JP3549309B2 - コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器,電子機器,音響機器の電子回路などに用いるコンデンサの技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器の小型化,薄型化,軽量化,および電気機器回路の高密度化,デジタル化に伴い、電子部品に対する小型化,高性能化,高信頼性化の要望がますます高まってきている。そのような情勢の中で、コンデンサも同様に小型で大容量を有し、かつ高周波領域でのインピーダンスの低いものが強く要求されている。
【0003】
高周波領域でインピーダンスが低いコンデンサには、種々のセラミックスや有機フィルムを誘電体としたセラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどがあるが、高い静電容量を得るためには、形状が大きくなり、価格も高くなる。
【0004】
一方、アルミニウムやタンタルの酸化被膜を誘電体とした電解コンデンサは、比較的小型で大容量を有するが、高周波領域におけるインピーダンスや誘電特性が前記のセラミックコンデンサやフィルムコンデンサに比べ劣るという欠点がある。そこで、高周波特性を改善するために、電解コンデンサの電解液部分をそれよりも導電性の高い二酸化マンガンやポリピロールなどに置き換えた固体型の電解コンデンサが開発されている。
【0005】
さらに、図4に示す構成を有するエッチドアルミニウム箔41の表面上に誘電体層としてアルミニウムの化成被膜ではなく、ポリアミック酸塩溶液を用いた電着法によりポリイミド薄膜42を形成させ、前記ポリイミド薄膜42の表面上に対極として導電性高分子のポリピロール43を用いた新しいタイプの小型で大容量を有するコンデンサの製造方法が提案されている(特開平4−87312号公報参照)。なお44は導電材料を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のポリアミック酸塩溶液を用いて電着したポリイミド薄膜は、有機フィルムの中でも耐熱性に優れるという利点を有する反面、常温付近では柔軟性に欠けるうえに接着性が弱いため、箔を曲げたりした際に亀裂や剥離が生じ易く、加工性や長期にわたる信頼性に乏しかった。さらに、ポリアミック酸塩溶液は、ジメチルホルムアミドやメタノールなどの有機溶媒を多量に含むため、電着する際には、引火の危険性が高く、これらの有機溶媒は人体に有毒であるので作業時には注意が必要であった。さらに、これらの有機溶媒は、前述の問題点に加えて、水に比べてコストが高いなどという工業的大量生産には不向きである点が多い。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決することを課題とするもので、電着液に安価で作業性の優れた溶液を用い、粗面化した導電体を電極に用いて電着を行って、加工性および接着性に優れ、長期にわたり良好な高周波特性を示す新しいタイプの小型・大容量フィルムコンデンサおよびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明のコンデンサは、粗面化した導電体電極の表面上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層と、前記誘電体層の表面上に対極として設けた導電性高分子の導電体層とを有し、両電極間に電圧印加を行うことにより前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層を絶縁化してなるものである。
【0009】
この本発明によれば、加工性および接着性に優れ、長期にわたり良好な高周波特性を示すコンデンサが実現できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、粗面化した導電体電極の表面上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層と、前記誘電体層の表面上に対極として設けた導電性高分子の導電体層とを有し、両電極間に電圧印加を行うことにより前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層を絶縁化してなるものであり、粗面化して表面積を拡大した電極表面上に電極材料と接着性が極めて良いポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層を設けることにより、小型・大容量化が可能となり、さらに長期にわたる高い信頼性の維持ができる。
【0011】
また、前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層が絶縁化されることにより、自己回復性を示すものであり、ポリアクリル酸樹脂薄膜に生じた欠陥部近傍における導電体層が部分的に絶縁化されることにより支障なくコンデンサを使用できるものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、導電性高分子として陰イオンをドープしたポリピロールを用いたことにより、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層とポリピロールとの相互作用による自己回復機能がある。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、ポリアクリル酸を含む水溶液を電着液として、粗面化した導電体電極上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層を電着する工程と、前記工程の後に前記誘電体層の表面上に対向電極として更に導電性高分子の導電体層を形成する工程と、両電極間に電圧印加を行い前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電性高分子導電体層を絶縁化する工程とを有するものであり、容易かつ安価に性能の優れたコンデンサを製造できる。
