示すように、ホログラムメモリ装置には、ホログラム記録媒体5を着脱自在に保持する保持装置6が設けられている。
【0029】
次に、参照光偏向器10の構成について説明する。
【0030】
参照光偏向器10は、参照光の光路上に順次配置された回動ミラー11、12を有している。このうち回動ミラー11、12は、各々の反射面が互いに対向するように設けられ、同一方向を向いたそれぞれの回動軸線11a,12aを中心として図示しないアクチュエータにより回動自在となっている。
【0031】
この参照光偏向器10は、以下に詳述するように回動ミラー11、12を同時に回動させることにより、ホログラム記録媒体5への参照光の入射位置を変更することなく入射角度のみを変更することができるようになっている。
【0032】
すなわち、図3に示すように、回動ミラー11、12が図3実線位置にある場合、回動ミラー11により反射された参照光は、回動ミラー12の反射面上の点P1を通りホログラム記録媒体5の点Qに入射する。
【0033】
この実線位置を基準として、回動ミラー11が二点鎖線位置となるように所定角度時計方向に回動させ、これと並行して回動ミラー12が二点鎖線位置となるように所定角度時計方向に回動させる。これにより、回動ミラー11により反射された参照光は、回動ミラー12の反射面上の点P2を通り、回動ミラー11、12が実線位置にある場合と同様にホログラム記録媒体5内の点Qに入射する。
【0034】
以上の説明より理解できるように、参照光偏向器10は、ホログラム記録媒体5への入射位置を変更することなく、ホログラム記録媒体5への入射角のみを変更する機能を有する。なお、前記機能を実現するために回動ミラー11および回動ミラー12のそれぞれに要求される回転角の関係は幾何的演算により容易に算出することが可能である。
【0035】
なお、参照光偏向器10の構成は上記のものに限定されるものではない。すなわち本件発明者により開発された上記構成の他、例えば音響光学素子といわゆる4f系の光学系とを組み合わせた公知の構成により、参照光の入射位置を変更することなく参照光の入射角度のみを変更する機能を実現することが可能である。
【0036】
次に偏向器制御部20の構成について説明する。図1に示すように、偏向器制御部20は、参照光偏向器10の2枚の回動ミラー11、12の回動角度を監視するセンサ21と、各回動ミラーの回動角度とホログラム記録媒体への参照光の公称入射角θn (「公称入射角」の定義については後述する)との関係式が格納されたデータベース22と、演算部23と、校正演算(校正演算の内容については後述する)により求められた回動ミラー11、12の回動角度とホログラム記録媒体への参照光の入射角との関係を記憶するメモリ24と、演算部23の指令に基づいて回動ミラー11、12を駆動するドライバ25とを有している。
【0037】
なお、図1において、符号71はビームエキスパンダ、72および73は反射鏡、74および75はフーリエ変換レンズ、76はコリメータレンズをそれぞれ示しているが、これら構成要素は公知のものであり、かつ本発明の要旨とは直接関係ないため、以下の説明においてはこれらの構成要素についての言及は行わないものとする。
【0038】
次に、本実施形態において使用されるホログラム記録媒体5について説明する。図8(a)に示すように、ホログラム記録媒体5は、ニオブ酸リチウムまたはフォトポリマー等のホログラム材料からなる本体部5aと、この本体部5aを支持する枠体5bとからなる。保持装置6は、ホログラム記録媒体5の枠体5bを支持することによりホログラム記録媒体5をこのホログラムメモリ装置内の所定の位置に保持するようになっている。
【0039】
次に、上記構成を有するホログラムメモリ装置の作用について説明するが、以下の説明を進めるに先立ち、本実施形態において「公称入射角θn 」なる概念を導入した理由と、「公称入射角θn 」なる用語の定義とについて説明する。
【0040】
ホログラム記録媒体5への参照光の入射角の真の値(以下、「実入射角θr 」という。図1参照)は、参照光偏向器10の作動状態のみならず、ホログラムメモリ装置の組立精度、装置の個体差、ホログラム記録媒体5の保持装置6への装着精度等の様々な要因により変動する。このことは、同一規格で製造されたホログラムメモリ装置同士の間でデータの交換を行う場合に問題となる。ホログラムメモリ装置において多重記録された情報を再生するためには、ホログラム記録媒体5への再生時の参照光の入射角を、記録時の入射角と厳密に一致させなければならないからである。
【0041】
前述した記録時と再生時の入射角を一致させるため、実入射角θr を記録対象情報とともに記録し、記録された実入射角θr データに基づいて再生時の参照光の入射角を定めるという手法も考えられるが、実入射角θr を測定することは極めて困難である。
【0042】
この問題を解決するため、本実施形態においては、記録時に記録対象情報とともに公称入射角θn のデータをホログラム記録媒体5に記録するようにしている。
【0043】
ここで、公称入射角θn とは、ホログラムメモリ装置およびホログラム記録媒体5が製造誤差が全くない状態で製造され、かつホログラム記録媒体5が理想的な状態で保持装置6に保持されているものと仮定し、参照光偏向器10の作動状態のみに基づいて決定される仮想的な入射角である。
【0044】
以上が公称入射角θn なる用語の定義であり、従って、公称入射角θn は、実入射角θr に対して、ホログラムメモリ装置およびホログラム記録媒体5の個々の製造精度や保持装置6に対するホログラム記録媒体5の装着精度に起因する誤差を常に含むものとなる。
【0045】
