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JP3452733B2 - 回折型の光学素子の製造方法 - Google Patents

回折型の光学素子の製造方法

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Publication number
JP3452733B2
JP3452733B2 JP21339196A JP21339196A JP3452733B2 JP 3452733 B2 JP3452733 B2 JP 3452733B2 JP 21339196 A JP21339196 A JP 21339196A JP 21339196 A JP21339196 A JP 21339196A JP 3452733 B2 JP3452733 B2 JP 3452733B2
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JP
Japan
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thin film
laser light
laser
glass substrate
optical element
Prior art date
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JP21339196A
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JPH1059743A (ja
Inventor
正 小山
啓司 常友
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Nippon Sheet Glass Co Ltd
Original Assignee
Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Publication date
Application filed by Nippon Sheet Glass Co Ltd filed Critical Nippon Sheet Glass Co Ltd
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Priority to US09/284,269 priority patent/US6291797B1/en
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Priority to EP97934765A priority patent/EP0959051A4/xx
Publication of JPH1059743A publication Critical patent/JPH1059743A/ja
Priority to US09/898,239 priority patent/US6645603B2/en
Priority to US10/622,517 priority patent/US6924457B2/en
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  • Diffracting Gratings Or Hologram Optical Elements (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)
  • Surface Treatment Of Glass (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は回折型の光学素子の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラスは平坦性、加工精度、耐候性、耐
熱性などの特性に優れているので、光通信等に用いる回
折格子或いはディスプレイ装置に組み込むマイクロレン
ズとして、ガラス基板の表面に微細加工を施したものが
知られている。
【0003】ガラス基材に微細加工を施すには、従来に
あっては、フッ酸等のエッチャントを用いたウェットエ
ッチング(化学エッチング)、或いはリアクティブイオ
ンエッチング等のドライエッチング(物理エッチング)
によるのが一般的である。
【0004】しかしながら、ウェットエッチングにあっ
ては、エッチャントの管理と処理の問題があり、ドライ
エッチングにあっては真空容器等の設備が必要になり装
置自体が大掛かりとなり、更に複雑なフォトリソグラフ
ィー技術によってパターンマスク等を形成しなければな
らず効率的でない。
【0005】また、市販の比較的安価に手に入れられる
回折格子等の波長分離素子は、工業的には、アルミニウ