【0014】
なお、対向電極の表面上にコロイダルカーボンさらにその表面上に銀ペーストを塗布することにより集電された対向電極を形成することができる。
【0015】
また、前記ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層を形成するためのポリアクリル酸の電着法は、電気泳動電着法を用い、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層の形成回数は、欠陥をなくすために乾燥,熱処理をはさんで複数回行うことが望ましい。さらに、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層上への対向電極として、導電性高分子層を形成するためには、電解重合法を用い、その際には、前駆層として導電性高分子の化学酸化重合層を使用して電解重合を行うとよい。
【0016】
また、前記する本発明におけるポリアクリル酸樹脂とは、例えばカルボン酸基を側鎖に持つポリアクリル酸またはポリメタクリル酸と、硬化剤としてメラミンなどを含んでいるものである。また、ポリアクリル酸水溶液とは、それらのカルボン酸基の一部をトリエチルアミンなどの塩基類で中和して水溶化したものである。本発明で述べるポリアクリル酸の溶液類には、市販のアニオン系電着塗料なども含まれるが、それらを本発明の目的を満たす電着液とするために蒸留水やアルコールなどで希釈して調製することが可能であることを実験的に確かめた。
【0017】
前記した本発明の実施の形態において化学酸化重合に用いられる酸化剤は、ヨウ素,臭素などのハロゲン,五塩化リン,塩化アルミニウム,五フッ化ヒ素,五フッ化リンなどの金属ハロゲン化物,過硫酸ナトリウム,過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩,過酸化水素などの過酸化物などである。
【0018】
また、前記する本発明の実施の形態としての電解重合に用いる支持電解質は陰イオンが、ヘキサフロロリン,ヘキサフロロヒ素などのハロゲン化物アニオンや、ヨウ素,臭素,塩素などのハロゲンアニオンや過塩素酸アニオンやアルキルベンゼンスルホン酸,ニトロベンゼンスルホン酸,アミノベンゼンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,β−ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸アニオンであるものを用いる。その中でも、スルホン酸アニオンが好ましい。また、陽イオンは、リチウム,ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属カチオンやアンモニウム,テトラアルキルアンモニウムなどの四級アンモニウムカチオンである。化合物としては、例えばLiClO4,Nal,NaPF4,LiBF4,トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム,ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどである。
【0019】
(実施の形態)
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に、本実施の形態で説明するコンデンサの断面を示し、図2に、本実施の形態に用いる電気泳動電着装置の概略を示す。
【0021】
エッチングした細孔の平均孔径が2μmで、表面積が約30倍に粗面化されたエッチドアルミニウム箔を25×10mmの大きさに切断し、導電体電極としての電着用電極1とし、そのうち下端10×10mmの部分を誘電体形成部とした。一方、ポリアクリル酸を含む水溶液には、アニオン系電着塗料パワーマイト3700(日本ペイント製)1部に水を200部とトリエチルアミン0.1部を加え室温で30分間撹拌したものを用いて電着液2とした。
【0022】
この電着液2を直径80mmの円筒型のステンレス容器3に入れ、前記エッチドアルミニウム箔の下端10×10mmの部分を浸漬して陽極とし、ステンレス容器3を陰極として、印加電圧10V一定で、30分間通電することにより電着を行い、エッチドアルミニウム箔表面に誘電体層としてのポリアクリル酸樹脂薄膜4を形成させた。次に、それを150℃に加熱し、エッチドアルミニウム箔の表面上のポリアクリル酸を硬化させる。その後再び陽極とし、印加電圧を20V一定で、30分間電着を行い、その後同様に150℃に加熱し硬化させ、粗面化したエッチドアルミニウム箔の電極に極めて欠陥の少ない接着性の良いポリアクリル酸樹脂薄膜4を形成させ、コンデンサ用素子とした。
【0023】
次に、その素子を1.0モル/リットルのピロールのエタノール溶液と1.0モル/リットルの過硫酸アンモニウム水溶液に交互に2分間づつ浸漬する操作を3回繰り返してポリピロールの化学酸化重合膜5を形成させた。なお、この操作の際に、ポリアクリル酸樹脂薄膜4が形成されていない電極箔の残りの部分にピロールが形成されてしまうと、コンデンサとした場合にショートする危険性があるので、あらかじめその危険性があるような箔の中央部分(下端から約10〜20mm部分)にエポキシ樹脂膜6などを塗布して絶縁化した後に、化学酸化重合を行った。