以下、本実施形態の作用について説明する。
【0046】
まず、入出力装置9から記録すべきデジタルデータ(記録対象情報)が入力され、このデジタルデータは中央制御演算部7に送信される。
【0047】
次に、偏向器制御部20のセンサ21により参照光偏向器10の回動ミラー11、12の基準位置に対する回転角が検出され、この回転角データは偏向器制御部20の演算部23に送信される。
【0048】
参照光偏向器10の作動状態(すなわち回動ミラー11、12の回転角)と公称入射角θn との関係式は偏向器制御部20のデータベース22に格納されており、演算部23は、データベース22から前記関係式を取り出し、現時点でのホログラム記録媒体5への参照光の公称入射角θn を算出する。ここで例えば公称入射角θn の値がβ1 であった場合、この値β1 が中央制御演算部7に送信される。なお、この時点での実入射角θr がα1 であるものとして以下の説明を行う。
【0049】
中央制御演算部7は、公称入射角θn のデータβ1 を符号化する。中央制御演算部7は、この符号化された公称入射角θn データβ1 および入出力装置9から入力されたデジタルデータ(記録対象情報)と、中央制御演算部7自らが生成したダミーデータとを、予め定められた規則に基づいて配列し(マッピングを行い)、マップ50を作成する。
【0050】
作成されたマップ50を図4(a)に示す。なお、図4(a)において、符号A1,A2,B0,B1のいずれかが記入された各マス目にそれぞれ1ビットのデータがマッピングされる。
【0051】
図4(a)に示すように、マップ50は、符号A1またはA2が付された長方形の第1のデータ領域51と、第1の領域51を枠状に囲み符号B0またはB1が付された第2のデータ領域52とから構成されている。第2のデータ領域52は、第1のデータ領域51を直接的に取り囲む領域52aと、前記領域52aを更に取り囲む領域52bとからなる。
【0052】
ここで第1のデータ領域51の符号A1が付された先頭のnビット(図4(a)においては5ビット)分の領域51aには、ホログラム記録媒体5への参照光の公称入射角θn を示すデータ(参照光情報)が記入される。なお、ここで前記ビット数nは記録の多重度に基づいて定められ、多重度が高いほど多くのビット数nが割り付けられる。
【0053】
また、符号A2が付された領域51bには、入出力装置9から入力された「記録対象情報」が割り当てられている。なお、本明細書において、「記録対象情報」とは、ホログラム記録媒体5に記録すべき本来の情報、例えば音声情報、画像情報、文書情報等(これらはあくまで例示であり、「記録対象情報」なる用語の概念を限定するものではない)の情報を意味している。
【0054】
そして、符号B0およびB1が付された領域、すなわち第2のデータ領域52には、第1のデータ領域51の位置を特定するための再生位置検出データ(以下「再生位置検出情報」ともいう)(前述したダミーデータに相当する)が割り付けられている。符号B1を付した領域52aにはデジタルデータの1が記入され、符号B0を付した領域52bにはデジタルデータの0が記入されている。なお、後述するように、第2のデータ領域52のデジタルデータは、専ら第1のデータ領域51を特定するために使用されるものであり、それ自体がデータとしての意味を持つものではない。
【0055】
なお、前述した参照光情報(領域51a)と再生位置検出情報(第2のデータ領域52)をあわせて「再生条件情報」という。すなわち、本明細書において、「再生条件情報」とは、「記録対象情報」を読み出すために用いられる情報を意味する。
【0056】
以上説明したマップ50の形式(1ページに記録されるビット数、各領域の形状および位置関係、各領域に割り付けられるビット数など)は規格化され、この規格はすべてのホログラムメモリ装置に適用される。
【0057】
なお、上述したマップ50へのデータの割付方法は、本発明を実施するための最善の態様を示したものではあるが、これに限定されるものではない。すなわち、再生位置検出情報が割り付けられる第2のデータ領域52は、記録対象情報が割り付けられる第1のデータ領域51の位置の特定が可能な限りにおいて、第1のデータ領域51と一定の位置関係を有していれば十分である。また、第1のデータ領域51の形状も長方形形状に限定されるものではない。
【0058】
このマップ50のデータは変調器制御部4に送信され、変調器制御部4はこのマップ50に基づいて空間光変調器3の各情報付加要素の状態を制御する。
【0059】
ここで「情報付加要素」とは、空間光変調器3が液晶パネルの場合は、1ビット分の情報を表現する1画素または複数画素の集合体をいう。また、空間光変調器3がDMDの場合には、1ビット分の情報を表現する1枚のマイクロミラーまたは複数枚のマイクロミラーの集合体をいう。すなわち「情報付加要素」とは空間光変調器3において1ビット分の情報を表現する1単位の要素を意味し、情報付加要素の1単位は、図4(b)におけるマス目1マスにより示される。
【0060】
すなわち図4(b)を空間光変調器3の液晶パネル面を示すものとした場合、ハッチングが付されたマス目は物体光を遮断し、白く残されたマス目は物体光を通過させるような状態となっていることを示す。また、図4(b)を空間光変調器3のマイクロミラーの反射面を示すものとした場合、ハッチングが付されたマス目状の領域は物体光をホログラム記録媒体に入射しないように反射させ、白く残された領域は物体光をホログラム記録媒体に導くように反射させるような状態となっていることを示す。
【0061】