ム等の金属をダイヤモンドの刃で刻む(ルーリング)こ
とにより原盤を得、これを元にしてエポキシ樹脂等へ転
写する方法が採られている。
【0006】上記の工業的な回折格子の作製法では、大
がかりなルーリング設備などが必要となるとともに、大
量生産するには有機物へ転写せざるを得ない。しかしな
がら、有機物への転写は成形性はよいが、湿度、温度に
対する耐性に限界がある。
【0007】一方、レーザ光は強力なエネルギーを有
し、照射された材料の表面温度を上げ、照射された部分
をアブレーション(爆蝕)或いは蒸発せしめて種々の加
工を施すことが従来から行われている。特にレーザ光は
極めて小さなスポットに絞ることができるので、微細加
工に適している。
【0008】そこで、複数のレーザ光を干渉させること
で、周期的な光強度分布を有するレーザ光とし、これを
金属板等の被加工物表面に照射して微細加工を行う先行
技術として、特開昭50−42499号公報、特開平4
−253583号公報、特公平7−4675号公報、特
公平7−47232号公報、特公平7−51400号公
報、特公平7−102470号公報、特公平8−979
4号公報、特公平8−25045号公報に開示されるも
のが知られている。
【0009】このうち特に、特公平8−25045号公
報にあっては、金属板等の被加工物上に、空気及び被加
工物よりも屈折率の高い導波路(薄膜)を形成し、この
導波路にレーザ光を照射し、導波路中を伝搬する光と照
射光との干渉作用で導波路に微細な凹凸を形成し、被加
工物表面に虹色発色機能を持たせるようにしたものであ
る。
【0010】また、村原正隆、他 応用物理 第52巻
第1号(1983)P.84には、有機高分子である
PMMA(ポリメチル・メタアクリレート)をガラス基
板に塗布し、その薄膜をエキシマレーザの干渉光を用い
て、アブレーションにより直接有機薄膜の微細凹凸を作
製したことが報告されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記先行技術のいずれ
も、基材表面に薄膜を形成し、この薄膜にレーザ光エネ
ルギーを吸収せしめてアブレーション等を生じさせ、薄
膜に微細加工を施すものであるが、レーザ光エネルギー
についての考慮がなされていない。
【0012】即ち、アブレーション等を生じさせるには
一定以上の強度のレーザ光を照射しなければならないの
は、従来から知られているが、基材表面に薄膜を形成し
た場合、薄膜を通して基材まで到達するレーザ光のエネ
ルギーが基材にアブレーション等を生じさせるエネルギ
ー(閾値)よりも大きいと、薄膜に微細な凹凸を形成す
るだけでなく、基材自体も加工してしまう。このように
薄膜と物性が異なる基材も同時に微細加工されると、回
折格子等の精度が要求される部材としては使用できなく
なる。また、薄膜が有機高分子の場合には、耐候性、耐
熱性に劣る不利もある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明は、ガラス基材の表面上にガラス基材よりもレー
ザ吸収性に優れた薄膜を形成し、この薄膜に対し強度分
布を有するレーザ光を照射し、前記薄膜にレーザ光のエ
ネルギーを吸収させることで溶融・蒸発若しくはアブレ
ーションを起こさせて前記薄膜をレーザ光の強度に応じ
て除去するようにした回折型の光学素子の製造方法であ
って、前記レーザ光はフェイズマスクを用いるかレーザ
光を干渉せしめることによって周期的な光強度分布を有
するレーザ光とされ、前記薄膜は無機材料を主体とし、
また薄膜の厚さまたはレーザ光の吸収係数を、薄膜を透
過してガラス基材表面に到達するレーザ光の強度がガラ
ス基材に溶融・蒸発若しくはアブレーションを起こさせ
る閾値以下になる値に設定した。
【0014】薄膜としては、金属酸化物、金属窒化物、
金属炭化物、半導体、SiO2を主体とするガラス、フッ
化物ガラスまたはカルコゲナイドガラスの単層あるいは
これらの組み合わせで多層に積層されたもの等が適当で
ある。また薄膜の形成方法としては、ゾルゲル法、スパ
ッタリング法、真空蒸着法、液相析出法などの様々な方
法が適用できる。
【0015】薄膜内をレーザ光が通過するときのエネル
ギー損失分については、薄膜の厚さ及び吸収係数にて制
御することができるが、所定の厚さを確保することが条
件となる場合には、レーザ光の吸収係数を主として制御
する。そして、吸収係数の制御方法としては、酸素欠損
などの量論比のずれを意図的に導入する方法、欠陥を導
入する方法、波長に対する吸収の高いイオンをドープす
る方法、超微粒子を混合する方法、顔料または有機色素
を混合する方法等が挙げられる。
【0016】また、前記レーザ光として周期的若しくは
規則的な光強度分布を有するレーザ光を用いることで、
光結合器、偏光器、分波器、波長フィルタ、反射器或い
はモード変換器等に組み込まれる回折格子やホログラム