【0024】
つづいてこのポリピロールの化学酸化重合膜5が形成された素子を、ピロール1部,支持電解質として40wt%ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム水溶液1部,蒸留水40部を混合した溶液に浸漬して陽極とし、円筒型のステンレス容器を陰極として、両者の電極間に電流密度1mA/cm 2 の一定電流で30分間電解重合してポリピロール膜7を形成した。この素子をコロイダルカーボンに浸漬し、更に銀ペーストを塗布することにより集電された導電性塗膜からなる対向電極8を形成し、エポキシ樹脂で外装することにより実施の形態に示すコンデンサを完成した。ここで示した製造工程のフローチャートを図3に示す。
【0025】
(性能検討1)
また、本実施の形態で得られたコンデンサの特性を比較例と比較して表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
この表1から明らかなように、本実施の形態によるコンデンサは静電容量,誘電損失(tanδ),漏れ電流の点で優れた効果が得られる。
【0028】
なお、比較例として示すコンデンサは前記の実施の形態におけるコンデンサにおいて、電着の際の印加電圧を10Vで、一回のみ電着したもので、そのコンデンサ特性を表1の比較例に示す。比較例のコンデンサは、電着膜に欠陥(ピンホール)がかなりあったために、漏れ電流,誘電損失(tanδ)が大きい。
【0029】
(性能検討2)
比較例において、対極となるポリピロールの厚さを薄くするためにポリピロールの化学酸化重合における素子の浸漬回数を1回のみで化学酸化重合を行った後、電解重合をピロールモノマーおよびトルエンナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度を3分の1に下げた電解液を用いて行ったこと以外は比較例と同じ操作でコンデンサを作製した。このコンデンサを作製した後、20Vの電圧を印加すると、微小放電音がして、絶縁抵抗が増大し、tanδが減少した。電圧印加前と印加後の絶縁抵抗とtanδの値を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
この表2から明らかなように、本発明の実施の形態によって得られたコンデンサに電圧印加処理をした際に、薄膜化したポリピロールとポリアクリル酸樹脂との相互作用により、絶縁破壊点や欠陥部分を修復する自己回復(self−healing)作用が働き、漏れ電流の大きい部分を絶縁化できたために電圧印加後の誘電損失(tanδ)や漏れ電流の値が表2に示すように減少した。
【0032】
(性能検討3)
実施の形態で作製したポリアクリル酸樹脂薄膜コンデンサの25℃,1kHzにおける2000時間経過後の静電容量変化率および誘電損失の変化を表3に示す。比較のために、ポリイミド薄膜コンデンサのデータも併せて表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
ただし表中で、ΔCは静電容量変化を、C0は最初の静電容量を、Δtanδは誘電損失の変化を示している。
【0035】
この表3からもわかるように、ポリアクリル酸樹脂を電着法によってエッチドアルミニウム箔の形状に追従した0.1μm以下の厚さの薄膜にした場合、エッチドアルミニウム箔との接着性が、同じ厚さのポリイミド薄膜と比べて著しく優れているために、時間が経過しても膜の部分的な剥離や亀裂が生じにくかった。そのために、ポリアクリル酸樹脂薄膜コンデンサの1kHzにおける誘電特性の低下は、ポリイミド薄膜コンデンサのそれに比べて小さかった。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によるコンデンサおよびその製造方法は、粗面化した導電体電極表面上に、ポリアクリル酸を含む水溶液を電着液として電着を行い、細孔の内部までポリアクリル酸樹脂薄膜誘電体を形成し、その表面上に対極としてポリピロールからなる薄膜導電体層を設けることにより、無極性で、長期にわたり高周波特性に優れ、なおかつ自己回復作用を有する小型・大容量コンデンサが実現できる。さらにコンデンサ作製時には、作業性,安全性,加工性にも優れているので工業的な大量生産に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における誘電体にポリアクリル酸樹脂薄膜を用いたコンデンサの断面図
【図2】実施の形態における電気泳動電着装置の概略図
【図3】実施の形態における製造工程のフローチャート
【図4】従来の技術における誘電体にポリイミドを用いたコンデンサの断面図
【符号の説明】
1 電着用電極(導電体電極)
4 ポリアクリル酸樹脂薄膜
5 ポリピロールの化学酸化重合膜
6 エポキシ樹脂膜
7 電解重合したポリピロール膜
8 対向電極(導電体層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器,電子機器,音響機器の電子回路などに用いるコンデンサの技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機器の小型化,薄型化,軽量化,および電気機器回路の高密度化,デジタル化に伴い、電子部品に対する小型化,高性能化,高信頼性化の要望がますます高まってきている。そのような情勢の中で、コンデンサも同様に小型で大容量を有し、かつ高周波領域でのインピーダンスの低いものが強く要求されている。