そして物体光は、この空間光変調器3を通過したり空間光変調器3により反射されることにより、二次元画像60として表現することができる平面的な情報を付加される。すなわち、空間光変調器3を通過した物体光を物体光の光路と垂直な平面に投影すると、図4(b)に示すような明暗で表現された二次元画像60が得られる。
【0062】
このようにして情報が付加された物体光はホログラム記録媒体5に入射する。
【0063】
一方、参照光は参照光偏向器10を経て、所定の実入射角θr でホログラム記録媒体5に入射する。参照光は物体光と干渉し、この干渉情報(干渉縞)がホログラム記録媒体5に記録される。以上のようにしてホログラム記録媒体5に1ページ分の記録対象情報が記録される。すなわち、ホログラム記録媒体5に記録対象情報と再生条件情報とを含む情報が記録される。
【0064】
次のページの情報(記録対象情報)を書き込む場合には、参照光偏向器10を調節してホログラム記録媒体5への参照光の入射角を変更し、上記と同様の手順で記録対象情報の記録が行われる。なお、この場合も、参照光偏向器10の状態に基づいて算出された公称入射角θn の記録が同様に行われる。すなわち、1ページ分の記録対象情報に対してこれに対応する再生条件情報が記録されることになる。
【0065】
なお、複数ページの情報(記録対象情報)が記録される際には、ページ番号(第Nページであるかを示す番号)Nと公称入射角θn の値は一意的に対応するように記録が行われる。また、互いに隣り合うページにそれぞれ対応する参照光の公称入射角θn の差は、常に一定とされる。従って、互いに隣り合うページにそれぞれ対応する参照光の実入射角θr の差も常に一定である(図6参照)。
【0066】
従って、前述したマップ50の第1のデータ領域51の領域51aには、公称入射角θn と一意的に対応する参照光情報、例えばページ番号Nを記録しても構わない。
【0067】
次に、このようにして記録された記録対象情報を他のホログラムメモリ装置で再生する場合の作用について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0068】
なお、本実施形態に示す各ホログラムメモリ装置及びホログラム記録媒体5は所定の規格の下に製造されるものであり、ホログラムメモリ装置の仕様は互いに同一となっている。
【0069】
まず、ホログラム記録媒体5は、記録が行われたホログラムメモリ装置から取り外され、再生用のホログラムメモリ装置の保持装置6に装着される。
【0070】
再生が行われる場合、まず入出力装置9から読み取り対象となっている記録対象情報のページ番号Nが入力され、ホログラム記録媒体5に記録された記録対象情報のうちの何ページ目の情報を読み取るかが指定される(ステップS100)。なお、以下の説明においては、説明の簡略化のため、記録時に、実入射角θr の値がα1 、公称入射角θn の値がβ1 で記録された1ページ目の記録対象情報を読み出す場合を例にとって説明する。
【0071】
中央制御演算部7は指定されたページ番号1と対応する公称入射角θn を求める。前述したようにページ番号Nと公称入射角θn とは一意的に対応するようになっており、かつ、ページ番号Nと公称入射角θn との関係はすべての装置に共通しているため、求められた公称入射角θn の値はβ1 となる。この値β1 は偏向器制御部20に送信される。
【0072】
偏向器制御部20の演算部23は、データベース22に格納された(本再生装置における)公称入射角θn と参照光偏向器10の作動状態との関係式に基づいて、この公称入射角θn の値β1 を実現するための参照光偏向器10の回動ミラー11、12の回転角を算出し、その算出結果に基づいて参照光偏向器10を調節する(ステップS101)。
【0073】
次に、参照光がホログラム記録媒体5に照射され、これによりホログラム記録媒体5から物体光が再生される。再生された物体光は画像センサ30により読み取られる(ステップS102)。
【0074】
ここで図6は多重記録が行われたホログラム記録媒体5に参照光の実入射角θr を順次変化させていった場合に、再生される物体光の強度の変化を概略的に示す図である。
【0075】
図6に示すように、各ページに対応する物体光の強度分布のピークは一定の角度ごとに現れている。また、参照光の実入射角θr が、物体光の強度がピークを示す実入射角θr からわずかにずれると物体光強度は大幅に減衰するようになっている。また、図6には、画像センサ30が物体光に付加された情報を情報として認識することができる物体光強度の下限値(しきい値)が破線で示されてる。
【0076】
ここで、ホログラム記録媒体5の保持装置6への位置決め誤差や装置の個体差等の理由により、参照光の実入射角θr の値は、2ページ目に対応する実入射角θr の値α2 と3ページ目に対応する実入射角θr の値α3 との間のαr となっているものとする(図6参照)。
【0077】
この場合、物体光の強度は破線で示されるしきい値以下であるため、画像センサ30は、物体光に付加された情報を情報として認識することができない状態にある。
【0078】
画像センサ30により光電変換された画像信号の強度を監視している中央制御演算部7は、画像信号の強度が十分なものであるか否かを判断し(ステップS103)所定のしきい値以下の場合、偏向器制御部20に走査指令信号を発信する。
【0079】
偏向器制御部20はドライバ25を介して参照光偏向器10の回動ミラー11、12を適宜回動させ、参照光の実入射角θr を連続的に変化させる(ステップS104)。
【0080】