等の回折型の光学素子を製造することができる。尚、ガ
ラス基材表面に形成する薄膜に対しレーザ光で凹凸を形
成するにあたり、薄膜の凹部の底面にガラス基材が露出
するまでアブレーション等を施すようにすれば、薄膜の
厚さがそのまま回折型の光学素子の凹凸部の厚さにな
る。
【0017】周期的な光強度分布を有するレーザ光は、
フェイズマスク或いは複数本のレーザ光を干渉せしめる
ことによって得ることができ、ガラス基材表面に形成さ
れる周期的な凹凸の断面形状は、レーザ光のパルスエネ
ルギーにて制御することができる。また、規則的な光強
度分布を有するレーザ光は、網目状マスク等を用いるこ
とで得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例と比較例を
添付図面に基づいて説明する。尚、実施例と比較例につ
いて主要な項目について比較した(表)を以下に示す。
【0019】
【表】
【0020】(実施例1) ソーダライムガラス上に、Agコロイドが分散したSiO
薄膜を形成した。形成方法は、スパッタ法で、SiO
ターゲットと銀金属のチップをターゲット上に置き、
同時にスパッタした。スパッタ条件を以下のように設定
し成膜した。また、ターゲットは下置きで、5インチ×
20インチの石英ターゲットを用い、その上に銀の円盤
状のチップ(直径約4mm)を32個、分散させて置い
た。 スパッタ条件 ガス流量:酸素3sccm,アルゴン97sccm スパッタ時圧力:2.8×10−3Torr 入射電力:3.0Kw 基板:ソーダライムガラス 得られた薄膜は、茶色に着色しているが、表面は平滑で
付着力も強く、クリアな膜が得られた。5分間の成膜時
間で膜厚は315nmであった。また、膜中の銀の濃度
をXPS(X線電子分光法)で測定したところ、0.9
4原子%であった。薄膜の吸収スペクトルを測定する
と、390nm付近に吸収ピークが存在し、これは銀の
超微粒子(コロイド)のプラズモン吸収と考えられ、ガ
ラス中に銀の超微粒子が成膜時に生成したものと考えら
れる。
【0021】このガラス上の薄膜を、図1に示す光学系
でアブレーションを行い、微細加工を行った。図1に示
す光学系は、1本のシングルモードのレーザビームを2
つに分け、その光を再びガラス薄膜上で焦点を結ばせる
ようにし、その干渉により強度が周期的に変化するパタ
ーンを形成して照射した。使用したレーザはNd:YA
Gレーザでパルス幅が10ns、繰り返し周波数が10
Hz、使用波長は第3高調波の355nm、照射エネル
ギーは2本のビームに分ける前は、約110mJ/Pu
lseのエネルギーであった。ビームは50%のビーム
スプリッターでわけ、石英のレンズを通過させた後、サ
ンプル表面上で2つのビームを重ね合わせ、干渉縞を生
じさせ、周期的な光強度分布の状態を形成させた。レー
ザビームの間の角度は約10°であった。試料上のビー
ム径は2mmであり、エネルギー密度は4.14J/c
・Pulseになる。このエネルギーは薄膜がアブ
レーションするエネルギーをあらかじめ測定し、そのエ
ネルギーよりも高めに設定したものである。
【0022】加工を行った膜を、光学顕微鏡、電子顕微
鏡で観察した。図2(a)は1000倍の光学顕微鏡写
真、(b)は同写真に基づいて作成した図、図3(a)
は3500倍の走査型顕微鏡写真、(b)は同写真に基
づいて作成した図である。これらの図から、膜に約1μ
mの周期的な凹凸が形成されているのを確認できる。
【0023】この実施例での355nmにおける薄膜の
吸収係数は、46,212cm−1であった。またソー
ダライムガラス基板の吸収係数は0.3081cm−1
であった。また、薄膜の吸収係数と厚さから計算した基
板に到達するエネルギーは0.95J/cm・Pul
seであった。
【0024】一方、ガラスのアブレーション閾値を実験
的にもとめた。照射エネルギーを上げながら、アブレー
ションした時点でのエネルギーを記録した。パワー密度
を計算するためには、アブレーション痕の面積が必要で
あるが、照射痕周辺の割れが激しく正確に求めることは
できなかった。おおよその面積から求めると、少なくと
も本実験のレーザでは8〜10J/cm・Pulse
であった。したがって、基板に到達するエネルギーは基
板のアブレーション閾値以下であり、優先的な薄膜のア
ブレーションが起こり、このような微細な加工性を可能
にしたものと考えられる。
【0025】(比較例1) 実施例1と同様の工程で、SiO薄膜をソーダライム
ガラス基板上に形成した。この場合、ターゲット上には
銀は置かず、SiOのみの薄膜が形成できるようにし
た。得られた薄膜を、実施例1と同様の光学系を用いて
レーザ加工した。その結果、薄膜の選択的加工はでき
ず、基板とともにアブレーションが起こった。このとき
のエネルギーは9J/cm・Pulseであった。ま