【0003】
高周波領域でインピーダンスが低いコンデンサには、種々のセラミックスや有機フィルムを誘電体としたセラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどがあるが、高い静電容量を得るためには、形状が大きくなり、価格も高くなる。
【0004】
一方、アルミニウムやタンタルの酸化被膜を誘電体とした電解コンデンサは、比較的小型で大容量を有するが、高周波領域におけるインピーダンスや誘電特性が前記のセラミックコンデンサやフィルムコンデンサに比べ劣るという欠点がある。そこで、高周波特性を改善するために、電解コンデンサの電解液部分をそれよりも導電性の高い二酸化マンガンやポリピロールなどに置き換えた固体型の電解コンデンサが開発されている。
【0005】
さらに、図4に示す構成を有するエッチドアルミニウム箔41の表面上に誘電体層としてアルミニウムの化成被膜ではなく、ポリアミック酸塩溶液を用いた電着法によりポリイミド薄膜42を形成させ、前記ポリイミド薄膜42の表面上に対極として導電性高分子のポリピロール43を用いた新しいタイプの小型で大容量を有するコンデンサの製造方法が提案されている(特開平4−87312号公報参照)。なお44は導電材料を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のポリアミック酸塩溶液を用いて電着したポリイミド薄膜は、有機フィルムの中でも耐熱性に優れるという利点を有する反面、常温付近では柔軟性に欠けるうえに接着性が弱いため、箔を曲げたりした際に亀裂や剥離が生じ易く、加工性や長期にわたる信頼性に乏しかった。さらに、ポリアミック酸塩溶液は、ジメチルホルムアミドやメタノールなどの有機溶媒を多量に含むため、電着する際には、引火の危険性が高く、これらの有機溶媒は人体に有毒であるので作業時には注意が必要であった。さらに、これらの有機溶媒は、前述の問題点に加えて、水に比べてコストが高いなどという工業的大量生産には不向きである点が多い。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決することを課題とするもので、電着液に安価で作業性の優れた溶液を用い、粗面化した導電体を電極に用いて電着を行って、加工性および接着性に優れ、長期にわたり良好な高周波特性を示す新しいタイプの小型・大容量フィルムコンデンサおよびその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明のコンデンサは、粗面化した導電体電極の表面上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層と、前記誘電体層の表面上に対極として設けた導電性高分子の導電体層とを有し、両電極間に電圧印加を行うことにより前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層を絶縁化してなるものである。
【0009】
この本発明によれば、加工性および接着性に優れ、長期にわたり良好な高周波特性を示すコンデンサが実現できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、粗面化した導電体電極の表面上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層と、前記誘電体層の表面上に対極として設けた導電性高分子の導電体層とを有し、両電極間に電圧印加を行うことにより前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層を絶縁化してなるものであり、粗面化して表面積を拡大した電極表面上に電極材料と接着性が極めて良いポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層を設けることにより、小型・大容量化が可能となり、さらに長期にわたる高い信頼性の維持ができる。
【0011】
また、前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層が絶縁化されることにより、自己回復性を示すものであり、ポリアクリル酸樹脂薄膜に生じた欠陥部近傍における導電体層が部分的に絶縁化されることにより支障なくコンデンサを使用できるものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、導電性高分子として陰イオンをドープしたポリピロールを用いたことにより、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層とポリピロールとの相互作用による自己回復機能がある。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、ポリアクリル酸を含む水溶液を電着液として、粗面化した導電体電極上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層を電着する工程と、前記工程の後に前記誘電体層の表面上に対向電極として更に導電性高分子の導電体層を形成する工程と、両電極間に電圧印加を行い前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電性高分子導電体層を絶縁化する工程とを有するものであり、容易かつ安価に性能の優れたコンデンサを製造できる。