中央制御演算部7は、参照光の実入射角θr の変化に対応して変化する画像センサ30からの画像信号の強度を監視し、画像信号の強度が最大になった時点(図6においては実入射角θr の値がα3 となった時点)で偏向器制御部20に走査停止信号を発信する。そして参照光偏向器10の動作が停止する。ステップS104の処理により、画像センサ30は物体光に付加された情報を十分に認識することができるようになる。
【0081】
ここで、次の処理ステップを説明する前に、本ホログラムメモリ装置の画像センサ30がどのようにして物体光に付加された情報を読みとるかについて説明する。
【0082】
再生された物体光が画像センサ30に入射した場合、画像センサ30の撮像面は、図4(b)に示すような画像60が投影される。
【0083】
本ホログラムメモリ装置においては、画像センサ30が、投影される画像60のうちマップ50の第1のデータ領域51(図4(a)参照)に対応する第1のデータ領域61を、撮像面の特定の領域31(図2および7参照)で読み取ることが原則となっている。従って、画像60を構成する各マス目(以下、このマス目1つを「画像要素」という)に付加された情報(明暗情報)は、画像センサ30の特定の画素により読みとられることが原則となっている。なお、好ましくは1つの画像要素には少なくとも4画素が割り当てられる。
【0084】
このように、各画像要素を読みとる画素を特定することにより、煩雑な演算操作を行うことなく、画像センサ30により光電変換された画像信号を図4(a)に示すようなマップ50形式のデータに復元することができる。
【0085】
以下、情報の読み出し操作について続けて説明する。
【0086】
次に、中央制御演算部7は、画像センサ30の撮像面に投影された画像60の第1のデータ領域61と、画像センサ30の特定の領域31との位置関係を判断する(ステップS106)。
【0087】
ここで、ホログラム記録媒体5の保持装置6への位置決め誤差や装置の個体差等の理由により、画像60の第1のデータ領域61が投影される位置は、画像センサ30の領域31からずれていることが通常である。画像センサ30の領域31に対する画像60の第1のデータ領域61の位置関係は、図7(a)に示すように平行移動した関係、図7(b)に示すように回転移動した関係、または図7(c)に示すように平行移動と回転移動の双方がなされている関係のいずれかになる。
【0088】
第1のデータ領域61と領域31との位置関係がどのようになっているかは、第1のデータ領域61の外側を囲む枠状の第2のデータ領域62に対応する画像信号に基づいて演算される。
【0089】
中央制御演算部7は、画像60の第2のデータ領域62のうち外側の明るい領域62b(好ましくは領域62bの四隅)が画像センサ30の撮像面のいかなる位置にあるかを計算する。
【0090】
本実施形態においては、画像60の第2のデータ領域62の領域62bと第1のデータ領域61との間に、第2のデータ領域62の内側の暗い領域62aが位置している。このため、第1のデータ領域61を認識することが容易である。すなわち、暗い領域62aを設けることなく第1のデータ領域61の外側に直接明るい領域62bを設けた場合には、第1の領域の位置が正しく認識できない場合も考えらえる(このことは投影像が撮像面に対して回転している場合に顕著となる)。これに対して本実施形態においては、暗い領域62aにより第1のデータ領域61と第2のデータ領域62の明るい領域62bとが分離されているため、明るい領域62bの位置を正確に特定することができる。
【0091】
次に、中央制御演算部7は、画像60の第2のデータ領域62の明るい領域62bの位置を示すデータに基づいて画像60の第1のデータ領域61の現在位置を特定し、第1のデータ領域61と画像センサ30の撮像面の領域31とを完全に合致させるために必要な画像センサ30の移動量を算出する。算出された必要移動量のデータは画像センサ制御部8に送信される。
【0092】
これを受けた画像センサ制御部8は、必要移動量のデータに基づいて画像センサ移動用の圧電素子42〜45に印加する電圧を算出するとともに、算出された電圧を各圧電素子42〜45に印加する。これにより画像60の第1のデータ領域61と画像センサ30の撮像面の領域31とが完全に合致する(ステップS107)。
【0093】
なお、ステップS107においては、画像センサ30を移動させることにより画像60の第1のデータ領域61と画像センサ30の撮像面の領域31とを合致させる処理、すなわち画像センサ30に対する物体光の投影位置の補正処理を行ったが、これに限定されるものではない。
【0094】
すなわち、上記処理と等価な処理を画像センサ30を移動させることなく演算処理のみにより実施してもよい。この演算処理は、画像センサ30の所定位置からずれて投影された画像60を画像センサ30の所定位置に投影されたものとして処理できるように、画像センサ30からの信号をソフトウエア的に変形させることにより実施される。
【0095】
特に、図7(a)に示すような平行移動を補正する処理は演算処理により容易に行うことができるため、回転移動に対する補正処理を画像センサ30を移動させることにより行い、平行移動に対する補正処理を演算処理により行うことも好ましい。
【0096】
また、本実施形態においては、画像センサ30を変位させることにより、画像センサと物体光との相対的位置関係を補正するようにしているが、これに限定されるものでもない。すなわち保持装置6を移動させる機構を設けて、この機構を作動させることによりホログラム記録5を移動させ、これにより位置関係の補正を行ってもよい。参照光はある程度の幅をもってホログラム記録媒体5に入射するため、このような手法により補正を行うことも可能である。
【0097】