た、吸収係数を測定すると、基板の吸収係数は実施例1
と同じであるが、SiO膜は0.001cm−1以下
であり、基板よりも吸収係数が低かった。また、基板に
到達するエネルギーも、ほぼ基板のアブレーション閾値
に近く、有効な加工ができなかったものと考えられる。
【0026】(実施例2,3,4,5) 実施例1と同様に、ソーダライムガラス上に、Agコロ
イドが分散したSiO薄膜を形成した。スパッタ条件
は、銀のターゲット個数、スパッタ電力を調整し、銀の
混合濃度を変化させた。この実施例の要点を、前記
(表)にまとめた。銀の濃度が下がるにしたがって、膜
の吸収係数が低下した。この薄膜付きガラスを、実施例
1と同様な方法で干渉光を用いたアブレーションを行っ
た。その結果、実施例1と同様に、膜面に周期的構造が
でき、回折格子としての機能を発揮した。これらの薄膜
は、(表)からわかるように、すべて吸収係数が基板よ
り高く、なおかつ基板に到達するレーザエネルギーは基
板のアブレーション閾値よりも低くなっている。
【0027】(比較例2,3) 実施例4,5と同じ条件でAgの混合したSiO膜を
作製した。これは実施例4,5の成膜時に同時にチャン
バーに入れたもので、膜の特性は完全に同じになるよう
に配慮した。ただし、基板は実施例1〜5に用いたもの
よりも、低いアブレーション閾値(3.5J/cm
Pulse)の材料を用いた(表参照)。この基板は、
ガラスマトリクス中にCdS、CdSeなどの超微粒子が
分散されたもので、シャープカットフィルターとして広
く用いられているものである。作製した薄膜付ガラス基
板を実施例1と同じ条件でアブレーションを行った。そ
の結果、比較例2ではかろうじて回折格子の加工性が見
られたが、比較例3では基板のダメージがあり、良好な
加工性は得られなかった。このガラス基板の355nm
の波長に対する加工閾値は3.5J/cmであり、そ
の吸収係数は377cm−1であった。比較例2での膜
の吸収係数は6490cm−1であり、基板よりも吸収
係数が高い。また薄膜を透過し基板に到達するエネルギ
ーは、3.4J/cmで、かろうじて基板のアブレー
ション閾値以下であった。一方、比較例3での膜の吸収
係数は2235cm−1であり、基板の吸収係数377
cm−1より高いが、基板に到達するエネルギーは3.
9J/cm・Pulseであり、基板のアブレーショ
ン閾値に到達していた。したがって、この点が、比較例
3における加工性を失わせた原因と考えられる。実施例
5と比較例3は同じ薄膜であるが、基板の閾値の違いに
よりこのような差が生じたものと考えられる。
【0028】(実施例6) 実施例2で用いた同じ試料に対して、図4に示す装置を
用いて回折格子を製造した。具体的には、上記のガラス
基板の上にAg−SiO膜を成膜した面に、スペーサを
介して回折格子を形成したフェイズマスクを備えた基板
を配置し、レーザ光を照射した。フェイズマスクにレー
ザ光が入射すると、図5(a)に示すように、主として
+1次、0次、−1次を含む複数の回折光が出射し、こ
れらの回折光の干渉によりフェイズマスクの出射側の極
近傍に周期的な光の強度分布が得られる。ここで、本実
施例のフェイズマスクは回折格子周期:1055nm、
回折格子深さ:約250nm、サイズ:10mm×5m
m(QPS Technology Inc.製Canada)を使用した。
そして、この周期的な強度分布が形成された領域に、図
5(b)に示すように、薄膜を成膜したガラス基板をセ
ットした。その結果、図5(c)に示すように、当該周
期的な光強度に応じて薄膜が蒸発或いはアブレーション
し、光強度の周期と同一の周期をもつ回折格子がガラス
基板上に薄膜を加工した形で形成された。ガラスの閾値
と薄膜の閾値の関係は実施例1,2で述べたものと同じ
条件である。
【0029】尚、使用したレーザ光は、実施例1と同様
にNd:YAGレーザの第3高調波である355nmの
光とした。パルス幅は約10nsec、繰り返し周波数
は5Hzであった。またレーザ光の1パルスあたりのエ
ネルギーは、レーザのQスイッチのタイミングを変える
ことで調整が可能であり、110mJ/pulseのエ
ネルギーで、ビーム直径は約5mmであった。加工に適
するように、レーザのエネルギー密度を増大させるた
め、レーザ光を焦点距離250nmのレンズで絞り込ん
でガラス基板上でのビームサイズが約2mmになるよう
にした。
【0030】上記によって形成された回折格子のところ
で、本実施例にあってはスペーサによってフェイズマス
クとガラス基板との間隔が約50μmとなるようにして
いる。これは、ガラス基板表面からの蒸発物がフェイズ
マスクに付着するのを極力防ぐためであり、この間隔自
体は任意である。例えば+1次光と−1次光とが重なっ
ている範囲内ならば、フェイズマスクとガラス基板を密
着させても回折格子は作製できるし、フェイズマスクと