【0014】
なお、対向電極の表面上にコロイダルカーボンさらにその表面上に銀ペーストを塗布することにより集電された対向電極を形成することができる。
【0015】
また、前記ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層を形成するためのポリアクリル酸の電着法は、電気泳動電着法を用い、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層の形成回数は、欠陥をなくすために乾燥,熱処理をはさんで複数回行うことが望ましい。さらに、ポリアクリル酸樹脂薄膜の誘電体層上への対向電極として、導電性高分子層を形成するためには、電解重合法を用い、その際には、前駆層として導電性高分子の化学酸化重合層を使用して電解重合を行うとよい。
【0016】
また、前記する本発明におけるポリアクリル酸樹脂とは、例えばカルボン酸基を側鎖に持つポリアクリル酸またはポリメタクリル酸と、硬化剤としてメラミンなどを含んでいるものである。また、ポリアクリル酸水溶液とは、それらのカルボン酸基の一部をトリエチルアミンなどの塩基類で中和して水溶化したものである。本発明で述べるポリアクリル酸の溶液類には、市販のアニオン系電着塗料なども含まれるが、それらを本発明の目的を満たす電着液とするために蒸留水やアルコールなどで希釈して調製することが可能であることを実験的に確かめた。
【0017】
前記した本発明の実施の形態において化学酸化重合に用いられる酸化剤は、ヨウ素,臭素などのハロゲン,五塩化リン,塩化アルミニウム,五フッ化ヒ素,五フッ化リンなどの金属ハロゲン化物,過硫酸ナトリウム,過硫酸カリウム,過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩,過酸化水素などの過酸化物などである。
【0018】
また、前記する本発明の実施の形態としての電解重合に用いる支持電解質は陰イオンが、ヘキサフロロリン,ヘキサフロロヒ素などのハロゲン化物アニオンや、ヨウ素,臭素,塩素などのハロゲンアニオンや過塩素酸アニオンやアルキルベンゼンスルホン酸,ニトロベンゼンスルホン酸,アミノベンゼンスルホン酸,ベンゼンスルホン酸,β−ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸アニオンであるものを用いる。その中でも、スルホン酸アニオンが好ましい。また、陽イオンは、リチウム,ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属カチオンやアンモニウム,テトラアルキルアンモニウムなどの四級アンモニウムカチオンである。化合物としては、例えばLiClO4,Nal,NaPF4,LiBF4,トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム,ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどである。
【0019】
(実施の形態)
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に、本実施の形態で説明するコンデンサの断面を示し、図2に、本実施の形態に用いる電気泳動電着装置の概略を示す。
【0021】
エッチングした細孔の平均孔径が2μmで、表面積が約30倍に粗面化されたエッチドアルミニウム箔を25×10mmの大きさに切断し、導電体電極としての電着用電極1とし、そのうち下端10×10mmの部分を誘電体形成部とした。一方、ポリアクリル酸を含む水溶液には、アニオン系電着塗料パワーマイト3700(日本ペイント製)1部に水を200部とトリエチルアミン0.1部を加え室温で30分間撹拌したものを用いて電着液2とした。
【0022】
この電着液2を直径80mmの円筒型のステンレス容器3に入れ、前記エッチドアルミニウム箔の下端10×10mmの部分を浸漬して陽極とし、ステンレス容器3を陰極として、印加電圧10V一定で、30分間通電することにより電着を行い、エッチドアルミニウム箔表面に誘電体層としてのポリアクリル酸樹脂薄膜4を形成させた。次に、それを150℃に加熱し、エッチドアルミニウム箔の表面上のポリアクリル酸を硬化させる。その後再び陽極とし、印加電圧を20V一定で、30分間電着を行い、その後同様に150℃に加熱し硬化させ、粗面化したエッチドアルミニウム箔の電極に極めて欠陥の少ない接着性の良いポリアクリル酸樹脂薄膜4を形成させ、コンデンサ用素子とした。
【0023】
次に、その素子を1.0モル/リットルのピロールのエタノール溶液と1.0モル/リットルの過硫酸アンモニウム水溶液に交互に2分間づつ浸漬する操作を3回繰り返してポリピロールの化学酸化重合膜5を形成させた。なお、この操作の際に、ポリアクリル酸樹脂薄膜4が形成されていない電極箔の残りの部分にピロールが形成されてしまうと、コンデンサとした場合にショートする危険性があるので、あらかじめその危険性があるような箔の中央部分(下端から約10〜20mm部分)にエポキシ樹脂膜6などを塗布して絶縁化した後に、化学酸化重合を行った。
【0024】
つづいてこのポリピロールの化学酸化重合膜5が形成された素子を、ピロール1部,支持電解質として40wt%ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム水溶液1部,蒸留水40部を混合した溶液に浸漬して陽極とし、円筒型のステンレス容器を陰極として、両者の電極間に電流密度1mA/cm 2 の一定電流で30分間電解重合してポリピロール膜7を形成した。この素子をコロイダルカーボンに浸漬し、更に銀ペーストを塗布することにより集電された導電性塗膜からなる対向電極8を形成し、エポキシ樹脂で外装することにより実施の形態に示すコンデンサを完成した。ここで示した製造工程のフローチャートを図3に示す。