ところで、ホログラム記録媒体5の位置ずれ等に起因して再生された物体光の光路方向、すなわち画像センサ30の撮像面の法線方向にも投影像は移動するが、この方向への位置ずれの影響は少ないため補正操作は必要ない。
【0098】
ステップS107が終了すると、再生された物体光に付加された情報(記録対象情報および再生条件情報)を読み取ることが可能となるため、中央制御演算部7は、この時点で画像60の第1のデータ領域61に記録された情報を暫定的に読み出す(ステップS108)。
【0099】
これにより、特に第1のデータ領域51の領域51aに記録された記録時の参照光の公称入射角θn の値(参照光情報)が読み出される。なお、この場合誤った第3ページが読みだされているため、読み出された公称入射角θn の値はβ3 である。中央制御演算部7はこの値β3 を偏向器制御部20に送信する。
【0100】
次に、偏向器制御部20の演算部23は、データベース22に格納された関係式により参照光偏向器10の現時点における状態に基づいて公称入射角θn を算出するとともに、算出した値を中央制御演算部7から送られた公称入射角θn の値と比較する(ステップS109)。
【0101】
ホログラムメモリ装置の個体差やホログラム記録媒体の位置決め誤差等により、両公称入射角の間には差があるのが通常であり、本例では以下のようになっている。
【0102】
すなわち、図6に示すように、ステップS104が終了した時点において、参照光変更器10はホログラム記録媒体5に実入射角α3 で参照光を入射させるような状態になっている。ここで、再生を実行しているホログラムメモリ装置は、データベース22に格納された参照光変更器10の状態と参照光の公称入射角θn との関係式に基づいて、現時点における参照光の公称入射角θn の値がβ1 +(α3 −αr )であるものと認識している。
【0103】
従ってホログラム記録媒体5から読み出された公称入射角と偏向器制御部20の演算部23が認識している公称入射角との間には、β3 −{β1 +(α3 −αr )}なる差がある。
【0104】
演算部23は、前記差β3 −{β1 +(α3 −αr )}に基づいてデータベース22から読み込んだ関係式を校正する。具体的には、例えば、参照光変更器10がホログラム記録媒体5に実入射角α3 で参照光を入射させるような状態になっている場合に、演算部23が公称入射角がβ3 であると認識できるように関係式を校正する。そして演算部23は校正した関係式をメモリ24に記憶させる(ステップS110)。
【0105】
なお、これ以降は、偏向器制御部20における公称入射角θn を求める演算はメモリ24に記憶された校正後の関係式に基づいて行われる。そしてメモリ24内に記憶された関係式は、ホログラム記録媒体5の装着状態が変化しない限りは変更されない。
【0106】
次に、中央制御演算部7は、ホログラム記録媒体5から読み出された公称入射角θn の値に基づいて現在読み出されているページ番号Nを求め、ステップS101で指定したページ番号と一致しているかを確認する(ステップS111)。
【0107】
本具体例においては、1ページ目を指定したのに対して3ページ目が読まれていることがわかるため、中央制御演算部7は、参照光の入射角を2ページ分に相当する分だけずらすように偏向器制御部20に指令を発し、これを受けた偏向器制御部20は、参照光の入射角を所定角度(この場合β3 −β1 )ずらすように回動ミラー11、12の回転角を修正する(ステップS112)。
【0108】
ステップS112が終了すると、指定したページに記録された情報を正しく読めるようになる。中央制御演算部7は、画像センサ30から送信されてくる画像信号をマップ50形式のデータに復元する。更に中央制御演算部7は、記録対象情報および再生条件情報を含むマップ50形式のデータから記録対象情報を抽出し、入出力装置9に出力する(ステップS113)。以上により記録対象情報の読み出しが完了する。
【0109】
なお、上記説明においては、あるホログラムメモリ装置で記録が行われたホログラム記録媒体5を他のホログラムメモリ装置により読み出す場合の作用について説明したが、これとは異なる場合、例えば、あるホログラムメモリ装置で部分的に記録が行われたホログラム記録媒体5に、他のホログラムメモリ装置により残余の部分に更に記録を行う場合には、既に書き込まれた情報(参照光情報)を一旦読み出すことにより上記と同様にして前記関係式の校正処理を行い、校正された関係式に基づいてその後の記録時の公称入射角を算出し記録すればよい。
【0110】
すなわち、ホログラム記録媒体5に最初に情報を書き込んだ装置により記録された公称入射角を基準として、他の装置における公称入射角が修正されることになる。
【0111】
なお、上記実施形態においては、公称入射角という基準を用いて装置間の整合をとるようにしているが、これに限定されるものではない。実入射角の測定は理論的には可能であるため(装置の構成は複雑化するが)、実入射角を基準として装置間の整合をとるようにしてもよい。
【0112】
以上説明したように、本実施形態によれば、ホログラム記録媒体の位置決め誤差や再生用参照光の入射角の誤差等があっても、ホログラムメモリ装置の大容量記録を損なうことなく、前記誤差を適切に補正することができる。このため、ホログラム記録媒体の入れ替えが可能で、かつ振動等がある環境下においても使用することができるホログラムメモリ装置を提供することができる。これにより、以下に示すような応用例を実現することができる。
【0113】
次に、本実施形態を応用したシステムについて説明する。
【0114】
[第1の応用例]