ガラス基板との間に150μm程度の厚さの石英板を挟
み密着させてレーザ照射を行った場合も、本実施例と同
様に回折格子が作製できた。フェイズマスクは繰り返し
使用されるものであり、その汚れを防ぐことは重要であ
り、したがってスペーサを介在させることは有効な手段
である。
【0031】(実施例7,8) BK7と呼ばれるホウ珪酸系ガラスを基板として、電子
ビーム蒸着法でTiO、GeO薄膜を形成した。これ
ら薄膜を実施例1と同様の方法でレーザ加工を施すと、
同様に周期的構造が形成できた。したがって、これらの
薄膜の加工閾値は4.14J/cmよりも低いことが
わかる。BK7ガラスの355nmにおける加工閾値
は、8から9J/cmであり、TiOの吸収係数
(46060cm−1)と膜厚から換算した透過エネル
ギーは3.2J/cm、GeOの吸収係数は755
5cm-1で透過エネルギーは3.6J/cmとなっ
た。したがって、基板の加工閾値はこれらの値よりはる
かに高く、安定して薄膜のレーザ加工ができたものと考
えられる。また、GeO薄膜はガラス質であるが、Ti
は結晶化しており、アナターゼ構造の結晶型を持っ
ていることがX線回折結果から明らかになった。従っ
て、本発明はガラス性の薄膜に限らず、結晶性の薄膜に
も適用でき、請求項に示した用件を満たすことが必要で
あることがわかった。
【0032】(実施例9) ソーダライムガラスの上に、ゾルゲル法により、膜中に
金コロイドが分散したTiO薄膜を形成した。薄膜作
製における主材料は、チタンテトラブトキシド(TT
B)で、これに4倍の当モル量のアセチルアセトン(A
A)を混合した。これは、ゾルゲル反応の主反応であ
る、水の加水分解を穏やかに進ませ、良質な薄膜を形成
するのに役立つ。加水分解反応液として、NaAuCl
を0.16mol/lの濃度で溶解した水溶液を用い
た。TTBを12ml、希釈のためのエタノールを12
ml、AAを4ml、NaAuCl4水溶液を3ml混合
し、30分撹拌、反応させた後、ガラス基板上にデイッ
プ法で塗布した。塗布後、空気中400℃、15分加熱
し、残存有機物を蒸発させ、強固な膜とした。またこの
とき、金の超微粒子が析出し、薄膜はブルーに変色し
た。これは、TiO膜中の金超微粒子のプラズモン吸
収に起因している。塗布と熱処理を3回繰り返し、34
0nmの厚さの薄膜を得た。この薄膜を、実施例1と同
じ光学系と照射エネルギーを用いて回折格子を作製し
た。その結果、同様に周期的構造がガラス基板上に形成
できた。この薄膜の吸収係数は355nmにおける吸収
係数は58000cm−1であり、基板まで到達するエ
ネルギーは0.57J/cmと見積もられ、基板閾値
よりもはるかに低い値であった。この薄膜は非晶質であ
るが、主成分は実施例7で示したTiOと同一であ
る。本実施例では実施例7の膜よりも吸収係数が大きく
なっており、金超微粒子のような超微粒子を材料中に分
散する事により、吸収係数を調整することが可能である
ことを示している。
【0033】(実施例10) ガラス薄膜を得る方法として、液相中でSiOを析出
させる方法がある。そのような方法として、A.Hishinum
a et al. Applied Surface Science 48/49 (1991) 405
に示されている、LPD法(Liquid Phase Depositio
n:液相成膜法)が知られている。LPD法を用いSiO
2中に有機色素の一つである、ローダミン6G(R6
G)を混合して、ソーダライムガラス基板上に成膜をし
た。薄膜の作製は以下のように行った。まず、珪フッ素
酸(H2SiF6)溶液にSiOガラスを入れ、飽和溶液
とする。このときの珪フッ素酸の濃度は2mol/lに
した。飽和後、この溶液にR6Gを約0.2mol/l
の濃度になるように混合した。そこでガラス基板を液中
にいれ、さらにアルミニウム片をいれた。アルミニウム
片は、SiOで飽和している珪フッ素酸の平衡を、Si
が析出する方向へ動かす働きがあり、ガラス基板上
にSiO薄膜を析出させる。このとき、色素が混合さ
れているため、色素もガラス薄膜中に導入された。得ら
れた薄膜は、赤色で、明らかにローダミン色素が膜中に
導入されたことがわかった。この薄膜を、実施例1と同
じ光学系と照射エネルギーを用いて回折格子を作製し
た。その結果、同様に周期的構造がガラス基板上に形成
できた。しかしながら、付着力が弱いせいか、一部は膜
が残らず、ガラス基板が露出する部分があった。この薄
膜の吸収係数は355nmにおける吸収係数は3850
0cm-1であり、基板まで到達するエネルギーは0.5
7J/cmと見積もられ、基板閾値よりもはるかに低
い値であった。
【0034】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
ガラス基板等の基材に直接レーザ光を照射して加工する