【0025】
(性能検討1)
また、本実施の形態で得られたコンデンサの特性を比較例と比較して表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
この表1から明らかなように、本実施の形態によるコンデンサは静電容量,誘電損失(tanδ),漏れ電流の点で優れた効果が得られる。
【0028】
なお、比較例として示すコンデンサは前記の実施の形態におけるコンデンサにおいて、電着の際の印加電圧を10Vで、一回のみ電着したもので、そのコンデンサ特性を表1の比較例に示す。比較例のコンデンサは、電着膜に欠陥(ピンホール)がかなりあったために、漏れ電流,誘電損失(tanδ)が大きい。
【0029】
(性能検討2)
比較例において、対極となるポリピロールの厚さを薄くするためにポリピロールの化学酸化重合における素子の浸漬回数を1回のみで化学酸化重合を行った後、電解重合をピロールモノマーおよびトルエンナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度を3分の1に下げた電解液を用いて行ったこと以外は比較例と同じ操作でコンデンサを作製した。このコンデンサを作製した後、20Vの電圧を印加すると、微小放電音がして、絶縁抵抗が増大し、tanδが減少した。電圧印加前と印加後の絶縁抵抗とtanδの値を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
この表2から明らかなように、本発明の実施の形態によって得られたコンデンサに電圧印加処理をした際に、薄膜化したポリピロールとポリアクリル酸樹脂との相互作用により、絶縁破壊点や欠陥部分を修復する自己回復(self−healing)作用が働き、漏れ電流の大きい部分を絶縁化できたために電圧印加後の誘電損失(tanδ)や漏れ電流の値が表2に示すように減少した。
【0032】
(性能検討3)
実施の形態で作製したポリアクリル酸樹脂薄膜コンデンサの25℃,1kHzにおける2000時間経過後の静電容量変化率および誘電損失の変化を表3に示す。比較のために、ポリイミド薄膜コンデンサのデータも併せて表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
ただし表中で、ΔCは静電容量変化を、C0は最初の静電容量を、Δtanδは誘電損失の変化を示している。
【0035】
この表3からもわかるように、ポリアクリル酸樹脂を電着法によってエッチドアルミニウム箔の形状に追従した0.1μm以下の厚さの薄膜にした場合、エッチドアルミニウム箔との接着性が、同じ厚さのポリイミド薄膜と比べて著しく優れているために、時間が経過しても膜の部分的な剥離や亀裂が生じにくかった。そのために、ポリアクリル酸樹脂薄膜コンデンサの1kHzにおける誘電特性の低下は、ポリイミド薄膜コンデンサのそれに比べて小さかった。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明によるコンデンサおよびその製造方法は、粗面化した導電体電極表面上に、ポリアクリル酸を含む水溶液を電着液として電着を行い、細孔の内部までポリアクリル酸樹脂薄膜誘電体を形成し、その表面上に対極としてポリピロールからなる薄膜導電体層を設けることにより、無極性で、長期にわたり高周波特性に優れ、なおかつ自己回復作用を有する小型・大容量コンデンサが実現できる。さらにコンデンサ作製時には、作業性,安全性,加工性にも優れているので工業的な大量生産に適するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における誘電体にポリアクリル酸樹脂薄膜を用いたコンデンサの断面図
【図2】実施の形態における電気泳動電着装置の概略図
【図3】実施の形態における製造工程のフローチャート
【図4】従来の技術における誘電体にポリイミドを用いたコンデンサの断面図
【符号の説明】
1 電着用電極(導電体電極)
4 ポリアクリル酸樹脂薄膜
5 ポリピロールの化学酸化重合膜
6 エポキシ樹脂膜
7 電解重合したポリピロール膜
8 対向電極(導電体層)
Claims (3)
- 粗面化した導電体電極の表面上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層と、前記誘電体層の表面上に対極として設けた導電性高分子の導電体層とを有し、両電極間に電圧印可を行うことにより前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電体層を絶縁化してなるコンデンサ。
- 導電性高分子として陰イオンをドープしたポリピロールを用いた請求項1記載のコンデンサ。
- ポリアクリル酸を含む水溶液を電着液として、粗面化した導電体電極上にポリアクリル酸樹脂薄膜を主体とする誘電体層を電着する工程と、前記工程の後に前記誘電体層の表面上に対向電極として更に導電性高分子の導電体層を形成する工程と、両電極間に電圧印可を行い前記誘電体層の欠陥部近傍における前記導電性高分子導電体層を絶縁化する工程とを有するコンデンサの製造方法。
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