図9はホログラムメモリ装置をビデオカメラ81および編集機器82からなる映像システムに適用した例を示している。ビデオ画像はデータ圧縮を行ったとしても膨大なデータ量となり、長時間の撮影には大容量の記録媒体が必要となるが、ビデオカメラ81の記録装置として本実施形態のホログラムメモリ装置を適用することにより長時間撮影が可能となる。
【0115】
また、撮影中の振動等により、ホログラム記録媒体の装着状態が変化しても、前述した位置ずれ補正機能および公称入射角校正機能により問題なく撮影を続行することができる。
【0116】
また、映像情報が記録されたホログラム記録をビデオカメラ81から取り外し編集機器82に装着する場合に、ホログラムメモリ装置の個体間の機械的誤差やホログラム記録媒体の装着状態のばらつきの問題も、前述した位置ずれ補正機能および公称入射角校正機能により解決することができる。
【0117】
[第2の応用例]
図10はホログラムメモリ装置をいわゆるカーナビゲーションシステムに適用した例を示している。カーナビゲーションシステムにおいては、広域かつ詳細な地図情報等を提供する必要性から、大容量の記録媒体が必要とされる。そこで、ホログラム記録媒体を地図情報を格納したROM(read only memory)として用いる。
【0118】
この場合も、走行中の振動等によりホログラム記録媒体の位置ずれや、経時変化による画像センサの位置ずれ等が発生することも考えられるが、本実施形態による位置ずれ補正機能および公称入射角校正機能により問題なく継続使用が可能となる。装置の経時変化に対応しても特別な機械的調整は不要である。
【0119】
なお、本応用例はカーナビゲーションシステムへの適用に限定されるものではなく、他の移動体、例えば船や飛行機等に搭載される情報機器の記録再生装置への適用も可能である。
【0120】
[第3の応用例]
さらに他の応用例として、本実施形態の位置ずれ補正機能を利用して画像データ等の照合や検索を行うことも可能である。
【0121】
例えば、ある特定の画像と一致する画像を画像データベースから検索することを考える。ここで扱う画像としては、例えば指紋画像や公文書のデータ等が挙げられる。
【0122】
ここで、前記画像データベースは2値画像を扱っており、ホログラム記録媒体にそのまま画像の形で記憶されているとする。
【0123】
本応用例においては、前記実施形態の構成に加えて、画像センサ30に比較の対象となる比較画像を記録するメモリ機能と、各画素ごとの比較機能を持たせ、前記比較画像を画像センサ30に予め転送しておく。
【0124】
そしてホログラム記録媒体から順次登録してある画像を再生し、再生した画像それぞれについて位置合わせを行い、同時に画像の比較を行わせる。
【0125】
このようにすると、画像データベースに登録されている大量の画像データを外部メモリに転送することなく、画像の検索を行うことができる。
【0126】
[ホログラム記録媒体の変形例]
前述した実施形態の説明においては、ホログラム記録媒体5として比較的小型のものを想定して、ホログラム記録媒体5内の一点に複数の情報を記録する場合を想定して説明を行った。しかし、前述したように、本発明によるホログラムメモリ装置は極めて優れた位置ずれ補正機能および入射角校正機能を備えているため、ホログラム記録媒体5を大型化し、ホログラム記録媒体5内の複数の領域にそれぞれ複数の情報を記録するようにしてもよい。なおこの場合、保持装置6を移動させる機構が必要となる。
【0127】
さらには、図8(b)に示すように、ホログラム記録媒体5の本体5aを円盤状に形成してもよい。この場合ホログラム記録媒体はスピンドルモータ90によりチャッキングされ回転自在に保持される。
【0128】
この場合、スピンドルモータ90をホログラム記録媒体(の本体5a)の半径方向に移動可能とする機構を設けたり、光学的に参照光(および物体光)の入射位置を変更する機構を設けることにより、ホログラム記録媒体の任意の位置に書き込まれた記録対象情報にアクセスすることができる。
【0129】
なお、上記2つの変形例においては、ホログラム記録媒体の複数領域に記録対象情報を記録するようになっているため、再生条件情報の一つとして前記各領域のアドレスを示す情報を、前述したマップ50の第1のデータ領域51に割り付けて記録することが好ましい。なお、本変形例を上記の3つの応用例に適用することも当然に可能である。
【0130】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、異なる装置間で記録媒体を交換するでき、かつ振動等がある環境下においても使用することができるホログラムメモリ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるホログラムメモリ装置の一実施形態を示す図であって、ホログラムメモリ装置の全体構成を示す概略図。
【図2】画像センサを変位させる手段の一例を示す図。
【図3】参照光偏向器の構成および作用を示す図。
【図4】図4(a)は、空間光変調器の各情報付加要素への情報の割付を行うためのマップを示す図であり、図4(b)は前記マップに基づいて制御された空間光変調器により情報を付加された物体光を平面上に投影した場合に得られる画像を示す図。図4(a)におけるマス目と図4(b)におけるマス目は一対一に対応する。
【図5】記録対象情報の読み出し手順を示すフローチャート。
【図6】公称入射角の校正の手順を示す図。
【図7】画像センサに投影される物体光の位置ずれの態様を示す図。
【図8】ホログラム記録媒体の構成を示す図。
【図9】本発明の応用例を示す図。
【図10】本発明の応用例を示す図。
【図11】従来のホログラムメモリ装置を示す図。
【符号の説明】
3 空間光変調器