のではなく、基材表面に基材よりもレーザ吸収性に優れ
た薄膜を形成し、この薄膜に対しレーザ光を照射して薄
膜を微細加工するようにしたので、干渉性に乏しいAr
とFを発光源とするエキシマレーザによらなくとも、N
d:YAGレーザ等の安価で使いやすい固体レーザで得
られ、しかもガラスに対する直接の加工には使用できな
いと考えられる1064nm、その高調波の532n
m、355nm、266nmの波長を用いることが可能
となる。
【0035】また、薄膜は無機材料を主体としたので、
耐環境性に優れた製品が得られ、更に、薄膜の厚さ若し
くはレーザ吸収係数を調整して基板に到達するエネルギ
ーが、基板の加工閾値よりも低くなるようにしたため、
薄膜部分のみを微細加工することができ、高精度の製品
を得ることができる。
【0036】また、薄膜に形成する凹凸の凹部にガラス
基材表面が露出するまでアブレーション等によって薄膜
部分を除去するようにすれば、回折型の光学素子の凹凸
の厚さを薄膜の厚さでコントロールすることができ、高
精度の光学素子を簡単な方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レーザ干渉を利用した本発明方法で回折格子を
製造する装置の概略図
【図2】(a)は微細加工後の薄膜表面の光学顕微鏡写
真(1000倍)、(b)は同写真に基づいて作成した
【図3】(a)は微細加工後の薄膜表面の走査型顕微鏡
写真(3500倍)、(b)は同写真に基づいて作成し
た図
【図4】フェイズマスク用いた本発明方法で回折格子を
製造する装置の概略図
【図5】(a)はフェイズマスクの作用を説明した図、
(b)は同フェイズマスクを介してガラス基板にレーザ
光を照射している状態を示す図、(c)はレーザ加工さ
れたガラス基板を示す図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−303916(JP,A) 特開 平8−57678(JP,A) Anna−Karin Holme r,Simultaneous mac hining of parallel grooves in SnO2 t hin films using a Nd:YAG laser and a kinoform,Applied Optics,1996年 5月20日,Vo l.35 No.15,p2614−2618 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 15/00 - 23/00 B23K 26/00 - 26/18 G02B 5/18 G02B 5/30 - 5/32 WPI JOIS

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基材の表面上にガラス基材よりも
    レーザ吸収性に優れた薄膜を形成し、この薄膜に対し強
    度分布を有するレーザ光を照射し、前記薄膜にレーザ光
    のエネルギーを吸収させることで溶融・蒸発若しくはア
    ブレーションを起こさせて前記薄膜をレーザ光の強度に
    応じて除去するようにした回折型の光学素子の製造方法
    であって、前記レーザ光はフェイズマスクを用いるかレ
    ーザ光を干渉せしめることによって周期的な光強度分布
    を有するレーザ光とされ、前記薄膜は無機材料を主体と
    し、また薄膜の厚さまたはレーザ光の吸収係数を、薄膜
    を透過してガラス基材表面に到達するレーザ光の強度が
    ガラス基材に溶融・蒸発若しくはアブレーションを起こ
    させる閾値以下になる値に設定したことを特徴とする回
    折型の光学素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のガラス基材に対する回
    折型の光学素子の製造方法において、前記レーザ光の吸
    収係数を、酸素欠損などの量論比のずれを意図的に導入
    する方法、欠陥を導入する方法、波長に対する吸収の高
    いイオンをドープする方法、超微粒子を混合する方法、
    顔料を混合する方法、または有機色素を混合する方法の
    いずれかを適用することで増加させることを特徴とする
    回折型の光学素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の回折型
    の光学素子の製造方法において、前記薄膜は、金属酸化
    物、金属窒化物、金属炭化物、半導体、SiOを主体
    とするガラス、フッ化物ガラスまたはカルコゲナイドガ
    ラスの単層あるいはこれらの組み合わせで多層に積層さ
    れたことを特徴とする回折型の光学素子の製造方法。
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