5 ホログラム記録媒体
5a (ホログラム記録媒体)の本体
10 参照光偏向器
30 画像センサ
50 (情報の割付を示す)マップ

Claims (10)

  1. 複数の情報付加要素により物体光に情報を付加する空間光変調器を備えたホログラムメモリ装置によりホログラム記録媒体に記録対象情報を記録する方法において、
    記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報を明部および暗部の組み合わせとして割り付けるための第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域として割り付けるための第2のデータ領域と前記空間光変調器の情報付加要素に割り付けるためのマップを作成する工程と、
    作成されたマップに基づいて、前記空間光変調器の各情報付加要素の状態を、入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれるようにする第1の状態または入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれないようにする第2の状態のいずれかの状態に調節する工程と、
    調整された前記空間光変調器を経由して前記ホログラム記録媒体に物体光を入射させるとともに、参照光を前記ホログラム記録媒体に入射させ、物体光と参照光の干渉情報を前記ホログラム記録媒体に記録する工程と、
    を備え、
    物体光を前記空間光変調器を経由して前記ホログラム記録媒体に入射させる際に、前記第1の状態とされた情報付加要素に入射した物体光のみが前記ホログラム記録媒体に入射し、これにより、前記ホログラム記録媒体上に、前記第1の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の一方を表す明部および前記第2の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の他方を表す暗部の組み合わせを有する二次元画像が投影され、
    前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記マップ上に割り付けられており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能とした
    ことを特徴とするホログラム記録媒体に記録対象情報を記録する方法。
  2. 前記再生条件情報には、記録時における前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角に対応する参照光情報が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 参照光を照射することによりホログラム記録媒体から再生される物体光が投影される画像センサを備えたホログラムメモリ装置を用いて、記録対象情報とその再生条件を示す再生条件情報とを含む情報が記録されたホログラム記録媒体から記録対象情報を再生する方法において、
    物体光に付加された情報を画像センサにより暫定的に読み出す暫定読出工程と、読み出された情報から再生条件情報を抽出する抽出工程と、抽出された再生条件情報に基づいて再生条件を調節する調節工程と、
    調節された再生条件により記録対象情報を読み出す記録対象情報読出工程と、を備え、
    前記暫定読出工程において、物体光はデジタルデータの0および1の一方を表現する明部およびデジタルデータの0および1の他方を表現する暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として前記画像センサ上に投影され、
    前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記二次元画像上に割り付けられており、
    前記抽出工程は、前記画像センサ上に投影された二次元画像上の前記再生位置検出情報に対応する領域の位置を特定する工程を含み、
    前記調節工程は、前記抽出工程において特定された前記再生位置検出情報に対応する領域の位置に基づいて物体光が前記画像センサの所定位置に正しく投影されているかを判定する工程と、この判定に基づいて再生条件を調節する工程とを含む
    ことを特徴とするホログラム記録媒体から記録対象情報を再生する方法。
  4. 前記再生条件情報には、記録時における前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角に対応する参照光情報が含まれており、
    前記抽出工程は、前記参照光情報を抽出する工程を更に含み、
    前記調節工程は、抽出された前記参照光情報に基づいて前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角度を変更する工程を更に含んでいる、
    ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. ホログラム記録媒体に対する記録対象情報の記録を行うためのホログラムメモリ装置において、
    物体光および参照光を生成する手段と、
    物体光に情報を付加する複数の情報付加要素を有する空間光変調器と、
    記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とを、予め定められた規則に基づいて、前記空間光変調器の各情報付加要素に割り付けるためのマップを作成するマップ作成手段と、
    前記マップに基づいて前記空間光変調器を制御する手段と、
    を備え、
    前記空間光変調器の各情報付加要素は、入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれるようにする第1の状態または入射した物体光が前記ホログラム記録媒体に導かれないようにする第2の状態のいずれかの状態をとることができるように構成され、これにより、前記空間光変調器を経由してホログラム記録媒体に向かう物体光が、前記第1の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の一方を表す明部および前記第2の状態とされた情報付加要素に対応してデジタルデータの0および1の他方を表す暗部を有する二次元画像の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有するとして前記ホログラム記録媒体上に投影されるようになっており、
    前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、
    前記マップ作成手段は、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とを予め定められた位置関係をもって前記マップ上に割り付けるように構成されており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能とした
    ことを特徴とするホログラムメモリ装置。
  6. 前記再生条件情報には、記録時における前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角に対応する参照光情報が含まれており、このホログラムメモリ装置が、記録時におけるホログラム記録媒体への参照光の入射角に対応する参照光情報を検出する手段を更に備えていることを特徴とする、請求項5に記載のホログラムメモリ装置。
  7. 記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とを含む情報が記録されたホログラム記録媒体から記録対象情報の再生を行うホログラムメモリ装置において、
    参照光を生成する手段と、
    参照光をホログラム記録媒体に照射した場合に再生される物体光が投影される画像センサと、
    画像センサにより読み取られた情報から再生条件情報を抽出する抽出手段と、
    前記画像センサにより読み取られた情報のうち再生条件情報に基づいて情報の再生条件を調節する調節手段と、
    を備え、
    前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって前記二次元画像上に割り付けられており、
    前記抽出手段は、デジタルデータの0および1の一方を表現する明部およびデジタルデータの0および1の他方を表現する暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域と、この第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として前記画像センサ上に投影された物体光から、前記二次元画像の前記再生位置検出情報に対応する領域の位置を特定する手段を有し、
    前記調節手段は、前記抽出手段が特定した前記再生位置検出情報に対応する領域の位置に基づいて、物体光が前記画像センサの所定位置に正しく投影されているか判定する手段と、この判定に基づいて再生条件を調節する手段と、を含む
    ことを特徴とするホログラムメモリ装置。
  8. 前記再生条件情報には、記録時における前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角に
    対応する参照光情報が含まれており、
    前記抽出手段は、前記参照光情報を抽出する手段を更に含み、
    前記調節手段は、抽出された前記参照光情報に基づいて前記ホログラム記録媒体への参
    照光の入射角度を変更する手段を更に含んでいる、
    ことを特徴とする請求項7に記載のホログラムメモリ装置。
  9. 情報が付加された物体光とこの物体光と干渉する参照光との干渉情報が記録されたホログラム記録媒体において、
    このホログラム記録媒体に記録された情報には、記録対象情報とこの記録対象情報の再生条件を示す再生条件情報とが含まれており、
    このホログラム記録媒体に記録された情報は、このホログラム記録媒体上に、デジタルデータの0および1の一方を表す明部およびデジタルデータの0および1の他方を表す暗部の組み合わせを有する第1のデータ領域とこの第1のデータ領域を明部および暗部の一方のみで取り囲む領域を更に明部および暗部の他方のみで取り囲む第2のデータ領域を有する二次元画像として投影された物体光と、参照光との干渉情報であり、
    前記再生条件情報は、ダミーデータを有する再生位置検出情報を含み、前記二次元画像には、前記再生位置検出情報と前記記録対象情報とは、予め定められた位置関係をもって割り付けられており、これにより、再生時に、再生される二次元画像上における前記再生位置検出情報の位置を特定することにより該二次元画像上における前記記録対象情報の位置を特定することを可能としたことを特徴とするホログラム記録媒体。
  10. 前記再生条件情報には、記録時における前記ホログラム記録媒体への参照光の入射角に対応する参照光情報が含まれていることを特徴とする、請求項に記載のホログラム記録媒体。
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